JP2016123760A - 洗濯機 - Google Patents
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Abstract
【課題】衣類収容部を回転させるように支持する支え部を備えた洗濯機において、衣類収容部と支え部との間の構成に工夫を凝らすことで、生産性を損なうことなく、当該衣類収容部の底部の振動と該振動に伴う共振とを抑制し、ひいては脱水行程時に生じる騒音を低減する。
【解決手段】洗濯機Wは、有底円筒状に形成された、該円筒の中心を回転軸心Aとして回転可能なドラム5と、前記ドラム5の底部外面61に対して前記回転軸心A方向に沿って対向する対向面82を有し且つ、該底部外面61の周縁部に固定され、該ドラム5を前記回転軸心Aまわりに回転させるように支持する支え部8と、を備え、前記ドラム5の底部外面61と、前記支え部8の対向面82との間には、弾性を有する緩衝部材9が介在している。
【選択図】図7
【解決手段】洗濯機Wは、有底円筒状に形成された、該円筒の中心を回転軸心Aとして回転可能なドラム5と、前記ドラム5の底部外面61に対して前記回転軸心A方向に沿って対向する対向面82を有し且つ、該底部外面61の周縁部に固定され、該ドラム5を前記回転軸心Aまわりに回転させるように支持する支え部8と、を備え、前記ドラム5の底部外面61と、前記支え部8の対向面82との間には、弾性を有する緩衝部材9が介在している。
【選択図】図7
Description
本発明は、洗濯機に関する。
特許文献1には、洗濯機の一例が記載されている。この特許文献1に記載の洗濯機(ドラム式洗濯機)は、有底円筒状に形成された、この円筒の中心を回転軸心として回転可能な衣類収容部(ドラム)と、衣類収容部をこの回転軸心まわりに回転させるように支持する支え部(ドラム支え)と、を備えている。通常、衣類収容部と支え部とには、回転のアンバランスを可及的に低減すべく、比較的厳格な加工精度が課せられる。そこで、この支え部は、衣類収容部の底部外面(端板部)の周縁部に固定されるように構成されており、この底部外面の中央部付近の領域と当該領域に対向する支え部の対向面との間には所定の間隔が設けられている。特許文献1に記載の洗濯機は、こうした間隔を設けることで、各部の加工精度を緩和している。また、この支え部の後面側には、凹凸状に形成されたリブ部が設けられており、このリブ部をカバー部で被覆することによって、衣類収容部が回転するときの空気抵抗を低減し、ひいては、当該回転により生じる風切り音を低減するように構成されている。
特許文献2には、洗濯機の別例が記載されている。この特許文献2に記載の洗濯機は、衣類収容部が収容される水槽を支持する筐体に対して片持ち式の動吸振器を取り付けることによって、衣類収容部が所定の振動数(周波数)付近で振動したときに筐体が生じる共振を低減し、ひいては、当該共振により生じる騒音を低減するように構成されている。
ところで、特許文献1に記載の洗濯機は、支え部を衣類収容部の底部外面の周縁部に固定させており、当該底部外面の略中央部付近の領域と支え部の対向面との間には所定の間隔が設けられているため、この底部の弾性変形が許容され、ひいては、底部外面の周縁部を固定端として且つ、底部外面の略中央部付近の領域を振動面とした支え部に対する相対振動(膜振動)が許容されてしまう。したがって、特許文献1に記載の洗濯機は、衣類収容部が比較的高速度で回転することになる脱水行程では、その回転によって底部を振動させてしまったり、そうした振動に伴い共振を招いてしまったりする等して、比較的大きな騒音を生じてしまう。
このような底部の共振を抑制するために、この衣類収容部を、その底部外面の周縁部以外の箇所で支え部に固定する構成、例えば、その底部中央部を支え部に固定するような構成が考えられる。しかしながら、底部を固定する箇所を変更したり増やしたりするだけでは、共振が生じる振動数をシフトさせることはできるものの、共振の発生そのものを抑制することはできない。
また、衣類収容部の底部外面を比較的広範囲に亘って支え部の対向面に密着させたり、衣類収容部と支え部とを一体形成したりする構成も考えられる。しかしながら、これらの構成では、所定の範囲に亘って密着させた分だけ底部外面と対向面との間に間隔を設ける上で不都合になったり、一体化させた分だけより複雑な加工が要求されたりするため、本来避けるべき加工精度の厳格化を招いてしまい、洗濯機の生産性を安定させるには不都合である。
