以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態としての電子写真方式のプリンタを示す概略構成図である。図1に示されているプリンタ100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つのトナー像形成部6Y、6M、6C、6Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。これら4つのトナー像形成部6Y、6M、6C、6Kそれぞれが、本発明にいう作像ユニットの一例に相当する。
Y色トナー像を生成するためのトナー像形成部6Yを例に挙げ、その構成について説明する。トナー像形成部6Yは、感光体ドラム1Y、ドラムクリーニング装置2Y、帯電装置30Y、露光後表面電位センサ4Y、現像装置5Y、露光装置7Yを備えている。感光体ドラム1Yは、所定の駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される。ドラムクリーニング装置2Yは、この感光体ドラム1Yの周面から残留トナー等の付着物を除去する装置であり、帯電装置30Yは、トナー像形成部6Yに搭載され、露光前に感光体ドラム1Yの周面を均一に帯電させる装置である。また、露光後表面電位センサ4Yは、露光後の感光体ドラム1Yの周面の表面電位を検出するセンサであり、現像装置5Yは、感光体ドラム1Yの周面に形成された静電潜像をY色トナーで現像する装置である。そして、露光装置7Yは、帯電後の感光体ドラム1Yの周面を、画像データに基づいて変調されたレーザ光で露光走査し、その周面に静電潜像を形成する装置である。
トナー像形成部6Yにおけるトナー像形成動作について説明する。まず、回転中の感光体ドラム1Yの周面が帯電装置30Yによって均一に帯電せしめられる。続いて、その周面が、露光装置7Yによって露光走査されてY色用の静電潜像が形成される。このY色の静電潜像が、Y色トナーを用いる現像装置5Yによって現像されてY色トナー像が形成される。このY色トナー像が、後述の中間転写ユニット15における中間転写ベルト8上に転写される。この後、ドラムクリーニング装置2Yが、中間転写工程を経た後の感光体ドラム1Yの周面に残留したトナーを除去する。さらに、帯電装置30Yにおいて、感光体ドラム1Yの周面における残留電荷が除電されて初期化された後、再度、その周面が均一に帯電せしめられ、次の画像形成に備えられる。
他のトナー像形成部6M、6C、6Kにおいても、同様にして感光体ドラム1M、1C、1K上にM,C,K各色のトナー像が形成される。
各色のトナー像形成部6Y、6M、6C、6Kの図中下方には、中間転写体たる中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる中間転写ユニット15が配設されている。この中間転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、4つの1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9K、ベルトクリーニング装置10、2次転写バックアップローラ12を備えている。
中間転写ベルト8は、図中時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8には、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上のY,M,C,K各色のトナー像が重ね合わされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
2次転写バックアップローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Pに転写される。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーが、ベルトクリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップにおいては、転写紙Pが互いに順方向に表面移動する中間転写ベルト8と2次転写ローラ19との間に挟まれて搬送される。
プリンタ100には、転写紙Pに転写された4色トナー像を定着させる定着装置20が備えられており、2次転写ニップを通過した転写紙Pは、この定着装置20に向けて送り出される。2次転写ニップから送り出された転写紙Pには、定着装置20のローラ間を通過する際に熱と圧力とにより4色トナー像が定着される。
