本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下において、薬剤とは、肥料、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体及び肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物をいう。
図1は、本実施形態に係る防除作業機の側面図である。図2は、本実施形態に係る防除作業機の平面図である。防除作業機1は、動力発生源が発生する動力によって走行して、薬剤を圃場に散布する作業用車両である。防除作業機1は、車体1Bと、車体1Bに搭載された動力発生源としての内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン又はガソリンエンジン)2と、動力発生源が発生した動力を地面Gに伝えて防除作業機1を走行させる前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRと、を含む。内燃機関2の出力は、油圧ポンプ2Pに入力される。油圧ポンプ2Pは、内燃機関2によって駆動されて、油圧機器を駆動するための作動油を吐出する。
前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRは、車体1Bに取り付けられて、これを支持している。前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRには、それぞれ油圧モータ3Mが取り付けられている。また、後述するように、前輪3FL、3FRは防除作業機1の操舵輪である。このように、車体1Bは、操舵輪と駆動輪とを有する。油圧モータ3Mは、油圧ポンプ2Pから吐出された作動油によって回転し、前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRを回転させる。このような構造によって、内燃機関2の動力が地面Gに伝えられて、防除作業機1を走行させる。なお、図1は、前輪3FL及び後輪3RLに油圧モータ3Mが取り付けられている状態を示しているが、前輪3FR及び後輪3RRについても同様に油圧モータ3Mが取り付けられている。
本実施形態において、防除作業機1は、内燃機関2の動力を油圧ポンプ2P及び油圧モータ3Mを介して前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRに伝達するが、内燃機関2の動力を、トランスミッションを介して前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRに伝達してもよい。この場合、内燃機関2とトランスミッションとの間に油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)を設け、内燃機関2からの動力を油圧式無段変速装置(HST)の可変油圧ポンプに入力し、油圧式無段変速装置(HST)の定量油圧モータから出力した動力をトランスミッションに入力し、トランスミッション内の副変速装置を介して前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRに動力伝達するようにしてもよい。
防除作業機1は、薬剤を散布するための複数のノズル4と、複数のノズル4が取り付けられてこれらを支持する一対の散布ブームとしての第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cとを有する。第1散布ブーム5Lは、防除作業機1の前後方向の左側に配置され、第2散布ブーム5Rは、防除作業機1の前後方向の右側に配置される。防除作業機1の前後方向とは、防除作業機1の車体1Bに搭載される運転席6からハンドル7に向かう方向と平行な方向である。このように、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとは、防除作業機1の車体1Bの前後方向に対してそれぞれ両側に設けられる一対の散布ブームである。このように、一対の第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとは、防除作業機1の前後方向に対して両側にそれぞれ設けられる。
第3散布ブーム5Cは、防除作業機1の進行方向側かつ第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの間に配置される。防除作業機1の進行方向とは、防除作業機1の車体1Bに搭載される運転席6からハンドル7に向かう方向である。第1散布ブーム5Lと、第2散布ブーム5Rと、第3散布ブーム5Cとは、それぞれ複数のノズル4を有している。本実施形態において、複数のノズル4は、薬剤を散布するための噴射口が地面Gを向いているが、前記噴射口の向きはこれに限定されるものではなく、薬剤の散布対象に応じて適宜調整できる。
第1散布ブーム5Lは、防除作業機1に旋回可能に取り付けられる旋回散布ブーム5BLと、旋回散布ブーム5BLに伸縮自在に支持される延長散布ブーム5SLとを有する。第2散布ブーム5Rも、第1散布ブーム5Lと同様に、防除作業機1に旋回可能に取り付けられる旋回散布ブーム5BRと、旋回散布ブーム5BRに伸縮自在に支持される延長散布ブーム5SRとを有する。図2に示すように、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rは、圃場で薬剤を散布しないときには防除作業機1の車体1Bの前後方向に対して両側に折り畳まれている。
薬剤の散布時において、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rは、いずれも防除作業機1の進行方向側、すなわち前方に向かって、第3散布ブーム5Cと略平行になる位置まで旋回する(図2の矢印Rで示す方向)。図2においては、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rは、図2の矢印Rで示す方向に旋回する。この位置で、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rは防除作業機1に固定される。すると、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rと第3散布ブーム5Cとは、略一直線上に配置されるので、これらに取り付けられた複数のノズル4も、略一直線上に配列される。
また、防除作業機1は、第1散布ブーム5L又は第2散布ブーム5Rと、基準面(例えば、前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRの車軸を含む平面又は水平面)とのなす角度を、それぞれ独立に調整することができる。防除作業機1は、第1散布ブーム5L又は第2散布ブーム5Rと基準面との角度を調整することにより、圃場と第1散布ブーム5L又は第2散布ブーム5Rとの距離を調整することができるので、圃場の作物と第1散布ブーム5L又は第2散布ブーム5Rとの距離も調整することができる。
防除作業機1は、車体1Bの進行方向側かつ前後方向に対して両側に、それぞれ第1散布ブーム高さ調整装置としての左上下アクチュエータ12Lと、第2散布ブーム高さ調整装置としての右上下アクチュエータ12Rとを搭載している。また、防除作業機1は、車体1Bの進行方向側かつ前後方向に対して両側に、第1散布ブーム開閉装置としての左開閉アクチュエータ13Lと、第2散布ブーム開閉装置としての右開閉アクチュエータ13Rとを搭載している。左上下アクチュエータ12L、右上下アクチュエータ12R、左開閉アクチュエータ13L及び右開閉アクチュエータ13Rは、例えば、油圧シリンダ又はエアシリンダ等である。
防除作業機1は、車体1Bの進行方向側に、水平バルブ14を搭載している。水平バルブ14は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cと車体1Bの所定平面(例えば、前輪3FL、3FR及び後輪3RL、3RRの車軸を含む平面)とのなす角度を調整する装置である。例えば、防除作業機1が圃場で防除作業をしているときに、圃場の作付面(圃場において作物が作付けされている部分の表面)に対して防除作業機1が傾斜したような場合、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cが圃場に対して傾斜することがある。この場合、水平バルブ14は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cと車体1Bの所定平面とのなす角度を調整して、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cと作付面とが平行になるようにする。このようにすることで、防除作業機1が作付面に対して傾斜しても、作物とノズル4との距離を略一定に保持することができる。
防除作業機1は、車体1Bの進行方向側に、ブームストロークセンサ95と、リンク角速度センサ96と、リンク傾斜センサ97とを搭載している。また、防除作業機1は、車体1Bの進行方向側かつ前後方向に対して両側に、ブーム角度右センサ98Rとブーム角度左センサ98Lとを搭載し、また、ブーム開閉右センサ99Rとブーム開閉左センサ99Lとを搭載する。ブームストロークセンサ95は、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さを検出する。リンク角速度センサ96は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cを車体1Bに取り付けるリンクの角速度を検出する。リンク傾斜センサ97は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cを車体1Bに取り付けるリンクの水平面に対する傾斜を検出する。ブーム角度右センサ98Rは、第2散布ブーム5Rの前記基準面に対する傾斜角度を検出し、ブーム角度左センサ98Lは、第1散布ブーム5Lの前記基準面に対する傾斜角度を検出する。ブーム開閉右センサ99Rは、第2散布ブーム5Rが閉じているか又は開いているかを検出し、ブーム開閉左センサ99Lは、第1散布ブーム5Lが閉じているか又は開いているかを検出する。ブームストロークセンサ95、リンク角速度センサ96、リンク傾斜センサ97、ブーム角度右センサ98R、ブーム角度左センサ98L、ブーム開閉右センサ99R及びブーム開閉左センサ99Lは、後述する制御装置9と電気的に接続されている。制御装置9は、これらのセンサが検出した値を取得して、防除作業機1の制御に用いる。
