JP2016129228A - 紫外線検出器及びその製造方法 - Google Patents

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栄一 中村
田中 秀幸
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Yunlong Guo
雲龍 郭
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Abstract

【課題】耐久性に優れた紫外線検出器及びその製造方法を提供する。【解決手段】基板12上に、電極14と、ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物で形成された半導体層16と、アモルファスポリマーで形成された保護層18とが、順に配置されていることを特徴とする。【効果】半導体層が水分に触れるのを抑制できるので、優れた耐久性を得ることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、紫外線検出器及びその製造方法に関するものである。
紫外線検出器は、これまで無機半導体が用いられ、環境モニター、火災報知器、殺菌センサー、衛星間通信、潜水艦通信などへ応用されている(非特許文献1)。無機半導体を使った紫外線検出器は、フレキシブル化することや、簡便な溶液プロセスで製造することが困難であり、工業的に製造する上で多くの課題が残されている。
一方、有機半導体を使った紫外線検出器は、フレキシブル化や簡便な溶液プロセスでの製造が可能であり、有機化合物の多様性と溶液プロセスによる多層構造の形成のしやすさから近年注目されている。
例えば、有機−無機ペロブスカイト化合物は、高い変換効率を有する太陽電池材料として、注目されている。有機−無機ペロブスカイト化合物は、光検出器としても用いることが報告されている(非特許文献2〜4)。
III-V Nitride Semiconductors Applications and Devices, 1st ed., 2003, 525-591. Advanced Functional Materials, DOI:10.1002/adfm. 201402020. Chemical Communications, 2014, 50, 13695-13697. Advanced Materials, DOI:10.1002/adma. 201402271.
しかしながら有機−無機ペロブスカイト化合物は、外部環境、特に湿気に弱く、使用中に性能が低下するという問題があった。
本発明は、耐久性に優れた紫外線検出器及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る紫外線検出器は、基板上に、電極と、ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物で形成された半導体層と、アモルファスポリマーで形成された保護層とが、順に配置されていることを特徴とする。
本発明に係る紫外線検出器の製造方法は、基板上に、ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物からなる半導体層と、アモルファスポリマーからなる保護層とを順に、溶媒プロセスによって形成することを特徴とする。
本発明によれば、ペロブスカイト化合物からなる半導体層は、保護層によって覆われていることにより、半導体層が水分に触れるのを抑制できるので、優れた耐久性を得ることができる。
本実施形態に係る紫外線検出器の構成を模式的に示す縦断面図である。 紫外線検出器の吸収スペクトルを示すグラフである。 本実施形態に係る紫外線検出器のI-V特性を示すグラフである。 本実施形態に係る紫外線検出器の放射照度と、光電流及び受光感度との関係を示すグラフである。 製造から100日経過後の紫外線検出器のI-V特性を示すグラフである。 紫外線検出器の光電流を測定した結果を示すグラフである。 本実施形態に係る紫外線検出器の光電流(1)を測定した結果を示すグラフである。 本実施形態に係る紫外線検出器のサイクル特性を示すグラフである。 本実施形態に係る紫外線検出器の光電流(2)を測定した結果を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の記載は、本発明の実施形態の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
(全体構成)
図1に示す紫外線検出器10は、基板12と、基板12上に配置された一対の電極14と、前記一対の電極14を覆うように形成された半導体層16とを備え、さらに半導体層16上に保護層18が設けられている。基板12は特に限定されないが、例えばSiO基板を用いることができる。一対の電極14は、例えばAuで構成され、一定の間隔をあけて互いに平行になるように形成されている。
半導体層16は、ペロブスカイト化合物によって形成されている。ペロブスカイト化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト化合物としては、1.0eV以上3.5eV以下のエネルギーバンドギャップを有する半導体化合物を用いることが好ましい。ペロブスカイト化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。
ペロブスカイト化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
ABX ・・・(1)
式(1)において、Aは、置換基を有していてもよいカチオンを表す。カチオンは特段の制限はないが、例えば、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族〜第16族元素のカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。
