JP2016102758A - 金属酸化物半導体センサ、および、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小型高感度でありながら消費電力が極めて小さく、さまざまな応用用途が期待できる金属酸化物半導体センサを得ること。【解決手段】 金属酸化物半導体ナノワイヤ1と、金属酸化物半導体ナノワイヤに所定の電圧を印加する一対の電極2と、金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値を検出する抵抗値検出手段6とを備え、一対の電極から印加された電圧によって金属酸化物半導体ナノワイヤに流れる電流で金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱し、抵抗値検出手段により検出された金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化から、金属酸化物半導体ナノワイヤの表面に接触する揮発性分子の分子量を検出する。【選択図】 図2
Description
本開示は、金属酸化物半導体センサに関し、特に、ナノワイヤセンサ構造を備え、高い検出能力と低消費電力駆動とを実現した金属酸化物半導体センサ、および、その製造方法に関する。
各種のガスを検出するガスセンサとして、酸化第二スズ(SnO2)などの金属酸化物半導体を用いた金属酸化物半導体ガスセンサが知られている。
金属酸化物半導体の抵抗値は、清浄大気中では酸素の負荷電吸着により高い値に保たれているが、CO、メタン等の還元性ガス雰囲気下では酸化還元反応によって結晶表面の電位障壁が低下し、抵抗値がガス濃度に応じて低下する。一方、NOx等の酸化性ガス雰囲気では、金属酸化物半導体表面の電子がさらに捕捉されるために、ガス濃度に応じて抵抗値が上昇する。金属酸化物半導体ガスセンサは、このような金属酸化物半導体材料の電気伝導度が周囲のガス濃度に応じて変化する特質を用いて、周辺のガス濃度を検知可能とするものである。金属酸化物半導体ガスセンサは、還元性、酸化性いずれの種類のガスに対してもその濃度を検出するができるという利点がある。
なお、金属酸化物半導体ガスセンサでは、表面化学反応を促進してガスの吸着速度を増加させ検出感度を向上させるために、金属酸化物半導体を数百度程度の温度に保持することが必要となる。このため、金属酸化物半導体センサでは、センサを加熱するためのヒータによる大きな電力消費が課題となっていた。また、ガスセンサとしての利便性を向上させるために、金属酸化物半導体センサの小型化への検討も行われてきた。
従来、小型化が可能で低消費電力であり、ガス検知感度の高い金属酸化物半導体ガスセンサとして、PN接合ダイオードなどの2端子半導体デバイスの表面に成形した酸化第二スズを配置したもの(特許文献1参照)、アルミナなどの耐熱絶縁基板の一方の主面に金属酸化物半導体膜を、他方の主面にヒータ膜と厚膜の電極パッドとを形成して、電極パッドと金属酸化物半導体膜とを基板に形成したスルーホールで接続する構成のもの(特許文献2参照)が提案されている。
また、比表面積が大きな金属酸化物半導体のナノワイヤをセンサ部に用いてセンサ感度を向上させる構成として、基板上に設けられたヘテロ構造層の界面に2次元電子ガス層を形成し、ヘテロ構造層上にセンサ部としてのZnOからなる半導体ナノワイヤを配置して、雰囲気ガスによる半導体ナノワイヤの抵抗値の変化を2次元電子ガス層の抵抗値を用いて検出するもの(特許文献3参照)、常温でのガス検出を可能とするために、一対のエポキシ樹脂製基板の対向表面にそれぞれ電極を形成し、カーボンテープ上に成長形成されたセレンナノワイヤを両方の電極に接触するように配置するもの(特許文献4参照)などが提案されている。
特許文献1および特許文献2に記載の金属酸化物半導体ガスセンサは、小型、低消費電力、高検出感度を目指すものであるが、数十mW以上の電力を消費するため、十分な低消費電力化を実現しているとは言えなかった。また、特許文献3および特許文献4に記載の金属酸化物半導体センサは、構成が複雑で製造過程も困難を伴い、製造コスト面で十分な実用性を備えているとは言えなかった。
さらに、近年では、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて、シリコン基板上にヒータと金属酸化物半導体とを積層形成し、パッケージ化された小型のチップ状ガスセンサが商品化されているが、この場合でもヒータ電力は15mW程度であり、更なる低消費電力化への取り組みが求められていた。
そこで本開示は、上記した従来の課題を解決して、小型高感度でありながら消費電力が極めて小さく、さまざまな応用用途が期待できる金属酸化物半導体センサを得ること、また、このような低消費電力の金属酸化物半導体センサを製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本願で開示する金属酸化物半導体センサは、金属酸化物半導体ナノワイヤと、前記金属酸化物半導体ナノワイヤに所定の電圧を印加する一対の電極と、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値を検出する抵抗値検出手段とを備え、前記一対の電極から印加された電圧によって前記金属酸化物半導体ナノワイヤに流れる電流で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱し、前記抵抗値検出手段により検出された前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化から、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの表面に接触する揮発性分子の分子量を検出することを特徴とする。
また、本願で開示する金属酸化物半導体センサの製造方法は、所定位置に接続端子が形成された基板上に犠牲層を塗布形成し、前記犠牲層上の所定位置に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置し、前記接続端子と前記金属酸化物半導体ナノワイヤとを接続する電極を形成したのち、前記犠牲層を除去することで、前記基板上に前記基板の表面から所定の間隙を隔てた状態で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを配置することを特徴とする。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、一対の電極から印加された電圧によって金属酸化物半導体ナノワイヤに流れる電流で金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱し、金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化からその表面に接触する揮発性分子の分子量を検出するものである。このため、低消費電力で動作する金属酸化物半導体センサを実現することができる。
また、本開示にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法は、基板上に塗布形成された犠牲層上の所定位置に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置し電極と接続した後、犠牲層を除去する。このため、基板の表面から所定の間隙を隔てた状態で金属酸化物半導体ナノワイヤが配置された金属酸化物半導体センサを、効率よく製造することができる。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、金属酸化物半導体ナノワイヤと、前記金属酸化物半導体ナノワイヤに所定の電圧を印加する一対の電極と、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値を検出する抵抗値検出手段とを備え、前記一対の電極から印加された電圧によって前記金属酸化物半導体ナノワイヤに流れる電流で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱し、前記抵抗値検出手段により検出された前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化から、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの表面に接触する揮発性分子の分子量を検出する。
このようにすることで、本願で開示する金属酸化物半導体センサでは、一対の電極から印加された電圧によって流れる電流を用いて、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを直接加熱することができる。このため、従来の金属酸化物半導体センサと比べて金属酸化物半導体を効率よく所定の温度に到達させることができ、比表面積の大きなナノワイヤを用いた、小型で低消費電力の金属酸化物半導体センサを実現することができる。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサにおいて、前記一対の電極から前記金属酸化物半導体ナノワイヤに印加される電圧がパルス状電圧であることが好ましい。このようにすることで、金属酸化物半導体ナノワイヤに電圧を印加している時間が低減され、測定のために必要な仕事量(印加電力×時間)が極めて小さな金属酸化物半導体センサを実現することができる。
