以下、本発明の貼付型生体センサを適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の貼付型生体センサ100を示す分解図である。図2は、図1のA-A矢視断面に対応する完成状態の断面を示す図である。貼付型生体センサ100は、主な構成要素として、感圧接着層110、基材層120、回路部130、基板135、プローブ140、固定テープ145、電子装置150、電池160、及びカバー170を含む。
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Z軸負方向側を下側又は下、Z軸正方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
本実施の形態では、一例として、被検体としての生体に接触させて生体情報の測定を行う貼付型生体センサ100について説明する。生体とは、人体及び人体以外の生物等をいい、これらの皮膚、頭皮又は額等に貼付される。貼付型生体センサ100は、一例として、貼付型生体センサ100の利用者が取得した生体信号の波形を表すデータを医療機関に渡して医師の診断の診断結果を取得し、取得した診断結果を利用者に提供する業者によって利用者に提供される。貼付型生体センサ100は、使い捨て型である。使い捨て型とは1度のみ利用し、再利用又は再生(一部の構成を新しいものに付け替えることで再利用すること)を行わないことをいう。以下、貼付型生体センサ100を構成する各部材について説明する。
以下では、被検体としての生体に接触する電極をプローブ140と称し、接合部の一例として固定テープ145を用いて説明する。プローブ140としての電極が一対設けられているのは、シングルチャンネルでの生体情報の測定を行うためである。シングルチャンネルとは、一対の(2つの)電極から1つの生体情報を取得するという意味である。
貼付型生体センサ100は、平面視で略楕円状の形状を有するシート状の部材である。貼付型生体センサ100は、生体の皮膚10に貼り付ける下面(-Z方向側の面)と反対の上面側は、カバー170によって覆われている。貼付型生体センサ100の下面は貼付面である。
回路部130と基板135は、基材層120の上面に実装されている。また、プローブ140は、感圧接着層110の下面112から表出するように感圧接着層110に埋め込まれる形で設けられている。下面112は、貼付型生体センサ100の貼付面である。
感圧接着層110は、平板状の接着層である。感圧接着層110は、長手方向がX軸方向であり、短手方向はY軸方向である。感圧接着層110は、基材層120によって支持されており、基材層120の-Z方向側の下面121に貼り付けられている。
感圧接着層110は、図2に示すように、上面111と、下面112とを有する。上面111及び下面112は平坦面である。感圧接着層110は、貼付型生体センサ100が生体と接触する層である。下面112は、感圧接着性を有するため、生体の皮膚10に貼り付けることができる。下面112は貼付型生体センサ100の下面であり、皮膚10等の生体表面に貼り付けることができる。
また、感圧接着層110は、貫通孔113を有する。貫通孔113は、基材層120の貫通孔123と平面視でのサイズ及び位置が等しく、貫通孔123と連通している。
感圧接着層110の材料としては、感圧接着性を有する材料であれば特に限定されず、生体適合性を有する材料等が挙げられる。感圧接着層110の材料として、アクリル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤等が挙げられる。好ましくは、アクリル系感圧接着剤が挙げられる。
アクリル系感圧接着剤は、アクリルポリマーを主成分として含有する。
アクリルポリマーは、感圧接着成分である。アクリルポリマーとしては、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含み、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーを任意成分として含むモノマー成分を重合したポリマーを用いることができる。主成分のモノマー成分における含有量は、70質量%~99質量%とし、任意成分のモノマー成分における含有量は、1質量%~30質量%とする。アクリルポリマーとしては、例えば、特開2003-342541号公報に記載の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー等を用いることができる。
アクリル系感圧接着剤は、好ましくは、カルボン酸エステルをさらに含有する。
アクリル系感圧接着剤に含まれるカルボン酸エステルは、アクリルポリマーの感圧接着力を低減して、感圧接着層110の感圧接着力を調整する感圧接着力調整剤である。カルボン酸エステルは、アクリルポリマーと相溶可能なカルボン酸エステルである。
具体的には、カルボン酸エステルは、一例としてトリ脂肪酸グリセリルである。
カルボン酸エステルの含有割合は、アクリルポリマー100質量部に対して、30質量部~100質量部であることが好ましく、50質量部~70質量部以下であることがより好ましい。
アクリル系感圧接着剤は、必要により、架橋剤を含有してもよい。架橋剤は、アクリルポリマーを架橋する架橋成分である。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、過酸化化合物、尿素化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、又はアミン化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。架橋剤としては、好ましくは、ポリイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)が挙げられる。
架橋剤の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、例えば、0.001質量部~10質量部が好ましく、0.01質量部~1質量部がより好ましい。
感圧接着層110は、優れた生体適合性を有することが好ましい。例えば、感圧接着層110を角質剥離試験した時に、角質剥離面積率は、0%~50%であることが好ましく、1%~15%であることがより好ましい。角質剥離面積率が0%~50%の範囲内であれば、感圧接着層110を皮膚10(図2参照)に貼着しても、皮膚10(図2参照)の負荷を抑制できる。なお、角質剥離試験は、特開2004-83425号公報に記載の方法によって、測定される。
感圧接着層110の透湿度は、300(g/m2/day)以上であることが好ましく、600(g/m2/day)以上であることがより好ましく、1000(g/m2/day)以上であることがさらに好ましい。感圧接着層110の透湿度が300(g/m2/day)以上であれば、感圧接着層110を生体の皮膚10(図2参照)に貼着しても、皮膚10(図2参照)の負荷を抑制できる。
