JP2016093888A - 立体画像発現構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 立体視された画像が、観察角度を変化させることに伴い形状が変化する立体画像発現構造及びその構造を用いた形状変化印刷物を提供する。
【解決手段】 本発明は、原画像を複数の領域に分割し、各領域内には画線幅が等しい画線群が配列され、同一方向に向かって順次画線幅が細くなっていくように各領域を配置した形状変化画線群と、透明又は半透明のフィルタ画線を万線状に配置したフィルタ画線群から成る立体画像発現構造であって、形状変化画線群とフィルタ画線群を重ね合わせて観察角度を連続的に変化させると、画像の形状が変化して視認できる立体画像発現構造であるである。
【選択図】 図8
【解決手段】 本発明は、原画像を複数の領域に分割し、各領域内には画線幅が等しい画線群が配列され、同一方向に向かって順次画線幅が細くなっていくように各領域を配置した形状変化画線群と、透明又は半透明のフィルタ画線を万線状に配置したフィルタ画線群から成る立体画像発現構造であって、形状変化画線群とフィルタ画線群を重ね合わせて観察角度を連続的に変化させると、画像の形状が変化して視認できる立体画像発現構造であるである。
【選択図】 図8
Description
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、画像に特定のフィルタを重ねながら観察角度を変化させることで、視認される画像の形状が変化する立体画像発現構造及び該立体画像発現構造を応用して作製する形状変化印刷物に関する。
銀行券、パスポ−ト、有価証券及び身分証明書等に代表されるセキュリティ印刷物には、複製や偽造を防止するために、偽造防止技術が必要とされている。これらの偽造防止技術には、観察角度により画像がチェンジする技術や、一見しただけでは無意味な画像であるが、特定の認証具を用いて観察した場合に隠蔽されていた情報が再生される技術が存在する。
この観察角度を変化させることに伴い画像がチェンジする技術の一つとして、本出願人は、高光沢インクを用いた凸状の画線を複数規則的に配列し、その画線の一部に低光沢となるような段差を設けて第一の潜像画像を形成し、同じ画線内の異なる位置に、別の段差により第二の潜像画像を形成した光沢差を利用した潜像印刷物を既に出願している(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の技術は、観察角度を変化させることで明瞭に画像がチェンジするため、簡単に真偽判別が行える有用な技術であるが、近年の画期的な技術の進歩により、社会的には立体画像が主流になりつつあり、更なる視覚効果の向上を備えた偽造防止技術が求められていた。そこで、近年、立体的、かつ、動的に画像が視認できる偽造防止技術が開発されてきている。
このような偽造防止技術の一つに、「スクランブルイメージ」と呼ばれる技術が存在する。この技術は、図24に示すように、図24(a)に示すスクランブルイメージに図24(b)に示す特定のフィルタ画像を重ね合わせることで、図24(c)に示すようなスクランブルイメージ中に暗号化されていた原画像が再生される技術である。なお、図24において原画像は「桜の花」を示している。実際にはセキュリティ印刷物にスクランブルイメージのみを印刷し、判別者が必要に応じてフィルタ画像を重ね合わせて原画像が再生されるかを確認し、セキュリティ印刷物の真偽を判別する形態で運用されている。この技術を用いた実際のセキュリティ印刷物の例としては、「スペイン1000ペソ銀行券(1992年発行)」が存在し、銀行券の下部の彩紋に特定の線数のレンチキュラー(フィルタ画像(6)と同様な機能を果たす)を重ね合わせることで「BANCODEESPANA」の文字が再生される。