この場合において、前記一対の電極から前記金属酸化物半導体ナノワイヤに印加される前記パルス状電圧のパルス幅が、0.5μ秒以上であることが好ましい。パルス幅を0.5μ秒以上とすることで、金属酸化物半導体ナノワイヤを所望の温度に維持することができる。
また、前記一対の電極が、基板上の少なくとも表面が絶縁性である部分に配置され、前記金属酸化物半導体ナノワイヤが、前記一対の電極間に、かつ、その長さ方向が前記基板の主面方向に沿うように配置されたことが好ましい。このようにすることで、基板上に形成された金属酸化物半導体センサを得ることができ、チップ化などの取り扱いが容易となる。
この場合において、前記基板と、前記金属酸化物半導体ナノワイヤとの間に間隙が形成されていることが好ましい。このようにすることで、金属酸化物半導体ナノワイヤの熱が基板に伝わって生じる温度低下を防止することができ、金属酸化物半導体ナノワイヤの温度を維持するために必要な電力を少なくすることができる。
さらにまた、前記基板上に、前記基板の主面方向に沿うように複数本の前記金属酸化物ナノワイヤが配置されていることが好ましい。このようにすることで、複数個のセンサ部を用いた、多様な揮発性分子の検出が可能となる。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサでは、前記基板上で、前記一対の電極と前記金属酸化物半導体ナノワイヤとが配置されている領域の周辺領域に、引き出し線と前記引き出し線に接続された端子部が形成され、前記端子部を介して、前記金属酸化物半導体ナノワイヤに前記所定の電圧を印加し、かつ、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化を検出することを可能とすることが好ましい。このようにすることで、小型低コストを実現したチップ化された金属酸化物半導体センサを実現することができる。
また、本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、前記金属酸化物半導体ナノワイヤとして、触媒を用いた自己組織化法により形成された単結晶SnO2ナノワイヤを用い、気体分子の濃度を検出するガスセンサとして利用することができる。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法は、所定位置に接続端子が形成された基板上に犠牲層を塗布形成し、前記犠牲層上の所定位置に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置し、前記接続端子と前記金属酸化物半導体ナノワイヤとを接続する電極を形成したのち、前記犠牲層を除去することで、前記基板上に前記基板の表面から所定の間隙を隔てた状態で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを配置する。
このようにすることで、センサ部に用いられる金属酸化物半導体ナノワイヤが、基板との間に間隙を形成して配置された、低消費電力化を実現可能な金属酸化物半導体センサを、効率よく製造することができる。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法において、前記犠牲層上に疎水性の自己組織化膜からなる配置パターンを形成し、前記基板上に水を塗布して前記配置パターン上に水の膜を形成した後、前記金属酸化物半導体ナノワイヤを分散したオイルを塗布することで、前記配置パターン部分に前記金属酸化物半導体ナノワイヤを載置してその配置位置を規定することが好ましい。このようにすることで、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを、基板上の所定の位置に容易に配置することができる。
また、前記金属酸化物半導体ナノワイヤが、金(Au)を触媒に用いた物理蒸着手段による自己組織化法により形成された単結晶SnO2ナノワイヤであることが好ましい。このようにすることで、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを、容易に得ることができ、低コスト化された金属酸化物半導体センサの製造方法を実現することができる。
(実施の形態)
以下、本願で開示する金属酸化物半導体センサとその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
以下、本願で開示する金属酸化物半導体センサとその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
[金属酸化物半導体センサの構成]
まず、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの構成について説明する。
まず、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの構成について説明する。
図1は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの一例として、金属酸化物半導体ナノワイヤとして単結晶SnO2ナノワイヤを用いた金属酸化物半導体センサの、SnO2ナノワイヤ配置部分の構成を示す拡大顕微鏡(SEM)写真である。
図1に示すように、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサでは、石英ガラス(SiO2)などの絶縁性の基板3上に、プラチナ(Pt)などの金属膜により形成された一対の電極2が形成され、この一対の電極2に支持された、一例として直径が20nmのSnO2ナノワイヤ1が、その長さ方向が基板3の主面方向と略一致するように配置されている。
なお、図1においてSnO2ナノワイヤ1の両端部分に形成されている電極様の部材4は、SnO2ナノワイヤを支持する支持部として試作のために用いた部材であり、本実施形態で説明する金属酸化物半導体センサに必要な部材ではない。また、金属酸化物半導体センサが表面に形成される基板としては、上記例示した石英ガラス基板の他に、シリコン基板の表面にSiO2層などの酸化絶縁膜を塗布形成した基板など、金属酸化物半導体センサの製造時または動作時の温度に耐えることができる部材で形成され、少なくとも金属酸化物半導体ナノワイヤとこれに接続される電極とが形成される領域の表面が絶縁性を有する各種の基板を用いることができる。
図1には示されていないが、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサでは、一対の電極2を介してSnO2ナノワイヤ1を加熱するための電圧が印加されると共に、SnO2ナノワイヤ1の抵抗値の変化が検出される。
なお、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサでは、センサ部として使用される金属酸化物半導体ナノワイヤとして、金(Au)を触媒としてAl2O3基板上にVLS(Vapor Liquid Solid)法によりSnO2分子を自己成長させる自己組織化法により形成したSnO2ナノワイヤを用いている。しかし、これは一例であって、本実施形態の金属酸化物半導体センサのセンサ部として使用できる金属酸化物半導体ナノワイヤは、SnO2ナノワイヤに限られず、ZnOナノワイヤ、In2O3ナノワイヤ、Ba2O3ナノワイヤなどの、金属酸化物半導体により形成された各種のナノワイヤを用いることができる。また、金属酸化物半導体ナノワイヤの製造方法としては、上記例示した触媒を用いて基板上にナノワイヤを成長させて形成する自己組織化法には限られず、金属酸化物半導体部材をマイクロプロセッサ技術などの微細加工技術を用いてワイヤ形状とする、微細加工法によって形成された金属酸化物半導体ナノワイヤを金属酸化物半導体センサのセンサ部として使用することができる。金属酸化物半導体ナノワイヤの製造方法については、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法の説明に併せて後述する。
また、本開示においてナノワイヤとは、中密柱状のワイヤ形状のものに限られず、中空筒状のナノチューブと呼ばれる形態をも含む概念を意味する。
図2は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの動作原理を説明するためのイメージ図である。図2では、図1と同様に本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサのセンサ部である、金属酸化物半導体ナノワイヤの配置部分を拡大して示している。
