JP2016141854A - 銀微粒子分散物、インク組成物、銀電極、及び薄膜トランジスタ - Google Patents
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Abstract
Description
上記銀微粒子分散物を基材上に塗布する方法として、各種印刷法、スピンコート法、ディスペンサーを用いた方法等が知られている。銀微粒子分散物を印刷法により塗布する場合には、銀微粒子分散物をインクとして用い、このインクを基板等に塗布する。なかでも、微細なパターンを精度良く形成することができ、工程が簡素でインクを無駄なく使用できることから、インクジェット印刷法の利用が広がっている。
また、特許文献2には、ビニルエーテル系繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位とをアーム部に有する星型ポリマーに金属ナノ粒子を担持してなる金属ナノ粒子複合体と、水性媒体とを含有する金属ナノ粒子分散液が記載されている。
また、電子部品のなかでも特に薄膜トランジスタにおいては、電極サイズの微小化に伴い、ソース電極とドレイン電極の距離も狭小しており、イオンマイグレーション(以下、単に「マイグレーション」ともいう。)による電極間の導通が生じやすくなっている。そのため、銀微粒子分散物には、導体配線等におけるマイグレーションも抑えることが求められる。
また、本発明は、この銀微粒子分散物を用いたインク組成物、この銀微粒子分散物又はインク組成物を用いた銀電極、及びこの銀電極を有する薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
〔1〕
ポリマーが吸着した銀微粒子が水性媒体中に分散した銀微粒子分散物であって、
ポリマーが、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分と、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分とを有する銀微粒子分散物。
〔2〕
ポリマーが、下記式(1A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MAと下記式(2A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MHとを有する〔1〕に記載の銀微粒子分散物。
式(2A)中、R21は水素原子又はメチル基を表す。L21は、単結合、又は、炭素数1〜12のアルキレン基、アルキレンオキシ基、カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基からなる群より選択される1種の基、若しくは2種以上の基を組み合わせてなる連結基を表す。R22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、又はカルバモイル基を表す。n2は、0〜4の整数を表す。
〔3〕
L11が、単結合である〔2〕に記載の銀微粒子分散物。
〔4〕
銀微粒子の平均粒径が、10〜200nmである〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔5〕
ポリマーの重量平均分子量が、2000〜100000である〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物を用いたインク組成物。
〔7〕
インクジェット印刷に用いる、〔6〕に記載のインク組成物。
〔8〕
銀電極の形成に用いる、〔6〕又は〔7〕に記載のインク組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物又は〔6〕〜〔8〕のいずれか1つに記載のインク組成物を用いて形成した銀電極。
〔10〕
〔9〕に記載の銀電極を有する薄膜トランジスタ。
本明細書において、特に断りがない限り、特定の符号で表示された置換基、連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
また、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。
さらに、「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、又は、化合物を特定の名称ないし化学式で示すときには、特に断りがない限り、化合物そのものに加え、その塩、錯体、イオンを含む意味に用いる。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の銀電極は、導電性が高く、しかもマイグレーションの発生も効果的に抑えられ、例えばTFTの電極として好適に用いることができる。さらに、本発明の薄膜トランジスタは本発明の銀電極を有してなり、銀電極のマイグレーションが抑えられて電極間の絶縁信頼性に優れるとともに優れたキャリア移動度を示す。
本発明の銀微粒子分散物の好ましい実施形態について説明する。
本発明の銀微粒子分散物は、銀微粒子と、上記式(1)及び(2)で表される2種の(メタ)アクリル酸エステル構成成分を少なくとも有するポリマーと、水性媒体と含有する。本発明の銀微粒子分散物中において、銀微粒子は、その少なくとも一部が上記ポリマーに覆われ、このポリマーが吸着している。これにより、銀微粒子は水性媒体中に分散している。本発明において、吸着は、物理吸着と化学吸着との両方を包含する。
本発明の銀微粒子分散物は、さらに、界面活性剤、乾燥防止剤、浸透促進剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調製剤、キレート剤、銀以外の金属粒子等の各種添加剤を含有してもよい。
本発明の銀微粒子分散物は、各成分等が均質に混じり合った組成物の形態であることが好ましいが、吸着状態等により各成分等が不均質に混じり合った形態であってもよい。
