JP2016174642A - ウェアラブル型心電信号生成装置、心電信号生成方法、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】使い勝手がよく、精確に心電測定できるウェアラブル型心電信号生成装置、心電信号生成方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】ウェアラブル型心電信号生成装置100は、メガネ型フレーム形状をなし、鼻パッドに設けられた参照電極112とモダンに設けられた2つの測定電極111a,111bとを備えたウェアラブル部材110と、参照電極112および2つの測定電極111a,111bそれぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号から心電信号を取得する信号処理部120と、を備える。信号処理部120は、アナログの生体電気信号をA/Dコンバータでデジタル変換したデータを、FIFOメモリを用いてデータ出力部で移動平均を算出して、算出した移動平均を心電信号生成部でアナログ変換することで、商用電源ノイズを除去して心電信号を取得する。
【選択図】図1
【解決手段】ウェアラブル型心電信号生成装置100は、メガネ型フレーム形状をなし、鼻パッドに設けられた参照電極112とモダンに設けられた2つの測定電極111a,111bとを備えたウェアラブル部材110と、参照電極112および2つの測定電極111a,111bそれぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号から心電信号を取得する信号処理部120と、を備える。信号処理部120は、アナログの生体電気信号をA/Dコンバータでデジタル変換したデータを、FIFOメモリを用いてデータ出力部で移動平均を算出して、算出した移動平均を心電信号生成部でアナログ変換することで、商用電源ノイズを除去して心電信号を取得する。
【選択図】図1
Description
本発明は、精確に心電測定できるウェアラブル型心電信号生成装置、心電信号生成方法、およびプログラムに関する。
心拍測定は単位時間当たりの脈拍数だけでなく、運動負荷の解析、心拍揺らぎからの呼吸曲線、ストレス解析等スポーツ科学や健康管理の為に非常に有用な測定項目である。そのため、心拍測定は、心疾患の診断や検査のために安静時に行うだけでなく、ジョギングや歩行等の運動時に行うのも有用である。
一般に、運動中の心拍計測は、心電計の電極を生体に装着することによって計測された心電波形のピーク、例えばP波やR波等を用いて心拍数を検出する心電図法や、指や耳たぶ等の末梢血管に赤外線を照射し、その反射光が血流および吸光特性によって周期的に変動する光学的な変化から心拍とほぼ等価な脈拍を検出する光電脈波法等が一般的である。
心拍計測を簡便に行う装置として、スポーツ心電誘導法における測定電極を着衣に埋め込み、着るだけで心拍測定ができる「hitoe」(登録商標)(非特許文献1)、頭部および顔面に装着して心拍測定ができるヘッドギア装置(特許文献1参照)、耳介に装着して心拍測定ができる装置(特許文献2)、また首に装着して心拍測定ができる装置(特許文献3)等が提案されている。
着るだけで生体情報の連続計測を可能とする機能素材「hitoe」、インターネット[URL:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2014/01/30_00.html]、<平成27年3月5日検索>
しかしながら、頭部および顔面、耳介、首に装着する装置は、装着が容易で誰にでも使用しやすいが、心拍測定に用いる頭部、顔面、耳、および首に流れている電流は小さいために、周囲の商用電源で動作する機器から発生する商用電源ノイズや装着者の体動に影響を受けてしまい、病院内等の商用電源ノイズがキャンセルされている環境以外や運動中での心拍測定は困難であるという問題点があった。一方、「hitoe」は、体表面に電極を装着するため、頭部および顔面、耳介、首に装着する装置より精確に測定することができるが、人体に強く密着させる必要があるために拘束感や圧迫感といった不快感が伴ったり、着衣であるので洗濯が必要であるが耐久性の観点から洗濯回数が限られたりするために、使い勝手に難があるといった問題点があった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、商用電源ノイズや体動による影響を受けることなく、使い勝手がよく、精確に心電測定できるウェアラブル型心電信号生成装置、心電信号生成方法、およびプログラムに関する。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
