JP2016133439A - 比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法 - Google Patents

比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】時間ステップの設定時間を短くする場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の経時的な変化を精度良く解析できる比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法を提供する。【解決手段】比抵抗の修正は、偏微分係数からなるヤコビアン行列を用いて求解した比抵抗の修正値を用いて行われるようになっており、各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値となっている(ステップS11,S12)。ヤコビアン行列は、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの数に応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築されるようになっている(ステップS10)。【選択図】図1

Description

本発明は、対象となる地盤領域の比抵抗分布を解析する比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法に関する。
比抵抗トモグラフィは、地下の地盤の状況を調べるためのトモグラフィとして公知のものであり、地下に電場を生じさせて、比抵抗の分布を調べることによって、例えば地下水の状況をモニタリングしたり、薬液注入等による地盤改良の状況を把握したり、地震時に液状化した地盤の状態を把握したりすることができるようになっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の解析方法では、例えば図2に示すように、対象となる地盤領域20の周囲に配置した複数の電流電極10のうち、適宜選択された1又は2以上の電流電極10から、各々電流を流して電場を生じさせると共に、複数の電位電極11から適宜選択された1又は2以上の電位電極11を計測点として、電位を計測して、各々の計測点における電位の実測値に基づいて、対象となる地盤領域20の比抵抗分布を解析するようになっている。このような各々の計測点における電位の計測を、所定の時間間隔(時間ステップ)毎に複数回繰り返し行うことによって、対象となる地盤領域20の経時的な比抵抗分布の変化の状況を把握することが可能になる。
従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の解析方法では、対象となる地盤領域の比抵抗分布を求める方法として、図3に示すように、例えば有限要素解析プログラム等の解析プログラムが組み込まれたコンピュータを用いて、最初のステップとして、対象となる地盤領域をセルと呼ばれる部分領域に分割し、各々のセルに比抵抗の初期値を設定して初期モデルを作成する(ステップS1’)。また、設定した比抵抗の初期値から、電位を計測した1又は2以上の電位電極11(図2参照)のコンピュータ上の位置を計測点として、当該計測点で観測されるはずの電位を、当該計測点での計算値として計算する(ステップS2’)。一方、対象となる地盤領域で実際に計測された、各々の電位電極11を計測点とする複数の実測値が、入力データとして解析プログラムに取り込まれる(S3’)。
しかる後に、解析プログラムによって計算された各々の計測点における電位の計算値を、各計測点で実際に計測された電位の実測値と比較すると共に、各々の計測点における残差を計算して(ステップS4’)、計算された残差が許容値よりも小さくなっているか否かを判定する(ステップS5’)。計算された各々の計測点での残差が許容値よりも小さくなっていないと判定された場合には、ステップS6’〜S8’によって、各々のセルに設定された比抵抗の修正を行ない、修正された各々のセルの比抵抗の修正値を、ステップS2’において初期モデルの比抵抗の初期値と置き替えることで修正モデルを作成し、作成した修正モデルに基づいて、各々の計測点で観測されるはずの電位の計算値を計算し直す。以後、ステップS4’〜S8’、及びS2’のステップを繰り返し行って、ステップS5’において、実測値と計算値との残差が許容値よりも小さくなっていると判定されたら、比抵抗の値が収束したとして、この時の比抵抗の修正値を、各々のセルの最終の比抵抗の値として決定して(ステップS9’)、その時の修正モデルを最終モデルとする。また、ステップS6’〜S8’による比抵抗の修正は、ヤコビアン行列を用いて、例えばハウスホルダー法により連立方程式を解くことで修正量を計算することによって、なされるようになっている。
特許第3041426号公報 特許第3127088号公報
一方、従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の解析方法では、対象となる地盤領域で、適宜選択された1又は2以上の電流電極10毎に電流を流した際に、適宜選択された1又は2以上の各々の電位電極11において、電位の実測値を安定した状態で得るためには、電流電極10や電位電極11の切り替え時間等を含めると、各々の計測に、例えば15〜20秒程度の、相当の時間を要することになる。したがって、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の経時的な変化を把握するために、例えば10〜15分程度所定の時間間隔毎に複数回繰り返して計測を行う時間ステップの設定時間を、短く設定し過ぎると、各々の時間ステップ内に各電位電極11によって実測される電位の実測値のデータ数が不足して、解析精度が低下することになる。また、時間ステップの設定時間を、長く設定しすぎると、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速い場合には、同じ時間ステップ内において、地盤内の実際の比抵抗分布が最初と最後で大きく変動することになるため、異なる比抵抗分布から得られた実測値のデータが混在することになって、正しい解析結果を得ることができなくなる恐れがある。