本発明に用いる銀微粒子は、適宜に調製された銀微粒子でもよく、水性媒体中で合成(還元)されたものでもよい。
本発明の銀微粒子分散物中において、銀微粒子の平均粒径(二次粒径)は、銀微粒子が水性媒体中に安定的に分散できれば、特に制限はない。例えば、平均粒径は、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmがより好ましく、20〜90nmがさらに好ましく、30〜80nmであることが特に好ましい。銀微粒子の平均粒径を上記好ましい範囲内とすることにより、分散安定性が高く、膜、配線又は電極等を形成した際に十分に低い体積抵抗率とすることができる。
また、銀微粒子分散組成物中の銀微粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。
例えば、硝酸銀(I)(AgNO3)やメタンスルホン酸銀(CH3SO3Ag)等の銀化合物と、本発明に用いるポリマーとを水中に溶解し、還元剤を添加し、撹拌しながら一定時間、銀イオンを還元することにより銀微粒子を調製できる。この方法においては、銀微粒子の調製とともに銀微粒子分散物を得ることができる。
銀微粒子分散物中の銀微粒子の濃度は、必要により、純水による希釈又は限外ろ過等による濃縮により、所定の範囲に設定できる。
本発明の銀微粒子分散物は、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分と、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分とを有するポリマーを含有する(以下、本発明に用いるポリマーということがある)。
本発明に用いるポリマーは、銀微粒子の分散剤として作用し、銀微粒子分散物に上記の優れた特性又は物性を付与することができる。
その作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。すなわち、本発明のポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの主鎖を有しており、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分が粒径を小さく維持して銀微粒子の分散性を高める。さらに、式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分が銀微粒子の酸化を防止し、又は高度に疎水化させる。さらに、本発明に用いるポリマーは、本発明の銀微粒子分散物又はインク組成物の焼結時に分解又は焼失しやすい。このような本発明のポリマーが有機的に銀微粒子に作用することにより、銀微粒子同士、及び銀微粒子同士が融着したグレイン同士を確実堅固に融着させることができると考えられる。
有機基A1は、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基であればよい。ポリアルキレンオキシ基の両端部それぞれの炭素原子又は酸素原子に結合する原子又は基は、上記式(1)中のカルボニルオキシ基の酸素原子と、この酸素原子以外のものとである。この酸素原子以外のものは、特に限定されない。例えば、水素原子、アルキル基又はアリール基が好適に挙げられる。アルキル基は後述するR22の、炭素数1〜20のアルキル基と同義であり、好ましいものも同じである。例えば、メチル、エチル、ステアリルが挙げられる。
また、有機基A2は、フェノール性水酸基を含む有機基(好ましくは1価の有機基)であり、A1とは異なる有機基であればよい。このような有機基として、例えば、ヒドロキシフェニル基を含む有機基が挙げられる。
本発明に用いるポリマーは、下記式(1A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MAと下記式(2A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MHとを有することが好ましい。このポリマーは、有機基A1及び有機基A2をいずれも好ましい基にしたものである。本発明の銀微粒子分散物が本発明に用いる好ましいポリマーを含有していると、この銀微粒子分散物における、銀微粒子の分散状態の安定性(分散安定性ということがある)が向上する。また、この銀微粒子分散物で形成した導体配線等に低い体積抵抗率を付与でき、しかもマイグレーションを効果的に抑制できる。
R12は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニルを表す。R12のアルキル基は、R22のアルキル基と同義であり、好ましいもの同じである。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、t−ブチル、ステアリルが挙げられる。R12は、メチル、エチル又はフェニルが好ましく、メチルがより好ましい。
n1は、2以上の整数を表し、好ましくは2〜100であり、より好ましくは2〜50であり、さらに好ましくは4〜25である。n1が上記範囲にあると、銀微粒子の分散安定性が良好となる。
アルキレン基は、炭素数が1〜12であり、好ましくは炭素数が1〜6、より好ましくは炭素数が1〜4、さらに好ましくは炭素数が1又は2である。アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
アルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基以外であればよく、アルキレンオキシ基中のアルキレン部分の炭素数が、好ましくは3〜20であり、より好ましくは3〜12であり、さらに好ましくは3〜8である。アルキレンオキシ基中のアルキレン部分は直鎖状でも分岐状でもよい。
L11が上記組み合わせてなる連結基である場合、組み合わされる基の数も、総炭素数も、2以上の基が連結する順番も特に限定されない。
L11は、単結合であることが、入手しやすい点で、好ましい。
