以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、図1及び図2を用いて全体の概略構成を説明する。図1は、ミキサー装置1の閉状態の全体斜視図である。図2は、ミキサー装置1の開状態の全体斜視図である。図3は、ミキサー装置1の開状態の側面図である。なお、ミキサー装置1の閉状態とは、口述する側面板30の上部側面板31が下部側面板32に対して当接した状態であり、ミキサー装置1の開状態とは、側面板30の上部側面板31が下部側面板32から離間して側面板30が分割された状態のことをいう。また、以下の説明では、ミキサー装置1の操作者側を手前側、その反対側を奥側という。また、ミキサー装置1の手前側からみた両側を左右あるいは横方向という。また、各部品における方向を示す場合は、各部品をミキサー装置1に取り付けた状態での方向で示す。
図1に示すように、ミキサー装置1(音響調節機器)の筐体は、上部筐体10と下部筐体20とから構成され、上部筐体10と下部筐体20とを一体に組みつけることで函型に構成される。具体的には、上部筐体10の表面板11と下部筐体20の底面板21との間の側面を側面板30で囲うことで、函型になる。側面板30は、上部筐体10の表面板11の端部から下方に連設される上部側面板31と、下部筐体20の底面板21の端部から上方に連設される下部側面板32とにより構成される。上部筐体10の表面板11は、奥側で上方に配設される表示パネル部51と手前側で下方に配設される操作パネル部61から構成される。
上部筐体10の上方には表示部50が形成される。表示部50の表面をなす表示パネル部51は、ディスプレイ52が操作者に向くように、操作部60よりも立ち上がるように構成される。表示部50は、表示パネル部51と、表示パネル部51の裏側に設置された不図示のディスプレイ基板と、当該ディスプレイ基板に設置されたディスプレイ52と、ディスプレイ52の表示を操作するための各種の操作子を有する。ここでの各種の操作子は、スイッチ類53、ロータリーボリューム54が含まれる。
上部筐体10における表示部50より手前側には操作部60が形成される。操作部60の表面をなす操作パネル部61は、表示パネル部51よりも傾斜角度が緩くなるように形成される。操作部60は、操作パネル部61と、操作パネル部61の裏側に設置された不図示の操作子基板と、当該操作子基板に取り付けられる各種の操作子とを有する。各種の操作子は、操作パネル部61に設けられる小孔を貫通して操作パネル部61の表面に露出している。ここでの各種の操作子は、スイッチ類62、フェーダ操作子63が含まれる。また、操作パネル部61には、液晶表示部64などの電子機器類も設置される。操作パネル部61上のフェーダ操作子63は、ミキサー装置1の前後方向に沿って直線状にスライド移動が可能である。なお、フェーダ操作子63は手動操作で移動するように構成されているが、電気的に駆動するためのモータ(図示せず)を併設してよい。
なお、上部筐体10の内部に付帯される内部装置として、ディスプレイ基板と操作子基板を例示したが、これに限るものではない。上部筐体10の強度の範囲内であれば、上部筐体10の表面側の機器を操作又は制御するその他の基板類、ケーブル類等を、上部筐体10の内部装置として付帯することとしてもよい。
図2に示すように、ミキサー装置1の上部筐体10と下部筐体20とは、側面板30において分割可能であり、操作者がメンテナンスを行う場合には、上部筐体10を下部筐体20から離間させた開状態にする。開状態において、上部側面板31と下部側面板32とが分割すると、下部筐体20の下部側面板32に付帯された回動支持軸25(支持部)に対して、上部筐体10の上部側面板31の軸受溝31Xが係合する。これにより、上部筐体10は下部筐体20に対して支持される。
下部筐体20には、ミキサー装置1全体を制御する回路基板70が、底面板21上の奥側に配置される。底面板21の奥側には、回路基板70のほか、各種端子が付帯される拡張ボードを装着する拡張ボード装着部や、電源ユニット、電源コードの端子を接続するための電源端子部、送風ファンなどの内部装置が設けられる。
