JP2016158542A - 細胞投与装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】大量に支持体を提供するために適した細胞投与装置を提供する。
【解決手段】細胞投与装置100は、上面21に形成された支持体収容凹所22と、支持体収容凹所の底壁を貫通するスリット23と、を有し、支持体収容凹所内に多孔質細胞支持体10を収容する細胞投与容器20と、支持体収容凹所内に収容された多孔質細胞支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器130と、多孔質細胞支持体に含浸された誘導水溶液を、スリットを介して吸水する吸水材Pをスリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段190と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質細胞支持体に細胞を播種する細胞投与装置に関する。
患者の耳から僅かな軟骨を採取してそれを増殖培養し、その培養した軟骨細胞を多孔質構造の支持体に播種してインプラント型再生軟骨を得、そのインプラント型再生軟骨を患者の生体内に移植することで、例えば顔面の軟骨変形や欠損を治療する方法が検討されている。
細胞の成長や分化を制御しつつ組織形成を促進させるため、細胞を多孔質構造支持体に播種するが、多孔質の三次元構造体の中心部分まで細胞を懸濁した培養液で満たすことが困難であった。
そこで、特許文献1には孔径が5〜3200μm、平均孔径50〜1500μmの連通小孔構造を有し、厚さが2mm以上のシート状またはブロック状の支持体の連通小孔構造内全体に誘導水溶液を満たした後に、支持体の上面に細胞を懸濁した培養液を供給すると共に、支持体の下面から誘導水溶液を吸引し、支持体の下面から吸引される誘導水溶液と支持体の上面に供給された細胞懸濁液との間に負圧が生じさせ、供給された細胞懸濁液が支持体内に供給する方法が開示されている。
特開2009−195682公報
この先行技術では支持体を誘導水溶液であるDMEM培養液に浸漬させて滅菌したデシケータに入れてから真空ポンプでデシケータ内を減圧し、誘導水溶液を支持体内部まで浸潤させた後、厚さ約0.7mmの紙系の滅菌した濾紙の水分吸収体の上に移動して、準備した移植細胞を培養液に懸濁させて供給する方法が開示されている。
しかしながら、先行技術文献においては支持体への誘導水溶液及び懸濁液の供給及び誘導水溶液の吸引について、具体的にどのような手段にて行うのか開示がない。また、細胞懸濁液が供給された支持体は薬局方に基づく無菌試験や検査等を考慮して、複数個同時に作製する必要があるが、手作業による製造では均質に懸濁液が供給された支持体を得ることが難しいにも関わらず、先行技術には単一の支持体への細胞播種方法が開示されているだけで、複数の支持体に再生軟骨細胞を播種する方法については開示されていない。
そこで、本発明は、今後、その活用の拡大が見込まれ、大量に支持体を提供するために適した細胞投与装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上面に形成された支持体収容凹所と、前記支持体収容凹所の底壁を貫通するスリットと、を有し、前記支持体収容凹所内に多孔質細胞支持体を収容する細胞投与容器と、前記支持体収容凹所内に収容された多孔質細胞支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器と、前記多孔質細胞支持体に含浸された誘導水溶液を、前記スリットを介して吸水する吸水材を前記スリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記支持体収容凹所の容積は、少なくとも前記多孔質細胞支持体の体積と前記多孔質細胞支持体が含浸しうる液体の容積との和と略同等か、これよりも大きいことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記多孔質細胞支持体は、平均孔径が200〜300μmの連通小孔構造を有し、外方にドーム状に膨出した湾曲面と、端縁が前記湾曲面の端縁と接続された略平らな平坦面と、を備えたブロック状であり、前記支持体収容凹所の内面は、前記平坦面を上面として前記多孔質支持体を収容したときに前記湾曲面の少なくとも一部と面接触する湾曲形状であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記支持体収容凹所は下向きに凸となる湾曲した内面を有し、前記スリットは前記内面の頂部に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、複数の前記細胞投与容器と、前記各細胞投与容器に対応して設けられた複数の前記吸水材接離手段と、前記細胞懸濁液供給器を複数の前記細胞投与容器に跨がって駆動する細胞懸濁液供給器駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、細胞が播種された支持体の製造を機械化することができるので、均質な品質の支持体を短時間で大量に製造可能となる。
細胞投与装置の全体を示す三面図である。 多孔質細胞支持体の一例を示す図である。 細胞投与容器の一例を示す図である。 容器受台の一例を示す図である。 スタビライザの一例を示す図である。 シリンジの正面図である。 細胞混合機の一例を示す斜視図である。 細胞投与容器設置部と吸水材接離手段を示す三面図である。 細胞懸濁液供給器を示す三面図である。 吸水材保持部材を示す図であり、(a)は吸水材保持ベースを示す三面図であり、(b)は押さえフレームを示す平面図であり、(c)は吸水材を保持した吸水材保持部材の断面図である。 クッション材の一例を示す図である。 カートリッジの斜視図である。 細胞投与容器、支持体、カートリッジ及びチェンジャーの分解斜視図である。 細胞投与容器を操作する操作用具の一例を示す斜視図である。 (a)、(b)は、チェンジャーの動作を示す正面図である。 (a)は細胞投与容器を取り外す外し台を示す三面図であり、(b)は操作治具を示す三面図である。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
〔細胞投与装置の概要〕
本発明に係る細胞投与装置は、三次元構造の多孔質細胞支持体(以下、単に「支持体」という。)中に細胞を略均一に播種するための装置である。
図1は、細胞投与装置の全体を示す三面図である。
細胞投与装置100は、図3に示すような、上面21に形成された支持体収容凹所22、及び支持体収容凹所の底壁を貫通するスリット23を有し、支持体収容凹所内に図2に示す支持体10を収容する細胞投与容器20と、支持体収容凹所内に収容された支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器130と、支持体に含浸された誘導水溶液を、スリットを介して吸水する吸水材をスリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段190と、を備えている。
なお、細胞懸濁液は、支持体に投与する細胞を懸濁した培養液である。
支持体に細胞を播種するに際しては、まず、誘導水溶液を含浸させた支持体10を支持体収容凹所22内に収容した細胞投与容器20を用意する。細胞懸濁液供給器130が、支持体10の上方から細胞懸濁液を供給する。吸水材接離手段190が、細胞投与容器20の下面から所定のタイミングにて吸水材を接触させ、スリット23を介して支持体10の下面から誘導水溶液を吸引する。細胞投与装置100は以上の動作を実施することによって、支持体10中の細胞懸濁液を誘導水溶液と入れ替えて、支持体中に略均一に細胞を播種する操作を自動的に行う。
なお、細胞投与装置、及び支持体への細胞投与に関わる各部材は過酸化水素蒸気等による除染によって無菌環境が維持されたアイソレーター内に設置され、各作業はアイソレーター内にて実施される。
以下の説明においては、作業者からみて細胞投与装置の左右方向となる方向を幅方向(X軸方向)とし、これと直交する方向を奥行方向又は前後方向(Y軸方向)とし、細胞投与装置と作業者とが対峙する側を前方、その反対側を後方として説明する。
〔多孔質細胞支持体〕
図2は、多孔質細胞支持体の一例を示す図である。
本実施形態において使用する多孔質細胞支持体(支持体)10は、平均孔径が200〜300μm、気孔率が85〜91%の連通小孔構造を有したブロック状である。支持体10は、外方にドーム状に膨出した湾曲面11と、端縁が湾曲面の端縁と接続された略平らな平坦面12とを有する。支持体10の平坦面12は長円形状であり、支持体10を短手方向に沿って切断した場合の断面形状は半円状である。
