JP2016149650A - 導波管、無線電力伝送システム、および無線通信システム - Google Patents

導波管、無線電力伝送システム、および無線通信システム Download PDF

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Abstract

【課題】伝送する電磁波の周波数および伝搬モードを考慮した導波管を提供する。
【解決手段】導波管1は、例えば5.8GHzのマイクロ波をTE11モードで管軸方向に伝送するように外径φ1(電磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向における被覆体の内面間の距離D)および内径φ2が設定されている。一例として、導波管1は、誘電体21の厚みが2.45mmとなっていて、外径φ1=44.5mmであり、内径φ2=39.6mmとなっている。電磁波は、誘電体21を通過する際に波長が短縮するため、電磁波から見た実質的な管径φ’は、上記管径φよりも大きくなる。誘電体21の比誘電率εrがεr=2.5とすると、実質的な管径φ’は計算上、φ’=47.35mmとなる。この管径から計算されるTE11モードの遮断周波数fcは、3.71GHzとなる。
【選択図】図2

Description

この発明は、電力の伝送または無線通信を行う導波管、ならびに当該導波管を備えた無線電力伝送システムおよび無線通信システムに関するものである。
従来、導波管は、主にマイクロ波またはミリ波等の電磁波の伝送に用いられている。近年では、例えば、導波管を用いた車載用通信システムが提案されている(特許文献1を参照)。
しかし、金属製の導波管は、重く、屈曲性がないため、利便性に乏しい。そこで、屈曲性を有する円筒形状の部材に金属製の皮膜層を形成して、電磁波を伝送するものが提案されている(例えば特許文献2を参照)。
特開2005−176123 特開2013−243518
しかし、特許文献2の導波管は、電磁波を伝送するという概念的な記載はあるものの、実際に伝送する電磁波の周波数、伝搬モード、または必要な効率等が考慮されていない。
そこで、この発明は、伝送する電磁波の周波数および伝搬モードを考慮した導波管、ならびに当該導波管を備えた無線電力伝送システムおよび無線通信システムを提供することを目的とする。
本発明の導波管は、筒形状の誘電体からなる筒状体と、前記筒状体の外周側面を被覆する導電体からなる被覆体とを含み、電磁波を伝搬させる導波管であって、前記電磁波の進行方向に直交する該導波管の断面において、前記電磁波の電界ベクトルの方向と直交する直交方向における前記被覆体の内面間の距離が、前記電磁波の周波数に対応する規定の導波管の規格寸法よりも、該直交方向における前記誘電体の厚みと前記誘電体の誘電率とで定まる量だけ小さいことを特徴とする。
このように、本発明の導波管は、筒形状の誘電体からなる筒状体の側面を導電体からなる被覆体で被覆する構造であるため、金属製の導波管よりも軽く、屈曲性を持たせることが可能である。特に、本発明の導波管は、外周側面が導電体で被覆された構造であり、内周側面を導電体で被膜するよりも製造が容易である。また、導電体のうち電磁波が伝送される内周面側が誘電体で覆われていて、電磁波に直接暴露されていないため、耐久性が高いものとなる。
ここで、電磁波は、誘電体を通過する際に波長が短縮するため、導波管内部に誘電体が配置される場合、電磁波から見た前記被覆体の内面間の実質的な距離は、上記実際の前記被覆体の内面間の距離よりも大きくなる。より定量的に説明すれば、電磁波からみた前記被覆体の内面間の実質的な距離は、実際の前記被覆体の内面間の距離よりも、前記直交方向における前記誘電体の厚みと前記誘電体の誘電率とで定まる量だけ大きくなる。
ここで、電磁波から見た前記被覆体の内面間の実質的な距離をD’、実際の前記被覆体の内面間の距離をDとした場合に、D’とDとは、例えばD=D’−2r√εの関係で表される。
本発明の導波管は、被覆体の内面間の距離Dが、上記実質的な距離D’に対応して、伝送する電磁波の周波数における既定の導波管の規格寸法に対応した寸法に設定されている。例えば、距離Dは、断面形状が円形である場合、実質的な距離D’がEIAJ規格円形導波管においてTE11モードで伝送する電磁波の周波数に対応するように設定されている。したがって、本発明の導波管は、伝送する電磁波の周波数および伝搬モードを考慮した導波管となっている。換言すれば、本発明の導波管は、前記被覆体の内面間の距離が、前記電磁波の周波数に対応する規定の導波管の規格寸法よりも、該直交方向における前記誘電体の厚みと前記誘電体の誘電率とで定まる量だけ小さくなっており、伝送する電磁波の周波数および伝搬モードが考慮されている。
