JP2016102279A - 織物基材、及びそれを用いた繊維強化複合材料 - Google Patents

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康博 辻井
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Abstract

【課題】強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持をより強固にした織物基材を提供する。【解決手段】織物基材1は、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用経糸3と、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用緯糸5と、を備える。強化繊維用経糸3と強化繊維用緯糸5とは、互いに略90°の角度をなすように配されている。補助経糸7(7a、7b)と、補助緯糸9(9a、9b)と、は平織り組織を形成している。平織り組織によって、強化繊維用経糸3と、強化繊維用緯糸5との配置が固定されている。補助緯糸9(9a、9b)が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸3が配されている。本発明の織物基材1では、強化繊維用経糸3及び強化繊維用緯糸5の配置がずれにくい。【選択図】図1

Description

本発明は、織物基材、及びそれを用いた繊維強化複合材料に関し、さらに詳しくは、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持をより強固にした織物基材等に関する。
高強度の材料として繊維強化複合材料が広く用いられている。繊維強化複合材料に用いる織物基材は、様々な種類のものが検討されている。
例えば、従来から、クロス材が検討されている。クロス材は、経糸と緯糸との交差部でクリンプ(屈曲状態)を形成している。クリンプが存在するために、クロス材は、強度等が低下してしまうおそれがあった。
そこで、クロス材よりも、高強度な織物基材が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
この文献では、織物基材は、繊維束からなり互いに平行に配列された複数の強化繊維用経糸と、繊維束からなり互いに平行にかつ強化繊維用経糸と交差する方向に配列された複数の強化繊維用緯糸とを備えている。このように、この文献の技術では、経糸と緯糸との交差部でクリンプを形成していないから、クロス材よりも高強度な織物基材が提供されることが開示されている。また、この文献の技術では、補助経糸及び補助緯糸により、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置を拘束している。
しかしながら、この技術では、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持が必ずしも十分ではなかった。
特開2013−57143号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持をより強固にすることを目的とする。
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
互いに略平行に配列された複数の強化繊維用経糸と、
互いに略平行に配列され、かつ、前記強化繊維用経糸と交差する方向に配列された複数の強化繊維用緯糸と、を備えた織物基材であって、
補助経糸と、補助緯糸と、が織り組織を形成し、前記織り組織によって、前記強化繊維用経糸と、前記強化繊維用緯糸との配置が固定されており、
前記補助緯糸が上下して形成される屈曲部に、前記強化繊維用経糸が配されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、
前記補助経糸及び前記補助緯糸の少なくとも一方には、熱融着糸が含まれることを特徴とする請求項1に記載の織物基材である。
請求項3に記載の発明は、
前記熱融着糸が溶融して、前記強化繊維用経糸及び/又は前記強化繊維用緯糸が融着していることを特徴とする請求項2に記載の織物基材である。
請求項4に記載の発明は、
前記織り組織には、平織り組織、綾織り組織、及び朱子織り組織からなる群より選ばれる少なくとも1つの組織が含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の織物基材である。
請求項5に記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の織物基材に樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材料である。
本発明の織物基材では、補助経糸と、補助緯糸と、が織り組織を形成し、織り組織によって、強化繊維用経糸と、強化繊維用緯糸との配置が固定されている。そして、補助緯糸が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸が配されている。よって、本発明の織物基材では、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持を強化できる。
また、補助経糸及び補助緯糸の少なくとも一方に、熱融着糸が含まれる場合には、加熱することで、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置を固定できる。