また、中間転写ベルト8の移動方向の最下流に位置するK色のトナー像形成部6Kと2次転写ニップ部の間には、中間転写ベルト8に対向して、濃度検出手段としての反射型フォトセンサ40が配設されている。反射型フォトセンサ40は、後述するプロセスコントロールの際に中間転写ベルト8上に形成される各色のトナーパッチのトナー付着量を検知し、制御部150に検知結果を出力する。
制御部150は、プリンタ100における上述の各構成要素の動作を制御する。図2は、図1に示されているプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。上述したトナー像形成部6Y,6M,6C,6K、中間転写ユニット15、定着装置20、反射型フォトセンサ40は、制御部150に電気的に接続されており、この制御部150によって動作が制御される。制御部150は、例えば、CPU150aやROM150b、RAM150c、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータとして構成される。CPU150aがRAM150cをワークエリアとして利用してROM150bに格納された制御プログラムを実行する。これにより、トナー像形成部6Y,6M,6C,6K、中間転写ユニット15、定着装置20、反射型フォトセンサ40などの動作を制御する。
本実施形態のプリンタ100では、制御部150による制御のもとでプロセスコントロールと呼ばれる処理が実行され、その中で、画像の濃度を調整する制御が実行される。プロセスコントロールは、例えば、プリンタ100の主電源投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上の印刷を終了した後の待機時など、所定のタイミングで実行される。
プロセスコントロールでは、上記のタイミングが到来すると、まず、反射型フォトセンサ40の校正が行われる。このセンサ校正では、中間転写ベルト8上にトナー像を作像しない状態で反射型フォトセンサ40を作動させ、反射型フォトセンサ40の発光光量を順次変化させながら、検知電圧が所定の値となる発光光量が求められる。この発光光量は、例えば制御部150のRAM150cなどに記憶され、その後の画像濃度調整の際に用いられる。
次に、トナー像形成部6Y,6M,6C,6Kの感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kを回転させながら、これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kを帯電させる。このときの帯電は、通常のプリント時における一様な帯電(例えば−700V)とは異なり、制御部150により、その電位を徐々に大きくしていくように制御される。そして、制御部150による制御のもとで、各色の階調パターンが感光体ドラム1Y,1M,1C,1K上にそれぞれ形成される。各色の階調パターンは、濃度が異なる複数(例えば10個)のトナーパッチからなる。なお、現像の際、制御部150は、それぞれの現像装置5Y,5M,5C,5Kの現像ローラに印加される現像バイアスの値も徐々に高く(もしくは低く)していくように制御する。
続いて、中間転写ベルト8に各色の階調パターンが転写されると、中間転写ベルト8の無端移動に伴って反射型フォトセンサ40との対向位置を通過する際、その光反射量が検知される。そして、各色の階調パターンそれぞれのトナーパッチ濃度に応じた電気信号が、反射型フォトセンサ40から制御部150に出力される。制御部150は、反射型フォトセンサ40から順次送られてくるこの出力信号に基づいて、各色の階調パターンそれぞれの複数のトナーパッチのトナー付着量を求めて、RAM150cに格納していく。ここで、制御部150は、トナー付着量をRAM150cに格納すると同時に、各色の階調パターンの作像条件から現像ポテンシャルを推定し、階調パターンの情報もRAM150cに格納する。現像ポテンシャルとは、現像バイアスとパターン像電位(即ち、露光部分の電位)の差のことである。反射型フォトセンサ40との対向位置を通過した各色の階調パターンは、上記ベルトクリーニング装置10によってそれぞれクリーニングされる。
