JP2016181313A - 磁気ディスク用基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気ディスク用基板の研磨処理後の歩留まりを向上させる。【解決手段】一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、研磨パッドと基板の間にシリカ粒子を研磨砥粒として含むスラリーを供給して、研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法において、研磨処理を行う前のスラリーに水溶性のモノマーを添加し、モノマーを重合させて研磨処理を行う前のスラリー中にポリマーを生成させる重合処理を行った後、ポリマーを含むスラリーを用いて研磨処理を行う。【選択図】 なし

Description

本発明は、研磨処理を有する磁気ディスク用基板の製造方法に関する。
今日、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置が内蔵されている。特に、ノート型パーソナルコンピュータ等の可搬性を前提とした機器に用いられるハードディスク装置では、ガラス基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッド(DFH(Dynamic Flying Height)ヘッド)で磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板には、金属基板等に比べて塑性変形をしにくい性質を持つことから、ガラス基板が好適に用いられている。磁気ヘッドによる磁気記録情報の読み書きを安定して行うために、磁気ディスク用ガラス基板の表面凹凸は可能な限り小さくすることが求められる。
磁気ディスク用ガラス基板の表面凹凸を小さくするために、ガラス基板の研磨処理が行われる。ガラス基板を最終製品とするための精密な研磨に、シリカ(SiO2)等の微細な研磨砥粒を含む研磨剤が用いられる。このような研磨剤は、研磨処理後のガラス基板の表面品質を高めるために、フィルタリング処理や遠心分離を行なうことで所定のサイズに揃えて研磨剤として用いられる。また、研磨処理時、シリカ砥粒を含むスラリーを循環させながら研磨に用いる場合、研磨に使用したスラリーをフィルタリングしたのち、研磨に再使用する。
例えば、ガラス基板の主表面のシリカ砥粒を用いた研磨工程の最終研磨工程において、最小捕捉粒子径が1μm以下のフィルタを使用してフィルタリングした後の研磨用スラリー(シリカ砥粒を含む)を用いる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が知られている(特許文献1)。最終研磨処理後のガラス基板は、表面に付着した砥粒等の異物を除去するために、洗浄液で洗浄される(最終洗浄処理)。
特開2010−079948号公報
研磨処理後の最終洗浄処理において、磁気ディスク用ガラス基板の表面から砥粒等の異物を除去するために洗浄力の高い洗浄液を用いると、磁気ディスク用ガラス基板が洗浄液によりエッチングされ、主表面に僅かな凹凸が形成される。この僅かな凹凸は、従来の磁気ヘッドの浮上距離よりも充分に小さく、かつては無視できる範囲であった。
しかし、近年、磁気ディスクの記録密度の増加に伴い、微弱な磁界の読み取りおよび記録を確実に行うために、磁気ヘッドの磁気ディスク表面からの浮上距離を極めて小さくすることが行われている。このため、エッチングによる僅かな凹凸が無視できなくなってきた。そこで、従来よりも洗浄力の低い洗浄液を用いて、磁気ディスク用基板の最終洗浄処理を行うことが試みられている。
一方、最終研磨処理後の磁気ディスク用基板の主表面には、研磨処理に用いるシリカ砥粒を含むスラリーに由来する異物が付着する場合がある。近年、表面検査装置の検査精度が向上したことにより、この異物の中に極めて平たい形をした板状の粒子(以下、板状粒子という)があることが判明した。板状粒子が磁気ディスク用基板の主表面に残存した状態で主表面に磁性層を形成すると、磁気ディスクの面上にも同様の表面凹凸が形成される。この磁気ディスクの磁気記録情報の読み書きを、極めて浮上距離の短い磁気ヘッドで行うと、磁気ヘッドがこの表面凹凸に衝突するおそれがある。この板状粒子は、磁気ディスク用基板との付着面積が大きいため、洗浄力の低い洗浄液では容易に除去することができない。一方、板状粒子を除去するためにガラス基板に対して洗浄力の高い洗浄液を用いると、エッチングにより主表面の粗さが大きくなってしまうため、好ましくない。
上記の板状粒子は、概略球形状のシリカ砥粒の平均粒子径(d50)より大きな異形状の異物であるため、フィルタにより除去できるとも考えられる。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法を用いた体積分布に基づいて測定されるメディアン径を示す。
しかし、スラリーをシリカ砥粒のみ通すような比較的目が細かいフィルタで濾過したところ、シリカ砥粒によるフィルタの目詰まりが生じ、スラリーから効率よく異物を除去することができなかった。また、シリカ砥粒が通るような目のサイズのフィルタでは、板状異物も通り抜けてしまった。