また、特許文献2に記載の動吸振器を適用することによって、所定の振動数付近で生じる共振を抑制することも考えられる。しかしながら、通常、所定時間あたりの回転数(例えば回毎分)が一定となるように底部の回転が制御されていたとしても、その回転に伴い生じる振動の振動数は、一定ではなく、比較的広範囲に亘って連続的又は離散的に分布して存在しているため、そうした振動に係る共振も、互いに異なる複数の振動数で同時に生じることになる。特許文献2に記載の動吸振器は、特定の振動数付近で生じる特定の共振を抑制することはできるものの、互いに異なる振動数で生じる各共振を同時に抑制するには不都合である。また、通常、共振が生じる振動数の値は、洗濯機の全体構成に応じて増減するため、特定の振動数付近でしか共振を抑制できないような構成は、部品共通化を図り、生産性を高める上で不都合である。さらに、こうした構成では、共振の発生を抑制することはできても、底部の振動そのものを抑制することはできない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衣類収容部を回転させるように支持する支え部を備えた洗濯機において、衣類収容部と支え部との間の構成に工夫を凝らすことで、生産性を損なうことなく、当該衣類収容部の底部の振動と該振動に伴う共振とを抑制し、ひいては脱水行程時に生じる騒音を低減することにある。
前記の目的を達成するために、本願発明者等は、衣類収容部の底部外面と当該外面に対向する支え部の対向面との間に、弾性を有する緩衝部材を介在させることにした。
具体的に、第1の発明は、有底円筒状に形成され、該円筒の中心を回転軸心として回転可能な衣類収容部と、前記衣類収容部の底部外面に対して前記回転軸心方向に沿って対向する対向面を有し且つ、該底部外面の周縁部に固定され、該衣類収容部を前記回転軸心まわりに回転させるように支持する支え部と、を備え、前記衣類収容部の底部外面と、該底部外面に対向する前記支え部の対向面との間には、弾性を有する緩衝部材が介在している、ことを特徴とするものである。
この第1の発明によると、衣類収容部の底部外面と支え部の対向面との間に弾性を有する緩衝部材を介在させたから、この洗濯機は、底部が振動するときに、底部外面の少なくとも一部の領域と対向面とが接近しようとする変形が緩衝部材を押圧して弾性変形させることによって、その振動に係るエネルギーを底部側から緩衝部材側に分散させたり、或いは、緩衝部材が底部外面の変形を規制することによって、底部の振動に許容される振幅の大きさを低減したり、することができる。したがって、底部の振動、及び、当該振動に伴い生じる共振を従来構成よりも抑制し、脱水行程時等に生じる騒音を低減することができる。こうした緩衝部材としては、合成ゴムから形成してもよい。
また、この緩衝部材を新設する構成は、衣類収容部の底部外面を比較的広範囲に亘って支え部に密着させたり、衣類収容部と支え部とを一体的に形成したりする構成と比較して、緩衝部材が弾性的に変形可能という点で、加工精度を緩和することができるから、洗濯機の生産性を安定させる上で有利となる。
また、この緩衝部材は、特許文献2に記載の動吸振器とは異なり、互いに異なる振動数で生じる共振を同時に抑制することができるから、洗濯機の全体構成を変更する上で有利になる。したがって、部品共通化を図り、生産性を高める上で有利となる。
第2の発明は、前記第1の発明において、前記支え部は、前記回転軸心から周方向に等間隔をあけて放射状に延びる複数のアーム部を有し、前記衣類収容部の底部外面には、前記複数のアーム部をそれぞれ収容可能な凹部が該衣類収容部内に向かって凹設されており、前記凹部外面と前記複数のアーム部との間に前記緩衝部材が介在している、ことを特徴とするものである。
この第2の発明によると、前記第1の発明を具体化する上で効果的な洗濯機が得られる。
また、第3の発明は、前記第2の発明において、前記緩衝部材は、前記回転軸心に対して回転対称な形状を有する、ことを特徴とするものである。
この第3の発明によると、緩衝部材を回転対称に形成することによって、緩衝部材を新設したことによるアンバランスの発生を抑制すると共に、組み違えに関する留意が不要になり生産性を高める上で有利になる。
また、第4の発明は、前記第1の発明から前記第3の発明のいずれか1つにおいて、前記衣類収容部の底部外面、又は、前記支え部の対向面には嵌合部が形成され、前記緩衝部材は、前記嵌合部に嵌合可能な被嵌合部を有している、ことを特徴とするものである。
