JP2016156797A - アルカリ土類金属を含有する汚染水からのストロンチウム除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】海水又は海水由来の液体であっても大量の汚泥発生や吸着容量の低下のない、放射性ストロンチウムの除去方法を提供する。【解決手段】pHを水酸化マグネシウムは生成しないが、炭酸カルシウムと炭酸ストロンチウムを主として生成する範囲に調製し、固い沈降性の良い析出物を生成させ除去する工程、この上澄み液をストロンチウム吸着材に接触させる工程を含む。【選択図】図1

Description

原子力発電所関連設備の事故により環境中に放出された放射性汚染物質のうち主たるものはセシウム、ストロンチウム、ヨウ素である。この中で、放射性ヨウ素は半減期が約8日間と短いため、事故発生直後の短期間での対応が極めて重要である。一方、半減期が約30年と長いセシウム及びストロンチウムは環境中放出された後、長期間にわたって放射能を出し続ける。したがって、事故発生から長期間にわたりこの2種類の放射性物質を環境中から除去することが重要である。放射性セシウムはゼオライトやフェロシアン酸金属塩不溶化物のように除去性能の高い材料や技術がある。一方、放射性ストロンチウムは高濃度に含まれる同族のカルシウムやマグネシウムなどと共存する場合が多く、また非放射性ストロンチウムの割合も多い。したがって、これらアルカリ土類金属が高濃度で含まれる汚染水から放射性ストロンチウムを除去する場合、カルシウムやマグネシウムと共存するストロンチウムをできるだけ選択的に除去する必要がある。本発明はカルシウムやマグネシウムなどアルカリ土類金属を含有する汚染水から放射性物質、特に放射性ストロンチウムを除去する方法に関する。
従来技術
2011年3月11日の東日本大震災においてはセシウムー137、セシウムー134ストロンチウムー90やヨウ素―131に代表される放射性物質が福島第1原子力発電所から放出された。これらは周辺に飛散し、陸・海・空における深刻な汚染を引き起こした。発電所内はもとより、環境中に放出された放射性物質を除染することが急務である。セシウム137とストロンチウムー90は半減期がどちらも約30年と長く、汚染の主原因物質となっているため、セシウム137とストロンチウムー90の除染が急務である。
放射性セシウムの除去方法としては、ゼオライトを用いた吸着法(特許文献1)とフェロシアン化金属を用いた沈殿法(特許文献2)が行われてきた。汚染の状況、例えば除染対象が淡水か海水かによって、両方の除去方法を選択するか又は併用する方法が提案されている。
一方、ストロンチウムに関しては、他のアルカリ土類金属、例えばカルシウムやマグネシウムと共存する場合が多く、しかもこれらの濃度はストロンチウムの濃度と比べ桁違いに高い。例えば、海水中ではおおよそカルシウムが400mg/L、マグネシウムは1000mg/Lを超える。また、ストロンチウムは非放射性のストロンチウムが約8mg/Lと大半を占めている。したがって、放射性ストロンチウムを除去するには、同族のカルシウムやマグネシウムが高濃度に存在する中、非放射性ストロンチウムをも同時に除去しなければならない。
しかしながら、最も高濃度に含まれるマグネシウムを除去するため、pHを上げ水酸化物を生成させると白いコロイド状沈殿が析出する。このコロイド状沈殿物は含水率や体積が大きいため、脱水処理装置に非常に負荷がかかるうえ、放射性の汚泥廃棄物を減容化するのにも支障を来たしていた。
放射性ストロンチウムを選択的に吸着する無機イオン交換体としてチタン酸ナトリウムが提案されている(特許文献3)。この吸着材は粒状であるため、前述のゼオライトと同様、充填塔方式しか利用方法がない。また、チタン酸ナトリウム自体の物理的強度が弱いため、粉化しやすく放射性ストロンチウムを吸着した微小なチタン酸ナトリウムが処理水中に漏出するなど問題点があった。