感圧接着層110は、角質剥離試験の角質剥離面積率が50%以下であることと、透湿度が300(g/m2/day)以上であることとの少なくともいずれかの要件を満たすことで、感圧接着層110は生体適合性を有する。感圧接着層110の材料は、上記要件の両方の要件を満たすことがより好ましい。これにより、感圧接着層110はより安定して高い生体適合性を有する。
感圧接着層110の上面111と下面112との間の厚さは、10μm~300μmであることが好ましい。感圧接着層110の厚さが10μm~300μmであれば、貼付型生体センサ100の薄型化、特に、貼付型生体センサ100における電子装置150及び電池160以外の領域の薄型化が図れる。
基材層120は、感圧接着層110を支持する支持層であり、感圧接着層110は基材層120の下面121に接着されている。基材層120の上面側には回路部130と基板135が配置されている。
基材層120は、絶縁体製の平板状(シート状)の部材である。基材層120の平面視における形状は、感圧接着層110の平面視における形状と同一であり、平面視において位置を合わせて重ねられている。
基材層120は、下面121と上面122とを有する。下面121及び上面122は、平坦面である。下面121は、感圧接着層110の上面111に接触(感圧接着)している。基材層120は、適度な伸縮性、可撓性及び靱性を有する可撓性樹脂製であればよく、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びポリエステル樹脂系等の熱可塑性樹脂で作製すればよい。基材層120の厚さは、1μm~300μmであることが好ましく、5μm~100μmであることがより好ましく、10μm~50μmであることがさらに好ましい。
回路部130は、配線131、フレーム132、及び基板133を有する。回路部130は、詳しくは、フレーム132を介して電極と接続し、配線131を介して電子装置160と接続する。貼付型生体センサ100は、このような回路部130を2つ含む。配線131及びフレーム132は、基板133の上面に設けられており、一体的に形成されている。配線131は、フレーム132と電子装置150及び電池160とを接続する。
配線131及びフレーム132は、銅、ニッケル、金、又はこれらの合金等で作製することができる。配線131及びフレーム132の厚さは、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることがさらに好ましい。
2つの回路部130は、それぞれ、感圧接着層110及び基材層120の2つの貫通孔113及び123に対応して設けられている。配線131は、基板135の配線を介して、電子装置150と、電池160用の端子135Aとに接続されている。フレーム132は、基材層120の貫通孔123の開口よりも大きな矩形環状の導電部材である。
基板133は、平面視で配線131及びフレーム132と同様の形状を有する。基板133のうちフレーム132が設けられている部分は、基材層120の貫通孔123の開口よりも大きな矩形環状の形状を有する。フレーム132と、基板133のうちフレーム132が設けられている矩形環状の部分とは、基材層120の上面で貫通孔123を囲むように設けられている。基板133は、絶縁体製であればよく、例えばポリイミド製の基板又はフィルムを用いることができる。基材層120は、粘着性(タック性)を有するため、基板133は基材層120の上面に固定される。
基板135は、電子装置150及び電池160を実装する絶縁体製の基板であり、基材層120の上面122に設けられる。基板135は基材層のタック性(粘着性)によって固定される。基板135としては、一例としてポリイミド製の基板又はフィルムを用いることができる。基板135の上面には、配線と電池160用の端子135Aとが設けられている。基板135の配線は、電子装置150及び端子135Aに接続されるとともに、回路部130の配線131に接続される。
プローブ140は、被検体に接触する電極である。具体的には、プローブ140は、感圧接着層110が皮膚10に貼付されたときに、皮膚10に接触して、生体信号を検出する電極である。生体信号は、例えば、心電波形、脳波、脈拍等を表す電気信号であり、より具体的な例としては、アナログ心電データを表す信号である。生体信号は、2つのプローブ140で検出される電位差を表す。
プローブ140として用いられる電極は、後述するように少なくとも導電性高分子およびバインダー樹脂を含む導電性組成物を用いて作製される。また、電極は、導電性組成物を用いて得られたシート状部材を金型等でパンチングすることによって作製され、プローブとして用いられる。
プローブ140は、平面視で矩形状で感圧接着層110及び基材層120の貫通孔113及び123よりも大きく、マトリクス状に配置される孔部140Aを有する。プローブ140のX方向及びY方向における端(四方の端の部分)では、プローブ140の梯子状の辺が突出していてもよい。プローブ140として用いる電極は、所定のパターン形状を有していてもよい。所定の電極パターン形状として、メッシュ状、ストライプ状、貼付面から電極が複数個所表出する形状等が挙げられる。
固定テープ145は、本実施の形態の接合部の一例である。固定テープ145は、一例として矩形環状の銅テープである。固定テープ145は、下面に粘着剤が塗布されている。固定テープ145は、平面視で貫通孔113及び123の開口の外側で、プローブ140の四方を囲むようにフレーム132の上に設けられ、プローブ140をフレーム132に固定する。固定テープ145は、銅以外の金属テープであってもよい。
固定テープ145は、銅テープ等の金属層を有するテープ以外にも、非導電性の樹脂基材と粘着剤で構成される樹脂テープ等の非導電性テープとしてもよい。金属テープ等の導電性テープは、回路部130のフレーム132にプローブ140を接合(固定)するとともに、電気的に接続することができるため、好ましい。
プローブ140は、四方の端の部分がフレーム132の上に配置された状態で、四方の端の部分の上に被せられる矩形環状の固定テープ145によってフレーム132に固定される。固定テープ145は、プローブ140の孔部140A等の隙間を通じてフレーム132に接着される。
このように固定テープ145でプローブ140の四方の端の部分をフレーム132に固定した状態で、固定テープ145及びプローブ140の上に感圧接着層110A及び基材層120Aを重ね、感圧接着層110A及び基材層120Aを下方向に押圧すると、プローブ140は貫通孔113及び123の内壁に沿って押し込まれ、感圧接着層110Aがプローブ140の孔部140Aの内部にまで押し込まれる。