防除作業機1は、制御装置9と、GPS受信部10と、表示・操作パネル11と、防除作業機1が走行する速度(車両速度又は車速)を検出する速度検出手段としての車速センサ90と、操舵輪の操舵角度を検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ91とを有する。制御装置9は、防除作業機1の制御、例えば、GPS受信部10から得られる情報に基づいて防除作業機1が圃場の薬剤を散布する領域へ進入際の進入位置を求めたり、ノズル4から散布される薬剤の供給量を制御したり、内燃機関2を制御したりする。GPS受信部10は、GPS衛星から送信される電波を受信する。表示・操作パネル11は、作業者からの入力を受け付けたり、防除作業機1の運転条件を表示したり、防除作業機1の状態を表示したりする。制御装置9、GPS受信部10及び表示・操作パネル11については後述する。車速センサ90は、例えば、前輪3FL、3FR、後輪3RL、3RRの回転速度から又はトランスミッション内の歯車の回転から、防除作業機1の速度(車速)を検出する。操舵角センサ91は、ハンドル7の回転角度から、前輪3FL、3FRの操舵角を検出する。すなわち、防除作業機1は、前輪3FL、3FRが操舵輪となる。
図3、図4は、防除作業機が薬剤を散布する際の姿勢を示す正面図である。図3は、図2に示す旋回散布ブーム5BL、5BRから延長散布ブーム5SL、5SRが伸びていない状態を示している。図4は、旋回散布ブーム5BL、5BRから延長散布ブーム5SL、5SRが伸びている状態を示している。いずれの状態においても、地面G上の防除作業機1は、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rと第3散布ブーム5Cとが略一直線上に配置された状態で、複数のノズル4から薬剤を散布する。すなわち、防除作業機1は、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとを左右に開いた状態で複数のノズル4から薬剤を散布する。なお、防除作業機1は、車体1Bの前後方向両側にそれぞれ設けられた第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとが、車体1Bに収納された状態と左右に開いた状態との間に存在する状態においても、複数のノズル4から薬剤を散布することができる。
図4に示すように、旋回散布ブーム5BL、5BRからそれぞれ延長散布ブーム5SL、5SRが伸びると、第1散布ブーム5Lの先端と第2散布ブーム5Rの先端との距離は、延長散布ブーム5SL、5SRが伸びない場合よりも大きくなる。第1散布ブーム5Lの付け根(第3散布ブーム5Cとの接続部)と先端との距離及び第2散布ブーム5Rの付け根(第3散布ブーム5Cとの接続部)と先端との距離は、ブームストロークセンサ95が検出する。
本実施形態において、旋回散布ブーム5BL、5BRから延長散布ブーム5SL、5SRが伸びる距離は、無段階又は段階的に調整することができるよう構成されるとともに、旋回散布ブーム5BL、5BRと延長散布ブーム5SL、5SRとが重複する個所の旋回散布ブーム5BL、5BR側に存在するノズルへの薬剤の供給を遮断できるよう構成されている。このような構成としては、例えば、旋回散布ブーム5BL、5BRの各ノズルに切替コックを備え、前記切替コックの開閉切替を作動させる切替部材を機外に配置するとともに、延長散布ブーム5SL、5SR側に作動片を設ける。このような構成として、延長散布ブーム5SL、5SRが往・復する際に前記切替コックへ接当させることによって、コック切替をすることができる。このような構造により、防除作業機1は、圃場における薬剤の散布領域に応じて、薬剤を散布する幅(散布幅)を調整することができる。また、防除作業機1は、複数のノズル4から薬剤を散布するノズルを選択して薬剤を散布することができる。このように、防除作業機1は、薬剤の散布幅と薬剤を散布するノズルの数及び位置とを調整することによって、薬剤の様々な散布条件に対応することができる。
次に、薬剤供給系統8について説明する。
図5は、本実施形態に係る防除作業機が有する薬剤供給系統の一例を示す構成図である。防除作業機1は、薬剤供給系統8を有している。薬剤供給系統8は、複数のノズル4に薬剤を供給するシステムである。薬剤供給系統8は、タンク20と、給水ホース21と、吐水ホース22と、散布ホース23と、撹拌ホース24と、余水ホース25と、給水コック26と、ポンプ27と、フィルタ28と、流量制御弁29と、分岐装置30と、安全弁31と、圧力センサ92と、流量センサ93と、弁開度センサ94とを含む。以下において、「水」は、薬剤を含むものとする。タンク20は、ノズル4が散布する薬液を蓄える。給水ホース21は、タンク20からフィルタ28を介して、ポンプ27までタンク20内の薬剤を導くための配管である。吐水ホース22は、ポンプ27から分岐装置30まで薬剤を導くための配管である。散布ホース23は、分岐装置30から第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cまで薬剤を導くための配管である。第1散布ブーム5Lの延長散布ブーム5SL及び第2散布ブーム5Rの延長散布ブーム5SRに取り付けられた複数のノズル4へ薬剤を導くための散布ホース23は、それぞれフレキシブルホース23EL、23ERを有している。このような構造により、フレキシブルホース23EL、23ERは、延長散布ブーム5SL、5SRが伸縮しても、その動きを許容する。撹拌ホース24は、タンク20内の薬液を撹拌するために、常時所定の流量の薬剤をタンク20内に流すための配管である。撹拌ホース24は、吐水ホース22から分岐してタンク20に接続されている。余水ホース25は、散布及び撹拌に使用しなかった薬剤をタンク20内に戻すための配管である。
給水コック26は、タンク20とフィルタ28との間に設けられて、フィルタ28の交換、掃除等を行うときにタンク20からの給水を止めるときに使用する。フィルタ28は、タンク20内の薬剤からごみ等を除去する。ポンプ27は、フィルタ28を通過した薬剤を吸引した後に加圧して、吐水ホース22を介して流量制御弁29に向かって吐出する。流量制御弁29は、分岐装置30へ流す薬剤の流量を調整する装置であって、図1、図2に示す制御装置9によって制御される。分岐装置30は、流量制御弁29から送られてきた薬剤を3本の散布ホース23に分岐させて、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rと第3散布ブーム5Cとがそれぞれ有する複数のノズル4へ薬剤を供給する。
分岐装置30の出口側には、第1散布コック32Lと第2散布コック32Rと第3散布コック32Cとが設けられている。第1散布コック32Lは、分岐装置30と第1散布ブーム5Lのノズル4との間に配置されており、分岐装置30から第1散布ブーム5Lのノズル4に対する薬剤の供給と非供給とを切り替える。第2散布コック32Rは、分岐装置30と第2散布ブーム5Rのノズル4との間に配置されており、分岐装置30から第2散布ブーム5Rのノズル4に対する薬剤の供給と非供給とを切り替える。第3散布コック32Cは、分岐装置30と第3散布ブーム5Cのノズル4との間に配置されており、分岐装置30から第3散布ブーム5Cのノズル4に対する薬剤の供給と非供給とを切り替える。第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cは、直接作業者がこれらを開閉する方式であってもよいし、アクチュエータがこれらを開閉する方式であってもよい。第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cには、これらの状態(閉じているか、開いているか)を検出するための開閉センサが取り付けられており、制御装置9は、前記開閉センサの出力を取得して、第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cの状態を把握する。安全弁31は、吐水ホース22内の薬剤の圧力が過度に上昇した場合に、薬剤をタンク20に戻して吐水ホース22内の薬剤の圧力上昇を抑制するための装置である。
流量センサ93は、流量制御弁29と分岐装置30との間に設けられている。流量センサ93は、分岐装置30へ流入する薬剤の流量、すなわち、ノズル4から散布される薬剤の流量を検出して、図1、図2に示す制御装置9に送信する。圧力センサ92は、分岐装置30に設けられている。圧力センサ92は、散布ホース23へ送られる薬剤の圧力を検出し、図1、図2に示す制御装置9に送信する。弁開度センサ94は、流量制御弁29に設けられている。弁開度センサ94は、流量制御弁29の開度を検出して、図1、図2に示す制御装置9に送信する。制御装置9は、圧力センサ92、流量センサ93及び弁開度センサ94が検出した情報に基づき、ポンプ27及び流量制御弁29を制御して、散布される薬剤の流量を調整する。次に、制御装置9について説明する。
図6は、本実施形態に係る防除作業機が有する制御装置の構成例を示す模式図である。制御装置9は、制御用プロセッサ40と、記憶部41と、入力インターフェース42a〜42qと、入出力インターフェース43と、出力インターフェース44a〜44nとを含む。制御用プロセッサ40は、コンピュータにおいてソフトウェアを動作させる演算装置(ハードウェア)であり、コンピュータプログラムの命令を解釈し実行する機能を有する。制御用プロセッサ40は、防除作業機1が有する内燃機関2及び薬剤供給系統8等を制御するためのコンピュータプログラムの命令を解釈し実行することにより、防除作業機1全体を制御する。この他にも、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの昇降及び開閉を制御したり、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの傾斜を制御したりする制御部としても機能する。この場合、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの動作の制御を実現するための命令が記述されたコンピュータプログラムの命令を解釈し実行することにより、上述した制御部の機能を実現する。
記憶部41は、RAM(Random Access Memory)41Aと、ROM(Read Only Memory)41Bと、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)41Cとを含む。RAM41Aは、電源の供給が絶たれると記憶内容が失われる揮発性メモリであり、ROM41B及びEEPROM41Cは、電源を供給しなくとも記憶内容を保持する不揮発性メモリである。EEPROM41Cは、記憶内容を電気的に消去できるとともに、新たな情報を記憶することができる。記憶部41は、防除作業機1の制御を実現するためのコンピュータプログラム及びデータ並びに散布制御装置としての機能を実現するためのコンピュータプログラム及びデータ等を記憶する。本実施形態において、ROM41Bはコンピュータプログラム等を記憶し、EEPROM41Cは制御装置9の動作中に得られたデータ等を記憶する。RAM41Aは、制御装置9の動作中において、ROM41Bに記憶されたコンピュータプログラムを展開する。
