JP2016143597A - ヒューズの劣化診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化を、より精度良く診断する。
【解決手段】高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化診断装置であって、ヒューズの通電電流の電流値を所定の単位時間が経過する毎に計測する計測手段と、溶断部の温度と、溶断部における高融点金属および低融点金属の単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータを記憶した記憶手段と、各単位時間経過時の電流値から溶断部の各単位時間経過時の温度を推定し、記憶手段から読み出したデータを用いて推定温度を溶断部における各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度に換算し、各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度を積算してヒューズの使用開始からの溶断部の総合金化進行度を算出し、総合金化進行度によってヒューズの劣化を診断する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明はヒューズの劣化診断装置に関する。
自動車、家電製品及び電子機器等において、回路の保護、或いは、装置や部品の焼損防止を目的として、過電流に対して瞬時に断線するよう機能する過電流溶断型ヒューズが使用されている。このヒューズの溶断にかかる時間や溶断温度は、使用する材料およびヒューズの形状によって異なる。
特許文献1には、半導体電力変換装置に実装される保護用ヒューズの寿命推定装置であって、ヒューズに発生する電力損失を求め、電力損失を基にヒューズの温度推定を行い、推定温度のリップル回数を積算し、リップル回数が設定回数に達したときにヒューズ交換時期(寿命)と推定すること等を特徴とする保護用ヒューズの寿命推定装置が記載されている。
特開2007−043860号公報
特許文献1の寿命推定装置では、単純なリップル回数ではなく、あるリップルレベルを超えた場合のリップル回数をカウントすることが記載されている。しかしながら、リップルの回数のみが計測され、温度そのものやリップルの大きさについては考慮されていないため、ヒューズの寿命が必ずしも精度良く推定できないという問題があった。
一方、短絡時等の大きな過電流とは異なり、基材となる金属または合金の融点に達するまでには至らない電流(小過電流)が継続的または断続的に通電された場合の装置や回路等の保護を目的として、銅等の高融点金属からなる基材に、錫等の低融点金属からなる層を積層してなる複層溶断部を有するヒューズが使用されている(例えば、特開平1−315924号公報、WO2014/103916号公報等参照)。かかるヒューズでは、小過電流のジュール熱により溶断部の温度が上昇すると、高融点金属からなる基材と低融点金属との界面において合金化(固溶体、金属間化合物等を含む合金相の形成)が進行する。この合金化は、小過電流が通電されるたびに成長し、やがて当該溶断部の断面において高融点金属の層が減少し、断面をこの合金が占めるようになる。すると、この合金は高融点金属よりも融点が低く、且つ、抵抗が高いことから、小過電流のジュール熱によっても溶断に至る。これにより、例えば、小過電流によるワイヤーハーネスの発煙などが防止される。このような高融点金属の基材に低融点金属の層を積層してなる溶断部を有するヒューズについて、ヒューズの劣化をより精度良く診断する方法は確立されていない。
本発明は、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化を、より精度良く診断することを目的とする。
本発明に係る、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化診断装置は、前記ヒューズの通電電流の電流値を所定の単位時間が経過する毎に計測する計測手段と、前記溶断部の温度と、前記溶断部における前記高融点金属および前記低融点金属の前記単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータを記憶した記憶手段と、各単位時間経過時の電流値から前記溶断部の各単位時間経過時の温度を推定し、前記記憶手段から読み出した前記データを用いて各単位時間経過時の推定温度を前記溶断部における各単位時間経過時の前記単位時間あたりの合金化進行度に換算し、各単位時間経過時の前記単位時間あたりの合金化進行度を積算して前記ヒューズの使用開始からの前記溶断部の総合金化進行度を算出し、前記総合金化進行度によって前記ヒューズの劣化を診断する演算手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係るヒューズの劣化診断装置によれば、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化を、より精度良く診断することができる。