支持体10の大きさは、例えば、幅6mm×高さ3mm×長さ50mmとすることができる。この場合の支持体10の体積は約678μL、気孔率が90%である場合の容積(含浸可能な液体の量)は約610μLである。
〔細胞投与容器〕
図3は、細胞投与容器の一例を示す図である。
細胞投与容器20は、上面21に形成された支持体収容凹所22、及び支持体収容凹所22の底壁を貫通するスリット23を有する。支持体収容凹所22内には誘導水溶液が含浸された支持体10が収容される。
支持体収容凹所22は下向きに凸となる湾曲した内面24を有し、支持体10の平坦面12を上にして収容した場合に支持体10が嵌合する形状に形成される。言い換えれば、支持体収容凹所22の内面24は、平坦面12を上面として支持体10を収容したときに湾曲面11の少なくとも一部と面接触(又は密着)する湾曲形状である。吸水材が誘導水溶液を吸引する力を利用して、細胞懸濁液を支持体10内にスムーズに浸透させるためには、支持体10の湾曲面11と支持体収容凹所22の内壁とが密着していることが好ましい。支持体収容凹所22の大きさは図1に示した支持体10を収容する場合には、幅6mm×深さ8mm×長さ50mmのように設定することができる。
また、スリット23は湾曲した内面24の頂部に対応する位置、即ち、支持体10の湾曲面11の頂部に対応する部分に形成される。従って、スリット23は支持体収容凹所22の長手方向に沿って支持体収容凹所22の最下部に形成される。スリット23を支持体収容凹所22の最下部に形成することによって、引力を利用して誘導水溶液をスムーズに吸水できる。なお、スリットの大きさは、例えば幅1mm×長さ44mmのように設定することができる。
ここで、細胞投与容器20は吸水材を接触させるまでの間、支持体10が含浸している誘導水溶液をスリット23から落下させずに保持する必要がある。このため、細胞投与容器20の材質は、接触角が大きく、かつ、滅菌処理が可能な部材で構成することが望ましく、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いれば、接触角が大きいために支持体10が含浸している誘導性水溶液がスリットから漏洩せず、かつエチレンオキサイドガスや過酸化水素ガス等、ガンマ線滅菌以外の方法で滅菌可能である。ガンマ線滅菌以外の方法による滅菌を行う理由は、PTFEはガンマ線照射による分解が生じやすく、特性が変化しやすいためであるが、特性の変化による問題が生じない場合、例えば、細胞投与容器をディスポーザブルとする場合にはガンマ線滅菌でも構わない。なお、ガンマ線滅菌で材質の特性変化が少ないポリエチレン等を細胞投与容器に利用すると、接触角が小さいために、支持体10が含浸している誘導水溶液がスリット23から漏洩し、漏洩を防止するためにスリットの幅を狭くすると誘導性水溶液の吸引が適切に行われず、細胞投与容器20の材料としては好ましくない。
支持体収容凹所22の深さは、支持体10の高さよりも大きく設定される。具体的には、支持体収容凹所22の深さは、支持体収容凹所22の容積が、支持体10の体積と支持体10が含浸可能な液体の容積とを加えた容積と略同等かこれよりも大きくなるように設定される。言い換えれば、支持体収容凹所22に支持体10を収容した場合に、支持体10の上部に残される支持体収容凹所22の容積が、支持体10が吸収可能な細胞懸濁液の容積と略同等、又はこれよりも多い容積となるように支持体収容凹所22の深さが設定される。支持体収容凹所22の容積をこのように設定することで、支持体収容凹所22内に誘導水溶液を含浸させた支持体10を収容し、収容された支持体10の上を支持体10に吸収させる全量の細胞懸濁液で満たすことができる。
細胞投与容器20の下面には下方に突出した突出部25が形成されている。スリット23は突出部25に形成されている。突出部25によって細胞投与容器20の下面にはスリット23に沿って伸びる段差26が形成されている。スリット23周辺の細胞投与容器20下面を下方に突出させることによって、吸水材をスリット23部分に確実に接触させることが可能となる。
細胞投与容器20の支持体収容凹所22を回避した部位には、2つの第一の位置決定穴27が上下方向(細胞投与容器20の厚さ方向)に貫通形成されている。2つの第一の位置決定穴27は、支持体収容凹所22を間に挟んで配置され、且つ支持体収容凹所22の長手方向における位置が異なるように配置されている。即ち、2つの第一の位置決定穴27は上面視概略矩形状の細胞投与容器20の対角線方向に形成されている。第一の位置決定穴27は、細胞投与容器20を各部材に装着する際に細胞投与容器20の上下方向(上下面)における誤装着を防止するものである。
また、細胞投与容器20には、第一の位置決定穴27とは異なる2つの第二の位置決定穴28が上下方向(細胞投与容器20の厚さ方向)に貫通形成されている。2つの第二の位置決定穴28も第一の位置決定穴27と同様に細胞投与容器20の対角線方向に形成されている。第二の位置決定穴は第一の位置決定穴とは穴径が異なっている。第二の位置決定穴28は、細胞投与容器20を各部材に装着する際に細胞投与容器20の上下方向における誤装着を防止する。
細胞投与容器20のうちの一つの角部には、角型に面取りされた面取部29が形成されている。面取部29は、細胞投与容器20を各部材に装着する際の細胞投与容器の前後方向における誤装着を防止する。
また、細胞投与容器20の支持体収容凹所22を回避した部位には、支持体収容凹所22の長手方向に沿って操作棒挿入穴30が貫通形成されている。操作棒挿入穴30は、細胞投与容器20に手を触れることなく細胞投与容器20を操作するための治具を挿入するための穴である。
〔容器受台〕
細胞投与容器を載置する容器受台について説明する。容器受台は、細胞投与容器が直接載置される部材であり、細胞投与容器を細胞投与装置に設置する際に使用する。図4は、容器受台の一例を示す図である。
容器受台40は、細胞投与容器20を載置、固定する台本体41と、台本体41に連設されたハンドル部48とを有し、ステンレス等の金属材料から形成される。
〈台本体〉
台本体41は概略矩形板状であり、細胞投与容器20のスリット23の上下方向における連通状態を妨げることなく細胞投与容器20を保持する。即ち、台本体41の面内中央部には、スリット23を台本体41の下方に露出させる矩形状の貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、細胞投与容器20の突出部25を挿入可能な大きさに形成される。台本体41の厚さは、突出部25の突出量と略同等かこれよりも薄くなるように設定され、スリット23は、台本体41の下面と略同等の位置か、これよりも下方に突出する。
台本体41の上面には、細胞投与容器20の位置及び上下の向きを決定する位置決定ピン43と、細胞投与容器20の装着方向(前後方向)を決定する方向決定ピン44とが突出している。位置決定ピン43は細胞投与容器20の第一の位置決定穴27内に挿入されることにより、細胞投与容器20の位置及び上下の向きを決定する。また、方向決定ピン44は、第一の位置決定穴27内に位置決定ピン43が挿入可能となる細胞投与容器20の位置及び上下の向きにおいて、細胞投与容器20の装着方向を正常に装着した場合には細胞投与容器20の面取部29とは干渉せず、装着方向が誤っている場合には面取部29以外の角部と干渉する位置に形成されている。
台本体41の後端縁には、容器受台40を細胞投与装置に設置した場合に、細胞投与装置に対する台本体41の奥行き方向における装着位置・及び台本体41の取付角度を規定する位置決定凹所45が形成されている。位置決定凹所45は、幅方向に離間して2箇所形成されている。位置決定凹所45を複数個備えることにより、台本体41の取付角度を規定しやすくなる。
位置決定凹所45の奥部45aは細胞投与装置100に設けられた位置決定突起116が密着する形状であり、細胞投与装置に対する台本体41のガタツキを防止する。また、位置決定凹所45の開口端側には奥部45aに向けて幅が漸減するガイド部45bが形成されており、位置決定突起116を奥部45aに向けてスムーズに案内する。
〈ハンドル部〉
ハンドル部48は、台本体41の前端縁、即ち位置決定凹所45が形成された端縁と対向する端縁から前方に突出している。ハンドル部48は、台本体41の上面よりも上方に位置するように、台本体41に対して段差をつけた状態にて連設されている。容器受台40を作業台に載置した場合には、台本体41の下面が作業台に密着するのに対して、ハンドル部48が作業台から離間して浮き上がった状態となる。従って、アイソレーターに設置されたグローブや専用の把持工具にてハンドル部48を把持しやすくなり、容器受台40の操作が容易となる。