図25に示すようにスクランブルイメージは、原画像の一部が第1の方向(S1)に小さく分断された複数の潜像画線(3(1)、3(2)、3(3)・・・3(i)・・・3(n−1)、3(n))の集合によって構成されている。このスクランブルイメージは、図26に示すように、特定の幅(M2)のフレーム(11)に収まった原画像(2)を取り出し、特定の縮率で一定の幅(M1)に圧縮し、それぞれの潜像画線(3)を特定のピッチ(P1)で均等に配置することで作製することができる。なお、原画像(4)をスクランブルイメージ化する最も容易な方法は、原画像(4)にレンチキュラーやマイクロレンズアレイを重ね合わせることであり、そのときサンプリングされた画像がスクランブルイメージとなる。再生にあたっては同じレンチキュラーをスクランブルイメージに重ね合わせれば良い。以上のように、スクランブルイメージとは、特定の原画像を分断・圧縮することで暗号化する技術である。
また、このスクランブルイメージを応用した偽造防止技術の一つに、拡散反射光下においては不可視であった原画像が、正反射光下において再生され、かつ観察角度を変化させることで再生された原画像が動いて見える、いわゆる、「動画的な視覚効果」を備えた動画再生型潜像印刷物(以下、「潜像印刷物」という。)が存在する(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の技術は、スクランブルイメージとフィルタ画像を一体化した技術であって、フィルタ画像と同じ模様を蒲鉾状の盛り上がりのある画線で形成し、その上にスクランブルイメージを重ねて形成する。一般的なスクランブルイメージと異なり、観察者はフィルタ画像を別に用意する必要がなく、可視光下で容易に真偽判別することができるため、真偽判別性に優れた技術である。
しかしながら、このスクランブルイメージや特許文献2記載の技術は、観察角度を変化させることにより、視認される画像が潜像画線(3)の配列方向(S1)に動いているように見えるという効果(以下、「動的効果」という。)を奏するものであったが、見える画像は、形成された模様等が複数の潜像画線(3)により構成されているため、図20(a)に示すような原画像(2)がぼやけた状態として視認されてしまう。
また、この動的効果については、複数配列されている潜像画線(3)の配列方向に動きが制限されてしまう。例えば、図25では、第1の方向(S1)となる左右方向に「桜の花」が動いて視認できるが、この左右方向に限定されてしまうことが、デザインに制限を及ぼすこととなり、動的効果をこのような位置変化以外の表現による新たな技術が求められていた。
本発明は、このような従来の課題を解決することを目的としたもので、観察角度を変化させることに伴い発現する画像の形状が変化する立体画像発現構造及びその構造を用いた形状変化印刷物を提供する。
本発明は、原画像が第1の方向に対して複数の領域に分割され、複数の領域に対して第1の方向又は第1の方向と垂直の第2の方向に分割した形状変化画線が万線状に所定のピッチで配置された形状変化画線群と、透明又は半透明のフィルタ画線が万線状に所定のピッチで配置されたフィルタ画線群とを含むセキュリティ印刷物を認証するための立体画像発現構造であって、形状変化画線群は、第1の画線幅の第1の画線が複数配置された第1の画線群と、第1の画線幅より細い第2の画線幅の第2の画線が複数配置された第2の画線群と、・・・、第(n−2)の画線幅より細い第(n−1)の画線幅の第(n−1)の画線が複数配置された第(n−1)の画線群と、第(n−1)の画線幅より細い第nの画線幅の第nの画線が複数配置された第nの画線群(nは3以上の整数)から成り、第1の画線群から第nの画線群まで順次隣接して配置され、形状変化画線群とフィルタ画線群とを重ね合わせて観察角度を変化させることにより、原画像の形状が前記第1の方向に変形して視認可能なことを特徴とする立体画像発現構造である。
また、本発明の立体画像発現構造は、第1の画線、第2の画線、・・・、第(n−2)の画線、第(n−1)の画線及び第nの画線の少なくとも二つの連続する画線が同一位相方向に隣接して配置されたことを特徴とする。