(1)本発明は、メガネ型フレーム形状をなすウェアラブル部材(例えば、図1のウェアラブル部材110に相当)と信号処理部(例えば、図1、図2の信号処理部120に相当)とからなり、前記ウェアラブル部材が、前記メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極(例えば、図1の参照電極112に相当)と、前記メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極(例えば、図1の測定電極111a,111bに相当)と、を備え、前記信号処理部が前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータ(例えば、図2のA/Dコンバータ122に相当)と、該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新されるファーストインファーストアウトメモリ(例えば、図2のファーストインファーストアウトメモリ123に相当)と、該ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力するデータ出力手段(例えば、図2のデータ出力部124に相当)と、前記データ出力手段から出力された前記移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する心電信号生成手段(例えば、図2の心電信号生成部125に相当)と、を備えたことを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(2)本発明は、メガネ型フレーム形状をなすウェアラブル部材(例えば、図9のウェアラブル部材110に相当)とイヤホン(例えば、図9のイヤホン210に相当)と信号処理部(例えば、図9の信号処理部120に相当)とからなり、前記ウェアラブル部材が、前記メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極(例えば、図9の参照電極112に相当)を備え、前記イヤホンが、それぞれのイヤホンと外耳との接触部位に測定電極(例えば、図9の測定電極111a,111bに相当)を備え、前記信号処理部が前記参照電極および前記測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータ(例えば、図2のA/Dコンバータ122に相当)と、該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新されるファーストインファーストアウトメモリ(例えば、図2のファーストインファーストアウトメモリ123に相当)と、該ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力するデータ出力手段(例えば、図2のデータ出力部124に相当)と、前記データ出力手段から出力された前記移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する心電信号生成手段(例えば、図2の心電信号生成部125に相当)と、を備えたことを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(3)本発明は、(2)のウェアラブル型心電信号生成装置において、前記イヤホンが、インナーイヤー型またはカナル型であることを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(4)本発明は、(1)から(3)のウェアラブル型心電信号生成装置おいて、前記参照電極および前記測定電極が、導電性樹脂により形成されていることを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(5)本発明は、(1)から(4)のウェアラブル型心電信号生成装置おいて、前記A/Dコンバータの前段に、前記アナログの生体電気信号を増幅するための増幅器を備えたことを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(6)本発明は、(1)から(5)のウェアラブル型心電信号生成装置において、前記データ出力手段が、前記ファーストインファーストアウトメモリの更新前および更新後の差分デジタルデータと前回出力した移動平均デジタルデータから前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを算出することを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置を提案している。
(7)本発明は、メガネ型フレーム形状をなし、該メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極と、該メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極とを備えるウェアラブル部材、および信号処理部を備えるウェアラブル型心電信号生成装置における心電信号生成方法であって、前記信号処理部は、A/Dコンバータ、ファーストインファーストアウトメモリ、データ出力手段、および心電信号生成手段を備え、前記A/Dコンバータが、前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換する第1のステップ(例えば、図8のステップS1,S3に相当)と、ファーストインファーストアウトメモリが、前記第1のステップで該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新される第2のステップ(例えば、図8のステップS4に相当)と、前記データ出力手段が、前記第2のステップで前記ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し前記移動平均デジタルデータを出力する第3のステップ(例えば、図8のステップS5に相当)と、前記心電信号生成手段が、前記第3のステップで出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する第4のステップ(例えば、図8のステップS6に相当)と、を含むことを特徴とする心電信号生成方法を提案している。