本発明は、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速いため、電位の計測を複数回繰り返して行う時間ステップの設定時間を短くする必要がある場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の経時的な変化を精度良く解析することのできる比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法を提供することを目的とする。
本発明は、対象となる地盤領域の周囲に複数の電極を配置し、電流電極から電流を流すことで電場を生じさせて、電位電極を計測点として所定の時間ステップ毎に電位の実測値を計測し、計測された電位の実測値と前記計測点での電位の計算値とを比較することによって、比抵抗トモグラフィにより対象となる地盤領域の比抵抗分布を解析する比抵抗分布の解析方法であって、前記比抵抗トモグラフィは、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域であるセルの各々について、比抵抗の初期値を設定した後に、設定された比抵抗から計算される各々の前記計測点における電位の計算値が、前記実測値に近づくように、各々のセルの比抵抗を繰り返し修正して設定し直して行くことによって、比抵抗分布を解析するようになっており、前記比抵抗の修正は、偏微分係数からなるヤコビアン行列を用いて求解した比抵抗の修正量を用いて行われるようになっており、各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値となっており、前記ヤコビアン行列は、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの数に応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築される比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
そして、本発明の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法は、前記各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップでは、算出された比抵抗の修正量をそのまま加算して比抵抗の修正値として算定し、その後の時間ステップでは、各々の時間ステップまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から差分修正値を算出し、算出した各々の時間ステップまでの差分修正値を最初の時間ステップでの比抵抗の修正値に加えることで、その後の各々の時間ステップにおける比抵抗の修正値を算定するようになっていることが好ましい。
また、本発明の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法は、前記セルが、有限要素解析プログラムによるメッシュデータによって、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域として形成されるようになっており、設定された比抵抗の初期値又は修正された比抵抗の修正値から計算される、各々の前記計測点における電位の計算値は、有限要素解析プログラムにより算定されるようになっていることが好ましい。
さらに、本発明の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法は、前記ヤコビアン行列を用いて求解される、最初の時間ステップで設定された比抵抗の修正量、及び隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量は、前記ヤコビアン行列による連立方程式を、特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法により解くことによって得られるようになっていることが好ましい。
本発明の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法によれば、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速いため、電位の計測を複数回繰り返して行う時間ステップの設定時間を短くする必要がある場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の経時的な変化を精度良く解析することができる。
本発明の好ましい一実施形態に係る比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法を説明するフローチャートである。 本発明の好ましい一実施形態に係る比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法において用いる、計測点における電位の実測値を得るための計測システムの構成図である。 従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法を説明するフローチャートである。 シミュレーション試験による解析結果を示す図である。
本発明の好ましい一実施形態に係る比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法は、コンピュータに組み込まれた公知の解析プログラムとして、好ましくは有限要素解析プログラム(FEMプログラム)を用いて、比抵抗トモグラフィによって対象となる地盤領域の比抵抗分布を解析するものであり、例えば薬液注入等による地盤改良の状況を把握したり、豪雨時における急傾斜地での地下水位をモニタリングしたりする際などに、有効に活用することができる。本実施形態の比抵抗分布の解析方法は、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速いため、従来の比抵抗トモグラフィによるモニタリングでは電位の計測が追いつかないような場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の時間的変化を精度良く解析することができるようにする機能を備えている。