図2に示すように、本実施形態の金属酸化物半導体センサでは、センサ部であるSnO2ナノワイヤ1が基板3上に、基板3の主面と略平行に配置されている。ここで、SnO2ナノワイヤ1が基板3の主面と略平行に配置されるとは、図2に示すようにSnO2ナノワイヤ1の長さ方向が基板3の主面と同じ方向となっていることを示す表現である。このため、SnO2ナノワイヤ1と基板3とが完全に平行である場合のみならず、SnO2ナノワイヤ1が長さ方向に数度から十数度程度傾斜している状態をも含んでいる。
SnO2ナノワイヤ1は、基板3上に所定間隔で配置された一対の電極2から印加手段5で生成された直流電圧が印加されることで、一対の電極2間のSnO2ナノワイヤ1が形成するバルク抵抗に直流電流が流れ、自己的に発熱して温度が上昇する。
金属酸化物半導体センサでは、センサ部であるSnO2などの金属酸化物を加熱してその表面温度を約400℃〜450℃とすることで表面化学反応が促進され、ガスの吸着速度が増加する。すなわち、センサの感度を向上させることができる。このとき、SnO2などの金属酸化物がCO、メタン等の還元性ガス雰囲気下におかれると、SnO2ナノワイヤ1の表面に揮発性分子であるガス分子7が吸着され、酸素の負荷電吸着により高い値に保たれていたセンサ抵抗値がガスの濃度に応じて低下する。一方、NOx等の酸化性ガス雰囲気では、ガス濃度に応じてセンサ抵抗値がさらに上昇する。本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサでは、センサ部であるSnO2ナノワイヤ1に、一対の電極2を介して接続された抵抗値検出部6によってSnO2ナノワイヤ1の抵抗値の変化を検出する。
抵抗値検出手段6は、一例として、一対の電極2に接続線を介して所定電圧の直流電圧を印加する電圧源と、当該電圧が印加された状態で一対の電極2間のSnO2ナノワイヤ1に流れる電流値を検出する電流計とを備え、SnO2ナノワイヤ1を流れる電流値の変化からSnO2ナノワイヤ1の抵抗値であるセンサ抵抗値の変化を検出する。なお、抵抗値検出手段6の具体的な構成について制限はなく、上記例示した構成以外の、導電部材の抵抗値を測定するための既知の各手段を用いて、周辺の環境変化に対応したSnO2ナノワイヤ1の抵抗値の変化を検出するようにすればよい。また、抵抗値検出手段6は、センサ部であるSnO2ナノワイヤ1の抵抗値の変化を検出するに当って抵抗値の値を直接把握するものに限られず、電圧値、または、電流値のいずれかの変化を把握することによって間接的に抵抗値成分の変化を検出する構成とすることができる。
図2に図示する本実施形態の金属酸化物半導体センサでは、金属酸化物半導体ナノワイヤに接続する一対の電極を備え、金属酸化物半導体ナノワイヤを自己的に加熱するための加熱電圧と、抵抗値成分を検出するための測定電圧とを、同じ電極から印加する2端子構成について説明した。しかし、金属酸化物半導体ナノワイヤに接触させる電極の数は2本には限られない。例えば、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤに対して、加熱電圧を印加するための加熱電極と、測定電圧を印加する測定電極とを別々に備えた4端子構成とする場合が考えられる。また、加熱電極と測定電極を共通化して共通電極を形成できる場合には3端子の構成とする場合が考えられ、さらには、予備的な電極を形成して全部で5本以上の電極が金属酸化物半導体ナノワイヤに接続される場合など、電極の本数とその使用形態としてさまざまな構成を採用することができる。
次に、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサのセンサ部として使用される、金属酸化物半導体ナノワイヤであるSnO2ナノワイヤの形状について説明する。
図3は、SnO2ナノワイヤの形状と加熱電極間中央部分の温度との関係についてのシミュレーション結果を示したものである。
図3(a)は、線径の異なるSnO2ナノワイヤへの、印加電力とSnO2ナノワイヤの中央部分の温度との関係を示している。
具体的には、いずれも長さが1000nmのSnO2ナノワイヤに、加熱電極から印加する電力値P(電圧値×電流値;μW)を変化させていった際の、SnO2ナノワイヤの加熱電極間の中央部分の温度T(K)の変化を示している。
図3(a)において、符号11が線径10nm、符号12が線径25nm、符号13が線径50nm、符号14が線径75nm、符号15が線径100nm、符号16が線径125nm、符号17が線径150nm、符号18が線径175nm、符号19が線径200nmのSnO2ナノワイヤを用いた場合の計算結果を示している。
また、図3(b)は、直径がいずれも60nmのSnO2ナノワイヤにおいて、ナノワイヤの長さL、つまり、加熱電極間の距離に対する加熱電極間の中央部分の温度Tの変化を、入力電力量Pを変化させて測定した結果示している。図3(b)において、符号21が入力電力量1μW、符号22が入力電力量20μW、符号23が入力電力量40μW、符号24が入力電力量60μWの場合の計算結果を示している。
なお、シミュレーションは有限要素法を用いて行い、SnO2ナノワイヤの実測値に基づいて、シミュレーションにおけるSnO2ナノワイヤの導電率σを400S/mと、熱伝導率κを2W/mKsとして計算した。また、SnO2ナノワイヤは、それぞれの設定長さにおける両端部分が、プラチナ(Pt)製の電極の側面に当接している状態であるとして計算を行った。
図3(a)および図3(b)のシミュレーション結果より、SnO2ナノワイヤの直径が小さいほど中央部分の温度が高くなる一方、SnO2ナノワイヤの長さには、当該SnO2ナノワイヤの中央部分の温度が最も高くなる特定の長さがあることがわかる。これは、単位断面積当たりにSnO2ナノワイヤに流れる電流量によって発熱量が左右される一方で、SnO2ナノワイヤの長さが短い場合には、SnO2ナノワイヤを支持する加熱電極を伝わってSnO2ナノワイヤの熱が逃げ易くなるため、中央部分の温度が単位長さ当たりの印加電力量に単純に影響されないためであると考えられる。
このように、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサのセンサ部に用いられる金属酸化物半導体ナノワイヤは、その径と自己加熱のための加熱電極の支持間隔とによって中央部分の温度が変化する。また、当然ながら、金属酸化物半導体ナノワイヤの材料が異なると中央部分の温度も異なり、また、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤの径とこれを支持する加熱電極の間隔は、実際に金属酸化物半導体センサとして形成する上での構造上、または、製造上の制約を受ける。このため、金属酸化物半導体センサのセンサ部としての、金属酸化物半導体ナノワイヤの径とこれを支持する加熱電極の配置間隔とは、実際の条件に基づいて、ガス分子など金属酸化物半導体センサでの検出対象である揮発性分子を吸着する上で十分な温度(一例として450℃以上)となるように適宜設計することが好ましい。
なお、従来の金属酸化物半導体センサの構成として例示説明した、金属酸化物半導体センサのセンサ部として金属酸化物半導体の薄膜をマイクロヒーターで加熱する構成の場合、金属酸化物半導体の温度を450℃程度以上とするためには、10mWオーダー以上の加熱電力量Pが必要となる。この場合に必要な仕事量E(印加電力量Pと印加時間tとの積)は、1J程度となる。また、センサ部として金属酸化物半導体ナノワイヤを用いた場合でも、近接して配置された加熱ヒータで金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱する従来の構成の場合には、同様に10mWオーダー以上の加熱電力量Pと1J程度の仕事量Eが必要となる。
これに対して、本実施形態に示す構成、すなわち、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤに直接電流を流してこれを自己加熱する構成の場合には、加熱電力量Pとして10μWオーダーで実用化でき、印加される加熱電力量を100分の1から1000分の1程度に低減することができる。なお、この場合の仕事量Eは10-2Jオーダーとなり、間接的に金属酸化物半導体ナノワイヤ加熱する構成の金属酸化物半導体センサの場合と比較して100分の1程度のエネルギーでのセンサ駆動を行うことができる。
また、本実施形態の金属酸化物半導体センサでは、図2に示すように、センサ部であるSnO2ナノワイヤ1が基板3の表面に接して配置されているのではなく、SnO2ナノワイヤ1を基板3の表面との間に所定の間隙を有して離間して配置された形態を採ることができる。このようにSnO2ナノワイヤ1を基板4から離した状態、いわゆるフリースタンディング状態とすることで、自己加熱により発熱したSnO2ナノワイヤ1の熱が基板3を伝って放熱されてしまうことを回避することができ、より少ない消費電力で金属酸化物半導体センサを動作させることができる。
図4は、SnO2ナノワイヤを、基板上にフリースタンディング状態として載置した場合と基板と接触した状態で載置した場合での、SnO2ナノワイヤの温度分布についてのシミュレーション結果を示す図である。
