JP2016118292A - 重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法 - Google Patents

重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016118292A
JP2016118292A JP2015084100A JP2015084100A JP2016118292A JP 2016118292 A JP2016118292 A JP 2016118292A JP 2015084100 A JP2015084100 A JP 2015084100A JP 2015084100 A JP2015084100 A JP 2015084100A JP 2016118292 A JP2016118292 A JP 2016118292A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lap joint
composite material
reinforced composite
fiber reinforced
metal member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015084100A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6515654B2 (ja
Inventor
幸太郎 猪瀬
Kotaro Inose
幸太郎 猪瀬
謙二郎 山岸
Kenjiro Yamagishi
謙二郎 山岸
理絵 坂元
Rie Sakamoto
理絵 坂元
直幸 松本
Naoyuki Matsumoto
直幸 松本
弘人 山岡
Hiroto Yamaoka
弘人 山岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
IHI Corp
Original Assignee
IHI Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by IHI Corp filed Critical IHI Corp
Publication of JP2016118292A publication Critical patent/JP2016118292A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6515654B2 publication Critical patent/JP6515654B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手において、重ね部の端縁部の応力集中を緩和することである。
【解決手段】重ね継手10は、金属部材12と繊維強化複合材料部材14との重ね部16の端縁部16a、16bにおける応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部16の端縁部16a、16bの間の応力負担を調整して、重ね部16の応力分布をコントロールするために、重ね部16における金属部材12の板厚と繊維強化複合材料部材14の板厚とが変化している。
【選択図】図1