そして、本実施形態の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法は、図2に示すように、対象となる地盤領域の周囲に複数の電流電極10及び電位電極11を配置し、適宜選択された1又は2以上の電流電極10から各々電流を流すことで電場を生じさせて、適宜選択された1又は2以上の電位電極11を計測点として、所定の時間ステップ毎に電位の実測値を各々計測し、計測された電位の実測値と、計測点11での電位の計算値とを比較することによって、比抵抗トモグラフィにより対象となる地盤領域の比抵抗分布を解析する比抵抗分布の解析方法である。本実施形態の解析方法では、図1に示すように、比抵抗トモグラフィは、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域であるセルの各々について、比抵抗の初期値を設定した後に(ステップS5参照)、設定された比抵抗から計算される各々の計測点11における電位の計算値が、コンピュータに読み込まれた実測値に近づくように、各々のセルの比抵抗を繰り返し修正して設定し直して行くことによって、比抵抗分布を解析するようになっている(ステップS6〜S12参照)。比抵抗の修正は、偏微分係数からなるヤコビアン行列を用いて求解した比抵抗の修正量を用いて行われるようになっている。各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値となっている(ステップS11参照)。ヤコビアン行列は、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの数に応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築されるようになっている(ステップS10参照)。
また、本実施形態では、各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップでは、算出された比抵抗の修正量をそのまま加算して比抵抗の修正値として算定し、その後の時間ステップでは、各々の時間ステップまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の変化量から差分修正値を算出し、算出した各々の時間ステップまでの差分修正値を最初の時間ステップでの比抵抗の修正値に加えることで、その後の各々の時間ステップにおける比抵抗の修正値を算定するようになっている(ステップS9〜S12参照)。
さらに、本実施形態では、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域であるセルは、有限要素解析プログラムによるメッシュデータによって、対象となる地盤領域を分割することにより形成されるようになっており(ステップS1〜S3参照)、設定された比抵抗の初期値又は修正された比抵抗の修正値から計算される、各々の計測点における電位の計算値は、有限要素解析プログラムによって算定されるようになっている(ステップS6参照)。
さらにまた、本実施形態では、ヤコビアン行列を用いて求解される、最初の時間ステップで設定された比抵抗の修正量、及び隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量は、ヤコビアン行列による連立方程式を、特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法により解くことによって得られるようになっている(ステップS11参照)。
本実施形態の地盤の比抵抗分布の解析方法は、例えば従来より公知の有限要素解析プログラムが組み込まれたコンピュータ(パーソナルコンピュータ)を用いて、好ましくは図1に示すフローチャートに従って実施することができる。すなわち、本実施形態では、まず、対象となる地盤領域のボーリングデータ等によるデータが、有限要素解析のメッシュを作成するためのメッシュデータ(FEMメッシュデータ)としてコンピュータに読み込まれ(ステップS1)、比抵抗トモグラフィによる従来の解析方法と同様に、有限要素解析に用いるメッシュ(FEMメッシュ)が作成されると共に(ステップS2)、対象となる地盤領域が複数のセル(部分領域)に分割される(ステップS3)。
また、コンピュータには、図2に示す電位計測システムを用いて計測された、対象となる地盤領域20の周囲に配置された複数の電位電極11のうちの、適宜選択された1又は2以上の電位電極11における電位の実測値が、計測点での観測電位として、時間ステップ毎に各々読み込まれる(ステップS4)。ここで、対象となる地盤領域20において、各々の計測点11の電位を計測する電位計測システムとしては、従来より公知の電位計測用のシステムと同様のものを用いることができる。すなわち、電位計測システムは、例えば多芯ケーブル12に電流電極10を所定の間隔をおいて複数取り付けて形成される電流電極列13と、同じく多芯ケーブル12に電位電極11を所定の間隔をおいて複数取り付けて形成される電位電極列14と、電流電極列13と接続される送信器15と、電位電極列14と接続される受信器16と、送信器15及び受信器16と接続される制御測定器17と、制御測定器17と接続されるデータ収集用のパーソナルコンピュータ18とを含んで構成されている。なお、一般的には電極に電流用、電位用の区別はなく、すべての電極がある時は電流電極として機能し、ある時は電位電極として機能することもできる。