キレート樹脂はイミノジ酢酸基を導入したものが市販されている。アルカリ土類金属や重金属イオンに対し優れた吸着性能を有している。しかし、キレート樹脂によるアルカリ土類金属の吸着性能に関しては、比較的塩類濃度が高い原水やその中にカルシウムやマグネシウムが含まれている場合において、ストロンチウムの選択吸着性が小さく、充填塔で処理を行うとストロンチウムが最初に漏出してしまうという問題点があった(非特許文献1)。また、チタン酸ナトリウムと同様充填塔方式でしか利用できないという使用方法の制限があった。
以上の問題点を有するため、アルカリ土類金属を含有する放射性汚染水から、放射性廃棄物を増大させず、安定な放射性ストロンチウム除去方法の提供が急務である。
特開昭61−239196 特開2000−84418 特表2000−502595
ダイヤイオン2、三菱化学株式会社編集兼発行、平成19年10年31日改定、p.249〜p.251、4版
本発明は、アルカリ土類金属が高濃度で存在する中でストロンチウムを除去するにあたり、従来の凝集沈殿法が抱えていた大きな問題点である取扱い困難な大量の汚泥発生、また吸着法(イオン交換法も含む)が抱えていた大きな問題点である吸着容量の低下という課題に対して解決の手段を提供するものである。また、放射性物質除去後も材料の処理・処分の容易な放射性ストロンチウム除去方法を提供する。もって、放射性廃棄物量発生の低減、作業員の被ばく低減と環境のさらなる汚染を最小限に抑える課題をも提供する。
本発明者らは海水中の放射性ストロンチウムを除去する目的で、放射線グラフト重合法を利用した放射性ストロンチウム除去材料及びその前処理技術を鋭意研究する中で、次の(1)〜(5)に示す特徴を有する放射性ストロンチウム除去方法を見出し、本発明に到達した。
(1)アルカリ土類金属と放射性物質を含有する汚染水に少なくとも炭酸塩を含む凝集剤を加えることによって、水酸化マグネシウムの析出物の発生を抑えるが、炭酸カルシウム主体の析出物を発生させるpHの範囲に調整し、析出物を分離する第1工程、析出物分離後の液体をストロンチウム吸着材に接触させることによって、放射性ストロンチウムを除去する第2工程を含むアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
(2)前記炭酸塩が炭酸ナトリウムである(1)記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
(3)前記ストロンチウム吸着材はチタン酸金属塩を主成分とする無機化合物、チタン酸金属塩を主成分とする無機化合物を担体に担持したもの、イミノジ酢酸基を有するキレート樹脂、イミノジ酢酸基をグラフト側鎖に有するキレート吸着材から選択されたものである(1)又は(2)記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
(4)前記チタン酸金属塩を主成分とする無機化合物を担体に担持した吸着材は、放射線グラフト重合法によりイオン交換基又はキレート基を有するグラフト側鎖を有機高分子繊維に導入したものである(1)、(2)又は(3)記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
(5)前記イミノジ酢酸基をグラフト側鎖に有するキレート吸着材は、放射線グラフト重合法により、有機高分子繊維にイミノジ酢酸基を導入したものである(1),(2),(3)又は(4)記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
以上の特徴をさらに簡略化して説明すると、従来の凝集沈殿を採用した放射性ストロンチウム除去方法において、大きな問題であった放射性廃棄物の多量発生という問題に鑑み、汚泥発生量増大の原因となっていた水酸化マグネシウムの沈殿生成をなるべく少量に減らし、炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウム主体の沈殿を生成させることで汚泥量を減少させ、残った上澄み液のストロンチウムの除去を吸着材で行う、という方法である。
炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウム主体の沈殿を生成し、水酸化マグネシウムの沈殿を発生させないためには、炭酸ナトリウムを加え、pHを9〜10の範囲で適宜制御することが好ましい。水酸化マグネシウム主体の沈殿が生成するpHは、その液の塩類濃度や組成、液温などの環境によって変動するため、pHを固定しないほうが良い。pHの制御は水酸化マグネシウム沈殿による白濁生成が起きたかどうか目視により、容易に判断できる。白濁の生じる前のpHに調整することで、カルシウムの過半が除去できる。ストロンチウムもカルシウムと同様の挙動で除去される。
上澄み液には、残ったカルシウムとストロンチウム及び除去されなかったマグネシウムを多量に含まれている。したがって、硬度成分が完全に除去できた訳ではないが、この液を吸着材で除去すれば吸着材の吸着容量が大きくなるため、破過までの時間が長くなり、吸着材の交換頻度を少なくすることができる。放射性廃棄物の量は、非常に取扱いの容易な固い汚泥と使用済み吸着材であるため、放射性廃棄物量の低減を達成することができる。
ここで、吸着材はゼオライト、チタン酸ナトリウムのような無機系の粒状のものでもよいし、有機系のキレート樹脂のようなビーズ状の樹脂であってもよい。最も好ましい吸着材は放射線グラフト重合法による有機系吸着材である。放射線グラフトにより製造した吸着材のアルカリ土類金属の選択性はカルシウムやストロンチウムに対して大きく、マグネシウムに対して小さいからである。スチレンージビニルベンゼン共重合体から構成されたビーズ状のイミノジ酢酸型キレート樹脂は、グラフト重合法により製造したものと比較し、ストロンチウムに対し選択性が小さいため、吸着塔方式で処理を行うと、最初にストロンチウムが漏出し始めるからである。
本発明の凝集沈殿処理の上澄み液を対象とした吸着材の具備すべき条件として、高濃度で残留するマグネシウムと過半を除去されたカルシウム及びストロンチウムが存在する液組成の中で、ストロンチウムを効率よく除去できることである。ストロンチウムを除去できる既存の吸着材は、カルシウムに対する選択性の高いものばかりである。その中から、マグネシウムに対する選択性の小さなグラフト材料を好適に利用し、吸着材の交換頻度を少なくすることができる。
以上、説明したように前処理の凝集沈殿でpH調製を水酸化マグネシウムは生成しないが、炭酸カルシウムと炭酸ストロンチウムの過半を除去し、固い沈降性の良い汚泥を少量生成させ、次いで沈殿分離された後の上澄み液中のカルシウムとストロンチウムの残留分を、既存の吸着材で処理することにより、カルシウムの吸着よって低下した吸着容量を回復させることができる。ここで、吸着材はマグネシウムの選択性の小さい放射線グラフト重合法で製造した吸着材が好適に利用できる。放射性廃棄物量は沈降性の良い沈殿汚泥と寿命の改善された吸着材であるため、全体システムでの放射性廃棄物の量を激減させることができる。
本発明による放射性ストロンチウム除去方法のフロー図 本発明による放射性ストロンチウム除去方法2のフロー図 本発明に使用される放射性ストロンチウム除去材の製造方法のフロー図 モール状吸着繊維 放射性ストロンチウム吸着材の溶離液処理方法のフロー図
本発明の放射性ストロンチウム除去方法をフローを図1を用いてさらに詳細に説明する。放射性ストロンチウムを含む液としては、海水又は海水が混入した汚染水がある。また、放射性ストロンチウムを含有するがれきや水処理汚泥、洗煙排水、吸着塔の溶離液などが含まれる。
これら放射性ストロンチウムを含む液はpH調整槽において、水酸化マグネシウムの白濁が生じる手前のpHまで炭酸ナトリウムが加える。そのpHは9〜10と思われるが、変動するため、目視又はセンサー技術を利用して白濁を検知し、白濁を生じないpHに調整する。一度、白濁を生じた場合は塩酸等の酸を添加してもよいが、炭酸水素ナトリウムを加えてもよい。また、わずかな白濁であれば、その後の沈殿槽にそのまま送ることができる。このようにして得られた沈殿物には炭酸カルシウムの比較的沈降性のよい沈殿が生成する。この沈殿には、ストロンチウムも含まれる。ストロンチウムはカルシウムと同様の挙動を示す。水酸化マグネシウムはほとんど含まれない。