Description

本発明は、重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法に係り、特に、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法に関する。
従来、船舶、橋梁、運搬機等には、鋼材等で形成された金属部材と、繊維強化樹脂複合材料(FRP)等で形成された繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手が用いられている。特許文献1には、FRPを船舶の外部構成材等に適用する場合には、FRPの端部を鋼板等からなる船体構造部材に固定する必要があり、FRPの端部をボルト等の締結具を用いて船体構造部材に固定することが記載されている。
特開2010−214930号公報
ところで、図24は、従来の重ね継手100の構成を示す図である。重ね継手100は、例えば、鋼材と、炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)とを重ね合わせて接着等で接合して形成されている。このような重ね継手100に引張荷重等が負荷されると、重ね部の端縁部の応力集中が大きくなり重ね継手100が破壊し易くなる可能性がある。
そこで本発明の目的は、重ね部の端縁部の応力集中を緩和することが可能な重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法を提供することである。
本発明に係る重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールするために、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とが変化していることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部は、前記重ね部の端縁部に向けて前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との板厚が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、前記重ね部のラップ幅は、前記金属部材または前記繊維強化複合材料部材の前記傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールするために、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が、変化していることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部は、前記重ね部の端縁部に向けて前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、前記重ね部のラップ幅は、前記金属部材または前記繊維強化複合材料部材の前記傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記傾斜面を形成する範囲は、前記重ね部のラップ幅の0.1倍から2倍の範囲であることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記傾斜面は、平面状の傾斜面であることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記傾斜面は、曲面状の傾斜面であることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記重ね部は、前記傾斜面を除いた箇所に凹部が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記重ね部は、前記傾斜面に凹部が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記重ね部は、前記傾斜面に凸部が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手において、前記重ね部は、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着した接着層を有し、前記接着層は、前記接着剤のヤング率が、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の製造方法は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の製造方法であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とを、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、前記重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールすることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の製造方法は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の製造方法であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方を、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えることにより、前記重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールすることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の製造方法において、前記板厚の変化の形態を変えるために、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、前記傾斜面の傾き、前記傾斜面における平面状または曲面状の面形状、前記傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び前記重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変えることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の製造方法において、前記重ね部は、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着して形成されており、前記重ね部の端縁部に向けて接着剤のヤング率が次第に小さくなるように接着することを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の設計方法は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の設計方法であって、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とにおけるヤング率とポアソン比とを含む材料パラメータと、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部のラップ幅と、を決定する第1のステップと、前記材料パラメータと、前記ラップ幅と共に、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚との少なくとも一方を、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析する第2のステップと、前記応力解析により得られた重ね部に作用する応力分布が、実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満足するように、重ね部における板厚の変化の形態を決定する第3のステップと、を備えることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の設計方法は、前記第2のステップにおいて、前記板厚の変化の形態を変えるために、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、前記傾斜面の傾き、前記傾斜面における平面状または曲面状の面形状、前記傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び前記重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変えることを特徴とする。
本発明に係る重ね継手の設計方法において、前記重ね部は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着して形成されており、前記第1のステップにおいて、前記材料パラメータは、接着剤のヤング率とポアソン比とを含むと共に、前記重ね部の接着層の厚みを決定し、前記第2のステップにおいて、接着剤のヤング率が重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように変化させると共に、接着剤のヤング率の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析し、前記第3のステップにおいて、接着剤のヤング率の変化の形態を決定することを特徴とする。
上記構成の重ね継手によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールするために、重ね部における金属部材と繊維強化複合材料部材との板厚が変化している、または重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が変化しているので、重ね部の端縁部の応力集中が緩和されて、重ね継手の破壊を抑制することが可能となる。
上記構成の重ね継手によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部は、重ね部の端縁部に向けて金属部材と繊維強化複合材料部材との板厚が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面、または重ね部の端縁部に向けて金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、重ね部のラップ幅は、金属部材または繊維強化複合材料部材の傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であるので、重ね部の端縁部でせん断変形を大きくすることにより、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となる。
上記構成の重ね継手の製造方法によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部における金属部材の板厚及び繊維強化複合材料部材の板厚、または重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールするので、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となると共に、構造物や接合強度特性等から要求される重ね部の応力分布に合わせた重ね継手を容易に製造することができる。
上記構成の重ね継手の設計方法によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材とにおけるヤング率とポアソン比とを含む材料パラメータと、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部のラップ幅と、を決定する第1のステップと、材料パラメータと、ラップ幅と共に、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との少なくとも一方を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析する第2のステップと、応力解析により得られた重ね部に作用する応力分布が、実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満足するように、重ね部における板厚の変化の形態を決定する第3のステップと、を備えているので、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となると共に、船舶等の実機における構造物から要求される重ね部の応力分布に合わせた重ね継手を容易に設計することができる。