また、本発明の立体画像発現構造は、第1の画線、第2の画線、・・・、第(n−2)の画線、第(n−1)の画線及び第nの画線の各々の画線が、第1の方向又は第2の方向に滑らかに画線幅が異なって形成されたことを特徴とする。
また、本発明は、基材上の少なくとも一部に立体画像を備え、立体画像は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を有する蒲鉾状画線が万線状に所定のピッチで配置された蒲鉾状画線群の上に、正反射時において蒲鉾状画線群の色彩とは異なる色彩を有し、原画像が第1の方向に対して複数の領域に分割され、複数の領域に対して第1の方向又は第1の方向と垂直の第2の方向に分割した形状変化画線が万線状に所定のピッチで配置された形状変化画線群が積層されており、形状変化画線群は、第1の画線幅の第1の画線が複数配置された第1の画線群と、第1の画線幅より細い第2の画線幅の第2の画線が複数配置された第2の画線群と、・・・、第(n−2)の画線幅より細い第(n−1)の画線幅の第(n−1)の画線が複数配置された第(n−1)の画線群と、第(n−1)の画線幅より細い第nの画線幅の第nの画線が複数配置された第nの画線群(nは3以上の整数)から成り、第1の画線群から第nの画線群まで順次隣接して配置され、蒲鉾状画線群の少なくとも一部に、形状変化画線群の少なくとも一部が重なって形成され、正反射光下から拡散反射光下までの領域内で基材を観察角度を連続的に変化させて観察すると、立体画像が前記第1の方向に対して変形して見えることを特徴とする形状変化印刷物である。
また、本発明の立体画像発現構造は、第1の画線、第2の画線、・・・、第(n−2)の画線、第(n−1)の画線及び第nの画線の少なくとも二つの連続する画線が同一位相方向に隣接して配置されたことを特徴とする。
さらに、本発明の立体画像発現構造は、第1の画線、第2の画線、・・・、第(n−2)の画線、第(n−1)の画線及び第nの画線の各々の画線が、第1の方向又は第2の方向に滑らかに画線幅が異なって形成されたことを特徴とする。
本発明は、観察角度を変化させることに伴い、立体画像が滑らかに形状変化していく状態を確認することができる。
(第一の実施形態)
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
まず、立体画像発現構造における形状変化画線群(1)の一例について図1を用いて説明する。図1(a)に形状変化画線群(1)を示す。形状変化画線群(1)は、複数の異なる画線幅から成る形状変化画線(3)から成り、図1(a)では、第1の画線群(2−1)〜第4の画線群(2−4)の四つの異なる画線幅からなる単位画線群(2)により構成されているが、これに限定されるものではなく、第1の画線群(2−1)、第2の画線群(2−2)、・・・、第(n−1)の画線群(2−(n−1))及び第nの画線群(2−n)(nは3以上の整数)によって形成される。
図1(b)は、図1(a)の点線囲いの領域の拡大図を示す。図1(b)に示すように、第1の画線群(2−1)は、画線幅がW1でピッチがP1の第1の画線(3−1)が規則的に第1の方向(S1)に対して複数配列されている。なお、この第1の画線(3−1)は、画線幅(W1)とピッチ(P1)が等しい。したがって、図1(b)に示すように、第1の画線(3−1)が複数配列された第1の画線群(2−1)は実質上ベタ印刷されたものと同じとなる。
この第1の画線群(2−1)の隣りに配置されているのが、同じ第1の方向(S1)に配列されている第2の画線群(2−2)であり、第1の画線(2−1)の画線幅(W1)よりも細い画線幅(W2)で、ピッチ(P1)は第1の画線群(2−1)に等しい。更に、第2の画線群(2−2)の隣りに配置されているのが、第1の方向(S1)に配列されている第3の画線群(2−3)であり、第2の画線(2−2)の画線幅(W2)よりも細い画線幅(W3)で、ピッチ(P1)は第1の画線群(2−1)に等しい。
このように、複数配列されて一つの画線群を構成している複数の画線は、異なる画線群間において、画線幅(W)が異なり、第1の画線(3−1)の画線幅(W1)から第nの画線(3−n)の画線幅(Wn)へと徐々に細くなっている。したがって、各形状変化画線群(3)の画線幅(W)の関係は下記式のとおりである。
