JP2016156632A - 自動試料分析システム - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンジの洗浄回数を必要最小限に抑えることが可能な自動試料分析システムを提供する。
【解決手段】自動試料分析システムにおいて、各種分析条件を記載したメソッドファイルを記憶するメソッドファイル格納部131と、連続的に実行される複数の分析について分析対象試料が収容されたバイアルのIDと分析に適用するメソッドファイルとが記述されたバッチテーブルを記憶するバッチテーブル格納部133と、前記バッチテーブル上に前後して記述された2つの分析のバイアルIDが同一か否かを判定するバイアルID確認部134と、前記バイアルIDが同一の場合には、前後の分析の間に実行される前記洗浄の回数がメソッドファイルに記載された回数よりも少なくし、前記バイアルIDが異なる場合には、前記洗浄の回数をメソッドファイルに記載された通りとするようオートインジェクタ110を制御する分析制御部135とを設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフ等の分析装置と該分析装置に試料を注入する自動試料注入装置(オートインジェクタ)と、それらを制御する制御装置とを備え、試料を自動的に交換・選択しながら順次分析を実行する自動試料分析システムに関する。
例えばガスクロマトグラフ分析を行う自動試料分析システムは、オートインジェクタ、試料気化室、カラムオーブン、及び検出器等の複数のユニットから構成されており、制御装置からの制御信号に従って各ユニットの動作が制御される。このような自動試料分析システムでは、液体試料を収容した試料容器をオペレータがオートインジェクタのサンプルラックに予め複数セットしておき、各試料の分析順序や分析条件などを規定するバッチテーブルをオペレータが前記制御装置上で入力・設定した上で分析開始を指示する。すると、そのバッチテーブルに従って試料容器が順次選択され、指定された分析条件の下で各試料のガスクロマトグラフ分析が自動的に実行される(例えば特許文献1を参照)。
図10は上記バッチテーブルの一例である。このテーブル上では1行が1回の試料分析(すなわちオートインジェクタによる1回の試料注入に伴うガスクロマトグラフ分析)に対応しており、各行に、その分析を実行するのに必要な情報として、分析対象試料が収容された試料容器(バイアル)の識別子であるバイアルIDや、該試料の分析に適用するメソッドファイル名などが記述される。ここでメソッドファイル(分析条件ファイル)とは、分析の内容、すなわち該分析に適用される各種分析条件が記載されたファイルであり、予めオペレータによって作成されて制御装置に記憶される。なお、このメソッドファイルには、各分析に適用される分析条件としてカラムオーブンの温度やキャリアガスの流量に加え、オートインジェクタにおける試料注入時の動作についても記載されている。
一般的に、オートインジェクタには、水平方向及び垂直方向に移動可能なシリンジが設けられており、前記サンプルラックにセットされた複数の試料容器の中から前記バッチテーブルで指定されたバイアルIDに対応する試料容器中の試料が前記シリンジにより採取され、カラムの入口に設けられた試料気化室に注入される。以下、このように試料容器から試料を採取して試料気化室に導入する動作を「試料注入」とよぶ。
オートインジェクタのサンプルラックには分析対象の試料が収容された容器(試料容器)のほかに、前記試料注入の前及び/又は後にシリンジの内部を洗浄するための洗浄液が収容された容器(以下「洗浄液容器」とよぶ)もセットされる。通常、この洗浄液を用いたシリンジの洗浄は1回の試料分析において数回程度(例えば6回)実施される。従って、例えば図10に示したバッチテーブルにおいて、1分析毎にシリンジの洗浄を6回行うとすると、一連の分析が完了するまでに合計72回のシリンジ洗浄を行うこととなる。
特開2014-134514号公報
ところで、試料容器や洗浄容器の上部開口はセプタムとよばれる樹脂製の封止材によって封止されている。そのため、これらの容器から試料又は洗浄液を採取する際には、シリンジの先端に設けられたニードルで前記セプタムを貫通させる必要がある。しかし、このときニードルの先端が変形したり、セプタムの一部がニードルによって切り取られてニードル内に詰まったり容器内に落下したりすることがある。このように、ニードルが変形したりニードル内にセプタムの欠片が詰まったりすると、目的量の試料を試料気化室に注入できず、正しい分析結果が得られなくなるおそれがある。また、洗浄容器の内部にセプタムの欠片が落下すると、該セプタムが洗浄液に溶け出して分析時における汚染の原因となるおそれがある。これらの問題は高頻度で発生するものではないが、上記のように一連の自動分析において多数回のシリンジ洗浄を行う場合には、一つの洗浄容器に何度もニードルを刺入させることになるため、こうした問題が発生する可能性が高くなる。そのため、一連の自動分析におけるシリンジ洗浄の実行回数は必要最小限に抑えることが望ましい。
上記のような一連の自動分析の中で、同一の試料を用いた分析が連続して行われる場合(すなわちバッチテーブル中の上下の行で同一のバイアルIDが指定されている場合)には、通常、シリンジ内で試料液のコンタミネーションは起こらず、起こるとしてもその可能性は低いため、両分析の間におけるシリンジの洗浄回数を0回や1回などに減らすことができる。例えば、図10のバッチテーブルに基づく一連の自動分析では、試料Aの最初の分析(図中の分析番号1)と、試料Bの最初の分析(分析番号4)と、試料Cの最初の分析(分析番号7)と、その後の試料Aの分析(分析番号10)においてのみ試料注入前に6回のシリンジ洗浄を行えばよく、その他の分析では試料採取前のシリンジの洗浄回数は0回又は1回で十分である。
しかし、従来の自動試料分析システムでは、こうした一連の自動分析において分析毎にシリンジの洗浄回数を変えるためには、オペレータが洗浄回数が異なるメソッドファイルを個別に作成する必要があった。例えば、図10に示したバッチテーブルのように、バイアルAにはメソッドファイルA1、バイアルBにはメソッドファイルB1、バイアルCにはメソッドファイルC1といったように、同一の試料容器から採取した試料については全て同一の分析条件を適用する場合であっても、各分析について洗浄回数のみが異なる複数のメソッドファイルを作成する必要があった。このような場合のバッチテーブルの例を図11に示す。なお、同バッチテーブルに記載されたメソッドファイルのうち、ファイル名の冒頭のアルファベットが同一であるもの、すなわちメソッドファイルA1とA2、メソッドファイルB1とB2、及びメソッドファイルC1とC2は、それぞれ洗浄回数以外は同一の分析条件が記述されたメソッドファイルである。
このように、従来の自動試料分析システムでは、シリンジの洗浄回数を最小限に抑えようとした場合、メソッドファイルの作成に掛かるオペレータの手間が増大してしまうという問題があった。また、これにより内容の類似したメソッドファイルが多数作成されることとなるため、ファイルの管理が煩雑になると共に、バッチテーブル上で誤ったメソッドファイルを指定してしまうといった問題が発生するおそれもある。
このような問題は、ガスクロマトグラフ分析を行う自動試料分析システムに限らず、オートインジェクタにより分析流路に試料を導入する機能を備えた自動試料分析システム全般に共通するものである。