また、導波管の断面形状は、円形、方形、台形、または楕円形等が考えられる。断面形状が円形である場合、基本モード(主モード)は、TE11となる。ただし、円形導波管におけるTE11モードでは、電界ベクトルの方向が安定しない場合がある。したがって、導波管の側面の一部に電磁波が取り出されるポートを設ける場合に、強い電界の箇所から取り出すことができない場合がある。そこで、導波管の断面形状が円形である場合、誘電体の厚みの異なる箇所を設けることで、電界ベクトルの方向を特定の方向に安定させることが好ましい。具体的には、例えば、前記直交方向における前記誘電体の厚みは、当該直交方向以外の他の方向における該誘電体の厚みより小さくなっていることが好ましい。
または、導波管は、内部に、誘電率の異なる多層化または混在化された複数の誘電体が配置されている構造とすることでも電界ベクトルの方向を特定の方向に安定させることが可能である。また、断面形状を楕円形等とすることでも、電界ベクトルの方向を特定の方向に安定させることが可能である。
なお、導波管は、側面の一部に電磁波が取り出されるポート、または電磁波が取り込まれるポートが設けられた態様とすることができる。ポートは、側面の一部に設けられたスロット部とすることが可能である。スロット部は、導電体および誘電体が存在しない切り欠き形状とすることも可能であるし、導電体の被膜だけを省く構造(導電体が被膜されておらず、誘電体が存在する構造)とすることも可能である。また、スロット部は、切り込みとすることで、アンテナ(例えば同軸線)を挿入することが可能な構造としてもよい。
また、スロット部を導電体および誘電体が存在しない切り欠き形状する場合、当該スロット部に電磁波シールドを設けることで、電磁波だけを導波管内に閉じ込めながら、他の流体を当該スロット部から取り出すことも可能である。これにより、流体(例えばガス)と電磁波を当該導波管で同時に伝送しながらも、ガスだけを取り出す箇所を設けることが可能となる。また、逆に電磁波だけを取り出す箇所を設けることが可能となる。
また、本発明の導波管からなる外部被膜導波管は、筒形状の誘電体からなる筒状体、および、該筒状体の内周側面を被覆する導電体からなる被覆体を含み、電磁波を伝搬させる導波管からなる内面被膜導波管と組み合わせた導波管とすることも可能である。この場合、前記外面被膜導波管の被覆体の内面間の距離と、前記内面被膜導波管の被覆体の内面間の距離が略等しくなっていることが好ましい。これにより、内面被膜導波管に外面被膜導波管を差し込むことができ、長い導波管を構成することができる。導電体を被覆するためには、例えばめっきまたは蒸着により行われる。この場合、めっき槽または蒸着チャンバの大きさによって、製造可能な導波管の長さが限られる可能性がある。特に、上述のように、内周側面を導電体で被覆する場合、製造が困難となる。そこで、外径が異なる外面被膜導波管と内面被膜導波管とを組み合わせた導波管とすることで、長い導波管を実現することができる。なお、外面被膜導波管と内面被膜導波管は、互いの導電体が電気的に接続されていることが好ましい。これにより、電磁波としては1つの長い導波管で伝送される状態とほぼ等しくなる。
なお、内面被膜導波管については、電磁波に直接導電体が暴露されるため、内周側面に酸化防止層が設けられていることが好ましい。
なお、本発明は、上記の導波管と、電源と、前記電源からの直流電力を高周波信号に変換するDC−RF変換部と、前記DC−RF変換部で変換された前記高周波信号を前記導波管に送信する送信アンテナと、前記導波管から送信される前記高周波信号を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信した前記高周波信号を直流電力に変換するRF−DC変換部と、を備えた無線電力伝送システムを実現することができる。
また、本発明は、上記の導波管と、情報通信用の無線信号を前記導波管に送信する無線送信部と、前記導波管から送信される前記無線信号を受信する無線受信部と、前記無線受信部で受信した前記無線信号を信号処理する信号処理部と、を備えた無線通信システムとすることも可能である。