(式)第1の画線群(2−1)>第2の画線群(2−2)>、・・・、>第(n−1)の画線群(2−(n−1))>第nの画線群(2−n)・・・(1)
なお、単位画線群(2)の配置については、図1(a)では左側から順番に第1の画線群(2−1)から第4の画線群(2−4)へとなっているが、これに限定されるものではなく、左側から順番に第4の画線群(2−4)から第1の画線群(2−1)へと配置しても良い。
図1(a)に示した形状変化画線群(1)は、図2に示した原画像(4)を基に複数の領域に分割している。この原画像(4)をいくつの領域に分割するかは、本発明における形状変化をどの程度のレベルで視認させたいかにより適宜設定すれば良い。図1では、「月」を原画像(4)とし、その原画像(4)を四つの領域に分け、それぞれの領域に対応するように、四つの単位画線群(2)がその領域に配置されている。なお、本発明において「原画像(4)を複数の領域に分割し、それぞれの領域に対応するように単位画線群(2)が配置される」とは、前述のとおり、単位画線群(2)は、それぞれ異なる画線幅から形成されており、その同じ画線幅から成る一つの単位画線群(2)が、複数の領域の中の一つの領域に配置され、別の画線幅から成る単位画線群(2)は、複数の領域の中の別の一つの領域に配置されるように、全て、異なる画線幅から成る単位画線群(2)が複数の領域の中の全て異なる領域内に別々に配置されることを言う。
図1(b)に示したように、各画線は第1の方向(S1)に対して規則的に配列されているが、1本の画線が同じ画線幅(W)で形成されているものではなく、図1(b)の点線囲い内に示したように、1本の画線内において画線幅(W)が異なる二つの画線が配置されていても良い。なお、図1(b)では、各画線を第1の方向(S1)に万線状に配列しているが、後述する図6のように、第1の方向(S1)とは垂直の第2の方向(S2)に万線状に配列しても良い。詳細は後述する。
図3に、図1(b)において点線で囲んだ領域の拡大図を示す。図3(a)に示すように、1本の画線が、第2の方向(S2)(画線が配列されている第1の方向(S1)に対して垂直となる画線の長手方向)に対して画線幅がW2の第2の画線(3−2)と画線幅がW3の第3の画線(3−3)によって形成されている。このように、原画像(4)を複数の領域に分割するのは、図3(b)に示すように、複数の画線が配列される方向の第1の方向(S1)に対して、垂直方向となる第2の方向(S2)に対して引かれた仮想分割線(Y−Y’)を境界に、領域が分割されることで、1本の画線は全て同じ画線幅(W)から構成できる形態と、図3(a)に示すように、1本の画線内において画線幅(W)が異なるように、仮想分割線(Y−Y’)を第2の方向(S2)以外の方向に引いて分割する形態でも、どのように立体画像(5)を形状変化させて視認させるかにより分割方向も適宜設定すれば良い。
なお、図3(a)では、前述のとおり第2の方向(S2)に向かって二つの画線が隣接して配置されているが、第2の方向(S2)に限るものではなく、後述する図6では、第1の方向(S1)に二つの画線が隣接して配置されている。ただし、図3(a)も図6でも、共通点としては、二つの画線が同じ位相の方向において隣接して配置されていることである。
本発明において、「同じ位相方向に」とは、図3(b)に示したZ−Z’を位相とし、その同じ位相上に異なる画線が配置される状態をいう。したがって、図3(a)も図6もどちらも同じ位相方向に隣接して異なる少なくとも二つの画線が配置されていることとなる。