そこで、本発明は、研磨液に含まれる異物が研磨処理後の磁気ディスク用基板に付着することを防ぐことで、磁気ディスク用基板の研磨処理後の歩留まりを向上させることができる磁気ディスク用基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、研磨処理に用いるスラリー中の板状粒子が研磨処理後の磁気ディスク用基板に付着することを防ぐ新たな方法を検討した。その結果、板状粒子の平坦な表面は、シリカ粒子の表面よりもシラノール基の密度が高いことに注目し、以下の方法を発明した。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、前記研磨パッドと前記基板の間に粒子を研磨砥粒として含むスラリーを供給して、前記研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、前記基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、
前記研磨処理を行う前のスラリーに水溶性のモノマーを添加し、前記モノマーを重合させて前記研磨処理を行う前のスラリー中にポリマーを生成させる重合処理を行った後、前記ポリマーを含むスラリーを用いて前記研磨処理を行うことを特徴とする。
前記研磨処理を行う前のスラリーは、前記研磨砥粒の表面よりもシラノール基の密度が高い表面を有する粒子を含むことが好ましい。
前記重合処理後のスラリーから、前記ポリマーを分離する分離処理を行い、
前記分離処理後のスラリーを用いて前記研磨処理を行う、ことが好ましい。
前記重合処理後のスラリーを濾過することにより、前記ポリマーを除去し、
濾過後のスラリーを用いて前記研磨処理を行う、ことが好ましい。
前記モノマーはアミド基を有することが好ましい。アミド基中の酸素原子はシリカの表面のシラノール基と水素結合しやすいので、シリカの表面からポリマーを生やす(成長させる)ことを促進できる。板状粒子の平坦な表面はシラノール基の密度が高いため特にポリマーが生えやすくなる。この理由は、アミド基における共役系の形成によってアミド基の酸素原子がマイナスの電荷を帯びやすいためと推定される。
前記モノマーはアクリロイル基を有することが好ましい。カルボニル基がシリカ表面のシラノール基と水素結合することで、カルボニル基と隣接するα炭素(カルボニル基を構成する炭素と共有結合した炭素)のπ電子の反応性が高まり、重合反応が進みやすくなる。このため、シリカ表面からポリマーを成長させることを促進することができる。
前記モノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミドを選択することができる。
前記研磨処理後の磁気ディスク用基板の表面粗さRaは0.2nm以下である、ことが好ましい。
前記重合処理では、前記研磨処理を行う前のスラリー中の粒子同士をポリマーにより接続することで凝集物を形成する、ことが好ましい。
本発明の第2の態様は、一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、前記研磨パッドと前記基板の間にシリカ粒子を研磨砥粒として含むスラリーを供給して、前記研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、前記基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、
前記研磨処理を行う前のスラリーに、水溶性のモノマーを添加して重合させることにより、前記シリカ粒子の表面にポリマーを生成させる重合処理を行った後、前記重合処理後のスラリーを用いて前記研磨処理を行うことを特徴とする。
上述の磁気ディスク用基板の製造方法によれば、研磨処理に用いるスラリー中の板状粒子が研磨処理後の磁気ディスク用基板に付着することを防ぐことができる。このため、磁気ディスク用基板の研磨処理後の歩留まりを向上させることができる。
以下、本発明の実施形態に係る磁気ディスク用基板の製造方法について説明する。
(磁気ディスク用基板)
まず、磁気ディスク用基板について説明する。磁気ディスク用基板は、円板形状であって、外周と同心の円形の中心孔がくり抜かれたリング状である。磁気ディスク用基板の両面の円環状領域に磁性層(記録領域)が形成されることで、磁気ディスクが形成される。磁気ディスク用基板として、ガラス基板やアルミニウム合金基板等を用いることができる。ガラス基板として、具体的には、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等が挙げられる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。なお、アルミニウム合金基板は、通常、表面にNiP金属膜が設けられている。
本実施形態においては、磁性層を形成する前に、最終研磨処理が行われる。最終研磨処理では、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置を用いて、磁気ディスク用基板の主表面に対して研磨処理を行う。具体的には、磁気ディスク用基板の外周側端面を、両面研磨装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながら磁気ディスク用基板の両側の主表面の研磨を行う。両面研磨装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。磁気ディスク用基板の主表面と研磨パッドとの間に研磨液を供給しながら、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動させることで、磁気ディスク用基板と研磨パッドとが相対的に移動し、磁気ディスク用基板の両主表面が研磨される。