そして、電位計測システムは、例えば対象となる地盤領域20の3辺又は4辺を包囲する形で地表面から地中に所定の深さで形成した、複数のボーリング孔19に、電流電極列13や電位電極列14を各々挿入配置して、制御測定器17による制御によって、電流を流す1又は2以上の電流電極10を順次切り換えながら、各々の電流電極10毎に電流を所定時間流すと共に、適宜選択された1又は2以上の各々の電位電極11において、順次電位を計測することができるようになっている。各々の電位電極11において計測された電位は、当該電位電極11の配設位置を計測点11として各々計測された、電位の実測値(観測電位)となる。計測された電位の実測値は、受信器16及び制御測定器17を介してデータ収集用のパーソナルコンピュータ18に収集される。収集された電位の実測値のデータは、例えば外部記憶手段を介して、ステップS4において、有限要素解析プログラムが組み込まれたコンピュータに読み込まれる。
ここで、本実施形態では、例えば薬液注入により改良される地盤等の、地盤内の比抵抗分布の変化が速いと予想される地盤を解析対象として、比抵抗分布の解析を行うようになっている。したがって、比抵抗分布の経時的変化を適正に反映させるためには、対象となる地盤領域20の電位の計測を、所定の時間間隔毎に複数回繰り返し行う時間ステップ(タイムステップ)は、例えば10〜15分程度の比較的短い間隔に設定して、電位の実測値を計測する必要がある。このため、このような短いタイムステップでは、電流を流す電流電極10を順次切り換えながら、全ての電流電極10毎に各々電流を流して、全ての電位電極11で網羅して電位を計測することは時間的に困難であるばかりか、比較的短い限られた時間ステップでは、限られた1又は2以上の電流電極10から電流を流して、限られた1又は2以上の電位電極11においてしか、電位の実測値を得ることができないことから、電位の実測値のデータ数が不足することになる。
これに対して、本実施形態の解析方法は、分割された各々のセルについて、時間ステップ毎に比抵抗の修正を行う際に、当該時間ステップよりも前の時間ステップにおいて計測された、各々の計測点11での電位の実測値のデータを反映させることで、上述のような電位の実測値のデータ数の不足を補って、対象となる地盤領域20の当該時間ステップにおける比抵抗分布を、より精度良く解析できるようにするものである。
そして、本実施形態の解析方法は、対象となる地盤領域20のFEMメッシュデータを読み込んで、FEMメッシュを作成する共に、対象となる地盤領域20を複数のセルに分割し、さらに図2に示す電位計測システムによって各々の時間ステップ毎に計測された、各々の計測点11における電位の実測値(観測電位)を読み込んだら(ステップS1〜S4)、ステップS5において、各々の時間ステップ毎に、セルの比抵抗分布の初期モデルを作成する。セルの比抵抗分布の初期モデルは、例えば各々の時間ステップ毎に計測された電位の実測値等に基づいて、比抵抗トモグラフィによる従来の解析方法と同様に、例えば地盤内の比抵抗が均一と仮定して作成することができる。
ステップS5において、各々の時間ステップ毎に、各々のセルについて比抵抗の初期値を設定して、セルの比抵抗分布の初期モデルを作成したら、ステップS6において、作成した各々の時間ステップ毎の初期モデルにおいて、各々の計測点11おける電位の計算値を順解析により理論電位として計算する。理論電位の計算は、各々の時間ステップ毎の比抵抗分布の初期モデルにおいて、観測電位を計測した時と同じ電流電極の配設位置から電流を流すことで、観測電位を計測した時と同じ電場を与えて、比抵抗分布の初期モデルにおける各々の計測点での電圧を算定する。すなわち、比抵抗の初期モデルにおける電位電極の配設位置を計測点として、下記の式(1)のオームの法則によるポアソン方程式に従って、比抵抗トモグラフィによる従来の解析方法と同様に、例えば有限要素解析を行なうことによって、熱伝導解析や浸透流解析のようなポテンシャル問題と同じようにして、各々の電流電極から電流を流した際の、各々の計測点での電位を、順解析により容易に算定することができる。
作成した初期モデルにおける比抵抗分布は、対象となる地盤領域20における実際の比抵抗の分布と異なっており、したがって各々の時間ステップ毎の初期モデルにおいて解析された電位の各計測点での計算値(理論電位)は、各々の時間ステップ毎に対象となる地盤領域20で実際に計測された実測値(観測電位)と異なっている。これらの値が近づくように、比抵抗の分布を繰り返し修正してゆくことによって、最終的には、実際の比抵抗の分布を推定することが可能になる。すなわち、ステップS7において、各々の時間ステップ毎に各々の計測点での観測電位と理論電位との差分電位δyを求めて、ステップS8において、例えば求めた差分電位δyが許容値を超えていないか否かによって、収束条件を満たしているか否かを判定する。収束条件を満たしていないと判定された場合には、後述するステップS9〜S12によって、各々の時間ステップ毎に比抵抗分布のモデルの修正を行う。後述するステップS9〜S12、ステップS6〜S8を繰り返し行って、ステップS8で収束条件を満たしていると判定されたら、その時の比抵抗分布の修正モデルを、各々の時間ステップ毎の比抵抗分布の最終モデルとして決定する。
ここで、従来の、比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法について説明する。従来の解析方法では、例えば測定によりN個の電極組み合わせパターンによる計測点での観測電位yiのデータが得られたとする一方で、M個のセルの比抵抗ρjで記述される比抵抗分布のモデルがあり、N個の電極組み合わせパターンによる計測点での観測電位yiのデータは、この比抵抗分布のモデルの応答で近似できるものとする。この時、両者の関係は、形式的に下記の式(2)によって表すことができる。
関数Fiは比抵抗ρjに関して非線形であるため、式(2)から直接に比抵抗ρjを求めることはできないことから、非線形最小二乗法を適用する。すなわち、初期値ρj (0)を与えて式(2)を線形化し、非線形最小二乗法を繰り返し用いて比抵抗分布のモデルを反復改良し、最終的に下記の式(3)で示す残差二乗和が十分に小さくなるように比抵抗ρjの分布のモデルを決定する。