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、オペレータの作業負担を増大させることなしに、シリンジ等の試料採取手段の洗浄回数を必要最小限に抑えることが可能な自動試料分析システムを提供することにある。
上記課題を解決するために成された第1発明に係る自動試料分析システムは、
a)試料を分析する試料分析部と、
b)液体を吸引及び吐出する試料採取手段と、容器収容部とを備え、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている一つ以上の試料容器のいずれかから試料を吸入して前記試料分析部内に吐出することにより該試料分析部への試料注入を行うと共に、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている洗浄液容器から洗浄液を吸引して吐出することにより該試料採取手段の洗浄処理を行う自動試料注入手段と、
c)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載したものであって、少なくとも前記自動試料注入手段において前記試料注入の前及び/又は後に実行される前記洗浄処理の回数を記載したメソッドファイルを一つ以上記憶するメソッドファイル記憶手段と、
d)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部に連続的に実行させる複数回の分析について、それぞれ少なくとも分析対象試料が収容された試料容器の識別子と該分析に適用するメソッドファイルの識別子が記述されたバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶手段と、
e)前記バッチテーブルに記述された前記試料容器の識別子が、前後して実行される2つの分析で同一であるか否かを判定する判定手段と、
f)前記バッチテーブルに従って前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の動作を制御するものであって、
前記判定手段により前記2つの分析における試料容器の識別子が異なると判定された場合には、それらの分析において前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数で前記洗浄処理を行うよう前記自動試料注入手段を制御し、
前記2つの分析における試料容器の識別子が同一であると判定された場合には、前の分析における前記試料注入の後及び/又は後の分析における前記試料注入の前に実行する前記洗浄処理を前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数よりも少ない所定の回数行うように前記自動試料注入手段を制御する分析制御手段と、
を有することを特徴としている。
なお、上記の「メソッドファイルに記載された回数よりも少ない所定の回数」には「0回」も含むものとする。
上記第1発明に係る自動試料分析システムにおいて、各メソッドファイルには、前後して実行される2つの分析において異なる試料容器から試料を採取すると想定した場合に必要な洗浄回数(例えば6回)を記載しておく。そして、前記判定手段によって、前後して実行される2つの分析で指定された試料容器が異なると判定された場合には、各分析について指定されたメソッドファイルに記述された回数で前記洗浄処理を行い、試料容器が同一であると判定された場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に実行する洗浄処理の回数を前記メソッドファイルに記載された回数よりも少ない所定の回数(例えば0回や1回)だけ実行するよう前記自動試料注入手段(オートインジェクタ)を制御する。これにより、従来のように洗浄回数のみが異なる複数のメソッドファイルを予め作成しておくといった煩雑な作業を行うことなく、一連の自動分析の間に行われる洗浄処理の回数を必要最小限に抑えることが可能となる。
なお、上記第1発明とは逆に、メソッドファイルには、前後して実行される2つの分析において同一の試料容器から試料を採取すると想定した場合に必要な洗浄回数(例えば0回や1回)を記載しておき、前記判定手段によって、前後して実行される2つの分析で指定された試料容器が異なると判定された場合にのみ、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に実行する洗浄処理の回数を前記メソッドファイルに記載された回数よりも多い所定の回数(例えば6回)とするようにしてもよい。このような構成によっても上記同様の効果を達成することができる。
すなわち、上記課題を解決するために成された第2発明に係る自動試料分析システムは、
a)試料を分析する試料分析部と、
b)液体を吸引及び吐出する試料採取手段と、容器収容部とを備え、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている一つ以上の試料容器のいずれかから試料を吸入して前記試料分析部内に吐出することにより該試料分析部への試料注入を行うと共に、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている洗浄液容器から洗浄液を吸引して吐出することにより該試料採取手段の洗浄処理を行う自動試料注入手段と、
c)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載したものであって、少なくとも前記自動試料注入手段において前記試料注入の前及び/又は後に実行される前記洗浄処理の回数を記載したメソッドファイルを一つ以上記憶するメソッドファイル記憶手段と、
d)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部に連続的に実行させる複数回の分析について、それぞれ少なくとも分析対象試料が収容された試料容器の識別子と該分析に適用するメソッドファイルの識別子が記述されたバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶手段と、
e)前記バッチテーブルに記述された前記試料容器の識別子が、前後して実行される2つの分析で同一であるか否かを判定する判定手段と、
f)前記バッチテーブルに従って前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の動作を制御するものであって、
前記判定手段により前記2つの分析における試料容器の識別子が同一であると判定された場合には、それらの分析において前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数で前記洗浄処理を行うよう前記自動試料注入手段を制御し、
前記2つの分析における試料容器の識別子が異なると判定された場合には、前の分析における前記試料注入の後及び/又は後の分析における前記試料注入の前に実行する前記洗浄処理を前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数よりも多い所定の回数行うように前記自動試料注入手段を制御する分析制御手段と、
を有することを特徴とするものとしてもよい。