本実施形態においては、研磨液として、コロイダルシリカ(シリカ砥粒)を遊離砥粒として含む研磨液が用いられる。
コロイダルシリカは、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル等を原料とするゾルゲル法、水ガラスを原料とするイオン交換法により製造することができる。この中でも、コスト面からイオン交換法により製造することが好ましい。
イオン交換法では、水ガラスとイオン交換樹脂を用いてシリカ砥粒が得られる。具体的には、ケイ砂とアルカリ剤(例えばNaCO、NaHCO、NaOH、KCO、KHCO、KOH等)とを混合し、加熱して熔融することでケイ酸塩を生成する。次に、得られたケイ酸塩を、必要に応じて冷却した後、水に溶解させることでケイ酸塩水溶液(水ガラス)を生成する。この水ガラスにプロトン型陽イオン交換樹脂を混合してケイ酸塩水溶液のpHを下げる。その後、所定の時間、所定の温度の加熱処理を行うことで、ケイ酸塩水溶液中でシラノール基同士の縮重合が促進され、シリカの粒子が生成され、コロイダルシリカを含むスラリーが得られる。
このように生成されたコロイダルシリカを含むスラリーには、研磨砥粒として用いるのには不適切な、粒子径が大きい大径粒子(粗大粒子)が含まれる場合がある。具体的には、研磨砥粒として適したコロイダルシリカの平均粒子径が60nm以下、好ましくは10〜60nm、より好ましくは10〜30nmであるのに対し、砥粒として用いるのに不適切な粗大粒子の粒子径は平均粒子径の2倍以上、より不適切なものは5倍以上である。
また、このように生成されたコロイダルシリカを含むスラリーには、原料のケイ砂に由来する、板状粒子が混在している場合がある。この板状粒子はアルミニウムを含むケイ酸塩の結晶であり、この結晶はケイ酸塩の層が積層してなる層状ケイ酸塩(例えばモンモリロナイト、サポナイト、カオリナイトなどの層状粘土鉱物)である。この板状粒子は、極めて平たい形をしている。また、板状粒子は比較的軟らかくてしなやかである。このような板状粒子が異物として精密に研磨された表面に付着すると密着しやすいため、洗浄除去することが困難になる。
この板状粒子は、ケイ砂とアルカリ剤とを混合して熔融しても熔けることなく残存し、熔融物を水に溶解させて得られる水ガラス内、水ガラスから製造されるコロイダルシリカを含むスラリー内にも残存する。そして、板状異物をろ過によってスラリー中から除去しようとしても、板状粒子は比較的軟らかくてしなやかであるため、フィルタの目のサイズが板状異物のサイズより多少小さい場合であっても、変形して通り抜けてしまう。
ここで、板状粒子は、薄くて平べったい形状の粒子である。板状粒子の厚さは例えば5〜25nmである。板状粒子の最大長さは例えば100nm以上である。板状粒子の最大長さは厚さの5倍以上である。なお、板状粒子の最大長さは例えば300nm以下である。
なお、板状粒子は、ケイ酸塩の薄い層が積層した構造をとっていると考えられる。積層方向が板状粒子の厚さ方向となる。また、板状粒子の最大長さは、平坦な面の面内方向における最大長さである。
なお、磁気ディスク用基板の主表面に付着した板状粒子(板状異物)を測定する場合、磁気ディスク用基板の主表面と垂直な方向における板状異物の最大高さを板状粒子の厚さとすることができる。また、この磁気ディスク用基板の主表面と平行な方向における板状異物の最大長さを板状粒子の最大長さとすることができる。
板状粒子における平らな面は、シリカ砥粒の表面よりもシラノール基の密度が高い表面を有する。この理由は、シリカ砥粒が非結晶であり表面のシラノール基が不規則に配列されているのに対し、板状粒子の平らな面ではシラノール基が規則的に配列されているためと考えられる。これは、板状粒子が元々は複数の板状粒子の積層体として生成した後に個々に剥がれたものであるためと推察される。この積層体において、板状粒子同士は、界面(平らな面)同士を対向させ、界面に整然と配列されたシラノール基同士をナトリウムイオンを介して接着したような構造をとると推定される。ナトリウムイオンが離れることで積層体から分離したものが板状粒子となると推察される。
ここで、「平らな面」とは、板状粒子の表面のうち、厚さ方向と垂直な面をいう。
本実施形態では、コロイダルシリカを含むスラリーに対し、研磨処理に用いる前に以下に説明する重合処理を行うことで、シラノール基からポリマーを成長させ、研磨処理後の磁気ディスク用基板に板状粒子が付着することを防ぐ。特に、板状粒子の平らな面のシラノール基からポリマーを成長させることで、板状粒子の平らな面が磁気ディスク用基板に付着することを防ぐことができる。
(重合処理)
重合処理は、研磨処理を行う前のスラリーに水溶性のモノマーを添加し、スラリー中でモノマーを重合させてポリマーを生成する処理である。
水溶性のモノマーとして、シラノール基と結合する官能基を有するモノマーを用いることが好ましい。例えば、シラノール基と水素結合するカルボニル基を有するモノマーを用いることができる。
カルボニル基を有するモノマーとして、例えば、カルボニル基と隣接するα炭素(カルボニル基を構成する炭素と共有結合した炭素)とβ炭素(α炭素と供給結合した炭素)との間に二重結合を有するモノマーを用いることができる。
例えば、アクリロイル基又はメタクロイル基を有するモノマーを用いることができる。例えば、以下の一般式(1)で表されるアクリロイル基を有するモノマー、以下の一般式(2)で表されるメタクロイル基を有するモノマー等を用いることができる。