図3は、階調パターンを構成する各トナーパッチ形成時の現像ポテンシャルとトナー付着量との関係をX−Y平面上にプロットしたグラフである。この図3に示されているグラフG1では、X軸に現像ポテンシャル(単位V)、Y軸に単位面積当たりのトナー付着量(mg/cm2)を割り振っている。制御部150は、図3のようにプロットしたデータより直線区域を選択し、区間内のデータに対して最小自乗法を適用することにより直線近似を行って得られる直線方程式を各色について求める。そして、この直線方程式により、目標のトナー付着量が得られる現像ポテンシャルを計算し、この現像ポテンシャルを実現するように作像条件(露光光量、帯電バイアス、現像バイアスなど)を調整することによって、画像濃度の維持が図られる。
次に、図1に示されている帯電装置30Y,30M,30C,30Kについて詳細に説明する。図4は、図1に示されている本発明の第1実施形態にかかる帯電装置を、トナー像形成部の各構成要素とともに拡大して示した図である。尚、図4では、色の概念が捨象され、トナーの色を示す添え字Y,M,C,Kが省略されている。以下、トナーの色については特に区別せずに説明を行う。
本実施形態における帯電装置30は、装置本体31と、除電ランプ32と、遮光部材33と、帯電前表面電位センサ34と、光量調節部35と、を備えている。帯電前表面電位センサ34が、本発明にいう表面電位センサの一例に相当する。
装置本体31は、グリッド電極311と、3本の放電ワイヤ312〜314を有するスコロトロン帯電器となっている。グリッド電極311は、感光体ドラム1の周面に対面して延在し、この周面の表面電位を制御する。3本の放電ワイヤ312〜314は、各々が感光体ドラム1の回転軸に沿って延び、感光体ドラム1の回転方向D1に互いに平行に配列されている。これら3本の放電ワイヤ312〜314は放電により感光体ドラム1の周面をマイナス極性で帯電させる。3本の放電ワイヤ312〜314のうち、回転方向D1の下流側の2本の放電ワイヤ312,313それぞれが、本発明にいう第1帯電部材の一例に相当する。また、回転方向D1の最上流側の放電ワイヤ314が、本発明にいう第2帯電部材の一例に相当する。
除電ランプ32は、3本の放電ワイヤ312〜314よりも感光体ドラム1の周面から遠くに配置され、感光体ドラム1の周面に光を照射することで、その周面を除電する。本実施形態では、除電ランプ32は、上記の最上流側の放電ワイヤ314と、その下流側の放電ワイヤ313との間から光を照射するように配置されている。
遮光部材33は、3本の放電ワイヤ312〜314と、除電ランプ32と、の間に位置するとともに、除電ランプ32の照射光の一部の光を通す開口331が設けられ他の光を遮光する部材である。図5は、図4に示されている遮光部材を図中の矢印V1方向から見た平面図である。開口331は、この図5にも示されているように、平面視で最上流の放電ワイヤ314と、その下流側の放電ワイヤ313との間に設けられている。この遮光部材33は、上記の最上流側の放電ワイヤ314による帯電中は、感光体ドラム1の周面における照射領域Ar1(図4)へと、開口331を通った一部の光が照射されるように構成されている。照射領域Ar1は、下流側の放電ワイヤ313が対面する直下の第1箇所313aと、最上流の放電ワイヤ314が対面する直下の第2箇所314aとの間で、且つ第1箇所313a及び第2箇所314aとを避けた領域である。
帯電前表面電位センサ34は、回転方向D1について最下流の放電ワイヤ312よりも下流側かつ最上流の放電ワイヤ314よりも上流側で、感光体ドラム1の周面の電位を検出する。具体的には、最上流の放電ワイヤ314とドラムクリーニング装置2との間に配置され、一次転写後の感光体ドラム1の周面の電位を検出する。検出結果は、図1や図2に示されている制御部150に送られる。この検出結果に基づいた制御部150の制御の下で、最上流の放電ワイヤ314による帯電が制御される。
また、光量調節部35は、帯電前表面電位センサ34で検出された電位の大きさに応じて除電ランプ32の光量を調節する。この光量調節部35による光量調節も、帯電前表面電位センサ34から検出結果を受け取る制御部150の制御の下で行われる。
尚、帯電装置30における装置本体31の近傍には、装置本体31で発生したオゾンを含む空気をダクトに導き、オゾンフィルターを通すことで、害のないレベルにまでオゾン濃度を下げる機構(オゾン処理機構)が配置される。また、帯電装置30は、グリッド電極311と3本の放電ワイヤ312〜314とを自動で定期的に清掃する帯電器清掃機構を具備している。