高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの一例を示す図である。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの一例を示す。ヒューズ10は、一対の端子部12を備える。端子部12にはそれぞれ穴12aが設けられている。ヒューズ10は、穴12aにおいてネジ等で外部回路(図示しない)と固定されることにより、外部回路と電気的に接続されている。基材部14は、その両端が一対の端子部12と電気的に接続されており、第1溶断部16と第2溶断部18とを備える。第1溶断部16は、短絡時等においてヒューズに大過電流が通電したときに溶断される構造を備えている。第1溶断部16は、高融点金属の基材、好ましくは高融点金属の基材のみによって構成され、基材部14において最も断面積が小さい部位を含む。なお本実施形態に係る高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズは、図1の態様に限定されるものではなく、例えば、端子部の構造がコネクタ接続方式等であるものなど、公知の態様を含む。
第2溶断部18は、高融点金属の基材に低融点金属からなる層を積層してなる構造を有する。第2溶断部18においては、高融点金属の基材表面の少なくとも一部に、低融点金属の層が、高融点金属と低融点金属とが接して互いの原子が拡散するように、積層されている。低融点金属の層は、塗布、めっき、溶着等の公知の方法で積層される。第2溶断部18では、両金属が電気的且つ物理的に接続されており、小過電流の通電時のジュール熱によって温度が上昇すると、高融点金属と低融点金属との反応拡散が引き起こされ、両金属の合金相が形成される。
本実施形態に係るヒューズにおいて使用される高融点金属および低融点金属は、ヒューズに通常使用されている金属または合金であればいずれも使用できる。なお、「高融点」および「低融点」とは相対的な表現に過ぎない。高融点金属としては、限定されないが、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、チタン、および、これらのいずれかを主成分とする合金等が挙げられ、銅が好ましい。低融点金属としては、基材に使用される高融点金属よりも融点が低く、高融点金属との合金化により融点を下げる(たとえば共晶系の状態図を形成する)金属であれば、限定されないが、中でも、高融点金属よりも電気抵抗が高い金属が好ましい。低融点金属としては、例えば、錫、鉛、亜鉛、および、錫を主成分とする合金等が挙げられ、錫または錫を主成分とする合金が好ましく、錫がより好ましい。ここで「主成分とする」とは、当該金属を合金の総量に対する含有量が50%を超えることを言う。
本実施形態に係るヒューズの劣化診断装置は、ヒューズの通電電流の電流値を所定の単位時間が経過する毎に計測する計測手段と、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部(以下単に「溶断部」と記載した場合は、「高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部(図1の例では第2溶断部18)」であることを意味する。)の温度と、溶断部における高融点金属および低融点金属の単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータを記憶した記憶手段と、各単位時間経過時の電流値から溶断部の各単位時間経過時の温度を推定し、記憶手段から読み出した前記データを用いて各単位時間経過時の推定温度を溶断部における各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度に換算し、各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度を積算してヒューズの使用開始からの溶断部の総合金化進行度を算出し、算出された総合金化進行度によって前記ヒューズの劣化を診断する演算手段とを備える。