入力インターフェース42a〜42qは、それぞれ、伸縮スイッチ88、操舵角センサ91、ポンプスイッチ81、車速センサ90、圧力センサ92、流量センサ93、弁開度センサ94、設定スイッチ82、ブームストロークセンサ95、リンク角速度センサ96、リンク傾斜センサ97、ブーム角度右センサ98R、ブーム角度左センサ98L、ブーム開閉右センサ99R、ブーム開閉左センサ99Lが接続される。入力インターフェース42a〜42qは、自身に入力される情報を、制御用プロセッサ40が利用できる形に変換して制御用プロセッサ40へ入力する。入出力インターフェース43は、GPS受信部10の送受信回路56が接続される。後述するように、GPS受信部10は、GPS車速Vgを生成する。送受信回路56は、GPS車速Vgを入出力インターフェース43に送信し、また、制御用プロセッサ40からの命令を、入出力インターフェース43を介して受信する。入出力インターフェース43は、GPS受信部10と制御用プロセッサ40との間に介在し、両者の間で情報のやりとりができるようにする。
出力インターフェース44a、44c〜44mは、それぞれ、流量制御モータ29M、ポンプ27、ブザー83、表示部11D、水平バルブ14、右上下アクチュエータ12R、左上下アクチュエータ12L、右開閉アクチュエータ13R、左開閉アクチュエータ13L、右伸縮アクチュエータ15R、左伸縮アクチュエータ15Lに接続される。出力インターフェース44nは、全体昇降用アクチュエータ16に接続される。流量制御モータ29Mは、図5に示す流量制御弁29の弁開度を調整するための装置である。出力インターフェース44bは、制御用プロセッサ40が生成した、流量制御モータ29Mの回転方向を切り替えるための情報を、モータ回転方向切替出力RDに変換して出力する。流量制御モータ29Mは、モータ回転方向切替出力RDによって回転方向が切り替えられる。出力インターフェース44a〜44mは、制御用プロセッサ40が生成した流量制御モータ29M、ポンプ27、右上下アクチュエータ12R、左上下アクチュエータ12L及び全体昇降用アクチュエータ16等を制御するための命令を、これらの機器が利用できる形に変換して出力する。
防除作業機1は、車速に連動させて薬剤の散布量を制御する。このような制御を、車速連動散布制御という。制御用プロセッサ40は、すべてのノズル4から散布される薬剤の流量(単位時間当たりの散布量)をパラメータとした演算式を用いて、車速連動散布制御を実現する。すなわち、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布条件に基づき、防除作業機1の車速に連動して薬剤を散布する。作業者は、表示・操作パネル11から、ノズル定数(散布圧力10kgf/cm2時におけるノズル一個あたりの噴霧量L/min)と散布圧力(kgf/cm2)と、10アールあたりの目標散布量(L/10a)とを入力する。制御用プロセッサ40は、防除作業機1の車速及び前記目標散布量等を用いて、図5に示す散布ホース23へ送られる薬剤の設定圧力を計算する。そして、制御用プロセッサ40は、計算した設定圧力となるように、散布ホース23へ供給される薬剤の量を調整する。薬剤の量は、制御用プロセッサ40が、流量制御モータ29Mを駆動して流量制御弁29の開度を調整することにより調整される。ここで、防除作業機1の車速は、GPS受信部10が生成した防除作業機1の車速又は車速センサ90により検出された防除作業機1の車速である。次に、GPS受信部10について説明する。
図7は、本実施形態に係る防除作業機が有するGPS受信部の構成例を示す模式図である。GPS受信部10は、複数のGPS衛星SG1、SG2等から受信した電波に基づき、防除作業機1の位置に関する情報(位置情報)及びGPS車速Vg等を出力する。GPS受信部10は、受信アンテナ50と、受信回路51と、信号処理回路52と、時計回路53と、メモリ54と、GPS用プロセッサ55と、送受信回路56とを含む。
受信アンテナ50は、複数のGPS衛星SG1、SG2等が発信した電波を受信する。受信回路51は、受信アンテナ50と接続されており、受信アンテナ50が受信したGPS衛星SG1、SG2等が発信した電波を電気信号に変換する。信号処理回路52は、受信回路51が出力した電気信号を、GPS用プロセッサ55が利用できる形に変換して出力する。時計回路53は、時刻を計時してGPS用プロセッサ55へ入力する。メモリ54は、GPS用プロセッサ55の処理に必要なデータを記憶したり、GPS用プロセッサ55の処理に必要なコンピュータプログラムを展開したりする。
GPS用プロセッサ55は、複数のGPS衛星SG1、SG2等が発信した電波に基づき、GPS受信部10の位置についての情報を計算し、送受信回路56に出力する。また、GPS用プロセッサ55は、GPS受信部10の位置についての情報に基づき、GPS受信部10の速度を計算し、送受信回路56に出力する。GPS受信部10は、防除作業機1に搭載されているので、GPS受信部10の位置についての情報は、防除作業機1の位置に関する情報(位置情報)となる。また、前記速度は、GPS衛星SG1、SG2の電波に基づいて得られた防除作業機1の車速であり、これが上述したGPS車速Vgである。
送受信回路56は、制御装置9が有する制御用プロセッサ40と、制御装置9の入出力インターフェース43を介して接続されている。送受信回路56は、GPS用プロセッサ55が求めた位置情報を制御装置9の入出力インターフェース43を介して制御用プロセッサ40へ出力する。制御用プロセッサ40は、前記位置情報を用いて、防除作業機1を制御したり、GPS受信部10に対してデータの変更要求を発信したりする。なお、GPS車速Vgは、制御装置9の制御用プロセッサ40が、GPS受信部10から得た位置情報に基づいて求めるようにしてもよい。
図8は、本実施形態に係る防除作業機が有する操作パネルの一例を示す模式図である。表示・操作パネル11は、表示部11Dと、手動スイッチ80と、ポンプスイッチ81と、設定スイッチ82と、累計リセットスイッチ87と、表示切替スイッチ85と、自動スイッチ86と、伸縮スイッチ88とを含む。表示部11Dは、図6に示す制御用プロセッサ40が求めた、防除作業機1が圃場の薬剤を散布する領域へ進入する進入位置を表示する。また、表示部11Dは、防除作業機1が薬剤を散布する圃場に関する情報、散布する薬剤に関する情報、防除作業機1の運転状態に関する情報等を表示する。圃場に関する情報としては、例えば、圃場の位置及び面積がある。後者に関する情報としては、例えば、薬剤の種類、散布量、図5に示すポンプ27の吐出圧力の設定値(設定圧力)、散布した薬剤の累計値等がある。さらに、表示部11Dは、防除作業機1が圃場で薬液の散布作業を実行しているときに、防除作業機1の現在位置及び進入位置の指標を表示する。このようにすることで、表示部11Dは、作業者の操作をガイドする。表示部11Dは、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を用いることができる。
手動スイッチ80は、薬剤の散布において、作業者が自身の操作で薬剤の散布条件を変更したり、散布幅を調整したりする場合に操作する入力手段である。手動スイッチ80が操作されると、図6に示す制御装置9は、設定スイッチ82が散布条件の変更あるいは散布幅の調整を受け付けるように設定する。ポンプスイッチ81は、図5に示すポンプ27を起動させるための入力手段である。ポンプスイッチ81が操作されると、ポンプ27が起動し、そして第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cを開き側に操作することで薬剤の散布が開始される。設定スイッチ82は、薬剤の散布条件を入力するための入力手段である。設定スイッチ82は、薬剤の散布量を設定するための散布量設定スイッチ82Aと、ポンプ27の吐出圧力を設定するための圧力設定スイッチ82Bと、設定値を増減させる増減スイッチ82Cと、設定を確定するための設定スイッチ82Dとを含む。累計リセットスイッチ87は、散布した薬剤の累計量をリセットする際に用いられる入力手段である。表示切替スイッチ85は、表示部11Dに表示される情報を切り替える際に用いられる入力手段である。自動スイッチ86は、薬剤の散布において、設定された散布条件で薬剤を自動散布する場合に操作される入力手段である。機体を停車した状態で、この自動スイッチ86がONとなるように操作されると、ポンプ27が駆動(ポンプスイッチ81はOFF)する。そして、第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cを開き側に操作すると、自動散布の準備が整う構成である。第1散布コック32L、第2散布コック32R及び第3散布コック32Cを開き側に操作しても、ポンプ27と一体構成の電磁クラッチがOFFなので薬剤は散布されない。車速センサから機体の走行状態が検出されると、ポンプ27と一体構成の電磁クラッチがONとなり、車速センサからの情報に基づき散布量が均一になるように調整されて自動散布される。そして、走行停止状態では自動的に散布停止となる。なお、手動スイッチ80を設けない構成としてもよい。この場合は、自動スイッチ80がOFFされると手動散布となる構成である。
伸縮スイッチ88は、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rを伸縮させるためのスイッチである。伸縮スイッチ88は、第1伸縮スイッチ88Lと、第2伸縮スイッチ88Rとを含む。第1伸縮スイッチ88Lは、第1散布ブーム5Lを伸縮させ、第2伸縮スイッチ88Rは、第2散布ブーム5Rを伸縮させる。
図9は、薬剤を散布する圃場において、薬剤を散布する領域を示す模式図である。図9に示す例において、X軸は緯線と平行な線を示し、Y軸は経線と平行な線を示す。図1、図2に示す防除作業機1が圃場FWへ薬剤を散布する領域を、薬剤散布領域AWとする。この例において、薬剤散布領域AWは、P1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)で規定される長方形の領域である。薬剤散布領域AWとそれ以外の領域とは、境界B1、B2、B3、B4で区画される。なお、薬剤散布領域AWの形状は長方形に限られず、台形、平行四辺形、五角形、六角形、円形、楕円形等、様々な形状がある。
本実施形態では、防除作業機1が圃場FWの薬剤散布領域AWに薬剤を散布するにあたり、図6に示す制御装置9は、圃場FWの薬剤散布領域AWの位置情報(散布領域位置情報)と、薬剤の散布幅とを少なくとも用いて、防除作業機1が圃場FWの薬剤散布領域AWへ進入する際の進入位置を求める。制御装置9は、求めた進入位置を図8に示す表示部11Dに表示させてもよい。薬剤散布領域AWは、上述したP1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)によって規定されるので、これらを散布領域位置情報とする。