帯電装置30では、一次転写後の感光体ドラム1の周面を最上流の放電ワイヤ314により一旦マイナス極性で帯電させて除電ランプ32で除電し、その後、下流側の2本の放電ワイヤ312,313により再度マイナス極性で帯電させるようになっている。この構成は、先に形成した画像が、後に形成する画像に映り込んでしまうゴースト現象の発生を抑えるためのものである。
以下、ゴースト現象について説明する。
現像装置5内の現像剤(2成分現像の場合はトナーや磁性キャリア等からなる現像剤、1成分現像の場合はトナー)の帯電量と、感光体ドラム1の感度は、環境温度や環境湿度に応じて変化する。この変化は、上述したプロセスコントロールで設定される現像ポテンシャルに反映されるが、この現像ポテンシャルの増減によってゴースト現象が発生したり、あるいは発生しなかったりする。
まず、環境温度や環境湿度により、現像剤の帯電量や感光体ドラム1の感度が変化した場合に、感光体ドラム1の周面における帯電電位と、露光部分(即ち、露光によって形成された静電潜像)の電位がどのように変化するか説明する。
図6は、露光光量と、感光体ドラムの周面の電位との関係を表すグラフである。図6(A)には、感光体ドラム1の感度が高く、残留電位VH1が低い状況の特性を表すグラフG2が示されている。また、図6(B)には、感光体ドラム1の感度が低く、残留電位VL1が高い状況の特性を表すグラフG3が示されている。各グラフG2,G3では、X軸に露光光量が、Y軸に感光体ドラム1の周面の電位が割り振られている。尚、Y軸の電位は、その単位が(−V)で示されており、電位が高いとは、絶対値が大きいことを意味する。
一般的に、感光体ドラム1の感度は環境温度と相関があり、環境温度が高いときは感度が高く、図6(A)に示されている特性を有するようになる。逆に、環境温度が低いときは感度が低く、図6(B)に示されている特性を有するようになる。
図6(A)のグラフG2には、高温環境下で、プロセスコントロールによって帯電バイアスが高めに設定され、その結果、感光体ドラム1の周面の帯電電位が高めに制御されたときの特性曲線L2−aが記載されている。また、グラフG2には、帯電バイアスが低めに設定され、その結果、感光体ドラム1の周面の帯電電位が低めに制御されたときの特性曲線L2−bも記載されている。同様に、図6(B)のグラフG3には、低温環境下で帯電電位が高めに制御されたときの特性曲線L3−aと、帯電電位が低めに制御されたときの特性曲線L3−bが記載されている。グラフG2における高温環境下の特性曲線L2−a,L2−aと、グラフG3における低温環境下の特性曲線L3−a,L3−aとの比較から、同じ露光光量に対して、高温環境下の方が露光部分の電位が高めになることが分かる。
グラフG2における「VH2−a」及びグラフG3における「VL2−a」は、各温度環境において高めに制御された帯電電位を示している。グラフG2における「VH2−b」及びグラフG3における「VL2−b」は、各温度環境において低めに制御された帯電電位を示している。また、グラフG2における「VH3−a」及びグラフG3における「VL3−a」は、各温度環境において帯電電位が高めに制御されとき、プロセスコントロールで最適化された露光光量に対応する露光部分(静電潜像)の電位を示している。ここでいう最適化された露光光量とは、ハーフトーン濃度と線幅を所定の値に保つための最適な露光光量である。また、グラフG2における「VH3−b」及びグラフG3における「VL3−b」は、各温度環境において帯電電位が低めに制御されときの最適化された露光光量に対応する露光部分(静電潜像)の電位を示している。
現像装置5における現像剤の帯電量は環境湿度(絶対湿度)と相関があり、一般的に、高湿環境では、現像剤の帯電量は低くなる。このときには、図3に示されている現像ポテンシャルとトナー付着量との直線関係に対して、トナー付着量の傾きが立つようになる。その結果、所望の画像濃度を出すためにプロセスコントロールで算出される現像ポテンシャルは小さくなる。逆に、低湿環境では、現像剤の帯電量は高くなる。このときには、図3に示されている直線関係に対して、トナー付着量の傾きが寝るようになり、その結果、所望の画像濃度を出すために算出される現像ポテンシャルは大きくなる。
