JP2016166349A - シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体とそれらの製造方法、並びに、シラン架橋ゴム成形品 - Google Patents
シラン架橋性ゴム組成物及びシラン架橋ゴム成形体とそれらの製造方法、並びに、シラン架橋ゴム成形品 Download PDFInfo
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Abstract
Description
従来、小さい圧縮永久歪みが要求される用途に用いられる製品は、エチレン−プロピレンゴム(EPゴム)を加硫(架橋)した架橋EPゴムが用いられてきた。しかし、架橋EPゴムは、EPゴムを成形した後に加硫することが必要であった。
例えば、特許文献1において、エチレン−プロピレンゴムを主成分とするゴム組成物を射出成形する方法において、上記のエチレン−プロピレンゴムとしてプロピレン含有量が30〜55重量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が20〜80のものを使用し、加硫剤として有機過酸化物を添加することが提案されている。特許文献2において、加硫ゴム製品を、さらに大気圧下又は真空圧下で熱履歴処理することが提案されている。特許文献3において、ゴム100質量部及び金属水酸化物30質量部〜150質量部を含有し、前記ゴムが、エチレン比が60%〜64%のエチレン−プロピレンゴム1及びエチレン比が66%〜70%のエチレン−プロピレンゴム2を70:30〜30:70の質量比で混合したノンハロゲン難燃性ゴム組成物が提案されている。
また、一般的なEPゴムを使用して高硬度の成形品を得る場合、エチレン含有量の高い材料が用いられることが多い。さらに、高速成形性を付与するためにはムーニー粘度の低いものが選択されることが多い。しかしながら、そのような特性を有するゴム材料は圧縮永久歪みが大きくなる傾向にあった。
さらに、押出成形において架橋EPゴム製品を製造する場合、押出成形機内で有機過酸化物が分解してEPゴムの架橋反応が生じることがある。架橋したEPゴムは成形時に溶融しないゲルを形成して、得られる成形体の表面に突出したツブ状物(ブツともいう)となる。これにより、製造されるゴム製品の外観を損なうという問題があった。
また、本発明は、上記の特性を有するシラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、しかも生産性よく製造することができるシラン架橋性ゴム組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品を提供することを課題とする。
ここで、ゴムのシラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤をゴムにグラフト化反応させてシラングラフトゴムを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフトゴムを水分と接触させることにより、シラングラフトゴムがシランカップリング剤を介して架橋された架橋ゴムを得る方法である。
〔1〕JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有するシラン架橋性ゴム組成物。
〔2〕前記シラン架橋性ゴム組成物が、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してなる〔1〕に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔3〕前記無機フィラーが、金属水和物、タルク、クレー、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選ばれた少なくとも1種である〔1〕又は〔2〕に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔4〕前記ベースゴムが、ポリプロピレン系樹脂を1〜30質量%含む〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔5〕前記シランカップリング剤の含有量が、前記ベースゴム100質量部に対して、3〜15質量部である〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させてなるシラン架橋ゴム成形体。
〔7〕〔6〕に記載のシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品。
〔8〕JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程(1)を有するシラン架橋性ゴム組成物の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカ
ップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶
融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触
媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マ
スターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋性ゴム組成物の製造方法。
〔9〕下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形体を得る工程
を有するシラン架橋ゴム成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカ
ップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶
融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触
媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マ
スターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋ゴム成形体の製造方法。