R22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、又はカルバモイル基(−CONH2)を表す。
アルキル基は、炭素数が1〜20であり、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8である。アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、t−ブチルが挙げられる。
アルキルオキシ基は、炭素数が1〜6であり、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3である。アルキルオキシ基中のアルキル部分は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシが挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基は、それぞれ、特に限定されない。これらの基が有するアルキル部分は、R22がとり得る上記アルキル基と同義であり、好ましいものも同じである。
アリールカルボニルオキシ基及びアリールオキシカルボニル基は、それぞれ、特に限定されない。これらの基が有するアリール部分としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルが挙げられる。
ハロゲン原子は、好ましくは、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が挙げられる。
アミノ基は、無置換アミノ基(−NH2)の他に、モノ若しくはジ−アルキルアノミ基、モノ若しくはジ−アリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基を包含する。アミノ基は、特に限定されない。
R22は、アルキル基、アルキルオキシ基、水酸基、ハロゲン原子又はアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アルキルオキシ基又は水酸基であることがより好ましく、メチル、t−ブチル、メトキシ又は水酸基であることがさらに好ましい。
R22の結合位置は、式(2A)中のベンゼン環を構成するいずれの環構成炭素原子でもよい。好ましくはL21に結合する環構成炭素原子に対してメタ位(3位又は5位)の環構成炭素原子に結合する。
n2は、0〜4の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。n2が2〜4の整数であるとき、2〜4個のR22は同一でも異なっていてもよい。
アルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基を含むこと以外はL11のアルキレンオキシ基と同義であり、好ましいものもエチレンオキシ基を含むこと以外は同じである。
組み合わせてなる連結基は、好ましくは、アルキレン基−カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基−、アルキレン基−カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基−アルキレン基−、又はポリアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の結合数は好ましくは2〜50個)である。組み合わせてなる連結基において、アルキレン基は、炭素数が2〜4であることが好ましい。
本発明において、式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分はこれらに限定されない。また、式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分の好ましい具体例として、実施例で用いた各ポリマー及び下記に示す各ポリマーとして示したが、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分との組み合わせはこれらのポリマーが有する構成成分の組み合わせに限定されない。
本明細書において、wt%は質量%を意味する。
なかでも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートから選ばれるモノマーに由来する構成成分が好ましい。
また、上記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分の含有率は、5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、10〜80質量%であることがさらに好ましく、10〜50質量%であることが特に好ましい。
他の構成成分の含有率は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、0〜15質量%がさらに好ましく、0〜10質量%が特に好ましい。
上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分の含有率、上記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分の含有率及び他の構成成分の含有率は合計で100質量%である。
本発明に用いるポリマーは、直鎖ポリマーでも分岐ポリマーでもよいが、直鎖ポリマーであることが好ましい。
本発明に記載の分散剤の酸価は、JIS K 0070に準拠して測定し、1mmol/g=56.1mgKOH/gとして換算することで算出できる。
本発明に用いるポリマーは、上記(メタ)アクリル酸エステル構成成分を有している。これにより、上記特性を有し、小さな重量平均分子量Mwであっても、銀微粒子の分散性を高めることができる。また、分散速度の向上及び銀微粒子分散物の低粘度化もでき、印刷特性が優れたものとなる。