(8)本発明は、メガネ型フレーム形状をなし、該メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極と、該メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極とを備えるウェアラブル部材、および信号処理部を備えるウェアラブル型心電信号生成装置における心電信号生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記信号処理部は、A/Dコンバータ、ファーストインファーストアウトメモリ、データ出力手段、および心電信号生成手段を備え、前記A/Dコンバータが、前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換する第1のステップ(例えば、図8のステップS1,S3に相当)と、ファーストインファーストアウトメモリが、前記第1のステップで該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新される第2のステップ(例えば、図8のステップS4に相当)と、前記データ出力手段が、前記第2のステップで前記ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し前記移動平均デジタルデータを出力する第3のステップ(例えば、図8のステップS5に相当)と、前記心電信号生成手段が、前記第3のステップで出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する第4のステップ(例えば、図8のステップS6に相当)と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムを提案している。
本発明によれば、商用電源ノイズや体動による影響を受けることなく、使い勝手がよいウェアラブル型装置で、精確に心電測定できるという効果がある。
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るウェアラブル型心電信号生成装置100を示す図である。図1に示すようにウェアラブル型心電信号生成装置100は、ウェアラブル部材110および信号処理部120とから構成される。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るウェアラブル型心電信号生成装置100を示す図である。図1に示すようにウェアラブル型心電信号生成装置100は、ウェアラブル部材110および信号処理部120とから構成される。
ウェアラブル部材110は、本実施形態においてメガネ型フレーム形状であって、鼻パッドに参照電極112、左右の両モダン部分に測定電極111a,111bが設けられている。また、図示していないが参照電極112と測定電極111a,111bと信号処理部120とは、電気的に接続されている。参照電極112はユーザの鼻に、測定電極111a,111bはそれぞれ左右の耳介の付け根付近と接触するように設けられている。なお、図1において参照電極112は装着時に右に位置する鼻パッドに設けられているが、装着時に左に位置する鼻パッドに設けられてもよいし、左右両方の鼻パッドに備えられていてもよい。
参照電極112および測定電極111a,111bは、心臓の拍動に伴って生じる微弱な電位を検出する電極であって、例えば、導電性樹脂により形成される。測定電極111a,111bは、一対の電極であって、それぞれの電位は参照電極112で検出された電位を基準電位として検出される。
信号処理部120は、測定電極111a,111bそれぞれで取得された電位を受信し、受信した電位に基づいて生成した心電信号を出力する。図1において、信号処理部120は、ウェアラブル部材110のテンプル部分に備えられているが、リム等の他の部位に備えられてもよい。また、信号処理部120は、ウェアラブル部材110から独立していて、別機器であってもよいし、携帯電話端末や腕時計といった他の装置に設けられていてもよい。なお、信号処理部120がウェアラブル部材110から独立している場合であっても、信号処理部120とウェアラブル部材110の参照電極112および測定電極111a,111bとは電気的に接続されている。
信号処理部120は、図2に示すように、アンプ121、A/Dコンバータ122、ファーストインファーストアウト(FIFO)メモリ123、データ出力部124、および心電信号生成部125とから構成される。
アンプ121は、測定電極111a,111bそれぞれで取得された電位からなるアナログの生体電気信号(以下、アナログ生体電気信号という)を増幅し、出力する。なお、信号を増幅する必要がない場合には、アンプ121は不要である。本実施形態では、アンプ増幅率は100倍程度に留めるのが望ましい。これは、胸部誘導や標準肢誘導による心電測定に比べ心電信号の振幅が小さく、また皮下に低導電率の頭蓋骨が存在することから、測定電極111a,111bそれぞれで取得された電位には商用電源ノイズが重畳しており、アンプ121から出力する生体電気信号が商用電源ノイズでA/Dコンバータ122の入力レンジからはみ出さないようにするためである。