この発明によれば、伝送する電磁波の周波数および伝搬モードを考慮した導波管、ならびに当該導波管を備えた無線電力伝送システムおよび無線通信システムを実現することができる。
無線電力伝送システムの構成を示す概略ブロック図である。 導波管の構造を示す図である。 固定治具の構造を示す図である。 導波管1の側面の一部に設けられたポートを示す図である。 導波管1の側面の一部に設けられたポートを示す図である。 導波管の断面形状の変形例を示す図である。 誘電体の内周側面が導電体で被覆された導波管1Aを組み合わせる場合の構造を示す図である。 無線通信システムの構成を示す概略ブロック図である。
図1は、本発明の導波管を備えた無線電力伝送システムの構成を示す概略ブロック図である。
無線電力伝送システムは、電源51、DC−RF変換部52、送信アンテナ53、導波管1、受信アンテナ54、RF−DC変換部55、および受信回路56を備えている。無線電力伝送システムは、例えば自動車内に設置され、バッテリから各種電気機器への電力を供給するために用いられる。
電源51は、例えば自動車内に設置されたバッテリである。DC−RF変換部52は、電源51から取り出した直流電力を所定周波数の高周波信号(例えば5.8GHz)に変換する。
送信アンテナ53は、例えばパッチアンテナであり、DC−RF変換部52から入力される高周波信号に基づいて、電磁波(マイクロ波)を放射する。送信アンテナ53から放射されたマイクロ波は、導波管1と結合して所定の伝搬モードで伝送される。受信アンテナ54は、導波管1で伝送された電磁波を受信する。RF−DC変換部55は、受信アンテナ54で受信された電磁波を直流電力に変換する。受信回路56は、自動車内に設置された各種電気機器に相当し、RF−DC変換部55から直流電力の供給を受ける。
図2(A)は、導波管1の斜視図であり、図2(B)は、導波管1内を伝搬する電磁波の伝送方向に直交する該導波管1の断面図であり、図2(C)は、当該断面図における電界ベクトルの方向を示した図である。
導波管1は、筒形状の誘電体21からなる筒状体と、筒状体の外周側面を被覆する導電体11からなる被覆体とを備えている。誘電体21は、例えば円筒形状であり、例えばABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)からなる。導電体11は、例えば銅の薄膜からなるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム等の他の導電体からなっていてもよい。
導電体(被覆体)11は、例えばめっきまたは蒸着により、誘電体(筒状体)21の外周側面に被覆されている。ただし、導電体11および誘電体21は、導波管1の内部を外部から視認可能な程度の透明性を有する材料を用いてもよい。透明性を有する材料を用いる場合、導波管1を分解する必要なく、導波管1の内部に異物が混入したか否か等を確認することができる。
導波管1は、図2(C)の電界ベクトルに示すように、所定周波数の電磁波(例えば5.8GHzのマイクロ波)を所定の伝搬モード(例えばTE11モード)で管軸方向に伝送するように外径φ1(電磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向における被覆体の内面間の距離Dに対応する。)および内径φ2が設定されている。
一例として、本実施形態の導波管1は、誘電体21の厚みrが2.45mmとなっていて、外径φ1=44.5mmであり、内径φ2=39.6mmとなっている。
また、導電体11の厚みは、例えば1μmとなっている。電磁波の周波数5.8GHzにおいては、材質に入射した電磁波が1/e(≒−8.7dB)に減衰する距離である表皮深さδがδ≒0.8μmである。したがって、導電体11の厚みは、十分となっている。ただし、導電体11の厚みは、さらに厚くなっていてもよい。
一般に、円形導波管の伝搬モードとして、基本モードであるTE11モードの遮断周波数fcは、以下の式1で表すことができる(ただし、v0は、真空中における電波の伝送速度[m/s]であり、φは管径[m]である)。
Figure 2016149650
