次に、本発明の一実施形態を図1〜7に基づいて説明する。
本実施形態の貯湯式給湯装置の全体概略構成を図1に示す。図1において、この貯湯式給湯装置100は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯しこの貯湯した湯水を給湯に用いるもので、湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット1と、貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット3と、台所や洗面所等にそれぞれ設けられた給湯栓4と、例えば給湯栓4の近傍に設けられた給湯リモコン5と、浴槽6と、例えば浴室に設けられたふろリモコン7と、を有する。
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管8が接続され、下端に給水管9が接続され、さらに下部にヒーポン循環回路を構成するヒーポン往き管10が接続され、上部にヒーポン循環回路を構成するヒーポン戻り管11が接続されている。前記ヒーポン往き管10を介し取り出された貯湯タンク2内の湯水は前記ヒートポンプユニット3によって沸き上げられた後、前記ヒーポン戻り管11から貯湯タンク2内に戻されて貯湯される。また、前記給水管9からの給水により貯湯タンク2内の湯水が押し上げられることで、貯湯タンク2内上部の高温水が前記出湯管8から押し出され、給湯される。このとき、前記給水管9には、給水の圧力を減圧する減圧弁46と、給水の温度を検出する給水温度センサ49とが設けられ、前記出湯管8には、貯湯タンク2の過圧を逃す過圧逃し弁45が設けられている。なお、貯湯タンク2の外周部には保温用の断熱材が設けられている(図1〜図5では煩雑防止のために図示省略)が、これについては後に詳述する。
貯湯タンク2には、上下方向に沿って複数個の貯湯温度センサ39が配置されている。本実施形態では、上から下へ向かって5つの貯湯温度センサ39a,39b,39c,39d,39eが配置されており、これらの貯湯温度センサ39a〜dが検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかが検知され、さらに貯湯タンク2内の上下方向の温度分布が検知される。
前記ヒートポンプユニット3は、ヒートポンプ回路16と、ヒーポン循環ポンプ17と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部18とを備えている。前記ヒートポンプ回路16は、圧縮機12と、凝縮器としての冷媒−水熱交換器13と、電子膨張弁14と、強制空冷式の蒸発器15とで構成されている。前記ヒーポン循環ポンプ17は、貯湯タンク2内の湯水を前記ヒーポン往き管10及びヒーポン戻り管11を介して冷媒−水熱交換器13内に循環させる。
前記ヒートポンプ回路16内には冷媒として二酸化炭素が用いられ、これによって超臨界ヒートポンプサイクルが構成されている。一般に、超臨界ヒートポンプサイクルでは熱交換時において冷媒は超臨界状態のまま凝縮されるが、前記冷媒−水熱交換器13では冷媒と被加熱水たる貯湯タンク2内の湯水とが対向して流れる対向流方式を採用しており、これによって効率良く高温まで被加熱水を加熱可能であり、例えば低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることができる。
前記ヒーポン制御部18は、前記被加熱水の冷媒−水熱交換器13の入口温度と冷媒の冷媒−水熱交換器13の出口温度との温度差が一定になるように、前記電子膨張弁14または圧縮機12を制御する。これにより、特に、被加熱水の冷媒−水熱交換器13の入口温度が例えば5〜20℃程度の低い温度である場合に、COP(エネルギー消費効率)がとても良い状態で被加熱水を加熱することができる。
一方、前記貯湯タンク2内には、前記浴槽6の湯水を加熱するための、例えばステンレス製の蛇管よりなる熱交換器19が設けられている。この熱交換器19にはふろ往き管20とふろ循環ポンプ21を備えたふろ戻り管22とが接続されており、浴槽6の湯水が循環可能となっている。すなわち、ふろ戻り管22を介して導かれた浴槽6内の湯水が熱交換器19内において貯湯タンク2内の高温水により加熱された後、ふろ往き管20を介し浴槽6に戻されることで保温あるいは追焚きが行われる。なお、ふろ戻り管22には、循環する浴槽6の湯水の温度を検出するふろ温度センサ23が設けられている。
また、前記貯湯タンク2の中間位置(上下方向の略中央位置には限られない)には、中間出湯管24が接続されている。この中間出湯管24は、前記熱交換器19で浴槽6からの湯水と熱交換して温度低下した中温水や、湯と水の境界層付近で温度低下した(あるいは温度上昇した)中温水などの、貯湯タンク2の中間位置(上下方向の略中央位置には限られない)に貯められている湯水を貯湯タンク2から出湯する。
さらに、前記中間出湯管24と前記出湯管8との下流側合流位置には、貯湯タンク2の前記中間位置付近から中間出湯管24を介し導かれる中温水と貯湯タンク2の上端に接続された出湯管8を介し導かれる高温水とを混合する、電動ミキシング弁からなる中間混合弁25が設けられている。この中間混合弁25の下流側には中間給湯管27が接続されており、中間温度センサ26が設けられている。中間混合弁25における前記中温水と前記高温水との混合比率は、前記中間温度センサ26の検出湯温が、給湯リモコン5やふろリモコン7でユーザーが設定した給湯設定温度よりも所定温度高い混合目標温度となるように制御される。
さらに、前記中間給湯管27と前記給水管9から分岐された給水バイパス管29との下流側合流位置には、中間混合弁25から中間給湯管27を介し導かれる湯水と前記給水バイパス管29から導かれる低温水とを混合する、電動ミキシング弁からなる給湯混合弁28が設けられている。この給湯混合弁28の下流側には給湯管30が接続されており、給湯温度センサ31が設けられている。給湯混合弁28における前記湯水と前記低温水との混合比率は、前記給湯温度センサ31の検出湯温が給湯リモコン5やふろリモコン7でユーザーが設定した給湯設定温度となるように制御される。なお、給湯管30にはさらに、給湯する湯水の量をカウントする給湯流量カウンタ47が設けられている。