測定条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー社製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
本発明の銀微粒子分散物に用いる水性媒体(以下、水性媒体(a)ということもある)は、水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合液である。
水性媒体に含有されうる上記水溶性有機溶媒は、20℃において水に対する溶解度が5質量%以上であるものが好ましい。この水溶性有機溶媒として、例えば、アルコール化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、スルホン化合物が挙げられる。水溶性有機溶媒は1種又は2種以上を用いることができる。
また、ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリルが挙げられる。
スルホン化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランが挙げられる。
また、銀微粒子分散物に含まれる水性媒体中、水の含有率は30質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましく、80〜100質量%が特に好ましい。
本発明の銀微粒子分散物の粘度は、銀微粒子の含有率にもよるが、通常は、1〜100mPa・sであることが好ましく、5〜50mPa・sであることがより好ましい。銀微粒子分散物の粘度は、TV−22型粘度計(東機産業社製)を用い、25℃で測定したものである。
本発明のインク組成物は、本発明の銀微粒子分散物そのものでもよい。また、本発明の銀微粒子分散物を原料として用いて調製されるものであってもよい。より詳細には、少なくとも本発明の銀微粒子分散物と、水性媒体(以下、水性媒体(b)という。)とを混合することにより、本発明のインク組成物を調製してもよい。また、場合によっては本発明の銀微粒子分散物を濃縮して本発明のインク組成物とすることもできる。水性媒体(b)は水性媒体(a)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
本発明のインク組成物には、必要に応じて、界面活性剤、乾燥防止剤(膨潤剤)、着色防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調製剤等の添加剤を混合してもよい。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、本発明のインク組成物を得ることができる。上記添加剤のうち本発明の銀微粒子分散物にも含有してもよいものは、本発明の銀微粒子分散物の調製時、又は本発明のインク組成物の調製時の少なくとも一方で混合される。
また、本発明のインク組成物中に分散している銀微粒子の粒径は、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。インク組成物中の銀微粒子の粒径は、上述した、銀微粒子分散物中の銀微粒子の平均粒径の測定方法と同じ方法で測定される値とする。
上記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
上記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
表面張力は、自動表面張力計:CBVP−Z又はDY−300(いずれも、商品名、協和界面科学社製)を用い、25℃の条件下で測定される。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに上記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
本発明の銀電極は、銀配線、銀膜等であってもよい。
本発明の銀電極は、本発明の銀微粒子分散物又はインク組成物を用いて形成される。
より詳細には、上述した微粒子分散組成物又はインク組成物を基板上に塗布して、加熱処理を施す(焼結する)ことにより銀電極を形成することができる。上記加熱処理を施すことにより、銀微粒子同士が互いに融着してグレインを形成し、さらにグレイン同士が接着又は融着して銀層を形成すると考えられる。このとき、本発明のポリマーは上記のように分解(解重合)又は焼失される。また、本発明のポリマーの(メタ)アクリル酸エステル構成成分それぞれがいずれも銀微粒子に作用する。これにより、導電性が高く、しかもマイグレーションの発生も効果的に抑制された銀電極が形成されると考えられる。
本発明の銀電極が有する導電性は、体積抵抗率で、好ましくは2×10−6〜2×10−4Ωcmであり、特に好ましくは2×10−6〜5×10−5Ωcmである。
本発明のTFTは、本発明の銀電極を有する。本発明のTFTにおいて、本発明の銀電極は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の少なくとも1つとして用いられている。
本発明の薄膜トランジスタ(以下、単に「本発明のTFT」という。)の好ましい形態を以下に説明するが、本発明のTFTはこれらの形態に限定されるものではなく、ソース電極及びドレイン電極の少なくともいずれか一方が、本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていれば特に制限はない。
図1(A)〜(D)は、各々、本発明のTFTの代表的な好ましい形態を模式的に表わす縦断面図である。図1(A)〜(D)において、1は半導体層、2はゲート絶縁層、3はソース電極、4はドレイン電極、5はゲート電極、6は基板を示す。
また、図1(A)は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、図1(B)は、ボトムゲート−トップコンタクト型、図1(C)はトップゲート−ボトムコンタクト型、図1(D)はトップゲート−トップコンタクト型のTFTを示している。本発明のTFTには上記4つの形態のすべてが包含される。図示を省略するが、各TFTの図面最上部(基板6に対して反対側)には、オーバーコート層が形成されている場合もある。
