JP2016124813A - 軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤 - Google Patents

軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】安全で低浸襲に関節破壊を抑制することができる軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤を提供する。
【解決手段】軟骨変性抑制剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む。この場合、前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、オルセゲパントであってもよい。あるいは、前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド抗体であってもよい。また、変形性関節症抑制剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む。
【選択図】図7

Description

本発明は、軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤に関する。
関節破壊をきたす代表的な疾患である変形性関節症(OA)は、はかり知れない苦痛と運動機能障害をもたらす。日本では、総人口125,000万人のうちOAの患者数は1,200万人であって、要治療者は700万人と言われている。しかし、OAの原因は解明されておらず、OAの進行を防ぐ薬剤は存在しない。このため、OAの進行例に対して人工関節置換術などの手術療法を行っているのが現状である。また、OAに対する保存療法として、筋力訓練および可動域訓練といったリハビリテーション、温熱治療などの物理療法、装具療法、ヒアルロン酸の関節内投与、各種消炎鎮痛剤の投与が行われている。原発性のOAだけでなく、半月板損傷または切除後、あるいは外傷後においてもOAは発生する。さらに、これからの高齢化社会を考えると対象となる患者数は相当数になると考えられる。
関節軟骨は一旦損傷すると自己修復することができない。したがって、これまで、軟骨に焦点をあてた研究が多くなされてきた。その一方で、軟骨を支える軟骨下骨の重要性が認識されてきている。軟骨下骨は、軟骨の恒常性に重要な役割を担っている。軟骨下骨の変化が軟骨変性に影響を与えているという報告もある。実際のOA患者では、OAの進行により軟骨下骨の骨硬化および骨棘形成といった変化がみられる。初期のOAでは、まず軟骨下骨の骨硬化がみられる。
近年、感覚神経が骨代謝を制御していることが明らかとなった。神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene−related peptide;CGRP)は、骨芽細胞分化・増殖の促進、破骨細胞分化の抑制に重要な役割を担うことが示されている。CGRPの発現は、疼痛において増加し、OAの疼痛にも重要な役割を担うことが示されている。
非特許文献1には、CGRP抗体を投与したOAモデルラットを用いたOAにおける疼痛に関する研究が開示されている。また、OAでの軟骨下骨の変化を制御することで、OAの進行を抑制するという試みが報告されている。例えば、非特許文献2には、骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネートを、実際にOAの患者に投与した臨床試験の結果が開示されている。
Benschop RJ、外16名、「Development of a novel antibody to calcitonin gene−related peptide for the treatment of osteoarthritis−related pain.」、Osteoarthritis Cartilage、2014、22(4)、578−585 Nishii T、外4名、「Alendronate treatment for hip osteoarthritis: prospective randomized 2−year trial.」、Clinical Rheumatology、2013、32(12)、1759−1766
しかし、上記非特許文献1では、CGRP抗体のOAにおける疼痛に対する効果が評価されており、CGRP抗体のOAにおける骨代謝および軟骨変性への影響については評価されていない。したがって、OAの軟骨変性を抑制できる薬剤はいまだ見出されていない。また、上記非特許文献2によれば、臨床試験の結果、ビスフォスフォネートはOAの進行を抑制できなかった。
進行性の疾患であるOAを初期の段階で薬剤によって抑制できれば、手術療法が減り、患者への恩恵のみならず医療経済的効果も大きい。したがって、OAに対して安全で低浸襲に投与できる薬剤の開発が急務である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、安全で低浸襲に関節破壊を抑制することができる軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤を提供することを目的とする。