本明細書において、溶断部における高融点金属および低融点金属による「合金化」とは、両金属間の拡散による固溶体の形成、または、両金属の反応による金属間化合物の生成等により、両金属を含む合金相が形成されることを言い、「合金化が進行する」とは、溶断部において両金属間の反応拡散により形成される合金相が成長することを言う。また、本明細書において、「合金化進行度」とは、高融点金属と低融点金属の合金相の単位断面積当たりの合金相が占める割合を言う。
本実施形態に係る劣化診断装置は、ヒューズに通電された電流の電流値を所定の単位時間が経過する毎に計測する電流計測手段(以下「電流計測手段」と言う)を備える。電流計測手段としては、公知の電流計等が挙げられる。電流計測手段は、ヒューズの使用が開始されて以降の電流値を、所定の単位時間が経過する毎に繰り返し計測する。計測された各単位時間経過時の通電電流値は、演算手段に送信され、必要に応じて記憶手段に記憶される。電流計測手段が計測を行う際の「単位時間」、「単位時間あたりの合金化進行度」における「単位時間」および、溶断部の温度推定における「単位時間」について、これらの時間間隔はいずれも限定されるものではなく、小過電流の通電からの保護という本実施形態に係るヒューズの目的、ヒューズの使用環境、および、後述する温度推定処理等を行う演算手段としてのCPUの処理能力等に基づいて適宜決定すればよい。
本実施形態に係る劣化診断装置は、記憶手段を備える。記憶手段は、ROMやRAM等の各種メモリ、およびハードディスク等で構成される。記憶手段は、情報記録媒体およびその読取装置等であってもよい。記憶手段は、溶断部の温度と、溶断部における高融点金属および低融点金属の単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータ(以下、本明細書において「換算データ」と記載する)を記憶している。
一般的に、金属間の反応拡散に基づく合金化は、温度の上昇に従ってその速度が増加する。本実施形態に係るヒューズにおける溶断部においても、溶断部の温度が上昇するに従って高融点金属および低融点金属の合金化が進行するという相関関係を有する。従って、記憶手段が記憶している換算データにおける「単位時間当たりの合金化進行度」は、温度が上昇するに従って増加するという特徴を有する。
更に、記憶手段に記憶されている換算データは、溶断部の温度と単位時間当たりの合金化進行度との相関に関する所定の閾値(以下、「温度閾値」という。)の情報を含む。一般的に、異なる金属の層からなる積層体がある一定の温度以下にある場合、その積層体において、金属間で合金化は進行しないか、または進行するまでに時間を要する。よって、溶断部の温度が予め定められた閾値以下であり、合金化が進行するまでの時間が十分長い場合は、その温度にある溶断部では合金化が進行していないとみなしても、ヒューズの劣化診断に大きな影響は生じない。換言すれば、対象とするヒューズの溶断部において、合金化が進行していないとみなすことができるような温度が、換算データに含まれる温度閾値として設定される。
記憶手段が記憶している換算データの具体例としては、両金属の反応拡散特性に基づいて、溶断部の温度からその温度に対応する単位時間当たりの合金化進行度に換算する換算式、および、溶断部の温度からその温度に対応する単位時間当たりの合金化進行度に換算する換算テーブルが挙げられる。これらの換算式および換算テーブルはいずれも、溶断部に用いられる高融点金属および低融点金属の種類、ヒューズおよび溶断部の形状に応じて設定されるものであり、ヒューズに使用する高融点金属および低融点金属の積層体や、同材料で同形状に作製されたヒューズを用いて、予備実験を行うことにより予め定められる。また、閾値となる温度は、高融点金属および低融点金属の組合せに依存するものであり、これも予備実験を行うことにより予め定められる。
記憶手段は、ヒューズの劣化診断に用いる閾値を記憶している。ヒューズの劣化診断に用いる閾値は、例えば、使用するヒューズについて予備実験を行うこと等により総合金化進行度を指標とする劣化寿命を決定し、その劣化寿命を基準とすることにより、予め定められる。記憶手段には更に、演算手段が実行する処理プログラム、各種の演算式および必要なデータ等が格納されている。これらのプログラム等は、必要に応じて演算手段により読み出されて各処理において使用される。また、演算手段が実行する各処理によって得られたデータが記憶手段に格納される。