例えば、アンプ121は、差動増幅回路を初段とする初段差動増幅器で増幅し、その後、交流成分のみ通して直流成分をカットするDCサーボによって心電信号に重畳している基線動揺を除去した後に更に増幅する。ここで、基線動揺とは、体の動きや呼吸により発生する低周波数のノイズをいう。また、心電信号には、筋肉を動かしたときに発生する比較的高周波数の筋電ノイズや商用電源ノイズも含まれている。そのため、アンプ121に、カットオフ周波数100Hz〜120Hz程度のローパスフィルタ(LPF)を備えることにより、筋電ノイズを除去することができる。商用電源ノイズについては、後述するデータ出力部124で除去する。なお、増幅、基線動揺の除去、筋電ノイズの除去には、従来技術を用いる。
A/Dコンバータ122は、アンプ121から出力されたアナログ生体電気信号を所定のサンプリング周波数でデジタルデータに変換する。デジタルデータに変換されたアナログ生体電気信号は、以下、デジタル生体電気信号という。サンプリング周波数は、アナログ生体電気信号から除去対象の商用電源ノイズの周波数の整数倍であって、一般の地域ではラジオ、TV等の商用の電波がなくこれらの影響を受けにくい極極超長波〜極超長波と呼ばれる帯域である低速が望ましい。また、標本化理論によりサンプリング周波数の半分が帯域であるため、低速なサンプリング周波数はローパスフィルタとして作動して、デジタルデータへの変換時に同時に不要な高域周波数を除去することができる。
本実施形態においては、商用電源ノイズの周波数を関東等の50Hz、16ビット分解能とすると、サンプリング周波数は800Hzとなる。A/Dコンバータ122で変換されたデジタル生体電気信号は商用電源ノイズが重畳しているので、16サンプル周期で1周期が重畳している。なお、商用電源ノイズが60Hzの場合には、13サンプル周期で1周期が重畳している。
商用電源ノイズは周期性ノイズであって、周期性ノイズは周期の整数倍のサンプルを加算すると正負足しあわされてゼロまたは一定の値となる。そこで、商用電源ノイズ周期数の整数倍の生体電気信号を加算することで、生体電気信号から商用電源ノイズの影響をキャンセルすることができる。この演算はFIFOメモリ123を用いれば、容易にリアルタイムに実行することができる。
FIFOメモリ123は、A/Dコンバータ122でデジタルデータに変換された1周期分のデジタル生体電気信号を格納する。FIFOメモリ123は、商用電源ノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、整数倍の数に分割された1周期分のデジタル生体電気信号を順に格納して更新される。本実施形態においては、商用電源ノイズの周波数が50Hz、サンプリング周波数が800Hzであるので、16ビットのクロック信号毎に、1/16周期の波形に対応するデジタル生体電気信号が順に、FIFOメモリ123に格納される。
ここで、FIFOメモリ123は、所定個数分のデータを一定時間幅分だけ蓄積をおこない、最初に到着したデータを一定時間経過後に取り出していくメモリであって、新しいデータが格納されると古いデータは出力されると同時に削除される。図3にFIFOメモリの仕組みと格納されるデータのイメージを示す。
本説明において、アナログ生体電気信号は(a)に示すようにA/Dコンバータ122において8ビット分解能でデジタル生体電気信号に変換され、d1〜d8のデジタル生体電気信号が出力されるとする。図3(b)に示すようにデジタル生体電気信号の1周期分の8個のデータがFIFOメモリ123には格納され、数字が小さいものから順に格納されている。FIFOメモリ123に、新たなデータとしてd9が入力されると、もっとも古いd1が出力されて、d1に変わってd9が格納され、FIFOメモリ123は更新される。
データ出力部124は、FIFOメモリ123が更新される毎に、FIFOメモリ123に格納されている1周期分のデジタル生体電気信号を移動平均した移動平均デジタルデータを出力する。
ここで、まず、加算の方法について説明する。FIFOメモリ123に格納されるデジタル生体電気信号データをdnで表し、nは0以上の整数であってFIFO123メモリに入力された順を示すとする。FIFOメモリ123に1周期分のデジタル生体電気信号が格納されると、データ出力部124は、FIFOメモリ123に格納されているデータd0〜d15を加算した加算結果sum0を算出し保存する。
そして、FIFOメモリ123に新たなデジタルデータd16が入力されると、FIFOメモリ123はd0を出力して、d16を格納して更新される。FIFOメモリ123が更新されると、データ出力部124は、更新されたFIFOメモリ123に格納されているd1〜d16を加算した加算結果sum1を算出し保存する。このように、新たなデジタルデータがFIFOメモリ123に入力されて、更新される度に、データ出力部124は、加算結果sumx(x=0,1,…)を算出し保存する。