プローブ140は、四方の端の部分が固定テープ145によってフレーム132に固定された状態で、中央部が感圧接着層110の下面112と略面一になる位置まで押し下げられる。このため、プローブ140を生体の皮膚10(図2参照)に当てれば、感圧接着層110Aが皮膚10に接着され、プローブ140を皮膚10に密着させることができる。
プローブ140の厚さは、感圧接着層110の厚さより薄いことが好ましい。プローブ140の厚さは、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。
また、感圧接着層110Aの平面視で中央部を囲む周囲の部分(矩形環状の部分)は、固定テープ145の上に位置する。図2では感圧接着層110Aの上面は略平坦であるが、中央部が周囲の部分よりも下方に凹んでいてもよい。基材層120Aは、感圧接着層110Aの略平坦な上面の上に重ねられる。
このような感圧接着層110A及び基材層120Aは、それぞれ、感圧接着層110及び基材層120と同じ材質で作製されていてもよい。また、感圧接着層110Aは、感圧接着層110とは異なる材質で作製されていてもよい。また、基材層120Aは、基材層120とは異なる材質で作製されていてもよい。
なお、図2では各部の厚さを誇張しているが、実際には、感圧接着層110及び110Aの厚さは10μm~300μmであり、基材層120及び120Aの厚さは1μm~300μmである。また、配線131の厚さは0.1μm~100μmであり、基板133の厚さは数100μm程度であり、固定テープ145の厚さは10μm~300μmである。
また、図2に示すようにプローブ140とフレーム132が直接接触して電気的な接続が確保されている場合には、固定テープ145は、導電性を有しない樹脂製等のテープであってもよい。
また、図2では、固定テープ145は、プローブ140に加えてフレーム132及び基板133の側面を覆い、基材層120の上面にまで到達している。しかしながら、固定テープ145はプローブ140とフレーム132を接合できればよいため、基材層120の上面にまで到達していなくてもよく、基板133の側面を覆っていなくてもよく、フレーム132の側面を覆っていなくてもよい。
また、基板133と2つの基板135は一体化された1つの基板であってもよい。この場合は、1つの基板の表面に、配線131、2つのフレーム132、及び端子135Aが設けられ、電子装置150と電池160が実装される。
プローブ140として用いられる電極は、次のような導電性組成物を熱硬化して成形し作製することが好ましい。導電性組成物は、導電性高分子と、バインダー樹脂と、架橋剤及び可塑剤のうちの少なくとも何れか一方とを含む。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、又はポリフェニレンビニレン等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、ポリチオフェン化合物を用いることが好ましい。生体との接触インピーダンスがより低く、高い導電性を有する点から、ポリ3、4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4-スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSSを用いることがより好ましい。
導電性高分子の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.20質量部~20質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた導電性、強靱性及び柔軟性を付与できる。導電性高分子の含有量は、導電性組成物に対して、2.5質量部~15質量部であることがより好ましく、3.0質量部~12質量部であることがさらに好ましい。
バインダー樹脂としては、水溶性高分子又は水不溶性高分子等を用いることができる。バインダー樹脂としては、導電性組成物に含まれる他の成分との相溶性の観点から、水溶性高分子を用いることが好ましい。なお、水溶性高分子は、水には完全に溶けず、親水性を有する高分子(親水性高分子)を含む。
水溶性高分子としては、ヒドロキシル基含有高分子等を用いることができる。ヒドロキシル基含有高分子としては、アガロース等の糖類、ポリビニルアルコール(PVA)、変性ポリビニルアルコール、又はアクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの共重合体等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコールが好ましく、変性ポリビニルアルコールがより好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。なお、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開2016-166436号公報に記載されているジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール系樹脂(DA化PVA系樹脂)を用いることができる。
バインダー樹脂の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、5質量部~140質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた導電性、強靱性及び柔軟性を付与できる。バインダー樹脂の含有量は、導電性組成物に対して、10質量部~100質量部であることがより好ましく、20質量部~70質量部であることがさらに好ましい。
架橋剤及び可塑剤は、導電性組成物に強靱性及び柔軟性を付与する機能を有する。導電性組成物の成形体に柔軟性を付与することにより、伸縮性を有する電極が得られた。これにより、伸縮性を有するプローブ140を作製することができる。
なお、強靱性は、優れた強度及び伸度を両立する性質である。強靱性は、強度及び伸度のうち、一方が顕著に優れるが、他方が顕著に低い性質を含まず、強度及び伸度の両方のバランスに優れた性質を含む。
柔軟性は、導電性組成物の成形体(電極シート)を屈曲した後、屈曲部分に破断等の損傷の発生を抑制できる性質である。
架橋剤は、バインダー樹脂を架橋させる。架橋剤がバインダー樹脂に含まれることで、導電性組成物の強靱性を向上させることができる。架橋剤は、ヒドロキシル基との反応性を有することが好ましい。架橋剤がヒドロキシル基との反応性を有すれば、バインダー樹脂がヒドロキシル基含有ポリマーである場合、架橋剤はヒドロキシル基含有ポリマーのヒドロキシル基と反応できる。