また、補助経糸及び補助緯糸の少なくとも一方の熱融着糸が溶融して、強化繊維用経糸及び/又は強化繊維用緯糸が融着している場合には、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置が固定される。
また、補助経糸と、補助緯糸と、が織り組織を形成しており、織り組織は、平織り組織、綾織り組織、及び朱子織り組織からなる群より選ばれる少なくとも1つの組織が含まれる場合には、織り組織を既存の織機を用いて形成できる。
また、本発明の織物基材に樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材料は、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置の保持が強化されているので、強度等の面で有利である。
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
実施例に係る織物基材を模式的に示す斜視図である。 実施例に係る織物基材の織り組織を説明するための説明図である。 実施例に係る織物基材の織り組織を説明するための説明図である。 実施例に係る織物基材の織り組織を説明するための説明図である。 実施例に係る織物基材の織り組織を説明するための説明図である。
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
1.織物基材
本実施形態に係る織物基材(1)は、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用経糸(3)と、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用緯糸(5)と、を備える。強化繊維用経糸(3)と強化繊維用緯糸(5)とは、互いに交差する方向に配されている。
補助経糸(7(7a、7b))と、補助緯糸(9(9a、9b))と、が織り組織を形成し、織り組織によって、強化繊維用経糸(3)と、強化繊維用緯糸(5)との配置が固定されている。
補助緯糸(9(9a、9b))が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸(3)が配されている。
強化繊維用経糸(3)は、織物基材を複合材料の強化繊維基材として使用した際に、複合材料のマトリックスを強化する機能を有する。
強化繊維用緯糸(5)は、織物基材を複合材料の強化繊維基材として使用した際に、複合材料のマトリックスを強化する機能を有する。
強化繊維用経糸(3)は、略真っ直ぐな状態とされていることが好ましく、強化繊維用緯糸(5)も、略真っ直ぐな状態とされていることが好ましい。略真っ直ぐな状態とすることで、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)の強度を十分に発揮できるからである。ここで、略真っ直ぐな状態とは、波状の屈曲がほとんど無い状態のことを意味する。
強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)としては、有機繊維に限らず、無機繊維も用いることができる。有機繊維は、特に限定されず、適宜選択することができる。有機繊維としては、例えば、炭素繊維(カーボン繊維)、アラミド繊維、PBO繊維(ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)等が挙げられる。無機繊維は、特に限定されず、適宜選択することができる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維用経糸(3)は、複数とされている。強化繊維用経糸(3)の数は特に限定されず、織物基材(1)の用途、サイズ等によって適宜選択される。例えば、10mm幅内に10〜12本とすることができ、また、5〜6本とすることができ、更には、2〜3本とすることができる。
強化繊維用緯糸(5)は、複数とされている。強化繊維用緯糸(5)の数は特に限定されず、織物基材(1)の用途、サイズ等によって適宜選択される。例えば、10mm幅内に10〜12本とすることができ、また、5〜6本とすることができ、更には、2〜3本とすることができる。
各強化繊維用経糸(3)は、複数本の糸が束になっている繊維束であってもよい。繊維束の場合に、1つの繊維束を構成する糸の数(フィラメント数)は特に限定されず、適宜選択することができる。1つの繊維束を構成する糸の数としては、例えば、1000〜24000本とすることができ、また、3000〜6000本とすることができる。繊維束の場合には、繊維束の形状は特に限定されないが、断面が扁平な形態とすることができる。
各強化繊維用緯糸(5)は、複数本の糸が束になっている繊維束であってもよい。繊維束の場合に、1つの繊維束を構成する糸の数(フィラメント数)は特に限定されず、適宜選択することができる。1つの繊維束を構成する糸の数としては、例えば、1000〜24000本とすることができ、また、3000〜6000本とすることができる。繊維束の場合には、繊維束の形状は特に限定されないが、断面が扁平な形態とすることができる。
強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)に用いる糸の繊度は、特に限定されない。例えば、2000〜16000デシテックスとすることができ、また、4000〜8000デシテックスとすることができる。