Figure 2016181313
Figure 2016181313
式(1)および式(2)において、R1はH、アルキル基、アリール基、又はアミド基である。
また、シラノール基と結合する官能基として、シラノール基と水素結合するアミド基を有するモノマーを用いることができる。アミド基を有する水溶性のモノマーとして、例えば、アミド基と隣接するα炭素(アミド基を構成する炭素と共有結合した炭素)とβ炭素(α炭素と供給結合した炭素)との間に二重結合を有するモノマーを用いることができる。
例えば以下の一般式(3)で表されるアクリルアミド系モノマーを用いることができる。
Figure 2016181313
式(3)において、R1、R2は、H、アルキル基又はアリール基である。
また、一般式(4)で表されるメタクリルアミド系モノマーを用いることができる。
Figure 2016181313
式(4)において、R1、R2は、H、アルキル基又はアリール基である。
例えば、式(3)で表されるアクリルアミド系モノマーとして、R1、R2がともにメチル基である、N,N−ジメチルアクリルアミドを用いることができる。また、R1がH、R2がイソプロピル基であるN−イソプロピルアクリルアミドを用いることができる。
また、式(4)で表されるメタクリルアミド系モノマーとして、R1、R2がともにメチル基である、N,N−ジメチルメタクリルアミドを用いることができる。また、R1がH、R2がイソプロピル基であるN−イソプロピルメタクリルアミドを用いることができる。
また、上記のモノマーの少なくとも2種類を用いてコポリマーを生成させてもよい。
上記の水溶性のモノマーをスラリーに添加し、さらに重合開始剤、必要に応じて重合助剤を添加し、重合を開始する。重合反応を実施する際のスラリーの温度は、20〜50℃の範囲内とすることが好ましい。20℃より低いと反応時間が長くなりすぎる恐れがあり、50℃より高いと重合が進みすぎて研磨液がゲル化するおそれがある。また、重合反応を実施する時間は、6〜48時間の範囲内とすることが好ましい。重合反応を実施する時間が6時間よりも短いと、モノマーの重合を不充分となり、未反応のモノマーが残るおそれがある。一方、重合反応を実施する時間が48時間よりも長いと、重合が進みすぎて研磨液がゲル化するおそれがある。
重合開始剤として、水溶性のラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。例えば、ペルオキソ2硫酸カリウム(K)、ペルオキソ2硫酸ナトリウム(Na)、ペルオキソ2硫酸アンモニウム((NH)、過酸化水素(H)、過ヨウ素酸ナトリウム、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]又はその塩酸塩もしくはその硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミジン]又はその塩酸塩もしくはその硫酸塩、等を用いることができる。
なお、必要に応じて、重合助剤を用いることができる。
例えば、重合開始剤としてペルオキソ2硫酸カリウム、ペルオキソ2硫酸ナトリウム又はペルオキソ2硫酸アンモニウムを用いる場合、重合助剤としてテトラメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン又は亜硫酸水素ナトリウムを用いることができる。
また、重合開始剤として過酸化水素又は過ヨウ素酸ナトリウムを用いる場合、重合助剤として塩化鉄(II)(FeCl)又は硫酸鉄(II)(FeSO)を用いることができる。
一方、重合開始剤として、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]又はその塩酸塩もしくはその硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミジン]又はその塩酸塩もしくはその硫酸塩を用いる場合には、重合助剤はなくてもよい。
モノマー、重合開始剤、必要に応じて重合助剤をスラリーに添加して加熱を開始すると、スラリー中でシラノール基と水素結合した官能基を有する水溶性のモノマーから重合反応が開始されると考えられる。シラノール基と水素結合したカルボニル基を有する水溶性のモノマーでは、カルボニル基と隣接するα炭素(カルボニル基を構成する炭素と共有結合した炭素)のπ電子の反応性が高まり、重合反応が進みやすくなる。ここで、スラリー中のシラノール基は、遊離砥粒として適切な粒径のコロイダルシリカの表面、粗大粒子の表面、および、板状粒子の表面に存在する。このため、コロイダルシリカ、粗大粒子および板状粒子の表面から伸びるようにポリマーが形成される。
スラリーへのモノマーの投入量は、スラリー中の粗大粒子や板状粒子のシラノール基とモノマーとが確実に水素結合するように、モノマー投入後のスラリーの全体量に対するモノマーの濃度が0.05wt%以上となるように調整することが好ましい。一方、モノマーの投入量が多すぎると、スラリーの粘度が高くなりすぎて研磨定盤の回転に負荷がかかったり、摩擦が大きくなってスラリー中の溶媒が蒸発して研磨剤の濃度が変化することにより、安定した生産が難しくなったり、また、スラリーから異物を除去するためのろ過において詰まりやすくなったりするおそれがあるため、モノマーを投入後のスラリーの全体量に対するモノマーの濃度が2wt%以下となるようにモノマーの投入量を調整するとより好ましい。