〔スタビライザ〕
容器受台40に固定された細胞投与容器20に重ねて載置されるスタビライザについて説明する。図5は、スタビライザの一例を示す図である。
スタビライザ80は、吸水材接離手段190が吸水材をスリット23に対して下方から接触させる際に、吸水材接離手段190からの押圧力により細胞投与容器20が容器受台40から浮き上がることを防止するための重りであり、ステンレス等の金属材料から構成される。
スタビライザ80は、細胞投与容器20の支持体収容凹所22を上方に露出させる貫通孔81と、容器受台40の位置決定ピン43が挿通される位置決定穴82とを備え、平面形状は細胞投与容器20とほぼ同様の形状である。細胞投与容器20の上面21と接触するスタビライザ80の下面は平坦面である。貫通孔81形成部位を含むスタビライザ80の上面、幅方向中央部には、奥行き方向に沿って伸びる凹条83が形成されている。凹条83は、支持体10に細胞を投与する際に、細胞懸濁液供給器130との干渉を防止するために形成されている。
〔シリンジ〕
シリンジについて説明する。図6は、シリンジの正面図である。
シリンジ50は、細胞懸濁液が充填された状態にて細胞投与装置に設置される他、投与細胞と培養液とを混合して細胞懸濁液を作製する場合に使用される。
シリンジ50は、外筒51とピストン55とを有する。
外筒51は、内部に細胞懸濁液が充填される中空筒体からなる外筒本体52と、外筒本体52の先端に配置されて外筒本体52内の細胞懸濁液を吐出するノズル部53と、外筒本体52の基端部において外筒本体52の外径方向に突出したフィンガーフランジ54とを備える。
ピストン55は、先端部に外筒本体52の内面に密着した状態で外筒本体52内を進退するガスケット56を備え、基端部にピストン55を押圧操作するためのピストンヘッド57を有する。ピストン55が外筒51の軸方向に沿ってノズル部53側に進出した場合には、外筒本体52内に充填された内容物(投与細胞、培養液、又は細胞懸濁液)を押し出してノズル部53から外部に吐出する。また、ピストン55がノズル部53から退避した場合には、ノズル部53を介して外筒本体52内に液体を導入する。
〔細胞混合機〕
投与細胞と培養液とを均一に混合して細胞懸濁液を作製する細胞混合機について説明する。図7は、細胞混合機の一例を示す斜視図である。以下の説明においては、シリンジの軸方向を細胞混合機の軸方向として説明する。
細胞混合機60は、三方活栓61により中空部内を連通させた状態にて接続された2つのシリンジ50a、50bの外筒51をピストン55に対して所定時間繰り返し進退移動させることによって、各シリンジ50a、50bに充填された投与細胞と培養液とを均一に混合する装置である。
第一のシリンジ50aには規定量(例えば1.5ml)の投与細胞を充填し、第二のシリンジ50bには規定量(例えば3.0ml)の培養液を充填しておく。両シリンジ50a、50bのノズル部53同士を三方活栓61により接続して、両シリンジの中空部内を連通させたシリンジユニット62を形成する。
細胞混合機60は、筐体63と、筐体63上面に配置されて、シリンジユニット62を構成する各シリンジ50a、50bのピストンヘッド57の位置を固定する第一及び第二のヘッド支持部64a、64bと、第一及び第二のヘッド支持部64a、64bの間に配置されて、第一及び第二のシリンジ50a、50bの外筒51と三方活栓61とを軸方向に往復移動可能に支持するスライド台67とを備える。
各ヘッド支持部64a、64bは、各ピストンヘッド57を保持するヘッド保持部材65を備え、ヘッド保持部材65はネジ部材66により軸方向に進退可能に構成されている。これにより各シリンジ50a、50bに充填された液体量に応じて変化するピストンヘッド57の位置に対応させてヘッド保持部材65の位置を微調整可能となっている。
スライド台67は、シリンジ50の軸方向と交差する方向に突出した三方活栓61の一部分を支持する活栓支持凹所68と、各シリンジ50a、50bの外筒51の先端側を支持する軸方向に伸びる第一及び第二の外筒支持凹所69a、69bとを備える。各シリンジ50a、50bの外筒51と三方活栓61はスライド台67に固定される。
また、スライド台67は、筐体63内に収容された駆動手段であるエアシリンダによって軸方向に往復駆動される。なお、エアシリンダの駆動源であるエアは、日本薬局方の酸素約21%、窒素約79%を混合した合成空気であり、エアシリンダの破損により気体が漏出した場合の各部の汚染を防止する。
スライド台67は、所定時間(例えば5分間)、所定の時間間隔(例えば2秒間に1往復)にて往復移動するように、制御装置によって制御される。スライド台67が往復することによって投与細胞と培養液とが2つのシリンジ50a、50bを往復移動し、この過程で投与細胞と培養液とが均一に混合される。作製されたすべての細胞懸濁液は一方のシリンジに集約され、このシリンジが細胞投与装置に設置される。
この細胞混合機60では、シリンジユニット62の軸方向端部のピストンヘッド57の位置を固定し、ピストン55に対して外筒51を移動させる構成であるため、細胞混合機60の全軸方向長を短くすることができる。従って、作業空間に制限があるアイソレーター内において、余分なスペースをとらない。また、シリンジユニット62の軸方向中間部を移動させることから、駆動力を伝達する部位が1箇所で済むので、装置の構成を簡略化できる。
〔細胞投与装置〕
図1を参照して、細胞投与装置を説明する。
細胞投与装置100は、細胞投与容器20を設置する細胞投与容器設置部110と、細胞投与容器20に収容された支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器130と、細胞懸濁液供給器130をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に駆動する細胞懸濁液供給器駆動手段(供給器駆動手段160)と、吸水材を細胞投与容器に対して下方から接離させる吸水材接離手段190と、を備えている。
細胞投与容器設置部110と供給器駆動手段160と吸水材接離手段190は、ベース板101に位置固定されている。また、細胞懸濁液供給器130は供給器駆動手段160によって支持されている。
〈細胞投与容器設置部〉
図8は、細胞投与容器設置部と吸水材接離手段を示す三面図である。細胞投与容器設置部110は、図1に示したように、細胞投与容器20が装着された容器受台40を保持する部位である。なお、図8の平面図と右側面図では容器受台40を省略している。
細胞投与容器設置部110は、幅方向を長手方向とする基台111を備え、基台111は複数の脚部材112によって支持されている。脚部材112はベース板101に固定されている。
基台111は、容器受台40が出し入れ自在に挿入される凹所からなるスロット113を幅方向に沿って複数個(図では5つのスロット)備える。各スロット113は、前端部に容器受台40を挿入する挿入口114を備える。
スロット113は、幅方向両端部に奥行き方向に伸びるガイドレール115を備えている。スロット113の最奥部には容器受台40の奥行き方向における位置を決定する位置決定突起116が基台111から上方に突出形成されている。容器受台40を介してスロット113に装着された細胞投与容器20のスリット23は、基台111の下方に位置する吸水材接離手段190に対向する。
ガイドレール115は、容器受台40の幅方向端部を上下方向に挟むことによって、容器受台40を奥行方向にスライド可能にガイドする。
位置決定突起116は、容器受台40の位置決定凹所45の奥部45aに密着することによって、スロット113に対する容器受台40の奥行き方向における挿入位置を決定する。また、容器受台40の位置決定凹所45のガイド部45bは、位置決定突起116の直径よりも幅広に形成され、且つ奥部45aに向けて幅が漸減するので、仮に容器受台40がスロット113内に斜めに挿入されたとしても、位置決定突起116を奥部45aに向けてスムーズに案内する。
ガイドレール115と位置決定突起116は、協働して容器受台40の傾斜を防止する。
〈細胞懸濁液供給器〉
図9は、細胞懸濁液供給器を示す三面図である。
細胞懸濁液供給器130は、シリンジ50に充填された細胞懸濁液を支持体10に供給する装置である。