強化繊維用経糸(3)と強化繊維用緯糸(5)とは、互いに交差する方向に配されている。交差角は、特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、20°〜100°とすることができる。織物基材や繊維強化複合材料の強度の観点からは、略90°、略45°が好ましい。
補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))を構成する材料は特に限定されないが、通常、樹脂が用いられ、樹脂の中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアミド系樹脂としては、具体的には、脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等のナイロン)、芳香族ポリアミド樹脂(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体)等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
ビニル系樹脂としては、具体的には、疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロンが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
また、補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))には、無機フィラー及び/又は有機フィラーが含有されてもよい。
補助経糸(7(7a、7b))、補助緯糸(9(9a、9b))としては、特にポリアミド系繊維及びポリエステル系繊維が好ましい。補助経糸(7(7a、7b))、補助緯糸(9(9a、9b))として、これらの繊維のうちの1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))の少なくとも一方には、熱融着糸が含まれることが好ましい。補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))の両方に、熱融着糸が含まれていてもよい。
熱融着糸を用いると、織物基材(1)の加工後、加熱することにより、強化繊維用経糸(3)と強化繊維用緯糸(5)との配置を固定できるからである。
すなわち、熱融着性の補助糸(補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b)))により、強化繊維用経糸(3)と強化繊維用緯糸(5)と補助糸とが互いに接着する。このため、織物基材(1)を切断しても、強化繊維用糸(強化繊維用経糸(3)、強化繊維用緯糸(5))及び補助糸は、接着(結合)した状態を維持できる。
また、補助糸に熱融着糸を用いた場合には、織物基材(1)を熱型でプレスすることにより、織物基材(1)に形状を付与できる。しかも、この場合には、補助糸の効果により、織物基材(1)に付与された形状を維持できる。
なお、補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))は、複数本の繊維の束で構成されるものに限定されず、1本のフィラメントであってもよい。
熱融着糸を構成する樹脂としては、特に限定されず、加熱することにより溶融する樹脂であればよい。この場合における加熱温度は特に限定されないが、通常、80〜200℃、好ましくは、80〜100℃である。
熱融着糸としては、上述のポリアミド系樹脂を用いたポリアミド系繊維、及びポリエステル系樹脂を用いたポリエステル系繊維が好ましい。
補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))の少なくとも一方が、熱融着糸である場合には、織物基材(1)では、熱融着糸が溶融して、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)が融着していてもよい。このようにすることで、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)が固定された織物基材(1)とすることができる。
補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))に用いる糸の繊度は、特に限定されない。例えば、84〜1680デシテックスとすることができ、また、84〜1100デシテックスとすることができ、更には、84〜555デシテックスとすることができる。
補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))から形成される織り組織は、特に限定されず、適宜選択することができる。
織り組織としては、平織り組織、綾織り組織、朱子織り組織の織物の三原組織が例示される。また、織り組織としては、三原組織を適当に変化させた変化組織、又は三原組織を組み合わせることにより作製された変化組織も用いることができる。
本実施形態の織物基材(1)では、補助経糸(7(7a、7b))と、補助緯糸(9(9a、9b))と、が形成する織り組織によって、強化繊維用経糸(3)と、強化繊維用緯糸(5)との配置が固定されている。すなわち、補助経糸(7(7a、7b))と、補助緯糸(9(9a、9b))と、が形成する織り組織の中に、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)が織り込まれた状態とされている。