したがって、本発明により、高い線速で押出成形されても、小さな圧縮永久歪みと高い引張強度と高い硬度とを兼ね備えたシラン架橋ゴム成形体を提供することができる。また、外観のよいシラン架橋ゴム成形体を提供することができる。このような優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体の製造方法を提供することができる。また、上述の特性を有するシラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、生産性よく製造することができるシラン架橋性ゴム組成物及びその製造方法を提供することができる。さらに、このような優れた特性を有するシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品を提供することができる。
また、本発明のシラン架橋ゴム成形体は、本発明のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させて得ることができる。これにより、後述するように、シラン架橋性ゴム組成物に含有されるシラン架橋性ゴムのシランカップリング剤が架橋反応してシラン架橋ゴム成形体となる。
<ベースゴム>
本発明に用いられるベースゴムは、シランカップリング剤がグラフト化反応可能な部位を有するゴム成分として、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを含有する。
ベースゴムは、さらにポリプロピレン系樹脂を含有していてもよい。
ベースゴムは、さらにエチレン−αオレフィンゴム以外のゴム成分やポリプロピレン系樹脂以外の樹脂成分を含有してもよい。エチレン−αオレフィンゴム以外のゴム成分としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン系共重合体等が挙げられる。ベースゴムがこれらのゴム成分及び樹脂成分を含有する場合、これらのゴム成分及び樹脂成分それぞれの含有量は、特に限定されず、適宜に決定される。
このベースゴムは、ゴム成分及び樹脂成分の総計が100質量%となるように、各ゴム成分及び各樹脂成分の含有量が適宜に決定され、好ましくは下記範囲内から選択される。
本発明に用いるエチレン−αオレフィンゴムは、JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムである。ムーニー粘度が小さすぎると、本発明に求められる高い硬度及び引張強度が不足する場合がある。一方、ムーニー粘度が大きすぎると、高い線速での成形性(高速成形性)に劣る場合がある。また、エチレン含有量が65質量%未満であると、本発明に求められる高い引張強度が得られないことがある。エチレン含有量が80質量%を超えると、圧縮永久歪みが大きくなりすぎることがある。
エチレン−αオレフィンゴムのムーニー粘度は、硬度、引張強度及び成形性の点で、17〜35(ML1+4(125℃)が好ましく、20〜30(ML1+4(125℃)がより好ましい。
ムーニー粘度は、JIS K 6300−1:2013に規定された測定方法に基づいて測定される。試験は以下のように行う。用いる試験片として、JIS K 6300−1 5.3.1記載のロール通し法で、直径約50mm、厚さ約6mmの試験サンプルを2個1組作成する。二つのダイで構成される円筒状の中空部(キャビティ)の中に円盤状の金属製L型ロータを装着し、その中に得られたゴム試験片を充填する。その後、余熱時間1分、ロータ回転時間4分、試験温度125℃の一定条件でロータを回転させ、このときのゴムの抵抗によりロータが受けるトルクを、ゴムのムーニー粘度としてムーニー単位で測定する。
共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、ブタジエンが好ましい。非共役ジエンとしては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。共役ジエン及び非共役ジエンの各構成成分は、それぞれ、1種単独で使用され、又は2種以上を併用できる。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜12のα−オレフィンが好適に挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(PP)は、構成成分としてプロピレン成分を含む重合体からなる樹脂であれば特に限定されない。ポリプロピレン系樹脂には、プロピレンの単独重合体(h−PP)、(好ましくは少量の)エチレン及び/又は1−ブテンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(r−PP)、及び、エチレンゴム等のゴムをh−PPやr−PPに分散したブロックポリプロピレン(b−PP)等を含む。これらの中でもランダムポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR、230℃、21.18N)は、特に限定されないが、0.5〜50g/10分が好ましく、特に好ましくは10〜30g/10分である。この範囲のMFRのポリプロピレン系樹脂を用いることで、さらに高速成形性を付与できるとともに優れた外観の成形体を得られる。MFR(190℃、21.18N)は、JIS K 7210に規定の「A法(手動切り落とし法)」に基づき、190℃、21.18Nの条件Dで計測した値とする。
PPとして、例えば、ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ社製)、PM940M、PM921V(いずれも、商品名、サンアロマー社製)、住友ノーブレン(登録商標、住友化学社製)、及びプライムポリプロ(登録商標、プライムポリマー社製)等が挙げられる。
ベースゴムがポリプロピレン系樹脂を含有する場合、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、ベースゴム100質量部中、1〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
本発明に用いられる無機フィラーは、その表面に、シランカップリング剤の反応部位と水素結合又は共有結合等により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
無機フィラーとしては、金属水和物以外にも、例えば、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボンブラック、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛が挙げられる。