図4(a)が、加熱電極上に載置されることで基板との間に所定の間隙が形成されたフリースタンディング状態のものとして、SnO2ナノワイヤの両端部から電極への熱伝導のみが生じていることを想定した計算結果を示す。一方の図4(b)は、直接基板上に載置された状態で加熱電極から直流電圧が印加された状態を想定して、基板と接触しているSnO2ナノワイヤの底面から、SiO2層が形成された基板への熱伝導が生じている場合の計算結果を示す。なお、いずれの場合も、SnO2ナノワイヤの直径Dを60nmとし、長さ(L)1850nmのナノワイヤの両端部分がPt電極に接触しているものとした。また、SnO2ナノワイヤの導電率σは400S/m、熱伝導率κは2W/mKsと、いずれも、図3(a)、図3(b)の場合と同じ条件でシミュレーションを行った。
図4(a)、図4(b)それぞれにおいて、図中左側がSnO2ナノワイヤを側面から見た状態の温度分布を、また、図中右側がSnO2ナノワイヤの加熱電極間の中央部分での断面方向の温度分布を示している。なお、測定の便宜上、図4(a)のフリースタンディング状態では、SnO2ナノワイヤに入力される電力量を20μW、図4(b)の基板に接している状態でのSnO2ナノワイヤに入力される電力量は50μWとしている。
図4(a)、図4(b)から明らかなように、投入される電力量が小さいにもかかわらず、図4(a)に示すフリースタンディング状態のSnO2ナノワイヤの表面温度は100℃を大きく超えて、最も高い部分では150℃以上となっている。また、SnO2ナノワイヤ自体のみならず、SnO2ナノワイヤの上方の空気が100℃前後に加熱されていることがわかる。一方、図4(b)に示すSnO2ナノワイヤが基板に接して載置されている場合は、投入電力が倍以上の50μWであるにもかかわらず、最高温度の部分でも80℃前後と100℃に到達しておらず、SnO2ナノワイヤ自体とその周辺の空気が十分に加熱されていないことがわかる。
図5は、フリースタンディング状態と基板に接して載置された状態での、SnO2ナノワイヤに印加される電力量P(μW)と中央部分の温度T(℃)との関係を示している。なお、図5におけるSnO2ナノワイヤの直径Dや長さL、その他のシミュレーション条件は、図4(a)、図4(b)のものと同じである。
図5に符号31として示すように、フリースタンディング状態のSnO2ナノワイヤの温度は、入力される電力量に応じてその温度が高くなっている。一方、図5において符号32として示す、基板に接して載置されたSnO2ナノワイヤの温度は、印加される電力量が大きくなってもその上昇度合いは緩やかなものとなっている。
このように、電圧が印加された際に流れる電流によるSnO2ナノワイヤの温度上昇は、SnO2ナノワイヤが熱伝導性のある部材に接触しているか否かによって大きく異なる。これは、SnO2ナノワイヤの自己発熱がバルク抵抗によるものであると共に、SnO2ナノワイヤの体積が小さくSnO2ナノワイヤが保持できる熱量の絶対量が少ないため、熱伝導性のある物質に触れている状態では、発熱される熱量に対する逃げていく熱量の比率が高いためであると考えられる。本実施形態の金属酸化物半導体センサでは、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを、フリースタンディング状態とすることが、消費電力の低減の観点からより有効であることがわかる。
なお、本実施形態では、金属酸化物半導体ナノワイヤと基板との間に所定の間隙を設けるフリースタンディング状態としたが、金属酸化物半導体ナノワイヤからの熱が伝達して温度低下が生じることを防止するためには、金属酸化物半導体ナノワイヤを熱的絶縁状態に近い状態とすることが好ましい。この意味で、空気は高い熱絶縁性を有するためにフリースタンディング状態とすることが特に有効であるが、空気以外の熱伝導率の低い部材を金属酸化物半導体ナノワイヤと基板との間に配置することも可能である。また、フリースタンディング状態とすることの効果は、金属酸化物半導体ナノワイヤと基板との間に空気の層を介在させることによって得られるため、金属酸化物半導体ナノワイヤと基板表面との間隙は、両者を確実に離間することができる大きさを確保できれば十分であり、必要以上に基板表面との間隙を大きくする必要はない。
次に、同じく金属酸化物半導体センサの消費電力低減のために効果的な実施形態について説明する。
[パルス電圧入力]
以下、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの変形例として、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを自己加熱する電力印加のバリエーションについて説明する。
以下、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの変形例として、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを自己加熱する電力印加のバリエーションについて説明する。
以下で説明する金属酸化物半導体センサの実施形態の変形例では、金属酸化物半導体ナノワイヤであるSnO2ナノワイヤに加熱電極から印加される電圧波形を、略矩形のパルス状電圧波形とするものである。
図6は、本変形例で印加手段からSnO2ナノワイヤに印加される電圧波形を示す図である。
図6において、印加される電圧波形は、所定の周期T(符号42、一例として3m秒)に対してパルス幅であるON時間t1(符号41)が一例として10μ秒のパルス電圧である。図6に示すように、自己加熱するために金属酸化物半導体ナノワイヤに印加する加熱電圧を略矩形状のパルス波形とすることで、所定の電圧を連続して供給する場合と比較して金属酸化物半導体ナノワイヤに加熱電圧を印加する時間が低減される。この結果、印加される電力量Pと印加時間tとの積で求められるエネルギー量(仕事量)Eを低減することができる。
なお、図6では、SnO2ナノワイヤに印加される電圧波形として、略矩形状のパルス波形を用いる場合を例示した。ここで略矩形状とは、電圧パルス波形が全体として矩形状であれば、パルスの立ち上がりと立ち下がりの部分で、回路特性などとの関係から、傾斜する波形や曲線状となる波形のものをも含む趣旨である。また、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサに印加されるパルス状の電圧波形は、矩形状のものには限らない。電圧が印加されるON時間(0〜t1)と、電圧が印加されないOFF時間(t1〜T)とに分かれたパルス波形であれば、他の形状のパルス波形、例えば、三角波やのこぎり波、sin波、cos波などのパルス電圧を印加することで、金属酸化物半導体ナノワイヤに供給される仕事量Eを低減する効果が得られる。ただし、加熱電圧が印加された後に金属酸化物半導体ナノワイヤが所定の温度に到達するまでの時間である応答性を向上させる観点からは、略矩形状などの立ち上がりがより急峻な電圧波形を有するパルス電圧を用いることが好ましい。
本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの変形例では、図6に示すパルス波形の電圧を印加してSnO2ナノワイヤを加熱することにより、印加される仕事量Eを低減することができる。金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱するために印加される電力量のみならず、印加電力量と印加時間との積である仕事量Eが低減されることで、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサを特に電池電源で駆動されるポータブルタイプやウェアラブルタイプのセンサとして用いた場合に、長時間の駆動が可能となる、またはね装着される電池の小型化に伴うセンサとしての小型軽量化が実現できるなどの効果を発揮することができる。
図7は、SnO2ナノワイヤにパルス状の加熱電圧を印加した際の、印加電圧のパルス幅と金属酸化物半導体ナノワイヤの中央部分での温度上昇との関係について求めたシミュレーション結果である。
図7は、SnO2ナノワイヤに印加する加熱電圧のパルス幅(図6の符号41)と、その際に到達するSnO2ナノワイヤ中央部分における到達温度との関係を示したものである。なお、パルス周期(図6の符号42)は3m秒で一定とし、さらに、SnO2ナノワイヤのサイズや特性などの条件は、図3(a)、図3(b)と同じ値を用いてシミュレーションを行った。
図7に示すように、パルス幅が5×10-6秒以上の加熱電圧が印加されると、SnO2ナノワイヤの温度が金属酸化物半導体センサのセンサ部として検出感度を向上させる上で十分な温度である450℃程度となる。
このため、本実施形態の金属酸化物半導体センサにおいて、金属酸化物半導体ナノワイヤに印加する加熱電圧をパルス波形とする場合には、パルス幅を5×10-6秒、すなわち、0.5μ秒以上とマイクロ秒オーダーのものとすることで、センサ部の感度を十分実用的なレベルに向上することが理解できる。