式(1)において、Bはカチオンであり、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましく、また、周期表第14族元素のカチオンであることが好ましい。具体例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、2種類以上のカチオンを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
式(1)において、Xはハロゲンアニオンを表す。ハロゲンアニオンの例としては、塩素アニオン、臭素アニオン又はヨウ素アニオンが挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ素アニオンを用いることが好ましい。なお、バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。
ペロブスカイト化合物の好ましい例としては、有機−無機ペロブスカイト化合物が挙げられ、特にハライド系有機−無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。ペロブスカイト化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Brx、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
半導体層16は、2種類以上のペロブスカイト化合物を含有していてもよい。例えば、半導体層16は、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト化合物を含んでいてもよい。
半導体層16に含まれるペロブスカイト化合物の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限は、特に制限がなく、100質量%以下である。
また、半導体層16は、ペロブスカイト化合物に加えて、添加物を含有していてもよい。添加物は特に限定されないが、添加物としては、例えばハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物が挙げられる。半導体層16中の添加剤の量は、良好な光電変換特性が得られるように、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。下限は、特に制限がなく、0質量%以上である。
保護層18は、半導体層16を覆うように形成されており、低い水蒸気透過率を有する。例えば、保護層18は、厚さ100μmの場合、水蒸気透過率(JIS K7129,赤外センサー法,25℃,相対湿度差90%,24時間)が、好ましくは5.0g/m2以下であり、さらに好ましくは1.0g/m2以下であり、より好ましくは0.5g/m2以下である。下限は特になく、0g/m2以上である。また、水蒸気バリア性を発揮するように、保護層18の水との接触角は好ましくは60°以上であり、さらに好ましくは80°以上であり、より好ましくは100°以上である。
保護層18は、紫外線透過率が高いことが好ましい。保護層18の紫外線透過率は、90%以上であることが好ましい。保護層18の紫外線透過率の上限は特になく、100%以下である。紫外線透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
保護層18は、光の反射を抑えるために、屈折率が、1.5以下であることが好ましく、1.45以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることが特に好ましい。保護層18の屈折率の下限は特になく、例えば1.0以上である。
保護層18は、透明性の高いアモルファスポリマーで形成される。アモルファスポリマーは、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。具体的なアモルファスポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、AS樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、及びエポキシ樹脂、並びにこれらの高分子化合物に基づくポリマーアロイ等が挙げられる。なかでも、防湿性の観点から、フッ素樹脂又はケイ素樹脂を用いることは好ましい。
フッ素樹脂としては、一般的なフッ素系コーティング剤を用いることができる。フッ素樹脂の具体例としては、側鎖を有していてもよいポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、側鎖を有していてもよいポリフッ化ビニリデン(PVF)、側鎖を有していてもよいエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、側鎖をさらに有していてもよいパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、下記一般式で表される材料を用いることができる。
Figure 2016129228
また、通常の使用環境において保護層18が変形しないように、アモルファスポリマーのガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。
(製造方法)
次に上記のように構成された紫外線検出器10の製造方法を説明する。まず基板12表面にフォトレジストマスクを選択的に形成し、蒸着法により金属、例えばAu膜を形成する。次いで、上記フォトレジストマスクをアセトン等の有機溶媒を用いて除去すると、フォトレジストマスク上に形成されたAu膜もリフトオフにより除去される。これにより、残存するAu膜が一対の電極14となる。