細胞懸濁液供給器130は、筐体131と、作業者と対向する筐体131の外面下部に配置されてシリンジ50を保持するシリンジホルダ135と、シリンジホルダ135によって保持されたシリンジ50のピストンヘッド57を押圧するヘッド押圧機構151と、を備える。筐体131の前面パネル132にはガイド長孔133が上下方向に貫通形成されており、ヘッド押圧機構151を構成するヘッド押圧部材156を上下方向に案内する。
《シリンジホルダ》
シリンジホルダ135は、シリンジ50の外筒51上部(フィンガーフランジ54側に位置する外筒本体52)を保持する上部ホルダ136と、外筒51下部(ノズル部53)を保持する下部ホルダ141とを備え、ノズル部53を下に向けた状態のシリンジ50を保持する。
上部ホルダ136と下部ホルダ141は、筐体131の前面パネル132から所定間隔を開けて前方に並行に突出した2つのアーム部材137、142を夫々備える。アーム部材137の間隔は外筒本体52の直径とほぼ同じかそれよりもやや広く設定されている。また、アーム部材142の間隔はノズル部53の直径とほぼ同じかそれよりもやや広く設定されている。2つのアーム部材137、142が外筒51(外筒本体52、ノズル部53)を挟むことによって、シリンジ50を保持する。
アーム部材137、142の先端部であって外筒51との対向面には、出没自在に構成された金属ボールからなるストッパ138、143が配置されている。ストッパ138、143は、アーム部材137、142の内部に配置されたバネ等の弾性付勢部材により突出方向、つまり外筒51を押圧する方向に弾性付勢されている。
各シリンジホルダ135内にシリンジ50を装着する場合は、ノズル部53を下に向けてシリンジ50を立てた状態にて2つのアーム部材137、142間に外筒51を挿入する。ストッパ138、143は、シリンジ50の挿入過程では外筒51外面によって押圧されてアーム部材137、142の内部に没入する一方で、シリンジ50の保持時にはアーム部材137、142から突出してシリンジ50のがたつきと脱落を防止する。
上部ホルダ136は、シリンジ50の上下方向における位置決めをする手段として機能する。即ち、シリンジ50の装着時にフィンガーフランジ54の下面を上部ホルダ136の上面に密着させることにより、シリンジホルダ135に対するシリンジ50の上下方向における位置が決定される。
ここで、ピストン55の軸方向移動距離に対して吐出される細胞懸濁液の量は、シリンジ50の外筒本体52の径(内径及び外径)によって決定される。支持体へ供給する細胞懸濁液量の過多或いは不足といった作業ミスを防止するため、シリンジホルダ135は単一種類のシリンジ50のみ(例えば5ml用のシリンジのみ)を保持可能に設計されている。
《ヘッド押圧機構》
ピストンヘッド57を押圧するヘッド押圧機構151は、出力軸152が上下方向となるように筐体131内の下部に収容された駆動モータ153と、駆動モータ153の出力軸152と同軸に且つ相対回転不能に取り付けられたネジ棒154と、ネジ棒154に螺合する雌ネジ部材155と、雌ネジ部材155に固定されてピストンヘッド57の上面を押圧するヘッド押圧部材156と、を備える。ヘッド押圧機構151は、いわゆる送りネジ方式によりヘッド押圧部材156を駆動する。また、ネジ棒154の上端部にはネジ棒154に対して相対回転不能に取り付けられ、且つ筐体131上面から露出した調整ヘッド157を備える。
ヘッド押圧部材156は、筐体131の前面パネル132に貫通形成された上下方向に伸びるガイド長孔133を介して筐体131内部に配置された雌ネジ部材155と接続されており、ヘッド押圧部材156と雌ネジ部材155はガイド長孔133によって移動方向が上下方向に制限される。
駆動モータ153は例えば5相ステッピングモータである。ネジ棒には1回転するごとに雌ネジ部材155を軸方向に所定距離(例えば1mm)移動させるようなネジ山が形成されている。駆動モータ153を駆動制御する制御手段は、駆動モータ153の出力軸152の回転角度に基づいて、雌ネジ部材155及びヘッド押圧部材156の移動距離を制御する。
調整ヘッド157は、外周面にローレット加工等の滑り止めが施された円柱状の部材である。調整ヘッド157は、アイソレーターに設置されたグローブを装着した状態で作業者が容易に回転操作可能となる大きさに設定されている。調整ヘッド157は、駆動モータ153に電流が流れていない場合には自由に回転させることができる。調整ヘッド157は、シリンジホルダ135に保持されたシリンジ50のピストンヘッド57に対するヘッド押圧部材156の位置を手動で微調整するために使用する。
駆動モータ153が回転すると出力軸152の回転に連動してネジ棒154が回転する。ネジ棒154にねじ込まれた雌ネジ部材155は、ガイド長孔133によって移動方向が上下方向に制限されているため、回転せずにネジ棒154の軸方向に沿って移動する。ヘッド押圧部材156は、雌ネジ部材155と共に上下方向に移動する。雌ネジ部材155と共にヘッド押圧部材156が下降した場合には、ピストンヘッド57を押圧して、シリンジ50内に充填された細胞懸濁液を外部に押し出す。シリンジ50からはヘッド押圧部材156によって押圧されるピストンヘッド57の移動距離に応じた量の細胞懸濁液が吐出される。
〈細胞懸濁液供給器駆動手段〉
細胞懸濁液供給器駆動手段(供給器駆動手段)について図1を参照して説明する。以下、作業者(アイソレーター前面)からみて左右方向をX軸、奥行き方向をY軸、鉛直方向をZ軸とする。
供給器駆動手段160は、細胞懸濁液供給器130をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に夫々移動させるX軸ステージ161xと、Y軸ステージ161yと、Z軸ステージ161zとを備えている。
各ステージ161x、161y、161zは同一の構成であり、各軸方向に伸びるハウジング162x、162y、162zと、被支持物を支持し、各軸方向に沿って進退移動するスライダ163x、163y、163zとを備えている。夫々のハウジング162x、162y、162z内には、ステージ駆動モータと、ステージ駆動モータによって回転駆動される送りネジと、送りネジと螺合する雌ネジ部材と、スライダ163x、163y、163zをガイドするガイドレールが内蔵されており、スライダ163x、163y、163zは送りネジの正逆回転に伴って各軸方向に進退する。また、各軸方向におけるスライダ163x、163y、163zの位置は、制御手段により、ステージ駆動モータの出力軸の回転角度に基づいて制御される。
各部材の結合関係は以下の通りである。X軸ステージ161xのスライダ163xは、被支持物としてY軸ステージ161yのハウジング162xの適所を支持しており、Y軸ステージ161yはX軸方向に進退する。Y軸ステージ161yのスライダ163yは、被支持物としてZ軸ステージ161zのハウジング162xの適所を支持しており、Z軸ステージ161zはY軸方向に進退する。Z軸ステージ161zのスライダ163zは、被支持物として細胞懸濁液供給器130の筐体131の適所を支持しており、細胞懸濁液供給器130はZ軸方向に進退する。
以上の構成により、細胞懸濁液供給器130はX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に自在に移動する。
〈吸水材/吸水材接離手段〉
支持体に含浸された誘導水溶液を、スリットを介して吸水する吸水材をスリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段、及び吸水材を保持する手段について説明する。
《吸水材/吸水材保持部材》
図10は、吸水材保持部材を示す図であり、(a)は吸水材保持ベースを示す三面図であり、(b)は押さえフレームを示す平面図であり、(c)は吸水材を保持した吸水材保持部材の断面図である。
誘導水溶液を吸水する吸水材Pには例えば濾紙を使用することができる。吸水材Pは、支持体から適宜誘導水溶液を吸収可能な素材であれば、特に限定することなく使用できる。吸水材Pは、吸水材保持部材170に保持された状態にて吸水材接離手段190に装着される。
図10に示すように、吸水材Pを保持する吸水材保持部材170は、吸水材Pが載置される吸水材保持ベース171と、吸水材保持ベース171に載置される平面視概略矩形枠状の押さえフレーム176とを備える。
吸水材保持ベース171は、厚肉に形成されて上面が突出した中央部172と中央部172に対して薄肉の外周部173とを備え、平面視概略矩形状の吸水材保持部174と、吸水材保持部174の長手方向一端縁に連設された把持用のハンドル175とを備えている。中央部172の上面は平坦面である。