以上の通り、上記第1発明又は第2発明に係る自動分析システムによれば、オペレータの作業負担を増大させることなく一連の自動分析における試料採取手段の洗浄回数を必要最小限に抑えることが可能となる。
本発明の実施形態1による自動試料分析システムの概略構成図。 同実施形態における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 (a)同実施形態において作成されるバッチテーブルの例、(b)同バッチファイル上の各分析に適用されるメソッドファイルに記載された洗浄処理の回数と、実際に行われる洗浄処理の回数の例。 本発明の実施形態2における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 本発明の実施形態3における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 本発明の実施形態4における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 本発明の実施形態6による自動試料分析システムの概略構成図。 同実施形態における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 本発明の実施形態7における一連の自動分析の実行手順を示すフローチャート。 自動試料分析システムにおいて作成されるバッチテーブルの一例を示す図。 従来の自動試料分析システムにおいて洗浄回数を抑える場合に作成されるバッチテーブルの一例を示す図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明を行う。
[実施形態1]
図1は本発明に係る自動試料分析システムの一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態に係る自動試料分析システムは、オートインジェクタ110(本発明における自動試料注入手段に相当)と、ガスクロマトグラフ部120(試料分析部に相当)と、制御/処理部130とを含んでいる。オートインジェクタ110は、バイアルラック収容部111(容器収容部に相当)と、下端にニードル116を有し内側に摺動自在にプランジャ117が嵌挿されたマイクロシリンジ115(試料採取手段に相当)と、このマイクロシリンジ115のプランジャ117を押し入れ又は引き出すプランジャ駆動部118と、マイクロシリンジ115全体を上下させると共に水平方向に所定範囲内で移動させるシリンジ駆動部119と、を含む。バイアルラック収容部111には、分析対象の試料を入れた複数の試料バイアル112(試料容器に相当)と、マイクロシリンジ115を洗浄するための洗浄液を入れた洗浄バイアル113(洗浄液容器に相当)とが配置されたバイアルラック114が収容される。なお、試料バイアル112及び洗浄バイアル113の上部開口には、いずれも樹脂製のセプタムを備えた蓋が取り付けられている。
ガスクロマトグラフ部120は、温調可能なカラムオーブン121を有しており、該カラムオーブン121内に配設されたキャピラリカラム122の入口には試料気化室123が設けられ、この試料気化室123には例えばヘリウム等のキャリアガスを導入するためのキャリアガス供給管124が接続されている。キャリアガス供給管124には図示しないマスフローコントローラなどにより略一定流量に調節されたキャリアガスが供給されており、キャリアガスは試料気化室123を通ってキャピラリカラム122に導入されるようになっている。なお、ここでは試料気化室123はスプリットレス方式を採っているが、スプリット方式でもよいことは当然である。
一方、キャピラリカラム122の出口には、該カラム122内で分離された各種成分を検出するための検出器125が設けられている。この検出器125としては従来知られている各種検出器、例えば、水素炎イオン化検出器、熱伝導度検出器、炎光光度検出器、エレクトロンキャプチャ検出器、フレームサーミオニック検出器を用いることができるほか、質量分析計を用いることもできる。
制御/処理部130は、試料気化室123やカラムオーブン121の温調、シリンジ駆動部119やプランジャ駆動部118の駆動など、ガスクロマトグラフ分析に必要な各種の制御を行うほか、検出器125により得られる検出信号の解析処理を行うものである。
図1に示すように制御/処理部130は、メソッドファイル格納部131(メソッドファイル記憶手段に相当)、バッチテーブル作成部132、バッチテーブル格納部133(バッチテーブル記憶手段に相当)、バイアルID確認部134(判定手段に相当)、分析制御部135(分析制御手段に相当)、及び検出器125からの検出信号を処理するためのデータ処理部136などの機能ブロックを含む。また、制御/処理部130に接続されている入力部140は分析者が各種の指示を与えたり条件を設定したりするためのものであり、表示部150はデータ解析結果などを表示するためのものである。制御/処理部130の機能の多くは、例えば中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、メモリ、及びHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を備えたパーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、該コンピュータに予めインストールした専用の制御・処理ソフトウエアを動作させることにより具現化することができる。この場合、前記パーソナルコンピュータは、オートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120と直接又は図示しないシステムコントローラを介して接続される。また、入力部140はキーボードやマウスなどのポインティングデバイス、表示部150はパーソナルコンピュータのモニタである。
シリンジ駆動部119やプランジャ駆動部118はそれぞれモータ等の駆動源を含み、制御/処理部130はそれぞれのモータの動作量を制御することでマイクロシリンジ115の移動動作やプランジャ117の摺動動作を制御する。
以下、制御/処理部130の制御の下に実行される、一連の自動分析の実行手順について図2及び図3を参照しつつ説明を行う。
まず、オペレータがバイアルラック114に試料バイアル112及び洗浄バイアル113をセットし、入力部140で所定の操作を行って制御/処理部130にバッチテーブルの作成開始を指示する。すると、バッチテーブル作成部132が、表示部150に所定の設定画面を表示させ、一連の自動分析で実行する複数の分析について、それぞれ分析対象試料が収容された試料バイアルの識別子(すなわちバイアルID)や、分析に適用するメソッドファイル等の入力を受け付ける。オペレータが入力部140を用いて前記バイアルIDやメソッドファイルを指定することによりバッチテーブルを作成すると(図2のフローチャートにおけるステップS11)、該バッチテーブルがバッチテーブル格納部133に記憶される。