次いで、一対の電極14上に半導体層16を形成する手順を説明する。半導体層16を形成する方法の一例として、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表わされる化合物と、溶媒と、を含有する塗布液を作製し、この塗布液を塗布する方法が挙げられる。このような塗布液は、化合物を溶液中で加熱攪拌することにより作製することができる。この方法によれば、上記式(1)で表される化合物を含有する半導体層16を作製することができる。
別の例としては、下記式(3)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布した後、下記式(2)で表される化合物と溶媒とを含有する塗布液を塗布し、加熱アニールする方法が挙げられる。この方法によっても、上記式(1)で表される化合物を含有する半導体層16を作製することができる。
AX ・・・(2)
BX ・・・(3)
式(2)及び式(3)において、A、B及びXは、式(1)のA、B及びXと同義である。
塗布液の溶媒としては、特段の制限はないが、例えば、Brandrup,J.ら編「Polymer Handbook, 4th Ed.」に記載の溶解度パラメーター(SP値)が、9以上であるものが好ましく、10以上であるものが特に好ましい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。なお、混合溶媒を用いる場合も、混合溶媒のうち少なくとも1種の溶媒の溶解度パラメーターは10以上であることが好ましい。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
加熱攪拌又は加熱アニールの際の加熱温度は、化合物の反応を十分に促進する観点から、60℃以上であることが好ましく、一方、副反応を避ける観点から、150℃以下であることが好ましい。また、加熱攪拌時間は、化合物の反応を十分に促進する観点から、2時間以上であることが好ましく、生産効率を向上させる観点から、24時間以下であることが好ましい。
式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は、特段の制限はない。しかしながら、半導体層16中にBXが残存すると光電変換素子の変換効率が低下する傾向がある。また、後述する加熱処理により式(2)で表される化合物を除去できても、式(3)で表される化合物は加熱により除去することが困難であることが多い。そのため、式(3)で表される化合物が層中に残存しないように半導体層16を形成することが好ましい。この点から、式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は100モル%以上であることが好ましく、一方、600モル%以下であることが好ましく、400モル%以下であることが特に好ましい。
また、塗布液全量に対する式(2)で表される化合物及び/又は式(3)で表される化合物の合計量は、十分な厚さの半導体層16を作製するために、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。一方で、溶媒中での析出を避けるために、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
また、結晶形成を促進するために、塗布液がさらに添加物を含んでいてもよい。この場合、添加物の量は、良好な光電変換特性が得られるように、式(2)で表される化合物及び/又は式(3)で表される化合物の合計量に対して、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
塗布液を塗布した後、加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱により配位している溶媒及び残存する式(2)で表わされる化合物が層中から除去されて結晶化が促進され、光電変換効率が向上する傾向にある。結晶化の進行は塗布液の濃度に依存するため、塗布液の濃度が薄い場合又は溶媒の含有量が少ない場合には、加熱時間を短くすることが好ましい。
この際の加熱温度は、特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、一方、ペロブスカイト化合物の分解及び副反応を抑制するために、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。加熱する時間にも特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、一方、生産効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
保護層18の形成方法には特段の制限はない。例えば、上記のアモルファスポリマーと溶媒とを含む塗布液を作製して塗布することにより、保護層18を形成することができる。
溶媒に特段の制限はなく、例えば水系溶媒又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、フッ素系溶媒、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、又はエーテル系溶媒が挙げられる。混合された2種以上の溶媒を用いてもよい。
塗布液を均一に塗布することにより保護層18を形成できるように、溶媒の沸点は60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。一方で、乾燥速度を早め、保護層18中に溶媒が残存することを防ぐために、溶媒の沸点は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがさらに好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