しかしながら、FIFOメモリ123が更新される度に、FIFOメモリ123に格納されているデジタル生体電気信号を加算するのは演算負荷がかかってしまう。そこで、FIFOメモリ123の更新前および更新後の差分デジタル生体電気信号と、前回のFIFOメモリ123の加算結果とから、FIFOメモリ123更新後の加算結果を算出するのが望ましい。
図4を用いて具体的な処理について説明する。なお、本説明において、FIFOメモリ123は8個のデジタル生体電気信号を格納し、すでに、d0〜d7が格納されているとする。このとき、FIFOメモリ123にd0〜d7が格納されているときには、加算結果sum130にはd0〜d7を累積加算した値sum0が入っている。A/Dコンバータ122から新たなd8が入力されると、まず、演算器141で、前回の加算結果sum0と入力されたd8とを加算する。次に、FIFOメモリ123にd8が入力されると、FIFOメモリ123はd0を出力し、d8を格納し、更新される。そして、演算器142で、演算器141から出力されたsum0+d8からFIFOメモリ123から出力されたd0を減算して、FIFOメモリ更新後の加算結果sum1を算出する。
そして、データ出力部124は、保存したデジタル生体電気信号の一周期分の加算結果、本実施形態においては16個の加算結果の平均を、移動平均デジタルデータとして出力する。移動平均は、直近のn個のデータを平均し、その平均値を代表値として用いるフィルタであり、一種のローパスフィルタである。本実施形態では、サンプリング周波数800Hzにおける16点の移動平均を用いており、カットオフ周波数は22Hzとなり、22HZ以上の高周波成分を除去することができる。
ところで、A/Dコンバータ122でアナログ生体電気信号をデジタル信号に変換する際、サンプリング周波数の半分の周波数であるナイキスト周波数を越える周波数をもつアナログ信号がA/Dコンバータ122に入力された場合に、変換されたデジタル生体電気信号には折り返し雑音という別の高域ノイズ混入してしまう。折り返し雑音は、周波数軸上でナイキスト周波数を対称軸にして折り返した位置に信号が現われる。すなわち、本実施形態において、サンプリング周波数は800Hzであるので、折り返し雑音は400Hz以上の帯域に信号が表われる。
上述したように、本実施形態において、カットオフ周波数は22Hzであるので、400Hz以上の帯域に表われる折り返し雑音も十分にカットすることができる。なお、折り返し雑音の400Hz以上の帯域と商用電源ノイズの周波数(50Hz/60Hz)とは大きくかけ離れていて、商用電源ノイズは正弦波であるので、相互に影響していることはなく、商用電源ノイズは移動平均により除去することができ、カットオフ周波数により折り返し雑音は除去できる。
心電図の基本波形はP波、QRS波、T波、U波の4つの波で構成されている。その内、ピークが最も大きく鋭いQRS波は、0.6〜0.01秒程度、周波数は10〜16Hz程度であるので、数十Hzの帯域があれば十分に心電波形を判別可能である。よって、カットオフ周波数は22Hzであるので、QRS波に必要な周波数帯10〜16Hzは通過させることができ、十分に心電波形を判別可能である。
心電信号生成部125は、データ出力部124から出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する。商用電源ノイズ除去を行っていない心電図を図5に、データ出力部124で商用電源ノイズ除去する処理を行った心電図を図6に示す。図5の心電信号では見えにくかったQRS波が、図6に示す商用電源ノイズが除去された心電信号ではQRS波がはっきりと見えているのがわかる。
本実施形態において、上述したA/Dコンバータ122は、ΣΔ変調方式を用いたΣΔ型であるのが望ましい。他の変調方式を用いた型、例えば、フラッシュ型や逐次比較型である場合には、量子化誤差を持つためにデータ出力部124でノイズ除去を行ってもノイズが残留する事があるためである。図7に、A/Dコンバータ122が逐次比較型12ビットであって、データ出力部124にて16点移動平均を施して商用電源ノイズの除去処理を行った場合の心電図を示す。移動平均処理を実施すると、量子化ノイズはn個の加算で量子化ノイズは1/√nになるのでノイズが残留してしまう。そのため、図7に示すように、残留してしまったノイズによるひげ状の細かなスパイクが心電図に表われてしまう。
図8は、本実施形態に係るウェアラブル型心電信号生成装置100における心電信号生成処理フローを示す図である。
まず、ステップS1において、測定電極111a,111bおよび参照電極112それぞれが電位を取得し、取得した電位をアンプ121に出力する。なお、アンプ121を備えない場合には、A/Dコンバータ122に送信する。
次に、ステップS2において、アンプ121は、測定電極111a,111bから取得した電位からなるアナログ生体電気信号を増幅し、A/Dコンバータ122に出力する。
次に、ステップS3において、A/Dコンバータ122は、ステップS2で増幅されたアナログ生体電気信号を、デジタル生体電気信号に変換する。
次に、ステップS4において、FIFOメモリ123は、ステップS3で変換されたデジタル生体電気信号の1周期分のデータを格納し、商用電源ノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、1周期分を整数倍に分割したデジタル生体電気信号を時系列に格納して更新する。