押さえフレーム176は中央部に、吸水材保持ベース171の中央部172を露出させる開口部177を備えており、吸水材保持ベース171の外周部173に重ね合わされる。押さえフレーム176は外周部173との間で吸水材Pを挟持することにより吸水材Pのずれや浮きを防止すると共に、スリットと接触する吸水材Pの表面を平面状に維持する。
ハンドル175は、吸水材保持部材170を吸水材接離手段190に設置する場合等、吸水材保持部材170を操作する際に把持するための部位である。
《クッション材》
吸水材保持部材170を吸水材接離手段190に装着するに際して、吸水材保持部材170と吸水材接離手段190の上板192との間にはクッション材180が配置される。
図11は、クッション材の一例を示す図である。
クッション材180は、吸水材Pが誘導水溶液を吸収する際に、吸水材Pを弾性力により細胞投与容器20の突出部25に対して密着させる役割を果たす。
クッション材180は、例えばシリコンスポンジ等の弾性を有する材料から構成されたシート材であり、平面形状は吸水材保持部材170と略同一である。クッション材180上面の前端部と後端部には幅方向に延びる突条181が形成されている。
突条181によってクッション材180と吸水材保持部材170との接触面積を減らすことができる。接触面積を減らすことによって、吸水材保持部材170との接触部分にかかる単位面積当たりの荷重を増大させ、クッション材180の変形量を確保する。これにより、吸水材Pの突出部25に対する密着ムラ(押圧力のムラ)、吸水材のシワ、各部材の精度誤差等を吸収し、誘導水溶液の吸収ムラを抑制する。
《吸水材接離手段》
吸水材接離手段190について図8を参照して説明する。
吸水材接離手段190は、細胞投与容器設置部110を構成する基台111の下方に、各細胞投与容器20に対応してスロット113毎に設けられる。
夫々の吸水材接離手段190は、吸水材Pを保持した吸水材保持部材170が載置される上板192を備えた吸水材セットベース191と、吸水材Pを細胞投与容器20のスリット23に対して密着させる接近姿勢と、吸水材をスリットから離間させる離間姿勢との間で吸水材セットベース191を変位させるエアシリンダ205とを備えている。
《吸水材セットベース》
吸水材セットベース191は、吸水材保持部材170が載置される上板192と、上板192の幅方向各端部に連設されて下方に垂下する2つの側板193とを備える。
上板192の前端部と後端部には、クッション材180と吸水材保持部材170の前後方向における位置を決定する前部位置決定ピン194と後部位置決定ピン195が上方に突出している。前部位置決定ピン194と後部位置決定ピン195は、夫々幅方向に離間して2個ずつ配置される。
上板192の前端縁の幅方向中央部には、切欠196が形成されている。切欠196の最奥部は、前部位置決定ピン194よりも後方よりに位置しており、クッション材180をピンセット等により挟持して上板192に載置する場合の上板192との干渉を防止する。
各側板193の奥行き方向中間部には、クッション材180と吸水材保持部材170の幅方向における位置を決定するガイド片197が、上板192よりも上方に突出するように取り付けられている。ガイド片197の上方への突出量は、吸水材セットベース191が接近姿勢に変位したときにスロット113に挿入された容器受台40とは接触しないように設定されている。
上板192に設けられた4つの位置決定ピン194、195と2つのガイド片197はクッション材180と吸水材保持部材170の端縁の位置を決定し、両者は上板192に位置決めされる。
吸水材セットベース191の各側板193は後端部適所を、基台111によって支持されると共に幅方向に略水平に伸びる回動軸部材201によって回動自在に支持されている。吸水材セットベース191は、回動軸部材201を中心として前端部が上下動するように支持される。
吸水材セットベース191は、回動軸部材201の下方に配置され、駆動手段であるエアシリンダ205からの駆動力(押圧力)が伝達される被押圧部材202を備えている。本例において被押圧部材202は、幅方向に略水平に伸びて2つの側板193を接続する軸部材である。被押圧部材202がエアシリンダ205によって押圧されたとき、吸水材セットベース191は回動軸部材201を中心として上方に回動し、上板192が上昇する。上板192の上面は、接近姿勢において細胞投与容器20の下面(突出部)と略並行(略水平な姿勢)となり、離間姿勢においては前端部が降下して傾斜した状態となる。
仮に、上板192の上面を水平姿勢のまま直線的に上昇させようとすると、吸水材Pが細胞投与容器20の下面と傾斜した状態にて接触して、誘導水溶液の吸水ムラを発生させる虞がある。本実施形態においては、吸水材セットベース191を回動させながら上板192を細胞投与容器20の下面に向けて上昇させるので、吸水材Pが細胞投与容器20の下面と接触した時における吸水材Pの傾斜を防止し、誘導水溶液の吸水ムラを効果的に防止する。
《駆動手段》
吸水材セットベースを上下動させる駆動手段は、本例においてはエアシリンダ205である。エアシリンダ205は、駆動用のエアが導入されるシリンダチューブ206と、シリンダチューブ206から出没するピストンロッド207を備え、ベース板101に位置固定されている。エアシリンダ205の取付位置及びベース板101に対する仰角は、ピストンロッド207の出没方向が、回動軸部材201を中心として被押圧部材202が描く円弧状の軌跡の略接線方向となるように設定される。
ピストンロッド207は突出したときに被押圧部材202を押圧して、吸水材セットベース191を接近姿勢に変位させる。また、ピストンロッド207が退避したとき、吸水材セットベース191は自重により退避姿勢に変位する。
シリンダチューブ206内には、日本薬局方の酸素約21%、窒素約79%を混合した合成空気が充填されている。エアシリンダ205を駆動する気体として合成空気を用いることにより、エアシリンダ205の破損により気体がアイソレーター内に漏出した場合の各部の汚染を防止する。
〈制御装置〉
細胞投与機の各部の動作を制御する制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータ装置から構成される。ROMには、細胞投与機の各部を制御するための制御プログラムが記憶されている。RAMには、ROMに記憶されたプログラムがブートされ、プログラムの起動時にRAMがこれらプログラムのCPUによるワークエリアとなる。CPUは、ROM内のプログラムをRAMにブートし、RAMをワークメモリとして使用しつつ、各プログラムを実行する。
〔細胞投与装置の動作〕
細胞投与装置100による支持体10への細胞投与作業を実施する場合の準備は以下の通りである。
まず、吸水材セットベース191の上板192にクッション材180を載置する。吸水材Pを吸水材保持ベース171と押さえフレーム176とによって挟み、吸水材Pを保持した状態の吸水材保持部材170をクッション材180の上に載置する。
誘導水溶液中に浸漬されている支持体10をピンセット等により取り出して、支持体収容凹所22内に平坦面12を上面として収容する。支持体収容凹所22内に収容された支持体10を、図13に示すような位置決定治具として機能するプランジャ320にて押圧し、平坦面12が支持体収容凹所22内で略水平となるように、且つ支持体10が支持体収容凹所22の規定の深さ位置に配置されるように調整する。なお、プランジャ320は、支持体10の平坦面12と略同形状の平坦面321を有している。
支持体収容凹所22内に支持体10が収容された細胞投与容器20を容器受台40に載置・固定する。即ち、容器受台40の方向決定ピン44と細胞投与容器20の面取部29の位置を合致させた状態にて、位置決定ピン43を第一の位置決定穴27内に挿入する。細胞投与容器20が載置・固定された容器受台40のハンドル部48を器具により間接的に、又はグローブにより直接的に把持して、容器受台40をスロット113に挿入する。このとき、容器受台40の幅方向各端部をガイドレール115にて挟むようにして、ガイドレール115に沿って容器受台40を挿入する。スロット113の位置決定突起116を容器受台40の位置決定凹所45に密着させて、スロット113内における細胞投与容器20の位置を確定させる。
細胞懸濁液供給器駆動手段160を駆動させる手動セットスイッチを押圧すると、制御手段は供給器駆動手段160を駆動して、細胞懸濁液供給器130を、図1に示す待機位置から作業者側(Y軸方向)にある手動セット位置に移動させる。手動セット位置は、アイソレーターのグローブを使用して細胞懸濁液供給器130を操作可能な位置である。細胞懸濁液供給器駆動手段160を手動セット位置に移動させるとき、制御手段はヘッド押圧部材156を上昇させるように駆動モータ153を制御する。ヘッド押圧部材156の下方には、細胞懸濁液が充填されたシリンジ50を装着可能な隙間が形成される。