無機フィラーは、これらの中でも、金属水和物、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
特に、本発明のシラン架橋ゴム成形体が、後述する、水中又は湿潤環境下において高い絶縁特性が求められる用途に用いられる場合、シラン架橋ゴム成形体に高い絶縁特性を付与できる点で、無機フィラーとしては、乾式シリカ(ヒュームドシリカともいう)が好ましい。ここで、乾式シリカは、非晶質シリカの一種であって、四塩化ケイ素を酸素ガス及び水素ガスの存在下で燃焼させる乾式法(燃焼法)により、製造されたものをいう。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下でベースゴムにグラフト化反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、無機フィラーの化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、末端に加水分解性基を有する加水分解性シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているものがより好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているシランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤とその他の末端基を有するシランカップリング剤を併用してもよい。
末端にグリシジル基を有するものとしては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒としてシランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムとのラジカル反応(ゴムからの水素ラジカル引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R1−OO−R2、R3−OO−C(=O)R4、R5C(=O)−OO(C=O)R6で表される化合物が好ましい。ここで、R1〜R6は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR1〜R6のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、1分間のうちある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に半分分解反応を起こす温度(1分間半減期温度)を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
シラノール縮合触媒は、ベースゴムにグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ゴム同士が架橋される。その結果、加硫設備を用いなくとも高い引張強度や小さな圧縮永久歪みを有し、必要により高温又は高速でも成形可能となり、従来の架橋EPゴムの製造方法よりも短時間でシラン架橋ゴム成形体が得られる。
シラノール縮合触媒は、所望によりゴムに混合されて、用いられる。このようなゴム(キャリアゴムともいう)としては、特に限定されないが、上記ベースゴムとして説明した各ゴム成分又は各樹脂成分を用いることができる。
シラン架橋ゴム成形体及びシラン架橋性ゴム組成物は、上記ゴム製品に一般的に使用される各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、着色剤、又は、上記無機フィラー以外の充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
本発明の「シラン架橋ゴム成形体の製造方法」及び本発明の「シラン架橋性ゴム組成物の製造方法」は、いずれも、少なくとも下記工程(1)を行う。したがって、本発明の「シラン架橋ゴム成形体の製造方法」及び本発明の「シラン架橋性ゴム組成物の製造方法」を併せて以下に説明する(両製造方法に共通する説明においては、本発明の製造方法ということがある。)。
工程(2):工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形体を得る工程
工程(a):ベースゴムの全部又は一部と、無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又は前記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
また、「ベースゴムの残部」とは、ベースゴムのうち工程(a)で使用する一部を除いた残りのゴムであって、具体的には、ベースゴムそのものの残部(ベースゴムと同一組成を有する)、ベースゴムを構成する成分の残部、ベースゴムを構成する残りの成分をいう。
ここで、工程(b)でベースゴムの残部が配合される場合、ベースゴムは、工程(a)において、好ましくは80〜99質量部、より好ましくは94〜98質量部が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜6質量部が配合される。
また、水中又は湿潤環境下における高い絶縁特性を得るために乾式シリカを無機フィラーとして使用する場合には、乾式シリカの含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.3〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましい。
シランカップリング剤の含有量が1質量部未満では、架橋反応が十分に進行せず、小さい圧縮永久歪みを得られないことがある。一方、15質量部を超えると、無機フィラーの表面にシランカップリング剤が吸着しきれず、シランカップリング剤が混練中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合して、成形体にブツや焼けが生じて外観が悪化するおそれがある。
すなわち、工程(a)において、シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化する際の有機過酸化物分解による反応は、シランカップリング剤の含有量が4質量部を超えると、ベースゴム同士の架橋反応よりも反応速度が速い、シランカップリング剤とベースゴムとのグラフト化反応、シランカップリング剤同士の縮合反応が支配的になる。したがって、外観荒れやブツの原因となるゴム同士の架橋反応は起こりにくくなる。このように、ベースゴム同士の架橋反応がシランカップリング剤の含有量に応じて効果的に抑えられる。これにより、成形時の外観は良好になる。また、ベースゴム同士の架橋反応による上記欠陥が少なくなるため、押出機を停止後再開しても外観不良が発生しにくくなる。このように、ベースゴム同士の架橋反応を抑えて、外観の良好なシラン架橋ゴム成形体を製造することができる。