[揮発性有機化合物の検出方法]
次に、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサにおける、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の検出手法について、肺ガンマーカーとして知られるノナナール(Nonanal)分子のセンシングを行う場合を例示して説明する。
次に、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサにおける、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の検出手法について、肺ガンマーカーとして知られるノナナール(Nonanal)分子のセンシングを行う場合を例示して説明する。
図8は、揮発性分子としてのノナナールを検出する場合の、測定系の構成例である。
図8に示すノナナール分子検出装置では、キャリアガスボンベ51からキャリアガス供給路52を経て流量コントローラ53にキャリアガスである窒素(N2)を放出し、ガスバルブ54で検出対象のノナナールが保存されている保存容器56への第1の流路55へ送られるN2ガスの流量を規定する。一方、希釈ガスとなる第2の流路57に供給されたN2ガスとノナナールとは合流して、流路58から本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサ59へと供給される。金属酸化物半導体センサ59で濃度が検出された被検ガスは、放出路60から排出される。
このようにすることで、キャリアガス中の濃度を調整した状態で、被測定分子であるノナナールを金属酸化物半導体センサに供給して、センサでノナナールを検出した際のセンサ抵抗値の変化を確認することができる。このようにして確認した、被検出物質として供給した際の希釈濃度と当該濃度の分子が触れた状態でのセンサ抵抗値の変化とから、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサを用いて被検出物質の濃度を測定することができる。
次に、本実施形態で説明したそれぞれの形態の金属酸化物半導体センサにより、実際に気体分子のセンシングを行った結果を、図9〜図12を用いて説明する。
図9は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの第1の構成例である、SnO2ナノワイヤを基板に接触するように載置した状態で、加熱電極から所定の電圧を印加してSnO2ナノワイヤを加熱した場合の、NO2ガスのセンシング結果を示している。
図9(a)に、第1の構成例の金属酸化物半導体センサのセンサ部であるSnO2ナノワイヤの配置部分周辺の構成を示す。
図9(a)は、SnO2ナノワイヤの配置部分の拡大した顕微鏡写真であり、平面視した状態と、斜め方向から見た状態(tilt-view)とを示している。図9(a)に示すように、SnO2ナノワイヤは、基板に接触して配置されている。なお、今回の測定で用いたSnO2ナノワイヤは、ワイヤ径が約20nm、電極間の長さが約2000nm(2μm)のもので、自己組織化法により形成された単結晶SnO2ナノワイヤである。
図9(b)は、図9(a)に示したセンサ部を備えた金属酸化物半導体センサを用いて、N2ガスをキャリアとして、NO2ガスを金属酸化物半導体センサに供給した際のSnO2ナノワイヤの抵抗値(MΩ)の変化を示す。
なお、図9の場合と、以下に説明する図10および図12で示す場合も含めて、センサ抵抗値の変化の測定は、チャンバ内に金属酸化物半導体センサを配置して以下の手順で行った。
まず、チャンバ内の圧力を2×10-2Paに低下させ、金属酸化物半導体センサの湿気と有機アブソルビン酸塩を除去した。
この状態で、加熱電極から所定の電圧を印加してSnO2ナノワイヤの温度を上昇させ、このときの抵抗値をセンサ抵抗値の基準値として測定した。
次に、チャンバ内に、N2ガスで100ppmに薄められたNO2ガスを導入し、チャンバ内の圧力を100Paとした。結果として、NO2ガスの濃度は、100ppbとなった。この状態で、SnO2ナノワイヤのセンサ抵抗値を測定値として測定した。
測定後は、再びチャンバ内を真空にして、SnO2ナノワイヤの表面からガスを取り除き、改めて、SnO2ナノワイヤに異なる印加電圧を加える次の実験を行った。
なお、図9(b)、図10(b)、図12において、図の下端部分に被測定ガスであるNO2ガスの導入タイミングを図示している。
図9(b)に結果を示す本実施形態にかかる第1の構成例の金属酸化物半導体センサによる測定実験では、加熱電極に印加される電圧値を変化させることで、SnO2ナノワイヤへの加熱電極からの印加電力量を変化させている。図9(b)において、符号71が印加電力10μWの状態を、符号72が印加電力21μWの状態を、符号73が印加電力28μWの状態を、符号74が印加電力43μWの状態を、符号75が印加電力53μWの状態を、それぞれ示している。
図9(b)では、符号71〜75で示すそれぞれの場合で、被測定ガスであるNO2ガスがSnO2ナノワイヤの表面に触れるタイミングと同じタイミングで、SnO2ナノワイヤの抵抗値が上昇し、NO2ガスの供給が停止されると、明らかにSnO2ナノワイヤの抵抗値が低下し始めている。このことから、本実施形態の金属酸化物半導体センサを用いることで、NO2ガスの存在を検出できることがわかる。また、図9(b)に示すように、SnO2ナノワイヤへの印加電力が10μWから53μWのいずれでも、被測定物であるNO2ガスが供給された際のSnO2ナノワイヤの抵抗値の変化の傾向は同じであり、このことから、SnO2ナノワイヤへの印加電力を10μWという小さい値とした場合でも、十分成果的に濃度100bbpのNO2ガスのセンシングが可能であることがわかる。
図10は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの第2の構成例である、SnO2ナノワイヤを基板の表面から間隙を設けて配置したフリースタンディング状態で、加熱電極から所定の電圧を印加してSnO2ナノワイヤを加熱した場合の、NO2ガスのセンシング結果を示している。
図10(a)に、測定に用いた第2の構成例の金属酸化物半導体センサのセンサ部であるSnO2ナノワイヤの配置部分周辺の構成を示す。図10(a)は、SnO2ナノワイヤの配置部分の拡大した顕微鏡写真であり、図9(a)と同様に、平面視した状態と斜め方向から見た状態とを示している。図10(a)の特に斜め方向からの写真(tilt-view)で顕著なように、SnO2ナノワイヤは加熱電極の上に乗るようになっていて、SnO2ナノワイヤ1が基板には接触していないことがわかる。
図10(b)は、図10(a)に示したセンサ部を備えた金属酸化物半導体センサを用いて、N2ガスをキャリアとして、NO2ガスを金属酸化物半導体センサに供給した際のSnO2ナノワイヤの抵抗値の変化を示す。
図10(b)に結果を示す測定実験においても、加熱電極に印加される電圧値を変化させることで、SnO2ナノワイヤへの加熱電極からの印加電力量を変化させている。図10(b)において、符号81が印加電力6μWの状態を、符号82が印加電力9μWの状態を、符号83が印加電力13μWの状態を、符号84が印加電力19μWの状態を、符号85が印加電力21μWの状態を、それぞれ示している。
図10(b)においても、符号81〜85で示すそれぞれの場合で、被測定ガスであるNO2ガスがSnO2ナノワイヤの表面に触れるタイミングと同じタイミングで、SnO2ナノワイヤの抵抗値が上昇し、NO2ガスの供給が停止されると、明らかにSnO2ナノワイヤの抵抗値が低下し始めている。さらに、SnO2ナノワイヤを基板上に基板と接触するように配置した状態でのセンシング結果を示す図9(b)と比較すると、図10(b)で示すフリースタンディング状態のSnO2ナノワイヤによるセンシング結果では、例えば、符号81として示す印加電力量6μWの状態など、より少ない消費電力で被測定ガスであるNO2ガスを検出することができることがわかる。しかも、図10(b)に示すSnO2ナノワイヤをフリースタンディング状態とした金属酸化物半導体センサを用いた場合には、NO2ガスの検出時のSnO2ナノワイヤの抵抗値の変化量が格段に大きくなっていることが理解できる。
このことから、本実施形態の金属酸化物半導体センサとして、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤを基板から間隙を設けて所定の距離離間したフリースタンディング状態とすることで、印加電力量を低減する効果に加えて、揮発性分子に対するセンシング感度を大きく向上する効果を得ることができることがわかる。
ここで、図11として、SnO2ナノワイヤを基板に接触するように配置した場合と、基板との間に間隙を設けたフリースタンディング状態とした場合との、SnO2ナノワイヤにおけるセンシング感度の差異を示す。