同様に、スラリーへの重合開始剤の投入量は、モノマーの重合を十分に実現し、未反応のモノマーを残さないために、モノマーおよび重合開始剤の投入後のスラリーの全体量に対する重合開始剤の濃度が0.001wt%以上となるように調整することが好ましい。一方、重合開始剤の投入量が多すぎると、重合度が稼げず、生成するポリマーが短くなりすぎて、基板への付着防止作用が十分に得られないおそれがあるため、モノマーおよび重合開始剤を投入後のスラリーの全体量に対する重合開始剤の濃度が1wt%以下となるようにモノマーの投入量を調整するとより好ましい。
スラリーへの重合助剤の投入量は、重合開始剤によるモノマーの酸化を促進するために、モノマー、重合開始剤および重合助剤の投入後のスラリーの全体量に対する重合助剤の濃度が0.001wt%以上となるように調整することが好ましい。一方、重合助剤の投入量が多すぎると、重合の開始が促進されすぎることで重合度が稼げず、生成するポリマーが短くなりすぎて、基板への付着防止作用が十分に得られないおそれがあるため、モノマー、重合開始剤および重合助剤を投入後のスラリーの全体量に対する重合助剤の濃度が1wt%以下となるようにモノマーの投入量を調整するとより好ましい。
本実施形態においては、このようにシリカ粒子表面にポリマーが形成されたスラリーを磁気ディスク用基板の研磨処理に用いる。研磨砥粒の表面から伸びるようにポリマーが形成されていても、研磨パッド等の研磨部材の押圧力により研磨砥粒が被研磨基板の表面に押しつけられることにより、磁気ディスク用基板の研磨処理を問題なく行うことができる。一方、研磨砥粒、粗大粒子および板状粒子の表面から伸びるようにポリマーが形成されていることで、ポリマーがクッションのような役割を果たすことにより、研磨処理後、磁気ディスク用基板の表面に研磨砥粒、粗大粒子および板状粒子が強く付着することを防ぐことができる。これにより、研磨後、およびその後の洗浄後の基板において、異物の付着量を少なくすることができる。
なお、上記の重合処理を行ったスラリーをそのまま用いて磁気ディスク用基板の研磨処理を行ってもよいが、以下の分離処理を行うことがより好ましい。
(分離処理)
分離処理は、重合処理で形成されたポリマーをスラリーから除去する処理である。
スラリーに添加したモノマーの重合が進むと、コロイダルシリカ、粗大粒子および板状粒子の表面から伸びたポリマー同士が絡み合うことにより、凝集物が形成されると考えられる。この凝集物をスラリーから分離して除去する。
ここで、粗大粒子および板状粒子は研磨砥粒よりも表面積が大きいため、より多くのシラノール基を表面に有する。例えば、研磨砥粒の平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子は、4倍以上の表面積を有する。また、板状粒子の扁平な部分の表面は、シラノール基の密度が高いため、さらに多くのシラノール基を有する。このような粗大粒子および板状粒子には、研磨砥粒よりも多くのポリマーが形成されるため、ポリマー同士が絡み合うことで、粗大粒子および板状粒子は研磨砥粒よりも凝集物と一体化しやすいと考えられる。このため、スラリー中の凝集物を除去することで、粗大粒子や板状粒子をスラリーから除去できると考えられる。一方、重合処理において全ての研磨砥粒にポリマーが形成されないようにモノマーおよび重合開始剤の投入濃度を調整することで、分離処理後のスラリーに研磨砥粒を残存させることができると考えられる。
例えば、粗大粒子や板状粒子の表面のシラノール基が研磨砥粒の表面のシラノール基の4倍以上であるとすると、研磨砥粒の1/4にポリマーが形成されるようにモノマーおよび重合開始剤の投入濃度を調整すれば、研磨砥粒の3/4にはポリマーが形成されない一方、研磨砥粒の4倍以上の表面積を有する粗大粒子や板状粒子には確実にポリマーを形成させることができる。その後、ポリマーおよびポリマーが形成された研磨砥粒、粗大粒子および板状粒子を凝集物として除去することで、粗大粒子や板状粒子をスラリーから除去する一方、研磨砥粒の3/4をスラリー中に残存させることができる。
凝集物をスラリーから分離して除去する方法として、重合処理後のスラリーを濾過する方法がある。濾過に用いるフィルタとして、例えば、開口径が1.0μm以下である多孔性のメンブレンフィルタを用いることができる。ここで、開口径とは、開口に内接する円の直径である。例えば走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)によりフィルタの開口の形状を計測し、開口の開口径を求めることができる。
メンブレンフィルタの材料として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂等を用いることができる。フッ素樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)等を用いることができる。この中でも、撥水性の高いフッ素樹脂を用いることが好ましい。撥水性の高いフッ素樹脂を用いることで、フィルタとスラリーとの接触面積が低減されるため、フィルタの目詰まりをさらに低減することができる。
濾過方法として、重力による自然濾過、減圧濾過(吸引濾過)、加圧濾過、遠心濾過、クロスフロー方式の限外濾過等の任意の方法を用いることができる。
また、メンブレンフィルタの代わりに、精密濾過膜を用いてもよいし、不織布状の濾過膜を用いてもよい。また、膜状の濾過材を圧縮成型して板状の濾過板としてもよい。また、中空糸膜形状、スパイラル膜形状、チューブラー膜形状としてもよく、濾過方法に応じて適宜選択することができる。