反復h回目の修正モデルの各々のセルの比抵抗をρj (h)で表し、Fi(ρj)をその周りでテイラー展開すると、下記の式(4)のように書ける。ここで、Aijは偏微分係数からなるヤコビアン行列であり、その成分は、下記の式(5)のように表される。偏微分係数Aijは、比抵抗ρjが応答Fi(ρj)にどの程度寄与しているかを表している。
式(2)及び式(4)から下記の式(6)の線形方程式を得る。ここでδyiは実際の観測電位yiのデータと反復h回目のモデル応答値Fi(ρj (h))との残差、δρjは反復h回目のモデルに対する各々の比抵抗ρjの修正量である。ここで、実際の観測電位yiのデータは既知の値であり、反復h回目のモデル応答値Fi(ρj (h))もまた、反復h回目に修正された比抵抗ρj (h)から得られたものとして既知の値であり、比抵抗ρjが応答Fi(ρj)にどの程度寄与しているかを表すヤコビアン行列もまた、既知の値として構築することができる。したがって、反復h回目に修正された修正モデルの各々のセルの比抵抗ρj (h)に対する比抵抗の修正量δρjは、下記の式(6)の線形方程式から、ヤコビアン行列による連立方程式を形成して、好ましくは特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法等を用いて解くことによって、容易に算定することができる。
また、従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法では、上述のようにして得られた各々のセルの比抵抗の修正量δρjを、反復h回目に修正された修正モデルの各々のセルの比抵抗ρj (h) に加算して、得られた修正値をこれらの比抵抗ρj (h)と置き換えて、修正モデルを新たに作成し、作成した新しい修正モデルに基づいて、各々の計測点で観測されるはずの電位の計算値を計算し直してゆくようになっている(図3参照)。
ここで、従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法では、比抵抗分布のモデルを修正するための、各々のセルの比抵抗の修正量δρjの算定は、所定の時間間隔毎に電位の計測が複数回繰り返し行なわれた、各々の時間ステップ毎の各計測点における観測電位のデータに基づいて、各々の時間ステップ毎に独立した2次元のモデルとして行われている。このようなことから、例えば薬液注入により改良される地盤等の、地盤内の比抵抗分布の変化が速いと予想される地盤を対象として、比抵抗分布の解析を行う場合には、上述のように、各々の計測点における電位の実測値のデータ数が不足することになるため、対象となる地盤領域20の比抵抗分布を、各々の時間ステップ毎に精度良く解析することが難しい。
これに対して、本実施形態の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法では、比抵抗分布の初期モデル又は修正モデルに対する各々のセルの比抵抗の修正は、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、各々の時間ステップにおける各々のセルの比抵抗そのものの修正量(修正値)によってではなく、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値によって行われるようになっている。
すなわち、本実施形態では、最初の時間ステップ以後のある時間ステップで算定される各々のセルの比抵抗は、当該時間ステップのみにおいて独立して算定されるのではなく、最初の時間ステップで算定された各々のセルの比抵抗に、それ以降、当該時間ステップに至るまでの、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分を順次加えることによって得られた値となっており、したがって各々のセルの比抵抗の修正は、例えば最初の時間ステップで設定された比抵抗の修正量(修正値)に、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られた、差分修正値を順次加算することにより得られた修正値によって行われるようになっている。
これによって、本実施形態では、時間ステップ毎の比抵抗分布の初期モデル又は修正モデルに対して、分割された各々のセルの比抵抗の修正を行う際に、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量を用いることで、当該時間ステップより前の時間ステップにおいて計測された、各々の電極組み合わせパターンによる計測点11での観測電位のデータを反映させながら解析を行なうことが可能になる。またこれによって、上述のような観測電位のデータ数の不足を補って、複数のセルに分割された対象となる地盤領域20の当該時間ステップにおける比抵抗分布を、時間軸を加えた3次元のモデルによって、より精度良く解析することが可能になる。またこれによって、隣接するセル同士に時間方向に滑らかに変化するフィルターがかけられることになるので、対象となる地盤領域20において、比抵抗分布が時間方向に滑らかに変化して行く状況を捉えることも可能になる。
そして、本実施形態では、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域であるセルの各々について、各々の時間ステップ毎に設定されたモデルの比抵抗から計算される、各々の計測点11における理論電位が、コンピュータに読み込まれた観測電位に近づくように、各々のセルの比抵抗を繰り返し修正して行く(図1のステップS6〜S12参照)。この際に、例えばN個の電極組み合わせパターンによる計測点で実際に測定される観測電位yiのデータや、比抵抗分布のモデルにおけるM個のセルの比抵抗ρjについて、いつの時間ステップでの観測電位や比抵抗であるかという情報が必要であるため、観測電位や比抵抗に、時間に関するインデックスを付けて、例えばk番目の時間ステップtkにおけるi番目の計測点の観測電位をyi,tk、k番目の時間ステップtkにおけるj番目のセルの比抵抗をρj,tkと表す。