また、図2及び図3に示すように、ミキサー装置1の開状態では、側面板30の表面積において所定の割合で上部側面板31と下部側面板32とに分離する。このとき、上部側面板31の表面積と下部側面板32の表面積の比率が約1対1の関係になるように構成すると、上部筐体10の剛性が高くなる一方で、下部筐体20の剛性をも高く維持し、装置としての安定性もまるので、好ましい。なお、側面板30の分割割合は必ずしもこれ限定されるものではなく、回動して開く方の上部筐体10の上部側面板31に十分な強度があればよく、例えば、上部側面板31側の表面積と下部側面板32の表面積とが、1対2、1対3、2対3等の他の関係になるようにしてもよい。なお、これに限るものではなく、上部筐体10が安定的に開状態になる範囲であれば、上部側面板31の表面積を下部側面板32の表面積よりも大きくしてもかまわない。また、本実施形態と同様、上部側面板31と下部側面板32のそれぞれの形状について、手前側から奥側まで一定の幅でなくともよい。
上部側面板31のうち、下部側面板32と対向する下方側の側面全域には、上部側面板31が内側方向に一段折れ曲がることで段差が形成され、これが第一当接部31Aとなる。また、上部側面板31の下端部の数箇所が後述の下部側面板32の第二受部32Bに当接する第二当接部31Bとなる。上部側面板31の下端部のうち、第二当接部31Bが形成されない部分は、筐体の内側に傾斜するように折り曲げられることでガイド部31Cとなる。ガイド部31Cの具体的な構成は後述する。
一方、下部側面板32のうち、上部側面板31と対向する上端全域が第一当接部31Aを下方で受ける第一受部32Aとなる。さらに、下部側面板32の第一受部32Aよりも下方の数箇所には第二受部32Bが形成される。第二受部32Bは、下部側面板32の一部を内側へ水平方向に折って形成され、第二当接部31Bを受ける。なお、本実施形態においては、上部側面板31の第二当接部31B及び第二受部32Bが3箇所ずつ形成されるが、これに限るものではなく、第二当接部31B及び第二受部32Bの数は装置の大きさにより適宜設定し得る。
また、上部側面板31の手前側には、手前側に開口した半円状の係合溝である軸受溝31Xが形成される一方、下部側面板32には、筐体の内側方向に突設した軸形状の回動支持軸25を有する。この構成により、図2及び図3に示す開状態においては、上部筐体10の軸受溝31Xが、下部筐体20の回動支持軸25の上で保持される。
次に、ミキサー装置1の側面板30の係合構造について、図4乃び図5を用いて説明する。図4は、ミキサー装置1の閉状態の側面図である。図5は、ミキサー装置1の閉状態の側面板30の拡大断面図で、(a)は図4のX−X断面図、(b)は図4のY−Y断面図である。
ミキサー装置1の閉状態において、図4の破線で示すように、上部側面板31の下方が、下部側面板32の内側に入り込むことで、上部筐体10の下部筐体20に対する位置決めがなされる。より具体的には、断面形状を示す図5(b)に示すように、上部側面板31の第一当接部31Aが下部側面板32の第一受部32Aに当接する一方、図5(a)に示すように、第一当接部31Aよりも上部筐体10の内側に形成される第二当接部31Bは、下部側面板32の第二受部32Bに当接する。これにより、上部筐体10の上部側面板31の下端が、下部筐体20の下部側面板32に対して鉛直方向の位置決めがなされるため、上部筐体10が下部筐体20に対して位置決めされる。
また、図5に示すように、ガイド部31Cは、上述のように上部側面板31に対して傾斜して折り曲げられ、第一当接部31Aや第二当接部31Bよりも下方にまで延設される。この構成により、上部筐体10を下部筐体20に対して閉じる動作の際、ガイド部31Cの表面が第一当接部31Aや第二当接部31Bに先行して第一受部32Aや第二受部32Bに当接する。この際、ガイド部31Cは内側に傾斜しているため、上部側面板31が下部側面板32よりも内部側に案内される。
以上の構成のミキサー装置1のメンテナンス時には、上部筐体10を下部筐体20に対して上方に動かして、閉状態から開状態にする。図6は、ミキサー装置1を閉状態から開状態にする場合の手順を説明する側面図であり、(a)は閉状態の図、(b)は上部筐体10を手前側に動かした状態の図、(c)は開状態の図である。
図6(a)に示すように、ミキサー装置1の背面には、上部筐体10の固定部18と、下部筐体20の固定部28とが互いに係合または嵌合するように構成される。このため、操作者がメンテナンスを行う際には、固定部18と固定部28との固定構造を解除する。この状態において、上部筐体10の手前側に形成される軸受溝31Xと、下部筐体20の手前側に配置される回動支持軸25とは当接していない状態である。