P1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)は、X座標とY座標とで決定される圃場FW内における位置である。X軸は緯線と平行な線を示し、Y軸は経線と平行な線を示すので、X座標は緯度を、Y座標は経度を示す。P1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)を求めるにあたっては、まず、薬剤散布領域AWの四隅にGPS受信部を設置する。そして、それぞれの位置において前記GPS受信部から得られた緯度及び経度を、それぞれのP1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)の緯度及び経度とすればよい。このようにして求めたP1(X1、Y1)、P2(X2、Y2)、P3(X3、Y3)、P4(X4、Y4)を散布領域位置情報とする。そして、図8に示す表示・操作パネル11から、求めた散布領域位置情報を図6に示す制御装置9の記憶部41、より具体的にはRAM41AとEEPROM41Cとの少なくとも一方に記憶させる。制御用プロセッサ40は、記憶部41に記憶された散布領域位置情報から、薬剤散布領域AWの形状、面積、境界B1、B2、B3、B4の長さ、場所等を求めることができる。
図10は、本実施形態に係る防除作業機の散布幅を説明するための平面図である。防除作業機1の進行方向と直交する方向が、防除作業機1の幅方向である。薬剤の全散布幅Wsaは、防除作業機1の第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rが有するノズル4のうち、幅方向最外側に存在する一対のノズル4、4間の距離(最短距離)である。薬剤の散布においては、通常、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとは同じ長さにする。したがって、防除作業機1の幅方向中心CLから第1散布ブーム5Lの幅方向再外側に存在するノズル4までの距離(以下、第1散布幅という)W1と、防除作業機1の幅方向中心CLから第2散布ブーム5Rの幅方向再外側に存在するノズル4までの距離(以下、第2散布幅という)W2とは、いずれもWsa/2となる。第1散布幅W1は、防除作業機1の進行方向左側における散布幅であり、第2散布幅W2は、防除作業機1の進行方向右側における散布幅である。なお、薬剤の散布中においては、第1散布幅W1と第2散布幅W2とが異なっていてもよい。本実施形態において、散布幅とは、防除作業機1が薬剤を圃場FWに散布する際の幅であり、全散布幅Wsaと、第1散布幅W1と、第2散布幅W2とを含む概念である。
図11から図13は、本実施形態に係る防除作業機が圃場で薬剤を散布する状態を示す図である。圃場PWの薬剤散布領域AWは、X方向における寸法(圃場幅)がWである。図11に示す例において、圃場PWの薬剤散布領域AWに進入した防除作業機1は、P1(X1、Y1)の近傍における進入位置SからX方向に進行し、P2(X2、Y2)の近傍の薬剤散布開始位置Aで進行方向を90度変更してからY方向に向かって薬剤を散布する。薬剤の散布においては、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとを最大長に伸ばし、最大散布幅Wmで薬剤を散布することが好ましい。このとき、防除作業機1の幅方向中心部から第1散布ブーム5Lの先端ノズルまでの長さと、防除作業機1の幅方向中心部から第2散布ブーム5Rの先端ノズルまでの長さとは、それぞれWm/2である。図6に示す制御装置9の制御用プロセッサ40は、最大散布幅Wmに基づいて薬剤散布開始位置Aを求める。薬剤散布領域AWの位置情報は計測等によって予め分かっているので、例えば、X方向における薬剤散布開始位置Aは、最初に薬剤が散布される薬剤散布領域AW1の外側の位置からWm/2を減算した位置になる。
符号AW1は、薬剤散布領域AWのうち、最初に薬剤が散布される領域を示す。薬剤散布領域AW1全体に薬剤が散布されると、防除作業機1は、X軸方向において薬剤散布領域AW1と隣接する薬剤散布領域AW2に薬剤を散布する。このため、防除作業機1は、旋回開始位置(散布終了位置)Bで薬剤散布領域AW1に対する薬剤の散布を終了するとともに、方向転換する。そして、薬剤散布領域AW2に進入して、旋回終了位置(散布開始位置)Cから薬剤の散布を開始する。隣接する薬剤散布領域AW1、AW2同士の距離(隣接散布領域距離)はWaである。薬剤散布領域AW1から次の薬剤散布領域AW2に進入する際に、例えば、防除作業機1の作業者が進入位置を間違えて進入した場合、図6に示す制御装置9の制御用プロセッサ40は、必要に応じて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させて、薬剤の散布幅Wsを調整する。この場合、制御用プロセッサ40は、隣接散布領域距離Waと、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から取得した防除作業機1の位置情報とに基づいて、薬剤の散布幅Wsを求め、これに基づいて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させる。このように、制御用プロセッサ40は、薬剤散布領域の位置情報と薬剤の散布幅とに基づいて、防除作業機1が圃場において次の薬剤散布領域に進入する進入位置を求め、GPS受信部10から取得した防除作業機1の位置情報から、防除作業機1が薬剤散布開始位置に到達したと判定したら、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとのうち少なくとも一方の長さを薬剤散布領域の幅と散布開始位置とに基づいて調整する。このようにすることで、薬剤散布領域AW1に対して確実に薬剤を散布することができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
図12は、薬剤散布開始位置Aとは異なる位置に防除作業機1が進入した場合を示している。最初に薬剤を散布する薬剤散布領域AW1へ防除作業機1が進入する場合において、例えば、防除作業機1の作業者が進入位置を間違えて進入した場合、図6に示す制御装置9の制御用プロセッサ40は、必要に応じて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させて、薬剤の散布幅Wsを調整する。この場合、制御用プロセッサ40は、隣接散布領域距離Waと、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から取得した防除作業機1の位置(進入位置)Arにおける情報とに基づいて、薬剤散布開始位置Aと実際の進入位置Arとの差(進入位置ずれ量)αを求める。
最初に薬剤を散布する薬剤散布領域AW1では、最大散布幅Wmで薬剤の散布を開始するが、図12に示すように、実際の進入位置Arが薬剤散布領域AW1の外側にずれた場合、第2散布ブーム5Rの長さを調整する必要がある。制御用プロセッサ40は、進入位置Arの位置情報から求めた進入位置ずれ量αをWm/2から減算した大きさ(Wm/2−α)を、第2散布ブーム5Rの長さとする。制御用プロセッサ40は、第2散布ブーム5Rの長さが(Wm/2−α)となるように、第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させる。このようにすることで、薬剤散布領域AW1に対して確実に薬剤を散布することができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
防除作業機1は、第2散布ブーム5Rを最大長にして薬剤散布領域AW1へ進入する。このため、実際の進入位置Arが薬剤散布領域AW1の内側(P1(X1、Y1)側)にずれた場合、第2散布ブーム5Rを伸ばすことはできない。この場合、制御用プロセッサ40は、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から取得した防除作業機1の位置情報又は図6に示す操舵角センサ91の検出値等から、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aよりも手前に進入しそうになった場合には、図6に示すブザー83を鳴らす等して防除作業機1の作業者に警告する。このようにすることで、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aよりも手前に進入する可能性を低減できる。
図13は、防除作業機1が、最後の薬剤散布領域AWnに薬剤を散布する際の状態を示している。X方向において、最後の薬剤散布領域AWnに隣接する薬剤散布領域AWn−1に薬剤を散布した防除作業機1は、散布終了位置(旋回開始位置)N−1で薬剤散布領域AWn−1に対する薬剤の散布を終了するとともに、方向転換する。そして、最後の薬剤散布領域AWnに進入して、散布開始位置(旋回終了位置、最終進入位置ともいう)Nから薬剤の散布を開始する。隣接する薬剤散布領域AWn−1、AWn同士の距離(隣接散布領域距離)はWaである。最後の薬剤散布領域AWnにおいて、図6に示す制御装置9の制御用プロセッサ40は、隣接散布領域距離Waと、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から取得した防除作業機1の位置情報とに基づいて、最後の薬剤散布領域AWnにおいて、薬剤の散布幅Wsを求め、これに基づいて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させる。このように、制御用プロセッサ40は、薬剤散布領域の位置情報と薬剤の散布幅とに基づいて、防除作業機1が圃場において最後に薬剤を散布する領域へ進入する最終進入位置を求める。さらに、制御用プロセッサ40は、GPS受信部10から防除作業機1の位置情報を取得するとともに、防除作業機1が最終進入位置に到達するまでに、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方(例えば、旋回方向外側のもの)の長さを薬剤散布領域の幅と最終進入位置とに基づいて調整する。このようにすることで、最後の薬剤散布領域AWn全体に確実に薬剤を散布できる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。次に、防除作業機1が薬剤を散布する際における第1散布ブーム5L等の長さの調整例について説明する。
(第1の調整例)
図14は、第1の調整例を示すフローチャートである。ステップS101において、図6に示す制御装置9の制御用プロセッサ40は、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から防除作業機1の位置情報(GPSデータ)を取得する。次に、ステップS102において、制御用プロセッサ40は、取得した位置情報から防除作業機1が薬剤を散布する圃場を判定する。例えば、制御装置9の記憶部41に、予め複数の圃場の情報を記憶させておき、制御用プロセッサ40は、この圃場の情報とステップS101で取得した防除作業機1の位置情報とを比較して、防除作業機1が薬剤を散布する圃場を判定する。