この状態では、補助緯糸(9(9a、9b))が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸(3)が配されている。すなわち、補助緯糸(9(9a、9b))は、波状に屈曲して、山部及び/又は谷部に強化繊維用経糸(3)が配されている。
このように、本実施形態の織物基材(1)では、補助経糸(7(7a、7b))と、補助緯糸(9(9a、9b))と、が織り組織を形成し、織り組織によって、強化繊維用経糸(3)と、強化繊維用緯糸(5)との配置が固定されている。そして、補助緯糸(9(9a、9b))が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸(3)が配されている。従って、本実施形態の織物基材(1)では、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)の配置がずれにくくなる。
また、補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))の少なくとも一方に、熱融着糸が含まれている場合には、加熱することで、熱融着糸を溶融させて、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)の配置を固定できる。
また、補助経糸(7(7a、7b))及び補助緯糸(9(9a、9b))の少なくとも一方の熱融着糸が溶融して、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)が融着している場合には、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)の配置がより固定される。
また、補助経糸(7(7a、7b))と、補助緯糸(9(9a、9b))と、が織り組織を形成しており、織り組織は、平織り組織、綾織り組織、及び朱子織り組織からなる群より選ばれる少なくとも1つの組織が含まれる場合には、特殊な装置を用いることなく、既存の織機を用いて形成できる。よって、生産コストが有利である。
2.繊維強化複合材料
本実施形態に係る繊維強化複合材料は、上述の織物基材(1)に樹脂を含浸させてなる。
含浸させる樹脂、すなわちマトリックス樹脂としては、特に限定されず、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等が用いられる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド等が挙げられる。これらの樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の織物基材に樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材料は、強化繊維用経糸(3)及び強化繊維用緯糸(5)の配置の保持が強化されている。よって、繊維強化複合材料としての強度等が優れる。
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)実施例の構成
本実施例に係る織物基材1は、図1〜5に示すように、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用経糸3と、互いに略平行に配列された複数の強化繊維用緯糸5と、を備える。強化繊維用経糸3と強化繊維用緯糸5とは、互いに略90°の角度をなすように配されている。
補助経糸7(7a、7b)と、補助緯糸9(9a、9b)と、は平織り組織を形成している。平織り組織によって、強化繊維用経糸3と、強化繊維用緯糸5との配置が固定されている。
補助緯糸9(9a、9b)が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸3が配されている。
強化繊維用経糸3は、クリンプがなく、略真っ直ぐな状態とされている。強化繊維用経糸3には、炭素繊維が使用されている。炭素繊維としては、フィラメント数が12000本で、太さが8000デシテックスの繊維束が使用されている。
強化繊維用緯糸5は、クリンプがなく、略真っ直ぐな状態とされている。強化繊維用緯糸5には、炭素繊維が使用されている。炭素繊維としては、フィラメント数が6000本で、太さが1400デシテックスの繊維束が使用されている。
補助経糸7(7a、7b)には、熱融着糸が使用されている。補助経糸7(7a、7b)は、強化繊維用経糸3より細い糸である。補助経糸7(7a、7b)は、84デシテックスのものが使用されている。補助経糸7(7a、7b)は、強化繊維用経糸3と同方向に延びている。図5に示すように、補助経糸7(7a、7b)は、波状に屈曲して、屈曲部に強化繊維用緯糸5が配されている。
補助緯糸9(9a、9b)には、熱融着糸が使用されている。補助緯糸9(9a、9b)は、強化繊維用緯糸5より細い糸である。補助緯糸9(9a、9b)は、84デシテックスのものが使用されている。補助緯糸9(9a、9b)は、強化繊維用緯糸5と同方向に延びている。図2〜図4に示すように、補助緯糸9(9a、9b)は、波状に屈曲して、屈曲部に強化繊維用経糸3が配されている。
(2)実施例の作用効果
実施例の織物基材1によれば、以下の作用効果を奏する。
実施例の織物基材1では、補助経糸7(7a、7b)と、補助緯糸9(9a、9b)と、が形成する平織り組織によって、強化繊維用経糸3と、強化繊維用緯糸5との配置が固定されている。すなわち、補助経糸7(7a、7b)と、補助緯糸9(9a、9b)と、が形成する平織り組織の中に、強化繊維用経糸3及び強化繊維用緯糸5が織り込まれた状態とされている。