また、前記中間給湯管27から分岐された分岐中間給湯管33と前記給水管9から分岐された分岐給水バイパス管34との下流側合流位置には、分岐中間給湯管33を介し導かれる湯水と分岐給水バイパス管34から導かれる低温水とを混合する、電動ミキシング弁からなるふろ混合弁32が設けられている。このふろ混合弁32の下流側には、ふろ戻り管22に連通する湯張り管35が接続されており、湯張り温度センサ36が設けられている。ふろ混合弁32における前記湯水と前記低温水との混合比率は、前記湯張り温度センサ36の検出湯温が給湯リモコン5やふろリモコン7でユーザーが設定したふろ設定温度となるように制御される。なお、前記湯張り管35には、浴槽6への湯張りの開始/停止を行う湯張り弁37と、浴槽6への湯張り量をカウントするふろ流量カウンタ38と、浴槽6の湯水が逆流するのを防止する二重の逆止弁48とが設けられている。
前記給湯リモコン5及びふろリモコン7には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ40と、ふろ設定温度を設定するふろ温度設定スイッチ41と、前記ふろ設定温度の湯をふろリモコン7の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ浴槽6へ湯張りして所定時間保温させるふろ自動スイッチ42とが設けられている。
また、前記給湯リモコン5及びふろリモコン7には、制御手段としての給湯制御部44が無線通信または有線通信により接続されている。この給湯制御部44は、貯湯タンクユニット1内の各センサ(前記貯湯温度センサ39a〜e、ふろ温度センサ23、中間温度センサ26、給湯温度センサ31、湯張り温度センサ36等)の入力を受け各アクチュエータ(電動ミキシング弁である中間混合弁25、給湯混合弁28、ふろ混合弁32のアクチュエータや湯張り弁37のアクチュエータ等)の駆動を制御するマイコンを有しており、給湯リモコン5及びふろリモコン7でのユーザーが任意に設定した給湯設定温度及びふろ設定温度が、前記各アクチュエータの駆動によって実現される。具体的には、前記給湯制御部44は、中間温度センサ26で検出する温度が前記給湯設定温度及びふろ設定温度のうち高い方の設定温度より所定温度高い混合目標温度になるよう中間混合弁25の弁開度をフィードバック制御すると共に、給湯温度センサ31の検出する温度が前記給湯設定温度になるように給湯混合弁28の弁開度をフィードバック制御し、さらに、湯張り温度センサ36の検出する温度が前記ふろ設定温度になるようにふろ混合弁32の弁開度をフィードバック制御する。なお、前記中間混合弁25、給湯混合弁28、ふろ混合弁32、及び湯張り弁37が制御弁に相当している。
次に、図2〜図5を用いて、本実施形態の各種作動を説明する。なお、図2〜図5中の貯湯タンク2内にハッチングした斜線は低温水を示すとともに二重斜線は高温水を示す。また、各管路の矢印は湯水の流れ方向を示す。
まず、図2を用いて、沸き上げ運転について説明する。ある1日の深夜電力時間帯になって、貯湯温度センサ39が貯湯タンク2内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、給湯制御部44は、ヒーポン制御部18に対して沸き上げ開始指令を発する。指令を受けたヒーポン制御部18は圧縮機12を起動した後にヒーポン循環ポンプ17を駆動開始する。これにより、貯湯タンク2下部に接続されたヒーポン往き管10から取り出された5〜20℃程度の低温水が冷媒−水熱交換器13において凝縮する冷媒から受熱して70〜90℃程度の高温まで加熱された後、貯湯タンク2上部に接続されたヒーポン戻り管11から貯湯タンク2内に戻され、この結果、貯湯タンク2の上部から順次積層して高温水が貯湯されていく。貯湯温度センサ39a〜dにより必要な熱量が貯湯されたことが検出されると、給湯制御部44は、ヒーポン制御部18に対して沸き上げ停止指令を発する。これにより、ヒーポン制御部18は圧縮機12を停止すると共にヒーポン循環ポンプ17も停止して沸き上げ動作を終了する。
次に、図3を用いて、給湯運転について説明する。例えばユーザーが洗顔や台所仕事やシャワー等に湯水を用いるために前記給湯栓4を開くと、給水管9からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。そして貯湯タンク2の中間部に貯められた高温水が中間出湯管24を介して中間混合弁25側へ押し出されるとともに出湯管8を介しても中間混合弁25側へと押し出される。なお、貯湯タンク2内には上部に高温水、下部に低温水が貯められることとなるが、その温度差により比重差が発生して温度境界層が形成され、比重の軽い高温水が上部に、比重の重い低温水が下部に位置するので、互いに混じり合うことはない。
前記給湯制御部44は、中間混合弁25において中間出湯管24からの湯水と出湯管8からの湯水を混合するときに、給湯リモコン5(またはふろリモコン7)で設定された前記給湯設定温度より一定温度以上高い混合目標温度となるように、中間混合弁25の混合比率を適宜に調整する。
そして、中間混合弁25から流出した前記混合目標温度の湯は中間給湯管27を介して給湯混合弁28へ流入し、給湯混合弁28において給水バイパス管29からの低温水と混合される。このとき、給湯制御部44が給湯混合弁28の混合比率を調整することで、前記給湯設定温度の湯が給湯栓4へと給湯される。そして、ユーザーが給湯栓4を閉止することで、給湯が終了する。
次に、図4を用いて、浴槽6への湯張り運転について説明する。例えばユーザーが湯張りを意図して給湯リモコン5(またはふろリモコン7)のふろ自動スイッチ42を操作すると、給湯制御部44が湯張り弁37を開弁する。そして、給水管9からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。この結果、前述と同様、貯湯タンク2内の湯水が中間出湯管24を介して中間混合弁25側へ押し出されるとともに出湯管8を介しても中間混合弁25側へと押し出される。ここで、給湯制御部44は、中間混合弁25において中間出湯管24からの湯水と出湯管8からの湯水を混合したときに、給湯リモコン5又はふろリモコン7で設定されたふろ設定温度及び給湯設定温度の高い方の温度よりも一定温度以上高い混合目標温度となるように、中間混合弁25の混合比率を適宜に調整する。