次に、ステップS103において、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が薬剤を散布する圃場のデータから圃場幅Wを取得する。次に、ステップS104において、制御用プロセッサ40は、最大散布幅Wmをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。最大散布幅Wmは、防除作業機1が有する第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとを最大の長さまで伸ばしたときの散布幅である。
次に、ステップS105に進み、制御用プロセッサ40は、薬剤散布開始位置Aを計算する。X方向における薬剤散布開始位置Aの位置の求め方は上述した通りである。薬剤散布領域AWの位置情報は計測等によって予め分かっているので、Y方向における薬剤散布開始位置Aは、図11におけるLaを、最初に薬剤が散布される薬剤散布領域AW1のY方向における外側の位置に加算した位置になる。
薬剤散布開始位置Aが求められたら、ステップS106において、制御用プロセッサ40は、薬剤散布開始位置Aをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。次に、ステップS107において、制御用プロセッサ40は、図8に示す表示部11Dに、薬剤散布開始位置Aを表示するとともに、ステップS108において、薬剤散布の経路を表示する。ステップS107、ステップS108は実行しなくてもよい。次に、ステップS109に進み、制御用プロセッサ40は、表示部11Dに現時点における防除作業機1の位置を表示させる。この位置は、例えば、図11に示す進入位置Sである。ステップS109の後、防除作業機1は走行及び薬剤の散布を開始する。
次に、ステップS110に進み、制御用プロセッサ40は、GPS受信部10のGPS用プロセッサ55から防除作業機1の位置情報(GPSデータ)を取得し、ステップS111において、表示部11Dに現時点における防除作業機1の位置を表示させる。次に、ステップS112に進み、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達したか否かを判定する。
防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達していない場合(ステップS112、No)、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達するまでステップS110からステップS112を繰り返す。防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達した場合(ステップS112、Yes)、ステップS113に進み、制御用プロセッサ40は、必要に応じて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方の長さを調整する。例えば、防除作業機1が第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rを短くして走行している場合、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達したら、制御用プロセッサ40は第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rをそれぞれ最大長に伸ばす。このようにすることで、防除作業機1は、薬剤散布開始位置Aに到達した直後から、最大散布幅Wmで薬剤散布領域AW1に薬剤を散布することができる。このように、制御用プロセッサ40は、GPS受信部10から取得した防除作業機1の位置情報から、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達したと判定される場合は、一対の散布ブーム、すなわち、第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとのうち少なくとも一方の長さを薬剤散布開始位置Aに基づいて調整する。このようにすることで、確実に薬剤散布領域AW1全体に薬剤を散布できるようになるとともに、作業者の負担を軽減できる。
(第2の調整例)
図15は、第2の調整例を示すフローチャートである。第2の制御例は、図12を用いて説明したように、薬剤散布開始位置Aと実際の進入位置Arとがずれた場合の処理である。第2の調整例のステップS201〜ステップS211は、第1の調整例のステップS101〜ステップS111と同様なので、説明を省略する。ステップS212において、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達した場合(ステップS212、Yes)、ステップS216に進み、制御用プロセッサ40は、必要に応じて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方の長さを調整する。この調整の処理は、第1調整例におけるステップS113の処理と同様である。
防除作業機1が薬剤散布開始位置Aに到達していない場合(ステップS212、No)、ステップS213に進む。ステップS213において、防除作業機1が薬剤の散布を開始していない場合(ステップS213、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS210〜ステップS213を繰り返す。防除作業機1が薬剤の散布を開始している場合(ステップS213、Yes)、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aを通過したと判断できる。この場合、ステップS214に進み、制御用プロセッサ40は、例えば、GPS受信部10のGPS用プロセッサ55から、薬剤散布領域AW1へ防除作業機1が実際に進入した進入位置Arの位置情報(GPSデータ)を取得し、これに基づいて、薬剤の散布を開始する位置を修正する。そして、ステップS215に進み、制御用プロセッサ40は、薬剤散布開始位置Aと実際の進入位置Arとの差である進入位置ずれ量αを求め、これに基づいて薬剤の散布幅を修正する。その後、ステップS216に進み、制御用プロセッサ40は、修正した散布幅になるように第1散布ブーム5Lの長さを調整する。このようにすることで、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aを通過して薬剤散布領域AW1へ進入した場合であっても、無駄なく薬剤を薬剤散布領域AW1へ散布できる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(第3の調整例)
図16は、第3の調整例を示すフローチャートである。第3の制御例は、図11を用いて説明したように、防除作業機1が次の薬剤散布領域へ移動する際の処理である。第3の調整例のステップS301〜ステップS304は、第1の調整例のステップS101〜ステップS104と同様なので、説明を省略する。ステップS305において、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が薬剤の散布を開始するまで待機し(ステップS305、No)、防除作業機1が薬剤の散布を開始したら(ステップS305、Yes)、処理をステップS306に進める。
ステップS306において、制御用プロセッサ40は、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から防除作業機1の位置情報(GPSデータ)を取得する。次に、ステップS307に進み、制御用プロセッサ40は、薬剤散布開始位置Aを計算した後これをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。次に、ステップS308に進み、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布処理を実行する。薬剤の散布処理は、例えば、第1制御例におけるステップS106〜ステップS113の処理に加えて、防除作業機1に薬剤を実際に散布させる処理である。
次に、ステップS309に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示すブームストロークセンサ95の検出値(第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さに相当)を取得する。そして、ステップS310において、制御用プロセッサ40は、薬剤の実際の散布幅Wsを求める。次に、ステップS311に進み、制御用プロセッサ40は、旋回開始処理を実行する。旋回開始処理は、例えば、次のような処理である。旋回開始処理において、まず、制御用プロセッサ40は、圃場幅W及び散布幅Ws等に基づいて図11に示す旋回開始位置Bを求め、旋回開始位置Bをセットして記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。次に、制御用プロセッサ40は、図8に示す表示部11Dに、旋回開始位置Bを表示するとともに、旋回時の経路を表示する。これらは表示部11Dに表示されなくてもよい。次に、制御用プロセッサ40は、表示部11Dに現時点における防除作業機1の位置を表示させる。そして、防除作業機1が旋回開始位置Bに到達したら、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布を停止するとともに、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から防除作業機1の位置情報を取得して、以後の旋回終了位置C、散布幅及び旋回開始位置B等の計算並びに散布の制御等に用いる。
次に、ステップS312に進み、制御用プロセッサ40は、図11に示す旋回終了位置Cを算出する。そして、ステップS313に進み、制御用プロセッサ40は、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から防除作業機1の位置情報(GPSデータ)を取得する。ステップS314において、防除作業機1の位置(ステップS314で取得した位置情報)がステップS312で計算した旋回終了位置Cに到達していない場合(ステップS314、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS313、ステップS314を繰り返す。