図6(b)に示すように、操作者が上部筐体10を手前側に水平にスライドさせる。すると、軸受溝31Xが回動支持軸25に当接して止まる。軸受溝31Xと回動支持軸25とが当接した状態で、図6(c)に示すように、操作者が上部筐体10を上方に持ち上げると、側面板30の上部側面板31と下部側面板32とが分離し、上部筐体10は下部筐体20から離間する。これにより、上部筐体10と下部筐体20との間に配置される回路基板70などの内部装置に操作者がアクセスしやすくなる。特に、本実施形態では、上部筐体10の内部の配線と下部筐体20の内部の配線とは互いにミキサー装置1の内部の手前側でつながっているため、開状態において、配線がミキサー装置1の手前側に集中する。このように構成すると、開状態において、ミキサー装置1の側面や奥側から内部装置にアクセスしやすくなる。
以上説明したように、本実施形態のミキサー装置1の筐体構造は、側面板30が上部筐体10の表面板11に連設される上部側面板31と下部筐体20の底面板21から連設される下部側面板32とから構成される。そして、下部筐体20の回動支持軸25が上部筐体10の上部側面板31を支持した状態で、上部筐体10を下部筐体20から離間させると、上部側面板31と下部側面板32とが分割するように構成している。
このように、筐体の開状態において、上部筐体10に上部側面板31が付帯し、上部側面板31が表面板11の側面の姿勢を保持する構成であると、上部筐体10の側面の剛性が高まり、上部筐体10が下部筐体20から離間して支持された状態であっても上部筐体10が安定的に保持される。このように、下部側面板32の上方が安定的に開放されるため、操作者が筐体の内部、特に装置内部に設置されている内部基板や各種部品にアクセスしやすくなる。また、下部側面板32は下部筐体20の側方にあるため、操作者の筐体の内部へのアクセスの際に邪魔になりにくい。このため、高いメンテナンス性を維持することができる。また、上部筐体10の剛性が高まったことで、筐体の開状態において、上部筐体10に設置される表示部50や操作部60に関連する内部装置をも安定して保持することができる。よって、高いメンテナンス性を維持しつつも、安定して筐体の内部装置を保持することができる。
また、上記構成のミキサー装置1の筐体構造において、上部側面板31には、断面形状において、下部側面板32の第一受部32Aに当接する第一当接部31Aと、第一当接部31Aよりも上部筐体10の内側に形成され下部側面板32の第二受部32Bに当接する第二当接部31Bと、を有する。このように、上部側面板31が、下部側面板32に対して2箇所で当接するように構成することで、確実に側面板30の姿勢を保ち、安定して筐体の内部基板を保持することができる。
また、上記構成のミキサー装置1の筐体構造において、上部側面板31の下端には、内側に傾斜するガイド部31Cを有する。このように構成すると、筐体を開状態から閉状態にする際、上部側面板31の下端と下部側面板32の上端が当接する場合に、ガイド部31Cが、上部側面板31を下部側面板32の内側に確実に案内するため、上部筐体10を円滑に下部筐体20に対して組み付けることができる。
また、上記構成のミキサー装置1の筐体構造において、上部側面板31には、回動支持軸25に対して回動させるための軸受溝31Xが形成される。これにより、上部筐体10を下部筐体20から離間させる際に、軸受溝31Xを回動支持軸25に当接させて回動支持軸25を回転中心として移動させれば、上部筐体10を回動させることのみの動作で、上部筐体10を下部筐体20から離間させることができる。すると、上部筐体10に重量がある場合でも、上部筐体10を少ない操作力で開状態にすることができる。これにより、操作者が筐体内部にアクセスしやすくなり、メンテナンス性がさらに向上する。
なお、上述の実施形態では、ミキサー装置1の手前側に回動支持軸25とこれに係合する軸受溝31Xが構成され、開状態となる場合に、上部筐体10が手前側に開くこととしたが、これに限るものではない。例えば、上部筐体10が奥側に開く構成としてもよい。図7は、ミキサー装置1の変形例を示す図である。図7に示すように、下部筐体20の下部側面板32の奥側の上部に回動支持軸26を配設する一方、上部筐体10の上部側面板31の奥側の下部に回動支持軸26と係合する軸受溝31Yを形成してもよい。
また、上述の実施形態では、上部筐体10を下部筐体20に対して固定支持する構成として、回動支持軸25と軸受溝31Xや、回動支持軸26と軸受溝31Yというヒンジ構成としたが、少なくとも開状態において上部筐体10が下部筐体20に対して固定支持されればよく、上部筐体10を下部筐体20に固定支持する構造は、ヒンジ構成に限るものではない。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。