発明者は、初期のOAにおける骨硬化、特に軟骨下骨の硬化を防ぐことができれば、軟骨変性の進行、ひいては関節変性症が抑制できるものと考え、鋭意研究を重ねた。その結果、本発明を完成させた。すなわち、
本発明の第1の観点に係る軟骨変性抑制剤は、
カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む。
この場合、前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、
オルセゲパントである、
こととしてもよい。
また、前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、
カルシトニン遺伝子関連ペプチド抗体である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係る変形性関節症抑制剤は、
カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む。
本発明によれば、安全で低浸襲に関節破壊を抑制することができる。
OAモデルマウスのサフラニン−O染色された膝関節切片の画像を示す図である。 OAモデルマウスの変形性関節症スコアを示す図である。 OAモデルマウスの軟骨下骨の面積の割合を示す図である。 OAモデルマウスのオステオカルシンを染色した膝関節切片の画像および骨髄細胞におけるオステオカルシン陽性細胞の割合を示す図である。 OAモデルマウスの酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)を染色した膝関節切片の画像および単位面積当たりのTRAP陽性細胞の個数を示す図である。 OAモデルマウスのCGRPを標識した膝関節切片の画像および視野の総面積に対するCGRP陽性領域の割合を示す。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスのサフラニン−O染色された膝関節切片の画像を示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスの変形性関節症スコアを示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスのマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)13を染色した膝関節切片の画像を示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスにおける軟骨細胞中のMMP13陽性細胞の割合を示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスの軟骨下骨の面積の割合を示す図である。 マイクロコンピューター断層撮影(μCT)で得られた画像および内側骨端(A)の長さと外側骨端(B)の長さとの比を示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスのオステオカルシンを染色した膝関節切片の画像および骨髄細胞におけるオステオカルシン陽性細胞の割合を示す図である。 BIBN4096を投与したOAモデルマウスのTRAPを染色した膝関節切片の画像および単位面積当たりのTRAP陽性細胞の個数を示す図である。 培養細胞におけるオステオカルシンの発現量およびALP活性を示す。 TRAPを染色した培養細胞の画像を示す図である。 培養細胞におけるTRAP陽性細胞の個数を示す図である。 リセドロネートを投与したOAモデルマウスのサフラニン−O染色された膝関節切片の画像を示す図である。
本発明に係る実施の形態について説明する。
(実施の形態)
実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態に係る軟骨変性抑制剤は、CGRP受容体拮抗剤を含む。CGRP受容体は、GPCR calcitonin receptor−like receptor(CLR)、Receptor Activity Modifying Protein(RAMP)および細胞内のReceptor Component Protein(RCP)から構成されるヘテロ三量体タンパク質である。37個のアミノ酸からなるペプチドであるCGRPがCGRP受容体に結合すると、細胞内のcAMPが増加し、血管拡張などの作用をもたらす。
CGRP受容体拮抗剤は、CGRPに拮抗して、CGRPとCGRP受容体との相互作用を阻害し、CGRP受容体からのシグナルを遮断する任意の物質である。CGRP受容体拮抗剤は、CGRPとCGRP受容体との相互作用を直接的、あるいは間接的に抑制するあらゆる物質、例えば、合成物、天然物、ペプチド、抗体およびアプタマーなどの核酸を含む。CGRP受容体拮抗剤としては、例えば、オルセゲパント(BIBN4096)、テルカゲパント(MK−0974)およびMS−694153などが挙げられる。また、CGRP受容体拮抗剤としてベンゾジアゼピンCGRP受容体拮抗物質(例えば、国際公開第2005/013894号参照)を用いてもよい。