上記の板状粒子は、磁気ディスク用基板の主表面に付着すると、その後の洗浄処理等で除去することは難しくなる。特に、板状粒子の主成分はシリカであるため、同じシリカを主成分とするアルミノシリケートガラスからなるガラス基板との親和性が高い。このため、アルミノシリケートガラスからなるガラス基板に対する板状粒子の付着力は、表面にNiP膜が形成されたアルミニウム合金基板に対する付着力よりも大きく、板状粒子はアルミノシリケートガラスからなるガラス基板の表面に残存しやすい。
本実施形態では、あらかじめ板状粒子の表面から伸びるようにポリマーを形成させておくことで、板状粒子の表面がガラス基板の主表面に付着することを防ぐことができる。このため、本実施形態は、コロイダルシリカを用いてアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を研磨する場合に好適である。
また、磁気ディスク用基板の主表面の表面粗さが小さいと、板状粒子が主表面により密着しやすくなる。特に、研磨後の表面粗さRaが0.2nm以下の場合、密着が顕著となる。したがって、研磨後の主表面のRaが0.2nm以下となるような研磨処理を行う場合に本実施形態は特に好ましい。
ここで、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について説明する。
(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法)
先ず、磁気ディスク用ガラスブランクをプレス成形により作製する。磁気ディスク用ガラスブランク(以降、単にガラスブランクという)は、一対の主表面を有する円板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材であって、中心孔がくり抜かれる前の形態である。
次に、作製されたガラスブランクの中心部分に孔をあけ、リング形状(円環状)のガラス基板を作製する。次に、穴をあけたガラス基板に対して形状加工を行う。次に、形状加工されたガラス基板に対して端面研磨を行う。次に、端面研磨の行われたガラス基板に、固定砥粒による研削を行う。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う。次に、ガラス基板に対して必要に応じて化学強化を行う。その後、ガラス基板に対して第2研磨(最終研磨)を行う。第2研磨後、洗浄処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
以下、各処理について、さらに説明する。
(a)プレス成形処理
溶融ガラス流の先端部を切断した溶融ガラスの塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対してコアドリル等を用いて円孔を形成することにより円形状の中央孔があいたガラス基板を得ることができる。
(c)形状加工処理
形状加工処理では、円孔形成後のガラス基板の端部に対する面取り加工を行う。
(d)端面研磨処理
端面研磨処理では、ガラス基板の内側端面及び外周側端面に対して、ブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の粒子を遊離砥粒として含む砥粒スラリーが用いられる。
(e)研削処理
固定砥粒による研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクから生成されたガラス基板の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。
(f)第1研磨処理
第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
第1研磨処理では、両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用い、遊離砥粒を含んだ研磨スラリーを両面研磨装置に与えながらガラス基板が研磨される。遊離砥粒として、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒など(粒子サイズ:直径1〜2μm程度)が用いられる。両面研磨装置も、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に研磨液を供給しながら、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動させることで、ガラス基板と研磨パッドとが相対的に移動し、ガラス基板の両主表面が研磨される。
(g)化学強化処理
化学強化処理では、ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板を化学強化する。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合熔融液等を用いることができる。
(h)第2研磨(最終研磨)処理
第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。第2研磨による取り代は、例えば1μm程度である。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。