本実施形態に係る劣化診断装置は、CPU等のハードウェアで構成される演算手段を備える。演算手段は、(1)電流計測手段によって計測された各単位時間経過時の通電電流の電流値から、溶断部の各単位時間経過時の温度を推定する処理(以下「温度推定処理」という)と、(2)記憶手段から読み出した換算データを用いて、温度推定処理によって推定された溶断部の各単位時間経過時の推定温度を、溶断部における各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度に換算し、次いで、その各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度を積算して、ヒューズの使用開始以降からの溶断部の総合金化進行度を算出する処理(以下「合金化進行度算出処理」という)と、(3)算出された総合金化進行度によってヒューズの劣化を診断する処理(以下「劣化診断処理」という)とを行うことにより、ヒューズの劣化を診断する。
以下、本実施形態に係る劣化診断装置が備える演算手段が行う、ヒューズの劣化診断における各処理について、詳細に説明する。
演算手段は、ヒューズの使用開始以降に電流計測手段が計測した各単位時間経過時の通電電流値から、溶断部の各単位時間経過時の温度を推定する温度推定処理を行う。演算手段は、記憶手段に記憶されている温度推定式を用いて温度推定処理を行う。演算手段は通常、電流計測手段の計測と同期して、所定の単位時間が経過する毎に温度推定処理を行う。演算手段は、通電電流値を記憶手段に記憶させておき、処理時に読み出してまとめて各単位時間経過時の温度推定処理を行ってもよい。演算手段は、単位時間が経過する間の溶断部の温度変化を推算して、得られた温度変化を前回推定時の推定温度に加算することにより、溶断部の温度を推定する。推定された温度は記憶手段に記憶され、次回の温度推定処理に使用されるとともに、合金化進行度算出処理において使用される。
溶断部の温度推定処理に用いる温度推定式は、下記一般式(1)によって表すことができる。
T(n)=T(n−1)+ΔTgen(n)−ΔTtrans(n)
・・・(1)
T(n)はn回目の推定により得られる溶断部の推定温度を、ΔTgen(n)はn−1回目の推定からn回目の推定までの間の溶断部の温度上昇を、ΔTtrans(n)はn−1回目の推定からn回目の推定までの間の溶断部の温度下降を、それぞれ表す。
ここで、溶断部の温度上昇ΔTgen(n)は、温度がT(n−1)であるヒューズの溶断部において、所定の時間Δtが経過する間に発熱する発熱量を、溶断部の熱容量で除した値であり、近似的に下記式(2)を用いて表される。
ΔTgen(n)=発熱量/熱容量=A1×{I(n−1)}×R(n−1)
・・・(2)
上記式(2)において、A1は定数であり、I(n−1)はn−1回目に計測された通電電流であり、R(n−1)は溶断部の抵抗値である。抵抗値R(n−1)は温度によって変化するため、n−1回目の推定温度から、下記式(3)によって算出される。
R(n−1)=A2×T(n−1)+A3 ・・・(3)
上記式(3)においてA2およびA3は定数である。上記式(2)のA1、上記式(3)のA2およびA3は、実験に基づいて検量線を作成することにより予め定められる。
溶断部の温度下降ΔTtrans(n)は、温度がT(n−1)であるヒューズの溶断部から、所定の時間Δtが経過する間に伝熱する伝熱量を、溶断部の熱容量で除した値であり、理論上、下記の式によって表すことができる。
ΔTtrans(n)=伝熱量/熱容量=熱伝導+対流放熱+熱放射
・・・(4)
熱伝導 =定数×[T(n−1)−端子温度] ・・・(4−1)
対流放熱=定数×[T(n−1)−環境温度] ・・・(4−2)
熱放射 =定数×[{T(n−1)}−{環境温度}] ・・・(4−3)
これらの温度はいずれもケルビン[K]で表される。
本発明者が行った予備的な実験の結果、溶断部の温度下降ΔTtrans(n)は、下記の式(5)に示すT(n−1)の2次関数によって算出することが適当であることが見出された。
ΔTtrans(n)=B1×{T(n−1)}+B2×T(n−1)+B3
・・・(5)
上記式(5)において、B1、B2およびB3は定数であり、実験に基づいて検量線を作成することにより、予め定められる。
演算手段は、温度推定処理として、例えば上記式(1)〜(3)および(5)を用いて、溶断部の温度を推定する。その場合、温度推定処理に用いられる上記式(1)〜(3)および(5)、並びに実験に基づいて予め定められる各定数は、温度推定式として記憶手段に記憶されている。