第1の方向(S1)とは異なる方向に領域が分割されている場合について、1本の画線が複数の画線幅(W)を有する場合の様々な態様の例を図4に示す。図4(a)、(b)、(c)の画線は、階段状に画線幅(W)が異なる形状であり、図4(a)は、画線の一方の端は全て同一線上に配置され、画線幅(W)の差は他方の端側となっている。図4(b)は、画線の中心が全て同一線上に配置されており、画線の両端に差が生じた形状である。図4(c)は、図4(a)を反転した形状である。図4(d)は、図4(a)、(b)、(c)の各画線を組み合わせた態様であり、S1方向、S2方向の形状変化の度合いを調整するために適宜組合せが可能である。ここでは3種類の画線を組み合わせたが多種類の画線を組み合わせることができる。また、図4(a)、(b)、(c)、(d)は、一方向(図面上、下から上へ)に画線幅(W)が細くなっているが、図4(e)は、第2の方向(S2)に対して中央部から両端へ向かって双方共画線幅(W)が細くなっている形状である。
また、図4(f)、(g)、(h)は、連続的に滑らかな画線幅(W)の変化をした形状の例である。図4(f)は、第2の方向(S2)に対して、一方の端から他方の端へ向かって連続的に画線幅(W)が細く変化した形状であり、図4(g)は、第2の方向(S2)に対して中央部から両端へ向かって双方共画線幅(W)が細くなっている形状である。図4(h)は、図4(g)を反転した形状である。図4(i)は、図4(f)、(g)、(h)の各画線を組み合わせた態様であり、S1方向、S2方向の形状変化の度合いを調整するために適宜組合せが可能である。ここでは3種類の画線を組み合わせたが多種類の画線を組み合わせることができる。また、図4(f)、(g)、(h)、(i)は、一方向(図面上、下から上へ)に画線幅(W)が細くなっているが、図4(j)は、第2の方向(S2)に対して中央部から両端へ向かって双方共画線幅(W)が細くなっている形状である。さらに、図4(k)のように画線の輪郭を曲線状としてもよい。
なお、前述したとおり、画線幅(W)が異なる画線は、それぞれが単位画線として独立しているため、図4(f)から(k)までの滑らかに変化している画線は、どのように単位画線が形成されているかを、図5を用いて説明する。
図5は、図4(f)〜(i)で示した形状変化画線群(1)の1本を拡大した図であり、見た目の形状を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、見た目には1本の画線が滑らかに図面上で下から上へ画線が細くなっているように見えるが、図5(b)に構成を分かりやすくするためにパターン分けにより示したように、図5(a)に示した滑らかに変化した1本の画線は、第1の画線(3−1)の上に第2の画線(3−2)が重なり、更にその上に第3の画線(3−3)が重なった構成として形成されている。各画線の色が等しく、輪郭線が同一線上に形成されているため、見た目には1本の画線として視認される。他の図4(f)から(h)についても同様である。
連続的に画線幅(W)が変化する画線形状の場合、どの箇所をその画線の幅(W)とするかについては、形状変化画線(3)の画線幅(W)の平均値をもって、当該画線の画線幅(W)とする。したがって、図5(b)に示すように、第1の画線(3−1)の画線幅(W1)は、画線の中心に当たる箇所をいい、同様に、第2の画線(3−2)及び第3の画線(3−3)のそれぞれの画線幅も、画線の中心となる箇所を画線幅(W2、W3)とする。したがって、本発明において、形状変化画線(3)の画線幅(W)が1本の中で変化している場合には、その画線内における平均値をもって画線幅(W)とする。
連続的に画線幅(W)を変化させた形状の画線を用いた例を図6に示す。図6(a)に示す原画像(4)が「蝶」の模様であり、その羽の部分が形状変化画線群(1)により形成されている。この形状変化画線群(1)は、画線幅(W)の異なる三つの単位画線群(2)から構成されており、図面上、点線で示唆した箇所を境界として配置されている。蝶の模様の中央から第1の画線群(2−1)、その隣に第2の画線群(2−2)、更にその隣に第3の画線群(2−3)が配置されている。それぞれの単位画線群(2)は、ピッチ(P1)が等しく、位相も等しいため、目視上、1本の画線が複数第1の方向(S1)に配列されているように視認されるが、前述のとおり、三つの画線幅(W)の異なる画線が配置されており、蝶の模様の中央から画線幅(W)の太い第1の画線(3−1)、その隣に第1の画線(3−1)よりも細い第2の画線(3−2)、更にその隣に第2の画線(3−2)よりも細い第3の画線(3−3)が形成されている。