架橋剤としては、ジルコニウム塩等のジルコニウム化合物;チタン塩等のチタン化合物;ホウ酸等のホウ化物;ブロックイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリオキサール等のジアルデヒド等のアルデヒド化合物;アルコキシル基含有化合物、メチロール基含有化合物等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。中でも、反応性及び安全性の点から、ジルコニウム化合物、イソシアネート化合物又はアルデヒド化合物が好ましい。
架橋剤の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.2質量部~80質量部であることが好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた強靱性及び柔軟性を付与できる。架橋剤の含有量は、1質量部~40質量部であることがより好ましく、3.0質量部~20質量部であることがより好ましい。
可塑剤は、導電性組成物の引張伸度及び柔軟性を向上させる。可塑剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、これらの重合体等のポリオール化合物N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、N-N'-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性化合物等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。これらの中でも、他の成分との相溶性の観点から、グリセリンが好ましい。
可塑剤の含有量は、導電性組成物100質量部に対して、0.2質量部~150質量部が好ましい。前記含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物に優れた強靱性及び柔軟性を付与できる。可塑剤の含有量は、導電性高分子100質量部に対して、1.0質量部~90質量部であることがより好ましく、10質量部~70質量部であることがさらに好ましい。
架橋剤及び可塑剤は、これらのうちの少なくとも一方が導電性組成物に含まれていればよい。架橋剤及び可塑剤の少なくとも一方が導電性組成物に含まれることで、導電性組成物の成形体は、強靱性及び柔軟性を向上させることができる。
導電性組成物に架橋剤は含まれるが可塑剤は含まない場合、導電性組成物の成形体は、強靱性、すなわち、引張強度及び引張伸度の両方をより向上させることができると共に、柔軟性を向上させることができる。
導電性組成物に可塑剤は含まれるが架橋剤は含まれない場合、導電性組成物の成形体の引張伸度を向上させることができるため、全体として導電性組成物の成形体は強靱性を向上させることができる。また、導電性組成物の成形体の柔軟性を向上させることができる。
架橋剤及び可塑剤の両方が導電性組成物に含まれていることが好ましい。架橋剤及び可塑剤の両方が導電性組成物に含まれることで、導電性組成物の成形体にはより一層優れた強靱性が付与される。
導電性組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、界面活性剤、軟化剤、安定剤、レベリング剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、膨張剤、増粘剤、着色剤、又は充てん剤等の公知の各種添加剤を適宜任意の割合で含むことができる。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
導電性組成物は、上記した各成分を上記割合で混合することにより調製される。
導電性組成物は、必要に応じて、溶媒を適宜任意の割合で含むことができる。これにより、導電性組成物の水溶液(導電性組成物水溶液)が調製される。
溶媒としては、有機溶媒、又は水系溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。水系溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール用のアルコール等が挙げられる。これらの中でも、水系溶媒を用いることが好ましい。
導電性高分子、バインダー樹脂、及び架橋剤の何れか一つ以上は、溶媒に溶解した水溶液として用いてもよい。この場合、溶媒としては、上記の水系溶媒が好ましい。
電子装置150は、基材層120の上面122に設置されており、配線131と電気的に接続されている。電子装置150は、プローブ140として用いられる電極を介して取得する生体信号を処理する。電子装置150は、断面視において矩形状である。電子装置150の下面(-Z方向)には、端子が設けられる。電子装置150の端子の材料としては、はんだ、導電性ペースト等が挙げられる。
電子装置150は、図1に示すように、一例としてASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)150A、MPU(Micro Processing Unit)150B、メモリ150C、及び無線通信部150TRを含み、回路部130を介してプローブ140及び電池160に接続されている。
ASIC150AはA/D(Analog to digital)変換器を含む。電子装置150は、電池160から供給される電力によって駆動され、プローブ140によって測定されるアナログ生体信号を取得する。以下、生体信号の例として心電データを取り上げて説明する。電子装置150は、アナログ生体信号にフィルタ処理やデジタル変換等の処理を行い、複数回にわたって取得されたアナログ生体信号をデジタル変換したデジタル生体信号の加算平均値をMPU150Bが求めてメモリ150Cに格納する。電子装置150は、一例として24時間以上にわたって連続的にアナログ生体信号を取得することができる。電子装置150は、長時間にわたって生体信号(例えば、アナログ心電データ)を測定する場合があるため、消費電力を低減するための工夫が施されている。また、電子装置150は、ASIC150Aにアナログ生体信号のデジタル変換処理を行わせる構成を採用することによって製造コストが低減されており、使い捨て型の貼付型生体センサ100の実現に貢献している。
無線通信部150TRは、評価試験においてメモリ150Cに格納されたデジタル生体信号を評価試験の試験装置が無線通信で読み出す際に用いられるトランシーバであり、一例として2.4GHzで通信を行う。評価試験は、一例としてJIS 60601-2-47の規格の試験である。評価試験は、医療機器として生体信号を検出する生体センサの完成後に行われる動作確認を行う試験である。評価試験は、生体センサに入力される生体信号に対する、生体センサから取り出される生体信号の減衰率が5%未満であることを要求している。この評価試験は、すべての完成品に対して行うものである。