pHを9.5以上にすると、水酸化マグネシウムの軽い雲のような沈殿が生成する。この析出物は非常に沈降性が悪く、1日おいても汚泥容量が50%を超える。この沈殿物を分離すれば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどアルカリ土類金属がほとんど沈殿物となって除去できる。しかし、非常に汚泥容量が大きいため、その処理に困る。
本発明は水酸化マグネシウムの汚泥をほとんど発生させないpHで析出物を分離するため、ストロンチウムの除去率が高くはないが、汚泥発生量を非常に少なく抑えることができる。しかも、その汚泥は固く沈降性が良いため、放射性廃棄物発生量が少ない。
この析出物を分離後すると、上澄み液には、炭酸カルシウム及び炭酸ストロンチウムの沈殿生成に寄与しなかった、残余のカルシウムとストロンチウムが存在する。70〜80%が沈殿生成に消費される。例えば、カルシウム濃度300mg/L、ストロンチウム濃度8mg/L、マグネシウム濃度1200mg/Lであった海水がこの処理により、カルシウム90mg/L、ストロンチウム2.5mg/Lに低減し、マグネシウムは元の濃度1200mg/Lを含む海水となる。
図1の沈殿槽では炭酸カルシウム及び炭酸ストロンチウムの沈殿物を槽の底部に沈降させる。上澄み液は吸着塔で吸着処理する。その後、pHや放射能を測定して放流する。沈殿物は沈殿汚泥濃縮槽に移し、さらに汚泥量を少なくする。
図2は図1のストロンチウム除去方法を改良したものである。沈殿分離部で分離した汚泥をpH調整槽に返送できるシステムである。また、吸着塔を破過するまで運転した後、そのまま放射性廃棄物として廃棄してもよいが、放射能の濃度により溶離再使用も可能である。溶離再使用を行う場合、溶離廃液をpH調整槽や調整槽に戻すことで、さらに放射性廃棄物量を低減することができる。炭酸カルシウム主体の汚泥がpH調整槽に返送され、沈殿分離槽1,2によって成長した沈殿が原水と接触することによって、放射性ストロンチウムの除去性能が安定化する。
図1、2において、沈殿分離は沈降分離であってもよいし、粒状の充填層であってもよい。カートリッジフィルターのようなものでも良い。また、吸着塔に使用する吸着材としては粒状のゼオライトやチタン酸ナトリウムを使用することができるが、有機系吸着利であるキレート樹脂やキレート繊維などを利用できる。ゼオライトやチタン酸ナトリウムのような無機系吸着材は減容化できないため、放射性廃棄物の増加を招く。有機系吸着材ではキレート樹脂が利用できるが、スチレンージビニルベンゼン系のビーズ状キレート樹脂の場合、ストロンチウムが最初に漏出してくるため、運転管理が難しく、燃焼できないため減容化も難しい。
放射線グラフト重合法によるキレート繊維は焼却処理できるため、減容化の点から好ましい。図3は放射線グラフト重合法によりナイロン繊維にイミノジ酢酸基を導入するキレート繊維の製造方法である。この繊維は市販のキレート樹脂と異なり、マグネシウムに対する選択性が小さい。そのため、充填塔方式で運転するとマグネシウムが漏出した後にストロンチウムが漏出し始める。したがって、官能基を有効利用でき好ましい。
放射線グラフト重合法による放射性ストロンチウム吸着繊維を製造することにより、さまざまな汚染現場で利用することが可能である。モール状に成型加工したもの、網目のカゴに収納したもの、などを利用することができる。港湾においては、放射性物質の量が微量であるため、吸着した放射性ストロンチウムやカルシウムを溶離し、再利用することも考えられる。その場合、図4に示す放射性ストロンチウム吸着材の溶離廃液処理方法が必要と考えられる。