そして、感光体ドラム1の感度に上記のような影響を与える環境温度と、現像剤の帯電量に上記のような影響を与える環境湿度の以下の4通りの組合せの下、プロセスコントロールにより、帯電電位と露光部分の電位が次のように制御される。
(1)高温高湿環境の場合
この場合、感光体ドラム1の感度→高、現像剤の帯電量→低となり、その結果、帯電電位がグラフG2における「VH2−b」が示すように低めに制御されることとなり、感光体ドラム1は、グラフG2の特性曲線L2−bが示す特性を有するようになる。その結果、露光部分の電位は、グラフG2における「VH3−b」が示すように低めに制御されることとなる。
(2)高温低湿環境の場合
この場合、感光体ドラム1の感度→高、現像剤の帯電量→高となり、その結果、帯電電位がグラフG2における「VH2−a」が示すように高めに制御されることとなり、感光体ドラム1は、グラフG2の特性曲線L2−aが示す特性を有するようになる。その結果、露光部分の電位は、グラフG2における「VH3−a」が示すように高めに制御されることとなる。
(3)低温高湿環境の場合
この場合、感光体ドラムの感度→低、現像剤の帯電量→低となり、その結果、帯電電位がグラフG3における「VL2−b」が示すように低めに制御されることとなり、感光体ドラム1は、グラフG3の特性曲線L3−bが示す特性を有するようになる。その結果、露光部分の電位は、グラフG3における「VL3−b」が示すように低めに制御されることとなる。
(4)低温低湿環境の場合
この場合、感光体ドラムの感度→低、現像剤の帯電量→高となり、その結果、帯電電位がグラフG3における「VL2−a」が示すように高めに制御されることとなり、感光体ドラム1は、グラフG3の特性曲線L3−aが示す特性を有するようになる。その結果、露光部分の電位は、グラフG3における「VL3−a」が示すように、高めに制御されることとなる。
以上から、上述した4通りの環境下における露光部分の電位VH3−a,VH3−b,VL3−a,VL3−bのうち、最も低いのは、高温高湿環境の場合における露光部分の電位VH3−bである。即ち、高温高湿環境の場合に、露光部分の電位が最も低めに制御され易いということになる。
このように露光部分の電位が低めに制御される場合、露光による静電潜像の形成、トナーによる現像、及び一次転写を経る一連の画像形成プロセスにおいて、感光体ドラム1の周面の電位は、次のように変化する。
図7は、露光部分の電位が低めに制御される場合の画像形成プロセスにおける感光体ドラムの周面の電位の変化を模式的に示す図である。図7(A)には、静電潜像の形成時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。図7(B)には、現像時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。図7(C)には、一次転写時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。
ここでの例では、静電潜像の形成時には、図7(A)に示されているように、−550Vの帯電電位V2で感光体ドラム1の周面が均一に帯電された後にレーザ光によって露光走査を受ける。そして、露光部分の電位V3は−100Vとなっている。そして、現像時には、図7(B)に示されているように、−350Vの現像バイアスV4と、露光部分の電位V3の電位差(即ち、現像ポテンシャル)に応じて、トナーが感光体ドラム1の周面に付着する。
次に、一次転写時には、1次転写バイアスローラ9により、中間転写ベルト8の裏面にトナーの帯電極性(即ち、感光体ドラム1の帯電極性)とは逆極性(プラス)の転写バイアスが印加される。その結果、一次転写時には、中間転写ベルト8越しにこの転写バイアスが掛けられる。その結果、トナー像が中間転写ベルト8上に転写された後の、感光体ドラム1の周面の電位は、図7(C)に示されているように、全体的にプラス方向に遷移する。
この場合、高温高湿環境下で帯電電位V2と露光部分の電位V3がともに低めに制御されていると、遷移後の露光部分の電位V3’が、0Vを越えて極性が反転しプラス電位(図7では+30V)となることがある。上述した除電ランプ32による除電は、基本的に、感光体ドラム1の周面における帯電極性(ここではマイナス極性)の電荷を除くことで行われる。このため、遷移後の露光部分の電位V3’の極性が反転したままだと、除電ランプ32で除電できずに、感光体ドラムの周面に残ってしまう。このように、極性が反転した電位が残ったまま次の画像形成が行われると、以下に説明するようにゴースト現象が発生する。