また、評価試験の開始コマンドや24H測定の開始コマンド等は、例えば、貼付型生体センサ100の専用のアプリケーションプログラムをインストールしたスマートフォンや、PC(Personal Computer)のウェブブラウザ上の機能を通じて、無線通信部150TR経由でMPU150Bに入力される。
なお、ここでは電子装置150が無線通信部150TRを含む形態について説明するが、無線通信部150TRの代わりに、試験装置のケーブルを接続するコネクタを含み、コネクタを介して生体信号を読み出してもよい。
電池160は、図2に示すように、基材層120の上面122に設けられている。電池160としては、鉛蓄電池又はリチウムイオン二次電池等を用いることができる。電池160は、ボタン電池型であってもよい。電池160は、バッテリの一例である。電池160は、その下面に設けられる端子(図示せず)を有する。電池160の端子は、回路部130を介してプローブ140と電子装置150に接続される。電池160の容量は、一例として電子装置150が24時間以上にわたって生体信号(例えば、アナログ心電データ)の測定を行えるように設定されている。
カバー170は、基材層120、回路部130、基板135、プローブ140、固定テープ145、電子装置150、及び電池160の上を覆っている。カバー170は、基部170Aと、基部170Aの中央から+Z方向に突出した突出部170Bとを有する。基部170Aは、カバー170の平面視で周囲に位置する部分であり、突出部170Bよりも低い部分である。突出部170Bの下側には凹部170Cが設けられている。カバー170は、基部170Aの下面が基材層120の上面122に接着される。凹部170C内には、基板135、電子装置150、電池160が収納される。カバー170は、電子装置150及び電池160等を凹部170Cに収納した状態で、基材層120の上面122に接着されている。
カバー170は、基材層120上の回路部130、電子装置150、及び電池160を保護するカバーとしての役割の他に、貼付型生体センサ100に上面側から加えられる衝撃から内部の構成要素を保護する衝撃吸収層としての役割を有する。カバー170としては、例えば、シリコーンゴム、軟質樹脂、ウレタン等を用いることができる。
図3は、貼付型生体センサ100の回路構成を示す図である。各プローブ140は、配線131及び基板135の配線135Bを介して電子装置150及び電池160に接続されている。2つのプローブ140は、電子装置150及び電池160に対して並列に接続されている。
次に、電子装置150の詳細について図4を用いて説明する。図4は、電子装置150を示す図である。
電子装置150は、ASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)150A、MPU(Micro Processing Unit)150B、メモリ150C、バス150D、150E、水晶振動子60、70、RCオシレータ80、スイッチ90を有する。バス150D、150Eは、一例として、SPI(Serial Peripheral Interface)バスである。
ASIC150Aは、電子装置150の外部では配線131を介してプローブ140に接続されており、電子装置150の内部ではバス150Dを介してMPU150Bに接続されている。また、ASIC150Aには水晶振動子60が接続されている。
ASIC150Aは、ADC(Analog to Digital Converter、AD変換器)151A、端子152A、及び一対の端子153Aを有する。ASIC150AのADC151A、端子152A、及び一対の端子153A以外の構成要素については、図5を用いて後述する。
ASIC150Aは、SPIインターフェイスに対応した端子を有する。ASIC150Aはスレーブデバイスであり、マスタデバイスであるMPU150Bからのコマンドに応じて動作し、動作結果を表す信号をMPU150Bに送信する。ASIC150Aは、MPU150Bから受信するコマンドに応じて動作する。ここで、マスタデバイスとは、複数の機器が協調動作を行う際に、複数の機器の制御を司る機器である。スレーブデバイスとは、複数の機器が協調動作を行う際に、マスタデバイスからの指令又は制御に従って動作する機器である。
ADC151Aは、一例として、SAR(Successive Approximation Register、逐次比較)/SF(Stochastic Flash)型のAD変換器であり、例えば、特開2016-092648号公報に記載されたA/D変換装置を用いることができる。
ADC151Aは、プローブ140によって取得されるアナログ生体信号(例えば、心電データ)をデジタル生体信号に変換してMPU150Bに出力する。
端子152Aは、バス150Dを介してMPU150Bに接続される。端子152Aは、実際には複数あり、MPU150Bにデジタル生体信号等を出力する端子、MPU150Bからのコマンドが入力される端子、MPU150BにASIC150Aの動作結果を送信する端子等の他にクロック端子等を含む。複数の端子152Aのうち、MPU150Bにデジタル生体信号を出力する端子は、出力端子の一例である。
一対の端子153Aは、一対の第1入力端子の一例であり、一対のプローブ140が接続され、アナログ生体信号が入力される。
また、ASIC150Aは、水晶振動子60が発振する32MHzのクロックを分周して、内部で用いる4MHzのシステムクロックを生成する。この構成についは図5を用いて後述する。
MPU150Bは、情報処理装置の一例であり、バス150Dを介してASIC150Aに接続されるとともに、バス150Eを介してメモリ150Cに接続されている。また、MPU150Bには、スイッチ90を介してRCオシレータ80と水晶振動子70が接続されている。スイッチ90は、水晶振動子70及びRCオシレータ80のいずれか一方を選択的にMPU150Bに接続するスイッチであり、MPU150Bによって切り替えが行われる。
RCオシレータ80は、水晶振動子70が出力するクロックよりも周波数が低いクロックを出力する。RCオシレータ80は、水晶振動子70よりもクロックの周波数が低く、精度が低いが、水晶振動子70よりも消費電力が少ない。
水晶振動子70とRCオシレータ80のオン/オフはMPU150Bによって切り替えられる。水晶振動子70がオンのときにはRCオシレータ80はオフにされ、RCオシレータ80がオンのときには水晶振動子70はオフにされる。
MPU150Bは、主制御部151B、演算部153B、メモリ154B、及び端子155B、156Bを有する。主制御部151B、演算部153Bは、MPU150Bを実現するコンピュータによって実現される機能を表したものであり、メモリ154Bは、MPU150Bを実現するコンピュータのメモリを機能的に表したものである。
主制御部151Bは、MPU150Bの処理を統括する処理部であり、演算部153Bが実行する処理以外の処理を実行する。