第2研磨処理では、上述した重合処理、および必要に応じて分離処理を行った、コロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が用いられる。
第2研磨処理を実施することで、主表面の粗さ(Ra)を0.15nm以下かつ主表面のマイクロウェービネスを0.1nm以下とすることができる。
(i)洗浄処理
第2研磨処理の後、ガラス基板は、アルカリ洗浄液を用いてガラス基板の表面が洗浄され、磁性層が形成される前の磁気ディスク用ガラス基板となる。
このとき、洗浄処理では、洗浄処理前後のガラス基板の表面粗さRaの差が0.05nm以下にするアルカリ洗浄液を用いることが好ましい。ガラス基板に付着する板状粒子は、除去し難いため、従来、洗浄力の高いアルカリ洗浄液を従来用いていた。このため、洗浄力の強いアルカリ洗浄液は、板状粒子のないガラス基板の主表面に作用して主表面を荒らし易い。しかし、本実施形態では、上述した重合処理を施したシリカ砥粒を用いて研磨処理を行うので、ガラス基板には板状粒子は付着しない。このため、本実施形態では、従来に比べて洗浄力の弱いアルカリ洗浄液、すなわち、洗浄処理前後のガラス基板の表面粗さRaの差を0.05nm以下にするアルカリ洗浄液を用いることができる。なお、Raは、JIS B0601に規定される表面粗さである。この表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を256×256ピクセルの解像度で測定したデータに基づいて得られるものである。
また、洗浄処理は、ガラス基板を洗浄液に浸すあるいは接触させる非スクラブ洗浄であることが、ガラス基板に傷を作らない点で好ましい。従来の洗浄処理では、ガラス基板に強固に付着した板状粒子を除去するために、ブラシや洗浄パッドでガラス基板を擦って、板状粒子を除去するスクラブ洗浄を行なっていた。しかし、このスクラブ洗浄では、ガラス基板の主表面に傷を付け易い。本実施形態では、上述した除去処理を施したシリカ砥粒を含んだスラリーを用いて研磨するので、ガラス基板には板状粒子が付着しない。このため、従来のようにスクラブ洗浄をしなくてもよい。このため、本実施形態では、ガラス基板を洗浄液に浸すあるいは接触させる非スクラブ洗浄をすることにより、不要な傷をガラス基板の主表面に付けることがなくなる。
なお、第2研磨処理後の洗浄処理において、最終研磨処理後のガラス基板に付着したポリマーを洗浄する処理を行ってもよい。具体的には、第2研磨処理後のガラス基板をオゾン雰囲気下におくことでポリマーを灰化させることができる。また、空気中で第2研磨処理後のガラス基板に紫外線を照射することにより発生するオゾンによりポリマーを灰化させてもよい。ポリマーが灰化では完全に除去されない場合は、ポリマーを溶解する有機溶媒やアニオン界面活性剤を含む洗浄剤を用いてガラス基板を洗浄することでポリマーを除去してもよい。
第2研磨処理後のガラス基板にポリマーが残存しない場合や、ポリマーが残存してもガラス基板の使用に問題がない場合は、ポリマーを除去する洗浄工程を省略することができる。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
〔実施例1〕
(コロイダルシリカの作成)
ケイ砂と炭酸ナトリウムとを原料としてイオン交換法によりシリカ含有量40wt%のコロイダルシリカを得た。
(重合処理)
上記のコロイダルシリカに対し、モノマーとしてN−イソプロピルアクリルアミドを0.25wt%、重合開始剤としてペルオキソ2硫酸カリウムを0.2wt%、重合助剤として、N,N,N‘,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.02wt%、添加した。その後、30℃で24時間スラリーを撹拌し、モノマーを重合させ、ポリマーを生成させた。
(ガラス基板の研磨処理)
次に、重合処理後のスラリーを研磨液として用いて、ガラス基板の最終研磨処理を行った。ガラス基板の主表面とポリウレタン製の研磨パッドとの間に、上記の研磨液を供給しながら、研磨パッドをガラス基板の主表面に対して相対移動させることでガラス基板の主表面を研磨した。
〔実施例2〕
モノマーとしてN,N−ジメチルアクリルアミドを0.25wt%添加した以外は実施例1と同様に重合処理を行った。得られたスラリーを用いて実施例1と同様にガラス基板の最終研磨処理を行った。
〔比較例1〕
実施例1と同様に、ケイ砂と炭酸ナトリウムとを原料としてイオン交換法によりコロイダルシリカを得た。その後、重合処理および分離処理を行わずに、得られたコロイダルシリカを用いて実施例1と同様にガラス基板の最終研磨処理を行った。
〔実施例3〕
(分離処理)
実施例1の重合処理後のスラリーを、開口径が1.0μmのメンブレンフィルタにより濾過した。なお、目詰まりは発生しなかった。
〔実施例4〕
実施例2の重合処理後のスラリーを、開口径が1.0μmのメンブレンフィルタにより濾過した。なお、目詰まりは発生しなかった。
〔比較例2〕
比較例1のスラリーを、開口径が1.0μmのメンブレンフィルタにより濾過した。なお、目詰まりは発生しなかった。
〔ガラス基板主表面の板状粒子の検出〕
研磨処理後、洗浄、乾燥したガラス基板の主表面について、レーザー式の表面検査装置とSEM、AFMを用いて欠陥及び異物の検出と同定を行った。同じ条件で製造したガラス基板100枚について、1枚あたり5点の欠陥及び異物を検出、同定し、板状粒子が検出されたガラス基板1枚当たり1ポイントとし、総ポイント数が0の場合をA、1〜2ポイントの場合をB、3〜10ポイントの場合をC、11ポイント以上の場合をDと評価した。評価がA、B又はCであれば研磨液として使用可能である。