温度推定処理においては、推定温度が実温度を下回らないようにするため、推定温度の下限値を設定することが好ましい。ヒューズに電流が流れなくなると、ΔTgen(n)=0となるため、温度は低下し、環境温度に近づく。推定温度の下限値を例えば105℃に設定した場合、無通電時の温度が105℃に達すると、次にヒューズの通電が再開されるまで、溶断部の温度は105℃であると推定され、通電が再開されると、温度の推定は当該下限値から開始される。即ち、上記式(1)〜(3)および(5)において、T(n−1)=105℃として、T(n)が計算される。このように推定温度の下限値を設定することにより、溶断部の温度が実温度に対して高く推定され、結果として、ヒューズの劣化の程度が実際よりも低く見積もられることを防止することができる。
なお、温度推定処理における溶断部の各単位時間経過時の温度、および、合金化進行度算出処理における溶断部の各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度における「単位時間」は、通常、電流計測手段が電流計測を行う際の「単位時間」と同じであるが、場合により異なるものとすることもできる。
演算手段は、合金化進行度算出処理として、温度推定処理によって推定された溶断部の推定温度について、各単位時間経過時ごとに、換算データを用いて単位時間あたりの合金化進行度に換算する。演算手段は、第一に、各単位時間経過時ごとの推定温度と、換算データに含まれている溶断部の温度と単位時間当たりの合金化進行度との相関に関する所定の温度閾値とを、対比する。溶断部の推定温度が温度閾値を超えていた場合は、溶断部において合金化が進行しているものとして、その温度を、対応する単位時間あたりの合金化進行度に換算する処理を行う。一方、溶断部の推定温度が温度閾値以下である場合は、溶断部において合金化は進行していないものとみなし、単位時間あたりの合金化進行度に換算する処理を行わないか、対応する単位時間あたりの合金化進行度はゼロ値であるとする。
合金化進行度算出処理において用いられる換算データは、溶断部の温度から単位時間あたりの合金化進行度を換算するための換算式であってもよく、また、溶断部の温度から単位時間あたりの合金化進行度を換算するための換算テーブルであってもよい。これらの換算式または換算テーブルによって示される溶断部の温度と単位時間あたりの合金化進行度との相関関係は、ヒューズに使用する高融点金属および低融点金属の積層体を用いて、各温度における合金化進行度を時間について測定することにより、実験的に確認することができる。
高融点金属および低融点金属の積層体における合金化進行度dと、時間Δtとは、当該積層体の温度を閾値を超える温度Tで一定としたとき、下記式で表される。
d=k(T)×(Δt)1/2 ・・・(6)
式(6)における係数k(T)は、温度Tにおける高融点金属と低融点金属との反応拡散特性に基づく係数であり、合金化進行度について記載した特徴的な温度依存を合金化進行度にもたらす。係数k(T)は、溶断部に用いられる高融点金属および低融点金属の組合せに固有の係数であり、同じ金属の組合せを有する積層体を用いて、実験により予め定められる。
本発明者が検討した結果、合金化が進行する閾値を超える温度範囲において、高融点金属と低融点金属とからなる積層体における上記係数k(T)は、下記の式で近似可能であることが見出された。
k(T)=C1×T+C2 ・・・(7)
C1およびC2は定数であり、実験に基づいて検量線を作成することにより、予め定められる。
高融点金属として銅を、低融点金属として錫を用いた積層体を用いて、積層体の温度を一定にしたときの合金化進行度dを経過時間ごとに測定し、上記式(6)を用いて、係数k(T)を測定した。得られた係数k(T)と温度T[単位:ケルビン]との関係を評価したところ、下記式によって係数k(T)が近似できると評価された。
k(T)=0.063×(T[K]−423)(但し、423<T[K])
・・・(8)
上記式(8)による近似が適用される温度範囲の上限は、特に限定されるものではないが、例えば503[K]以下とすることができる。
上記式(6)〜(8)は、高融点金属と低融点金属の反応拡散特性に基づいて、溶断部の温度を、その温度に対応する単位時間当たりの合金化進行度に換算するための換算式として使用することができる。記憶手段に記憶される換算データとしての換算式は、上記式(6)〜(8)に限定されるものではなく、上記の銅および錫の積層体に代えて、使用する高融点金属および低融点金属の積層体を用いて、予備実験を行うことにより求めることができる。