CGRP受容体拮抗剤は、公知の方法で合成してもよいし、市販のものを使用してもよいし、化合物ライブラリに含まれる化合物の中から、CGRP受容体拮抗作用を有する化合物として選択した化合物であってもよい。CGRP受容体拮抗作用を有する化合物の選択には、既知の方法、例えば、ヒトCGRP受容体を発現する細胞を用いた受容体結合アッセイなどを利用できる。CGRP受容体を発現する細胞は、遺伝子組み換え技術により作製できる。例えば、当該細胞から公知の方法で膜を単離し、放射性ヨウ素で標識したヒトCGRPおよび被験物質を、単離した膜とインキュベーションした後に、放射性ヨウ素に基づいて膜画分に含まれるヒトCGRPを定量することで、CGRP受容体拮抗作用を有する化合物を選択できる。
CGRP受容体拮抗剤は、CGRPに相互作用することでCGRPとCGRP受容体との相互作用を阻害する物質でもよい。したがって、CGRP受容体拮抗剤は、例えば、ALD403およびLY2951742などのCGRP抗体であってもよい。なお、公知の抗体作製方法で、CGRPに対する抗体を作製してもよい。
本実施の形態に係る軟骨変性抑制剤は、有効成分として上記CGRP受容体拮抗剤を含む。当該軟骨変性抑制剤は、公知の方法で製造される。上記軟骨変性抑制剤の剤形は、限定されないが、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、直腸坐剤、膣坐剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経肺吸収剤および口腔内吸収剤などである。当該軟骨変性抑制剤は、例えば、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、製剤素材として用いられる各種の有機担体物質または無機担体物質である。また、当該軟骨変性抑制剤には、白糖、緩衝剤などの薬理的に許容される添加剤が含まれてもよい。必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの添加物を用いることもできる。
本実施の形態に係る軟骨変性抑制剤は、下記実施例1に示すように、軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性を抑制する。そこで、当該軟骨変性抑制剤は、好ましくは軟骨変性疾患の患者に投与される。軟骨変性抑制剤の投与方法は任意であるが、好ましくは経口投与または静脈内注射である。当該軟骨変性抑制剤の投与量は、患者の体重、病態など患者の状態に応じて適宜調整されるが、有効成分であるCGRP受容体拮抗剤の1日の投与量にして1人あたり0.1mg〜1g、または1〜100mg、好ましくは2.5〜10mgである。もちろん、投与回数、投与間隔などの投与方法は、患者の状態を見ながら、適宜調整することができる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る軟骨変性抑制剤は、軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性を抑制する。軟骨には血管がなく、軟骨変性抑制剤の患部への効率的な輸送が問題となり得るが、軟骨下骨には血管があるため、当該軟骨変性抑制剤は、血行を介して軟骨下骨に到達でき、薬効が効率よく得られる。したがって、当該軟骨変性抑制剤は、安全で低浸襲に関節破壊を抑制することができる。
また、上記軟骨変性抑制剤は、上記CGRP受容体拮抗剤としてオルセゲパントを含んでもよいこととした。オルセゲパントは、偏頭痛の治療薬として臨床試験で使用されているため、患者に安全に投与できる。
また、別の実施の形態では、軟骨変性抑制剤として使用するためのCGRP受容体拮抗剤が提供される。他の実施の形態は、軟骨変性抑制剤の製造のためのCGRP受容体拮抗剤の使用である。さらに別の実施の形態では、CGRP受容体拮抗剤を投与する工程を含む、軟骨下骨の骨硬化を抑制する方法、またはCGRP受容体拮抗剤を投与する工程を含む、軟骨変性を抑制する方法が提供される。さらに他の実施の形態では、CGRP受容体拮抗剤を、軟骨疾患の患者に投与する工程を含む、軟骨疾患の治療方法が提供される。
下記実施例1に示すように、CGRP受容体拮抗剤は、軟骨下骨の骨硬化を抑制する。軟骨下骨の骨硬化は、上述のように、実際のOA患者において、OAの進行とともに見られる。このため、上記CGRP受容体拮抗剤は、変形性関節症抑制剤に有効成分として含まれてもよい。