次に、ステップS5において、データ出力部124は、ステップS4でFIFOメモリ123が更新される毎に、FIFOメモリ123に格納されている1周期分のデジタル生体電気信号を移動平均した移動平均デジタルデータを出力する。
次に、ステップS6において、心電信号生成部125が、第5のステップで出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する。
以上、説明したように、本実施形態によれば、メガネ型フレーム形状であって、使い勝手がよいウェアラブル型装置を提供することができるとともに、心電信号に重畳している商用電源ノイズや体動に伴うノイズを効率的に除去することで、精確な心電測定できる。
<第2の実施形態>
図9を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、ウェアラブル型心電信号生成装置は、メガネ型フレーム形状、イヤホン、および信号処理部を備える。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同一の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
図9を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、ウェアラブル型心電信号生成装置は、メガネ型フレーム形状、イヤホン、および信号処理部を備える。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同一の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係るウェアラブル型心電信号生成装置200の機能構成を示す図である。図9に示すようにウェアラブル型心電信号生成装置200は、ウェアラブル部材110、イヤホン210、および信号処理部120とから構成される。
ウェアラブル部材110は、本実施形態においてメガネ型フレーム形状であって、鼻パッドに参照電極112が設けられている。参照電極112は、ユーザの鼻に接触するように設けられている。なお、図9において参照電極112は装着時に右に位置する鼻パッドに設けられているが、装着時に左に位置する鼻パッドに設けられてもよいし、左右両方の鼻パッドに備えられていてもよい。
イヤホン210は、外耳または外耳道に接触する形状であればよく、インナーイヤー型またはカナル型である。イヤホン210は、外耳または外耳道との接触部位に一対の測定電極111a,111bが設けられている。
以上、説明したように、本実施形態によれば、メガネ型フレーム形状とイヤホンとを組み合わせた、使い勝手がよいウェアラブル型装置を提供することができる。
なお、ウェアラブル型心電信号生成装置の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたウェアラブル型心電信号生成装置に読み込ませ、実行することによって本発明のウェアラブル型心電信号生成装置を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
100 ウェアラブル型心電信号生成装置
200 ウェアラブル型心電信号生成装置
110 ウェアラブル部材
111a 測定電極
111b 測定電極
112 参照電極
120 信号処理部
121 アンプ
122 A/Dコンバータ
123 FIFOメモリ
124 データ出力部
125 心電信号生成部
210 イヤホン
200 ウェアラブル型心電信号生成装置
110 ウェアラブル部材
111a 測定電極
111b 測定電極
112 参照電極
120 信号処理部
121 アンプ
122 A/Dコンバータ
123 FIFOメモリ
124 データ出力部
125 心電信号生成部
210 イヤホン
Claims (8)
- メガネ型フレーム形状をなすウェアラブル部材と信号処理部とからなり、
前記ウェアラブル部材が、
前記メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極と、
前記メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極と、
を備え、
前記信号処理部が、
前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータと、
該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新されるファーストインファーストアウトメモリと、
該ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力するデータ出力手段と、
前記データ出力手段から出力された前記移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する心電信号生成手段と、
を備えたことを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置。 - メガネ型フレーム形状をなすウェアラブル部材とイヤホンと信号処理部とからなり、
前記ウェアラブル部材が、
前記メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極を備え、