演算手段は、各単位時間あたりの合金化進行度を換算した後、続いて、換算された各単位時間あたりの合金化進行度を、ヒューズの使用が開始されてからの全てについて積算することにより、ヒューズの使用が開始されてからの溶断部における高融点金属と低融点金属との間における合金化進行度(本明細書において「総合金化進行度」という。)を算出する。
本実施形態に係るヒューズは、その使用状況に応じて通電電流が変化するため、溶断部の温度も連続的に変化する。従って、溶断部における高融点金属と低融点金属との間に形成される合金相の成長度合いも、溶断部の温度に応じて連続的に変化する。本実施形態に係る劣化診断装置は、そのような連続的な温度変化を経験した溶断部の総合金化進行度を算出するため、各単位時間経過時の溶断部の温度を推定し、当該推定温度から、各単位時間経過時の、単位時間あたりの合金化進行度を換算し、得られた各単位時間経過時の合金化進行度を全て積算することによって、溶断部の総合金化進行度を算出する。
例えば、ヒューズの使用開始から単位時間がn回経過したときの計測電流値に基づく推定温度をT(n)、推定温度T(n)に対応する拡散特性を示す係数をk(T(n))とし、さらに、ヒューズの溶断部の温度と、溶断部における単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータとして上記式(6)を用いる場合、溶断部の総合金化進行度Dは、下記の式(9)により表される。
Figure 2016143597
演算手段は、合金化進行度算出処理として、単位時間が経過する毎に、総合金化進行度Dを算出してもよい。即ち、演算手段は、算出された総合金化進行度Dを記憶手段に記憶させ、温度推定処理が新たに行われるたびに、換算データを用いて新たな推定温度を新たな単位時間あたりの合金化進行度に換算して、それを記憶手段から読み出した前回の合金化進行度Dに加算することにより、最新の合金化進行度Dを算出してもよい。
合金化進行度算出処理においては、予め作成された換算テーブルを換算データとして用いて、総合金化進行度Dを算出することもできる。当該換算テーブルの具体例を下記表1に示す。表1には、所定の温度範囲と、各温度範囲に対応する合金化係数K(T)とが記載されている。合金化係数K(T)は、使用されるヒューズより予め定められた、当該温度範囲に対応する所定の単位時間あたりの合金化進行度である。単位時間あたりの合金化進行度が、理論上、上記式(6)によって表される場合、表1の合金化係数K(T)は、上記式(6)の係数k(T)の各温度範囲における代表値(例えば、安全側に立つ観点から、各温度範囲の最大温度における係数k(T))と、所定の時間間隔Δtの平方根との積である。
表1を用いた合金化進行度算出処理は、次のようにして行われる。演算手段は、温度推定処理により推定された溶断部の推定温度と、表1の換算テーブルに記載されている温度範囲とを対比し、当該推定温度を含む温度範囲について、カウント数を1つ増やす処理を行う。このカウント処理をヒューズの使用開始以降の各単位時間経過時の推定温度についてすべて行う。このカウント処理は、温度推定処理において溶断部の温度が推定されるたびに(即ち、単位時間が経過する毎に)行ってもよいし、記憶手段に各単位時間経過時の推定温度を記憶させておき、合金化進行度算出処理を行う際に、記憶手段に記憶されている当該推定温度を読み出して、まとめて行ってもよい。次いで、演算手段は、換算テーブルに記載されている各温度範囲に対応する合金化係数K(T)とカウント数との積を計算し、これを各温度範囲について合計して、総合金化進行度Dを算出する。
Figure 2016143597
このような換算テーブルを用いることにより、合金化進行度算出処理において、単位時間が経過するごとに、単位時間あたりの合金化進行度または総合金化進行度を算出する手間を省略することができる。換算テーブルを用いる合金化進行度算出処理も、換算データを用いて溶断部の各単位時間経過時の推定温度を溶断部の各単位時間経過時の単位時間あたりの合金化進行度(表1では合金化係数K(T)が対応する)に換算し、これを積算して総合金化進行度Dを算出するという点で、上記式(7)で表される換算式を用いた合金化進行度算出処理と同じ技術的思想に基づいている。
換算テーブルを用いて総合金化進行度Dを算出する場合の、各温度範囲、および、当該温度範囲に対応する単位時間あたりの合金化進行度は、使用する高融点金属および低融点金属の種類、溶断部およびヒューズの形状、ヒューズの使用環境および使用目的等に基づいて決定されるものであり、予備実験を行うことにより予め定められる。