放射性ストロンチウム吸着済みの繊維所定量をバケットに入れ、水切りした後溶離槽に移し、ここで吸着したアルカリ土類金属を溶離する。さらに洗浄槽に移し、洗浄後にアルカリ調整槽にて水酸化ナトリウム溶液と接触させナトリウム型に変換する。その後、洗浄を経て、再使用できる状態となる。溶離廃液には放射性ストロンチウムをはじめアルカリ土類金属が多量に含まれるため、本発明の図1や2に示すような方法により処理できる。
港湾においては図5に示すモール状吸着繊維をシルトフェンスのように海中に保持し、海水中の放射性ストロンチウムを吸着させる。モール状吸着繊維は強度保持の芯材のまわりにループ状に吸着繊維を成型したものである。このような使用方法では、すぐに吸着量が飽和になるため、廃棄するか再生使用するかしなければならない。廃棄すれば放射性廃棄物量が非常に多くなる。燃焼すれば大きく減容できるが、設備の焼却能力の問題があり、溶離再使用の可能性も検討しなければならない。
ここで、放射線グラフト重合法についてさらに詳細に説明する。本発明で用いる放射性ストロンチウム吸着材料の製造方法はイミノジ酢酸基導入型とチタン酸ナトリウム担持型があるが、ここではイミノジ酢酸基導入型を例にとり説明する。
先ず、放射線グラフト重合法によるイミノジ酢酸基導入型吸着繊維の製造方法は次の工程よりなる。有機高分子繊維に電離放射線を照射する第1工程、キレート基に転換可能なモノマーをグラフト重合するグラフト重合工程、キレート基に転換する第3工程より成る。
本発明を用いて放射線グラフト重合処理することができる繊維素材としては、合成繊維の他、綿などのセルロース系繊維、動物性繊維、若しくは再生繊維、又はそれらの混合繊維も利用できる。合成繊維にはポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、フッ素系等が含まれるが、これらに限定されるものではない。セルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維、テンセル等の精製セルロース繊維、アセテート、ジアセテート等の半合成繊維が含まれる。また、混紡であってもよい。
まず第1工程では、グラフト重合すべき繊維物質に放射線を照射する。照射条件は、特に限定はないが、十分なグラフト効率を得るためには、脱酸素状態で、5〜200kGy、特に30〜100kGyが好ましい。酸素濃度は、必要とされる重合率でグラフト重合が達成される濃度であればよく、好ましくは、酸素濃度1%以下、より好ましくは、酸素濃度100ppm以下である。本発明の目的のために好適に用いることのできる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などがあげられるがこれらに限定されるものではない。工業的には、γ線又は電子線が適している。
第2工程のグラフト重合は照射のタイミングにより、前照射グラフト重合法と同時照射グラフト重合法に分けられ、本発明はどちらの照射方法をも採用できる。前照射グラフト重合法はあらかじめ基材に放射線を照射した後、モノマーと接触させる重合方法であり、単独重合物の生成量が少ないため分離材料の製造方法にふさわしい。同時照射グラフト重合法は基材とモノマーとの共存下に放射線を照射するグラフト重合法である。本発明においては前照射グラフト重合法及び同時照射グラフト重合法のいずれも利用することが可能であるが、単独重合物(ホモポリマー)生成量の少ない前照射グラフト重合法がより好ましい。
接触させるモノマーが液体か又は気体かにより、それぞれ液相グラフト重合法と気相グラフト重合法とに分けられる。本発明では液相又は気相グラフト重合のいずれのグラフト重合方法も利用できる。また、液相及び気相グラフト重合法の中間に位置するグラフト重合法として含浸重合法がある。この方法は、予め所定のグラフト率が得られるようモノマー量を制御して基材に浸み込ませるグラフト重合法であるが、本発明はこのグラフト重合法にも利用できる。