そして、中間混合弁25から流出した湯は中間給湯管27から分岐する分岐中間給湯管33へと出湯される。そして分岐中間給湯管33からの高温水はふろ混合弁32へ流入して、分岐給水バイパス管34からの低温水と混合される。このとき、給湯制御部44は、給湯リモコン5やふろリモコン7で設定されたふろ設定温度となるように、ふろ混合弁32の混合比率を調整する。こうしてふろ設定温度となった湯は、湯張り管35からふろ戻り管22を介して浴槽6へと湯張りされる。そして、湯張り管35途中に設けられたふろ流量カウンタ38が所定の湯張り量をカウントしたとき、給湯制御部44が湯張り弁37を閉弁し湯張り運転が終了する。
次に、図5を用いて、ふろの保温運転(あるいは追焚き運転)について説明する。前記の浴槽6への湯張り運転に引き続き、給湯制御部44は一定時間毎にふろ循環ポンプ21を駆動し、浴槽6内の浴槽水をふろ戻り管22を介して熱交換器19に流入させる。そして、熱交換器19において貯湯タンク2内の上部に貯められた高温水と熱交換して加熱された浴槽水は、ふろ往き管20を介して再び浴槽6へと流入する(保温運転あるいは追焚き運転)。このような運転中に、ふろ温度センサ23で検出する温度が前記ふろ設定温度に達すると、給湯制御部44はふろ循環ポンプ21を駆動停止し、これによって保温運転あるいは追焚き運転が終了する。
以上の基本構成及び作動である貯湯式給湯装置100において、貯湯タンク2の外周部には、保温のための断熱材が設けられる。貯湯タンク2及びその周囲の断熱材を表す模式断面図を図6に示す。なお、図示の煩雑を避けるために、貯湯タンク2に接続される各種配管及び熱交換器19等は省略している。図6に示すように、貯湯タンク2内に貯湯された湯水を保温するために、貯湯タンク2の側面の外周部に真空断熱材201が設けられ、さらにその径方向外側に、例えば適宜の発泡材により構成された成型断熱材202が設けられる。本実施形態の要部は、この真空断熱材201の設置範囲にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
既に述べたように、浴槽6や給湯栓4における湯水の使用により貯湯タンク2内の湯水が消費されると、タンク下端部に接続された給水管9により給水が行われることで、タンク内に貯湯される湯水が補給される。この結果、貯湯タンク2内の上部には前記高温水が貯湯される一方、下部には前記低温水が貯湯される(前記図3、図4等参照)。低温水側の貯湯タンク2の下部にまで高価な真空断熱材201を設けても保温対象が既に低温であることから効果が薄く、むしろ経済的な無駄が大きい。しかしながら逆に、貯湯タンク2の下部の広い範囲で真空断熱材201の配置を省略すると、保温効果が不足し、高温水の温度まで低下してしまう恐れがある。
そこで、本願発明者等は、上記を回避し、経済的な無駄の防止と必要な保温性能の確保との両立を図るための、適正な真空断熱材201の配置範囲について検討し、貯湯タンク2の側面の上端近傍からある一定の高さ(以下、「有効高さ」という)Lの範囲にのみ真空断熱材201を設けることが有効であるという知見を得た。すなわち、予め、ユーザーが浴槽6への給湯として湯水を使用する場合や給湯栓4において湯水を使用する場合の湯水使用パターンを想定しておき、前記有効高さLは、その湯水使用パターンに基づく貯湯タンク2内の貯湯状況(例えば、湯水の使用による高温水と低温水の境界水位の上下動)に対応して、設定するものである。
そして、本実施形態では、前記湯水使用パターンとして、JIS規格C 9220で規定された「家庭用ヒートポンプ給湯機の給湯モード性能試験」において経時的に想定されている1日の使用パターンを用いた。図7にその使用パターンの内容を示す。
図7に示すように、この規格では、パターン番号1〜56までの使用パターンのそれぞれについて、用途、使用開始時刻[時・分・秒]、給湯時の流量[リットル/分]、貯湯タンク2からの給湯量[リットル]、給湯熱量[メガジュール]、保温熱量[メガジュール]、が規定されている。この図7に示される全内容について同一用途の行為を集約したものを、図8に示す。
図8において、朝7:00など1日のうち複数のタイミングでの実行が想定されているパターン番号1,15,17,20のパターンが、ユーザーが洗面所で湯水を使用する(例えば洗顔、手洗い、うがい等)ときのパターン(以下適宜、「洗面パターン」という)である。例えば前記貯湯式給湯装置1においてこの洗面パターンが行われる際には、前記図3を用いて説明したように、ユーザーが前記給湯栓4を開くことで、貯湯タンク2の中間部から中間出湯管24を介し導かれた高温水と出湯管8を介して導かれた高温水とが中間混合弁25で混合され、さらに給湯混合弁28で給水バイパス管29からの低温水と混合されて、洗面所の給湯栓4からユーザーの手元に給湯される。
また、朝8:25など1日のうち複数のタイミングでの実行が想定されているパターン番号2,3,4,6,8,11のパターンが、ユーザーが台所仕事(例えば調理、皿洗い等)を行うときのパターン(以下適宜、「台所パターン」という)である。例えば前記貯湯式給湯装置1においてこの台所パターンが行われる際には、上述と同様、ユーザーが前記給湯栓4を開くことで、貯湯タンク2の中間部から中間出湯管24を介し導かれた高温水と出湯管8を介して導かれた高温水とが中間混合弁25で混合され、さらに給湯混合弁28において給水バイパス管29からの低温水と混合されて、台所の給湯栓4からユーザーの手元に給湯される。
一方、夜の19:40での実行が想定されているパターン番号5のパターンが、ユーザーが浴槽6への湯張りを行うときのパターン(以下適宜、「湯張りパターン」という)である。例えば前記貯湯式給湯装置1においてこの湯張りパターンが行われる際には、前記図4を用いて説明したように、ユーザーがふろ自動スイッチ42を操作することで、貯湯タンク2の中間部から中間出湯管24を介し導かれた高温水と出湯管8を介して導かれた高温水とが中間混合弁25で混合され、さらに中間給湯管27及び分岐中間給湯管33を経て、ふろ混合弁32において分岐給水バイパス管34からの低温水と混合されて、湯張り管35及びふろ戻り管22を介して浴槽6内へと供給される。
さらに、夜20:08など1日のうち複数のタイミングでの実行が想定されるパターン番号7,10,16,19のパターンが、ユーザーが浴室でシャワーを使用するときのパターン(以下適宜、「シャワーパターン」という)である。例えば前記貯湯式給湯装置1においてこのシャワーパターンが行われる際には、上述と同様、ユーザーが前記給湯栓4を開くことで、貯湯タンク2の中間部から中間出湯管24を介し導かれた高温水と出湯管8を介して導かれた高温水とが中間混合弁25で混合され、さらに給湯混合弁28において給水バイパス管29からの低温水と混合されて、浴室のシャワー用の給湯栓4からユーザーの頭上又は手元に給湯される。