合金化進行度算出処理によって算出された総合金化進行度は、必要に応じて記憶手段に記憶され、劣化診断処理に用いられる。
演算手段は、ヒューズの使用開始からの溶断部の総合金化進行度を指標として用いて、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化を診断する劣化診断処理を行う。具体的には、合金化進行度算出処理により算出された総合金化進行度と、予め定められた閾値とを対比することにより、ヒューズの溶断部の劣化の程度を診断する。
使用するヒューズについて予備実験を行うこと等により、総合金化進行度を指標とする劣化寿命を決定し、例えば、劣化寿命の80%を閾値と定めて、記憶手段に予め記憶させる。演算手段は、劣化診断処理として、合金化進行度算出処理によって算出された総合金化進行度と当該閾値とを比較する。その比較の結果、総合金化進行度が当該閾値を超えていた場合は、その診断結果として、ヒューズの交換時期を知らせる警告を表示させる。また、劣化診断処理としては、総合金化進行度と当該閾値との比較結果、および、記憶手段に記憶させていたヒューズの使用時間に基づいて、ヒューズの残り寿命を計算し、得られたヒューズの残り寿命を診断結果として表示する態様とすることもできる。
演算手段により診断された診断結果は、劣化診断装置が備える表示手段に表示させてもよいし、外部の表示装置(例えば、自動車等における計器表示装置)に表示させてもよい。
本実施形態に係る劣化診断装置は、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズについて、ヒューズの使用開始からの高融点金属および低融点金属の総合金化進行度を数値化することにより、得られた総合金化進行度を指標として、ヒューズの劣化を定量的に診断することができる。そのため、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化をより精度良く診断できる。
本実施形態に係る劣化診断装置によって劣化を診断する対象となるヒューズは、高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズであれば、上記の態様に限られるものではない。その場合、記憶手段に記憶され、合金化進行度算出処理において用いられる換算データ、および、劣化診断処理において用いられる閾値等は、同じ金属の組合せからなる積層体、および、同じ金属の組合せを用いた同形状のヒューズ等を使用して予備実験を行い、検量線を作成すること等により、予め定められる。
本実施形態に係る劣化診断装置は、ヒューズの通電電流を計測する電流計測手段に代えて、溶断部の温度を直接計測する温度計測手段を用いることによっても、本実施形態に係るヒューズについて、劣化の推定を精度良く行うことが可能である。その場合は、演算部が上記温度推定処理を行うことを必要としない。溶断部の温度を直接計測する温度計測手段としては、サーミスタ、白金測温抵抗体等の接触式温度計、および、放射温度計等の非接触式温度計が用いられる。
10 ヒューズ、12 端子部、12a 穴、14 基材部、16 第1溶断部、18 第2溶断部。

Claims (1)

  1. 高融点金属の基材に低融点金属を積層してなる溶断部を有するヒューズの劣化診断装置であって、
    前記ヒューズの通電電流の電流値を所定の単位時間が経過する毎に計測する計測手段と、
    前記溶断部の温度と、前記溶断部における前記高融点金属および前記低融点金属の前記単位時間あたりの合金化進行度との相関を示すデータを記憶した記憶手段と、
    各単位時間経過時の電流値から前記溶断部の各単位時間経過時の温度を推定し、前記記憶手段から読み出した前記データを用いて各単位時間経過時の推定温度を前記溶断部における各単位時間経過時の前記単位時間あたりの合金化進行度に換算し、各単位時間経過時の前記単位時間あたりの合金化進行度を積算して前記ヒューズの使用開始からの前記溶断部の総合金化進行度を算出し、前記総合金化進行度によって前記ヒューズの劣化を診断する演算手段と、
    を備えることを特徴とするヒューズの劣化診断装置。
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JP2007043860A (ja) * 2005-08-05 2007-02-15 Meidensha Corp 保護用ヒューズの寿命推定装置

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