基板は、TFT及びその上に作製される表示パネル等を支持できるものであればよい。基板は、表面に絶縁性があり、シート状で、表面が平坦であれば特に限定されない。
基板がステンレスシート、アルミ箔、銅箔又はシリコンウェハ等の導電性あるいは半導体性の材料で形成されている場合、通常は、表面に絶縁性の高分子材料あるいは金属酸化物等を塗布又は積層して用いられる。
ゲート電極は、TFTのゲート電極として用いられている従来公知の電極を用いることができる。また本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成することもできる。
ゲート電極を構成する導電性材料(電極材料ともいう)としては、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、モリブデン、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、パラジウム、鉄、マンガン等の金属;InO2、SnO2、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子;塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを添加した上記導電性高分子、並びに、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等を分散した導電性の複合材料等が挙げられる。これらの材料は、1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ゲート電極を塗布法により形成することもできる。塗布法では、上記材料の溶液、ペースト又は分散液を調製、塗布し、乾燥、焼結、光硬化又はエージング等により、膜を形成し、又は直接電極を形成できる。
また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、(反転)オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、熱転写印刷、マイクロコンタクトプリンティング法等は、所望のパターニングが可能であり、工程の簡素化、コスト低減、高速化の点で好ましい。
スピンコート法、ダイコート法、マイクログラビアコート法、ディップコート法を採用する場合も、下記フォトリソグラフィー法等と組み合わせてパターニングすることができる。
ゲート絶縁層は、絶縁性を有する層であれば特に限定されず、単層であってもよいし、多層であってもよい。
ゲート絶縁層は、絶縁性の材料で形成されるのが好ましく、絶縁性の材料として、例えば、有機高分子、無機酸化物等が好ましく挙げられる。
有機高分子及び無機酸化物等は、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、薄膜、例えば厚み1μm以下の薄膜を形成できるものが好ましい。
有機高分子及び無機酸化物は、ぞれぞれ、1種を用いても、2種以上を併用してもよく、また、有機高分子と無機酸化物を併用してもよい。
半導体層は、半導体性を示し、キャリアを蓄積可能な層である。半導体層には従来公知の有機又は無機の半導体化合物を広く用いることができる。
本発明において、低分子化合物は、有機ポリマー及びその誘導体以外の化合物を意味する。すなわち、繰り返し単位を有さない化合物をいう。低分子化合物は、このような化合物である限り、分子量は特に限定されるものではない。
酸化物半導体としては、金属酸化物からなるものであれば特に限定されない。酸化物半導体からなる半導体層は、酸化物半導体前駆体、すなわち熱酸化等の変換処理によって金属酸化物からなる半導体材料に変換される材料を用いて形成するのが好ましい。
酸化物半導体は特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化インジウムガリウム、酸化インジウムスズ亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、例えば、InGaZnOx、InGaOx、InSnZnOx、GaZnOx、InSnOx、InZnOx、SnZnOx(いずれもx>0)、ZnO、SnO2が挙げられる。
酸化物半導体前駆体の具体例としては、例えば、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムが挙げられる。
本発明のTFTにおいて、ソース電極及びドレイン電極は、本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていることが好ましい。ソース電極及びドレイン電極が本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていない場合は、従来公知のソース電極、ドレイン電極を採用することできる。例えば、上記ゲート電極で説明した導電性材料等を用いることができる。
ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ、上記ゲート電極の形成方法と同様の方法により形成することができる。
以下に示すポリマーA−1〜A−31を以下のようにして合成した。
各ポリマーの構成成分とともに、構成成分の含有率a及びb並びに重量平均分子量Mwを併せて、示す。
<(メタ)アクリル酸エステルMH−1の合成>
反応容器に、3−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(3.25g、14.4mmol)、ジクロロメタン(20mL)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(1.67g、14.4mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.75g、14.4mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(0.10g、0.72mmol)を、この順で、入れた。