ここで、管径φは、円形導波管である導波管1の場合、導電体11の内径に相当し、誘電体21の外径φ1(距離D)に相当する。しかし、導波管1は、導電体11の内側に誘電体21が配置されている。電磁波は、誘電体21を通過する際に波長が短縮するため、電磁波から見ると内径が大きくなる。すなわち、電磁波から見た実質的な外径φ’(電磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向でかつ中心を通る直線における被覆体の内面間の実質的な距離D’)は、上記管径φ(被覆体の内面間の距離D)よりも大きくなる。より詳細には、電磁波から見た実質的な外径φ’(D’)は、上記管径φ(D)よりも、電磁波の電界ベクトルの方向と直交する直交方向における誘電体21の厚みrと誘電体21の誘電率εとで定まる量(例えば、2r√ε)だけ、大きくなる。
ここで、誘電体21の誘電率εをε=2.5とすると、実質的な外径φ’は、例えば距離Dと実質的な距離D’との関係がD=D’−2r√εで表されるとすると、外径φ’=47.35mmとなる。
そして、規格導波管(例えばEIAJ規格円形導波管)では、規格内径47.35mmに対応するTE11モードの遮断周波数fcは、3.71GHzとなる。すなわち、誘電体11の外径φ1は、遮断周波数3.71GHzの周波数における規格導波管の寸法に対応していると言える。したがって、導波管1は、5.8GHzの電磁波をTE11モードで伝送することが可能であると言える。
また、以上のような構造を有する導波管1の伝搬特性は、シミュレーションでは−0.245dB/mとなり、実験では−0.72dB/mであることが確認されている。したがって、導波管1は、5.8GHzの電磁波を伝送可能である。
以上のような導波管1は、主たる材料が誘電体であるため、一般的な金属製の導波管に比べて極めて軽量である。例えば、一般的な金属製の導波管の重量が1kg/m以上であるのに対して、本実施形態の導波管1は、360g/m程度である。また、誘電体の材質または厚みによっては、導波管自体に屈曲性を持たせることも可能である。さらに、導波管1は、外周側面が導電体11で被覆された構造であり、内周側面を導電体11で被膜するよりも製造が容易である。また、導電体11のうち電磁波が伝送される内周面側が誘電体21で覆われていて、電磁波に直接暴露されていないため、耐久性が高いものとなる。
なお、この例では1種類の誘電体からなる例を示しているが、誘電率の異なる複数の誘電体が多層化または混在化された構造としてもよい。この場合、例えば誘電率は低いが強度が低い主たる誘電体と、誘電率は高いが強度が高い補強用誘電体と、を多層化または混在化させることで、単一の誘電体を配置するよりも誘電率を抑えながら強度を保つことができる。
次に、図3(A)および図3(B)は、導波管1と送信アンテナ53とを接続する固定治具71の構造を示す概略図である。図3(A)は、側面から見た図であり、図3(B)は正面から見た図である。
固定治具71は、厚みが薄い直方体形状の金属(例えばアルミニウム)からなる。固定治具71は、平面視した中心位置に、導波管1の外径φ1と略同じ径の円形状の孔711が開けられている。この孔711に導波管1が挿入され、固定される。
また、孔711には、誘電体712が充填されている。ただし、中心付近は、平面視して四角形状に、誘電体712が充填されていない箇所が存在する。誘電体712が充填されていない箇所にパッチアンテナである送信アンテナ53が挿入され、固定される。
なお、固定治具71は、送信アンテナ53のグランドに接続されている。孔711に導波管1が挿入されると、孔711の内側側面は、導波管1の導電体11と電気的に接続されるため、送信アンテナ53のグランドと導波管1のグランドは同電位となる。
これにより、導波管1と送信アンテナ53が固定されるとともに、導波管1のグランドと送信アンテナ53のグランドが同電位となる。また、導波管1と受信アンテナ54についても同じ構造の固定治具を用いることにより、固定することができる。
次に、図4は、導波管1の側面の一部に設けられたポートを示す図である。図4(A)に示すように、導波管1の側面には、電磁波を導波管1から取り出すためのポート60が設けられている。ポート60は、導波管1の側面に設けられた複数のスロット(この例では3つのスロット61A、スロット61B、およびスロット61C)からなる。スロット61A、スロット61B、およびスロット61Cは、導波管1の側面のうち、導電体11および誘電体21を排除した箇所に設けられている。スロット61A、スロット61B、およびスロット61Cは、導波管1の管軸方向に直交する方向からわずかに傾斜している。スロットの傾斜を強くすれば放出される電磁波が強くなる。また、スロットの大きさを変更すれば、放出される電磁波の周波数が変化する。なお、ポート61は、単一のスロットであってもよいし、さらに多数のスロットからなる態様であってもよい。