図11において、符号91がフリースタンディング状態での測定結果を、符号92がSnO2ナノワイヤを基板に接触して配置した状態での測定結果をそれぞれ示している。なお、図9において感度(Sensitivity)とは、それぞれの測定条件においてNO2ガスが導入されていない状態のセンサ抵抗値(基準値)に対する、被測定物であるNO2ガスが導入された状態でのセンサ抵抗値(測定値)の割合を%で示したものである。
図11から明らかなように、SnO2ナノワイヤを基板上に基板と接触した状態で配置した場合(符号92の場合)では、印加電力量を増加させてもセンシング感度はほとんど向上しないが、SnO2ナノワイヤをフリースタンディング状態とした場合(符号91の場合)では、印加電力量を増やすことにより、センシング感度を大きく向上させることができることがわかる。
図11に示す結果から、SnO2ナノワイヤをフリースタンディング状態とすることにより、金属酸化物半導体センサとしての感度を容易に向上させることができ、かつ、センシング感度を向上させた場合でも、小さな印加電力量での検出が可能であること、すなわち、より低消費電力で感度の高い測定を行うことができることがわかる。
次に図12は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの第3の構成例(上記説明した変形例)である、SnO2ナノワイヤを加熱するための印加電力として、パルス状波形を用いた場合の測定結果を示す。
なお、図12に示す測定結果は、図10(a)に示した第2の構成例の場合と同様に、SnO2ナノワイヤを基板の表面から間隙を設けて配置した、フリースタンディング状態で測定を行っている。
図12において、符号101が印加されたパルス電圧波形のパルス幅が0.005秒の場合、符号102が印加されたパルス電得圧波形のパルス幅が0.05秒の場合、符号103が印加されたパルス波形のパルス幅が0.5秒の場合、符号104が印加されたパルス波形のパルス幅が3秒の場合を、それぞれ示している。なお、パルス幅の異なるパルス状電圧を印加するに当たり、パルス状電圧の印加間隔、すなわち、一つのパルスの立ち下がりから次のパルスの立ち上がりまでの時間は、いずれのパルス幅の場合も3秒間で一定とした。
図12に示すように、SnO2ナノワイヤを自己加熱するために印加する加熱電圧のパルス幅が、符号101として示す0.005秒の場合から、符号104として示す3秒の場合のいずれの場合においても、被測定物であるNO2ガスがSnO2ナノワイヤの表面に触れるタイミングと同じタイミングで、SnO2ナノワイヤの抵抗値が上昇し、NO2ガスの供給が停止されると、SnO2ナノワイヤの抵抗値が低下し始めていることがわかる。特に、NO2ガスがSnO2ナノワイヤの表面に触れている場合と触れていない場合とのSnO2ナノワイヤの抵抗値の差、すなわち、図11で示した感度は、パルス幅が3秒である符号104の場合が最も大きいものの、符号101で示すパルス幅が最も狭い0.005秒の場合でも、符号103で示すパルス幅が0.5秒の場合と大きな差異はない。このことは、SnO2ナノワイヤを加熱する加熱電圧として、実質的なエネルギー量である仕事量Eを低減できるパルス電圧を印加した場合でも、十分な感度でNO2ガスの検出が可能であることを示している。
このように、本実施形態で説明した金属酸化物半導体センサの各構成それぞれが、例えばNO2ガスなどの揮発性分子のセンサとして、十分に実用可能なものであることがわかる。
図13は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサをガスセンサ等として使用する際の具体的な構成例を説明する図である。
本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサは、図13に示すように、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤ1が配置されている基板3の領域の周辺部分に、一対の電極2に加熱電圧を供給するための配線や、金属酸化物半導体ナノワイヤでの抵抗値の変化を検出するための配線を、引き出し線8として形成し、引き出し線8の端部に図13では図示しない端子部を設けた、チップ状部材として構成することができる。
この場合において、基板上に直接センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤ配置部分を形成し、形成された一対の電極を同じ基板上に形成された引き出し線と接続する構成とすることができる。また、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤ配置部分を微小な副基板上に形成し、引き出し線や端子部などをより大きな主基板上に形成して、主基板上の所定位置に副基板を搭載して、副基板の各接続端子と主基板の引き出し線とを接続する構成とすることができる。このように、主基板上にセンサ部が形成された副基板を搭載する構成とする場合において、副基板上のセンサ部分と主基板上に形成された引き出し線との接続には、ワイヤーボンディング法やフリップチップ接続法などの、半導体素子を基板上に実装する各種の実装手段を好適に用いることができる。
[金属酸化物半導体ナノワイヤの製造]
以下、本開示にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法を説明する。
以下、本開示にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法を説明する。
本実施形態にかかる製造方法において、センサ部として用いられる金属酸化物半導体ナノワイヤは、微細加工法、または、自己組織化法という従来から知られているナノワイヤの製造方法により製造することができる。
微細加工法は、半導体工学におけるNEMS(Nano Electro Mechanical System)などに代表されるマイクロプロセッサ技術や、ナノリソグラフィー法などの従来知られている各種の微細加工技術を用いて、金属酸化物半導体物質をワイヤ状に加工するものである。
図14に微細加工法により形成された金属酸化物半導体ナノワイヤである、SnO2ナノワイヤの外観写真を示す。
図14において、図14(a)がSnO2ナノワイヤを平面視した状態、図14(b)がSnO2ナノワイヤを側面から見た状態を示している。
図14に示す金属酸化物半導体ナノワイヤは、偏平な板状の金属酸化物半導体を各種の微細加工工法を用いて加工することでワイヤ形状としたものであり、ワイヤ形状部分の両端に微細加工時に器具に固定されていた固定部分1aが残っている。
図14に示す微細加工法で形成された金属酸化物半導体ナノワイヤは、結晶構造は多結晶であり、径サイズとしては数十nmから数百nm程度のものを作成できる。微細加工技術によりワイヤ形状部分を切断して取り出すことが容易であり、本開示にかかる金属酸化物半導体センサのセンサ部分として用いるなどのデバイス化が容易である。
一方、自己組織化法は、ガラス部材などの基板上に、金、プラチナ、アルミ、銅、鉄、コバルト、銀、錫、インジウム、亜鉛、ガリウムなどの、ナノワイヤを成長させるための金属触媒をスパッタリング法などにより堆積させ、この触媒からボトムアップ法によって成長させて形成する方法である。
図15に、自己組織化法によって基板上に形成されたナノワイヤの拡大写真を示す。
図15に示すように、自己組織化法で形成されたSnO2ナノワイヤ1は、基板1bの表面に上方に向かって林立した状態で得られる。自己組織化法で形成されたナノワイヤは、単結晶であり、ワイヤ径が数nm〜数十nm程度と極めて細いナノワイヤを得ることができる。ワイヤ径が小さいため、自己組織化法で形成されたナノワイヤを金属酸化物半導体センサのセンサ部に用いることは、金属酸化物半導体センサの低消費電力化に極めて有効である。超音波を印加することで、成長形成させる際に用いられた基板1b上から比較的容易にナノワイヤ1を切断して取り出すことができる。
本実施形態の金属酸化物半導体センサの製造方法では、単結晶SnO2ナノワイヤを、VLS(Vapor Liquid Solid)法により自己成長させて製造した。
具体的には、形成用触媒として厚さ0.7nmのAu層を形成したAl2O3基板を、PLD(Pulsed Laser Deposition)製膜装置内に入れ、一旦内部圧力を1×10-5Paのベース圧に下げ、その後、モル比1:1000のO2とArガスを導入して、全圧が5Paとなるように調節した。基板温度を750℃に上昇させた後に、燒結SnO2ターゲットをArFエキシマレーザ(波長193nm、照射エネルギー40mJ、周波数10Hz)でアブレートした。この結果、ワイヤ径が約10〜20nm、長さが約2〜3μmの単結晶SnO2ナノワイヤを形成することができた。
[ナノワイヤの配置]
次に、微細なナノワイヤを、基板上の所定位置に配置する方法について説明する。
次に、微細なナノワイヤを、基板上の所定位置に配置する方法について説明する。
図16は、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法で利用する、金属酸化物半導体ナノワイヤを配置する工法を説明するための図である。