この第4の発明によると、緩衝部材の被嵌合部を、衣類収容部の底部外面、又は、支え部の対向面の嵌合部に嵌合させることによって、その位置決め精度を安定させたり、組み立て性を向上させたりすることができるから、洗濯機の生産性を高める上で有利になる。
また、第5の発明は、前記第1の発明から前記第4の発明のいずれか1つにおいて、前記緩衝部材は、前記衣類収容部の底部外面と前記支え部の対向面との間に圧縮された状態で介在している、ことを特徴とするものである。
この第5の発明によると、緩衝部材は、底部外面と対向面との間に圧縮された状態で介在しているから、緩衝部材が底部外面と対向面とに密着することになって、そのことで、底部の振動に係るエネルギーを緩衝部材側に分散させたり、或いは、底部外面の変形を規制したりする上で有利になる。したがって、底部の振動及び共振を抑制し、ひいては脱水行程時に生じる騒音を低減する上で有利になる。
以上説明したように、洗濯機の衣類収容部の底部外面と当該外面に対向する支え部の対向面との間に弾性を有する緩衝部材を介在させたから、洗濯機の加工精度を厳格化させることなく、衣類収容部の底部が支え部に対して行う振動、及び、該振動に伴う共振を抑制し、脱水行程時に生じる騒音を低減することができる。
以下、洗濯機の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示にすぎない。この実施形態は、請求項1から請求項5に係るものであり、図1から図9に示されている。
初めに、この実施形態に係る洗濯機Wの全体構成について説明する。
この実施形態に係る洗濯機Wは、図1に示すように、いわゆるドラム式洗濯機として構成されている。この洗濯機Wは、上下方向に縦長に延びる略直方体状の外形を有する筐体1を備えており、この筐体1の内部には、衣類収容部としてのドラム5が回転可能に支持されている。筐体1前面の略中央部には、正面前方から見て略円形状に形成された衣類投入口(不図示)が開口している。この衣類投入口は、該衣類投入口周囲の筐体1に揺動可能に取り付けた蓋部11によって開閉されるように構成されており、この蓋部11が開いたときには、ドラム5内に衣類を収容することができるようにしている。
なお、各図における前後及び上下は、それぞれ、筐体1についての前後及び上下と同じである。
前記ドラム5は、図1に示すように、筐体1内に配置した水槽12内に配設されている。この水槽12は、前後方向に延びる略有底円筒状に形成されており、その開口を略前方に向けた姿勢で、衣類投入口に対して連通接続されている。そして、この水槽12の底部略中央部には、シャフト2が回転可能に挿通されている。
前記シャフト2は、前後方向に延びる略円柱状に形成されており、その後端部にはモータ3が駆動連結されている一方、その前端部には前記ドラム5の底部としてのドラム底部6が支え部8を介して一体的に固定されている。
前記モータ3は、筐体1内の下部に取り付けられており、ベルト伝動機構4を介してシャフト2に連結されている。このモータ3は、前記シャフト2を、該シャフト2の中心まわりに回転させるように構成されている。
前記ドラム5は、水槽12よりも小径の略有底円筒状に形成されており、その開口が前方に向かうように底部外面61を後方に向けた姿勢で且つ、該ドラム5の中心と前記シャフト2の中心とが同軸になるような姿勢で固定されている。このドラム5の壁部には、多数の孔部が開口されている。ドラム5は、前記モータ3が作動することによって、該ドラム5及びシャフト2の中心を回転軸心Aとして、前記支え部8及び前記シャフト2と一体的に回転することができるように構成されている。
具体的に、前記ドラム5は、略円筒状に形成されたドラム側部7と、このドラム側部7の後端に一体的に形成された略円板状のドラム底部6とを有している。ドラム底部6は、一体的な金属板から構成されており、中心部が周縁部に比べドラム5内に向かって膨出されている。この膨出によって、底部外面61側には、図2及び図3に示すように、その略中央部から外周端部まで周方向に等間隔をあけて放射状に延びる3つの凹部63,63,63が形成されている。
そして、前記ドラム底部6の外周端部は、図7(a)に示すように、後方に向かって鍔状に折り曲げられており、底部外面61の周縁部62は、後方に向かって延びる円環状の曲面を構成している。この周縁部62は、回転軸心Aに対して平行に延びており、前記3つの凹部63,63,63それぞれの外周側の端部付近の部分において、前記支え部8を固定するための、径方向に延びる例えば2つのネジ穴を有している。