前記貯湯式給湯装置1においては、以上のようにして、例えばユーザーによる各パターンによる給湯栓4の使用の指示や浴槽6への湯張り実行の指示に応じて、給湯制御部44が各混合弁における混合比率や各弁の開閉等を制御可能である。これにより、貯湯タンク2からの湯水を前記給湯栓4及び前記浴槽6の少なくとも一方に円滑かつ確実に供給することができる。
なお、夜20:27など1日のうち複数のタイミングでの実行が想定されているパターン番号9,12,13,14,18のパターンは、給湯がなく浴槽6内の湯水の保温運転が行われるときのパターン(以下適宜、「保温パターン」という)である。例えば前記貯湯式給湯装置1においてこの保温パターンが行われる際には、前記図5を用いて説明したように、給湯制御部44の制御により、一定時間毎に、浴槽6内の浴槽水が、ふろ戻り管22を介して熱交換器19に流入されて加熱された後にふろ往き管20を介し再び浴槽6へと流入することで循環する。
ここで、図8において、前記開始時刻及び前記給湯量が規定されている全パターンによる、1日の合計給湯量(言い替えれば、貯湯タンク2中の湯水の1日の合計消費量)は所定の給湯温度(この例では40℃)の湯水に換算した換算値で約460[リットル]となっているが、その中でも、パターン番号5の前記湯張りパターンの給湯量が180[リットル]であり最大である。そして、それより以前のパターン番号1〜4のパターンにおいては、7:00から19:40直前までの12時間余の間に、13.32[リットル]+34.16[リットル]+19.16[リットル]+22.48[リットル]≒90[リットル]程度しか使用されていない。これに対して、前記パターン番号5より後のパターン番号6〜20のパターンにおいては、12.50[リットル]+20.00[リットル]+7.49[リットル]+50.00[リットル]+3.32[リットル]+12.49[リットル]+20.00[リットル]+1.66[リットル]+50.00[リットル]+9.16[リットル]≒190[リットル]が使用されている。前記パターン5を含めたパターン番号5〜20のパターン全体で見ると、19:40から22:43までのわずか3時間余の間に、前記約460リットル中の約370リットル(約80%相当)が消費されることがわかる。
上記に鑑み、本願発明者等は、パターン番号1〜20の全パターンのうち、1日の給湯量(貯湯タンク2内の湯水の消費量)の大部分(約80%)を占める、前記パターン番号5〜20のパターン(言い替えれば、湯張りパターンの実行時を含むそれ以降の夜間帯の使用パターン)に対応させて、前記有効高さLを設定した。具体的には、以下の通りである。
まず、上述したように、貯湯タンク2内は、給湯栓4や浴槽6への給湯温度よりも高い温度の湯水が貯留されており、給湯時には混合により温度降下されて供給される。すなわち、給湯に必要な貯湯タンク2内の湯水量と、実際の給湯量とは異なる。したがって、実際の合計給湯量Q[リットル](前記の例では460リットル)の給湯を実現するために必要な貯湯タンク2内の湯水量QLは、目標とする給湯温度をT[℃](例えば40℃)、給水管9からの給水温度をTW[℃]、ヒートポンプユニット3による貯湯タンク2内の貯湯の沸き上げ温度をTH[℃]として、
QL=Q(T−TW)/(TH−TW) ・・ (式1)
で表される。なお、前記給水温度TW及び前記沸き上げ温度THは、QLの値が大きくなる冬期条件の値を用いることが好ましい。
そして、貯湯タンク2が略円筒形であるという前提にたつと、前記有効高さLは、(式1)で算出した貯湯タンク2内の湯水量QLに対し、貯湯タンク2の高さをLT[m](図6参照)、貯湯タンク2の内部容量をQT[リットル](図6参照)として、
L=QL×(LT/QT) ・・ (式2)
によって算出することができる。
なお、式(1)を式(2)に代入して1つの式でまとめると、
L={Q(T−TW)/(TH−TW)}×(LT/QT) ・・ (式3)
となる。
本実施形態では、上記のようにして算出した貯湯タンク2における前記有効高さLの範囲に前記真空断熱材201を配置することにより、経済的な無駄を省きつつタンク内に貯湯された湯水に必要な保温機能を確保できる、最適な真空断熱材の配置を実現できるものである。以下、この効果を、前記「家庭用ヒートポンプ給湯機の給湯モード性能試験」の冬期条件での前記パターン番号1〜20の全パターンが、経時的に実行される場合を例にとりつつ、比較例と対比させて具体的に説明する。なお、後述するように、第1比較例を図9を用いて説明し、第2比較例を図10を用いて説明し、それらと対比させて本実施形態を図11を用いて説明するが、説明の簡便化・貯湯特性の明確化のために、いずれの例でも、貯湯タンク2のタンク容量が前記1日の合計消費量(前述の例では、約460リットルに対応した貯湯量。約200リットル)に等しい場合を例にとって説明する。この場合、本実施形態では、前述したように、前記1日の全使用パターン(前記パターン番号1〜20の全パターン。以下単に「全パターン」という)が終了したときには、パターン番号1が始まる前の深夜時間帯に予め沸き上げが完了していた高温水を、すべて使い切ることとなる(後述の図11(h)参照)が、上記第1及び第2比較例では保温機能の差による湯水温度の違いによって貯湯タンク2内の湯水の消費量が本実施形態とは異なる結果、前記のような「ちょうど使い切る」状態とはならず、いわゆる「湯切れ」又は「湯余り」状態となる(後述の図9(h)及び図10(h)参照)。また、説明の簡便化のため、一例として、真空断熱材201がない部分についてはタンク壁面を介した放熱による貯湯タンク2内の湯水の温度降下を1℃/30分とし、真空断熱材201を介した放熱による貯湯タンク2内の湯水の温度降下は0℃/30分(すなわち実質的に放熱なし)とする。さらに、以下に示す温度の数値は、発明を簡単に説明するための一例であり、それらの数値に限られるものではない。