別の実施の形態では、変形性関節症抑制剤として使用するためのCGRP受容体拮抗剤が提供される。他の実施の形態は、変形性関節症抑制剤の製造のためのCGRP受容体拮抗剤の使用である。さらに別の実施の形態では、CGRP受容体拮抗剤を、変形性関節症の患者に投与する工程を含む、変形性関節症の治療方法が提供される。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例のすべての結果は、平均値±標準偏差で示した。3群または4群の比較は、Turkey−Kramer post hoc検定で行った。2群間の差の検出には、Mann Whitney U検定を用いた。P値が0.05未満の場合を統計的に有意であるとした。
(実施例1:CGRP受容体拮抗剤の軟骨変性抑制作用の検討)
以下の手順でOAモデルマウスを作製した。まず、10週齢のC57/BL6マウスの右膝関節の内側側副靭帯を切離するOA手術を行った。軟骨下骨の早期変化を評価するために、OA手術を施したマウスを過剰量の麻酔で2日後および7日後に安楽死させた(各時点においてn=6)。擬似手術(sham)を施したマウスも同様に安楽死させた(n=6)。
OAの進展に対するCGRP受容体拮抗剤の効果を調べるために、OA手術後に、オルセゲパント(BIBN4096、Tocris Bioscience社製)を0.6mg/kg/100μlの投与量で、腹腔内に注射することでマウスに投与した。コントロール群には、同じ投与量でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与した。
注射から1週間後、4週間後および8週間後に、膝関節を回収し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定後、μCTおよび組織学的評価を行った。μCTでは、4%PFAでの24時間の固定後、高解像度μCT装置(SkyScan1176、東洋テクニカ社製)を、マニュアルに従って用いて検体を解析した。得られた画像を再構成し、sham、コントロール群およびBIBN4096投与群について、内側骨端の長さおよび外側骨端の長さを算出した。
上記の4%PFAで固定した膝関節を20%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で2週間かけて脱灰し、パラフィンに包埋した。膝関節の内側区画の中央の荷重負荷領域から採取された4μmの厚さの矢状切片を組織学的評価のために作製した。サフラニン−O ファストグリーン法で切片を染色し、内側大腿顆および脛骨プラトーにおける病理学的変化を、マウスにおける関節変性症における膝軟骨の評価に関するOARSI(Osteo Arthritis Research Society International)勧告に基づいて評価した。
各切片に関して、内側プラトーの骨端における軟骨下骨の面積/組織の面積(BT/TV、%)を、画像解析装置(BZ−9000、キーエンス社製)を用いて測定した。他の切片を、免疫組織化学およびTRAP染色に使用した。TRAP染色には、和光純薬工業社製のキットをマニュアルに従って用いた。軟骨下骨の骨端におけるTRAP陽性細胞を各切片について計数した。
免疫組織化学評価では、まず、パラフィンに包埋した膝関節の切片を、キシレン置換ro−Par Clearant(Anatech社製)で脱パラフィン処理し、段階希釈されたエタノールおよび水で戻した。抗原脱マスキングでは、10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中の切片を電子レンジで加熱し、1.5分間、80〜85℃で維持した。抗原脱マスキングの後、スライドを室温で20分間冷却した。PBSで洗浄後、5%血清を用いて、30分間室温で切片をブロックした。
続いて、抗CGRP抗体(50倍希釈、Abcam社製)、抗オステオカルシン抗体(2000倍希釈、タカラバイオ社製)および抗MMP13抗体(50倍希釈、BD Bioscience Pharmingen社製)を、4℃で一晩、切片とインキュベートした。PBSで洗浄後、切片をビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体と室温で30分間インキュベートした。なお、CGRPに対する二次抗体としては、Alexa Fluor 488−コンジュゲーティッド抗ウサギIgG(Molecular Probes;Invitrogen社製)を用いた。
次に、Vectastain ABC−APアルカリフォスファターゼ(Vector Laboratories社製)を用いて切片を30分間インキュベートした。スライドを洗浄し、切片をアルカリフォスファターゼ基質と20〜30分間インキュベートした。
免疫組織化学シグナルは、次のように定量した。骨形成解析に関しては、軟骨下骨の骨端における骨髄細胞の総数を計数し、オステオカルシン陽性細胞の割合を算出した。CGRP発現に関しては、軟骨下骨の骨端の5箇所の視野を無作為に選択し、ImageJソフトウェア(国立衛生研究所)を用いて、200倍拡大下で各CGRP陽性領域を測定した。ここでは、各視野の総面積に対するCGRP陽性領域の割合を算出した。MMP13の発現に関しては、400倍拡大下で切片の4枚の写真を撮影し、各写真について切片の関節軟骨にみられる全軟骨細胞中のMMP13陽性細胞の個数を計数した。