なお、スロットは、導電体11が被覆されていないだけで、誘電体21が存在する箇所に設けられていてもよい。この様なスロットは、当該スロットの箇所をマスキングして導電体11を被覆することで設けることができる。この場合、導波管1の内部は、外部と遮断された状態となるため、例えば液体(水)またはガスと電磁波とを導波管1で同時に伝送しながらも、電磁波だけを取り出す箇所を設けることが可能となる。
また、図4(B)に示すように、導波管1の側面のうち、導電体11および誘電体21を排除したスロット62A、スロット62B、およびスロット62Cを設け、各スロットに電磁波シールド(例えば金属メッシュ)を設けることで、電磁波を遮断しながら液体(水)またはガスだけを取り出すためのポート62を設けることも可能である。
なお、ポートは、図4に示したようなスロット以外にも、例えば以下の様な構造とすることも可能である。図5は、導波管1の側面の一部に設けられたポートを示す図である。図5(A)に示すように、ポート75は、導波管1の側面に設けられた切り込みからなる。図5(B)および図5(C)に示すように、この切り込みにアンテナ(この例では同軸線65)が挿入され、当該同軸線65の先端が導波管1の内部に達することになる。したがって、電磁波を導波管1から取り出す、または電磁波を導波管1に取り込むことができる。この場合、同軸線65が挿入されていないときには導波管1から電磁波が漏れることがない。したがって、電力を導波管1から出力したい、または電力を導波管1に入力したい時だけ、同軸線65を挿入するだけで、容易に電力を入出力しながら、電磁波の漏洩を防止することができる。
次に、図6は、導波管の断面形状の変形例を示す図である。導波管の断面形状は、円形、方形、台形、または楕円形等が考えられる。例えば、図6(A)は、断面形状が楕円形である導波管の断面図である。導波管の断面形状が円形である場合、例えばわずかな変形が生じた場合、伝搬モードが縮退し、電界ベクトルの方向が安定しない可能性がある。しかし、図6(A)に示すような楕円形状の場合、楕円の短軸方向に沿って強い電界が発生するため、縮退を防止して、電界ベクトルの方向を安定させることができる。この場合、図4または図5で示したように導波管の側面から電力を取り出す場合に、最も電界が強い側面位置(短軸方向に沿った側面位置)にポートを設けることで、安定的に電力を取り出すことができる。
また、図6(B)に示すように、断面形状が円形の導波管においても、内周側面の一部に金属の突起15を設けることでも、電界の方向を安定化させることができる。
また、図6(C)に示すように、誘電体21の厚みを一部厚くすれば、電磁波から見た空間が大きくなることで、図6(A)に示した楕円形状と空間的に等価とすることができ、電界の方向を安定化させることができる。
また、図6(D)に示すように、相対的に誘電率の低い誘電体21Aと相対的に誘電率の高い誘電体21Bとを混在化させることでも、図6(A)の楕円形状と空間的に等価とすることができ、電界の方向を安定化させることができる。また、図6(D)の例では、導波管の内部が誘電体で満たされているため、中空の導波管と比べて強度も向上する。
なお、図6(E)に示すように、導波管の断面形状が方形である場合も、磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向でかつ中心(高さ方向の中心)を通る直線における被覆体の内面間の距離Dを、誘電体21の厚みrおよび誘電率εを考慮した寸法(例えば距離Dと実質的な距離D’が、D=D’−2r√εの関係を満たす寸法とする。)とすることで、目的の周波数の電磁波を伝送することが可能となる。
また、図6(F)に示すように、導波管の断面形状が台形である場合も同様に、電磁波の電界ベクトルの方向と直交する方向でかつ中心(高さ方向の中心)を通る直線における被覆体の内面間の距離Dを、誘電体21の厚みrおよび誘電率εを考慮した寸法とすることで、目的の周波数の電磁波を伝送することが可能となる。
次に、図7は、導波管1と、誘電体(筒状体)の内周側面が導電体(被覆体)で被覆された導波管1Aを組み合わせる場合の構造を示す図である。
図7(A)および図7(B)に示すように、この例では、導波管1Aに導波管1を差し込み、長い導波管を構成する。