前記支え部8は、図3及び図4に示すように、2枚の板部がリブを介して接続された略厚板状に形成されており、後面側からシャフト2を挿入可能な軸部84と、該軸部84から周方向に等間隔をあけて放射状に延びる3本のアーム部81,81,81とを有する一体的な部材として構成されている。
軸部84の後面側には、略円柱状に形成された挿入穴部(不図示)が形成されており、支え部8は、この挿入穴部の中心が延びる方向の一端側(前方又は後方)から見て、各辺が内方(軸部84)に向かって湾曲した略三角形状を有している。
支え部8は、軸部84にシャフト2を挿入した状態(図3参照)では、前記回転軸心Aに対して回転対称な形状を有するように構成されている。また、この状態では、支え部8は、その前面82を前方に向けた姿勢で回転可能に支持されることになって、水槽12内の底部付近の空間で、前記回転軸心Aまわりにシャフト2と一体的に回転するように構成されている。
各アーム部81は、それぞれ、図3、図7(a)及び図7(b)に示すように、支え部8の前面82が、ドラム底部6の底部外面61に対して前記回転軸心A方向に沿って対向するように且つ、前記回転軸心Aとドラム底部6の中心とが同軸になるように位置決めされた姿勢で、ドラム底部6に設けた各凹部63内に収容されている。この実施形態では、アーム部81の先端面は、前方又は後方から見て略円弧状の外形を有しており、各凹部63内に収容したときに、前記底部外面61の周縁部62に内接するように形成されている。また、各アーム部81の先端面には、図4に示すように、例えば2つのネジ穴が設けられており、これらのネジ穴と、周縁部62に設けた前記2つのネジ穴とを合わせてネジ止めされている。このネジ止めによって、各アーム部81の先端部は、前記底部外面61の周縁部62に対して一体的に固定されている。このように固定された支え部8は、前記モータ3の回転を伝動することによって、前記ドラム5を、前記回転軸心Aまわりに回転させるように支持することになる。以下では、底部外面61に対向するように固定された支え部8の前面82を、“対向面”と記載することがある。
また、底部外面61の周縁部62とアーム部81の先端面とが接触している一方で、図7(a)に示すように、底部外面61の略中央部付近の領域と支え部8の対向面82との間には所定の間隔が設けられている。したがって、この実施形態に係る洗濯機Wは、ドラム底部6に支え部8を固定した状態では、ドラム底部6の弾性変形が許容され、ひいては、底部外面61の周縁部62を固定端として且つ、底部外面61の略中央部付近の領域を振動面とした膜振動が許容されることになる。
そこで、この実施形態に係る洗濯機Wでは、前記対向面82に弾性を有する緩衝部材9が取り付けられている。この実施形態では、緩衝部材9は、図5及び図6(a)に示すように、各アーム部81の前面に取り付けられた3枚の板状ラバー91,91,91から構成されている。各板状ラバー91は、それぞれが略矩形薄板状に形成されており、互いに略同一形状を有している。緩衝部材9は、各板状ラバー91が各アーム部81に取り付けられた状態では、図5及び図6(a)に示すように、回転軸心Aに対して回転対称な形状を有するように構成されている。
また、緩衝部材9を構成する各板状ラバー91は、所定の弾性を有する合成ゴムから形成されている。
また、各アーム部81の前面には、図4に示すように、該アーム部81の長手方向に沿って略凸条状に延びる嵌合部83が形成されている一方、各板状ラバー91の後面には、図6(b)に示すように、該板状ラバー91の長手方向に沿って略凹条状に延び且つ、この嵌合部83に嵌合可能な被嵌合部92が形成されている。この緩衝部材9は、各板状ラバー91の被嵌合部92を各アーム部81の嵌合部83に嵌合させることによって、支え部8に対して位置決めされている。
緩衝部材9は、支え部8がドラム底部6に固定された状態では、対向面82に取り付けられた各板状ラバー91の前面が底部外面61に対向することになって、そのことで、対向面82と底部外面61との間に介在していることになる。また、この実施形態では、緩衝部材9は、各アーム部81の前面と各凹部63外面との間に圧縮された状態で介在している。つまり、緩衝部材9は、図7(a)及び図7(b)に示すように、対向面82と底部外面61とから押圧されて挟持された状態にあり、両面82,61に密着している。
次に、支え部8により支持されたドラム底部6の具体的な振動特性を、支え部8に緩衝部材9を取り付けていない構成(以下では、この構成を“従来構成”とも記載)と共に、支え部8に緩衝部材9を取り付けた構成(以下では、この構成を“この実施形態に係る構成”とも記載)について説明する。