演算部153Bは、ASIC150Aから入力されるデジタル生体信号の加算値を算出する処理と、加算値の平均値を算出する処理とを実行する。ここでは一例として、演算部153Bは、ASIC150Aからデジタル生体信号を取得する度に加算処理を行い、8つのデジタル生体信号の加算値が得られる度に、平均値を算出する。演算部153Bは、平均値を算出すると、メモリ150Cに格納する。
メモリ154Bは、MPU150Bの主制御部151B、演算部153Bが処理を実行するのに必要なプログラムやデータを格納する。また、メモリ154Bは、演算部153Bの加算処理によって得られる加算値を保持する。
端子155Bは、実際には複数あり、ASIC150Aからデジタル生体信号が入力される端子、ASIC150Aにコマンドを出力する端子、ASIC150Aの動作結果を表す信号を受信する端子等の他にクロック端子等を含む。複数の端子155Bのうち、ASIC150Aからデジタル生体信号が入力される端子は、第2入力端子の一例である。
端子156Bは、ケーブル51を介してPC50に接続され、メモリ150Cにデジタル生体信号を出力する出力端子である。
また、MPU150Bは、水晶振動子70又はRCオシレータ80が発振するクロックに基づいて、内部で用いるシステムクロックを生成する。より具体的には、主制御部151Bが水晶振動子70を発振させる処理を行う。主制御部151B及び水晶振動子70は、水晶発振器を構築する。
主制御部151Bは、MPU150BがASIC150Aに生体信号の取得処理を開始させるコマンドを送信する前までは、動作周波数を高く設定するためにシステムクロックの周波数を高く(一例として32MHz)に設定し、ASIC150Aが生体信号の取得処理を実行しているときには、動作周波数を低くするためにシステムクロックの周波数を低く(一例として4MHz)に設定する。生体信号の取得処理とは、ASIC150Aがアナログ生体信号を取得してデジタル生体信号にデジタル変換する処理である。
この際に、主制御部151Bは、水晶振動子70とRCオシレータ80のオン/オフを切り替える。水晶振動子70が出力するクロックの周波数は一例として32MHzであり、RCオシレータ80が出力するクロックの周波数は一例として16MHzである。主制御部151Bは、スイッチ90を切り替えることにより、水晶振動子70及びRCオシレータ80のいずれか一方から出力されるクロックからMPU150Bのシステムクロックを生成する。
主制御部151Bは、MPU150BがASIC150Aに生体信号の取得処理を開始させるコマンドを送信するときまでは、水晶振動子70が出力する32MHzのクロックをシステムクロックとしてそのまま利用する。また、主制御部151Bは、MPU150BがASIC150Aに生体信号の取得処理を開始させるコマンドを送信する際に、32MHzのシステムクロックとは別に、水晶振動子70が出力する32MHzのクロックを分周して4MHzのクロックを生成する。MPU150Bは、ASIC150Aに生体信号の取得処理を行わせるときには、4MHzのクロックをASIC150Aに出力する。4MHzのクロックは、端子155BのうちのCLK端子からASIC150Aに出力される。
主制御部151Bは、RCオシレータ80のクロックを分周して4MHzのシステムクロックを生成し、ASIC150Aから入力されるCS(Chip Select)信号をトリガにしてシステムクロックのタイミングを補正する。このようにして主制御部151BはRCオシレータ80のクロックを分周した4MHzのシステムクロックをCS信号に同期させる。4MHzのクロックは、端子155BのうちのCLK端子からASIC150Aに出力される。
MPU150BがRCオシレータ80のクロックに基づいて4MHzのシステムクロックを生成するのは、ASIC150Aが生体信号の取得処理を行っているときに、システムクロックの周波数を低下させることでMPU150Bの消費電力を低減させるためである。水晶振動子70は、MPU150BがASIC150Aに生体信号の取得処理を開始させるコマンドを送信する前と、生体信号の取得処理を終了させるコマンドを送るとき以後に利用され、MPU150BがASIC150Aが生体信号の取得処理を行っているときには利用されない。
メモリ150Cは、バス150Eを介してMPU150Bに接続されている。メモリ150Cは、一例として、NAND型フラッシュメモリである。貼付型生体センサ100は、一例として、24時間ほど生体の胸部に貼り付けられ、アナログ生体信号(例えば、アナログ心電データ)を取得し、デジタル生体信号(例えば、デジタル心電データ)に変換した後に加算平均処理を行ってからメモリ150Cに格納する。このため、メモリ150Cは、24時間分の生体信号(例えば、心電データ)を格納可能な容量を有する。
メモリ150Cは、端子151Cを有する。端子151CにはPC50に接続されるケーブル51を接続することができる。メモリ150Cに格納される生体信号は、ケーブル51を介してPC50に転送することができる。
図5は、ASIC150Aの構成を示す図である。ASIC150Aは、入力端子(VINP)201、入力端子(VINN)202、CLK端子203、端子152A、LNA(Low Noise Amplifier)210、BUF(Buffer、バッファ)220、LPF(Low Pass Filter)230、ADC151A、バイアス回路240、クロック発生器250、発振器260、制御部270、レベルシフタ280を含む。
ASIC150Aは、これらの他に、VREG端子、VCOM端子、VMID端子、VCC端子、TAB端子(GND電位)、GND端子、VDD端子(1.2)、VDDLV端子(1.5V~2.5V)等を含む。
入力端子201、202は、配線131を介してプローブ140に接続される。入力端子201には+(正)の信号が入力され、入力端子201には-(負)の信号が入力される。
CLK端子203は、ASIC150Aの外部に設けられる水晶振動子60に接続される。
端子152Aは、図4を用いて説明した通りMPU150Bに接続されている。
LNA210は、入力端子201、202とBUF220との間に接続されており、入力端子201、202から入力されるアナログ生体信号を増幅して出力する。
BUF220は、LNA210とADC151Aとの間に接続されており、LNA210で増幅されたアナログ生体信号の波形を整形してLPF230に出力する。
LPF230は、BUF220とADC151Aとの間に接続されており、ノイズを除去するために、BUF220から入力されるアナログ生体信号の低周波数側の所定の帯域成分のみを通過させる。