図7(D)に示すように、導波管1Aは、誘電体21Aの内周側面が導電体11Aで被覆された内面被覆導波管となっている。導波管1は、上述したように、誘電体21の外周側面が導電体11で被覆された外面被覆導波管となっている。
導波管1Aは、導波管1と同様に、断面形状が円形である。導波管1Aは、導波管1と同じ周波数の電磁波(例えば5.8GHzのマイクロ波)を同じ伝搬モード(例えばTE11モード)で管軸方向に伝送するように内径φ3が設定されている。導波管1Aが伝送可能な電磁波の周波数は、一般的な金属製の円形導波管と同様であり、内径φ3によって決まる。
導波管1Aの内径φ3は、導波管1を差し込むことが可能なように、導波管1の外径φ1とほぼ同じか、わずかに大きくなっている。上述したように、導波管1は、内部に誘電体21が配置されているため、電磁波から見た実質的な管径が導電体11の内径よりも大きくなっている。したがって、導波管1Aの内径φ3が導波管1の外径φ1よりも大きくなっている場合であっても、TE11モードの遮断周波数fcが大きく変化することはない。
ただし、導波管1Aの内径φ3は、導波管1の外径φ1と略等しいことが好ましい。導波管1Aの内径(被覆体11Aの内面間の距離)φ3と、導波管1の外径(被覆体11の内面間の距離)φ1と、を略等しくすることで、導電体11の外周側面と導電体11Aの内周側面が接触し、電気的に接続された状態となって、導波管としてのグランドが同電位となる。これにより、電磁波としては1つの導波管の内部を伝送される状態とほぼ等しくなる。
なお、導波管1Aは、導電体11Aが電磁波に直接暴露されることになるため、内周側面に酸化防止層が設けられていることが好ましい。
なお、誘電体21Aの厚みおよび外径φ4の長さは、どの様な値であってもよい。また、導電体11Aの厚みは、導電体11と同様に、1μmとなっているが、さらに厚くなっていてもよい。
上述したように、誘電体に導電体を被覆するためには、例えばめっきまたは蒸着を用いる。この場合、めっき槽または蒸着チャンバの大きさによっては、製造可能な導波管の長さが限られる可能性がある。特に、内周側面を導電体で被覆する場合、製造が困難となる。そこで、図7に示すように、誘電体21の外周側面が導電体11で被覆された導波管1(内面被覆導波管)と誘電体21Aの内周側面が導電体11Aで被覆された導波管1A(外面被覆導波管)とを組み合わせた導波管とすることで、長い導波管を実現することができる。
なお、本実施形態では、導波管1を備えた無線電力伝送システムの例を示したが、例えば図8に示すように、上記の導波管1と、情報通信用の無線信号を導波管1に送信する無線送信部91と、導波管1から送信される無線信号を受信する無線受信部92と、無線受信部92で受信した無線信号を信号処理する信号処理部93と、を備えた無線通信システムを実現することも可能である。なお、無線送信部91および無線受信部92は、それぞれアンテナを内蔵している。例えばパッチアンテナを用いる場合、導波管1と、無線送信部91および無線受信部92とは、図3に示した固定治具71を用いて固定される。
1,1A…導波管
11,11A…導電体
15…突起
21,21A,21B…誘電体
51…電源
52…DC−RF変換部
53…送信アンテナ
54…受信アンテナ
55…RF−DC変換部
56…受信回路
60…ポート
65…同軸線
61A,61B,61C…スロット
62A、62B,62C…スロット
75…ポート
71…固定治具
711…孔
712…誘電体

Claims (20)

  1. 筒形状の誘電体からなる筒状体と、
    前記筒状体の外周側面を被覆する導電体からなる被覆体とを含み、電磁波を伝搬させる導波管であって、
    前記電磁波の進行方向に直交する該導波管の断面において、前記電磁波の電界ベクトルの方向と直交する直交方向における
    前記被覆体の内面間の距離が、前記電磁波の周波数に対応する規定の導波管の規格寸法よりも、該直交方向における前記誘電体の厚みと前記誘電体の誘電率とで定まる量だけ小さいことを特徴とする導波管。
  2. 請求項1に記載の導波管において、
    前記被覆体の内面間の距離をD、前記規定の導波管の規格寸法をD’とした場合に、前記被覆体の内面間の距離と前記規定の導波管の規格寸法とは、
    D=D’−2r√ε
    の関係で表されることを特徴とする導波管。
  3. 請求項1または請求項2に記載の導波管において、