図8(a)は、支え部8が固定されたドラム5に対して行ったハンマリング試験の結果を示すグラフであり、ドラム底部6に所定の衝撃を加えたときに該ドラム底部6に生じる振動の振幅を振動数毎に示している。
図8(a)の破線は、従来構成の振動特性を示している。この場合、複数の振動数で鋭いピークが現れていることが見て取れる。これらのピークは、それぞれ、ドラム底部6が共振を生じたことを示しており、0Hzから1600Hzまでの比較的広い領域に亘って、互いに異なる複数の振動数で共振が生じていることが見て取れる。
一方で、図8(a)の実線は、この実施形態に係る構成の振動特性を示している。この場合、従来構成の振動特性とは異なり、ドラム底部6の共振は、前述の比較的広い領域に亘って概ね抑制されていることが見て取れる。例えば、従来構成では200Hz付近の振動数で生じていた共振は、この実施形態に係る構成では抑制されていることが見て取れる。また、そうした共振ばかりでなく、ドラム底部6の振動そのものも抑制されていることも見て取れる。例えば、ドラム底部6の振幅の大きさは、200Hz〜300Hzの領域に亘って、従来構成よりも概ね低減されている。これらのことは、次の理由によるものと考えられる。
つまり、ドラム底部6は、その弾性変形ひいては膜振動が許容されるように支持されているものの、底部外面61と対向面82との間には緩衝部材9が介在しているため、この実施形態に係る構成を適用したドラム5は、ドラム底部6が膜振動するときに、底部外面61の少なくとも一部の領域が対向面82に接近しようとする変形が緩衝部材9を押圧して弾性変形させることによって、その振動に係るエネルギーをドラム底部6側から緩衝部材9側に分散させたり、或いは、緩衝部材9が底部外面61の変形を規制することによって、ドラム底部6の振動に許容される振幅の大きさを低減したり、することができる。したがって、この実施形態に係る構成は、ドラム底部6の振動、及び、当該振動に伴い生じる共振を従来構成よりも抑制することができる。
次に、この実施形態に係る洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音について説明する。
この実施形態に係る洗濯機Wは、所定の制御に基づいて、洗濯行程、すすぎ行程及び脱水行程を順次実行する。
この実施形態に係る洗濯機Wは、脱水行程時には、モータ3を例えば約250Hz(≒15000rpm)の振動数(回毎分)で回転させると共に、この回転をベルト伝動機構4及びシャフト2等を介して伝達させることによって、支え部8を、ドラム5が例えば22Hz(=1320rpm)の振動数で回転するように駆動させるよう構成されている。
図8(b)は、前記従来構成に係る洗濯機、又は、この実施形態に係る洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音の音圧レベルを振動数毎に示したグラフである。従来構成を適用した洗濯機についても、脱水行程時におけるモータ3の振動数は、この実施形態に係る構成を適用した洗濯機Wと同じである。
図8(b)の破線は、従来構成に係る洗濯機が脱水行程時に生じる騒音を示している。この場合、約20Hzおきに現れる比較的離れた複数のピークと、約240〜290Hz付近の領域に現れる比較的接近した複数のピークとが見て取れる。
前者のピーク、つまり、約20Hzおきに現れる複数のピークは、ドラム5が22Hzで回転することによって生じる振動と、該振動に伴う騒音とを示しているもの考えられる。この場合、ドラム5が22Hzで回転しているため、ドラム底部6は、22Hz付近の振動数で振動することになって、そのことで、22Hz付近にピークを有する騒音を生じることになる。しかしながら、ドラム5の振動数こそ22Hzに保持されているものの、ドラム5の回転に係る角速度は、時間に対して常時一定ではない。そのため、ドラム底部6は、22Hz付近の振動数で振動するばかりでなく、前記角速度の時間に対する振る舞いに応じて、22Hzの整数倍付近の振動数でも振動することになる。このことで、ドラム底部6は、22Hz付近のピークに加えて、22Hzおきにもピークを有するような騒音も生じてしまう。従来構成に係るドラム底部6は、前述のように、200Hz付近で共振を生じてしまうため、そうした22Hzおきのピークのうち、特に200Hz付近(22×8=196[Hz])のピーク(図8(b)の囲み部C1参照)に対応する振動は、ドラム底部6の共振によって増幅されてしまい、150Hzのピーク、180Hz付近のピーク、そして、230Hz付近のピークに対応する振動よりも、比較的大きな音圧レベルを有する騒音を生じていることが見て取れる。音圧レベルが大きいということは、その分だけ、比較的大きな騒音を生じてしまうということを意味している。