まず、本実施形態に対する第1比較例を図9により説明する。本実施形態と同等の部分には同一の符号を付している。図9(a)〜(h)に示すように、この第1比較例では、貯湯タンク2の側面の外周部のうち、上端部近傍から下方に向かって、タンク高さLTの1/2に等しい第1高さL1の範囲を覆うように(言い替えればタンク上半分を覆うように)、前記真空断熱材201が配置される。まず、図9(a)は、時刻0:00の状態を表しており、前日の23:59までに全パターンが終了したことで、貯湯タンク2内のすべてが、比較的低温(この例では10℃。以下同様)である前記低温水の領域アとなっている。この状態から、前述のようにしてヒートポンプユニット3による沸き上げ運転が開始され、比較的高温(この例では80℃。以下同様)である前記高温水の領域が貯湯タンク2内の上端部から徐々に広がっていく。
図9(b)は前記のようにして広がった高温水の領域がちょうどタンク2の上下方向中央部まで達した時刻2:30の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分が80℃の領域イとなっている。なお、貯湯タンク2の下半分については、引き続き10℃の領域ウとなっている。
その後、沸き上げ運転の継続によりさらに高温水の領域は下方へと広がるが、前述のように真空断熱材201がタンクの上半分しか設けられていないことから、下半分側まで広がった部分の高温水は放熱により温度が前記80℃よりも低下する。図9(c)はそのような時刻4:00の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分は引き続き80℃の領域エとなっているものの、その下方に位置する高温水の領域はやや温度が低下した領域オ、カ、キとなっている。これら3つの領域オ、カ、キのうち、領域キは最も早いタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当し、その分、80℃から最も温度が低下して77℃となっている。領域カは、その次のタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当し、80℃から温度が若干低下して78℃となっている。領域オは、さらにその次のタイミング(すなわち比較的直近のタイミング)で前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当し、80℃からわずかに温度が低下して79℃となっている。なお、77℃の領域キの下方には、引き続き10℃の領域クが存在している。
その後、沸き上げ運転の継続によりさらに高温水の領域は下方へと広がり、ついには貯湯タンク2内部の全域に及ぶ(=この例における沸き上げ運転の終了)。図9(d)はそのような時刻5:00の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分は引き続き80℃の領域ケとなっているものの、下半分の高温水の領域は、タンク底部から上方に向かって、前記3つの領域キ、領域カ、領域オがそのまま温度降下しつつ下方へ移動した領域セ(75℃)、領域ス(76℃)、領域シ(77℃)となり、さらにその上方が、比較的近いタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当する領域サ(78℃)と、それよりも遅れた比較的直近のタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当する領域コ(79℃)になっている。
そして、上記のように5:00で貯湯タンク2内の沸き上げが完了した状態で、前記使用パターンが経時的に順に実行される。図9(e)は朝8:30の状態を表しており、この時点では、前記図8に示したように、パターン番号1の洗面パターンとパターン番号2の台所パターンとが完了することで約47リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費され、対応する給水がタンク下方から行われる。この結果、真空断熱材201で覆われない貯湯タンク2の下半分のうちタンク下端近傍(例えばタンク全体の1/10程度)は前記給水による10℃の領域ナとなり、その上方は、タンク底部から上方に向かって、前記5つの領域セ、領域ス、領域シ、領域サ、領域コがそのまま温度降下しつつ上方へ移動した領域ト(68℃)、領域テ(69℃)、領域ツ(70℃)、領域チ(71℃)、領域タ(73℃)となっている。なお、領域タについては、上記の上方移動により新たに真空断熱材201の内部に位置するようになったことから、他の領域よりも温度降下量が小さくなっている。一方、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分のうち、前記領域タの上方に位置する大部分(例えばタンク全体の2/5程度)は引き続き80℃の領域ソとなる。
その後、さらに時間の経過と共に前記使用パターンが順に実行され、図9(f)は、前記湯張りパターンが実行される直前の夜19:30の状態を表している。この時点では、前記図8に示したように、前記図9(e)に示した状態から、さらにパターン番号3及び4の台所パターンが完了することでさらに約42リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費され、対応する給水がタンク下方から行われる。この結果、真空断熱材201で覆われない貯湯タンク2の下半分のうちタンク下端近傍から(タンク全体の)1/5程度の領域が前記10℃の領域フとなる。その上方は、タンク底部から上方に向かって、前記5つの領域ト、領域テ、領域ツ、領域チ、領域タがそのまま温度降下しつつ上方へ移動した領域ヒ(46℃)、領域ハ(47℃)、領域ノ(48℃)、領域ネ(56℃)、領域ヌ(73℃)となっている。なお、領域ネについては、上記の上方移動により新たに真空断熱材201の内部に位置するようになったことから、他の領域ヒ、ハ、ノよりも温度降下量が小さく、領域ヌについては、上記の上方移動中は常に真空断熱材201の内部に位置していることから、温度降下がなく73℃が維持されている。一方、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分のうち、前記領域ヌの上方の領域(例えばタンク全体の3/10程度)は引き続き80℃の領域ニとなっている。