ここでは、図3(a)に示すように、それぞれバイアルID「A」「B」「C」で表される3つの試料バイアル中の各試料(以下、それぞれ「試料A」「試料B」「試料C」とよぶ)を対象とする分析を、それぞれ3回ずつ実行し、その後更に試料Aに対する分析を3回実行するようなバッチファイルを作成するものとする。また、このとき試料Aの分析にはいずれもメソッドファイルA1を適用し、試料Bの分析にはいずれもメソッドファイルB1を、試料Cの分析にはいずれもメソッドファイルC1を適用するものとする。なお、これらのメソッドファイルA1、B1、C1は、いずれもオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120における各種動作条件を記述したものであり、予めオペレータによって作成され、メソッドファイル格納部131に格納されている。
以下、メソッドファイルA1、B1、C1にはオートインジェクタ110の動作条件として、いずれも以下の(1)〜(3)の動作をこの順に行うよう記述されているものとする。
(1)前洗浄:x回、(2)試料注入、(3)後洗浄:y回
ここで「前洗浄」及び「後洗浄」はいずれもマイクロシリンジ115によって洗浄バイアル113から所定量の洗浄液を吸引した後、該洗浄液を所定の場所(例えば、図示しない廃液容器など)に吐出することにより、マイクロシリンジ115内を洗浄することを意味している。また、「試料注入」とは、バッチテーブル上で指定されたバイアルIDに対応した試料バイアル112から所定量の試料をマイクロシリンジ115内に採取し、該試料をガスクロマトグラフ部120の試料気化室123に導入することを意味している。なお、ここでは、メソッドファイルA1、B1、C1において、いずれも前洗浄の回数をx回、後洗浄の回数をy回としたが、メソッドファイル毎に前洗浄及び/又は後洗浄の回数を変えてもよい。
続いて、オペレータにより入力部140から一連の自動分析の開始が指示されると(ステップS12)、分析制御部135は分析番号を示す変数nを1に設定し(ステップS13)、前記バッチテーブル上で分析番号「1」として記述されている分析(以下「1番目の分析」)を実行する(ステップS14)。具体的には、分析制御部135がバッチテーブル格納部133に格納されたバッチテーブル(ステップS11で作成されたもの)を参照し、該バッチテーブル上で前記1番目の分析について指定されたメソッドファイル(すなわちメソッドファイルA1)をメソッドファイル格納部131から読み出す。そして、該メソッドファイルA1に記述された分析条件でオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120を制御することにより前記1番目の分析を実行する。従って、このときオートインジェクタ110では、メソッドファイルA1の記述通り、マイクロシリンジ115の前洗浄がx回(例えば5回)と後洗浄がy回(例えば1回)行われる。
前記1番目の分析が完了すると、分析制御部135は前記変数nをインクリメントする(ステップS15)。そして、バイアルID確認部134が前記バッチテーブルを参照し、分析番号「n」の分析(以下「n番目の分析」)と分析番号「n−1」の分析(以下「n−1番目の分析」)、すなわち次に行う分析と直前に行った分析について該バッチテーブル上で指定されたバイアルIDが同一であるか否かを判定する(ステップS16)。
このとき、バイアルID確認部134により、n番目の分析とn−1番目の分析のバイアルIDが異なると判定された場合(すなわちステップS16でNoの場合)、分析制御部135は、前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルの記述に従ってオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120を制御することにより、前記n番目の分析を実行させる(ステップS17)。従って、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば5回)、後洗浄がy回(例えば1回)実行される。
一方、バイアルID確認部134により、n番目の分析とn−1番目の分析のバイアルIDが同一であると判定された場合(すなわちステップS16でYesの場合)には、分析制御部135は、オートインジェクタ110における前洗浄の回数を前記メソッドファイルに記載されたx回よりも少ないz回(例えば0回)とし、その他の点は前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより、前記n番目の分析を実行させる(ステップS18)。これにより、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がz回(例えば0回)、後洗浄がy回(例えば1回)実行されることとなる。なお、このときの前洗浄の回数zは、予めユーザによって指定され、制御/処理部130に設けられた所定の記憶部(図示略)に記憶されている。
ステップS17又はステップS18における試料の分析が完了したら、分析制御部135は、前記バッチテーブルに記述された全ての分析が完了したか否かを判定し(ステップS19)、完了していないと判定した場合(すなわちステップS19でNoの場合)には、ステップS15に戻ってステップS15〜S19の処理を繰り返し実行し、ステップS19で全ての分析が完了したと判定された時点で一連の自動分析を終了する。
以上の通り、本実施形態による自動試料分析システムでは、バッチテーブルに記載された各分析(但し1番目の分析を除く)の実行前に、該分析について指定されたバイアルIDと直前の分析におけるバイアルIDとが同一であるか否かが判定し、同一であった場合には、該分析における前洗浄の回数をメソッドファイルに記載された回数よりも少ない回数とする。その結果、例えば図3(a)のバッチテーブルにおける1番目の分析と2番目の分析のように、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一である場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に、マイクロシリンジ115の洗浄がy+z回(上記の例では後洗浄1回と前洗浄が0回の合計1回)だけ行われることとなる。一方、図3(a)のバッチテーブルにおける3番目の分析と4番目の分析のように、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一でない場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に、マイクロシリンジ115の洗浄がy+x回(上記の例では後洗浄1回と前洗浄5回の合計6回)行われることとなる。従って、図3(b)に示した例の場合、一連の自動分析の間に実行されるマイクロシリンジ115の洗浄回数を合計32回に抑えることができ、全分析についてメソッドファイルの記述通りにマイクロシリンジの洗浄を行う場合(洗浄回数は合計72回)に比べて、洗浄処理の回数を大幅に低減することができる。
このように、本実施形態における自動試料分析システムによれば、従来のように洗浄回数のみが異なる多数のメソッドファイルを予め作成しておくといった煩雑な作業を行うことなく、一連の自動分析において実行されるマイクロシリンジの洗浄回数を必要最小限に抑えることが可能となる。
[実施形態2]
上記の実施形態1では、バッチテーブル上で同一のバイアルIDが連続する場合において、後の分析における前洗浄の回数を減少させる例を示したが、これに限らず、例えば前の分析における後洗浄の回数を減少させるものとしてもよい。この場合、バイアルIDが同一であるか否かの判定は前の分析の実行前(又は前の分析における後洗浄の実行前)に行うものとする。こうした場合のフローチャートを図4に示す。