一方で、工程(a)において、シランカップリング剤同士の縮合反応も反応速度が速い。しかし、多くのシランカップリング剤が無機フィラーに結合又は吸着して固定化されているため、無機フィラーに結合又は吸着しているシランカップリング剤同士の縮合反応は起こりにくくなる。無機フィラーに結合又は吸着せず、遊離しているシランカップリング剤同士の縮合反応が生じることがあるが、本発明においてシランカップリング剤は大部分が無機フィラーに結合又は吸着しているので、ゲル状のブツの発生に繋がることはない。
このように、特定量のシランカップリング剤を用いることにより、外観のきれいなシラン架橋ゴム成形体を製造することができると、考えられる。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの含有量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。ゴムの分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、無機フィラーがベースゴム100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーで溶融混合するのがよい。
また、ゴムの混合方法も特に限定されない。例えば、予め混合調製されたベースゴムを用いてもよく、各ゴム成分又は樹脂成分それぞれを別々に混合してもよい。
このような混合方法として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、好ましくは室温(25℃)で有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤を、好ましくは1〜10分程度、前混合(分散)した後に、得られた混合物とベースゴムとを溶融混合させる方法が挙げられる。
例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後に無機フィラーと混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々に無機フィラーに混合されてもよい。本発明においては、有機過酸化物とシランカップリング剤とは実質的に一緒に混合した方がよい。一方、生産条件によっては、シランカップリング剤のみを無機フィラーに混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。すなわち、工程(1)において、無機フィラーはシランカップリング剤と予め混合したものを用いることができる。
有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤の混合方法においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ゴム成分又は樹脂成分が存在していてもよい。
この前混合は、好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機で行われる。このようにすると、ベースゴム同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観が優れたものとなる。なお、前混合は、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いてもよく、また人手により混合してもよい。
湿式混合では、シランカップリング剤と無機フィラーとの結力合が強くなるため、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えることができるが、ベースゴムへのグラフト化反応が進みにくくなることがある。一方、乾式混合では、無機フィラーとシランカップリング剤の結合力が比較的弱くなるため、効率的にグラフト化反応が進み、シラノール縮合反応が進みやすくなる。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ゴムの溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記行程(a)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
キャリアゴムが他のゴム成分又は樹脂成分である場合、工程(a)においてシラン架橋を早く促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、他のゴム成分又は樹脂成分の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは4〜20質量部である。
この触媒MBは、シランMBとともに、工程(1)で調製されるシラン架橋性ゴム組成物の製造に、マスターバッチセットとして、用いられる。
混合方法は、上述のように均一な溶融混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。
このシラン架橋性ゴム組成物中に含有されるシラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がベースゴムにグラフトしたシラン架橋性ゴムである。このシラン架橋性ゴムにおいて、シランカップリング剤の反応部位は、無機フィラーと結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がベースゴムにグラフトした架橋性ゴムと、無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がベースゴムにグラフトした架橋性ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーが結合又は吸着したシランカップリング剤と、無機フィラーが結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のゴム成分を含んでいてもよい。