塗布液への溶解性の観点から、アモルファスポリマーがフッ素樹脂である場合、溶媒の水との接触角は90°よりも大きいことが好ましく、100°よりも大きいことがより好ましい。また、溶解性の観点から、アモルファスポリマーがケイ素樹脂である場合、溶媒として炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。
塗布液中のアモルファスポリマーの量に特段の制限はなく、形成しようとする保護層18の厚さに従って適宜選択できる。均一に塗布を行うことにより良好なアモルファスポリマー層を形成するために、塗布液中のアモルファスポリマーの量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、0.10質量%以上であることが特に好ましく、一方で、10質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以下であることが特に好ましい。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。塗布液の塗布後に、溶媒を蒸発させるために加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
以上のように、本実施形態に係る紫外線検出器10は、溶媒プロセスによって半導体層16及び保護層18を形成することができるので、従来に比べ、容易に製造することができる。
(作用及び効果)
次に上記のように構成された紫外線検出器10の作用及び効果を説明する。紫外線検出器10は、一対の電極14間に動作電圧が印加された状態で、紫外線が紫外線検出器10表面、すなわち保護層18表面から入射すると、光が電気に変換され、一対の電極14間に電流(以下、光電流と呼ぶ)が流れる。光電流は、入射する紫外線の放射照度によって変化する。このようにして紫外線検出器10は、光電流を計測することにより、紫外線を検出することができる。
因みに、製造直後のペロブスカイト化合物は、高い光電変換特性を示すものの、湿気に弱いため、時間経過に伴い、光電変換特性が低下する。
本実施形態の場合、ペロブスカイト化合物からなる半導体層16は、保護層18によって覆われている。これにより紫外線検出器10は、半導体層16が水分に触れるのを抑制できるので、優れた耐久性を得ることができる。
紫外線検出器10は、半導体層16がペロブスカイト化合物で形成されていることにより、波長が300nm以下の紫外線領域の光を検出することができ、1μs以下の信号応答速度が得られる。
本実施形態に係る紫外線検出器の特性を評価するため、サンプルを作製した。基板は、表面に厚さ470nmのSiO2膜を有するSi基板を用いた。基板の表面上にAu膜で一対の電極を形成した。一対の電極の間隔は、9μmとした。半導体層の形成には、モル比が3:1のCH3NH3I/PbCl2を、N,N−ジメチルホルムアミドに混合した塗布液を用いた。塗布液の全量に対するペロブスカイト化合物の合計量は、25質量%とした。この塗布液を、スピンコート法により、400rpm、60秒間の条件で、電極が形成された基板上に塗布した。次いで窒素雰囲気下、90℃で2時間乾燥した。最後にアモルファスポリマーとしてCYTOP(登録商標、旭硝子(株)製、品番:CTL-809M)を溶媒(品番:CT-Solv.180)に混合して、0.4質量%に調製した塗布液0.1mLを、1000rpmの回転下で添加することにより、半導体層上に保護層を形成した。保護層の厚さは、500nm以下とした。
得られた紫外線検出器に、可視光から波長280nm以下の紫外光(以下、「solar−blind光」という)まで波長の異なる光を照射した場合の吸収スペクトルを図2に示す。本図は、横軸が波長、左の縦軸が吸収スペクトル、右の縦軸が受光感度(A/W)を示す。図中曲線が吸収スペクトルの測定結果、「●」)が実施例に係る紫外線検出器の受光感度の結果である。なお、光源には、High Powerキセノン光源(朝日分光(株)社製、品番:MAX-303)を用いた。グレーの曲線が実施例に係る保護層を備えた紫外線検出器の結果、黒の曲線が比較例に係る保護層を備えていない紫外線検出器の結果である。この結果より、実施例に係る保護層を備えた紫外線検出器は可視光からsolar−blind光に至るまで、比較例に係る検出器と吸収スペクトルに差はなく、保護層が半導体層の光吸収特性に影響しないことが確認できた。また紫外線検出器は、波長400nm以下においてもピークを有しており、波長が300nm以下の紫外線領域の光を検出できることが確認された。
また、実施例及び比較例に係る紫外線検出器を1分間水に浸水させたところ、比較例に係る紫外線検出器は半導体層が変色したのに対し、実施例に係る紫外線検出器は半導体層が変色しなかった。
図3に、実施例に係る紫外線検出器のI-V特性を示す。本図は、横軸が動作電圧(V)、縦軸が光電流(nA)である。測定には、半導体特性評価システム(ケースレー社製、4200-SCS型)を用いた。光源には、High Powerキセノン光源(朝日分光(株)社製、品番:MAX-303)を用い、放射照度を0, 8.1, 32.4, 113.3, 194.2mW/cm2における光電流をそれぞれ測定した。動作電圧2Vにおいて、放射照度0では0.17nAという低電流であったのに対し、放射照度194.2mW/cm2では検出電流が380μAに増加した。また暗電流は、ほぼ0であり、ノイズが小さいことが確認された。