ステップS314において、防除作業機1の位置がステップS312で計算した旋回終了位置Cに到達した場合(ステップS314、Yes)、ステップS315に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示すブザー83を一定時間ONにする。このようにすることで、制御用プロセッサ40は、防除作業機1の旋回が終了し、次の薬剤散布領域で薬剤の散布を開始する位置に到達したことを作業者に報知することができる。なお、第3制御例において、ブザー83を一定時間ONにしなくてもよい。
次に、ステップS316に進み、制御用プロセッサ40は、旋回終了処理(旋回が終了したことを記憶部41に保存する等)を実行する。次に、ステップS317に進み、制御用プロセッサ40は、図7に示すGPS受信部10のGPS用プロセッサ55から、旋回終了時における防除作業機1の位置情報(GPSデータ)を取得し、ステップS318において、図11に示す旋回終了位置Cをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。ステップS319に進み、制御用プロセッサ40は、圃場幅W、散布幅Ws、旋回開始位置B及び旋回終了位置C等に基づいて、これから薬剤を散布する薬剤散布領域(図11に示す例では符号AW2で示す領域)における散布幅Wsを計算する。
次に、ステップS320に進み、制御用プロセッサ40は、ステップS319で求めた散布幅Wsに基づき、図6に示すブームストロークセンサ95の目標値(第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さに相当)をセットする。そして、ステップS321において、制御用プロセッサ40は、必要に応じて、ブームストロークセンサ95の検出値がステップS320でセットした目標値になるまで第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方の長さを調整する。なお、ブームストロークセンサ95の検出値が、ステップS320でセットした目標値に既に到達している場合、第1散布ブーム5L等の長さは調整されない。第1散布ブーム5L等の長さは、防除作業機1が旋回を終了するまで(旋回終了位置Cに到達するまで)に調整されていればよい。このため、防除作業機1の旋回が終了した後、防除作業機1が停止した状態で第1散布ブーム5L等の長さが調整されてもよい。
第3の調整例のようにすることで、隣接する薬剤散布領域全体に確実に薬剤を散布できる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(第4の調整例)
図17は、第4の調整例を示すフローチャートである。第4の調整例は、GPS受信部10が生成した防除作業機1の位置情報を用いない場合の処理である。第4の調整例は、電波状態等によって、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合のバックアップとしても用いることができる。ステップS501において、制御用プロセッサ40は、これから薬剤を散布する圃場の圃場幅Wの設定値を取得する。ステップS502において、制御用プロセッサ40は、圃場幅Wをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。圃場幅Wの設定値は、例えば、薬剤を散布する圃場の情報として、図6に示す記憶部41に保存されている。なお、複数の圃場の情報(圃場幅W、位置、作付け作物等の情報)を、記憶部41に保存しておいてもよい。
次に、ステップS503に進み、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が薬剤の散布を開始するまで待機し(ステップS503、No)、防除作業機1が薬剤の散布を開始したら(ステップS503、Yes)、処理をステップS504に進める。ステップS504において、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布処理を実行する。薬剤の散布処理は、例えば、防除作業機1に薬剤を実際に散布させる処理である。
次に、ステップS505に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示すブームストロークセンサ95の検出値(第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さに相当)を取得する。そして、ステップS506において、制御用プロセッサ40は、薬剤の実際の散布幅Wsを求める。次に、ステップS507に進み、防除作業機1が旋回を開始していない場合(ステップS507、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS504〜ステップS507を繰り返す。防除作業機1の旋回は、図6に示す操舵角センサ91の検出値から判定できる。防除作業機1が旋回を開始した場合(ステップS507、Yes)、ステップS508に進み、制御用プロセッサ40は、散布処理を中断、より具体的には、薬剤の散布を中断させる。
次に、ステップS509において、制御用プロセッサ40は、図11に示す旋回終了位置Cを計算する。旋回終了位置Cは、例えば、散布幅Wsから求めることができる。次に、ステップS510に進み、制御用プロセッサ40は、旋回開始位置Bから防除作業機1が走行した走行距離を計算する。走行距離は、例えば、図6に示す車速センサ90の検出値(車速パルス)と防除作業機1の走行時間とに基づき、両者の積から計算することができる。制御用プロセッサ40は、防除作業機1が前進している場合にのみ走行距離計算し、防除作業機1が後進している場合は計算しない。このようにすることで、防除作業機1の走行距離を正確に求めることができる。以下の例でも同様である。次に、ステップS511に進み、制御用プロセッサ40は、旋回終了位置判定を実行する。旋回終了位置判定は、防除作業機1が旋回終了位置Cに到達したか否かの判定であり、ステップS509で計算した旋回終了位置CとステップS510で計算した防除作業機1の走行距離とに基づいて実行される。
防除作業機1が旋回終了位置Cに到達していない場合、旋回は終了していないとして(ステップS512、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS510〜ステップS511を繰り返す。防除作業機1が旋回終了位置Cに到達した場合、旋回は終了したとして(ステップS512、Yes)、ステップS513に進む。ステップS513において、制御用プロセッサ40は、次に薬剤を散布する薬剤散布領域における第1散布ブーム5L等の長さを計算する。
第1散布ブーム5L等の長さは、圃場幅Wと、これまでに薬剤の散布が終了した薬剤散布領域における散布幅Wsの和(既散布幅総和ΣWs)とに基づいて求めることができる。例えば、圃場幅Wから既散布幅総和ΣWsを減算した値が、これから薬剤を散布する薬剤散布領域の幅になる。これから薬剤を散布する薬剤散布領域の幅が最大散布幅Wmよりも大きい場合、散布幅Ws=Wmとなるようにして、防除作業機1の幅方向中心から第1散布ブーム5Lの先端ノズルまでの長さと第2散布ブーム5Rの先端ノズルまでの長さとがそれぞれWm/2となるように第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さを決定する。これから薬剤を散布する薬剤散布領域の幅が最大散布幅Wmよりも小さい場合、これから薬剤を散布する薬剤散布領域の幅からWm/2を減算した値が、防除作業機1の幅方向中心から防除作業機1の旋回方向外側における散布ブームの先端ノズルまでの距離となるようにする。また、防除作業機1の旋回方向内側における散布ブームの長さは、防除作業機1の幅方向中心から防除作業機1の旋回方向内側における散布ブームの先端ノズルまでの距離がWm/2となるようにする。ステップS513においては、例えば、上述したように、第1散布ブーム5L等の長さを計算する。次に、ステップS514に進み、ステップS513で求めた長さに基づいて第1散布ブーム5Lと第2散布ブーム5Rとの少なくとも一方を伸縮させる。
このような制御によって、第4の調整例は、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合であっても、薬剤散布領域AW1に対して確実に薬剤を散布することができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
第4の調整例において、ステップS510で計算した防除作業機1の走行距離を、スリップ率に基づいて補正してもよい。車速をVb、車輪速度をVwとすると、スリップ率SRは、(Vw−Vb)/Vbなので、車速Vb=Vs/(1+SR)で求めることができる。車輪速度Vwは、図6に示す車速センサ90の検出値(車速パルス)から求めることができる。スリップ率SRは、例えば、圃場の平均的な値を、圃場の種類及び圃場の状態等毎に図6の記憶部41に記憶させておく。そして、制御用プロセッサ40は、薬剤を散布する際に、圃場の種類及び圃場の状態から設定されたスリップ率に基づき、防除作業機1の車速を補正する。このようにすることで、より正確な車速を得ることができるので、制御の精度が向上する。
第4の調整例において、ステップS511における旋回終了位置判定で、防除作業機1が旋回終了位置Cよりも前の所定位置に到達した場合、図6に示すブザー83を所定時間鳴らす等することにより、防除作業機1の作業者に警告してもよい。このようにすることで、防除作業機1を旋回終了位置Cへ確実に進入させることができる。
(第5の調整例)
図18は、第5の調整例を示すフローチャートである。第5の調整例は、GPS受信部10が生成した防除作業機1の位置情報を用いない場合における薬剤を散布する前の処理である。第5の調整例は、電波状態等によって、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合のバックアップとしても用いることができる。第5の調整例のステップS601、ステップS602は、第4の調整例のステップS501、ステップS502と同様であるので説明を省略する。
ステップS603において、制御用プロセッサ40は、最大散布幅Wmをセットし、例えば、記憶部41のRAM41Aへ一時的に保存する。次に、ステップS604において、制御用プロセッサ40は、図11に示す薬剤散布開始位置A(X方向における薬剤散布開始位置A)を計算する。そして、ステップS605に進み、制御用プロセッサ40は、例えば、計算した薬剤散布開始位置Aと圃場幅Wとに基づいて、薬剤散布開始位置Aまでに走行する走行距離(目標走行距離)D(図11参照)を計算する。ステップS606において、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が作業を開始、より具体的には薬剤の散布を開始するまで待機し(ステップS606、No)、防除作業機1が作業を開始したら(ステップS606、Yes)、処理をステップS607に進める。