シランカップリング剤がベースゴムにグラフト化反応するときのシランカップリング剤の反応割合(グラフト化率ともいう)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。本発明において、グラフト化率は、一義的に定めることは難しいが、例えば、後述する実施例に記載の測定方法によるグラフト化率としては、70〜100質量%(シラングラフト量は0.7〜15質量部)であることが好ましく、75〜100質量%(シラングラフト量は0.75〜15質量部)であることがより好ましく、80〜100質量%(シラングラフト量は0.8〜15質量部)であることがさらに好ましい。グラフト化率が70〜100質量%であると、ベースゴムの架橋が十分になり、上記の優れた特性を付与するのに好適である。
本発明において、グラフト化率は、有機過酸化物の種類又は含有量、シランカップリング剤の種類、密閉型ミキサーの使用等によって、所定の範囲に設定できる。
本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法において、得られた溶融混合物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、溶融混合物を成形できればよく、本発明の製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、プレス成形機を用いたプレス成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の製品が電線又は光ファイバケーブルである場合に、好ましい。
成形工程(2)を押出成形により行う場合、本発明のシラン架橋性ゴム組成物の成形速度(押出速度)は、特に限定されず、通常、線速で1〜20m/分未満、好ましくは1〜10m/分に設定できる。また、本発明においては、生産性のさらなる向上のため成形速度を線速で20〜200m/分の高速に設定することもできる。
また、押出成形は、高温で行うこともできる。成形温度を高温に設定すると、上記の高速な押出速度での押出成形が容易になる。特に、本発明の製造方法では、優れた外観をも実現できる。成形温度として、高温に設定する場合、例えば、150℃以上に設定でき、好ましくは180〜250℃に設定することもできる。
このようにして、シラン架橋性ゴム組成物の成形体が得られる。この成形体はシラン架橋性ゴム組成物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明のシラン架橋ゴム成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で放置するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と積極的に接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。このような手法は、被覆厚さの大きい電線やその他体積の大きい成形体の場合、有効である。
また、上記溶融混合での加熱により、部分的には、シランカップリング剤と無機フィラーの表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も起きる。
本発明では、工程(3)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、ベースゴムにシランカップリング剤を上述のように特定量配合すると、成形時の押し出し加工性(成形性)を損なうことなく無機フィラーを多量に配合することが可能になる。これにより、優れた成形性を確保しながらも、優れた成形体の外観、さらには機械特性等を併せ持つことができる。
さらに、本発明シラン架橋ゴム成形体の製造方法は、上記ベースゴムを上記のシラン架橋法により、成形及び架橋するものであるから、架橋反応を行うに当たり加硫設備を不要とし、EPゴムの加硫法に対して生産性を高めることができる。
さらに、本発明のシラン架橋ゴム成形体の製造方法は、成形時にベースゴムの架橋を抑えることができ、必要により、成形温度を上記のように高温に設定することができ、さらに線速を高く設定することもできる。
工程(1)においては、有機過酸化物が分解して生じるラジカルにより、ベースゴム中のジエン成分同士も架橋すると考えられる。しかし、上記の好ましい方法では、シランカップリング剤と有機過酸化物と無機フィラーとを混合するため、シランカップリング剤のグラフト化反応が優先的に進行するものと考えられる。
また、1つの無機フィラー粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い引張強度を得ることができる。
このように、無機フィラーに対して強い結合で結合したシランカップリング剤は、引張強度の向上及び圧縮永久歪みの抑制に寄与すると考えられる。
例えば、本発明のシラン架橋ゴム成形体が示す絶縁特性として、例えば、20℃の水中に1時間浸漬したときの絶縁抵抗ρV1が100000MΩ・km以上であることが好ましく、120000MΩ・km以上であることがより好ましい。また、20℃の水中に24時間浸漬したときの絶縁抵抗ρV24が100000MΩ・km以上であることが好ましい。さらに、湿潤環境下における絶縁特性の保持については、例えば、上記絶縁抵抗ρV1及び上記絶縁抵抗ρV24から下記計算式で求められる、絶縁抵抗の低下率Δρが50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。ここで、絶縁抵抗の低下率は、下記式から求められる。絶縁抵抗の測定方法は後述する。
計算式:絶縁抵抗の低下率Δρ(%)=[(ρV1−ρV24)/ρV1]×100
また、上述した従来のゴム組成物においては、無機フィラーとして乾式シリカを使用した場合、得られるゴム組成物は、乾燥環境下では高い絶縁特性を示すが、水中又は湿潤環境下においては絶縁特性が著しく低下することがある。これは、ゴム組成物が、表面に多数のOH基を有する乾式シリカを含むと、水分を吸湿しやすくなると考えられる。
すなわち、シラン架橋ゴム成形体は、圧縮永久歪みが、好ましくは40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。下限は特に限定されないが、例えば、10%である。
シラン架橋ゴム成形体は、引張強度が、好ましくは6MPa以上であり、より好ましくは8MPa以上であり、さらに好ましくは10MPa以上である。上限は特に限定されないが、例えば、15MPaである。
シラン架橋ゴム成形体は、硬度が、好ましくは50以上であり、より好ましくは60以上であり、さらに好ましくは70以上である。上限は特に限定されないが、例えば、90である。