(結果)
図1は、OAモデルマウスの膝関節から作製した切片の画像を示す。内側側副靭帯を切離したOAモデルマウスでは、2日、7日と経時的に軟骨下骨の骨形成が進み、骨髄腔の減少がみられた。また、OAモデルマウスでは、経時的に軟骨変性が進行していた。なお、以下で説明する図中のバーは100μmの長さを示す。
OAモデルマウスの脛骨および大腿骨に関して、OAの程度を示すOARSIスコアを図2に示す。OAモデルマウスでは、経時的に、脛骨および大腿骨の両方でOAが統計的に有意に進行していた。図3は、OAモデルマウスの組織の面積に対する軟骨下骨の面積の割合を示す。膝関節が正常なshamと比較して、7日目では、軟骨下骨の面積が増加していた。
図4は、免疫組織化学評価において、オステオカルシンを染色したOAモデルマウスの膝関節の切片の画像および骨髄細胞に対するオステオカルシン陽性細胞の割合を示す。OAが進行するにつれて、軟骨下骨の骨髄腔が減少した。また、オステオカルシン陽性細胞、すなわち骨芽細胞の割合が有意に増加していた。図5は、免疫組織化学評価において、TRAPを染色したOAモデルマウスの膝関節の切片の画像および単位面積あたりのTRAP陽性細胞の個数を示す。2日目では、TRAP陽性細胞、すなわち破骨細胞の個数が増加するが、7日目に減少していた。図6は、軟骨下骨におけるCGRPを標識した膝関節切片の画像と各視野の総面積に対するCGRP陽性領域の割合を示す。OAモデルマウスの軟骨下骨において、CGRPの発現が経時的に増加していた。
OAモデルマウスにBIBN4096を投与した場合の膝関節切片の画像を図7に示す。コントロール群では、1、4、8週と経時的に軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性が進行していた。一方、BIBN4096投与群では、軟骨下骨の骨硬化は軽度で、軟骨変性の進行も軽度であった。図8は、コントロール群およびBIBN4096投与群のOARSIスコアを示す。BIBN4096投与群では、OARSIスコアが有意に低値を示した。
OAモデルマウスの膝関節切片における軟骨変性マーカーMMP13の発現を図9に示す。コントロール群に比較して、BIBN4096投与群におけるMMP13の発現は少なかった。図10に示すように、BIBN4096投与群における軟骨細胞中のMMP13陽性細胞の割合は、コントロール群に対して有意に少なかった。図11は、BIBN4096投与群における組織の面積に対する軟骨下骨の面積の割合を示す。軟骨下骨の骨量は、コントロール群と比較して、1、4および8週目においても有意に小さいことが示された。
μCTによる解析で得られた画像および内側骨端の長さと外側骨端の長さとの比を図12に示す。コントロール群では、脛骨内側顆の骨硬化を認め、切離した内側骨端の長さが短くなっていた。一方、BIBN4096投与群では、脛骨内側顆の骨硬化が認められず、内側骨端の長さはshamと同程度であった。
図13は、BIBN4096投与群において、オステオカルシンを染色した膝関節の切片の画像および骨髄細胞に対するオステオカルシン陽性細胞の割合を示す。BIBN4096投与群における骨芽細胞の割合は、コントロール群と比較して有意に小さかった。図14は、TRAPを染色したBIBN4096投与群の膝関節の切片の画像および単位面積あたりのTRAP陽性細胞の個数を示す。BIBN4096投与群における破骨細胞の個数は、コントロール群と比較して有意に増加していた。
(実施例2:骨形成に対するBIBN4096の影響)
第2継代および第3継代のヒト骨髄間葉幹細胞(MSC)(Life Technologies社製)を、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むMSC成長培地(StemPro MSC SFM、Life Technologies社製)で増殖させた。第4継代のMSCを12穴プレートに播種し、骨形成を誘導した。10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む骨形成誘導培地(StemPro osteogenesis differentiation kit、Life Technologies社製)を、1週間に2回交換し、21日間インキュベートした。なお、100nMのCGRP(ペプチド研究所製)をさらに含む骨形成誘導培地、および100nMのCGRPとBIBN4096とをさらに含む骨形成誘導培地でも同様に骨形成を誘導した。
21日間のインキュベート後、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析のために、Trizol(Life Technologies社製)を用いてRNAを単離した。そして、アルカリフォスファターゼ活性の評価のためにタンパク質を抽出した。