ステップS607において、制御用プロセッサ40は、図6に示す車速センサ90の検出値(車速パルス)を取得する。ステップS608において、制御用プロセッサ40は、スリップ率を設定する。スリップ率SRは、例えば、圃場の平均的な値を、圃場の種類及び圃場の状態等毎に図6の記憶部41に記憶させてある。制御用プロセッサ40は、圃場の種類及び圃場の状態等に基づき、対応するスリップ率を記憶部41から取得し、これから薬剤を散布する圃場のスリップ率として設定する。
次に、ステップS609に進み、制御用プロセッサ40は、進入位置Sから防除作業機1が走行した走行距離Dを計算する。走行距離Dは、車速センサ90の検出値(車速パルス)と防除作業機1の走行時間とに基づき、両者の積から計算することができる。走行距離Dの計算において、制御用プロセッサ40は、ステップS608で設定したスリップ率を用いて防除作業機1の車速を補正する。次に、ステップS610に進み、制御用プロセッサ40は、ステップS609で計算した防除作業機1の走行距離が(D−γ)になっていない場合(ステップS610、No)、ステップS607〜ステップS611を繰り返す。ステップS610において、制御用プロセッサ40は、ステップS609で計算した防除作業機1の走行距離が(D−γ)になっている場合(ステップS610、Yes)、ステップS611に進む。
ステップS611において、制御用プロセッサ40は、図6に示すブザー83を所定時間鳴らす等することにより、防除作業機1の作業者に警告してもよい。このようにすることで、防除作業機1を旋回終了位置Cへ確実に進入させることができる。次に、ステップS612に進み、防除作業機1が旋回を開始していない場合(ステップS612、No)、制御用プロセッサ40は、防除作業機1が旋回を開始するまで待機する。旋回の有無は、例えば、図6に示す操舵角センサ91の検出値から判定する。防除作業機1が旋回を開始した場合(ステップS612、Yes)、制御用プロセッサ40は、ステップS613に進み、第1散布ブーム5L等の長さを最大散布幅Wmになるように調整する。
第5の調整例は、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合であっても、薬剤散布領域AW1に確実に防除作業機1を進入させて、確実に薬剤を散布させることができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(散布ブームの高さの調整例)
図19は、散布ブームの高さの調整例を示すフローチャートである。図20は、散布ブームの高さの調整例を示す説明図である。防除作業機1へ作業者が乗車するとき、散布ブームを上昇させて乗車しやすくする(図20のhuで示す高さ)。その後、上昇させた散布ブームを元の高さ(図20のhcで示す高さ)に戻すが、本調整例は、散布ブームの高さを正確に元の高さに戻すために有効である。本調整例では、防除作業機1の進行方向左側の第1散布ブーム5Lを昇降させる例を説明するが、本調整例における散布ブームは、第1散布ブーム5Lに限定されない。第1散布ブーム5Lは、防除作業機1に設けられた昇降スイッチによって昇降させることができる。この昇降スイッチは、図1、図2に示す防除作業機1の機体側から立設したアーム101に取り付けられたスイッチボックス100に設けられている。このスイッチボックス100に設けられた昇降スイッチを作業者が操作すると、第1散布ブーム5Lが昇降する。
ステップS701において、制御用プロセッサ40は、キースイッチがONになるまで待機し(ステップS701、No)、キースイッチがONになったら(ステップS701、Yes)、処理をステップS702へ進める。ステップS702において、制御用プロセッサ40は、図6に示すブーム角度左センサ98Lの検出値を取得する。次に、ステップS703に進み、制御用プロセッサ40は、ブーム高さhがhc(ブーム基準位置)よりも大きくない場合(ステップS703、No)、本調整例に係る処理を終了する。
制御用プロセッサ40は、ブーム高さhがhc(ブーム基準位置)よりも大きい場合(ステップS703、Yes)、ステップS704に進み、第1散布ブーム5Lを下降させる。次に、ステップS705に進み、制御用プロセッサ40は、ブーム角度左センサ98Lの検出値を取得する。そして、ステップS706において、制御用プロセッサ40は、ブーム高さhがhc+β以下になるまで待機して(ステップS706、No)、第1散布ブーム5Lの下降を継続する。ステップS706において、制御用プロセッサ40は、ブーム高さhがhc+β以下になったら(ステップS706、Yes)、ステップS707に進み、第1散布ブーム5Lの下降を停止する。
第1散布ブーム5Lが下降を停止させる場合、慣性によって目標の停止位置よりも行き過ぎた位置で第1散布ブーム5Lが停止する可能性がある。本調整例のように、慣性で第1散布ブーム5Lが移動する分を考慮して目標の位置よりも高い位置で第1散布ブーム5Lを停止させることにより、目標の位置で第1散布ブーム5Lを停止させることができる。上述したβは、慣性で第1散布ブーム5Lが移動する分に対応する値に設定される。
(薬剤の散布制御例)
図21は、薬剤の散布制御例を示すフローチャートである。この制御例は、スリップ率により薬剤の散布を制御するものである。ステップS801において、制御用プロセッサ40は、図6に示すポンプ27がONになるまで待機する(ステップS801、No)。ポンプ27がONになったら(ステップS801、Yes)、制御用プロセッサ40は、ステップS802に進み、例えば、図6に示す記憶部41からスリップ率を取得する。スリップ率については、第4の調整例及び第5の調整例で説明した通りである。
次に、ステップS803に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示す車速センサ90の検出値を取得して、ステップS804において、防除作業機1の車速を計算する。そして、ステップS805に進み、制御用プロセッサ40は、計算した車速を、ステップS802で取得したスリップ率を用いて補正する。その後、ステップS806に進み、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布量の設定値を取得し、ステップS807で薬剤の散布圧力を計算し、その後、ステップS808で、薬剤の散布処理(薬剤を散布させる処理)を実行する。
次に、ステップS809において、制御用プロセッサ40は、図6に示す操舵角センサ91の検出値を取得し、ステップS810において操舵角の変動値を計算する。そして、制御用プロセッサ40は、ステップS811において、操舵角の変動値に基づきスリップ率を設定する。操舵角の変動とスリップ率との間には相関があるので(操舵角の変動が大きくなるにしたがってスリップ率も大きくなる)、操舵角の変動に基づいてスリップ率を設定することにより、より正しいスリップ率の値を知ることができる。スリップ率が設定されたら、ステップS812に進み、制御用プロセッサ40は、新たに設定されたスリップ率を用いて防除作業機1の車速を補正し、補正車速を計算する。
ステップS813において、制御用プロセッサ40は、薬剤の散布量の設定値を取得し、ステップS814で補正後の車速に基づき薬剤の散布圧力を計算し、その後、ステップS815で、薬剤の散布処理(薬剤を散布させる処理)を実行する。このように、スリップ率に基づいて薬剤の散布制御を実行することにより、薬剤の散布量のばらつきを抑制することができる。また、車速センサ90を用いるので、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合であっても、薬剤の散布量のばらつきを低減できる。
(散布ブームの制御例)
図22は、散布ブームの制御例を示すフローチャートである。この制御例は、防除作業機1が薬剤を散布する前における散布ブームの制御例であり、防除作業機1の車速が一定値を超えた場合は、散布ブームは動作させない。ステップS901〜ステップS903は、上述した薬剤の散布制御例のステップS801〜803と同様なので説明を省略する。
ステップS904において、制御用プロセッサ40は、防除作業機1の車速が一定値以上である場合(ステップS904、Yes)、散布ブームの制御の処理を終了する。ステップS904において、制御用プロセッサ40は、防除作業機1の車速が一定値よりも小さい場合(ステップS904、No)、処理をステップS905に進める。ステップS905において、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの位置の初期値を記憶部41から取得し、ステップS906において、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの位置の初期値をセットする。次に、ステップS907において、制御用プロセッサ40は、図6に示す全体昇降用アクチュエータ16を動作させて、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cを上昇させる。
次に、ステップS908に進み、制御用プロセッサ40は、一定時間が経過するまで待機して、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの上昇を継続する(ステップS908、No)。ステップS908において一定時間が経過したら(ステップS908、Yes)、ステップS909に進み、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cの上昇を停止する。そして、ステップS910において、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rを開き、ステップS911において、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rを下降させる。その後、ステップS912において、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rを伸ばし、ステップS913において、第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5Cを規定の位置まで下降させる。このように、防除作業機1の車速が一定値以上である場合は、ブーム(第1散布ブーム5L、第2散布ブーム5R及び第3散布ブーム5C)のを動作させないので、安全性が向上する。
(第6の調整例)
図23は、第6の調整例を示すフローチャートである。ステップS1001、ステップS1002は、第4の調整例のステップS501、ステップS502と同様であるので説明を省略する。次に、ステップS1003に進み、制御用プロセッサ40は、防除作業機1の作業開始入力を取得し、作業開始入力がONになるまで(ステップS1004、No)、ステップS1003、ステップS1004を繰り返す。作業開始入力がONになったら(ステップS1004、Yes)、ステップS1005に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示す車速センサ90の検出値(車速パルス)を取得する。そして、ステップS1006において、制御用プロセッサ40は、進入位置Sから防除作業機1が走行した走行距離Dを計算する。走行距離Dの計算は、第5の調整例で説明した通りである。走行距離Dを計算する場合に、スリップ率で補正してもよい。