この三つの単位画線群(2)を構成している各画線は、同じ位相(Z−Z’)方向に配置されているため、1本の画線として視認できるような形状となっているが、各画線群は、第2の方向(S2)に万線状に配列されている。前述の図3(a)では、単位画線群(2)は第1の方向(S1)に万線状に配列されていたことで説明したが、図6(b)では、第2の方向(S2)に万線状に配列されていることとなる。
図6に示すように、形状変化画線(3)が滑らかに連続的に変化した模様を形成すると、後述するフィルタ画線群(6)を形状変化画線群(1)の上に載せ、観察角度を変化させると、蝶の羽が滑らかに動いているように視認することができる。フィルタ画線群(6)を形状変化画線群(1)の上に重ねる場合には、双方の単位画線群(2)が万線状に配列されている方向同士を重ねれば良い。
次に、本発明を構成する立体画像発現構造を実現する上で、形状変化画線群(1)と対を成し、原画像(4)を立体的、かつ、その形状を変化させて再生するために必要となるフィルタ画線群(6)について説明する。図7(a)にフィルタ画線群(6)の平面図、図7(b)にそのX−X’断面図を示す。フィルタ画線群(6)は、図7(a)に示すように、前述の形状変化画線群(1)の各形状変化画線(3)と対を成すフィルタ画線(7)が第1の方向(S1)に万線状に配置されて成る。また、図7(b)に示すように、各フィルタ画線(7)は、所定の高さを有している。このフィルタ画線(7)の画線高さについては、特に限定されるものではなく、一般的に市販されている公知のレンチキュラーレンズと同様の形状である。なお、図7(a)では、図面上分かりやすいように、黒色で図示しているが、本発明におけるフィルタ画線群(6)は、透明又は半透明であるため、実際には、ほぼ視認できない色彩となっている。
本発明において、形状変化画線(3)とフィルタ画線(7)が対を成すとは、形状変化画線群(1)の上にフィルタ画線群(6)を重ね合わせる際に、一つの形状変化画線(3)に対して一つのフィルタ画線(7)が配置されることである。したがって、対を成す形状変化画線(3)とフィルタ画線(7)が配列されている形状変化画線群(1)とフィルタ画線群(6)のピッチ(P1)は同じとなっている。また、フィルタ画線(7)の画線幅(T)は、単位画線群(2)においてそれぞれ画線幅(W)が異なっていることから、ピッチ(P1)よりも細く、かつ、最も太い画線幅(W)を有する形状変化画線(3)の画線幅(W)と同じであれば良い。
したがって、図1に示した形状変化画線群(1)に対するフィルタ画線群(6)の画線幅(T)は、最も太い形状変化画線(3)は、第1の画線(3−1)ではあるが、ピッチ(P1)と等しい画線幅(W1)であるため、次に太い画線幅(W)は、第2の画線(3−2)となるため、その画線幅(W2)と等しいフィルタ画線(7)の画線幅(T)となる。
本発明における万線状に配置された形状変化画線群(1)のピッチ(P1)と、フィルタ画線群(6)のピッチ(P1)は0.05mm以上1.0mm以下で形成する。0.05mm以下のピッチは、一般的な印刷で再現できる画線のピッチとしてはほぼ限界のピッチであり、印刷物品質の安定性に欠ける上に、たとえ0.05mm以下のピッチで画線を形成できた場合でも、ほとんどの場合、出現する立体画像(5)の視認性が極端に低下するため好ましくない。また、逆に1.0mm以上のピッチで形成した場合には、立体画像(5)として再現できる画像の解像度が極端に低下してしまうため、同様に好ましくない。
なお、それぞれの画線の幅(W、T)については、前述のピッチ(P1)よりも細ければ特に限定はない。また、フィルタ画線群(6)については、前述のとおり、立体画像を発現させることが出来れば良く、少なくとも形状変化画線群(1)を覆う範囲のフィルタ画線群(6)となっていれば良い。