その後、さらに時間の経過と共に前記使用パターンが順に実行され、図9(g)は、前記湯張りパターン及びその後の複数のパターンが実行された夜22:00の状態を表している。この時点では、前記図8に示したように、前記図9(f)に示した状態から、パターン番号5の湯張りパターンにより大きく貯湯量を消費し、さらにパターン番号6〜14に含まれる2回の台所パターン、2回のシャワーパターンが完了することで、さらに約273リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費され、対応する給水がタンク下方から行われる。この結果、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2のうち上端部近傍のみ(例えばタンク全体の1/10程度)が高温水を含む45℃の領域ヘ(領域ヒが温度降下しつつ上方へ移動したもの)となり、貯湯タンク2のうち残りの大部分は低温水からなる前記の10℃の領域ホとなる。
このとき、この第1比較例では、後述する本実施形態よりも貯湯タンク2内の湯水の温度分布が低くなっていることから、40℃換算での同一給湯量に対し消費するタンク内湯水の量が多い(比較的低温の湯水のため40℃給湯時の水との混合比が大きくなる)。この結果、後述の本実施形態とは異なり、上記から30分の時間が経過した夜22:30の状態で、図9(h)に示すように貯湯タンク2内のすべての高温水を使い切り、タンク内すべての部分が前記10℃の領域マとなる。この結果、これ以降のタイミングで実行される前記図8に示した残りのパターン番号19,20のシャワーパターン及び洗面パターンの実行時に、前記高温水を供給できない状態となる(いわゆる湯切れ状態)。
この第1比較例は、真空断熱材201が貯湯タンク2の上半分しか覆っていない構成である。この結果、前記図9(f)に示したように、前記1日の合計消費量のうち80%をこれから使用するという19:30のタイミングにおいて、高温水領域を構成する前記領域ニ、ヌ、ネ、ノ、ハ、ヒのうち、比較的長時間真空断熱材201の外に位置していた高温水による領域ネ、ノ、ハ、ヒの温度がそれぞれ56℃、48℃、47℃、46℃となり、沸き上げ完了時点の80℃から大きく低下してしまうという問題がある。この場合、例えば高温水の全領域ニ、ヌ、ネ、ノ、ハ、ヒのうち、50℃以上を維持しているのは領域ニ、ヌ、ネのみ(約62.5%)であり、60℃以上に限れば領域ニ、ヌのみ(約50%)となってしまう。また前記のタンク構成例では、前記湯切れ状態が起こってしまう問題もある。
次に、本実施形態に対する第2比較例を図10により説明する。本実施形態及び第1比較例と同等の部分には同一の符号を付している。図10(a)〜(h)に示すように、この第2比較例では、貯湯タンク2の側面の外周部のうち、上端部近傍から下端近傍までのほぼ全域となる高さL2の範囲に(言い替えればタンク側面の略全域を覆うように)、前記真空断熱材201が配置される。まず、図10(a)は、前記図9(a)と同様、時刻0:00の状態を表しており、貯湯タンク2内のすべてが、例えば10℃の領域ミとなっている。
図10(b)は、前記図9(b)と同様、沸き上げ後の時刻2:30の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分が80℃の領域ムとなり、貯湯タンク2の下半分については引き続き10℃の領域メとなっている。
その後、前記図9(c)と同様、沸き上げ運転の継続により高温水の領域がさらに下方へと広がるが、この第2比較例では前記第1比較例と異なり前述のように真空断熱材201がタンク側面の略全域に設けられていることから、下半分側まで広がった部分の高温水も保温され前記80℃が維持される。図10(c)はそのような前記時刻4:00の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の大部分(例えば4/5程度)が80℃の領域モとなり、その下方に、引き続き10℃の領域ヤが存在している。
その後、前記図9(d)と同様、沸き上げ運転の継続によりさらに高温水の領域は貯湯タンク2内部の全域に及ぶ(沸き上げ運転の終了)。図10(d)はそのような前記時刻5:00の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の全域が80℃の領域ユとなっている。
そして、前述と同様、このように貯湯タンク2内の沸き上げが完了した状態で前記使用パターンが順に実行される。図10(e)は、前記図9(e)と同様、朝8:30の状態を表しており、前記約47リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費される結果、貯湯タンク2のタンク下端近傍は前記給水による10℃の領域ラとなり、その上方の大部分(例えばタンク全体の9/10程度)の領域が前記真空断熱材201の保温機能により引き続き80℃の領域ヨとなる。
その後、前述と同様、前記使用パターンがさらに順に実行される。図10(f)は、前記図9(f)と同様の夜19:30の状態(湯張りパターンが実行される直前)を表しており、前記約42リットルの給湯量に対応するタンク内湯量の消費により、貯湯タンク2のタンク下端の例えばタンク全体の1/5程度までの領域は前記給水による10℃の領域ルとなり、その上方のタンク全体の4/5程度の領域が前記真空断熱材201の保温機能により80℃の領域リとなる。
その後、前述と同様、さらに前記使用パターンが順に実行される。図10(g)は、前記図9(g)と同様の夜22:00の状態を表しており、前記湯張りパターン等によりさらに約273リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費されることにより、貯湯タンク2のうち上端の例えばタンク全体の1/5程度までの領域が前記真空断熱材201の保温機能により80℃の領域レとなり、貯湯タンク2のうち残りの大部分は前記の10℃の領域ロとなる。
このとき、この第2比較例では、前記第1比較例よりも貯湯タンク2内の湯水の温度分布が高くなっていることから、40℃換算での同一給湯量に対し消費するタンク内湯水の量が少ない(比較的高温の湯水のため40℃給湯時の水との混合比が小さくなる)。この結果、前記第1比較例のように上記から30分の時間が経過した夜22:30の状態で貯湯タンク2内のすべての高温水を使い切ることはない。しかしながら、この第2比較例では、さらに後述する本実施形態よりも貯湯タンク2内の湯水の温度分布が高くなっている。この結果、22:30からさらに時間が経過して前記パターン番号15〜18に含まれる2回の洗面パターン、1回のシャワーパターンが完了し、約34リットルの給湯量に対応するタンク内湯量がさらに消費された夜23:00の状態(本実施形態ではこのタイミングですべての高温水を使い切る。後述を参照)において、図10(h)に示すように、貯湯タンク2のうち大部分は前記の10℃の領域ヲとなるものの、貯湯タンク2のうち上端近傍(例えばタンク全体の1/10程度までの領域)に高温水である80℃の領域ワが残存してしまう(いわゆる湯余り状態)。