この状態では、補助緯糸9(9a、9b)が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用経糸3が配されている。すなわち、補助緯糸9(9a、9b)は、波状に屈曲して、山部及び/又は谷部に強化繊維用経糸3が配されている。また、補助経糸7(7a、7b)が上下して形成される屈曲部に、強化繊維用緯糸5が配されている。すなわち、補助経糸7(7a、7b)は、波状に屈曲して、山部及び/又は谷部に強化繊維用緯糸5が配されている。
従って、実施例の織物基材1では、強化繊維用経糸3及び強化繊維用緯糸5の配置がずれにくくなる。
なお、従来技術(特開2013−57143号公報)においては、補助緯糸は真っ直ぐな状態であるため、本実施例の織物基材1と比べて、強化繊維用経糸及び強化繊維用緯糸の配置が崩れやすい。
また、実施例の織物基材1では、補助経糸7(7a、7b)及び補助緯糸9(9a、9b)の双方が、熱融着糸であるので、加熱することで、熱融着糸を溶融させて、強化繊維用経糸3及び強化繊維用緯糸5の配置を固定できる。
また、実施例の織物基材1では、補助経糸7(7a、7b)と、補助緯糸9(9a、9b)と、が平織り組織を形成している。よって、特殊な装置を用いることなく、既存の織機を用いて形成できる。
また、実施例の織物基材1に樹脂を含浸させてなる繊維強化プラスチック(FRP)は、強化繊維用経糸3及び強化繊維用緯糸5の配置の保持が強化されている。よって、繊維強化プラスチックとしての強度等に優れる。
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
上記実施例では、補助経糸7(7a、7b)の挿入間隔は、強化繊維用経糸3の1本おきとしたが、補助経糸7(7a、7b)の挿入間隔は特に限定されない。例えば、補助経糸7(7a、7b)の挿入間隔を、強化繊維用経糸3の2本以上おきとしてもよい。具体的には、例えば、挿入間隔は、2〜5本おきでもよい。
上記実施例では、補助緯糸9(9a、9b)の挿入間隔は、強化繊維用緯糸5の1本おきとしたが、補助緯糸9(9a、9b)の挿入間隔は特に限定されない。例えば、補助緯糸9(9a、9b)の挿入間隔を、強化繊維用緯糸5の2本以上おきとしてもよい。具体的には、例えば、挿入間隔は、2〜5本おきでもよい。
上記実施例では、補助経糸7(7a、7b)及び補助緯糸9(9a、9b)のいずれも熱融着糸を用いたが、補助経糸7(7a、7b)及び補助緯糸9(9a、9b)に熱融着糸を用いなくてもよい。また、熱融着糸を用いる場合には、補助経糸7(7a、7b)及び補助緯糸9(9a、9b)のいずれか一方に熱融着糸を用いてもよい。
また、補助経糸7(7a、7b)及び補助緯糸9(9a、9b)のいずれか一方の全ての糸ではなく、一部の糸に熱融着糸を用いてもよい。
上記実施例では、補助経糸7(7a、7b)と補助緯糸9(9a、9b)によって、平織り組織が形成されたものを例示したが、本発明では、織り組織としては、平織り組織に限らず、綾織り組織、朱子織り組織、三原組織を適当に変化させた変化組織、三原組織を組み合わせることにより作製された変化組織も、目的に応じて適宜選択できる。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
本発明の織物基材、及びそれを用いた繊維強化複合材料は、自動車関連分野及び建築関連分野等において広く利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適である。自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、及びカウリング等が挙げられる。また、例えば、建築物等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、及びパーティション部材等としても好適である。
1;織物基材
3;強化繊維用経糸
5;強化繊維用緯糸
7,7a,7b;補助経糸
9,9a,9b;補助緯糸

Claims (5)

  1. 互いに略平行に配列された複数の強化繊維用経糸と、
    互いに略平行に配列され、かつ、前記強化繊維用経糸と交差する方向に配列された複数の強化繊維用緯糸と、を備えた織物基材であって、
    補助経糸と、補助緯糸と、が織り組織を形成し、前記織り組織によって、前記強化繊維用経糸と、前記強化繊維用緯糸との配置が固定されており、
    前記補助緯糸が上下して形成される屈曲部に、前記強化繊維用経糸が配されていることを特徴とする織物基材。
  2. 前記補助経糸及び前記補助緯糸の少なくとも一方には、熱融着糸が含まれることを特徴とする請求項1に記載の織物基材。
  3. 前記熱融着糸が溶融して、前記強化繊維用経糸及び/又は前記強化繊維用緯糸が融着していることを特徴とする請求項2に記載の織物基材。
  4. 前記織り組織は、平織り組織、綾織り組織、及び朱子織り組織からなる群より選ばれる少なくとも1つの組織が含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の織物基材。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の織物基材に樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材料。
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