手動セット位置にある細胞懸濁液供給器130のシリンジホルダ135に、細胞懸濁液が充填されたシリンジ50を装着する。装着の際には、フィンガーフランジ54の下面を上部ホルダ136の上面に密着させて、シリンジホルダ135に対するシリンジ50の上下方向位置を確定させる。装着後は調整ヘッド157を回転させて、ヘッド押圧部材156をピストンヘッド57に密着させる。このとき、細胞懸濁液がノズル部53からやや外部に露出する程度にヘッド押圧部材156の位置を調整する。
最後にセットスイッチを押圧すると、制御手段は供給器駆動手段160を駆動して、細胞懸濁液供給器130を待機位置に移動させる。
細胞投与装置100による支持体10への細胞投与動作は以下の通りである。なお、以下の動作は、制御手段が供給器駆動手段160及びヘッド押圧機構151の駆動モータ153を駆動制御することによって実施される。また、細胞懸濁液供給器130によって保持されたシリンジ50部分は図1に示す移動軌跡に沿って移動する。
開始スイッチを押圧すると、細胞懸濁液供給器130は待機位置から前進する。このとき、細胞懸濁液供給器130は、ノズル部53が支持体収容凹所22と対向しない位置、例えばガイドレール115上を移動する。細胞懸濁液供給器130が支持体収容凹所22の前端部に対応する位置に到達したとき、細胞懸濁液供給器130は、ノズル部53が支持体収容凹所22の前端部上に位置するように図中左方に移動する。細胞懸濁液供給器130が降下し、ノズル部53が支持体収容凹所22内の支持体10直上に位置する。細胞懸濁液供給器130は、所定の速度にて後退する。
このとき、細胞懸濁液供給器130の後退速度に応じた量の細胞懸濁液をノズル部53から吐出するようにヘッド押圧機構151はピストンヘッド57を所定の速度にて押圧する。
ノズル部53が支持体収容凹所22の後端部に到達したとき、細胞懸濁液供給器130が上昇する。細胞懸濁液供給器130が図中左方の隣接するスロット113のガイドレール115上に移動する。
以上の動作を繰り返しながら、細胞懸濁液供給器130は複数の細胞投与容器20に跨がって移動して、各細胞投与容器20内の支持体10に対して細胞懸濁液の投与を行う。また、すべての支持体10への細胞懸濁液の投与が終了した場合、細胞懸濁液供給器130は上昇すると共に、待機位置へと移動する。
吸水材接離手段190は、ある支持体10に対する細胞懸濁液の投与が終了したタイミングで、当該支持体10を収容する細胞投与容器20のスリット23に向けて吸水材Pを上昇させる。細胞懸濁液の投与が終了してから0.7秒程度(少なくとも1.0秒以内)で、スリット23に対して吸水材Pを接触させる。また、スリット23に対して吸水材Pを接触させている時間は1.8秒〜3.2秒程度である。なお、吸水材Pが吸水する液体量は、スリット23部分に接触している時間に略比例するので、吸水材Pによる液体の吸水量は、スリット23部分に吸水材Pを接触させている時間に基づいて制御する。また、誘導水溶液のみを吸水することは困難であるから、吸水材Pがスリット23に接触している時間は、全ての誘導水溶液と一部の細胞懸濁液をやや吸水する程度に設定することが望ましい。
なお、誘導水溶液の吸水は、細胞懸濁液の投与から重力により誘導水溶液が落下を開始するまでの間に開始する。また、細胞懸濁液の投与から誘導水溶液の吸水までの時間にばらつきがあると、支持体10に投与される細胞数のばらつきの発生原因ともなるので、吸水材接離手段190の駆動は支持体10毎に実施される。
〔実施例〕
以下、図3に示す細胞投与容器20(支持体収容凹所のサイズ:幅6mm×深さ8mm×長さ50mm、スリットサイズ:幅1mm×長さ44mm)と、図1に示す細胞投与装置100を用いて、図2に示す支持体10(幅6mm×高さ3mm×長さ50mm、気孔率87%)に細胞を投与した結果を示す。
Figure 2016158542
支持体に含まれる生細胞数を測定したところ、支持体間でのばらつきはCV値で2.9%と小さく、支持体に対して均一に細胞が投与されたことがわかった。
なお、1本目の支持体は図1中右端に設置された細胞投与容器20に収容された支持体のことであり、5本目の支持体は図1中左端に設置された細胞投与容器20に収容された支持体のことである。
〔効果〕
細胞が投与された支持体は、予備用や検査用を含めると、患者一人分に対して複数個(例えば5個)製造する必要がある。しかし、これらの製品間には品質のばらつきが発生しないようにする必要がある。
本実施形態によれば、複雑な細胞投与動作を機械化することによって、人的操作によって支持体を製造する場合に比べて、製品の均質化を図ることができる。また、細胞が播種された支持体の製造を機械化することができるので、短時間で大量の支持体を製造可能となる。
なお、以上の説明においては、誘導水溶液を含浸した支持体を細胞投与容器の支持体収容凹所内に収容したが、誘導水溶液含浸前の支持体を支持体収容凹所内に収容した上で、細胞投与容器を容器受台に載置・固定し、容器受台ごと誘導水溶液中に浸すことによって、支持体に誘導水溶液を含浸させてもよい。
〔カートリッジ〕
誘導水溶液が含浸されていない支持体を収容した状態にてガンマ線等による滅菌処理を行い、滅菌状態を維持したままで支持体を運搬するためのカートリッジについて説明する。
図12は、カートリッジの斜視図である。図13は、細胞投与容器、支持体、カートリッジ及びチェンジャーの分解斜視図である。以下の説明においては、カートリッジに収容される支持体の形状を基準として長手方向、短手方向、厚さ方向を規定する。
カートリッジ300は、支持体10を収容する支持体収容孔311が厚さ方向に貫通形成されたケース310と、ケース310の一面側(下面側)から支持体収容孔311内に嵌合した状態で挿入されるプランジャ320と、ケース310の他面側(上面側)の支持体収容孔311部分を覆うカバー部材330と、カバー部材330をケース310に対して固定する固定ピン340とを備える。
〈ケース〉
ケース310は平面視概略矩形板状であり、図3に示した細胞投与容器20と類似した形状を有する。
ケース310は、上下方向(厚さ方向)に貫通形成された長円形の支持体収容孔311と、支持体収容孔311を回避した部位に上下方向に貫通形成された第一の位置決定穴312及び第二の位置決定穴313とを備える。支持体収容孔311はケース310の長手方向に沿って伸びるように形成されている。また、ケース310は、長手方向一端面に形成された凹部314と、長手方向他端部に上下方向(厚さ方向)に貫通形成されて固定ピン340が挿入されるピン孔315とを備える。
支持体収容孔311は支持体10の平坦面12の形状に合致する形状を有し、ケース310の厚さ方向における大きさは一定である。
第一の位置決定穴312と第二の位置決定穴313は、夫々細胞投与容器20に形成された第一の位置決定穴27と第二の位置決定穴28と同一の大きさであり、各位置決定穴の位置関係はケース310と細胞投与容器20との間で同一である。従って、ケース310を細胞投与容器20に重ね合わせたときに第一の位置決定穴27、312同士と第二の位置決定穴28、313同士は互いに連通する。また、各位置決定穴によって位置決めした状態にてケース310を細胞投与容器20に重ね合わせたとき、支持体収容孔311は細胞投与容器20の支持体収容凹所22と連通する。
凹部314は、ケース310に対するカバー部材330の装着位置を決定する。
ピン孔315には、カバー部材330に形成されたピン孔336と連通した状態にて固定ピン340が挿入される。
〈プランジャ〉
プランジャ320は、支持体10の平坦面12と同一の形状の平坦面321を上下面とする概略長円柱状である。プランジャ320の厚さ方向(上下方向)の中間部両側面には長手方向に沿ってガイド溝322が形成されている。プランジャ320は、ガイド溝322を中心として厚さ方向に対称の形状である。平坦面321からガイド溝322までは、ケース310、プランジャ320、カバー部材330、及び固定ピン340をカートリッジ300として組み立てたときに、支持体収容孔311内に嵌合した状態にて挿入される挿入部323である。
プランジャ320の総厚は、ケース310よりも厚いが、挿入部323はケース310よりも薄い。挿入部323のみを支持体収容孔311内に挿入した状態では、支持体収容孔311内に位置する平坦面321と支持体収容孔311の内側面とによって支持体10を収容する空間が形成される。プランジャ320は、支持体10の平坦面12を下方から支持する。
〈カバー部材〉