本発明のシラン架橋ゴム成形品として、各種産業用ケーブル(電線を含む)の被覆材、ゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、ガスケット、防振ゴム)等が挙げられる。
本発明のシラン架橋ゴム成形品は、無機フィラーとして乾式シリカを含有する場合、高い絶縁特性、又は、長期わたる絶縁特性が求められる用途に好適であり、例えば、水中又は湿潤環境下で用いられる用途に好適である。このような用途としては、特に限定されないが、例えば、高電圧用電線若しくはケーブル、配電室内の絶縁ゴムシート、グロメット又はパッキン、さらには高電圧作業用ゴム手袋等が挙げられる。
上記のように、本発明の製造方法は、優れた上記特性を有するシラン架橋ゴム成形体を、加硫設備を必要とせず、生産性よく製造することもできる。したがって、本発明の製造方法は、小さな圧縮永久歪み、高い引張強度、及び高い硬度の少なくとも一つの特性が要求される製品に特に好ましく適用することができる。
本発明の製品が電線、ケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練しながら、導体等の外周に押し出して導体等を被覆する等により、製造できる(工程(c)及び工程(2))。このような製品は、無機フィラーを大量に加えたシラン架橋性ゴム組成物を電子線架橋機等の特殊な機械も、ゴムの加硫設備も使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明のシラン架橋性ゴム組成物又はシラン架橋ゴム成形体からなる被覆層)の肉厚は特に限定されないが、一般的には、0.15〜5mm程度である。
表1及び表2において、各例の含有量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
<ゴム成分>
(エチレン−αオレフィンゴム、EPゴム)
「ノーデル3720P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル3722P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「ノーデル4725P」(NORDEL(登録商標)、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「EP51」(商品名、JSR社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「Vistalon 722」(Vistalon(登録商標)、エクソンモービル社製、エチレン−プロピレンゴム)
「Vistalon 1703P」(Vistalon(登録商標)、エクソンモービル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
「Vistalon 8731」(Vistalon(登録商標)、エクソンモービル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)
EPM−1、EPM−2、EPM−3、EPM−4、EPM−5は、後述の方法で合成した。
<樹脂成分>
(ポリプロピレン系樹脂)
「PM940M」(商品名、サンアロマー社製、r−PP、MFR(230℃、21.18N)30g/10分)
「アエロジル200」(アエロジル(登録商標)、日本アエロジル社製、乾式シリカ(親水性フュームドシリカ)、平均1次粒子径12nm)
「クリスタライト5X」(商品名、龍森社製、結晶質シリカ、平均1次粒子径1.4μm)
「キスマ5L」(キスマ(登録商標)、水酸化マグネシウム、協和化学社製、平均1次粒径0.8μm)
「KBM1003」(商品名、信越シリコーン社製、ビニルトリメトキシシラン)
<有機過酸化物>
「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1分間半減期温度179.8℃)
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
EPM−1〜5は、表1及び表2に示した、ムーニー粘度、エチレン含有量となるように、2種以上のEPMを予めバンバリーミキサーを用いて150℃で10分間溶融混合し、ペレット化することによって得た。
「EPM−1」(エチレン−プロピレン−ゴム)
「EPM−2」(エチレン−プロピレン−ゴム)
「EPM−3」(エチレン−プロピレン−ゴム)
「EPM−4」(エチレン−プロピレン−ゴム)
「EPM−5」(エチレン−プロピレン−ゴム)
実施例1〜10及び比較例1〜8において、EPゴムの一部を工程(a)で用い、EPゴムの残部(5質量部)を工程(b)で触媒MBのキャリアゴムとして用いた。
無機フィラーと、シランカップリング剤と、有機過酸化物とを、表1及び表2に示す質量比で、室温(25℃)下で、混合した。得られた混合物とEPゴムの一部を含むベースゴムとを、2Lバンバリーミキサー(日本ロール社製)を用いて、有機過酸化物の分解温度以上の温度(185℃)において5分間にわたり溶融混合した後、材料排出温度130℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た(工程(a))。得られたシランMBは、EPゴムにシランカップリング剤がグラフト化反応したシラン架橋性EPゴムを含有している。
得られたドライブレンド物を、上記電線被覆用押出成形機に投入して、下記押出温度条件により、0.8mmφの導体(軟銅線)の外周に仕上がり外径1.2mmφとなるように、線速10m/分で、押出被覆して、電線前駆体を製造した。
押出温度条件は、電線被覆用押出成形機のシリンダー部分における温度制御をフィーダー側からダイス側に向けて3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを150℃、C2ゾーンを170℃、C3ゾーンを190℃に設定し、さらにダイス温度(成形温度)を200℃に設定した。
上記ドライブレンド物を電線被覆用押出成形機内で押出成形前に溶融混合することにより、シラン架橋性ゴム組成物を調製した。このシラン架橋性ゴム組成物は、上記シラン架橋性EPゴムと、表1及び表2に示す含有量の無機フィラー及びシラノール縮合触媒を、含有している。
このようにして得られた電線前駆体を、25℃、50%RH環境に24時間放置することにより、水と接触させて、電線を製造した。この電線は、EPゴムがシランカップリング剤により架橋したシラン架橋EPゴムと表1及び表2に示す含有量の無機フィラーとを含有するシラン架橋成形体を被覆材として有していた。