図8は、極性が反転した電位が残ったまま画像形成が行われるときのゴースト現象の発生過程の一例を模式的に示す図である。図8(A)には、このような画像形成の際における帯電時の感光体ドラム1の周面の電位分布が示されている。図8(B)には、このような帯電の後に、ハーフトーン画像を形成するための露光が行われたときの感光体ドラム1の周面の電位分布が示されている。そして、図8(C)には、露光後に現像が行われたときのトナーの付着状況が示されている。また、図9は、図8に示されている画像形成によって形成され、ゴースト現象が発生した画像の一例を模式的に示す図である。
極性が反転した前回の露光部分の電位が残ったまま、−550Vの帯電電位V2で感光体ドラム1の周面が帯電されると、図8(A)に示されているように、電位分布は均一にはならず、前回の露光部分については、その電位がプラス寄りとなる。その後、ハーフトーン画像を形成するための露光が行われると、図8(B)に示されているように、その電位分布は、前回の露光部分に相当する箇所で、今回の露光部分の電位V5からプラス側に突出した分布となる。
この後に、−350Vの現像バイアスV4で現像が行われると、図8(C)に示されているように、前回の露光部分に相当する箇所では他の箇所に比べて現像ポテンシャルが大きくなる。その結果、前回の露光部分に相当する箇所には、他の箇所よりもトナーが多く付着することとなり、図9に示されているように、現像後のハーフトーン画像Im2に、前回の画像Im1が残像として浮き出るゴースト現象が発生することとなる。
そこで、図4に示されている本実施形態の帯電装置30では、最上流の放電ワイヤ314が、一次転写後の感光体ドラム1の周面を、除電ランプ32での除電の前に、露光前の帯電極性であるマイナス極性に帯電させるようになっている。これにより、一次転写の際に上記のように露光部分(即ち、静電潜像)の極性がプラス極性に反転していたとしても、除電前の帯電により元のマイナス極性に戻される。これにより、除電ランプ32による除電で静電潜像を除き、次の画像形成に臨むことができる。
ここで、低温低湿環境下のように露光部分の電位が高めに制御されるときには、以下に説明するように、除電前の帯電を行わなくてもゴースト現象が発生しない場合がある。
図10は、露光部分の電位が高めに制御される場合の画像形成プロセスにおける感光体ドラムの周面の電位の変化を模式的に示す図である。図10(A)には、静電潜像の形成時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。図10(B)には、現像時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。図10(C)には、一次転写時における感光体ドラム1の周面における電位分布が示されている。
ここでの例では、静電潜像の形成時には、図10(A)に示されているように、−750Vの帯電電位V2で感光体ドラム1の周面が均一に帯電された後にレーザ光によって露光走査を受ける。そして、露光部分の電位V3は−150Vとなっている。そして、現像時には、図10(B)に示されているように、−550Vの現像バイアスV4と、露光部分の電位V3の電位差(即ち、現像ポテンシャル)に応じて、トナーが感光体ドラム1の周面に付着する。
次に、一次転写時には、上述したように感光体ドラム1の周面の電位が全体的にプラス方向に遷移する。このとき、低温低湿環境下で帯電電位V2と露光部分の電位V3がともに高めに制御されていると、遷移後の露光部分の電位V3’がマイナス電位(図10では−30V)のままとなることがある。この場合には、除電前にマイナス極性に帯電させなくても、除電ランプ32によって静電潜像を除去して、感光体ドラム1の周面の電位を一様に均すことができる。
そこで、本実施形態の帯電装置30では、上記の帯電前表面電位センサ34により、一次転写後の感光体ドラム1の周面の電位が検出され、その検出結果に基づいて、制御部150の制御の下で最上流の放電ワイヤ314による帯電が制御されるようになっている。
図11は、図4に示されている帯電装置において最上流の放電ワイヤによる帯電が、帯電前表面電位センサでの検出結果に基づいて制御される様子を模式的に示す図である。図11(A)には、最上流の放電ワイヤ314による帯電がどのような場合に行われるが模式的に示されている。そして、図11(B)には、最上流の放電ワイヤ314による帯電がどのような場合に行われないかが模式的に示されている。