本発明の第1の実施の形態において、重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第1の実施の形態において、重ね部における金属部材の板厚または繊維強化複合材料部材の板厚を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚または繊維強化複合材料部材の板厚の変化の形態を変えた構成を示す図である。 本発明の第1の実施の形態において、他の重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第1の実施の形態において、別な重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第1の実施の形態において、他の別な重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第2の実施の形態において、重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第3の実施の形態において、重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第3の実施の形態において、他の重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第4の実施の形態において、重ね継手の構成を示す図である。 本発明の第5の実施の形態において、重ね継手の設計方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の第1の実施例において、比較例Xの解析モデルを示す図である。 本発明の第1の実施例において、実施例Aから実施例Gの解析モデルを示す図である。 本発明の第1の実施例において、FEM解析方法を説明するための図である。 本発明の第1の実施例において、重ね部の端縁部における応力緩和の評価結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施例において、比較例X、実施例C、E、Fの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。 本発明の第1の実施例において、比較例X、実施例C、Gの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。 本発明の第2の実施例において、実施例H、Iの解析モデルを示す図である。 本発明の第2の実施例において、FEM解析方法を説明するための図である。 本発明の第2の実施例において、比較例X、実施例H、Iの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。 本発明の第3の実施例において、実施例J、Kの解析モデルを示す図である。 本発明の第3の実施例において、比較例X、実施例J、Kの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。 本発明の第4の実施例において、実施例L、Mの解析モデルを示す図である。 本発明の第4の実施例において、比較例X、実施例L、Mの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。 従来の重ね継手の構成を示す図である。
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、重ね継手10の構成を示す図である。重ね継手10は、金属部材12と繊維強化複合材料部材14とを重ね合わせて形成されている。金属部材12は、鋼材等の金属材料で形成されている。繊維強化複合材料部材14は、炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)や、ガラス繊維強化樹脂複合材料(GFRP)等の繊維強化複合材料で形成されている。金属部材12と繊維強化複合材料部材14との重ね部16(破線の間)は、接着、レーザ溶接、摩擦攪拌接合等で接合されている。
重ね継手10は、重ね部16における金属部材側の端縁部16aと繊維強化複合材料部材側の端縁部16bとの応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部16における金属部材側の端縁部16aと繊維強化複合材料部材側の端縁部16bとの間の応力負担を調整して、重ね部16の応力分布をコントロールするために、重ね部16における金属部材12の板厚と繊維強化複合材料部材14の板厚とが変化している。
重ね部16における金属部材12と繊維強化複合材料部材14とには、重ね部16の端縁部16a、16bに向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した傾斜面12a、14aが形成されている。より詳細には、重ね部16の金属部材12では、重ね部16の金属部材側の端縁部16aから繊維強化複合材料部材側の端縁部16bに向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した傾斜面12aが形成されている。重ね部16の繊維強化複合材料部材14では、重ね部16の繊維強化複合材料部材側の端縁部16bから金属部材側の端縁部16aに向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した傾斜面14aが形成されている。これらの傾斜面12a、14aは、平面状の傾斜面であり、直線テーパ状に形成されている。
重ね部16における金属部材12と繊維強化複合材料部材14とについて、重ね部16の端縁部16a、16bに向けて板厚が次第に小さくなるように板厚を傾斜させることにより、重ね部16の端縁部16a、16bに向けて金属部材12と繊維強化複合材料部材14との剛性が次第に小さくなるように調整される。
より詳細には、金属部材12及び繊維強化複合材料部材14の剛性Rは、各部材の有効断面積A、縦弾性係数EとするとR=A×Eで表わされる。重ね部16における金属部材12と繊維強化複合材料部材14では、重ね部16の端縁部16a、16bに向けて板厚が次第に小さくなるように板厚を傾斜させることにより、各部材の有効断面積Aが次第に小さくなるので、重ね部16の端縁部16a、16bに向けて剛性が次第に小さくなるように調整される。これにより、重ね部16の端縁部16a、16bでは、せん断変形が大きくなるので、接合面の拘束を下げ、ひずみを分散させて、従来の重ね継手よりも応力集中を緩和することが可能となる。
また、重ね部16における金属部材側の端縁部16aと繊維強化複合材料部材側の端縁部16bとの間では、重ね部16の端縁部16a、16bの応力集中の緩和による応力低下に伴う応力負担が生じて、従来の重ね継手よりも重ね部16の端縁部16a、16bの間に作用する応力が大きくなる領域を得ることができる。
重ね部16のラップ幅(重ね部16における金属部材側の端縁部16aから繊維強化複合材料部材側の端縁部16bまでの長さ)は、重ね継手10に要求される強度により相違するが、金属部材12または繊維強化複合材料部材14の傾斜面12a、14aを除いた部位の板厚の1倍以上であることが好ましく、例えば、1倍から50倍とすることが好ましい。例えば、傾斜面12a、14aを除いた部位の金属部材12または繊維強化複合材料部材14の板厚が3.2mmである場合には、重ね部16のラップ幅を、3.2mmから160mmとすることが好ましい。
重ね継手については、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、他の構成とすることが可能である。
図2は、重ね部における金属部材の板厚または繊維強化複合材料部材の板厚を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚または繊維強化複合材料部材の板厚の変化の形態を変えた構成を示す図である。図2(a)から図2(g)において、破線と破線との間は、重ね部に対応する位置を示している。
図2(a)は、重ね部における中間位置から端縁部に向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した平面状の傾斜面20aを形成した部材20の構成を示す図である。図2(b)は、重ね部の一方の端縁部を越えた位置から他方の端縁部に向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した平面状の傾斜面22aを形成した部材22の構成を示す図である。
図2(a)に示す傾斜面20aの傾きは、図2(b)に示す傾斜面22aの傾きよりも大きくなるように形成されている。傾斜面の傾きをより大きくすると、重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合が小さくなる(重ね部の端縁部の応力低下が小さくなる)傾向がある。これに対して傾斜面の傾きをより小さくすると、重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合が大きくなる(重ね部の端縁部の応力低下が大きくなる)傾向がある。また、傾斜面の傾きを変えることにより、重ね部の端縁部間の応力負担を変えることができる。
図2(c)は、重ね部の一方の端縁部から他方の端縁部に向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した凹曲面状の傾斜面24aを形成した部材24の構成を示す図である。図2(d)は、重ね部の一方の端縁部から他方の端縁部に向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した凸曲面状の傾斜面26aを形成した部材26の構成を示す図である。
傾斜面24a、26aについては、凹曲面状や凸曲面状等の曲面状の傾斜面とすることが可能である。このように、傾斜面24a、26aを曲面状とすることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合や、重ね部の端縁部の間の応力負担を変えることができる。曲面形状については、二次曲面や三次曲面等とすることが可能である。
図2(e)は、重ね部における平面状の傾斜面28aに凹部28bを設けた部材28の構成を示す図である。図2(f)は、重ね部における平面状の傾斜面30aに凸部30bを設けた部材30の構成を示す図である。図2(g)は、重ね部における平面状の傾斜面32aを除いた箇所に凹部32bを設けた部材32の構成を示す図である。
図2(e)から図2(g)に示すように凹部28b、32bや凸部30bを設けることにより、重ね部の端縁部間において、局所的に応力を大きくしたり小さくしたりして応力を調整することができる。凹部28b、32bや凸部30bの形状については、丸形や角形等でもよい。凹部28b、32bや凸部30bについては、有底孔、凹溝、突起、凸条等に形成することが可能である。図2(e)から図2(g)に示す部材28、30、32の構成では、凹部28b、32bや凸部30bを平面状の傾斜面に形成しているが、凹曲面状や凸曲面状の傾斜面に形成してもよい。また、図2(e)から図2(g)に示す部材の構成をいずれか2つ組み合わせてもよいし、全て組み合わせてもよい。
傾斜面を形成する範囲は、重ね部のラップ幅の0.1倍から2倍の範囲とすることが好ましい。例えば、重ね部のラップ幅が80mmである場合には、傾斜面を形成する範囲は、8mmから160mmとすることが好ましい。
重ね継手において、例えば、金属部材を図1に示す構成とし、繊維強化複合材料部材を図2(a)から図2(g)に示すいずれかの構成としてもよいし、金属部材を図2(a)から図2(g)に示すいずれかの構成とし、繊維強化複合材料部材を図1に示す構成としてもよいし、金属部材を図2(a)から図2(g)に示すいずれかの構成とし、複合材料部材を図2(a)から図2(g)に示すいずれかの構成としてもよい。
このように重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合いを調整すると共に、重ね部の端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールすることが可能となる。
図3は、他の重ね継手34の構成を示す図である。重ね継手34については、金属部材35を図1に示す金属部材12の構成と同じにし、繊維強化複合材料部材36を図2(a)に示す部材20と同じ構成にして形成されている。この重ね継手34の場合には、傾斜面35a、36aが形成されていることにより、重ね部38(破線の間)の端縁部38a、38bでは、従来の重ね継手よりも応力集中が緩和されると共に、重ね部38の端縁部38a、38bの間では、図1に示す重ね継手10よりも応力が小さくなる領域を設けることができる。
図4は、別な重ね継手40の構成を示す図である。重ね継手40については、金属部材41を図1に示す金属部材12の構成と同じにし、繊維強化複合材料部材42を図2(b)に示す部材22と同じ構成にして形成されている。この重ね継手40の場合には、傾斜面41a、42aが形成されていることにより、重ね部44(破線の間)の端縁部44a、44bでは、従来の重ね継手よりも応力集中が緩和されると共に、重ね部44の端縁部44a、44bの間では、図1に示す重ね継手10よりも応力が大きくなる領域を設けることができる。