次に、ステップS1007に進み、制御用プロセッサ40は、図6に示す操舵角センサ91の検出値を取得し、ステップS1008で防除作業機1が旋回中か否かを判定する。ステップS1008において、防除作業機1が旋回中でない場合(ステップS1008、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS1005〜ステップS1008を繰り返す。
ステップS1008において、防除作業機1が旋回中である場合(ステップS1008、Yes)、ステップS1009に進み、制御用プロセッサ40は、そのときの位置を薬剤散布開始位置Aとし、薬剤散布開始位置Aまでに防除作業機1が走行した走行距離Dをセットし、記憶部41に記憶させる。次に、ステップS1010において、制御用プロセッサ40は、圃場幅H及びステップS1009でセットされた走行距離Dに基づいて、散布幅Wsを計算する。そして、ステップS1011において、制御用プロセッサ40は、ステップS1010で計算された散布幅Wsになるように、第1散布ブーム5L及び第2散布ブーム5Rの長さを調整する。このようにすることで、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合であっても、確実に薬剤散布領域AW1全体に薬剤を散布できるようになるとともに、作業者の負担を軽減できる。
(第7の調整例)
図23は、第7の調整例を示すフローチャートである。第7の制御例は、第5の制御例と同様であるが、スリップ率による防除作業機1の車速の補正を実行しない点が異なる。ステップS1101〜ステップS1107は、第5の制御例におけるステップS601〜ステップS607と同様である。ステップS1108において、制御用プロセッサ40は、図6に示す車速センサ90の検出値に基づいて走行距離Dを計算する。ステップS1109〜ステップS1112は、第5の制御例におけるステップS610〜ステップS613と同様である。
このように、第7の調整例は、第5の調整例と同様に、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合であっても、薬剤散布領域AW1に確実に防除作業機1を進入させて、確実に薬剤を散布させることができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(第8の調整例)
図25は、第8の調整例を示すフローチャートである。第8の調整例は、第5の調整例と同様であるが、防除作業機1の実際の進入位置Arが、薬剤散布開始位置Aと異なる場合に対応するものである点が異なる。ステップS1201〜ステップS1207は、第5の調整例におけるステップS601〜ステップS607と同様であるので、説明を省略する。ステップS1208において、制御用プロセッサ40は、図6に示す車速センサ90の検出値に基づき、進入位置Sから防除作業機1が走行した走行距離Dを計算する。ステップS1209〜ステップS1210は、第5の調整例におけるステップS610〜ステップS611と同様であるので、説明を省略する。
ステップS1211において、防除作業機1の走行した距離が、ステップS1205で設定された走行距離(目標走行距離)D以下である場合(ステップS1211、Yes)、制御用プロセッサ40は、ステップS1212において、防除作業機1の旋回の有無を監視する。ステップS1212において、防除作業機1が旋回を開始していない場合(ステップS1212、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS1211〜ステップS1212を繰り返す。旋回の有無は、例えば、図6に示す操舵角センサ91の検出値から判定する。防除作業機1が旋回を開始した場合(ステップS1212、Yes)、制御用プロセッサ40は、ステップS1217に進み、第1散布ブーム5L等の長さを最大散布幅Wmになるように調整する。
ステップS1212において、防除作業機1の走行した距離が、ステップS1205で設定された目標走行距離Dを超えた場合(ステップS1211、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS1213に進む。ステップS1213において、制御用プロセッサ40は、車速センサ90の検出値を取得し、ステップS1214において、車速センサの検出値に基づいて、目標走行距離Dを超えて走行した走行距離ΔDを計算する。次に、ステップS1215に進み、制御用プロセッサ40は、防除作業機1の旋回の有無を監視する。ステップS1215において、防除作業機1が旋回を開始していない場合(ステップS1215、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS1213〜ステップS1215を繰り返す。防除作業機1が旋回を開始した場合(ステップS1215、Yes)、制御用プロセッサ40は、ステップS1216に進み、走行距離ΔDに基づき、散布幅Wsを調整する。例えば、散布幅Wsは、最大散布幅Wmよりも走行距離ΔDだけ小さくなるように設定されるとともに、旋回方向外側の散布ブームの長さがWm/2−ΔDに設定される。次に、ステップS1217に進み、制御用プロセッサ40は、走行距離ΔDに基づいて調整された散布幅Wsとなるように、第1散布ブーム5L等の長さを調整する。
第8の調整例は、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合において、防除作業機1が薬剤散布開始位置Aを通過して薬剤散布領域AW1へ進入した場合であっても、無駄なく薬剤を薬剤散布領域AW1へ散布できる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(第9の調整例)
図26は、第9の調整例を示すフローチャートである。第9の調整例は、防除作業機1が隣接する薬剤散布領域に移動するときに対応する。ステップS1301、ステップS1302は、第5の調整例におけるステップS501、ステップS502と同様であり、ステップS1303〜ステップS1305は、第5の調整例におけるステップS504〜ステップS506と同様なので、説明を省略する。
ステップS1306において、制御用プロセッサ40は、旋回開始処理(防除作業機1の旋回)を実行し、ステップS1307で旋回終了位置C(図11参照)を計算する。次に、制御用プロセッサ40は、ステップS1308において、図6に示す車速センサ90から車速パルス(車速)を取得し、ステップS1309において、旋回開始位置B(図11参照)から旋回終了位置Cまでの走行距離の計算を開始する。次に進入する薬剤散布領域が最後の薬剤散布領域でない場合、旋回開始位置Bから旋回終了位置Cまでの走行距離は、例えば、散布幅Wsとなる。また、Ws/2+Wm/2としてもよい。次に進入する薬剤散布領域が最後の薬剤散布領域でない場合、旋回開始位置Bから旋回終了位置Cまでの走行距離は、例えば、Ws/2+Wm/2となる。
次に、ステップS1310において、防除作業機1が旋回終了位置Cに到達した場合、制御用プロセッサ40は、旋回は終了したとして(ステップS1310、Yes)、ステップS1311に進む。ステップS1311において、制御用プロセッサ40は、図6に示すブザー83を所定時間鳴らす等することにより、防除作業機1の作業者に警告してもよい。このようにすることで、防除作業機1を旋回終了位置Cへ確実に進入させることができる。なお、ブザー83を鳴らすことによる作業者への警告は実行しなくてもよい。
次に、ステップS1312に進み、制御用プロセッサ40は、旋回開始位置Bから防除作業機1の旋回が終了した位置までにおける防除作業機1の走行距離Dを計算する。そして、ステップS1313において、制御用プロセッサ40は、圃場幅W、散布幅Ws及び走行距離Dに基づいて、次に薬剤を散布する薬剤散布領域での散布幅Wsを計算する。
次に、ステップS1314において、制御用プロセッサ40は、ステップS1313で計算した散布幅Wsとなるように、図6に示すブームストロークセンサ95の目標値をセットする。そして、ステップS1315において、制御用プロセッサ40は、ブーム伸縮出力をONにして、第1散布ブーム5L等の長さを調整する。次に、ステップS1316に進み、制御用プロセッサ40は、ブームストロークセンサ95の検出値を取得し、ステップS1317において、ステップS1316で取得した検出値がステップS1314でセットした目標値になっているか否かを判定する。
検出値が目標値になっていない場合(ステップS1317、No)、制御用プロセッサ40は、ステップS1316、ステップS1317を繰り返す。検出値が目標値になっている場合(ステップS1317、Yes)、制御用プロセッサ40は、ブーム伸縮出力をOFFにして、第1散布ブーム5L等の伸縮を停止する。第9の調整例は、GPS受信部10が防除作業機1の位置情報を生成できない場合において、薬剤散布領域AW1に対して確実に薬剤を散布することができる。また、作業者による第1散布ブーム5L等の長さ調整は不要になるので、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者は、防除作業機1の操作に集中することができる。
(第10の調整例)
図27は、第10の調整例を示すフローチャートである。第9の調整例は、制御用プロセッサ40が第1散布ブーム5L等の長さを自動調整しているときに、作業者による第1散布ブーム5L等の長さを調整する操作があった場合、作業者の操作を優先させるものである。ステップS1401〜ステップS1409は、第9の調整例におけるステップS1301〜S1309と同様であり、ステップS1410〜ステップS1413は、第9の調整例におけるステップS1312〜ステップS1315と同様なので、説明を省略する。
ステップS1414において、制御用プロセッサ40は、第1散布ブーム5L等の長さを調整する作業者の操作による入力(手動操作入力)があった場合、ステップS1415に進み、第1散布ブーム5L等の長さを調整するブーム伸縮出力をOFFにする。園結果、作業者の操作による入力基づいて、第1散布ブーム5L等の長さが調整される。ステップS1416、ステップS1417は、第9の調整例のステップS1316、ステップS1317と同様なので、説明を省略する。第10の調整例は、作業者による第1散布ブーム5L等の長さの調整を優先させるので、作業者が意図した操作を実現できる。
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態は、上述した内容によって限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。