図11(A)に示されているように、本実施形態では、帯電前表面電位センサ34が、一次転写後の感光体ドラム1の周面に、上述したゴースト現象の原因の1つとなるプラス極性の電位V6を検出した場合に、最上流の放電ワイヤ314による帯電が行われる。一次転写後の感光体ドラム1の周面にプラス極性の電位V6が検出されるという条件が、本発明にいう帯電条件の一例に相当する。他方、図11(B)に示されているように、帯電前表面電位センサ34において、一次転写後の感光体ドラム1の周面にマイナス極性の電位V7が検出され、ゴースト現象の懸念が無い場合には、最上流の放電ワイヤ314による帯電は行われない。
ここで、上述した除電ランプ32によって除電を行う際には、感光体ドラム1の周面に電流が流れることとなる。このとき、3本の放電ワイヤ312〜314によって、感光体ドラム1にマイナスの帯電を行う場合、放電ワイヤ312〜314の直下に除電ランプ32の光を照射してしまうと、その直下の部分では除電と帯電が同時に行われる。すると、感光体ドラム1の周面に上記のように流れる電流が大きくなり過ぎ、感光体ドラム1を劣化させてしまう恐れがある。このため、本実施形態では、放電ワイヤ312〜314と除電ランプ32との間に位置するように遮光部材33が設けられている。
この遮光部材33には、上述したように除電ランプ32の照射光のうちの一部の光を通す開口331が設けられ、他の光を遮光するようになっている。本実施形態では、この遮光部材33は、感光体ドラム1の周面における上記の第1箇所313aと第2箇所314aとの間で、且つ両者を避けた照射領域Ar1へと光が照射されるように所定のフレームに固定されている。
この遮光部材33により、除電ランプ32の照射光のうち、放電ワイヤ312〜314の直下へと向かう光が常に遮光される。その結果、感光体ドラム1の劣化を招くような、除電時の電流の増大が抑えられる。このように本実施形態の帯電装置30によれば、感光体ドラム1の劣化を抑えつつゴースト現象を抑制することができる。
また、本実施形態では、制御部150の制御の下、上記の帯電前表面電位センサ34で検出された電位の大きさに応じて、除電ランプ32の光量を調節する光量調節部35が設けられている。光量調節部35は、具体的には、検出された電位の絶対値が小さい場合は除電ランプ32の光量を小さく設定する。逆に電位の絶対値が大きい場合は光量を大きく設定する。これにより、感光体ドラム1の光疲労を抑えることができ、その結果、感光体ドラム1の劣化を一層抑えつつゴースト現象を抑制することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、帯電装置において遮光部材が移動可能となっている点が、上述した第1実施形態とは異なっている。以下、この第1実施形態との相違点に注目して第2実施形態の説明を行い、画像形成装置やトナー像形成部の概略構成等といった共通点については説明を割愛する。
図12は、本発明の第2実施形態にかかる帯電装置を示す図である。この図12に示されている帯電装置50には、開口511が設けられた遮光部材51を、第1位置と第2位置との間でスライド移動させる遮光部材移動部52が設けられている。図12(A)には、第1位置に位置する遮光部材51が示されており、図12(B)には、第2位置へとスライド移動方向D2に動かされた遮光部材51が示されている。また、図13は、図12に示されている遮光部材を、図中の矢印V1方向から見た平面図である。図13(A)には、第1位置に位置する遮光部材51が示されており、図13(B)には、第2位置に位置する遮光部材51が示されている。
図12(A)及び図13(A)に示されているように、第1位置は、除電ランプ32の照射光の一部の光を、第1照射領域Ar2−1へと開口511が通す位置である。第1照射領域Ar2−1は、感光体ドラム1の周面において下流側の放電ワイヤ313が対面する直下の第1箇所313aと、最上流の放電ワイヤ314が対面する直下の第2箇所314aとの間で、且つ第1箇所313aと第2箇所314aを避けた領域である。