図5は、他の別な重ね継手46の構成を示す図である。重ね継手46については、金属部材48と繊維強化複合材料部材50とが、図2(g)に示す部材32と同じ構成で形成されている。この重ね継手46の場合には、傾斜面48a、50aが形成されていることにより、重ね部52(破線の間)の端縁部52a、52bでは、従来の重ね継手よりも応力集中が緩和されると共に、重ね部52の端縁部52a、52bの間では、図1に示す重ね継手10よりも応力が小さくなる領域を設けることができる。また、金属部材48の傾斜面48aを除いた箇所と、繊維強化複合材料部材50の傾斜面50aを除いた箇所とに凹部48b、50bが設けられているので、重ね部52の端縁部52a、52bの間において局所的に応力変化が大きくなる領域を設けることができる。
次に、重ね継手の製造方法について説明する。
重ね継手の製造方法では、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布がコントロールされる。
より詳細には、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を大きくしたり、小さくしたりすると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を大きくしたり、小さくしたりして、重ね部の応力分布をコントロールすることが可能となる。板厚の変化の形態を変えるためには、例えば、重ね部に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とが重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、傾斜面の傾き、傾斜面における平面状または曲面状の面形状、傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変えるようにすればよい。
例えば、重ね部を接着により接合する場合には、重ね部の接合強度が低くなる傾向があるので、図3または図5に示す重ね継手を用いることにより、重ね部の端縁部の応力集中を緩和すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を小さくして、重ね部の応力分布をコントロールし、重ね継手の破壊を抑制することができる。
金属部材の加工については、一般的な金属材料の機械加工を用いることができる。繊維強化複合材料の成形加工については、プリプレグを用いたレイアップ法等の一般的な複合材料の成形加工を用いることが可能である。重ね部の接合方法については、接着剤を用いた接着方法、レーザ溶接方法、摩擦攪拌接合方法等の一般的な接合方法を適用可能である。
この重ね継手の製造方法によれば、重ね継手が適用される構造物や接合強度特性により重ね部に要求される応力分布が異なる場合でも、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを変えることにより重ね部の応力分布をコントロールできるので、要求される重ね部の応力分布に合わせた重ね継手を容易に製造することができる。
以上、上記構成の重ね継手によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して重ね部の応力分布をコントロールするために、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とが変化しているので、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊が抑制される。
上記構成の重ね継手によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部は、重ね部の端縁部に向けて金属部材と繊維強化複合材料部材との板厚が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、重ね部のラップ幅は、金属部材または繊維強化複合材料部材の傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であるので、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊が抑制される。
上記構成の重ね継手の製造方法によれば、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部の応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールすることから、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となると共に、構造物や接合強度特性等から要求される重ね部の応力分布に合わせた重ね継手を容易に製造することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態の重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールするために、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が変化している点において、第1の実施形態の重ね継手と相違している。
また、第2の実施形態の重ね継手は、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部は、重ね部の端縁部に向けて金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、重ね部のラップ幅は、金属部材または繊維強化複合材料部材の傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上である点において、第1の実施形態の重ね継手と相違している。
図6は、重ね継手54の構成を示す図である。重ね継手54については、金属部材56を図1に示す金属部材12の構成と同じにし、繊維強化複合材料部材58の板厚を一定としている。重ね部60(破線の間)の金属部材56では、重ね部60の金属部材側の端縁部60aから繊維強化複合材料部材側の端縁部60bに向けて板厚が次第に小さくなるように傾斜した傾斜面56aが形成されている。傾斜面56aについては、平面状であり、直線テーパ状に形成されている。なお、金属部材56については、図2(a)から図2(g)に示すいずれかの部材20〜32の構成としてもよい。
重ね継手54の場合には、重ね部60に傾斜面56aが形成されていることにより、重ね部60の繊維強化複合材料部材側の端縁部60bでは、従来の重ね継手よりも応力集中が緩和されると共に、重ね部60の端縁部60a、60bの間では、従来の重ね継手より応力が大きくなる領域を設けることができる。また、重ね継手54の場合には、繊維強化複合材料部材58の板厚を一定としているので、繊維強化複合材料部材58の成形加工が容易になる。
重ね継手54では、重ね部60における金属部材56の板厚を変化させているが、重ね部60の金属部材56の板厚を一定とし、重ね部60の繊維強化複合材料部材58の板厚を変化させてもよい。すなわち、重ね部60の金属部材56の板厚を一定とし、重ね部60の繊維強化複合材料部材58について、図1に示す繊維強化複合材料部材14の構成や、図2(a)から図2(g)に示すいずれかの部材20〜32の構成としてもよい。
重ね部のラップ幅は、重ね継手に要求される強度により相違するが、金属部材または繊維強化複合材料部材の傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であることが好ましく、例えば、1倍から50倍とすることが好ましい。傾斜面を形成する範囲は、重ね部のラップ幅の0.1倍から2倍の範囲とすることが好ましい。
第2の実施形態の重ね継手の製造方法では、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布がコントロールされる。これにより、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となると共に、構造物や接合強度特性等から要求される重ね部の応力分布に合わせた重ね継手を容易に製造することができる。第2の実施形態の重ね継手の製造方法では、金属部材や繊維強化複合材部材の加工方法や成形方法、板厚の変化の形態を変える方法、接合方法等について第1の実施形態の重ね継手の製造方法と同様であるので詳細な説明を省略する。
[第3の実施形態]
第3の実施形態の重ね継手では、重ね部は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着した接着層を有しており、接着層は、接着剤のヤング率が、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように形成されている点において、第1及び第2の実施形態の重ね継手と相違している。
図7は、重ね継手62の構成を示す図である。金属部材64と繊維強化複合材料部材66とは、板厚が一定で構成されている。重ね部68(破線の間)は、金属部材64と繊維強化複合材料部材66とを、ヤング率が異なる複数の接着剤70a〜70cで接着した接着層70を有している。接着層70の厚みについては、例えば、0.3mmから0.5mmである。なお、接着剤70a〜70cのヤング率とは、接着剤の硬化後におけるヤング率のことである。
接着層70は、接着剤70a〜70cのヤング率が、重ね部68の端縁部68a、68bに向けて次第に小さくなるようにして形成されている。より詳細には、重ね部68における端縁部68a、68bの間については接着剤70aで接着されている。重ね部68の端縁部68a、68bでは、接着剤70aよりもヤング率の小さい接着剤70b、70cで接着されている。例えば、接着剤70aのヤング率については、3700MPa〜3800MPa、接着剤70b、70cのヤング率については、1800MPa〜2100MPaとすることが可能である。
接着剤70a〜70cについては、同じ種類の樹脂系接着剤を用いてもよいし、異なる種類の樹脂系接着剤を用いてもよい。例えば、接着剤70a〜70cについて、いずれもエポキシ樹脂系接着剤を用いてもよいし、ポリイミド樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等を組み合わせて用いてもよい。なお、接着剤70b、70cについては、ヤング率が同じ接着剤を用いてもよいし、ヤング率が異なる接着剤を用いてもよい。
重ね部68のラップ幅に対する各接着剤70a〜70cの接着領域の幅については、重ね部68のラップ幅を1としたとき、例えば、接着剤70aの接着領域の幅aを0.75、接着剤70b、70cの接着領域の幅b、cを各0.125とすることが可能である。
重ね継手62では、重ね部68の端縁部68a、68bにおいて、せん断変形が大きくなるので、接着面の拘束を下げ、ひずみを分散させて、従来の重ね継手よりも応力集中を緩和することが可能となる。
図8は、他の重ね継手72の構成を示す図である。重ね継手72は、重ね継手62と重ね部74(破線の間)の接着層76の構成が相違している。重ね部74の中央部では、接着剤76aで接着されており、重ね部74の端縁部74a、74bでは、接着剤76aよりもヤング率の小さい接着剤76b、76cで接着されている。そして、重ね部74の中央部と端縁部74aとの間は、接着剤76aよりヤング率が小さく接着剤76bよりヤング率が大きい接着剤dで接着されている。重ね部74の中央部と端縁部74bとの間は、接着剤76aよりヤング率が小さく接着剤76cよりヤング率が大きい接着剤eで接着されている。
例えば、接着剤76aのヤング率については、3700MPa〜3800MPa、接着剤76b、76cのヤング率については、1000MPaから1300MPa、接着剤d、eのヤング率については、2000MPa〜2600MPaとすることが可能である。なお、接着剤76b、76cについては、ヤング率が同じ接着剤を用いてもよいし、ヤング率が異なる接着剤を用いてもよく、接着剤76d、76eについては、ヤング率が同じ接着剤を用いてもよいし、ヤング率が異なる接着剤を用いてもよい。このように、接着剤76a〜76eのヤング率について、重ね部74の端縁部74a、74bに向けて次第に小さくなるように傾斜させてもよい。
重ね部74のラップ幅に対する接着剤76a〜76eの接着領域の幅については、重ね部74のラップ幅を1としたとき、例えば、接着剤76aの接着領域の幅aを0.5、接着剤76b〜76eの接着領域の幅b〜eを各0.125とすることが可能である。