次に、比抵抗を増分形(差分形)で表現する。すなわち、k番目の時間ステップtkにおけるj番目のセルの比抵抗ρj,tkの修正量δρj,tkを、例えば式(7)に示すように、初期値δρj,t1に、時間ステップtkまでの、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる差分修正値Δρj,sを順次加えて、これらの総和を加えたものと考える。したがって、求めるパラメータは、(δρ1,t1〜δρM,t1,δρ1,t2〜δρM,t2,・・・・・δρ1,tK〜δρM,tKTに代えて、差分ベクトル(δρ1,t1〜δρM,t1,δΔρ1,t2〜δΔρM,t2,・・・・・δΔρ1,tK〜δΔρM,tKTとする。ここで、Mはセルの総数、Kは時間ステップの総数である。また、δは比抵抗の修正に関する変化量(修正量)を表し、Δは各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の変化量(修正量)を表す。
求めるパラメータを拡張したことで、上述のヤコビアン行列を用いた式(6)は、下記の式(8)のような、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの総数Kに応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築した式として表されることになる。
また、式(8)において、Ati,tj は、下記の式(9)のように表わすことができる。式(9)中のLは、各々の時間ステップtkで各々の電極組み合わせパターンによる計測点において実測された観測電位のデータ数である。本実施形態では、便宜上、各々の時間ステップtkにおける観測電位のデータ数は、全て同じ数のLとなっているが、実際には、それぞれの時間ステップtkで異なる観測電位のデータ数となっていても良い。
ところで、観測電位のデータは、そのデータが観測された時間ステップより後の比抵抗の変化に影響を受けないので、下記の式(10)のように、ti<tjの場合に、Ati,tjは0である。
また、時間ステップtiでのi番目の観測電位yi,tiに対する、時間ステップtkでのj番目のセルの比抵抗による微分については、合成関数の微分定理よって、式(11)を得る。ここで、Δρj,tlは任意の時間ステップtlでのj番目のセルの比抵抗の差分の変化量(修正量)である。さらに、上記の式(7)において、右辺の各項で偏微分すると、下記の式(12)が導かれる。
したがって、式(11)の右辺の∂Δρj,tl/∂ρj,tkは、lの値によらず常に1であるため、式(13)を得る。
したがって、式(14)に示すように、Ati,t1=Ati,t2=Ati,t3=・・・=Ati, tiとなることから、結局、式(8)のマトリックスは、式(15)に示すような、素行列(ヤコビアン小行列)Ati, tiが下三角形の階段状に並んだ行列(ヤコビアン大行列)となる。これは、各々の時間ステップにおいて、比抵抗ρによる順解析によって得られるヤコビアン小行列Ati, tiを、従来の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法と同様に構築し、構築したヤコビアン小行列Ati, tiを右方向にi回コピーすることによって、全体のヤコビアン大行列を構築できることを意味する。これによって、式(8)は、下記の式(16)のように表すことができる。
そして、本実施形態の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法では、図1に示すように、ステップS7において各々の時間ステップ毎に求められた、各々の電極組み合わせパターンによる計測点での観測電位と理論電位との差分電位δyが、ステップS8において、許容値を超えているため収束条件を満たしていないと判定された場合には、ステップS9において、上述のようにして、各々の時間ステップ毎にヤコビアン小行列Ati, tiを構築すると共に、ステップS10において、上述のようにして、全体のヤコビアン大行列を構築する。
また、ステップS11では、ステップS7において各々の時間ステップ毎に算定された、各々の電極組み合わせパターンによる計測点での観測電位と理論電位との差分電位δyが取り込まれるようになっており、取り込まれた観測電位と理論電位との差分電位δyと、ステップS10で構築された全体のヤコビアン大行列から、従来の比抵抗トモグラフィによる解析方法における上記の式(6)に相当する、上記の式(16)に示される線形方程式を得る。上記の式(16)の線形方程式から、ヤコビアン行列による連立方程式を形成して、好ましくは特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法等を用いて解くことによって、求めるパラメータである、最初の時間ステップの比抵抗の修正量(δρ1,t1〜δρM,t1)や、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量(δΔρ1,t2〜δΔρM,t2,・・・・・δΔρ1,tK〜δΔρM,tK)を算定する。
ステップS11で、最初の時間ステップの比抵抗の修正量や、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量を算定したら、ステップS12において、各々の時間ステップtk毎に、各々のセルについてステップS12で理論電位の計算に用いる、修正すべき比抵抗の修正値δρKを算定する。すなわち、最初の時間ステップt1では、修正前の比抵抗ρ’t1に、算定された比抵抗の修正量δρt1をそのまま加算して比抵抗の修正値ρt1として算定する。その後の時間ステップtkでは、各々の時間ステップtkまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量δΔρt2〜δΔρtkから、式(17)によって当該修正量δΔρt2〜δΔρtkを修正前の比抵抗の差分Δρ’t2〜Δρ’tkに各々加算することによって、差分修正値Δρt2〜Δρtkを算出し、算出した各々の時間ステップtkまでの差分修正値Δρt2〜Δρtkを最初の時間ステップでの比抵抗の修正値δρt1に順次加えることで、その後の各々の時間ステップtkにおける比抵抗の修正値δρkを算定する。