本発明の放射線グラフト重合法によって繊維に導入することのできる重合性ビニルモノマーとしては、それ自体がイミノジ酢酸基を有しているものが少ないため、グラフト重合した後に更に2次反応を行うことによって機能性官能基を導入することのできる重合性ビニルモノマーを用いることができる。
2次反応を行ってイオン交換基やキレート基に転換できるモノマーとしてはアクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、グリシジルソルベート、グリシジルメタイタコナート、グリシジルビニルスルホナート、エチルグリシジルマレアート、これらの誘導体などが含まれる。メタクリル酸グリシジルの場合、スルホン酸基やカルボキシル基をはじめイミノジ酢酸基などのキレート基など各種官能基導入が容易であるため、好適に利用できる。また、スチレンやクロロメチルスチレンもイオン交換基及びキレート基の導入が容易であり、好適に利用できる。
(1)イミノジ酢酸基導入繊維の製造
繊維径約40μmのナイロン繊維よりなる撚糸500g巻いたボビンをポリエチレン袋に入れ、減圧排気−窒素ガス導入という窒素置換操作を3回繰り返した。この袋に、ガンマ線100kGyを照射した。照射後のナイロン繊維を取り出し、ステンレス製反応容器に入れ、予め窒素ガスでバブリング操作により脱酸素されたメタクリル酸グリシジル10%メタノール溶液に浸漬し、40℃で8時間グラフト重合を行って136%のグラフト率を得た。この繊維をイミノジ酢酸ナトリウム/ジオキサン/水=10/40/50の溶液に浸漬し、80℃で8時間反応を行い、重量増加率から算出したイミノジ酢酸基導入率2.3mmol/gのキレート繊維を得た。
(2)海水からのストロンチウム除去試験
小田原沖海水を用いて次の試験を行った。この海水のアルカリ土類金属濃度の分析値はストロンチウム10mg/L、カルシウム404mg/L、マグネシウム1170mg/Lであった。この海水2Lに炭酸ナトリウムを250mg/Lとなるよう加え、24時間攪拌した。pHは9.5であった。上澄み液のアルカリ土類金属濃度はストロンチウム3mg/L、カルシウム110mg/L、マグネシウム1120mg/Lであり、ストロンチウムとカルシウムが約70%除去され、マグネシウムはほとんど除去されていなかった。また、沈殿物の容量は3mlであった。
(3)カラムテスト
次に、キレート繊維5mlを充填した内径10mmのガラスカラムに(2)の上澄み液を通液した50ml/分の流量で通液した。カラム出口のストロンチウム濃度を測定したところ、600mlから徐々に上昇し始め700mlにおいて0.3mg/Lとなった。
比較例1
海水を未処理のまま、実施例(1)で製造したキレート繊維に通液した。通液結果は70mlを通液したところで破過し始め、カラム出口のストロンチウム濃度1mg/Lとなった。したがって、海水1Lを処理するにあたって、キレート繊維約14回の交換が必要であった。
比較例2
(2)の海水の凝集沈殿処理において、海水1Lに対し、炭酸ナトリウムを3000mg/Lを加え、pH10.2に調整した。白濁した汚泥が多量に発生したため、2日間静置したところ、汚泥量は410mLであった。この上澄み液のアルカリ土類金属濃度はストロンチウム0.3mg/L、カルシウム6mg/L、マグネシウム420mg/Lであり、ストロンチウムとカルシウムがともに95%以上除去されていた。同様のカラムテストを行ったところ、4.5Lでストロンチウム濃度が0.4mg/Lとなり、破過し始めた
実施例1、比較例1,2をまとめ表1に示した。
Figure 2016156797
本発明により、アルカリ土類金属を多量に含有する放射性ストロンチウムで汚染した水に炭酸ナトリウムを加えて凝集沈殿処理を行い、炭酸カルシウムと炭酸ストロンチウム主体の析出物を生じさせるが、水酸化マグネシウムの析出を抑えるpHに調整し、沈殿を分離した後、放射性ストロンチウム吸着材に接触させた方が、沈殿汚泥量と廃吸着材の合計が小さくなる。本発明では1Lの海水に対して12mLの廃棄物が生じるが、比較例1のように、キレート繊維のみでは84mLであった。さらに、比較例2のように、従来の水酸化マグネシウムの沈殿を生成させる凝集沈殿とキレート繊維の処理によると、411mLと非常に多量の沈殿汚泥が発生する。したがって、本発明による放射性廃棄物量低減効果が小さい。