この第2比較例は、真空断熱材201が貯湯タンク2の側面の略全域を覆う構成である。この結果、前記第1比較例の前記図9(f)とは異なり、前記1日の合計消費量のうち80%をこれから使用するという19:30のタイミングにおいても、図10(f)に示すように、タンク内の大部分の領域を、80℃が維持された領域リとすることができる。しかしながら、図10(e)に示す下端部近傍の領域ラについては、この時点(朝8:30)で既に10℃の低温となっているにも係わらず、それ以降の長時間(沸き上げ開始までの例えば十数時間)、真空断熱材201によってあまり意味のない(効果が薄い)保温が行われるようになっている。また図10(f)の19:30のタイミングで見ても、これから使用する前記1日の合計消費量の80%分とはならない10℃の領域ルについて、上記同様の効果が薄い保温が行われるようになっている。一般に、真空断熱材201は高価なものであるため、前記のような効果が薄い部位に配置しても、経済的な無駄が多くなるだけである。また前記のタンク構成例では、前記湯余り状態が起こってしまう問題もある。
これに対して、本実施形態の構成では、前記第1及び第2比較例の問題を回避することができる。このことを、前記図9(a)〜(h)及び図10(a)〜(h)に対応する図11(a)〜(h)により説明する。なお、本実施形態では、前記有効高さLが貯湯タンク2の前記高さLTの1/2よりも大きく、かつ前記高さLTよりは小さい場合を例に取っている。
まず、図11(a)は、前記図9(a)及び図10(a)と同様、時刻0:00の状態を表しており、貯湯タンク2内のすべてが、10℃の領域Aとなっている。
その後、前記沸き上げ運転により、時刻2:30の状態では、前記図9(b)及び図10(b)と同様、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の上半分が80℃の領域Bとなっている。なお、貯湯タンク2の下半分については、引き続き10℃の領域Cとなっている。
本実施形態では、真空断熱材201が、図9(c)や図10(c)とは異なり、タンク上端部から前記有効高さLの範囲まで(言い替えれば、後述の19:30の時点での高温水領域の下端部と同じ高さまで)設けられている。前記図11(b)の状態の後、前記沸き上げ運転の継続により高温水の領域が下方へと広がり、その下端部が、ちょうど前記真空断熱材201の下端部の位置に達する。図11(c)はそのようなタイミング(この例では前記時刻4:00)の状態を表しており、前記真空断熱材201で覆われた、貯湯タンク2内の前記有効高さLの範囲が、引き続き80℃が維持された領域Dとなり、領域Dの下方に、引き続き10℃の領域Eが存在している。
その後、さらに高温水の領域は真空断熱材201の下端を超えて下方へと広がり、前記沸き上げ運転の終了時に貯湯タンク2内部の全域に及ぶ。図11(d)は、図9(d)及び図10(d)と同様、前記時刻5:00の状態を表している。前記真空断熱材201で覆われた部分は引き続き80℃の領域Fとなり、その下方は高温水の領域である領域G,Hとなっている。これら2つの領域G,Hのうち、領域Hは最も早いタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当し、その分、80℃から温度が若干低下して78℃となっている。領域Gは、その次のタイミングで前記真空断熱材201の範囲外に逸脱した湯水の領域に相当し、80℃から温度がわずかに低下して79℃となっている。
そして、前述と同様、貯湯タンク2内の沸き上げが完了した状態で前記使用パターンが順に実行される。図11(e)は、前記図9(e)及び図10(e)と同様、朝8:30の状態を表しており、前記約47リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費される結果、真空断熱材201で覆われない貯湯タンク2の下端近傍(例えばタンク全体の1/10程度の領域)は前記給水による10℃の領域Lとなり、その上方は、タンク底部から上方に向かって、前記2つの領域H、領域Gがそのまま温度降下しつつ上方へ移動した領域K(71℃)、領域J(73℃)となっている。なお、領域Jについては、上記の上方移動により新たに真空断熱材201の内部に位置するようになったことから、領域Kよりも温度降下量が小さくなっている。一方、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2内の前記有効高さLの範囲のうち、前記領域Jの上方に位置する残りの大部分は引き続き80℃が維持された領域Iとなる。
その後、前述と同様、前記使用パターンがさらに順に実行される。図11(f)は、前記図9(f)及び図10(f)と同様の夜19:30の状態を表している。本実施形態では、前述の式(3)を用いた有効高さLの設定により、前記約42リットルの給湯量に対応するタンク内湯量の消費に対応して上方へ広がる、前記給水による前記10℃の領域Qの上端部が、前記真空断熱材201の下端部に略一致する。この例では、貯湯タンク2のタンク下端近傍からタンク全体の1/5程度の領域(前述のタンク高さLT−有効高さLの範囲に相当)が、前記領域Qとなっている。一方、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の前記有効高さLの範囲のうち、前記領域Qの上方には、タンク底部から上方に向かって、前記2つの領域K、領域Jがそのまま温度降下しつつ上方へ移動した領域P(56℃)、領域N(73℃)となっている。なお、領域Nについては、上記の上方移動中において常に真空断熱材201の内部に位置していることから温度降下がなく温度が73℃に維持されており、領域Pについては、上記の上方移動により新たに真空断熱材201の内部に位置するようになったことから、8:30から長時間(11時間)が経過している割には温度降下量が比較的小さくなっている。そして、前記真空断熱材201で覆われた貯湯タンク2の残りの部分(例えばタンク全体の3/5程度)は引き続き80℃の領域Mとなる。