リアルタイムPCR解析では、まず、Superscript VLIO kit(Invitrogen社製)をマニュアルに従って用いて、1μgの全RNAから相補的DNAを合成した。リアルタイムPCRのプローブには、Taqman Gene Expression Assays probes(Life Technologies社製)のオステオカルシン(Hs01587814_g1)およびGADPH(Hs02758991_m1)を用いた。各遺伝子の発現を、GADPHの発現に対して評価した。リアルタイムPCRのデータ解析には、ΔΔCt法を用いた。
骨形成マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の評価では、0.1%Triton Xで処理して細胞溶解物を収集し、14,000rpmで15分間遠心分離した。ALP assay kit(和光純薬工業社製)をマニュアルに従って用いて、上清を評価した。マイクロプレート分光計で405nmの吸光度を各試料について測定した。
(結果)
図15は、オステオカルシンの発現量およびALP活性を示す。CGRP存在下で、骨形成の誘導によるオステオカルシンの発現が増加した。一方、BIBN4096を加えることで、オステオカルシンの発現量が有意に低下した。同様に、CGRP存在下では、ALP活性が増加した。一方、BIBN4096を加えることで、ALP活性が有意に低下した。
(実施例3:破骨細胞形成に対するBIBN4096の影響)
12穴プレートで、Raw 264.7細胞を、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むα−ミニマル・エッセンシャル培地で培養した。破骨細胞形成を評価するために、3日ごとに50ng/mLのM−CSF(和光純薬工業社製)および50ng/mLのRANKL(和光純薬工業社製)を含む培地に交換し、1週間培養した。なお、100nMのCGRPをさらに含む培地、および100nMのCGRPとBIBN4096とをさらに含む培地でも同様に培養した。7日目に、和光純薬工業社製の上記キットを用いて、細胞のTRAPを染色した。4個以上の核を有するTRAP陽性多核細胞を破骨細胞として同定した。200倍拡大の顕微鏡観察下で、各ウェルで顕微鏡の10視野における破骨細胞を計数した。すべての実験は3重に、少なくとも3回行った。
(結果)
TRAPを染色した細胞の画像を図16に示す。破骨細胞への分化誘導によって確認されたTRAP陽性細胞が、CGRPを加えることで減少した。一方、BIBN4096を加えると、TRAP陽性細胞が増加した。図17は、TRAP陽性細胞(破骨細胞)の個数を示す。BIBN4096を加えることで、TRAP陽性細胞の個数が有意に増加した。
以上の結果より、早期OAにおいて、軟骨変性に関連する軟骨下骨の硬化およびCGRPの発現増加が示された。さらに、CGRP受容体拮抗剤がこの軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性を抑制し、OAを抑制することが実証された。
(比較例)
上記OAモデルマウスに、ビスフォスフォネートの1種であるリセドロネートを、OA手術後に0.06mg/kg/100μlの投与量で静脈内に投与した。投与から1週間後および4週間後に、膝関節を回収し、上記実施例1と同様に組織学的評価を行った。
(結果)
図18は、リセドロネートの投与から1週間後および4週間後のサフラニン−O ファストグリーン法で染色した膝関節の切片の画像を示す。図7のBIBN4096投与群の1週および4週と比較して、軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性の進行が認められる。ビスフォスフォネートは、破骨細胞の機能を抑制するため、軟骨下骨の骨硬化および軟骨変性を抑制できないと考えられる。
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、軟骨変性を抑制するための医薬およびOAの治療薬に好適である。本発明に係る軟骨変性抑制剤および変形性関節症抑制剤は、OAの進行例に対する手術療法を減少させ、運動機能障害の抑制、運動機能の向上および患者の生活の質の向上に寄与する。

Claims (4)

  1. カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む、
    軟骨変性抑制剤。
  2. 前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、
    オルセゲパントである、
    請求項1に記載の軟骨変性抑制剤。
  3. 前記カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤は、
    カルシトニン遺伝子関連ペプチド抗体である、
    請求項1に記載の軟骨変性抑制剤。
  4. カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗剤を含む、
    変形性関節症抑制剤。
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