ADC151Aは、クロック発生器250から入力されるクロック信号に基づいて動作し、LPF230から入力されるアナログ生体信号をデジタル生体信号に変換して制御部270に出力する。クロック発生器250から入力されるクロック信号は、ADC151Aのサンプリング周期を決めるクロック信号であり、一例として4MHzである。クロック発生器250から入力されるクロック信号は、MPU150BがASIC150Aにコマンドを送信するときにMPU150Bの内部で用いるシステムクロック(一例として32MHz)よりも周波数が低く設定されている。
バイアス回路240は、VCC端子に入力される電源電圧(1.2V)をADC151Aが必要とする電圧(一例として0.5Vと0.25V)に変換して出力する回路である。バイアス回路240は、一例として分圧回路である。
クロック発生器250は、PLL(Phase Locked Loop)や分周器を含み、水晶振動子60及び発振器260から入力されるクロックから所定の周波数(一例として4MHz)のクロックを生成してADC151A及び制御部270等に出力する。クロック発生器250は、水晶振動子60から出力される32MHzのクロックを分周して、ASIC150Aが内部で利用する4MHzのシステムクロックを生成する。クロック発生器250は、分周した4MHzのシステムクロックをADC151A及び制御部270等に出力する。
発振器260は、水晶振動子60を発振させるIC(Integrated Circuit)である。発振器260及び水晶振動子60は、水晶発振器を構築する。発振器260及び水晶振動子60は、一例として32MHzのクロックを発振する。
制御部270は、組み合わせ回路によって実現され、レジスタ271を有する。また、制御部270は、ADC151Aとレベルシフタ280との間でデータのやり取りを行う。制御部270は、端子152Aからレベルシフタ280を介して入力されるコマンドに基づいて、コマンドの内容に従った動作を行う。
制御部270は、MPU150Bからデジタル生体信号の測定の開始を表すコマンドを受信すると、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるためのスタート信号をADC151Aに出力するとともに、CS信号をMPU150Bに出力する。また、制御部270は、生体信号の取得処理を行うときに、クロック発生器250にAD変換の同期用のクロックを出力させて、AD変換の同期用のクロックをMPU150Bに出力する。スタート信号、CS信号、及びAD変換の同期用のクロックは、ASIC150Aのシステムクロックに同期している。ここでは、一例としてAD変換の同期用のクロックとシステムクロックは、ともに4MHzのクロックであり、同一のクロックである。
スタート信号は、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるときに1度だけレジスタ271からADC151Aに出力される。より具体的には、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させるときに、1度だけHレベルのパルスがレジスタ271からADC151Aに出力される。
CS信号は、制御部270からレベルシフタ280を介して端子152AからMPU150Bに出力される。CS信号は、制御部270がMPU150Bに出力する信号である。CS信号は、MPU150Bにデジタル生体信号を取得させるための同期信号である。
AD変換の同期用のクロックは、ADC151AがAD変換を行うときに用いる同期用のクロックであり、クロック発生器250からADC151Aに出力される。ADC151Aは、AD変換の同期用のクロックがHレベルに立ち上がるときに、AD変換を行う。
ADC151Aは、クロック発生器250から出力されるAD変換の同期用クロックに同期してAD変換を行っており、MPU150Bは、CS信号がH(High)レベルからL(Low)レベルに切り替わるタイミングでデジタル生体信号を取り込む。このため、ADC151Aにおけるデジタル変換処理と、MPU150Bのデータの取り込みとを同期させることができる。なお、CS信号の周波数は、ASIC150A側のシステムクロックの周波数よりも一例として2倍~8倍高い。
また、制御部270は、生体信号の取得処理を行っているときに、ADC151Aから出力されるデジタル生体信号をレベルシフタ280に出力する。デジタル生体信号は、レベルシフタ280から端子152Aを経てMPU150Bに出力される。また、制御部270は、レベルシフタ280及び端子152Aを介して、MPU150Bとの間でその他のコマンドやデータのやり取りを行う。
レジスタ271は、ADC151Aから出力されるデジタル生体信号や、制御部270がADC151Aに出力するスタート信号やCS信号等を保持するデータ保持部である。
レベルシフタ280は、制御部270と端子152Aとの間でデータやコマンド等の信号レベルの調整を行う。
図6は、MPU150Bの処理を示すタイミングチャートである。図6(A)には、比較用のMPUがデータx0~x7を取得した後に加算処理と平均化処理を行う場合のタイミングを示し、図6(B)には、MPU150Bがデータx0~x7を取得する度に行う加算処理と、データx0~x7の加算値に対して行う平均化処理のタイミングを示す。
ここで、データx0~x7はデジタル生体信号であり、図6(A)、(B)における横軸は、時間を表す。
図6(A)に示すように、比較用のMPUは、システムクロックに従ってデータx0~x7を順番に取得する。データx0~x7の各々を取得するのに必要な期間T0~T7の長さは互いに等しい。また、期間T0~T7の間の期間Tsaは、取得したデータをメモリに転送する処理を行う期間である。比較用のMPUは、データ8を取得してメモリに転送すると、期間TAにおいてメモリからデータx0~x7を読み出し、次式(1)に従ってデータx0~x7の加算値Aを求め、加算値Aの平均値(A/8)をさらに求める。
比較用のMPUは、加算値Aの平均値(A/8)を求めると、データx0の取得から再び処理を開始し、図6(A)に示す処理を繰り返し実行する。
図6(B)に示すように、MPU150Bは、期間T0~T7の開始時にCS信号がHレベルからLレベルに遷移するとASIC150Aからデータx0~x7の各々を取得し、データx0~x7の各々を取得する度に、期間Tsbにおいて、次式(2)に従って加算処理を行う。加算処理では、データx0~x7が取得される度に前回の加算値Anに加算される。
ただし、A0=0,n=0,1,2,・・・,7である。
データx0~x7を取得した後の8つの期間Tsbでは、それぞれ、加算値A1~A8が得られる。加算値A8は、データx0~x7を加算した値である。なお、期間TBの開始時は、次の期間T0の開始時であるため、MPU150Bは、期間T0の開始時にCS信号がHレベルからLレベルに遷移するとASIC150Aからデータx0を取得する。
MPU150Bは、データ8を取得して加算値A8を求めると、その次の期間TBにおいて加算値A8の平均値(A8/8)を求める。