得られた反応溶液を室温(25℃)で3時間攪拌した後、反応溶液に1N塩酸(50mL)を加え、酢酸エチル100mLで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固形分をろ別した後、ろ液を減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製し、(メタ)アクリル酸エステルMH−1を3.2g得た(収率68%)。
MH−1の合成において、3−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルに代えて表1に記載された化合物1及び化合物2を、表1に記載の使用量で用いた以外はMH−1の合成と同様にして、(メタ)アクリル酸エステルMH−2〜MH−17をそれぞれ合成した。
各例において、(メタ)アクリル酸エステルMAとして、ブレンマーAME−1000、PME−1000、AME−4000、PME−4000、PSE−1300、AE−400、PE−400又は10PPB−500B(いずれも商品名、日油社製)を使用した。
なお、表2において、ブレンマーAME−1000、PME−1000、AME−4000、PME−4000、PSE−1300、AE−400、PE−400又は10PPB−500Bを、単に、AME−1000、PME−1000、AME−4000、PME−4000、PSE−1300、AE−400、PE−400又は10PPB−500Bと表記する。
100mLの三口フラスコに、ブレンマーAME−1000(9.0g)、アクリル酸エステルMH−1(1.0g)及びトルエン20.0gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱した。得られた反応液に、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.49g及びトルエン1.0g(アゾビスイソブチロニトリル0.49gとトルエン1.0gの溶液)を加え、80℃で16時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トルエン18.0gで希釈した。反応物をヘキサンで再沈した後、分取クロマトグラフィーで分子量分画分取を行い、ポリマーA−1を9.2g得た。
ポリマーA−1の重量平均分子量Mwは、ポリマーA−1のTHF溶液を用いて、上記方法及び条件により、測定した。
上記ポリマーA−1の合成において、ブレンマーAME−1000及びアクリル酸エステルMH−1に代えて表2に記載の(メタ)アクリル酸エステルMAと(メタ)アクリル酸エステルMHを用いて、(メタ)アクリル酸エステルMAと(メタ)アクリル酸エステルMHの使用量を適宜変更した以外はポリマーA−1の合成と同様にして、ポリマーA−2〜A−12、A−15、A−16、A−20〜A−29をそれぞれ合成した。
また、上記ポリマーA−1の合成において、ブレンマーAME−1000及びアクリル酸エステルMH−1に代えて、表2に記載の(メタ)アクリル酸エステルMA、(メタ)アクリル酸エステルMH及び(メタ)アクリル酸エステルM3(和光純薬社製)を、質量比80:10:10の割合で、用いた以外はポリマーA−1の合成と同様にして、ポリマーA−13及びA−14をそれぞれ合成した。
さらに、上記ポリマーA−1の合成において、ブレンマーAME−1000及びアクリル酸エステルMH−1に代えて表2に記載された(メタ)アクリル酸エステルMA及び(メタ)アクリル酸エステルMHを用いて、アゾビスイソブチロニトリルの使用量を適宜変更した以外は、ポリマーA−1の合成と同様にして、ポリマーA−17〜A−19をそれぞれ合成した。
また、上記ポリマーA−1の合成において、ブレンマーAME−1000及びアクリル酸エステルMH−1に代えて、表2に記載の(メタ)アクリル酸エステルMA、(メタ)アクリル酸エステルMH及び(メタ)アクリル酸エステルM3を、質量比60:10:30の割合で、用いた以外はポリマーA−1の合成と同様にして、ポリマーA−30及びA−31をそれぞれ合成した。
ポリマーB−1及びB−4については、構成成分とともに、構成成分の含有率及び重量平均分子量Mwを併せて、示す。各ポリマーの重量平均分子量Mwは、ポリマーA−1と同様にして、測定した。
下記構成成分を有するポリマーB−1を、上記ポリマーA−1の合成において、(メタ)アクリル酸エステルMH−1をメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(和光純薬社製)に変更した以外はポリマーA−1と同様にして、合成した。
重合酸化物B−2を、特許文献1(特許第4932662号公報)の実施例1に基づいて、合成した。具体的には、イオン交換水4352mLにピロガロール135mmolを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.3に調整し、大気中で40分間攪拌して、ピロガロールの酸化重合物(B−2)の溶液を得た。
ポリマーB−3として、重量平均分子量3000のポリビニルフェノール(PVP3000)を使用した。
下記構造を分岐鎖に有する星型ポリマーB−4を、特許文献2(国際公開第2012/102286号)の合成例1に準じて、合成した。
[銀微粒子分散物の調製]
以下のようにして銀微粒子分散物A−1〜A−31をそれぞれ調製した。