まず、オペレータが試料バイアル112や洗浄バイアル113をバイアルラック114にセットし、図2のステップS11及びS12と同様にしてバッチテーブルの作成(ステップS21)及び分析開始の指示(ステップS22)を行う。すると、分析制御部135が分析番号を示す変数nを1に設定し(ステップS23)、バイアルID確認部134が、n番目の分析とn+1番目の分析(ここでは1番目の分析と2番目の分析)について、ステップS21で作成されたバッチテーブル上で指定されているバイアルIDが同一であるか否かを判定する(ステップS24)。
このとき、バイアルID確認部134により、前記n番目の分析と前記n+1番目の分析のバイアルIDが異なると判定された場合(すなわちステップS24でNoの場合)、分析制御部135は、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルの記述に従ってオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120を制御することにより、該n番目の分析(ここでは1番目の分析)を実行させる(ステップS25)。従って、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば2回)、後洗浄がy回(例えば4回)実行される。
一方、バイアルID確認部134により、前記n番目の分析と前記n+1番目の分析のバイアルIDが同一であると判定された場合(すなわちステップS24でYesの場合)、分析制御部135は、オートインジェクタ110における後洗浄の回数を前記メソッドファイルに記載されたy回よりも少ないz回(例えば1回)とし、その他の点は前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより、前記n番目(ここでは1番目の分析)の分析を実行させる(ステップS26)。これにより、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば2回)、後洗浄がz回(例えば1回)実行されることとなる。
そして、前記n番目の分析が完了すると、分析制御部135は、前記バッチテーブルに記述された全ての分析が完了したか否かを判定し(ステップS27)、完了していないと判定した場合(すなわちステップS27でNoの場合)には、前記変数nをインクリメント(ステップS28)した上で、ステップS24に戻る。その後は、ステップS24〜S28の処理を繰り返し実行し、ステップS27で全ての分析が完了したと判定された時点で一連の自動分析を終了する。
以上の通り、本実施形態による自動試料分析システムにおいて、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一でない場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はy+x回(上記の例では6回)となる。一方、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一である場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はz+x回(上記の例では3回)に抑えられる。
[実施形態3]
また、図2〜図4で示した例では、前後の分析におけるバイアルIDが「同一」である場合に、両分析の間に行われる洗浄処理の回数をメソッドファイルの記述よりも「少なく」するものとしたが、これとは逆に、前後の分析におけるバイアルIDが「異なる」場合に、両分析の間に行われる洗浄処理の回数をメソッドファイルの記述よりも「多く」するようにとしてもよい。この場合のガスクロマトグラフ分析の手順の一例を図5のフローチャートに示す。なお、同図においてステップS31〜S35及びS39については図2のS11〜S15及びS19と同様であるため説明を省略する。但し、本実施形態ではバッチファイル上で指定されたメソッドファイル(すなわちメソッドファイルA1、B1、C1)のいずれにも、前後の分析におけるバイアルIDが同一と仮定した場合に必要な最小限の前洗浄回数x(例えば1回)及び後洗浄回数y(例えば1回)が記載されているものとする。
本実施形態では、ステップS36において、バイアルID確認部134がバッチテーブル上のn番目の分析とn−1番目の分析(すなわち次に行う分析と直前に行った分析)のバイアルIDが同一であるか否かを判定し、同一と判断した場合(すなわちステップS36でYesの場合)には、分析制御部135が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルの記述に従ってオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120を制御することにより、該n番目の分析を実行させる(ステップS37)。従って、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば1回)、後洗浄がy回(例えば1回)実行される。
一方、ステップS36において、前記n番目の分析と前記n−1番目の分析のバイアルIDが異なると判定された場合(すなわちステップS36でNoの場合)には、分析制御部135が、オートインジェクタ110における前洗浄の回数を前記メソッドファイルに記載されたx回よりも多いz回(例えば5回)とし、その他の点は前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより、前記n番目の分析を実行させる(ステップS38)。これにより、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がz回(例えば5回)、後洗浄がy回(例えば1回)実行されることとなる。
すなわち、本実施形態による自動試料分析システムにおいて、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一でない場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はy+z回(上記の例では6回)となる。一方、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一である場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はy+x回(上記の例では2回)に抑えられる。
[実施形態4]
なお、上記の実施形態5では、前後の分析におけるバイアルIDが「異なる」場合に、両分析の間に行われる洗浄処理の回数をメソッドファイルの記述よりも「多く」する場合の例として、後の分析における前洗浄の回数を増加させる例を示したが、これに限らず、例えば前の分析における後洗浄の回数を増加させるものとしてもよい。こうした場合のフローチャートを図6に示す。なお、同図においてステップS41〜S43、及びS47、S48については図4のS21〜S23及びS27、S28と同様であるため説明を省略する。但し、本実施形態においても、上記実施形態3と同様に、バッチファイル上で指定されたメソッドファイル(すなわちメソッドファイルA1、B1、C1)のいずれにも、前後の分析におけるバイアルIDが同一と仮定した場合に必要な最小限の前洗浄回数x(例えば2回)及び後洗浄回数y(例えば1回)が記載されているものとする。