カバー部材330は、プランジャ320が挿入された支持体収容孔311を閉止すると共に、プランジャ320の上下動を禁止する部材である。
カバー部材330は、ケース310の上面(他面)に添設されて支持体収容孔311を閉止する蓋体331と、ケース310の下面(一面)に添設されると共にケース310の下面から露出したプランジャ320のガイド溝322部分を挟むガイドスリット333を備えた固定片332と、蓋体331と固定片332とを長手方向一端部において接続すると共にケース310の凹部314に嵌合する接続片334と、固定片332の一端部から接続片334を越えて延在する操作片335とを備える。
ガイドスリット333の幅は、ガイド溝322の幅と略同等である。また、固定片332の厚さはガイド溝322の厚さ方向長と略同等である。カバー部材330は、固定片332がプランジャ320のガイド溝322によって長手方向に沿って案内されることにより、ケース310の長手方向に沿ってスライドする。
蓋体331と固定片332は、第一の位置決定穴312と第二の位置決定穴313とを回避したケース310の上面に添設される。即ち、蓋体331と固定片332の幅(短手方向長)は、ケース310の短手方向長よりも短く、且つ第一の位置決定穴312と第二の位置決定穴313の双方に干渉しない大きさに形成される。
蓋体331は、接続片334が凹部314に嵌合したときにケース310のピン孔315と連通するピン孔336を長手方向他端部に備える。両ピン孔315、336内に固定ピン340を挿入することによって、カバー部材330はケース310からの取り外しが禁止される。
〈固定ピン〉
固定ピン340は、基端部に摘部341を備え、先端部にケース310とカバー部材330の各ピン孔315、336内に挿入される弾性部342を備え、ステンレス等の金属線材から形成される。弾性部342は挿入方向の中間部が膨出しており、弾性的に接近又は離間変形する。
固定ピン340を各ピン孔315、336内に挿入すると、弾性部342はピン孔315、336の内面を押圧して、固定ピン340のピン孔315、336からの脱落を防止する。
〔チェンジャー〕
カートリッジ300に収容された支持体10を細胞投与容器20に移し替えるチェンジャー350は、カートリッジ300のプランジャ320を押圧するプランジャ押圧突起356を備えたチェンジャー本体351と、カートリッジ300が設置されると共にチェンジャー本体351に装着される昇降部材361とを有する。
チェンジャー350は、アイソレーターのグローブを装着した手で細胞投与容器20に触れることなく、支持体10を細胞投与容器20に移し替えることを可能とする。
〈チェンジャー本体〉
チェンジャー本体351は、概略矩形状のベースプレート352と、ベースプレート352の下面から突出した脚部材353と、ベースプレート352の4つの角部から上方に突出した昇降軸354と、昇降軸354が挿通されたコイルバネ355と、ベースプレート352の面内適所から突出してプランジャ320を押圧するプランジャ押圧突起356とを備える。
コイルバネ355は昇降軸354の下部に配置され、ベースプレート352からの離脱が禁止されている。昇降軸354の上端部はコイルバネ355の上端縁よりも上方に露出している。
ベースプレート352の下方には脚部材353によって空間が形成されるので、グローブを装着した手によるチェンジャー本体351の移動等が容易となる。
〈昇降部材〉
昇降部材361は、概略矩形平板状のトレー362と、トレー362の4つの角部に貫通形成されて昇降軸354が挿通される軸穴363と、トレー362の面内適所に貫通形成されてプランジャ押圧突起356を出没させる出没穴364と、出没穴364の周囲から上方に突出した第一のガイド突起365及び第二のガイド突起366とを備える。
軸穴363は、昇降軸354が通過可能、且つコイルバネ355が通過不能な内径を有する。軸穴363内に昇降軸354を挿入したとき、トレー362はコイルバネ355の弾性力によってベースプレート352から浮き上がった状態に支持され、プランジャ押圧突起356は出没穴364よりも下方に位置する。トレー362に外力を加えてベースプレート352に接近させると、プランジャ押圧突起356は出没穴364を介してトレー362の上方に突出する。
第一のガイド突起365は、カートリッジ300のケース310と細胞投与容器20の夫々の第一の位置決定穴27、312とを連通させた状態にて、両穴内に挿通される。また、第二のガイド突起366は、カートリッジ300のケース310と細胞投与容器20の夫々の第二の位置決定穴28、313とを連通させた状態にて、両穴内に挿通される。第一のガイド突起365と第二のガイド突起366のトレー362側には、夫々第一の位置決定穴27、312と第二の位置決定穴28、313よりも大径の大径部365a、366aが形成されている。大径部365a、366aは、プランジャ押圧突起356によるプランジャ320の押圧量を所定量に制限する。
〈操作用具〉
図14は、細胞投与容器を操作する操作用具の一例を示す斜視図である。
操作用具370は平面視概略U字状の金属線材からなるピンセット状の治具である。
略平行に伸びる操作棒部371の先端部は同方向にクランク状に屈曲形成されており、操作棒部371の最先部には、細胞投与容器20の操作棒挿入穴30内に挿入される挿入棒部372a、372bを備えている。
操作用具370は弾性変形可能であり、操作棒部371を接近変形させる外力を加えた後にその外力を除去すると、2つの操作棒部371は弾性により元の姿勢に復帰する。
外力を加えない状態における挿入棒部372の間隔は操作棒挿入穴30の間隔よりも広いため、2つの操作棒挿入穴30内に夫々の挿入棒部372を挿入した状態では、各挿入棒部372は弾性力により各操作棒挿入穴30を互いに離間する方へと押圧するので、操作棒挿入穴30からの操作用具370の抜けを効果的に防止する。
また、2つの挿入棒部372a、372bの軸方向長は異なっている。長尺の挿入棒部372aを先に一方の操作棒挿入穴30内に挿入し、短尺の挿入棒部372bを後から他方の操作棒挿入穴30内に挿入することができるようにして、操作性を向上させている。
〈支持体の移し替え方法〉
支持体10をカートリッジ300から細胞投与容器20に移し替える方法について図13、図15に基づいて説明する。図15(a)、(b)は、チェンジャーの動作を示す正面図である。
まず、チェンジャー本体351にトレー362を載置する。トレー362は、コイルバネ355によってチェンジャー本体351のベースプレート352から浮き上がった状態にて支持される。
固定ピン340が装着された状態のカートリッジ300をトレー362にセットする。第一のガイド突起365を第一の位置決定穴312内に挿入し、第二のガイド突起366を第二の位置決定穴313内に挿入する。第一及び第二のガイド突起365、366と第一及び第二の位置決定穴312、313により、カートリッジ300はプランジャ320が下方に突出した状態にて、トレー362に設置される。この状態にて、固定ピン340を取り外すことでカバー部材330とケース310との連結が解除される。
カバー部材330の操作片335を操作して、カバー部材330をケース310の長手方向に沿って引き抜く。これにより、支持体収容孔311内に収容された支持体10が露出する。
細胞投与容器20を、スリット23側が上を向くようにケース310上に重ねて装着する。このとき、細胞投与容器20の長手方向各端部から操作棒挿入穴30内に2つの操作用具370の各挿入棒部372を挿入して、細胞投与容器20には直接接触しないようにして、滅菌状態を維持する。第一のガイド突起365を第一の位置決定穴27内に挿入し、第二のガイド突起366を第二の位置決定穴28内に挿入する。以上の操作により、図15(a)に示すように、ケース310の支持体収容孔311と細胞投与容器20の支持体収容凹所22とが対向する。
この状態で、操作用具370により細胞投与容器20を下方に押圧すると、図15(b)に示すようにトレー362がコイルバネ355の弾性付勢力に抗して下降し、プランジャ押圧突起356が出没穴364からトレー362の上方に突出して、プランジャ320を押圧する。プランジャ320がプランジャ押圧突起356によって押圧されることにより、ケース310内の支持体10が押し上げられて支持体収容凹所22内に移動する。
〈外し台〉
カートリッジとトレーから細胞投与容器のみを取り外す為の治具及び方法について説明する。図16(a)は細胞投与容器を取り外す外し台を示す三面図であり、(b)は操作治具を示す三面図である。