また、後者のピーク、つまり、約240〜290Hz付近の領域に現れる複数のピークのうち、特に、250Hz付近に現れるピーク(図8(b)の囲み部C2参照)は、ドラム5が22Hzで回転することによって生じる振動とは別に、モータ3を約250Hzで回転させたときに、当該回転がベルト伝動機構4及び水槽12等を介してドラム底部6を振動させたことで生じる騒音に対応するものと考えられる。この場合、ドラム底部6は、250Hz付近にピークを有する騒音を生じるよう振動することになる、と考えられる。
一方で、図8(b)の実線は、この実施形態に係る洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音を示している。この場合、従来構成と略同一の振動数でピークが現れているものの、囲み部C1,C2に示すように、200Hz付近のピークと、250Hz付近のピークとについては、双方とも、従来構成よりも音圧レベルが低減されていることが見て取れる。このことは、以下の理由によるものと考えられる。
つまり、この実施形態に係る洗濯機Wでは、ドラム底部6の共振を抑制することができるから、ドラム5が22Hzで回転することによって生じる振動のうち、200Hz付近のピークに対応する振動については、その振動数付近で生じる共振が抑制された分だけ、当該振動によって生じる騒音の音圧レベルが低減されることになる。
そして、この実施形態に係る洗濯機Wは、所定の振動数で生じる共振ばかりでなく、ドラム底部6の振動そのものも抑制することもできる。前述のように、ドラム底部6の振幅の大きさは、200Hz〜300Hzの領域に亘って概ね低減されているから、250Hz付近のピークに対応する振動についても、その振幅の大きさが低減された分だけ、該振動によって生じる騒音の音圧レベルが低減されることになる。
図9(a)及び図9(b)は、それぞれ、この実施形態に係る洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音、及び、従来構成に係る洗濯機が脱水行程時に生じる騒音の音圧レベルを、図8(b)に示すものよりも、比較的広範囲の振動数に亘って図示したものである。
図9(b)の囲み部C1,C2から見て取れるように、200Hz付近及び250Hz付近のピークは、双方とも、他のピークよりも比較的大きな騒音を生じるものであるから、図9(a)の囲み部C1,C2に示すように、それらの音圧レベルを同時に低減することによって、洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音を低減する上で取り分け有効となる。
以上説明したように、この実施形態に係る洗濯機Wは、底部外面61と対向面82との間に緩衝部材9を介在させたから、ドラム底部6の振動、及び、該振動に伴う共振を抑制し、ひいては脱水行程時に生じる騒音を低減することができる。
また、緩衝部材9は、合成ゴムから形成されているため、弾性変形が許容されるという点で、加工精度の緩和を図り、洗濯機Wの生産性を安定させる上で有利になる。
また、この緩衝部材9は、ドラム底部6の共振に限らず、振動そのものを抑制することもできるから、互いに異なる振動数にピークを有するような騒音を生じてしまう振動と、それらの振動を増幅させてしまうような共振とを、それぞれ、各振動数毎に同時に抑制することができる。したがって、この実施形態に係る洗濯機Wは、その全体構成を変更する上で有利になるものであり、部品共通化を図り、生産性を高める上で有利になる。
また、支え部8は、回転軸心Aから周方向に等間隔をあけて放射状に延びる3本のアーム部81,81,81を有しており、ドラム5の底部外面61には、各アーム部81をそれぞれ収容可能な凹部63がドラム5内に向かって凹設されているから、上記の構成を具体化する上で有利になる。
また、緩衝部材9は、支え部8に取り付けた状態では、回転軸心Aに対して回転対称な形状を有しているから、緩衝部材9を新設したことによってアンバランスが発生してしまう虞を低減する上で有利になると共に、緩衝部材9を構成する各板状ラバー91の組み違えに関する留意が不要になり生産性を高める上で有利になる。