本実施形態では、ステップS44においてバイアルID確認部134がn番目の分析とn+1番目の分析(すなわち次に行う分析とその次に行う分析)のバイアルIDが同一であるか否かを判定し、同一と判断した場合(すなわちステップS44でYesの場合)には、分析制御部135が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルの記述に従ってオートインジェクタ110及びガスクロマトグラフ部120を制御することにより、該n番目の分析を実行させる(ステップS45)。従って、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば2回)、後洗浄がy回(例えば1回)実行される。
一方、ステップS44において、前記n番目の分析と前記n+1番目の分析のバイアルIDが異なると判定された場合(すなわちステップS44でNoの場合)には、分析制御部135が、オートインジェクタ110における後洗浄の回数を前記メソッドファイルに記載されたy回よりも多いz回(例えば4回)とし、その他の点は前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより、前記n番目の分析を実行させる(ステップS46)。これにより、該n番目の分析において、オートインジェクタ110では前洗浄がx回(例えば2回)、後洗浄がz回(例えば4回)実行されることとなる。
すなわち、本実施形態による自動試料分析システムにおいて、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一でない場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はz+x回(上記の例では6回)となる。一方、前後して実行される2つの分析でバイアルIDが同一である場合には、前の分析における試料採取と後の分析における試料採取との間に行われるマイクロシリンジ115の洗浄処理の回数はy+x回(上記の例では3回)に抑えられる。
[実施形態5]
上記の実施形態1〜4では、いずれも各メソッドファイルにおいて、オートインジェクタ110の動作条件として、(1)前洗浄:x回、(2)試料注入、(3)後洗浄:y回、をこの順に行うことが記述されている場合を例に挙げて説明を行った。しかしながら、メソッドファイルには必ずしも後洗浄と前洗浄を行う旨が記述されているとは限らず、前洗浄のみ又は後洗浄のみを行うことが記述されている場合もある。本件発明はこのような場合にも適用可能である。
例えば、バッチテーブル上で各分析に適用するものとして指定されたメソッドファイルA1、B1、C1に、いずれもオートインジェクタ110の動作条件として以下の(1)、(2)の動作をこの順に行うことが記述されているものとする。
(1)前洗浄:x回、(2)試料注入
なお、ここでは、メソッドファイルA1、B1、C1における前洗浄回数をいずれもx回としたが、メソッドファイル毎に前洗浄の回数を変えるようにしてもよい。
このような場合、実施形態1で示したように、試料の分析を1回実行する毎に、該分析とその直後に行う分析におけるバイアルIDが同一であるか否かの確認を行い、同一であった場合に、前記直後の分析における前洗浄の回数を減らすようにすることが考えられる。このときの分析手順は図2のフローチャートで示したものとほぼ同じである。但し、同図のステップS14及びS17における(前洗浄x回、後洗浄y回)はいずれも(前洗浄x回)と読み替え、ステップS18における(前洗浄z回(z<x)、後洗浄y回)は(前洗浄z回(z<x))と読み替えるものとする。
また、上記の実施形態3で示したように、試料の分析を1回実行する毎に、該分析とその直後に行う分析におけるバイアルIDが同一であるか否かの確認を行い、同一でなかった場合に、前記直後の分析における前洗浄の回数を増やすようにしてもよい。このときの分析手順は図5のフローチャートで示したものとほぼ同じである。但し、同図のステップS34及びS37における(前洗浄x回、後洗浄y回)はいずれも(前洗浄x回)と読み替え、ステップS38における(前洗浄z回(z>x)、後洗浄y回)は(前洗浄z回(z>x))と読み替えるものとする。
なお、各メソッドファイルに(前洗浄と後洗浄の両方ではなく)後洗浄のみを行うことが記載されている場合も考えられる。例えば、バッチテーブル上で各分析に適用するものとして指定されたメソッドファイルA1、B1、C1に、いずれもオートインジェクタ110の動作条件として以下の(1)、(2)の動作をこの順に行うことが記述されているものとする。
(1)試料注入、(2)後洗浄:y回
なお、ここでは、メソッドファイルA1、B1、C1における後洗浄回数をいずれもy回としたが、メソッドファイル毎に後洗浄の回数を変えるようにしてもよい。
このような場合、上記の実施形態2で示したように、各分析の実行前に、該分析とその直後に行う分析とにおけるバイアルIDが同一であるか否かの確認を行い、同一であった場合に、該分析の後洗浄の回数を減らすことが考えられる。このときの分析手順は図4のフローチャートで示したものとほぼ同じである。但し、同図のステップS25における(前洗浄x回、後洗浄y回)は(後洗浄y回)と読み替え、ステップS26における(前洗浄x回、後洗浄z回(z<y))は(後洗浄z回(z<y))と読み替えるものとする。また、このようにメソッドファイルに前洗浄が記述されていない場合には、1番目の分析を実行する前(例えば図4のステップS22とS23の間)に予めマイクロシリンジ115の洗浄処理を所定の回数行っておくことが望ましい。
また、上記の実施形態4で示したように、各分析の実行前に、該分析とその直後に行う分析とにおけるバイアルIDが同一であるか否かの確認を行い、同一でなかった場合に、該分析の後洗浄回数を増やすようにしてもよい。このときの分析手順は図6のフローチャートで示したものとほぼ同じである。但し、同図のステップS45における(前洗浄x回、後洗浄y回)は(後洗浄y回)と読み替え、ステップS46における(前洗浄x回、後洗浄z回(z>y))は(後洗浄z回(z>y))と読み替えるものとする。また、この場合も、1番目の分析を実行する前に予めマイクロシリンジ115の洗浄処理を所定の回数行っておくことが望ましい。
[実施形態6]
上記の実施形態1〜5では、バッチテーブル上に記述された各分析の実行前又は後にその都度バイアルIDの確認と洗浄回数の調整を行うものとした。しかし、これに限らず本発明に係る自動試料分析システムは、バッチテーブルの完成後、該バッチテーブルに記述された一連の自動分析が開始される迄の任意の時点で、該バッチテーブルに記述された全分析についてバイアルIDの確認と洗浄回数の調整を一括して行うものとすることもできる。