図4に、受光感度の評価結果を示す。本図は、横軸が放射照度(mW/cm2)、左の縦軸が光電流、右の縦軸が受光感度(A/W)である。光電流は、良好な受光感度を示しながら、放射照度とほぼ比例関係を示した。受光感度は、放射照度が194.2mW/cm2から66nW/cm2まで減少するのに伴い、0.07A/Wから14.5A/Wまで増加した。
次に、紫外線検出器の長期安定性を調べるため、実施例に係る紫外線検出器を製造後、100日間、室温、湿度50〜60%の環境に放置した後、図3と同じ条件でI-V特性を測定した結果を図5に示す。本図から、実施例に係る紫外線検出器は、製造から100日経過後においても、当初の75%の光電流を得られることが確認できた。
耐湿性を評価するため、紫外線検出器の表面を水面から1mm離した状態で1分又は10分保持した後、放射照度8.1mW/cm2で大気中において光電流を測定した結果を図6に示す。この結果、実施例に係る紫外線検出器は、10分保持したサンプルにおいても、光電流の減少は認められなかった。これに対し、保護層が設けられていない紫外線検出器は、最初の1分保持したサンプルで84.4nAから33.3nAに減少し、約60%低下した。この光電流は、10分保持したサンプルでさらに13.8nAに減少し、当初から約84%低下した。上記のような光電変換特性は、異なる放射照度(8.1〜194.2mW/cm2)で認められた。
湿度50-60%、50℃のホットプレート上に紫外線検出器を保持する、より厳しい評価環境に、紫外線検出器を6000分間保持し、光電流の変化を計測した結果を図7に示す。本図は、横軸が時間、縦軸が光電流(nA)である。光電流を測定する際、紫外線検出器を、室温、湿度50-60%の環境に移して測定した。測定後、紫外線検出器を評価環境に戻した。測定開始から最初の200分の間に光電流が15%低下した。その後、5800分の間の光電流の低下は、5%と極めて小さかった。
図8に、波長254nmの紫外光に対する実施例に係る紫外線検出器のサイクル特性を示す。本図は、横軸が時間、縦軸が光電流(nA)である。光源には、High Powerキセノン光源(朝日分光(株)社製、品番:MAX-303)を用いた。動作電圧は2V、放射照度は110μmW/cm2とし、光源を5秒の間隔でオンオフしながら光電流を測定した。紫外線検出器は、光源のオン時に6.2μAに上昇した。
図9に、入射する光に対する応答時間を調べた結果を示す。本図は、横軸が時間(μs)、縦軸が光電流(任意単位)であり、本図中の小さいグラフは横軸を対数目盛に変換したものである。光源には、波長337.1nmの色素レーザー((株)宇翔製、品番:KEC-150)を用い、動作電圧2Vとした。色素レーザーを照射後、0.2μsで、応答信号が上昇した。紫外パルスのスイッチをオフした後の光電流の低下は、0.7μsであった。
上記したように、実施例に係る紫外線検出器は、ペロブスカイト化合物で形成された半導体層を備えることにより優れた光電変換特性を有すると共に、アモルファスポリマーで形成された保護層を備えることにより従来に比べ優れた耐久性を有する。
10 紫外線検出器
12 基板
14 電極
16 半導体層
18 保護層

Claims (8)

  1. 基板上に、電極と、ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物で形成された半導体層と、アモルファスポリマーで形成された保護層とが、順に配置されていることを特徴とする紫外線検出器。
  2. 前記ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物がCH3NH3PbI(3−X)ClX(X=0〜3)で表されることを特徴とする請求項1記載の紫外線検出器。
  3. 前記アモルファスポリマーが、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線検出器。
  4. 前記アモルファスポリマーが、下記一般式で表されるフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の紫外線検出器。
    Figure 2016129228
  5. 前記保護層は、紫外線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の紫外線検出器。
  6. 信号応答速度が、1μs以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の紫外線検出器。
  7. 波長が300nm以下の紫外線領域の光を検出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の紫外線検出器。
  8. 基板上に、ハロゲン化鉛を有するペロブスカイト化合物からなる半導体層と、アモルファスポリマーからなる保護層とを順に、溶媒プロセスによって形成することを特徴とする紫外線検出器の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110176540A (zh) * 2019-06-05 2019-08-27 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 一种CH3NH3PbCl3钙钛矿单晶的制备方法与紫外探测器
CN113346021A (zh) * 2021-04-12 2021-09-03 西安电子科技大学 一种含(BA)2Cs5Pb6Cl19钙钛矿层的可见光盲紫外探测器及其制备方法
KR102362528B1 (ko) * 2020-09-08 2022-02-15 한국과학기술연구원 고분자 마이크로 입자를 이용한 페로브스카이트 광 검출기 및 그 제조 방법

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