前記イヤホンが、
それぞれのイヤホンと外耳との接触部位に測定電極を備え、
前記信号処理部が、
前記参照電極および前記測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータと、
該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新されるファーストインファーストアウトメモリと、
該ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力するデータ出力手段と、
前記データ出力手段から出力された前記移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する心電信号生成手段と、
を備えたことを特徴とするウェアラブル型心電信号生成装置。 - 前記イヤホンが、インナーイヤー型またはカナル型であることを特徴とする請求項2に記載のウェアラブル型心電信号生成装置。
- 前記参照電極および前記測定電極が、導電性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のウェアラブル型心電信号生成装置。
- 前記A/Dコンバータの前段に、前記アナログの生体電気信号を増幅するための増幅器を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のウェアラブル型心電信号生成装置。
- 前記データ出力手段が、前記ファーストインファーストアウトメモリの更新前および更新後の差分デジタルデータと前回出力した移動平均デジタルデータから前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを算出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のウェアラブル型心電信号生成装置。
- メガネ型フレーム形状をなし、該メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極と、該メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極とを備えるウェアラブル部材、および信号処理部を備えるウェアラブル型心電信号生成装置における心電信号生成方法であって、
前記信号処理部は、A/Dコンバータ、ファーストインファーストアウトメモリ、データ出力手段、および心電信号生成手段を備え、
前記A/Dコンバータが、前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換する第1のステップと、
ファーストインファーストアウトメモリが、前記第1のステップで該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新される第2のステップと、
前記データ出力手段が、前記第2のステップで前記ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力する第3のステップと、
前記心電信号生成手段が、前記第3のステップで出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する第4のステップと、
を含むことを特徴とする心電信号生成方法。 - メガネ型フレーム形状をなし、該メガネ型フレームの鼻パッドに設けられた参照電極と、該メガネ型フレームのモダンに設けられた2つの測定電極とを備えるウェアラブル部材、および信号処理部を備えるウェアラブル型心電信号生成装置における心電信号生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記信号処理部は、A/Dコンバータ、ファーストインファーストアウトメモリ、データ出力手段、および心電信号生成手段を備え、
前記A/Dコンバータが、前記参照電極および前記2つの測定電極それぞれから取得した電位からなるアナログの生体電気信号をデジタルデータに変換する第1のステップと、
ファーストインファーストアウトメモリが、前記第1のステップで該デジタルデータに変換された前記生体電気信号の1周期分のデータを格納し、該生体電気信号から除去対象のノイズ周波数の整数倍のクロック信号毎に、該1周期分のデータを該整数倍の数に分割したデータを時系列に格納して更新される第2のステップと、
前記データ出力手段が、前記第2のステップで前記ファーストインファーストアウトメモリが更新される毎に、前記ファーストインファーストアウトメモリに格納されている前記1周期分のデータを移動平均し移動平均デジタルデータを出力する第3のステップと、
前記心電信号生成手段が、前記第3のステップで出力された移動平均デジタルデータをアナログデータに変換して心電信号を生成する第4のステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015055320A JP2016174642A (ja) | 2015-03-18 | 2015-03-18 | ウェアラブル型心電信号生成装置、心電信号生成方法、およびプログラム |
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