このように、MPU150Bは、データx0~x7を取得した後の8つの期間Tsbにおいて、式(2)に従って加算する加算処理を行う。ここで、図6(B)の期間Tsbと、図6(A)の期間Tsaとは、ともにMPU150Bがバックグラウンドで処理する際に割り込み処理ができるようにタスクの間を空けておく時間である。このため、図6(B)の期間Tsbと、図6(A)の期間Tsaとは略等しい。
そして、加算値A8を求めた期間T7の次の期間TBでは、加算値A8の平均値(A8/8)を求めるだけであるため、図6(A)に示す期間TAに比べて期間TBを大幅に短くすることができる。
図6(A)に示す処理を比較用のMPUを含む貼付型生体センサが行う場合の消費電力と、図6(B)に示す処理を貼付型生体センサ100が行う場合の消費電力とをシミュレーションによって求めたところ、6.1mAから5.8mAに低減できることが分かった。
これは、例えば、比較用のMPUを含む貼付型生体センサと貼付型生体センサ100とで同一の電池160を用いた場合に、連続使用可能時間が約33時間から約40時間に延びたことに相当する。貼付型生体センサ100は、消費電力が比較用のMPUを含む貼付型生体センサよりも少ないため、連続使用可能時間が約2割延びるという結果が得られた。
以上のように加算値A8の平均値(A8/8)が求まると、MPU150Bの主制御部151Bは、加算値A8の平均値(A8/8)をメモリ150Cに転送して格納する。このように加算平均処理を行うのは、デジタル生体信号のノイズレベルを下げるため(S/N比を改善するため)である。
図7は、生体信号として心電データを例としたMPU150Bの処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、MPU150Bがデジタル心電データの記録を開始してから終了するまでの処理であり、一例として24時間にわたって繰り返し実行される。
処理がスタートすると、主制御部151Bは、心電データの取得処理をASIC150Aに開始させるコマンドを出力する(ステップS1)。ASIC150Aは、ADC151Aにデジタル変換処理を開始させる。
演算部153Bは、n=0に設定する(ステップS2)。
演算部153Bは、CS信号に従ってASIC150Aからデジタル心電データを取り込む(ステップS3)。
演算部153Bは、式(2)に従って加算処理を行う(ステップS4)。
演算部153Bは、nが7以上であるかどうかを判定する(ステップS5)。
演算部153Bは、nが7以上ではない(S5:NO)と判定すると、nをインクリメントする(ステップS6)。
演算部153Bは、ステップS5でnが7以上である(S5:YES)と判定すると、加算値A8の平均値(A8/8)を求める(ステップS7)。
演算部153Bは、平均値(A8/8)をメモリ150Cに格納する(ステップS8)。
主制御部151Bは、デジタル心電データの記録を開始してから24時間が経過したかどうかを判定する(ステップS9)。
主制御部151Bは、24時間が経過していない(S9:NO)と判定すると、フローをステップS2にリターンする。
一方、主制御部151Bは、24時間が経過した(S9:YES)と判定されると、心電データの取得処理を終了させるコマンドをASIC150Aに送信する(ステップS10)。ASIC150Aは、ADC151Aにデジタル変換処理を終了させる。このため、ASIC150Aは、心電データの取得処理を開始させるコマンドを受信してから、心電データの取得処理を終了させるコマンドを受信するまで、デジタル変換処理を行い続けることになる。MPU150Bは、心電データの取得処理を開始させるコマンドをASIC150Aに送信してから、心電データの取得処理を終了させるコマンドをASIC150Aに送信するまで、デジタル心電データの平均値を求め、メモリ150Cに格納する処理を行い続ける。
上述の処理により、24時間にわたってデジタル心電データの合計値が求められ、平均化処理が行われ、メモリ150Cに格納される。
以上のように、実施の形態では、ASIC150Aが生体信号として例えば、心電データの取得処理を行い、アナログ心電データを取得し、デジタル心電データにデジタル変換する。MPU150Bは、主に、ASIC150Aから出力されるデジタル心電データの加算処理(ステップS4)と、平均値の取得処理(ステップS7)と、平均値をメモリ150Cに格納する処理(ステップS8)を行う。
このように、アナログ生体信号を取得する処理とデジタル変換処理をASIC150Aが行うため、MPU150Bの演算処理能力はそれほど高くなくてよい。また、ASIC150Aは、MPU150Bに圧倒的に安価である。
したがって、使い捨て型に適した貼付型生体センサ100を提供することができる。使い捨てとは、繰り返し利用せずに1度のみ使用することである。貼付型生体センサ100の利用者は、心電波形の測定を終えた後に貼付型生体センサ100を廃棄する。
また、使い捨て型に適しているとは、経済的な側面では、貼付型生体センサ100を1度のみ使用するという前提条件の下で、貼付型生体センサ100の利用者が取得した心電波形を表すデータを医療機関に渡して医師の診断の診断結果を取得し、取得した診断結果を利用者に提供する業者が利用者から支払われる利用料によって、十分に支払い可能な金額で作製できることをいう。
また、使い捨て型に適しているとは、構成な側面では、難しい分解処理を必要とせず、例えば、電池160を取り外す程度の利用者にとって簡単で安全な分解処理によって、廃棄可能な状態にできることをいう。貼付型生体センサ100は、カバー170を基材層120から剥がせば、電池160を容易に取り外すことができるように構成されている。
また、貼付型生体センサ100では、データx0~x7を取得した後の8つの期間Tsbにおいて式(2)に従って加算処理を行い、データx0~x7の加算値A8を得た後の期間TBでは、加算値A8の平均値(A8/8)を求めるだけであるため、加算値の平均値を得るための処理時間を短縮でき、消費電力を低減することができる。
また、貼付型生体センサ100は、MPU150Bが図6(B)に示す加算値An+1を求め、加算値A8の平均値(A8/8)を求めている間は、MPU150Bのシステムクロックの周波数は、ADC151Aのサンプリング周波数と等しい4MHzに低下される。このことによっても、消費電力を低減することができる。
なお、以上では、MPU150Bが加算値の平均値を求める際の加算値のデータ数が8つである形態について説明したが、加算値の平均値を求める際の加算値のデータ数は、2以上であれば幾つであってもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態の貼付型生体センサについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。