ステップS12において、各々の時間ステップtk毎に、各々のセルについて修正すべき比抵抗の修正値δρt1,δρtkを算定したら、これらの修正値δρt1,δρtkを、時間ステップtk毎に設定された比抵抗分布の初期モデルや、その後に修正された修正モデルにおける、各々のセルの修正前の比抵抗δρ’t1,δρ’tkと置き替えることで修正して、新しい修正モデルを作成する。そして、作成した新しい修正モデルに基づいて、ステップS6において、各々の時間ステップ毎に、各々の電極組み合わせパターンによる計測点11おける理論電位を計算し、ステップS7において、各々の時間ステップ毎に、各々の計測点での観測電位と理論電位との差分電位δyを求め、ステップS8において、収束条件を満たしているか否かを判定する。収束条件を満たしていないと判定された場合には、上述のステップS9〜S12によって、各々の時間ステップ毎に比抵抗分布のモデルの修正が繰り返し行なわれる。ステップS9〜S12、ステップS6〜S8を繰り返し行って、収束条件を満たしていると判定されたら、その時の比抵抗分布の修正モデル(現在の修正モデル)を、各々の時間ステップ毎の比抵抗分布の最終モデルとして決定する。
そして、上述の構成を備える本実施形態の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法によれば、例えば対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速いため、電位の計測を複数回繰り返して行う時間ステップの設定時間を短くする必要がある場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の経時的な変化を精度良く解析することが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、ヤコビアン行列を用いて行われる比抵抗の修正は、各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値として、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値が用いられるようになっており、ヤコビアン行列は、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの数に応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築されるようになっている。
これらによって、本実施形態によれば、時間ステップ毎の比抵抗分布の初期モデル又は修正モデルに対して、分割された各々のセルの比抵抗の修正を行う際に、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量を用いることで、当該時間ステップよりも前の時間ステップにおいて計測された、各々の電極組み合わせパターンによる計測点11での観測電位のデータを反映させながら解析を行なうことが可能になる。またこれによって、例えば薬液注入等による地盤改良の状況を把握したり、豪雨時における急傾斜地での地下水位をモニタリングしたりする際など、対象となる地盤領域の比抵抗分布の変化が速いため、従来の比抵抗トモグラフィによるモニタリングでは電位の計測が追いつかないような場合でも、電位の実測値のデータ数の不足を補って、比抵抗分布の時間的変化を精度良く解析することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、セルは、有限要素解析プログラムによるメッシュデータによって形成される必要は必ずしも無く、各々の電極組み合わせパターンによる計測点における電位の計算値は、有限要素解析プログラムにより算定されるようになっている必要は必ずしも無い。差分法による解析プログラム等の、コンピュータに組み込まれたその他の種々の解析プログラムによって、セルを形成したり、各々の計測点における電位を計算したりすることもできる。最初の時間ステップで設定された比抵抗の修正量や、各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量は、特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法以外の求解法を用いて、ヤコビアン行列による連立方程式を解くことにより得ることもできる。
また、最初の時間ステップ以後の時間ステップで、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値は、当該最初の時間ステップ以後の時間ステップまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から差分修正値を算出し、算出した各々の時間ステップまでの差分修正値を最初の時間ステップでの比抵抗の修正値に加えることで算定する必要は必ずしも無く、例えば修正前の最初の時間ステップで設定された比抵抗に、修正前の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分を加えた修正前の直前の修正値に、さらに各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量の総和を加算することによって、算定することもできる。
以下、実施例及び比較例により、本発明の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例の記載によって何ら制限されるものではない。
〔シミュレーション試験〕