本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法では、基板上に塗布される水の層とオイル層とに対する金属酸化物半導体ナノワイヤの自由エネルギーの差を用いて、基板上の所定位置に所定の向きで金属酸化物半導体ナノワイヤを配置する。
図16に示すように、基板110上の金属酸化物半導体ナノワイヤ1を配置したい位置を親水性領域111に、それ以外の領域を疎水性領域112とする。
具体的には、例えば、金属酸化物半導体ナノワイヤ1を配置したい領域に親水性の膜をフォトリソグラフフィー法などによって形成することができる。また、基板110上の全ての領域に疎水性の膜を形成し、フォトグラフィー法によって金属酸化物半導体ナノワイヤ1を配置したい領域の疎水性膜を除去することによって、当該部分を相対的に親水性領域111とすることができる。本実施形態の金属酸化物半導体センサでは、基板110上の全ての部分に、疎水性の自己組織化単分子膜(SAM;Self-Assembled monolayer)112を形成し、フォトリソグラフィー法によって金属酸化物半導体ナノワイヤを配置する領域の膜を取り除くことで、相対的な親水性領域111を形成した。
この状態の基板110上に、まず、水113の層をフローコート法などの塗布方法によりコーティングする。塗布された水113の層は、親水性領域111上にのみ残存する。
次に、基板110上に、金属酸化物半導体ナノワイヤ1が分散されているイソプロパノール(IPA)などのオイル114を、塗布コーティングする。
このとき、オイル114内に含まれている金属酸化物半導体ナノワイヤ1は、水とオイルとに対する自由エネルギーの差によって油水界面に留められるため、水の層が形成されている部分111に選択的に配置することができる。この結果、水113のコーティング方向115と、オイル114のコーティング方向116を合わせることで、親水性領域111上に残存する水の膜113に、オイル114の形成方向116に向かった状態で金属酸化物半導体ナノワイヤ1を配置することができる。
図17は、図16の方法によって、基板上に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置した状態を示す拡大写真である。
図17から、基板上の所定位置に、所定の方向に向かった金属酸化物半導体ナノワイヤ1を規則的に配置できていることが確認できる。
本実施形態の金属酸化物半導体センサの製造方法では、図16で示した方法を用いて、SnO2ナノワイヤを基板上の所定位置に配置している。
[フリースタンディング状態のセンサ部の形成]
次に、上記実施形態で説明した、SnO2ナノワイヤを基板表面から所定の間隙を有して配置するフリースタンディング状態のセンサ部の形成方法を説明する。
次に、上記実施形態で説明した、SnO2ナノワイヤを基板表面から所定の間隙を有して配置するフリースタンディング状態のセンサ部の形成方法を説明する。
図18〜図20は、基板上の所定の位置に、フリースタンディング状態でSnO2ナノワイヤを配置する製造方法を示す図である。
本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法では、標準的な電子ビームリソグラフィ(EBL:Electron Beam Lithography)法とRF(radio Frequency)スパッタリング法によって、センサ部を形成した。
図18(a)に示すように、まず、厚さ100nmのSiO2膜が表面に形成されたSi基板121上の所定の位置に、10nmのチタン(Ti)と300nmのプラチナ(Pt)とによる二層金属構成の接続端子122を、RFスパッタリング法により形成する。
図18(b)に示すように、電極配線122が形成された基板121上に、RFスパッタリング法によってSnO2ナノワイヤの下地となる、厚さ100nmのMgO犠牲層123を形成する。
さらに、図18(c)に示すように、図16を用いて説明した工法によってMgO犠牲層123上のSnO2ナノワイヤの配置位置に、親水性領域124を形成する。
さらに、水の層をコーティングした後にSnO2ナノワイヤ1が分散されているオイル層をコーティングすることで、図19(a)に示すように、親水性領域124上にそれぞれSnO2ナノワイヤ125を所定の向きで配置する。
次に、図19(b)に示すように、ZEPレジスト(日本ゼオン株式会社製)などのポジ型、またはネガ型の電子線レジスト膜126を積層形成する。さらに、露光パターンを用いて、それぞれのSnO2ナノワイヤ125に対して加熱電極および検出電極となる一対の電極パターン127を形成する。
この電極パターン127部分のレジスト膜126とMgO犠牲層123とを除去して電極配置位置128を形成した状態が、図19(c)である。
次に、レジスト膜126上から、TiとPtの混合層をRFスパッタリング法を用いてコーティングする。図20(a)に示すように、TiとPtの混合層は、電極配置位置128の基板121上の接続端子122部分(129)とレジスト膜126上の部分(130)とに形成される。
ここで、レジスト層126をリフトオフすることで、図20(b)に示すように、基板121上の所定位置に、SnO2ナノワイヤ125と接続された加熱電極と検出電極とを兼ねる一対のTi/Pt電極129が形成される。
最後に、MgO犠牲層123を水や希釈された塩酸などによって除去することによって、図20(c)に示すように、基板121の表面から間隙を有した状態であるフリースタンディング状態でSnO2ナノワイヤ125が配置された金属酸化物半導体センサのセンサ部を形成することができる。
図18〜図20に示した方法によってセンサ部を形成することで、SnO2ナノワイヤ125はTi/Pt電極129の厚さ方向の中間部分に位置することとなり、Ti/Pt電極129自体によってフリースタンディング状態で固定される。また、金属酸化物半導体センサを動作させることによる発熱で、SnO2ナノワイヤ125とTi/Pt電極129との接触部分が溶融するため、フリースタンディング状態を安定して維持することができる。
なお、強いメニスカス力のために、SnO2ナノワイヤ125配置後の乾燥プロセスで、SnO2ナノワイヤ125が基板121に接触してしまう場合がある。この場合には、MgO犠牲層123のエッチング時の最終的なリンスと乾燥プロセスにおいて、蒸留水の代わりにHydrofluoroether(HFE)という低粘性溶媒を用いることで、SnO2ナノワイヤ125が基板121と接触してしまうという問題点を効果的に解消することができる。
上記説明した、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法によって製造された金属酸化物半導体センサのセンサ部を、接続配線122を用いて基板上に実装することなどによって、チップ形態の金属酸化物半導体センサを製造することができる。
なお、図18〜図20を用いて説明した本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法では、基板121上にセンサ部として4つのSnO2ナノワイヤ125が縦横に2つずつ並んで配置された例を示したが、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの基板上121のセンサ部の配置はこの例に限られない。本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサは、基板上121にセンサ部であるSnO2ナノワイヤ125を1本のみ、2本もしくは3本、さらには5本以上の所望の数だけ備えることができ、その配置も行方向列方向に規則正しく配置されるものには限られない。
また、図18〜図20では、基板121上に配置されたSnO2ナノワイヤ125それぞれに対して一対のTi/Pt電極129が接続される構成を示したが、本実施形態にかかる金属酸化物半導体センサの製造方法において、例えば、全てのSnO2ナノワイヤ125に対して共通する一対のTi/Pt電極129を接続する構成とすることができる。この場合には、全てのSnO2ナノワイヤ125が並列の状態で接続されることになるため、被検出物である揮発性分子の濃度を平均化した測定結果を得ることができる。また、一対のTi/Pt電極129の内の一方の電極を共通電極として活用し、全てのSnO2ナノワイヤ125に対して、もしくは、近接して、または、一方向に並んで配置された複数本のSnO2ナノワイヤ125に対して、それぞれ1本のTi/Pt電極129を接続する構成とすることで、基板121上に形成されるTi/Pt電極129の本数を低減することができ、基板121の小型化、すなわち金属酸化物半導体センサの小型化に寄与する構成を採用することができる。
もちろん、金属酸化物半導体センサのセンサ部として、2つの電極が4端子接続された金属酸化物半導体ナノワイヤを用いる場合には、上記2端子構成の金属酸化物半導体ナノワイヤへの電極の接続形態を応用して、基板上に配置される金属酸化物半導体ナノワイヤへの電極の接続構成としてさまざまな形態を採用することができる。