また、図12(B)及び図13(B)に示されているように、第2位置は、除電ランプ32の照射光の一部の光を、第2照射領域Ar2−2へと開口511が通す位置である。第2照射領域Ar2−2は、感光体ドラム1の回転方向D1について第1照射領域Ar2−1よりも上流側で最上流の放電ワイヤ314の直下の第2箇所314aを含む領域である。この第2照射領域Ar2−2へは、図12(B)に示されているように、除電ランプ32の照射光の一部の光が斜めに開口511を通って向かう。このため、第2照射領域Ar2−2は、第1照射領域Ar2−1に比べて回転方向D1に拡がった、面積の広い領域となっている。
この第2実施形態の帯電装置50でも、第1実施形態の帯電装置30と同様に、帯電前表面電位センサ34において、一次転写後の感光体ドラム1の周面にプラス極性の電位V6が検出された場合に、最上流の放電ワイヤ314による帯電が行われる。また、マイナス極性の電位V7が検出された場合には、最上流の放電ワイヤ314による帯電は行われない。
遮光部材移動部52は、3本の放電ワイヤ312〜314の全てが帯電を行う時には遮光部材51を上記の第1位置に位置させ、下流側2本の放電ワイヤ312,313のみが帯電を行う時には遮光部材51を第2位置に位置させる。具体的には、帯電前表面電位センサ34においてプラス極性の電位V6が検出された場合に、制御部150の制御の下、遮光部材移動部52は遮光部材51を第1位置に位置させる。また、帯電前表面電位センサ34においてマイナス極性の電位V7が検出された場合に、制御部150の制御の下、遮光部材移動部52は遮光部材51を第2位置に位置させる。
以上に説明した第2実施形態の帯電装置50によれば、最上流の放電ワイヤ314が放電しないときには除電ランプ32の照射光のうちの一部の光が、最上流の放電ワイヤ314の直下を含む上記の第2照射領域Ar2−2に照射される。この第2照射領域Ar2−2は、第1照射領域Ar−1よりも下流側の放電ワイヤ313の直下の第1箇所313aから離れているので、この下流側の放電ワイヤ313の直下への迷光の進入が一層抑制される。このように、第2実施形態の帯電装置50によれば、感光体ドラム1の光疲労を一層抑えることができ、その結果、感光体ドラム1の劣化を一層抑えつつゴースト現象を抑制することができる。
また、上述したように第2照射領域Ar2−2は第1照射領域Ar−1よりも面積の広い領域となっている。このため、最上流の放電ワイヤ314が放電しないときには除電を広範囲に亘って行うことができ、除電効率の向上が図られている。
また、第2実施形態の帯電装置50によれば、最上流の放電ワイヤ314が、帯電前表面電位センサ34において、帯電極性と逆極性となるプラス極性の電位が検出されたときにのみ帯電を行うこととなっている。延いては、帯電前表面電位センサ34においてプラス極性の電位が検出されたときにのみ、遮光部材移動部52は遮光部材51を第1位置に位置させる。これにより、除電ランプ32の照射光のうちの一部の光が、上記の第2照射領域Ar2−2よりも下流側の放電ワイヤ313の直下の第1箇所313aに近い第1照射領域A2−1に照射されるタイミングが一層限定されることとなる。これにより、感光体ドラム1の光疲労を更に抑えることができ、その結果、感光体ドラム1の劣化を更に抑えつつゴースト現象を抑制することができる。
尚、前述した2つの実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の帯電装置、作像ユニット、及び画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
例えば、前述した2つの実施形態では、本発明にいう画像形成装置の一例として、カラーのプリンタ100が例示されている。しかしながら、本発明にいう画像形成装置はこれに限るものではなく、モノクロのプリンタであってもよい。また、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限るものでもなく、電子写真方式で画像形成を行うものであれば、複写機やファクシミリ等であってもよい。
また、前述した2つの実施形態では、本発明にいう第1帯電部材の一例として2本の放電ワイヤ312,313が例示され、本発明にいう第2帯電部材の一例として1本の放電ワイヤ314が例示されている。しかしながら、本発明にいう第1帯電部材及び第2帯電部材はこれに限るものではない。本発明にいう第1帯電部材及び第2帯電部材は、第2帯電部材が感光体ドラムの回転方向の上流側に第1帯電部材と隣接するように配置されていれば、その具体的な構成や数を問うものではない。