外し台380は、上面視概略矩形状の台座部381と、台座部381の長手方向一端部に台座部381から上方に立ち上がった壁部391とを備える。
台座部381には長手方向に沿って伸びるレール状の第一の溝部382と、第一の溝部382内に長手方向に沿って形成された第二の溝部383とが形成されている。第一の溝部382には、細胞投与容器20が嵌合し、第二の溝部383には細胞投与容器20の突出部25が嵌合する。
台座部381の第一の溝部382内には、第一及び第二の挿入穴384、385が厚さ方向に貫通形成されている。第一及び第二の挿入穴384、385には、細胞投与容器20を装着した昇降部材361の第一のガイド突起365及び第二のガイド突起366が夫々挿入される。
壁部391には、外し台380の長手方向に沿って伸びる操作棒挿入穴392が形成されている。操作棒挿入穴392は、細胞投与容器20が第一の溝部382に嵌合したときに、細胞投与容器20の操作棒挿入穴30と一直線上となる位置に形成されている。
《操作治具》
操作治具400は、第一の溝部382内に嵌合すると共に操作者が把持する把持部401と、把持部401から直線的に突出する2本の操作棒402a、402bとを備えている。一方の操作棒402aは長尺であり、他方の操作棒402bは操作棒402aよりも短尺である。図14に示した操作用具370の挿入棒部372a、372bと同様に、操作棒402a、402bの長さを異ならせることによって操作治具400の操作性を向上させている。
《取り外し方法》
図15(b)に示す状態となった後、ケース310と細胞投与容器20を装着したままの昇降部材361をチェンジャー本体351から取り外す。ケース310と細胞投与容器20は、昇降部材361の第一及び第二のガイド突起365、366との摩擦力により、上下を逆にしても落下しないようになっている。
第一及び第二のガイド突起365、366を夫々外し台380の第一及び第二の挿入穴384、385内に夫々挿入する。このとき、第一の溝部382に細胞投与容器20が嵌合し、第二の溝部383には細胞投与容器20の突出部25が嵌合する。
操作治具400の操作棒402a、402bを、操作棒挿入穴30内に挿入し、操作棒挿入穴30から露出した操作棒402a、402bの先端部を操作棒挿入穴392内に挿入して、細胞投与容器20を串刺し状とする。
この状態にて昇降部材361を持ち上げれば、ケース310は第一及び第二のガイド突起365、366との摩擦力により昇降部材361に保持されたまま上昇し、細胞投与容器20のみが台座部381上に残る。
以上のように、取り外し台を用いることで、アイソレーターのグローブを装着した手で細胞投与容器20に触れることなく、細胞投与容器20をケース310から取り外すことができる。
その後は、操作治具400を利用して、昇降部材361から取り外した細胞投与容器20を図4に示す容器受台40に設置し、必要な作業を実施する。
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
〈第一の実施態様〉
本態様に係る細胞投与装置100は、上面21に形成された支持体収容凹所22と、支持体収容凹所の底壁を貫通するスリット23と、を有し、支持体収容凹所内に多孔質細胞支持体10を収容する細胞投与容器20と、支持体収容凹所内に収容された多孔質細胞支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器130と、多孔質細胞支持体に含浸された誘導水溶液を、スリットを介して吸水する吸水材Pをスリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段190と、を備えたことを特徴とする。
本態様によれば、細胞が播種された支持体の製造を機械化することができるので、短時間で大量の支持体を製造可能となる。
〈第二の実施態様〉
本態様において支持体収容凹所22の容積は、少なくとも多孔質細胞支持体10の体積と多孔質細胞支持体が含浸しうる液体の容積との和と略同等かこれよりも大きいことを特徴とする。
本態様によれば、支持体収容凹所内に誘導水溶液を含浸させた多孔質細胞支持体を収容し、収容された多孔質細胞支持体の上を支持体に吸収させる全量の細胞懸濁液で満たすことができる。
〈第三の実施態様〉
本態様において多孔質細胞支持体10は、平均孔径が200〜300μmの連通小孔構造を有し、外方にドーム状に膨出した湾曲面11と、端縁が湾曲面の端縁と接続された略平らな平坦面12と、を備えたブロック状であり、支持体収容凹所22の内面は、平坦面を上面として多孔質支持体を収容したときに湾曲面の少なくとも一部と面接触する湾曲形状であることを特徴とする。
本態様によれば、吸水材が誘導水溶液を吸引する力を利用して、細胞懸濁液を支持体内にスムーズに浸透させることができる。
〈第四の実施態様〉
本態様において、支持体収容凹所22は下向きに凸となる湾曲した内面24を有し、スリット23は湾曲面の頂部に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、スリットを支持体収容凹所の最下部に形成することによって、引力を利用して誘導水溶液をスムーズに吸水できる。
〈第五の実施態様〉
本態様に係る細胞投与装置100は、複数の細胞投与容器20と、各細胞投与容器に対応して設けられた複数の吸水材接離手段190と、細胞懸濁液供給器130を複数の細胞投与容器に跨がって駆動する細胞懸濁液供給器駆動手段160と、を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、複雑な細胞投与動作を機械化することによって、人的操作によって支持体を製造する場合に比べて、製品の均質化を図ることができる。また、細胞が播種された支持体の製造を機械化することができるので、短時間で大量の支持体を製造可能となる。
P…吸水材、10…支持体、20…細胞投与容器、22…支持体収容凹所、23…スリット、40…容器受台、41…台本体、42…貫通孔、48…ハンドル部、50…シリンジ、60…細胞混合機、80…スタビライザ、100…細胞投与装置、110…細胞投与容器設置部、130…細胞懸濁液供給器、160…細胞懸濁液供給器駆動手段、161…ステージ、170…吸水材保持部材、180…クッション材、190…吸水材接離手段、201…回動軸部材、202…被押圧部材、205…エアシリンダ、300…カートリッジ、320…プランジャ、330…カバー部材、340…固定ピン、350…チェンジャー、351…チェンジャー本体、361…昇降部材、370…操作用具、380…外し台、400…操作治具

Claims (5)

  1. 上面に形成された支持体収容凹所と、前記支持体収容凹所の底壁を貫通するスリットと、を有し、前記支持体収容凹所内に多孔質細胞支持体を収容する細胞投与容器と、
    前記支持体収容凹所内に収容された多孔質細胞支持体に細胞懸濁液を供給する細胞懸濁液供給器と、
    前記多孔質細胞支持体に含浸された誘導水溶液を、前記スリットを介して吸水する吸水材を前記スリットに対して下方から接離させる吸水材接離手段と、を備えたことを特徴とする細胞投与装置。
  2. 前記支持体収容凹所の容積は、少なくとも前記多孔質細胞支持体の体積と前記多孔質細胞支持体が含浸しうる液体の容積との和と略同等か、これよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の細胞投与装置。
  3. 前記多孔質細胞支持体は、平均孔径が200〜300μmの連通小孔構造を有し、外方にドーム状に膨出した湾曲面と、端縁が前記湾曲面の端縁と接続された略平らな平坦面と、を備えたブロック状であり、
    前記支持体収容凹所の内面は、前記平坦面を上面として前記多孔質支持体を収容したときに前記湾曲面の少なくとも一部と面接触する湾曲形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞投与装置。
  4. 前記支持体収容凹所は下向きに凸となる湾曲した内面を有し、前記スリットは前記内面の頂部に対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の細胞投与装置。
  5. 複数の前記細胞投与容器と、
    前記各細胞投与容器に対応して設けられた複数の前記吸水材接離手段と、
    前記細胞懸濁液供給器を複数の前記細胞投与容器に跨がって駆動する細胞懸濁液供給器駆動手段と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の細胞投与装置。
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