有限要素解析プログラムが組み込まれたコンピュータを用いて、例えば薬液注入によって改良される地盤を対象とした解析モデルを作成した。2次元浸透流解析により、注入した薬液が30分で対象となる地盤領域の全体に行き渡るように、地盤の透水係数を調整した。時間ステップを3分とし、2次元浸透流解析により、ポテンシャル(比抵抗)の拡散を表現した疑似比抵抗分布モデルを、3分の時間ステップ毎に、解析モデルとして各々作成した。作成した時間ステップ毎の解析モデルを図4の右欄に示す。また作成した3分の時間ステップ毎の各々の解析モデルにおいて、所定の位置から電流を流した際に所定の計測点で観測される電位を算定して、観測電位とした。観測電位は、各々の時間ステップ毎に、12通りの電極組み合わせパターンによる計測点で観測されるデータとして算定した。
各々の時間ステップ毎に観測された観測電位に基づいて、実施例の解析方法、及び比較例の解析方法によりインバージョン(逆解析)することによって、比抵抗分布のシミュレーション解析を行った。実施例の解析方法による解析結果を図4の中央欄に、比較例の解析方法による解析結果を図4の左欄に示す。実施例の解析方法では、上述の実施形態の比抵抗トモグラフィによる解析方法と同様に、比抵抗分布の初期モデル又は修正モデルに対する各々のセルの比抵抗の修正は、最初の時間ステップでは、算出された比抵抗の修正量をそのまま加算して比抵抗の修正値として算定し、その後の時間ステップでは、各々の時間ステップまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から差分修正値を算出し、算出した各々の時間ステップまでの差分修正値を最初の時間ステップでの比抵抗の修正値に順次加えることで、その後の各々の時間ステップにおける比抵抗の修正値を算定することによって行った。比較例の解析方法では、上述の従来の比抵抗トモグラフィによる解析方法と同様に、各々のセルの比抵抗の修正は、各々の時間ステップ毎の各々の計測点における観測電位のデータに基づいて、各々の時間ステップ毎に独立して、各々の時間ステップ毎の各々のセルの比抵抗そのものの修正量によって行った。
図4に示す解析結果によれば、本発明に係る実施例の解析方法では、比較例の従来の解析方法と比較して、時間ステップが繰り返されるのに従って、解析された比抵抗分布が、解析モデルによる比抵抗分布にさらに近づいていっており、比抵抗分布を一層精度良く解析できることが判明する。
10 電流電極
11 電位電極
12 多芯ケーブル
13 電流電極列
14 電位電極列
15 送信器
16 受信器
17 制御測定器
18 データ収集用のパーソナルコンピュータ
19 ボーリング孔
20 対象となる地盤領域

Claims (4)

  1. 対象となる地盤領域の周囲に複数の電極を配置し、電流電極から電流を流すことで電場を生じさせて、電位電極を計測点として所定の時間ステップ毎に電位の実測値を計測し、計測された電位の実測値と前記計測点での電位の計算値とを比較することによって、比抵抗トモグラフィにより対象となる地盤領域の比抵抗分布を解析する比抵抗分布の解析方法であって、
    前記比抵抗トモグラフィは、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域であるセルの各々について、比抵抗の初期値を設定した後に、設定された比抵抗から計算される各々の前記計測点における電位の計算値が、前記実測値に近づくように、各々のセルの比抵抗を繰り返し修正して設定し直して行くことによって、比抵抗分布を解析するようになっており、
    前記比抵抗の修正は、偏微分係数からなるヤコビアン行列を用いて求解した比抵抗の修正量を用いて行われるようになっており、
    各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップ以後の時間ステップでは、最初の時間ステップ後の各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から得られる修正値となっており、
    前記ヤコビアン行列は、各々の時間ステップ毎の偏微分係数からなるヤコビアン小行列を、時間ステップの数に応じて配置した、ヤコビアン大行列として構築される比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法。
  2. 前記各々のセルについて時間ステップ毎に行われる電位の計算に用いる比抵抗の修正値は、最初の時間ステップでは、算出された比抵抗の修正量をそのまま加算して比抵抗の修正値として算定し、その後の時間ステップでは、各々の時間ステップまでの各隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分の修正量から差分修正値を算出し、算出した各々の時間ステップまでの差分修正値を最初の時間ステップでの比抵抗の修正値に加えることで、その後の各々の時間ステップにおける比抵抗の修正値を算定する請求項1記載の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法。
  3. 前記セルは、有限要素解析プログラムによるメッシュデータによって、対象となる地盤領域を分割した複数の部分領域として形成されるようになっており、設定された比抵抗の初期値又は修正された比抵抗の修正値から計算される、各々の前記計測点における電位の計算値は、有限要素解析プログラムにより算定されるようになっている請求項1又は2記載の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法。
  4. 前記ヤコビアン行列を用いて求解される、最初の時間ステップで設定された比抵抗の修正量、及び隣接する時間ステップの間の比抵抗の差分修正量は、前記ヤコビアン行列による連立方程式を、特異値分解法、修正グラムシュミット法、又はハウスホルダー法により解くことによって得られる請求項1〜3のいずれか1項記載の比抵抗トモグラフィによる地盤の比抵抗分布の解析方法。
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