したがって、同様の放射性ストロンチウム除去方法をさまざまな放射性廃液に適用できる。
海水中または海水由来の汚染水、また吸着材の溶離廃液、処分場における浸出水、汚染土壌からの浸出水などから放射性ストロンチウムを除去するには、他のアルカリ土類金属をも同時に除去せねばならず、放射性廃棄物量の増加を招いていた。本発明の放射性ストロンチウム除去方法によって、汚泥処理の難しい水酸化マグネシウムの沈殿を減少させることができる。また、凝集沈殿の後段に吸着材を配置することで、吸着材の寿命を長くすることができる。これまであった大量の汚泥の発生や吸着材交換頻度の増加、またこれらの問題によって発生する周辺環境、汚染や作業員の被ばくおよび放射性廃棄物の増大といった深刻な問題を低減することができる。
1 放射性ストロンチウムを含む汚染水
2 調整槽
3 pH調整槽
4 沈殿槽
4−1 沈殿槽1
4−2 沈殿槽2
5 吸着塔
6 放流槽
7 汚泥引抜槽
8 汚泥濃縮槽
9 溶離液貯槽
10 溶離廃液貯槽
11 繊維状吸着材
12 溶離槽
13 洗浄槽
14 洗浄水槽
15 芯

Claims (5)

  1. アルカリ土類金属と放射性物質を含有する汚染水に少なくとも炭酸塩を含む凝集剤を加えることによって、水酸化マグネシウムの析出物の発生を抑えるが、炭酸カルシウム主体の析出物を発生させるpHの範囲に調整し、析出物を分離する第1工程、析出物分離後の液体をストロンチウム吸着材に接触させることによって、放射性ストロンチウムを除去する第2工程を含むアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
  2. 前記炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項1記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
  3. 前記ストロンチウム吸着材はチタン酸金属塩を主成分とする無機化合物、チタン酸金属塩を主成分とする無機化合物を担体に担持したもの、イミノジ酢酸基を有するキレート樹脂、イミノジ酢酸基をグラフト側鎖に有するキレート吸着材から選択されたものである請求項1又は2記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
  4. 前記チタン酸金属塩を主成分とする無機化合物を担体に担持した吸着材は、放射線グラフト重合法によりイオン交換基又はキレート基を有するグラフト側鎖を有機高分子繊維に導入したものである請求項1、2又は3記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
  5. 前記イミノジ酢酸基をグラフト側鎖に有するキレート吸着材は、放射線グラフト重合法により、有機高分子繊維にイミノジ酢酸基を導入したものである請求項1,2,3又は4記載のアルカリ土類金属含有汚染水からの放射性ストロンチウムの除去方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106732394A (zh) * 2016-12-12 2017-05-31 北京师范大学 用于放射性污染土壤治理的土壤固化吸附剂及其制备方法
JP2018205276A (ja) * 2017-06-09 2018-12-27 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 放射性廃液の処理方法及び処理装置
CN109903875A (zh) * 2019-02-28 2019-06-18 西南科技大学 一种磷酸盐聚合物固化含硼核废液的方法

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