以上説明した、本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、金属酸化物半導体ナノワイヤに直接電流を流して加熱する自己加熱方式を採用することで、極めて小さな消費電力で金属酸化物半導体の温度を、揮発性分子を容易に検出可能とする温度に加熱することができる。このため、測定感度の高い金属酸化物半導体センサを、低消費電力で実現することができる。
また、金属酸化物半導体ナノワイヤを基板の表面から所定の間隔を隔てた位置に配置するフリースタンディング状態とすることで、金属酸化物半導体ナノワイヤの熱が基板に伝わってしまって温度上昇が妨げられることを防止でき、より低消費電力で高感度な金属酸化物半導体センサを実現することができる。
さらに、金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱するために印加する電圧をパルス状電圧とすることで、実際に金属酸化物半導体センサに印加される仕事量であるエネルギー量を、より一層低低減することができる。
例えば、従来の金属酸化物半導体センサとして、MEMS技術を利用して低消費電力化を図ったものであっても、消費電力で10mWオーダー、印加エネルギー量で1J程度必要であったものを、金属酸化物半導体ナノワイヤに電流を流して加熱する自己加熱方式とすることで、消費電力を数10μWオーダーへと約500分の1程度に、印加エネルギー量として、10-2Jオーダーへと、100分の1程度に低減することができる。また、センサ部に配置された金属酸化物半導体ナノワイヤを、基板との間に間隙を有して配置するセルフスタンディング状態とすることで、金属酸化物半導体ナノワイヤを基板に接した状態で配置する方法に比べて、消費電力量を2分の1から3分の1程度に低減することができる。さらに、金属酸化物半導体ナノワイヤの自己加熱のために印加する電圧を、パルス状の波形とすることで、印加エネルギー量を10-5Jオーダーへと、従来の金属酸化物半導体センサに比べて10000分の1以下の極めて低いレベルへと低減することができる。
なお、本願で開示する金属酸化物半導体センサは、揮発性分子を検出するセンサ部に金属酸化物半導体ナノワイヤを用いているため、比表面積を広くすることができ、従来の薄膜状の金属酸化物半導体センサと比較して金属酸化物半導体センサとしての大きさも十分に小さくすることができる。
このように、本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、小型化、かつ、大幅な低消費電力化を実現することができ、今後ニーズが強まると考えられるウェアラブルのガスセンサなどへの応用を期待することができる。
なお、上記実施形態では、本開示にかかる金属酸化物半導体センサとして、ノナナールの濃度を検出するものと、NO2ガスを検出するものについてのみ例示して説明したが、本開示にかかる金属酸化物半導体センサで検出可能な揮発性分子は、ノナナールやNO2ガスに限られない。NO2ガス以外のNOxガスやSO2などの、一般的な有毒ガス分子を検出するガスセンサ、各種のVOCセンサ、その他、センサ部である金属酸化物半導体ナノワイヤの表面に付着し、電荷のやりとりを通じて金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値成分を変化させる各種揮発性分子に対するセンサとして使用することができる。
さらに、本開示にかかる金属酸化物半導体センサでは、センサ部として金属酸化物半導体ナノワイヤを用いているため、膜状の金属酸化物半導体を用いたセンサと比較して、金属酸化物半導体の劣化が生じにくく、センサとしてのライフタイムを長く維持することができる。また、上記実施形態としては具体的な開示を省略したが、本開示にかかる金属酸化物半導体センサにおいても、金属酸化物半導体センサの特徴である、抵抗値の変化から被測定物質である揮発性分子の濃度検出をすることができることは言うまでもない。
また、本開示にかかる金属酸化物半導体センサは、一つの金属酸化物半導体センサに複数のセンサ部を備えた構成とすることもできる。
さらに、上記実施形態では、金属酸化物半導体ナノワイヤを基板上に、基板面と略平行に配置した構成例のみを示したが、例えば、基板面に対して垂直方向に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置して、そのワイヤ間に被検出物質を通過させる構成とすることができる。特に自己組織化法で金属酸化物半導体ナノワイヤを形成した場合には、金属酸化物半導体ナノワイヤの形成に用いた基板をそのまま金属酸化物半導体センサの基板として利用することができ、金属酸化物半導体センサの製造工程を簡略化できる可能性がある。
本開示にかかる金属酸化物半導体センサおよびその製造方法は、小型化、かつ、低消費電力化されたガスセンサなどの揮発性分子金属酸化物半導体センサとして、安全性確保や医療用のセンシング場面において、ウェアラブル化を実現することができるなど、幅広い分野での用途が期待できる。
1 SnO2ナノワイヤ(金属酸化物半導体ナノワイヤ)
2 一対の電極
6 抵抗値検出手段
2 一対の電極
6 抵抗値検出手段
Claims (11)
- 金属酸化物半導体ナノワイヤと、
前記金属酸化物半導体ナノワイヤに所定の電圧を印加する一対の電極と、
前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値を検出する抵抗値検出手段とを備え、
前記一対の電極から印加された電圧によって前記金属酸化物半導体ナノワイヤに流れる電流で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを加熱し、前記抵抗値検出手段により検出された前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化から、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの表面に接触する揮発性分子の分子量を検出することを特徴とする金属酸化物半導体センサ。 - 前記一対の電極から前記金属酸化物半導体ナノワイヤに印加される前記電圧がパルス状電圧である、請求項1に記載の金属酸化物半導体センサ。
- 前記一対の電極から前記金属酸化物半導体ナノワイヤに印加される前記パルス状電圧のパルス幅が、0.5μ秒以上である請求項2に記載の金属酸化物半導体センサ。
- 前記一対の電極が、基板上の少なくとも表面が絶縁性である部分に配置され、
前記金属酸化物半導体ナノワイヤが、前記一対の電極間に、かつ、その長さ方向が前記基板の主面方向に沿うように配置された請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物半導体センサ。 - 前記基板と、前記金属酸化物半導体ナノワイヤとの間に間隙が形成されている請求項4に記載の金属酸化物半導体センサ。
- 前記基板上に、前記基板の主面方向に沿うように複数本の前記金属酸化物ナノワイヤが配置されている、請求項4または5に記載の金属酸化物半導体センサ。
- 前記基板上で、前記一対の電極と前記金属酸化物半導体ナノワイヤとが配置されている領域の周辺領域に、引き出し線と前記引き出し線に接続された端子部が形成され、
前記端子部を介して、前記金属酸化物半導体ナノワイヤに前記所定の電圧を印加し、かつ、前記金属酸化物半導体ナノワイヤの抵抗値の変化を検出することを可能とした請求項4〜6のいずれかに記載の金属酸化物半導体センサ。 - 前記金属酸化物半導体ナノワイヤとして、触媒を用いた自己組織化法により形成された単結晶SnO2ナノワイヤを用い、気体分子の濃度を検出するガスセンサである、請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物半導体センサ。
- 所定位置に接続端子が形成された基板上に犠牲層を塗布形成し、
前記犠牲層上の所定位置に金属酸化物半導体ナノワイヤを配置し、
前記接続端子と前記金属酸化物半導体ナノワイヤとを接続する電極を形成したのち、前記犠牲層を除去することで、前記基板上に前記基板の表面から所定の間隙を隔てた状態で前記金属酸化物半導体ナノワイヤを配置することを特徴とする金属酸化物半導体センサの製造方法。 - 前記犠牲層上に疎水性の自己組織化膜からなる配置パターンを形成し、前記基板上に水を塗布して前記配置パターン上に水の膜を形成した後、前記金属酸化物半導体ナノワイヤを分散したオイルを塗布することで、前記配置パターン部分に前記金属酸化物半導体ナノワイヤを載置してその配置位置を規定する、請求項9に記載の金属酸化物半導体センサの製造方法。
- 前記金属酸化物半導体ナノワイヤが、
金(Au)を触媒に用いた物理蒸着手段による自己組織化法により形成された単結晶SnO2ナノワイヤである、請求項9または10に記載の金属酸化物半導体センサの製造方法。
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2014
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