また、緩衝部材9は、底部外面61と対向面82との間に圧縮された状態で介在しているから、両面61,82に密着することになって、そのことで、ドラム底部6の振動に係るエネルギーを該ドラム底部6側から緩衝部材9側に分散させたり、或いは、底部外面61の変形を規制したりする上で有利になる。したがって、ドラム底部6の振動及び共振を抑制し、ひいては洗濯機Wが脱水行程時に生じる騒音を低減する上で有利になる。
また、各板状ラバー91の後面には、各アーム部81の前面に形成した嵌合部83のそれぞれに対して嵌合可能な被嵌合部92が形成されているから、各アーム部81の位置決め精度を安定させたり、組み立て性を向上させたりすることが可能となり、洗濯機Wの生産性を高める上で有利になる。
(支え部及び緩衝部材の変形例)
以下、支え部8及び緩衝部材9の変形例について説明する。この変形例は、請求項1から請求項5に係るものであり、図10に示されている。
以下、支え部8及び緩衝部材9の変形例について説明する。この変形例は、請求項1から請求項5に係るものであり、図10に示されている。
前記実施形態では、支え部8として、軸部84から等間隔で放射状に延びる3本のアーム部81,81,81を有するものについて説明したが、この構成に代えて、支え部を、軸部から周方向に等間隔をあけて放射状に延びる4本のアーム部を有するように構成すると共に、図10(a)に示すように、緩衝部材9aを、4枚の板状ラバー91a,91a,91a,91aから構成してもよい。この場合、緩衝部材9aの変形例は、支え部の変形例に取り付けた状態では、前記実施形態と同様に、回転軸心Aに対して回転対称な形状を有するように構成されており、そのことで、緩衝部材9aを新設したことによってアンバランスが生じることのないようにしている。
また、さらなる変形例として、支え部を、軸部から周方向に等間隔をあけて放射状に延びる5本のアーム部を有するように構成すると共に、図10(b)に示すように、緩衝部材9bを、5枚の板状ラバー91b,91b,91b,91b,91bから構成してもよい。
(他の実施形態)
前記実施形態に係る洗濯機Wの全体構成については、可能な範囲で変更することができる。例えば、前記実施形態においては、ドラム5の開口部が前方に面するように構成されていたが、この構成に代えて、例えば、ドラムの開口部が上方に面し且つ、このドラムの底部外面が下方に面するように構成してもよい。ドラムの開口部が斜め上方に面するように構成してもよい。
前記実施形態に係る洗濯機Wの全体構成については、可能な範囲で変更することができる。例えば、前記実施形態においては、ドラム5の開口部が前方に面するように構成されていたが、この構成に代えて、例えば、ドラムの開口部が上方に面し且つ、このドラムの底部外面が下方に面するように構成してもよい。ドラムの開口部が斜め上方に面するように構成してもよい。
前記実施形態に係るドラム底部6には、ドラム5内に向かって凹部63が凹設されていたが、凹部63を設ける構成は必須ではない。また、アーム部の本数、並びに、各アーム部の相対位置関係及び形態についても、可能な範囲で変更することができる。
前記実施形態に係る緩衝部材9は、支え部8の対向面82に取り付けられていたが、この構成に代えて、例えば、底部外面に取り付けられるように構成してもよい。この場合、緩衝部材を底部外面に取り付けたときに、緩衝部材が回転軸心に対して回転対称な形状を有していたり、底部外面に嵌合部を形成した上で、この嵌合部に嵌合可能な被嵌合部を緩衝部材の前面に形成したり、することが好ましい。
また、前記実施形態及び前記変形例に係る緩衝部材9,9a,9bは、それぞれ、複数枚の板状ラバー91,91a,91bから構成されていたが、これらの構成に代えて、一体形成された一枚の板状ラバーから構成してもよい。このように構成することによって、緩衝部材の位置決め精度を安定させたり、組み違えを防止したり、組み立て工数を削減したりすることができるから、洗濯機の生産性を高める上で有利になる。
A 回転軸心
W 洗濯機
5 ドラム(衣類収容部)
6 ドラム底部(底部)
61 底部外面
62 周縁部
63,63,63 凹部
8 支え部
81,81,81 アーム部
82 対向面
83,83,83 嵌合部
9 緩衝部材
91,91,91 板状ラバー
92,92,92 被嵌合部
W 洗濯機
5 ドラム(衣類収容部)
6 ドラム底部(底部)
61 底部外面
62 周縁部
63,63,63 凹部
8 支え部
81,81,81 アーム部
82 対向面
83,83,83 嵌合部
9 緩衝部材
91,91,91 板状ラバー
92,92,92 被嵌合部
Claims (5)