次に、第3の実施形態の重ね継手の製造方法について説明する。金属部材と繊維強化複合材部材とについて、接着剤のヤング率が重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるようにして接着する。金属部材や繊維強化複合材部材の加工方法や成形方法については、第1及び第2の実施形態の重ね継手の製造方法と同様である。
ヤング率が異なる接着剤には、一般的に市販されている接着剤を用いることが可能である。接着剤には、例えば、SKYBOND703(Industrial Summit Technology社製、ヤング率が約3770MPa)等のポリイミド樹脂系接着剤、DP460(3M社製、ヤング率が約2077MPa)等のエポキシ樹脂系接着剤、MA310(ITW社製、ヤング率が1034から1207MPa)等のアクリル樹脂系接着剤を組み合わせて用いることができる。接着剤の硬化条件(硬化温度等)が同じである場合には、1工程で同時に接着剤を硬化させることができる。また、接着剤の硬化条件が異なる場合には、硬化条件ごとに複数工程に分けて接着剤を硬化させればよい。
[第4の実施形態]
第4の実施形態の重ね継手は、第1の実施形態の重ね継手と、第3の実施形態の重ね継手の接着層とを組み合わせた構成と、第2の実施形態の重ね継手と、第3の実施形態の重ね継手の接着層とを組み合わせた構成と、からなる。
図9は、重ね継手80の構成を示す図である。重ね継手80は、図6に示す重ね継手54の構成と、図7に示す重ね継手62の接着層70の構成とを組み合わせて構成されている。重ね部82(破線の間)は、重ね部82の金属部材側の端縁部82aから繊維強化複合材料部材側の端縁部82bに向けて金属部材56の板厚が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面56aを有している。重ね部82の接着層70は、接着剤70a〜70cのヤング率が、重ね部82の端縁部82a、82bに向けて次第に小さくなるようにして形成されている、これにより、重ね部82の端縁部82a、82bでは、せん断変形が大きくなるので、接着面の拘束を下げ、ひずみを分散させて、従来の重ね継手よりも応力集中を緩和することが可能となる。
なお、図9に示す重ね継手82では、重ね部82の金属部材56の板厚のみ変化させているが、重ね部82の繊維強化複合材料部材58の板厚のみ変化させてもよいし、第1の実施形態の重ね継手のように、重ね部82における金属部材56の板厚と繊維強化複合材料部材58の板厚とを変化させてもよい。
第4の実施形態の重ね継手の製造方法については、第1、第2、及び第3の実施形態の重ね継手の製造方法の構成を組み合わせて用いることにより製造可能であるので、詳細な説明を省略する。
第4の実施形態の重ね継手によれば、第1及び第2の実施形態の重ね継手の効果を奏すると共に、第3の実施形態の重ね継手の効果も奏することから、第1及び第2の実施形態の重ね継手よりも重ね部における端縁部の応力集中をより緩和することができる。
[第5の実施形態]
金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の設計方法について説明する。図10は、重ね継手の設計方法を説明するためのフローチャートである。
第1のステップ(S10)は、金属部材と繊維強化複合材料部材とにおけるヤング率とポアソン比とを含む材料パラメータと、金属部材と繊維強化複合材料部材との重ね部のラップ幅と、を決定するステップである。これらの材料パラメータやラップ幅については、船舶等の実機に適用される重ね継手に基づいて決められる。また、材料パラメータには、重ね部の接合層におけるヤング率とポアソン比とを含めるようにしてもよい。例えば、接合層が接着層からなる場合には、材料パラメータに、接着剤のヤング率とポアソン比とを含めることが可能である。
第2のステップ(S12)は、材料パラメータと、重ね部のラップ幅と共に、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との少なくとも一方を、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析するステップである。
板厚の変化の形態を変えるためには、第1及び第2の実施形態の重ね継手に示すように、重ね部に、金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚との少なくとも一方が重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、傾斜面の傾き、傾斜面における平面状または曲面状の面形状、傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変化させればよい。
より詳細には、傾斜面の傾きの変化については、例えば、図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す部材20、22、24のように構成して、傾斜面の傾きを変えればよい。傾斜面における平面状または曲面状の面形状の変化については、例えば、図2(a)から図2(d)に示す部材20、22、24、26のように構成して、傾斜面の面形状を変えればよい。傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無については、例えば、図2(a)、図2(e)及び図2(f)に示す部材20、28、30のように構成して、凹部または凸部の有無を変えればよい。重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無については、例えば、図2(a)及び図2(g)に示す部材20、32のように構成して、凹部の有無を変えればよい。そして、このように板厚の変化の形態を変えて応力解析し、重ね部の応力分布を評価する。応力解析には、有限要素法(FEM)解析等の一般的な応力解析方法を用いることが可能である。
第3のステップ(S14)は、応力解析により得られた重ね部に作用する応力分布が、実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満足するように、重ね部における板厚の変化の形態を決定するステップである。応力解析により得られた重ね部の端縁部に作用する応力と、重ね部の端縁部の間に作用する応力とが、船舶等の実機の構造物から要求される重ね部の応力分布(例えば、許容応力等)を満たすように、重ね部の板厚の変化の形態が決定される。なお、第1のステップ(S10)から第3のステップ(S14)については、一般的なコンピュータシステムによって行うことが可能である。
次に、重ね部を接着剤で接着して形成した重ね継手の設計方法について説明する。第1のステップ(S10)では、材料パラメータには、更に、接着剤のヤング率、ポアソン比が含まれると共に、接着層の厚みが決定される。
第2のステップ(S12)では、更に、接着剤のヤング率が重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように変化させると共に、接着剤のヤング率の変化の形態を変えて、重ね部の応力分布を応力解析する。例えば、接着層における接着剤のヤング率の変化の形態としては、図7に示す重ね継手62の接着層70の構成や、図8に示す重ね継手72の接着層76の構成を適用することが可能である。
第3のステップ(S14)では、更に、接着剤のヤング率の変化の形態を決定する。これにより、応力解析により得られた重ね部に作用する応力分布が、実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満足するように、重ね部における板厚の変化の形態と、接着層における接着剤のヤング率の変化の形態と、が決定される。
上記構成の重ね継手の設計方法によれば、重ね部の端縁部の応力集中が緩和され、重ね継手の破壊を抑制することが可能となると共に、船舶等の実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満たす重ね継手を容易に設計することができる。
[第1の実施例]
鋼材とCFRPとを重ね合わせた重ね継手において、重ね部における鋼材の板厚とCFRPの板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、重ね部における鋼材の板厚とCFRPの板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の応力分布等を有限要素法(FEM)解析により評価した。まず、重ね継手の解析モデルについて説明する。
図11は、比較例Xの解析モデルを示す図であり、図11(a)は、比較例Xの解析モデルの平面図であり、図11(b)は、比較例Xの解析モデルの側面図である。鋼材とCFRPとの形状については同じ形状とし、板厚については3.2mmとした。鋼材とCFRPとの重ね部については、接着剤での接合とした。重ね部のラップ幅については80mmとし、接着剤の層厚さについては0.4mmとした。
図12は、実施例Aから実施例Gの解析モデルを示す図であり、図12(a)は、実施例Aの解析モデルを示す図であり、図12(b)は、実施例Bの解析モデルを示す図であり、図12(c)は、実施例Cの解析モデルを示す図であり、図12(d)は、実施例Dの解析モデルを示す図であり、図12(e)は、実施例Eの解析モデルを示す図であり、図12(f)は、実施例Fの解析モデルを示す図であり、図12(g)は、実施例Gの解析モデルを示す図である。
実施例Aから実施例Gの解析モデルは、比較例Xの解析モデルと重ね部の形状が相違しており、その他の構成については比較例Xの解析モデルと同じである。なお、実施例Aから実施例Gの解析モデルについても、重ね部に0.4mmの接着層(図示せず)を設けている。
実施例A、Bの解析モデルでは、鋼材とCFRPとについて、図2(a)に示す構成を用いた。実施例Aの解析モデルの傾斜面の傾きについては0.160とし、実施例Bの解析モデルの傾斜面の傾きについては0.064とした。実施例Cの解析モデルでは、鋼材とCFRPとについて、図1に示す構成を用いた。実施例Cの解析モデルの傾斜面の傾きについては、0.040とした。実施例Dの解析モデルでは、鋼材とCFRPとについて、図2(c)に示す構成を用いた。実施例Dの解析モデルにおける重ね部の端縁部の傾きについては0とした。
実施例Eの解析モデルでは、鋼材について、図1に示す金属部材の構成を用い、CFRPについて、図2(a)に示す構成を用いた。実施例Fの解析モデルでは、鋼材について、図1に示す金属部材の構成を用い、CFRPについて、図2(b)に示す構成を用いた。実施例Gの解析モデルでは、鋼材とCFRPとについて、図2(g)に示す構成を用いた。なお、凹部32bについては、凹溝とした。
次に、FEM解析方法について説明する。図13は、FEM解析方法を説明するための図である。FEM解析では、鋼材側を固定し、CFRP側のX方向に強制変位を付与して解析を行った。表1に、鋼材、CFRP、接着剤の各材料定数を示す。なお、図13では、比較例Xの解析モデルのFEM解析方法を示しているが、実施例AからGの解析モデルのFEM解析方法についても同様である。
Figure 2016118292
比較例X、実施例AからDの解析モデルについて、重ね部の端縁部における応力緩和について評価した。
図14は、重ね部の端縁部における応力緩和の評価結果を示すグラフである。図14のグラフでは、横軸に重ね部に設けた傾斜面の傾きを取り、縦軸に応力変化率を取り、重ね部の鋼材側端縁部の応力変化率を黒菱形で示し、重ね部のCFRP側端縁部の応力変化率を白四角形で示している。
応力変化率については、比較例Xの解析モデルのミーゼス相当応力をσとし、実施例AからDの解析モデルの各ミーゼス相当応力をσとしたとき、σ/σで算出した。各解析モデルのミーゼス相当応力については、鋼材と接着層との間に作用する応力とした。
実施例AからDの解析モデルでは、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部とにおいて、応力変化率が1より小さくなり、比較例Xの解析モデルよりも応力集中を緩和できることがわかった。また、重ね部の傾斜面の傾きを変えることにより応力変化率が変わることから、重ね部における金属部材の板厚と繊維強化複合材料部材の板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、重ね部における鋼材の板厚とCFRPの板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合いを制御できることがわかった。
次に、比較例X、実施例C、E,F、Gの解析モデルについて、重ね部の応力分布について評価した。