上記電線の製造において、導体を用いることなく、ドライブレンド物を押出成形したこと以外は上記電線の製造と同様にして、直径約35mmの溶融ストランドを得た。得られた溶融ストランドを約15mmの長さに切り分け、溶融状態のまま、29.0mmφ、厚さ12.5mmの円柱状金型に押し込み、プレス成形機を用いて、プレス予備成形した。
その後、プレス成形機を用いて、円柱状金型を150℃で10分予熱した後、プレス予備成形したストランドを予熱した円柱状金型に入れ、150℃で3分、圧力4MPaでプレス成形した。これにより、29.0mmφ、12.5mm厚の円柱状ゴム成形品を得た。
このようにして得られた円柱状ゴム成形品を、25℃、50%RH環境に24時間放置することにより、水と接触させて、円柱状ゴム成形品を製造した。この円柱状ゴム成形品は、EPゴムがシランカップリング剤により架橋したシラン架橋EPゴムと表1及び表2に示す含有量の無機フィラーとを含有するシラン架橋成形体であった。
−電線の製造−
表2に示す割合の有機過酸化物を、8インチオープンロールを用いて、表2に示すEPゴム100質量部に100℃で練り込み、ペレット化した。得られたペレットを、上記電線被覆用押出成形機を用いて、実施例1の電線の製造と同様にして上記導体上に押出被覆して、電線前駆体を製造した。
ここで、比較例9及び10については、実施例1と同様の押出温度条件で成形すると押出成形機内で、架橋反応が生じて、押出成形ができず、押出成形できたものであっても電線前駆体の外観を損なった。そこで、押出成形機のC1〜C3ゾーンを90℃、ダイス温度を100℃に設定して、押出成形した。
得られた電線前駆体を、温度200℃、圧力10MPaの水蒸気環境に設定された、長さ20mの化学架橋管内を通過させることで、架橋し、電線を製造した。
上記電線の製造において、導体を用いることなく、ペレットを押出成形したこと以外は上記電線の製造と同様にして、直径35mmの溶融ストランドを得た。次いで、その溶融ストランドを15mmの長さに切り分け、溶融状態のまま、29.0mmφ、厚さ12.5mmの円柱状金型に押し込み、プレス成形機を用いて、プレス予備成形を行った。
その後、プレス成形機を用いて、金型を170℃で10分予熱した後、プレス予備成形したストランドを予熱した金型に入れ、170℃で60分、圧力4MPaでプレス成形した。これにより、29.0mmφ、12.5mm厚の円柱状ゴム成形品を製造した。
得られた各電線について、下記のようにしてグラフト化率を確認し、その結果を表1及び表2に示した。
本発明において、シランカップリング剤のゴムへのグラフト化反応のグラフト化率は、次のようにして、測定した。まず、得られた各電線から任意の箇所の被覆をサンプリングした試験片を、80℃の真空環境下で24時間乾燥させた後、赤外線吸収分光法によって、3750cm−1付近に見られる吸収ピークから孤立シラノール(未反応のシランカップリング剤)の質量を定量した。次いで、得られた値と、実際に用いたシランカップリング剤の質量(含有量)から、下記計算式によって、グラフト化率を算出した。
グラフト化率(質量%)={(実際に用いた質量−赤外線吸収分光法による孤立シラノールの質量)/実際に用いた質量)×100
製造した各電線の外観を目視で観察して評価した。電線の外観が優れていたものを「A」、外観に製品上問題があるほどブツが発生していたものを「B」とした。
JIS K 6253−3:2012に基づき、各例で製造した円柱状ゴム成形品について、タイプAデュロメーターを用いて硬度を測定した。データの読み取りは押針を押し込んだ15秒後に行った。
硬度が70以上であった場合を「A」、60以上70未満であった場合を「B」、50以上60未満であった場合を「C」、50未満の場合を「D」とした。
本発明において、硬度は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
JIS C 3005に基づき、引張試験を行った。得られた電線から導体を引き抜いた管状片を用いて、標点間距離20mm、引張速度200mm/分で引張強度を計測し、下記評価基準にて評価した。
引張強度が、10MPa以上であった場合を「A」、8MPa以上10MPa未満であった場合を「B」、6MPa以上8MPa未満であった場合を「C」、6MPa未満であった場合を「D」とした。
本発明において、引張強度は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
JIS K 6262 A法に基づき、各例で製造した円柱状ゴム成形品を用いて、その圧縮永久歪を測定した。2枚の圧縮板とスペーサ(厚さは円柱状ゴム成形品の厚さの75%)を備えた圧縮装置を利用して、円柱状ゴム成形品を厚さ方向に25%分の圧縮を加え(圧縮率25%)、その状態で70℃に加熱して22時間保持した。その後、常温(23℃)にて圧縮を開放し、30分間の冷却後(最終的な温度は23℃)、円柱状ゴム成形品の厚さを測定した。
円柱状ゴム成形品の、圧縮前後の厚さから、以下の式によって、圧縮永久歪みを算出して、下記評価基準にて、評価した。
式:CS=[(t0−t2)/(t0−t1)]×100
式中、CS:圧縮永久歪み(%)
t0:円柱状ゴム成形品の圧縮前の厚さ(元の厚さ)(mm)
t1:スペーサの厚さ(mm)
t2円柱状ゴム成形品の圧縮後の厚さ(圧縮装置から取り外して、30分後の厚さ)(mm)
圧縮永久歪みが、30%以下であった場合を「A」、30%を超え35%以下であった場合を「B」、35%を超え40%以下であった場合を「C」、40%を超えた場合を「D」とした。
本発明において、圧縮永久歪は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
上記各例で調製したシラン架橋性ゴム組成物(溶融混合された各ドライブレンド物)の押出成形性(高速成形性)を、評価した、
各例で調製したドライブレンド物を、L/Dが25で、スクリュー直径が40mmφの電線用押出成形機(モーター負荷限界:80A)に投入して、下記押出温度条件により、0.8mmφの導体(軟銅線)の外周に、仕上がり外径2.4mmφとなるように、線速を変更して、押出被覆した。
押出温度条件は、実施例1〜10及び比較例1〜8においては、C1ゾーンを150℃、C2ゾーンを170℃、C3ゾーンを190℃に設定し、さらにダイス温度を200℃に設定した。比較例9及び10においては、C1〜C3ゾーンを90℃、ダイス温度を100℃に設定した。