このような場合における自動試料分析システムの構成例を図7に示す。この構成例では、制御/処理部230の機能ブロックとして洗浄回数変更部237と変更後回数記憶部238が追加されている点以外は、図1で示した構成とほぼ同一である。以下、図1で示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態における動作の一例を図8のフローチャートに示す。まず、実施形態1と同様にしてオペレータがバイアルラック214に試料バイアル212及び洗浄バイアル213をセットし、図3(a)に示すようなバッチテーブルを作成してバッチテーブル格納部233に記憶させる(ステップS61)。その後、オペレータが入力部240から所定の操作を行って一連の自動分析の開始を指示すると(ステップS62)、まず、バイアルID確認部234がバッチテーブル格納部233に格納されたバッチテーブル(ステップS61で作成されたもの)を参照し、該バッチテーブル上で同一のバイアルIDが連続して記載されている箇所、すなわち前後して行われる2つの分析において同一のバイアルIDが指定されている箇所があるか否かを判定する(ステップS63)。このとき同一のバイアルIDが連続して指定されている箇所がないと判定された場合(ステップS63でNoの場合)には、直ちに、分析制御部235の制御の下に前記バッチテーブルに従った一連の自動分析が開始される(ステップS71)。
一方、バイアルID確認部234により前記バッチテーブル上で同一のバイアルIDが連続して記載されている箇所があると判定された場合(ステップS63でYesの場合)には、洗浄回数変更部237が、前記2つの分析のうち、前の分析と後の分析の間に実行されるマイクロシリンジ215の洗浄回数をメソッドファイルに記述されているものよりも少ない所定の回数に変更し、該所定の回数を変更後回数記憶部238に記憶させる(ステップS64)。このとき、洗浄回数変更部237は、前の分析における後洗浄の回数を減らしても、後の分析における前洗浄の回数を減らしてもよく、あるいはその両方を減らすようにしてもよい。
続いて、分析制御部235が分析番号を示す変数nを1に設定し(ステップS65)、バッチテーブル上で分析番号「1」として記述されている分析(すなわち1番目の分析)について、洗浄回数の変更の有無(すなわち変更後回数記憶部238に変更後の洗浄回数が記述されているか否か)を確認する(ステップS66)。このとき、前記1番目の分析について洗浄回数の変更がなかった場合(ステップS66でNoの場合)には、分析制御部235が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルに従ってオートインジェクタ210及びガスクロマトグラフ部220を制御することにより、前記1番目の分析を実行させる(ステップS67)。従って、このときオートインジェクタ210で行われる前洗浄及び/又は後洗浄の回数は、前記メソッドファイルに記載された通りとなる。
一方、前記1番目の分析について洗浄回数の変更があった場合(ステップS66でYesの場合)には、分析制御部235が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルと変更後回数記憶部238の両方を参照し、前洗浄及び/又は後洗浄については変更後回数記憶部238に記載された回数に従い、その他の点については前記メソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより前記1番目の分析を実行する(ステップS68)。
前記1番目の分析が完了すると、分析制御部235は、前記バッチテーブルに記述された全ての分析が完了したか否かを判定し(ステップS69)、完了していないと判定した場合(すなわちステップS69でNoの場合)には、前記変数nをインクリメント(ステップS70)しては、n番目の分析についてステップS66〜S69を実行することを繰り返し、ステップS69で全ての分析が完了したと判定された時点で一連の自動分析を終了する。
[実施形態7]
上記の実施形態6では、バッチテーブルに従った一連の分析を開始する前にバイアルIDの確認及び洗浄回数の調整を一括して行い、前後して実行される2つの分析のバイアルIDが「同一」である箇所では両分析の間に実行されるマイクロシリンジ洗浄の回数をメソッドファイルに記述されたものよりも「減らす」ものとしたが、これとは逆に、前後して実行される2つの分析のバイアルIDが「異なる」箇所において両分析の間に実行されるマイクロシリンジ洗浄の回数をメソッドファイルに記述されたものよりも「増やす」ものとしてもよい。
この場合の動作の一例を図9のフローチャートに示す(なお、システム構成は図7に示したものと同様である)。この例では、上記実施形態6と同様にしてバッチテーブルが作成され(ステップS81)、一連の自動分析の開始が指示される(ステップS82)と、まず、バイアルID確認部234がバッチテーブル格納部233に格納されたバッチテーブル(ステップS81で作成されたもの)を参照し、該バッチテーブル上において異なるバイアルIDが連続して記載されている箇所、すなわち前後して実行される2つの分析について異なるバイアルIDが指定されている箇所があるか否かを判定する(ステップS83)。このとき異なるバイアルIDが連続して指定されている箇所がないと判定された場合(ステップS83でNoの場合)には、分析制御部235の制御の下に、前記バッチテーブルに従った一連の自動分析が開始される(ステップS91)。
一方、前後して実行される2つの分析について異なるバイアルIDが指定されている箇所があった場合(ステップS83でYesの場合)には、洗浄回数変更部237が、前記2つの分析のうち前の分析と後の分析の間に実行されるマイクロシリンジ洗浄の回数をメソッドファイルに記述されているものよりも多い所定の数に変更し、該所定の数を変更後回数記憶部238に記憶させる(ステップS84)。このとき、洗浄回数変更部237は、前の分析における後洗浄の回数を増やしても、後の分析における前洗浄の回数を増やしてもよく、あるいはその両方を増やすようにしてもよい。
続いて、分析制御部235が分析番号を示す変数nを1に設定し(ステップS85)、前記バッチテーブルに記述された1番目の分析について、洗浄回数の変更の有無(すなわち変更後回数記憶部238に変更後の洗浄回数が記述されているか否か)を確認する(ステップS86)。このとき、前記1番目の分析について洗浄回数の変更がなかった場合(ステップS86でNoの場合)には、分析制御部235が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルに従ってオートインジェクタ210及びガスクロマトグラフ部220を制御することにより、前記1番目の分析を実行させる(ステップS87)。従って、このときオートインジェクタ210で行われる前洗浄及び/又は後洗浄の回数は、前記メソッドファイルに記載された通りとなる。
一方、前記1番目の分析について洗浄回数の変更があった場合(ステップS86でYesの場合)、分析制御部235が、前記バッチテーブル上で指定されたメソッドファイルと変更後回数記憶部238の両方を参照し、前洗浄及び/又は後洗浄については変更後回数記憶部238に記憶された回数に従い、その他の点については前記メソッドファイルの記述に従って各部を制御することにより前記1番目の分析を実行する(ステップS88)。
前記1番目の分析が完了すると、分析制御部235は、バッチテーブルに記述された全ての分析が完了したか否かを判定し(ステップS89)、完了していないと判定した場合(すなわちステップS89でNoの場合)には、前記変数nをインクリメント(ステップS90)しては、n番目の分析についてステップS86〜89を実行することを繰り返し、ステップS89で全ての分析が完了したと判定された時点で一連の自動分析を終了する。