図15は、比較例X、実施例C、E、Fの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。図16は、比較例X、実施例C、Gの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフである。図15及び図16のグラフにおいて、横軸には重ね部の鋼材側端縁部からの距離(比較例Xの解析モデルでは図11(b)に示すXであり、実施例C、E,F、Gの解析モデルでも同様)を取り、縦軸には、応力を取り、各解析モデルの応力分布を実線等で示している。応力については、鋼材と接着層との間に作用するミーゼス相当応力とした。
比較例Xの解析モデルでは、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部で応力集中が大きくなり、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部の間では、応力負担が小さくなった。これに対して実施例C、E,F、Gの解析モデルでは、比較例Xの解析モデルよりも、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部で応力が低下しており、応力集中が緩和された。例えば、CFRP側端縁部では、比較例Xの解析モデルが3.0であり、実施例Cの解析モデルが2.8であり、実施例Eの解析モデルが2.6であり、実施例Fの解析モデルが2.9であり、実施例Gの解析モデルが2.0であった。
また、実施例C、E,F、Gの解析モデルでは、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部での応力集中の緩和に伴って、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部の間では、比較例Xの解析モデルよりも応力負担が大きくなった。
重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部の間の応力分布については、実施例C、E,F、Gの解析モデルでは、解析モデルごとに応力分布が相違していた。図15に示すように、重ね部の鋼材側端縁からの距離が約5mmから約60mmの領域では、実施例Eの解析モデルでは、実施例Cの解析モデルよりも応力が小さくなり、実施例Fの解析モデルでは、実施例Cの解析モデルよりも応力が大きくなった。図16に示すように、実施例Gの解析モデルでは、実施例Cの解析モデルよりも、重ね部の略全ての領域で応力が小さくなった。また、実施例Gの解析モデルでは、重ね部の鋼材側端縁からの距離が約10mmから約20mmの領域と、約60mmから約70mmの領域とにおいて局所的な応力の変化が得られた。
以上の解析結果から、重ね部における鋼材の板厚とCFRPの板厚とを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、鋼材の板厚とCFRPの板厚との変化の形態を変えることにより、重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、重ね部の応力分布をコントロールできることがわかった。
[第2の実施例]
鋼材とCFRPとを重ね合わせた重ね継手において、重ね部におけるCFRPの板厚を一定とし、重ね部における鋼材の板厚のみを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、重ね部における鋼材の板厚の変化の形態を変えることにより、重ね部の応力分布をFEM解析により評価した。まず、重ね継手の解析モデルについて説明する。
図17は、実施例H、Iの解析モデルを示す図であり、図17(a)は、実施例Hの解析モデルを示す図であり、図17(b)は、実施例Iの解析モデルを示す図である。実施例H、Iの解析モデルは、比較例Xの解析モデルと重ね部の形状が相違しており、その他の構成については比較例Xの解析モデルと同じである。実施例Hの解析モデルでは、鋼材について、図1に示す金属部材の構成を用いた。実施例Iの解析モデルでは、鋼材について、図2(g)に示す部材の構成を用いた。凹部32bについては、凹溝とした。実施例H、Iの解析モデルについても、重ね部に0.4mmの接着層(図示せず)を設けている。
次に、FEM解析方法について説明する。図18は、FEM解析方法を説明するための図である。FEM解析では、CFRP側のX方向に強制変位0.003mmを付与して解析を行った。鋼材、CFRP、接着剤の各材料定数については、表1に示す材料定数と同じである。なお、図18では、比較例Xの解析モデルのFEM解析方法を示しているが、実施例H、Iの解析モデルのFEM解析方法についても同様である。
図19は、比較例X、実施例H、Iの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフであり、図19(a)は、鋼材と接着層との間に作用する応力分布を示すグラフであり、図19(b)は、CFRPと接着層との間に作用する応力分布を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸には重ね部の鋼材側端縁部からの距離(比較例Xの解析モデルでは図18に示すXであり、実施例H、Iの解析モデルでも同様)を取り、縦軸には、応力を取り、各解析モデルの応力分布を実線等で示している。応力についてはミーゼス相当応力とした。
重ね部の鋼材側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは2.67、実施例Hの解析モデルでは2.81、実施例Iの解析モデルでは2.71であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは0.31、実施例Hの解析モデルでは0.33、実施例Iの解析モデルでは0.31であった。
重ね部のCFRP側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは3.01、実施例Hの解析モデルでは2.54、実施例Iの解析モデルでは1.94であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは6.97、実施例Hの解析モデルでは5.06、実施例Iの解析モデルでは5.75であった。
この結果から、実施例H、Iの解析モデルでは、比較例Xの解析モデルよりも、重ね部のCFRP側端縁部で応力が低下しており、応力集中が緩和された。また、実施例H、Iの解析モデルでは、重ね部のCFRP側端縁部での応力集中の緩和に伴って、重ね部の鋼材側端縁部とCFRP側端縁部との間では、比較例Xの解析モデルよりも応力が大きくなる領域が認められた。
[第3の実施例]
鋼材とCFRPとを重ね合わせた重ね継手において、重ね部の接着層を形成する接着剤のヤング率が、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるようにして、重ね部の応力分布をFEM解析により評価した。まず、重ね継手の解析モデルについて説明する。
図20は、実施例J、Kの解析モデルを示す図であり、図20(a)は、実施例Jの解析モデルを示す図であり、図20(b)は、実施例Kの解析モデルを示す図である。実施例J、Kの解析モデルでは、比較例Xの解析モデルと接着層の構成が相違しており、その他の構成については比較例Xの解析モデルと同じである。なお、実施例J、Kの解析モデルの接着層の厚みについては0.4mmである。FEM解析については、図18に示すFEM解析方法と同じ方法で解析した。表2に、実施例Jの解析モデルにおける鋼材、CFRP、接着剤の各材料定数を示す。表3に、実施例Kの解析モデルにおける鋼材、CFRP、接着剤の各材料定数を示す。
Figure 2016118292
Figure 2016118292
図21は、比較例X、実施例J、Kの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフであり、図21(a)は、鋼材と接着層との間に作用する応力分布を示すグラフであり、図21(b)は、CFRPと接着層との間に作用する応力分布を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸には重ね部の鋼材側端縁部からの距離(比較例Xの解析モデルでは図18に示すXであり、実施例J,Kの解析モデルでも同様)を取り、縦軸には応力を取り、各解析モデルの応力分布を実線等で示している。応力についてはミーゼス相当応力とした。
重ね部の鋼材側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは2.67、実施例Jの解析モデルでは2.05、実施例Kの解析モデルでは1.81であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは0.31、実施例Jの解析モデルでは0.25、実施例Kの解析モデルでは0.21であった。
重ね部のCFRP側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは3.01、実施例Hの解析モデルでは2.04、実施例Iの解析モデルでは1.57であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは6.97、実施例Hの解析モデルでは4.73、実施例Iの解析モデルでは3.87であった。
この結果から、実施例J、Kの解析モデルでは、比較例Xの解析モデルよりも、重ね部の鋼材側端縁部及びCFRP側端縁部で応力が低下しており、応力集中が緩和されることがわかった。
[第4の実施例]
鋼材とCFRPとを重ね合わせた重ね継手において、重ね部のCFRPの板厚を一定とし、重ね部における鋼材の板厚のみを、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、重ね部の接着層を形成する接着剤のヤング率が、重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるようにして、重ね部の応力分布をFEM解析により評価した。まず、重ね継手の解析モデルについて説明する。
図22は、実施例L、Mの解析モデルを示す図であり、図22(a)は、実施例Lの解析モデルを示す図であり、図22(b)は、実施例Mの解析モデルを示す図である。実施例L、Mの解析モデルは、比較例Xの解析モデルと重ね部の形状が相違しており、その他の構成については比較例Xの解析モデルと同じである。実施例Lの解析モデルについては、図17(a)に示す実施例Hの解析モデルと、図20(a)に示す実施例Jの解析モデルの接着層の構成を組み合わせて構成されている。また、実施例Mの解析モデルについては、図17(b)に示す実施例Iの解析モデルと、図20(a)に示す実施例Jの解析モデルの接着層の構成を組み合わせて構成されている。FEM解析については、図18に示すFEM解析方法と同じ方法で解析した。実施例L、Mの解析モデルにおける鋼材、CFRP、接着剤の各材料定数については、表2に示す各材料定数と同じである。
図23は、比較例X、実施例L、Mの解析モデルにおける重ね部の応力分布を示すグラフであり、図23(a)は、鋼材と接着層との間に作用する応力分布を示すグラフであり、図23(b)は、CFRPと接着層との間に作用する応力分布を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸には重ね部の鋼材側端縁部からの距離(比較例Xの解析モデルでは図18に示すXであり、実施例L、Mの解析モデルでも同様)を取り、縦軸には応力を取り、各解析モデルの応力分布を実線等で示している。応力についてはミーゼス相当応力とした。
重ね部の鋼材側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは2.69、実施例Lの解析モデルでは2.16、実施例Mの解析モデルでは2.08であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは0.31、実施例Lの解析モデルでは0.26、実施例Mの解析モデルでは0.25であった。
重ね部のCFRP側端縁部では、鋼材と接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは3.01、実施例Lの解析モデルでは2.24、実施例Mの解析モデルでは1.64であり、CFRPと接着層との間に作用する応力が、比較例Xの解析モデルでは6.97、実施例Lの解析モデルでは3.57、実施例Mの解析モデルでは3.98であった。
この結果から、実施例L、Mの解析モデルでは、比較例Xの解析モデルよりも、重ね部の鋼材側端縁部及びCFRP側端縁部で応力が低下しており、応力集中が緩和された。また、実施例Lの解析モデルでは、実施例Hの解析モデルよりも応力集中が緩和されており、実施例Mの解析モデルでは、実施例Iの解析モデルよりも応力集中が緩和された。
10、34、40、46、54、62、72、80 重ね継手、
12、35、41、48、56、64 金属部材、
14、36、42、50、58、66 繊維強化複合材料部材、
16、38、44、52、60、68、74,82 重ね部。