結果を表1に示す。
Figure 2016181313
比較例1、2のガラス基板については板状粒子が多数検出されたが、実施例1、2のガラス基板については板状粒子の数が引例1のガラス基板に比べて大幅に減少し、僅かであった。実施例1、2では、重合処理によってスラリー中の板状粒子にポリマーが形成されたため、ガラス基板への板状粒子の付着力がポリマーによって低減されたものと考えられる。
実施例3、4のガラス基板では、板状粒子は1つも検出されなかった。これは、分離処理によって板状粒子が除去されたためと考えられる。そこで、比較例2、実施例3および実施例4について、以下に説明するようにスラリー中の異物を評価した。
〔スラリー中の異物の評価〕
比較例2、実施例3および実施例4について、分離処理の後、濾液を開口径100nmの精密濾過膜によりさらに濾過した。その後、SEMを用いて精密濾過膜上の残渣の検出と同定を行った。
その結果、実施例3および実施例4の精密濾過膜からは板状粒子が検出されなかった。一方、比較例2の精密濾過膜からは板状粒子が検出された。実施例3、4では、分離処理(濾過処理)によってスラリー中の板状粒子が分離(除去)されていたため、精密濾過膜に板状粒子が残存しなかったものと考えられる。したがって、重合処理に加えて分離処理を行うことで、スラリーから確実に板状粒子を除去できると考えられる。
すなわち、実施例3および実施例4では、板状粒子の表面からポリマーが成長することにより、または、板状粒子と小さなシリカ粒子とがポリマーによってつながって凝集物となったことにより、見かけ上の「かさ」が増して効果的な分離除去が可能となったと考えられる。
以上、本発明の磁気ディスク用基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。

Claims (10)

  1. 一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、前記研磨パッドと前記基板の間にシリカ粒子を研磨砥粒として含むスラリーを供給して、前記研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、前記基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、
    前記研磨処理を行う前のスラリーに水溶性のモノマーを添加し、前記モノマーを重合させて前記研磨処理を行う前のスラリー中にポリマーを生成させる重合処理を行った後、前記ポリマーを含むスラリーを用いて前記研磨処理を行うことを特徴とする磁気ディスク用基板の製造方法。
  2. 前記研磨処理を行う前のスラリーは、前記研磨砥粒の表面よりもシラノール基の密度が高い表面を有する粒子を含む、請求項1に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  3. 前記重合処理後のスラリーから、前記ポリマーを分離する分離処理を行い、
    前記分離処理後のスラリーを用いて前記研磨処理を行う、請求項1又は2に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  4. 前記重合処理後のスラリーを濾過することにより、前記ポリマーを除去し、
    濾過後のスラリーを用いて前記研磨処理を行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  5. 前記モノマーはアミド基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  6. 前記モノマーはアクリロイル基を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  7. 前記モノマーはN,N−ジメチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミドから選択される、請求項6に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  8. 前記研磨処理後の磁気ディスク用基板の表面粗さRaは0.2nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  9. 前記重合処理では、前記研磨処理を行う前のスラリー中の粒子同士をポリマーにより接続することで凝集物を形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気ディスク用基板の製造方法。
  10. 一対の研磨パッドで円盤状の基板を挟み、前記研磨パッドと前記基板の間にシリカ粒子を研磨砥粒として含むスラリーを供給して、前記研磨パッドと前記基板を相対的に移動させることにより、前記基板の主表面を研磨する研磨処理を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、
    前記研磨処理を行う前のスラリーに水溶性のモノマーを添加して重合させることにより、前記シリカ粒子の表面にポリマーを生成させる重合処理を行った後、前記重合処理後のスラリーを用いて前記研磨処理を行うことを特徴とする磁気ディスク用基板の製造方法。
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