すなわち、分散剤としてポリマーA−1(7.36g)を水(100mL)に溶解させた溶液aを調製した。また、硝酸銀50.00g(294.3mmol)を水(200mL)に溶解させた溶液bを調製した。調製した溶液aと溶液bとを全量混合し、攪拌した。得られた混合液に、85質量%N,N−ジエチルヒドロキシルアミン水溶液(78.71g、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンとして750.5mmol)と、ポリマーA−1(7.36g)を水(100mL)に溶解させた溶液とをそれぞれ室温で8.6mL/minの速度で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌した。こうして硝酸銀(銀イオン)を還元した。得られた懸濁液を、限外ろ過ユニット(ザルトリウス ステディム社製ビバフロー50(商品名)、分画分子量:15万、ユニット数:4個)に通し、さらに限外ろ過ユニットから約10Lの滲出液が出るまで精製水を通過させて、精製した。精製水の供給を止め、濃縮し、30gの銀微粒子分散物A−1を得た。
この銀微粒子分散物A−1中の固形分濃度は50質量%であった。また、固形分中の銀微粒子の含有率を、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)により、測定器TGA−1(商品名、メトラー社製)を用いて、測定したところ、95.0質量%であった。これより含有率の比(銀微粒子の含有率:ポリマーA−1の含有率)は100:5.26であった。
ピロガロールの酸化重合物(B−2)の溶液の使用量は固形分換算値とした。
このようにして調製した銀微粒子分散物A−1〜銀微粒子分散物A−31は、いずれも、粘度が8mPa・sであり、pHが7であった。
試験1:銀微粒子の平均粒径の測定
上記銀微粒子分散物を各々イオン交換水にて、銀微粒子濃度が5質量%となるように希釈し、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(商品名、大塚電子社製)を用いて、上記測定条件にて測定を行い、キュムラント平均粒径を求めた。その結果を表3に示す。平均粒径が100nm以下であると、銀微粒子の分散性が優れる。
導電性の指標として、上記銀微粒子分散物で成膜した銀膜の体積抵抗率を測定した。その結果を表3に示す。
清浄な50mm角のガラス基板(商品名イーグルXG、コーニング社製)に銀微粒子分散物を各々スピンコート法(500rpm、30秒)にて塗布し、オーブンにて200℃、2時間加熱して、銀膜を製膜した。
得られた銀膜について、触針式膜厚計:商品名、DekatakXT、ブルカー社製)により求めた平均膜厚は320nmであった。
また、ロレスタGP MCP−T610型(商品名、三菱マテリアル社製)にて体積抵抗率を測定した。体積抵抗率は、5×10−5Ωcm以下であることが好ましく、2×10−4Ωcm以下であれば、TFT用銀電極として使用可能なレベルである。2×10−4Ωcmを超える場合は不合格である。
インク組成物A−1の調製
1gの銀微粒子分散組成物A−1に、2−プロパノール0.2g、界面活性剤としてオルフィンE1004(商品名、日信化学工業社製)0.01gを添加し、銀濃度が30質量%となるようにイオン交換水を添加して、インクジェット印刷用のインク組成物A−1を調製した。
得られたインク組成物A−1の表面張力を、25℃で、自動表面張力計(商品名DY−300、協和界面化学社製)を用いて測定したところ、30mN/mであった。
インク組成物A−1の調製において、銀微粒子分散物A−1に代えて銀微粒子分散物A−2〜A−31及びB−1〜B−4それぞれを用いた以外はインク組成物A−1の調製と同様にして、インクジェット印刷用のインク組成物A−2〜A−31及びB−1〜B−4をそれぞれ調製した。
各インク組成物の表面張力を、界面活性剤オルフィンE1004の使用量を0.01g〜0.03gの範囲内で変更することにより、30mN/mに調整した。
インクジェットプリンタ(DMP−3000、富士フイルム社製)のカートリッジに各インク組成物をそれぞれ充填し、25℃、50RH%で、ガラス基板(商品名:イーグルXG、コーニング社製)上へ、打滴間隔が30μm、インク打滴量10pLとなるようにして、ライン幅50μm、ライン間隔200μmのライン画像を10分間描画した。印刷物の状態を観察して、ラインの抜けから連続吐出安定性を下記評価基準で評価した。また、ラインの曲がりの発生を下記評価基準で評価した。
− 連続吐出安定性の評価基準 −
A:抜けがほとんどなく、本試験において問題ないレベルであった。
B:抜けがみられ、本試験において限界レベルであった。
C:抜けが多く、本試験において問題になるレベルであった。
− 打滴位置の評価基準 −
A:曲がりがなかった
B:曲がりがみられ、本試験において限界レベルであった。
C:曲がりが多く、本試験において問題になるレベルであった。
インク組成物のマイグレーション発生を抑制する特性を、インク組成物で作製した銀配線の絶縁信頼性により、評価した。
FR−4グレードのガラスエポキシ基板NIKAPLEX(商品名、ニッカン工業社製)に層間絶縁材料ABF−GX13(味の素ファインテクノ社製)をラミネートした基板を作製した。この基板上に、調製したインク組成物B−1を焼結後の膜厚が200nmになるようにスプレーコーターSTS−200(商品名、ワイディーメカトロソリューションズ社製)を用いてスプレーコーティング法により塗布した。その後、塗布したインク組成物B−1を、オーブンを用いて焼結し(210℃、1時間)、基板上に銀膜を形成した。形成された銀膜をフォトリソグラフィー法によりラインアンドスペース(L/S)=50/50μmの櫛形にエッチングし、櫛形状の銀配線を形成した。このとき、ドライフィルムレジストにはフォテックH−7025(商品名、日立化成社製)、銀エッチング液にはアグリップ940(商品名、メルテックス社製)を用いた。さらに、得られた銀配線上にCytop(登録商標) CTL107MK(商品名、旭硝子社製、アモルファスフッ素樹脂)を乾燥後の膜厚が1μmになるようにスピンコートした。その後オーブンで140℃、20分間乾燥させ、封止層を形成して、絶縁信頼性評価基準用の配線基板を作製した。