- 有底円筒状に形成され、該円筒の中心を回転軸心として回転可能な衣類収容部と、
前記衣類収容部の底部外面に対して前記回転軸心方向に沿って対向する対向面を有し且つ、該底部外面の周縁部に固定され、該衣類収容部を前記回転軸心まわりに回転させるように支持する支え部と、を備え、
前記衣類収容部の底部外面と、該底部外面に対向する前記支え部の対向面との間には、弾性を有する緩衝部材が介在している、ことを特徴とする洗濯機。 - 請求項1に記載の洗濯機において、
前記支え部は、前記回転軸心から周方向に等間隔をあけて放射状に延びる複数のアーム部を有し、
前記衣類収容部の底部外面には、前記複数のアーム部をそれぞれ収容可能な凹部が該衣類収容部内に向かって凹設されており、
前記凹部外面と前記複数のアーム部との間に前記緩衝部材が介在している、ことを特徴とする洗濯機。 - 請求項2に記載の洗濯機において、
前記緩衝部材は、前記回転軸心に対して回転対称な形状を有する、ことを特徴とする洗濯機。 - 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の洗濯機において、
前記衣類収容部の底部外面、又は、前記支え部の対向面には嵌合部が形成され、
前記緩衝部材は、前記嵌合部に嵌合可能な被嵌合部を有している、ことを特徴とする洗濯機。 - 請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の洗濯機において、
前記緩衝部材は、前記衣類収容部の底部外面と前記支え部の対向面との間に圧縮された状態で介在している、ことを特徴とする洗濯機。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2015001065A JP2016123760A (ja) | 2015-01-06 | 2015-01-06 | 洗濯機 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2015001065A JP2016123760A (ja) | 2015-01-06 | 2015-01-06 | 洗濯機 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2016123760A true JP2016123760A (ja) | 2016-07-11 |
Family
ID=56358324
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2015001065A Pending JP2016123760A (ja) | 2015-01-06 | 2015-01-06 | 洗濯機 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2016123760A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN107938253A (zh) * | 2017-12-11 | 2018-04-20 | 珠海格力电器股份有限公司 | 一种洗衣机支架、使用该支架的洗衣机及结构优化方法 |
| JP2021528111A (ja) * | 2018-02-27 | 2021-10-21 | 青島海爾洗衣机有限公司QingDao Haier Washing Machine Co.,Ltd. | 内槽及びクリーニング不要洗濯機 |
-
2015
- 2015-01-06 JP JP2015001065A patent/JP2016123760A/ja active Pending
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN107938253A (zh) * | 2017-12-11 | 2018-04-20 | 珠海格力电器股份有限公司 | 一种洗衣机支架、使用该支架的洗衣机及结构优化方法 |
| JP2021528111A (ja) * | 2018-02-27 | 2021-10-21 | 青島海爾洗衣机有限公司QingDao Haier Washing Machine Co.,Ltd. | 内槽及びクリーニング不要洗濯機 |
| JP7280885B2 (ja) | 2018-02-27 | 2023-05-24 | 青島海爾洗衣机有限公司 | 内槽及びクリーニング不要洗濯機 |
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