Claims (18)

  1. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールするために、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とが変化していることを特徴とする重ね継手。
  2. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部は、前記重ね部の端縁部に向けて前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との板厚が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、
    前記重ね部のラップ幅は、前記金属部材または前記繊維強化複合材料部材の前記傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であることを特徴とする重ね継手。
  3. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールするために、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が、変化していることを特徴とする重ね継手。
  4. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部は、前記重ね部の端縁部に向けて前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方が次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を有し、
    前記重ね部のラップ幅は、前記金属部材または前記繊維強化複合材料部材の前記傾斜面を除いた部位の板厚の1倍以上であることを特徴とする重ね継手。
  5. 請求項2または4に記載の重ね継手であって、
    前記傾斜面を形成する範囲は、前記重ね部のラップ幅の0.1倍から2倍の範囲であることを特徴とする重ね継手。
  6. 請求項2、4または5に記載の重ね継手であって、
    前記傾斜面は、平面状の傾斜面であることを特徴とする重ね継手。
  7. 請求項2、4または5に記載の重ね継手であって、
    前記傾斜面は、曲面状の傾斜面であることを特徴とする重ね継手。
  8. 請求項2、4、5、6または7に記載の重ね継手であって、
    前記重ね部は、前記傾斜面を除いた箇所に凹部が設けられていることを特徴とする重ね継手。
  9. 請求項2、4、5、6、7または8のいずれか1つに記載の重ね継手であって、
    前記重ね部は、前記傾斜面に凹部が設けられていることを特徴とする重ね継手。
  10. 請求項2、4、5、6、7、8または9のいずれか1つに記載の重ね継手であって、
    前記重ね部は、前記傾斜面に凸部が設けられていることを特徴とする重ね継手。
  11. 請求項1から10のいずれか1つに記載の重ね継手であって、
    前記重ね部は、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着した接着層を有し、
    前記接着層は、前記接着剤のヤング率が、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする重ね継手。
  12. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の製造方法であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とを、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚との変化の形態を変えることにより、前記重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールすることを特徴とする重ね継手の製造方法。
  13. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の製造方法であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚とのどちらか一方を、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えることにより、前記重ね部の端縁部における応力集中の緩和の度合を調整すると共に、前記重ね部における端縁部の間の応力負担を調整して、前記重ね部の応力分布をコントロールすることを特徴とする重ね継手の製造方法。
  14. 請求項12または13に記載の重ね継手の製造方法であって、
    前記板厚の変化の形態を変えるために、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、前記傾斜面の傾き、前記傾斜面における平面状または曲面状の面形状、前記傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び前記重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変えることを特徴とする重ね継手の製造方法。
  15. 請求項12から14のいずれか1つに記載の重ね継手の製造方法であって、
    前記重ね部は、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着して形成されており、
    前記重ね部の端縁部に向けて接着剤のヤング率が次第に小さくなるように接着することを特徴とする重ね継手の製造方法。
  16. 金属部材と繊維強化複合材料部材とを重ね合わせた重ね継手の設計方法であって、
    前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材とにおけるヤング率とポアソン比とを含む材料パラメータと、前記金属部材と前記繊維強化複合材料部材との重ね部のラップ幅と、を決定する第1のステップと、
    前記材料パラメータと、前記ラップ幅と共に、前記重ね部における前記金属部材の板厚と前記繊維強化複合材料部材の板厚との少なくとも一方を、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなる傾向に変化させると共に、板厚の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析する第2のステップと、
    前記応力解析により得られた重ね部に作用する応力分布が、実機の構造物から要求される重ね部の応力分布を満足するように、重ね部における板厚の変化の形態を決定する第3のステップと、
    を備えることを特徴とする重ね継手の設計方法。
  17. 請求項16に記載の重ね継手の設計方法であって、
    前記第2のステップにおいて、前記板厚の変化の形態を変えるために、前記重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように傾斜して形成される傾斜面を設け、前記傾斜面の傾き、前記傾斜面における平面状または曲面状の面形状、前記傾斜面に設けられる凹部または凸部の有無、及び前記重ね部における傾斜面を除いた箇所に設けられる凹部の有無の少なくとも1つを変えることを特徴とする重ね継手の設計方法。
  18. 請求項16または17に記載の重ね継手の設計方法であって、
    前記重ね部は、金属部材と繊維強化複合材料部材とを接着剤で接着して形成されており、
    前記第1のステップにおいて、前記材料パラメータは、接着剤のヤング率とポアソン比とを含むと共に、前記重ね部の接着層の厚みを決定し、
    前記第2のステップにおいて、接着剤のヤング率が重ね部の端縁部に向けて次第に小さくなるように変化させると共に、接着剤のヤング率の変化の形態を変えて重ね部の応力分布を応力解析し、
    前記第3のステップにおいて、接着剤のヤング率の変化の形態を決定することを特徴とする重ね継手の設計方法。
JP2015084100A 2014-12-18 2015-04-16 重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法 Active JP6515654B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014255719 2014-12-18
JP2014255719 2014-12-18