上記押出被覆において、押出成形可能な最大の製造スピード(最高線速)により、下記評価基準で、高速成形性を評価した。ここで、押出成形可能な最大の製造スピードとは、押し出された被覆が押出途中で切れ(所謂樹脂切れ)することなく、かつ、モーター負荷が上記限界値を超えない線速であって、最速のものとする。
最高線速が、150m/分以上であった場合を「A」、100m/分以上150m/分未満であった場合を「B」、50m/分以上100m/分未満であった場合を「C」、50m/分未満であった場合を「D」とした。
本発明において、高速成形性は、評価「C」が本発明の試験の合格レベルである。
上記各例で製造した電線(50m)を20℃の水中に1時間及び24時間浸漬させ、それぞれ絶縁抵抗値ρV1及びρV24(MΩ・km)を測定した。
絶縁抵抗値の測定は、JIS C 3005に記載の方法に準拠して、測定電圧、荷電時間及び測定時間はそれぞれ500V、10秒及び50秒で行った。
測定した絶縁抵抗ρV1及びρV24から上記計算式により、絶縁抵抗の低下率Δρを求めた。
本試験において、浸漬1時間後の絶縁抵抗(ρV1)が100,000MΩ・km以上であり、かつ低下率Δρが50%以内であると絶縁電線の被覆材として特に好ましい。
特に、無機フィラーとして乾式シリカを用いた実施例1〜9は、いずれも、絶縁抵抗ρV1が大きく、しかも絶縁抵抗の低下率Δρが小さく、優れた絶縁特性を示すことが分かった。
エチレン含有量が少ないEPゴムを使用した比較例3は引張強度が低かった。エチレン含有量が多いEPゴムを使用した比較例4は圧縮永久歪みが大きかった。
無機フィラーの含有量が少ない比較例5は圧縮永久歪みが大きかった。無機フィラーの含有量が過剰な比較例6は引張強度が低く、圧縮永久歪みが大きく、押出成形性に劣っていた。
また、シランカップリング剤の含有量が少ない比較例7及は、圧縮永久歪みが大きかった。シランカップリング剤の含有量が多い比較例8は外観が悪かった。
シラン架橋法ではないゴム架橋法である比較例9は押出成形性に劣り、比較例10は引張強度及び押出成形性に劣った。
Claims (9)
- JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴムにシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを含有するシラン架橋性ゴム組成物。
- 前記シラン架橋性ゴム組成物が、前記ベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してなる請求項1に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
- 前記無機フィラーが、金属水和物、タルク、クレー、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
- 前記ベースゴムが、ポリプロピレン系樹脂を1〜30質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
- 前記シランカップリング剤の含有量が、前記ベースゴム100質量部に対して、3〜15質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋性ゴム組成物を成形した後に水と接触させてなるシラン架橋ゴム成形体。
- 請求項6に記載のシラン架橋ゴム成形体を含むシラン架橋ゴム成形品。
- JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.0001〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程(1)を有するシラン架橋性ゴム組成物の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカ
ップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶
融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触
媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マ
スターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋性ゴム組成物の製造方法。 - 下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)
工程(1):JIS K 6300−1:2013に基づき測定されたムーニー粘度
(ML(1+4)125℃)が15〜40であり、エチレン含有量が65〜80質量
%であるエチレン−αオレフィンゴムを61〜100質量%含むベースゴム100質
量部に対して、無機フィラー0.3〜400質量部と、シランカップリング剤1〜1
5質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、シラノール縮合触媒0.00
01〜0.5質量部とを溶融混合してシラン架橋性ゴム組成物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られたシラン架橋性ゴム組成物を成形して成形体を
得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させてシラン架橋ゴム成形
体を得る工程
を有するシラン架橋ゴム成形体の製造方法であって、
前記工程(1)が、下記工程(a)及び工程(c)を有し、但し下記工程(a)で前記ベースゴムの一部を溶融混合する場合には下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有する、
工程(a):前記ベースゴムの全部又は一部と、前記無機フィラーと、前記シランカ
ップリング剤と、前記有機過酸化物とを前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶
融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベースゴムの残部と前記シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触
媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触媒マ
スターバッチとを溶融混合する工程
シラン架橋ゴム成形体の製造方法。
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