結果を下記表3に示す。本発明の試験において、絶縁信頼性の評価は、A〜Cであることが好ましく、A又はBであることがより好ましく、Aであることがさらに好ましい。
A:各短絡発生時間TがTA1の5倍以上
B:時間TがTA1の2倍以上5倍未満
C:時間TがTA1より長くTA1の2倍未満
D:時間TがTA1より短い
本発明のポリマーA−1〜A−31を用いた銀微粒子分散物は、いずれも、平均粒径が小さく、銀微粒子の分散性に優れていることがわかる。また、体積抵抗率も小さく、導電性に優れた銀膜(導体配線)を形成することができた。さらに、上記銀微粒子分散物で形成した銀配線は、いずれも、短絡発生時間が長く絶縁信頼性も高かったことから、これらの銀微粒子分散物を用いるとマイグレーションの発生も効果的に抑えた導体配線等を形成できる。しかも、上記銀微粒子分散物を用いて調製したインク組成物は、いずれも、インク特性として、連続吐出安定性及び打滴位置のずれ試験の結果も優れており、印刷適性が高いものであった。
これに対して、比較のためのポリマーB−1〜B−4を用いた銀微粒子分散物は、体積抵抗率、絶縁信頼性及び印刷適性の少なくともいずれか1つが十分ではなかった。
上記で調製したインク組成物で作製した電極を備えた、図1(A)に示されるTFT(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)を製造した。このTFTの電界効果移動度を測定することにより、インク組成物のマイグレーション発生防止効果を確認した。
ガラス基板(イーグルXG、コーニング社製)6上に、ゲート電極5となるアルミニウムを蒸着した(厚み:50nm)。その上にゲート絶縁膜形成用組成物(ポリビニルフェノール/メラミン=1質量部/1質量部のPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液(固形分濃度:2質量%))をスピンコートし、その後、150℃で60分間ベークを行い、膜厚400nmのゲート絶縁層2を形成した。その上に、インク組成物A−1をインクジェット装置DMP−2831(富士フイルムダイマティクス社製)を用いて、ソース電極3及びドレイン電極のパターンに、印刷した。塗布したインク組成物A−1を、オーブンにて180℃、30分ベークを行い、焼結して、ソース電極3及びドレイン電極4(チャネル長40μm、チャネル幅200μm)を形成した。ソース電極3及びドレイン電極4が形成された絶縁層2上に、2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(ALDRICH社製)のトルエン溶液をスピンコートし、140℃で15分間ベークを行い、厚み100nmの半導体層1を形成した。その上にCytop(登録商標) CTL−107MK(旭硝子社製)をスピンコートし、140℃で20分間ベークを行い、厚み2μmの封止層(最上層、図1において図示しない。)を形成した。このようにして、図1(A)に示されるTFT(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)を5サンプル製造した。
すなわち、TFTの電極それぞれと、半導体パラメータアナライザ(4155C、Agilent Technologies社製)に接続されたマニュアルプローバの各端子とを接続して、電界効果トランジスタ(FET)の評価を行った。具体的には、ドレイン電流−ゲート電圧(Id−Vg)特性を測定することにより電界効果移動度([cm2/V・sec])を算出した。同様にして、同一のインク組成物を用いて製造した5サンプルすべてのTFTについて、電界効果移動度を算出した。
その結果、すべてのTFTにおいて電界効果移動度が0.1〜1.0の範囲内となり、TFTとして十分機能することがわかった。
2 ゲート絶縁層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 基板
Claims (10)
- 前記ポリマーが、下記式(1A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MAと下記式(2A)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成成分MHとを有する請求項1に記載の銀微粒子分散物。
式(2A)中、R21は水素原子又はメチル基を表す。L21は、単結合、又は、炭素数1〜12のアルキレン基、アルキレンオキシ基、カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基からなる群より選択される1種の基、若しくは2種以上の基を組み合わせてなる連結基を表す。R22は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、又はカルバモイル基を表す。n2は、0〜4の整数を表す。 - 前記L11が、単結合である請求項2に記載の銀微粒子分散物。
- 前記銀微粒子の平均粒径が、10〜200nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物。
- 前記ポリマーの重量平均分子量が、2000〜100000である請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物を用いたインク組成物。
- インクジェット印刷に用いる、請求項6に記載のインク組成物。
- 銀電極の形成に用いる、請求項6又は7に記載のインク組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物又は請求項6〜8のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成した銀電極。
- 請求項9に記載の銀電極を有する薄膜トランジスタ。
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