    前記断面の形状が円形、楕円形、方形および台形のうちいずれかである導波管。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導波管において、
    前記直交方向における前記誘電体の厚みは、当該直交方向以外の他の方向における該誘電体の厚みより小さくなっている導波管。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導波管において、
    前記誘電体は、誘電率の異なる多層化または混在化された少なくとも2つ以上の誘電体からなる導波管。
  6. 請求項5に記載の導波管において、
    前記2つ以上の誘電体の1つは、前記導波管を補強する補強用誘電体である導波管。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導波管において、
    側面の一部に、前記電磁波が取り出されるポート、または前記電磁波が取り込まれるポートが設けられている導波管。
  8. 請求項7に記載の導波管において、
    前記ポートは、切り込みであり、アンテナが挿入可能となっている導波管。
  9. 請求項7に記載の導波管において、
    前記ポートは、側面の一部に設けられたスロット部からなる導波管。
  10. 請求項9に記載の導波管において、
    前記スロット部は、前記導電体が被膜されておらず、前記誘電体が存在する箇所に設けられている導波管。
  11. 請求項9に記載の導波管において、
    前記スロット部は、前記導電体および前記誘電体が存在しない箇所に設けられている導波管。
  12. 請求項11に記載の導波管において、
    前記スロット部に電磁波シールドが設けられている導波管。
  13. 請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の導波管において、
    前記筒状体および前記被覆体が、前記導波管の内部を外部から視認可能な程度の透明性を有している導波管。
  14. 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の導波管からなる外面被覆導波管と、
    筒形状の誘電体からなる筒状体、および、該筒状体の内周側面を被覆する導電体からなる被覆体を含み、電磁波を伝搬させる導波管からなる内面被覆導波管と、
    からなり、
    前記外面被覆導波管の被覆体の内面間の距離と、前記内面被覆導波管の被覆体の内面間の距離とが略等しくなっている導波管。
  15. 請求項14に記載の導波管において、
    前記内面被覆導波管と前記外面被覆導波管は、互いの導電体が電気的に接続されている導波管。
  16. 請求項14または請求項15に記載の導波管において、
    前記内面被覆導波管は、内周側面に酸化防止層が設けられている導波管。
  17. 請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の導波管と、
    電源と、
    前記電源からの直流電力を高周波信号に変換するDC−RF変換部と、
    前記DC−RF変換部で変換された前記高周波信号を前記導波管に送信する送信アンテナと、
    前記導波管から送信される前記高周波信号を受信する受信アンテナと、
    前記受信アンテナで受信した前記高周波信号を直流電力に変換するRF−DC変換部と、
    を備えた無線電力伝送システム。
  18. 請求項17に記載の無線電力伝送システムにおいて、
    前記導波管と、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナと、を固定する固定治具を備えた無線電力伝送システム。
  19. 請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の導波管と、
    情報通信用の無線信号を前記導波管に送信する無線送信部と、
    前記導波管から送信される前記無線信号を受信する無線受信部と、
    前記無線受信部で受信した前記無線信号を信号処理する信号処理部と、
    を備えた無線通信システム。
  20. 請求項19に記載の無線通信システムにおいて、
    前記導波管と、前記無線送信部および前記無線受信部と、を固定する固定治具を備えた無線通信システム。
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