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016118292A true JP2016118292A (ja) 2016-06-30
JP6515654B2 JP6515654B2 (ja) 2019-05-22

Family

ID=56243847

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015084100A Active JP6515654B2 (ja) 2014-12-18 2015-04-16 重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6515654B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107323022A (zh) * 2017-07-24 2017-11-07 北京汽车集团有限公司 复合材料与金属材料的胶接连接结构及其制备方法
JP2019001065A (ja) * 2017-06-15 2019-01-10 マツダ株式会社 金属部材と樹脂部材との接合方法およびその方法において使用される金属部材または樹脂部材

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0565923A (ja) * 1991-09-06 1993-03-19 Toyota Motor Corp 複合材料製駆動軸の接着構造
JPH0587116A (ja) * 1991-09-25 1993-04-06 Toyota Motor Corp 複合動力伝達軸
JPH1068479A (ja) * 1996-08-27 1998-03-10 Kawasaki Heavy Ind Ltd 重ね合わせ接着継手

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0565923A (ja) * 1991-09-06 1993-03-19 Toyota Motor Corp 複合材料製駆動軸の接着構造
JPH0587116A (ja) * 1991-09-25 1993-04-06 Toyota Motor Corp 複合動力伝達軸
JPH1068479A (ja) * 1996-08-27 1998-03-10 Kawasaki Heavy Ind Ltd 重ね合わせ接着継手

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019001065A (ja) * 2017-06-15 2019-01-10 マツダ株式会社 金属部材と樹脂部材との接合方法およびその方法において使用される金属部材または樹脂部材
CN107323022A (zh) * 2017-07-24 2017-11-07 北京汽车集团有限公司 复合材料与金属材料的胶接连接结构及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6515654B2 (ja) 2019-05-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2619767C (en) Stringers made of a composite material with a bulb
US8864074B2 (en) Composite panel stiffener
US9227375B2 (en) Process for bonding two parts subjected to tensile forces, bonded parts obtained
US20100178453A1 (en) Elongate composite structural member
TW201040055A (en) Railroad vehicle body structure and method of manufacturing same
EP2583814B1 (en) Method for manufacturing t-shaped aircraft beams and a curing tool used during same
US20160244140A1 (en) Joint, and aircraft structure
EP3029339A1 (en) Joint, and aircraft structure
JP2016118292A (ja) 重ね継手及びその製造方法、並びにその設計方法
US9145195B2 (en) Aircraft panel structure and aircraft panel structure manufacturing method for alleviation of stress
JP2014031703A (ja) 梁端部の接合構造
JP6961984B2 (ja) 柱構造体
JP6558185B2 (ja) 桁構造体
US20210339843A1 (en) Stringer assemblies and methods of forming thereof
EP3210764B1 (en) Composite structure, aircraft, and method for designing corner fillet section
US20180208330A1 (en) Structure reinforcement with polymer matrix composite
WO2016129570A1 (ja) 接着構造
WO2015098147A1 (ja) アイソグリッドパネル構造体およびアイソグリッドパネル構造体製造方法
JP6597680B2 (ja) 自動車のドアパネル部品の張り剛性向上方法及び自動車のドアパネル部品
US20200224691A1 (en) Hybrid tension/transverse compression structural joint
CA2763175C (en) Panel member, aircraft main wing, and method for forming panel member
US20200262177A1 (en) Laminated board and method for processing laminated board
US20230135339A1 (en) Sandwich panel and manufacturing method for sandwich panel
EP3162673B1 (en) Interlock
JP7138460B2 (ja) 鉄骨梁の補強方法および鉄骨梁

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180222

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181213

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190313

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190319

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190401

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6515654

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151