なお、上記の実施形態6、7では、バッチテーブル格納部233と変更後回数記憶部238とを個別に設ける構成としたが、これに限らず、例えば変更後回数記憶部238を設ける代わりに、バッチテーブル上に変更後の洗浄回数を記録する列を設けるようにしてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲で適宜変更が許容されるものである。例えば、上記実施形態では、いずれも本発明に係る自動試料分析システムをガスクロマトグラフ分析を行うシステムとしたが、これに限らず、本発明は、自動試料注入手段(オートインジェクタ)を備えた各種の自動試料分析システム(例えば液体クロマトグラフ分析、質量分析、ガスクロマトグラフ質量分析、又は液体クロマトグラフ質量分析を行うシステム等)に適用することができる。また、上記実施形態では本発明における試料採取手段をマイクロシリンジとしたが、これに限定されるものではなく、例えばニードルと該ニードルの基端側に接続された液体流路とを有し、該液体流路の他端に接続されたポンプ等によって液体の吸引及び吐出を行うものとすることもできる。
110、210…オートインジェクタ
111、211…バイアルラック収容部
112、212…試料バイアル
113、213…洗浄バイアル
114、214…バイアルラック
115、215…マイクロシリンジ
116、216…ニードル
117、217…プランジャ
120、220…ガスクロマトグラフ部
121、221…カラムオーブン
122、222…キャピラリカラム
123、223…試料気化室
125、225…検出器
130、230…制御/処理部
131、231…メソッドファイル格納部
132、232…バッチテーブル作成部
133、233…バッチテーブル格納部
134、234…バイアルID確認部
135、235…分析制御部
136、236…データ処理部
237…洗浄回数変更部
238…変更後回数記憶部

Claims (3)

  1. a)試料を分析する試料分析部と、
    b)液体を吸引及び吐出する試料採取手段と、容器収容部とを備え、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている一つ以上の試料容器のいずれかから試料を吸入して前記試料分析部内に吐出することにより該試料分析部への試料注入を行うと共に、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている洗浄液容器から洗浄液を吸引して吐出することにより該試料採取手段の洗浄処理を行う自動試料注入手段と、
    c)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載したものであって、少なくとも前記自動試料注入手段において前記試料注入の前及び/又は後に実行される前記洗浄処理の回数を記載したメソッドファイルを一つ以上記憶するメソッドファイル記憶手段と、
    d)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部に連続的に実行させる複数回の分析について、それぞれ少なくとも分析対象試料が収容された試料容器の識別子と該分析に適用するメソッドファイルの識別子が記述されたバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶手段と、
    e)前記バッチテーブルに記述された前記試料容器の識別子が、前後して実行される2つの分析で同一であるか否かを判定する判定手段と、
    f)前記バッチテーブルに従って前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の動作を制御するものであって、
    前記判定手段により前記2つの分析における試料容器の識別子が異なると判定された場合には、それらの分析において前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数で前記洗浄処理を行うよう前記自動試料注入手段を制御し、
    前記2つの分析における試料容器の識別子が同一であると判定された場合には、前の分析における前記試料注入の後及び/又は後の分析における前記試料注入の前に実行する前記洗浄処理を前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数よりも少ない所定の回数行うように前記自動試料注入手段を制御する分析制御手段と、
    を有することを特徴とする自動試料分析システム。
  2. a)試料を分析する試料分析部と、
    b)液体を吸引及び吐出する試料採取手段と、容器収容部とを備え、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている一つ以上の試料容器のいずれかから試料を吸入して前記試料分析部内に吐出することにより該試料分析部への試料注入を行うと共に、前記試料採取手段により、前記容器収容部に収容されている洗浄液容器から洗浄液を吸引して吐出することにより該試料採取手段の洗浄処理を行う自動試料注入手段と、
    c)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の制御に関する複数の設定項目についてその設定値を記載したものであって、少なくとも前記自動試料注入手段において前記試料注入の前及び/又は後に実行される前記洗浄処理の回数を記載したメソッドファイルを一つ以上記憶するメソッドファイル記憶手段と、
    d)前記自動試料注入手段及び前記試料分析部に連続的に実行させる複数回の分析について、それぞれ少なくとも分析対象試料が収容された試料容器の識別子と該分析に適用するメソッドファイルの識別子が記述されたバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶手段と、
    e)前記バッチテーブルに記述された前記試料容器の識別子が、前後して実行される2つの分析で同一であるか否かを判定する判定手段と、
    f)前記バッチテーブルに従って前記自動試料注入手段及び前記試料分析部の動作を制御するものであって、
    前記判定手段により前記2つの分析における試料容器の識別子が同一であると判定された場合には、それらの分析において前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数で前記洗浄処理を行うよう前記自動試料注入手段を制御し、
    前記2つの分析における試料容器の識別子が異なると判定された場合には、前の分析における前記試料注入の後及び/又は後の分析における前記試料注入の前に実行する前記洗浄処理を前記バッチテーブルで指定されたメソッドファイルに記載された回数よりも多い所定の回数行うように前記自動試料注入手段を制御する分析制御手段と、
    を有することを特徴とする自動試料分析システム。
  3. コンピュータを、請求項1又は2に記載の前記メソッドファイル記憶手段、前記バッチテーブル記憶手段、前記判定手段、及び前記分析制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。
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