その後、前述と同様、さらに前記使用パターンが順に実行される。図11(g)は、前記図10(g)及び図9(g)と同様の夜22:00の状態を表しており、前記湯張りパターン等によりさらに約273リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費されることにより、貯湯タンク2のうち上端部近傍のみが高温水の領域となる。すなわち、タンク頂部から下方に向かって、前記2つの領域N、領域Pがそのまま温度降下しつつ上方へ移動した領域R(73℃)、領域S(56℃)となっている。貯湯タンク2のうち残りの大部分(例えばタンク全体の4/5程度)は低温水からなる前記の10℃の領域Tとなる。
そしてさらに時間が経過した夜23:00の状態では、前記図11(g)に示した状態から、さらに前記約34リットルの給湯量に対応するタンク内湯量が消費されることで、図11(h)に示すように、タンク内すべての部分がちょうど前記10℃の領域Uとなる(前述の高温水を使い切った状態)。
本実施形態では、前記第1比較例の図9(f)とは異なり、前記1日の合計消費量のうち80%をこれから使用するという19:30のタイミングにおいても、図11(f)に示すように、前記合計消費量に対応した有効高さLの範囲内の大部分を占める領域Mを80℃で維持し、下方の残りの領域N,Pについても、比較的高い73℃及び56℃に維持することができる。例えば高温水の全領域M,N,Pのうち、50℃以上を維持しているのは全領域M,N,P(100%)であり、60℃以上に限っても領域M,Nが該当する(約87.5%)。また前記湯切れ状態や湯余り状態も起こらない。そしてこのとき、前記有効高さLの範囲外には真空断熱材201を設けないようにすることにより、前記第2比較例の図10(e)及び図10(f)で説明したようなあまり意味のない保温を実行しないようにして経済的な無駄を回避することができる。
以上説明したように、本実施形態の貯湯式給湯装置100によれば、貯湯タンク2の側面の上端近傍から有効高さL分にのみ、真空断熱材201を設ける。その際、ユーザーの湯水使用パターンに基づく貯湯タンク2内の貯湯状況に対応して、前記有効高さLを設定する。これにより、経済的な無駄を省きつつ、貯湯タンク2内に貯湯された湯水に必要な保温機能を確保できる、最適な真空断熱材201の配置を実現することができる。
また、本実施形態では特に、前記湯水使用パターンとして、経時的に想定される、洗面用、台所用、及びシャワー用それぞれの給湯栓4の使用パターンと、前記浴槽6への湯張り用の使用パターンとを含む、JIS C 9220で規定された、家庭用ヒートポンプ給湯機の給湯モード性能試験において想定されている使用パターンを用いる。これにより、JIS規格により想定された、一般の家庭ユーザーによる、洗顔するための湯水の使用や、台所仕事のための湯水の使用や、シャワーを浴びるための湯水の使用や、入浴前の浴槽への湯張りのための湯水の使用に対応した前記有効高さLにより、最適な真空断熱材201の配置を実現できる。
また、本実施形態では特に、前記有効高さLを、前記給湯モード性能試験で想定される1日の使用パターンのうち、前記浴槽6への湯張りが行われる時刻(すなわち夜19:40)を含みそれ以降の夜間帯において消費される、貯湯タンク2内の貯湯量に対応した高さ寸法とする。これには以下の意義がある。すなわち、前記JIS規格による想定によれば、1日における家庭ユーザーの湯水の使用においては、浴槽6への湯張り以降の夜間帯(19:40以降の時間帯)において使用される湯水が、1日全体で使用される湯水の大部分(約80%)を占めている。そこで、前記有効高さLを、前記夜間帯において消費される貯湯タンク2内の貯湯量に応じて設定する。具体的には、L={Q(T−TW)/(TH−TW)}×(LT/QT)の式を用いて設定する。これにより、給湯温度、給水温度、沸き上げ温度の具体的な値と、貯湯タンク2の具体的な大きさ・形状とに応じて、経済的な無駄を省きつつ、前記大部分の湯水に対する真空断熱材201による確実な保温機能を確実に実現することができる。
また、本実施形態では特に、前述の図6に示したように、前記真空断熱材201のない部分(前記有効高さLの範囲よりも下方側の部分)には、単位厚さ当たりの断熱性能が劣る発泡材による成型断熱材202のみが配置されている。このとき、上述したように前記大部分の湯水に対して前記真空断熱材201によって確実な保温機能を実現できるため、その真空断熱材201のない部分の成形断熱材202の厚さ(貯湯タンク2の径方向における厚さ)を薄くすることができる。この結果、貯湯タンクユニット1全体の小型化を実現することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、想定される湯水使用パターンとして、JIS C 9220で規定された、家庭用ヒートポンプ給湯機の給湯モード性能試験において想定されている使用パターンを例にとって説明したが、これに限られない。JIS規格の他の内容の使用パターンに対応させて前記有効高さLを設定しても良いし、あるいはJIS規格ではない、ユーザーの給湯使用に関する何らかのモデルにおいて想定された使用パターンを用いて前記有効高さLを設定しても良い。いずれの場合も、想定されるパターンにおいて、ユーザーによる湯水使用量が最も多くなる時間帯を特定し、その時間帯に突入する直前において確実に当該時間帯で使用されるのに十分な量の高温の湯水が確保できるよう、前記有効高さLを設定すればよい。
また、上記実施形態では、熱交換器19が貯湯タンク2内部に設置した内熱交方式である場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、貯湯タンク2の外部でタンク内の湯水と浴槽水とが熱交換する外熱交方式の熱交換器を用いてもよい。
また、上記実施形態では、加熱手段をヒートポンプユニット3で構成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、太陽熱、ガス、液体燃料による給湯機や、電熱ヒータによる電気温水器や、コージェネレーションシステムの廃熱回収装置等を前記加熱手段として用いても良い。