続いて、本発明の形状変化画線群(1)とフィルタ画線群(6)を重ね合わせた場合の効果について説明する。図8(a)に示すように、それぞれ対を成す形状変化画線(3)とフィルタ画線(7)が同じ第1の方向に対してほぼ重なるように、形状変化画線群(1)とフィルタ画線群(6)を重ね合わせる。
まず、観察者の視点が図8(a)において基材(2)面に対して垂直方向の真上(8−1)からで観察すると、フィルタ画線(7)の画線幅(T)よりも画線幅(W)の狭い形状変化画線(3)によって形成されている単位画線群(2)は視認できないため、図8(b)に示すように、フィルタ画線(7)の画線幅(T)よりも画線幅(W)の太い第1の画線群(2−1)から成る「月形状(ア)」の形状として視認される。その観察者の視点(8)を連続的に基材(2)面に対して斜め方向(8−2)へと変化させていくと、形状変化画線(3)の画線幅(W)が細くなる順に視認されていき、図8(c)のような「月形状(イ)」のように視認でき、更に観察角度を基材(2)面に近付けて(8−2)いくと図8(d)のような「月形状(ウ)」を経て、図8(e)のような全ての形状変化画線(3)から成る「月形状(エ)」となって視認できる。
この状況により、観察者には、観察角度を第1の方向(S1)に対して連続的に繰り返し変化させていくと、立体画像(5)である「月」の幅方向の形状が「月形状(ア)」から「月形状(エ)」へ、連続的に形状が変化しているように視認されることとなる。
また、図9に示すように、原画像(4)が「蝶」の形状において、図9(a)に示すように、各単位画線群(2)の形状を等しくしながら大きさを変えて形状変化画線群(1)を形成し、その上に図9(b)のように、フィルタ画線群(6)を載せると、図8の「月」のような形状の変化とは異なり、図9(c)の小さな「蝶」から、観察角度を連続的に変化させると、図9(d)に示すように、少し大きい「蝶」に変化して視認され、更に観察角度を連続的に変化させていくと、図9(e)に示すように、最も大きな形状の「蝶」となって視認できる。このように、同じ輪郭形状を有するように、第1の方向(S1)及び第2の方向(S2)に連続的に画線幅(W)を異ならせた単位画線群(2)を配置すると、同じ形状の立体画像(5)の大きさが変化して視認できるようになる。
(第二の実施形態)
続いて、第二の実施形態として、前述の立体画像発現構造を応用して作製する形状変化印刷物(9)(以下、「印刷物」という。)について説明する。この立体画像発現構造とは、正反射光下において原画像(4)にあたる立体画像(5)が再生され、かつ、観察角度を変化させることで再生された原画像の形状が、縮小又は拡大して変化するように見える。基本的には、前述の立体画像発現構造の形状変化画線群(1)とフィルタ画線群(6)とを一体化した技術であり、フィルタ画線群(6)と同じ模様を盛り上がりのある蒲鉾状の画線で形成し、その上に形状変化画線群(1)を重ねて形成する。前述の立体画像発現構造とは異なり、観察者は、フィルタ画像を別に用意する必要がなく、可視光下で容易に真偽判別することができるため、真偽判別性に優れた技術である。
続いて、第二の実施形態として、前述の立体画像発現構造を応用して作製する形状変化印刷物(9)(以下、「印刷物」という。)について説明する。この立体画像発現構造とは、正反射光下において原画像(4)にあたる立体画像(5)が再生され、かつ、観察角度を変化させることで再生された原画像の形状が、縮小又は拡大して変化するように見える。基本的には、前述の立体画像発現構造の形状変化画線群(1)とフィルタ画線群(6)とを一体化した技術であり、フィルタ画線群(6)と同じ模様を盛り上がりのある蒲鉾状の画線で形成し、その上に形状変化画線群(1)を重ねて形成する。前述の立体画像発現構造とは異なり、観察者は、フィルタ画像を別に用意する必要がなく、可視光下で容易に真偽判別することができるため、真偽判別性に優れた技術である。
図10に、本発明の印刷物(9)を示し、図10(a)は真上からの模式図、図10(b)は、そのX−X’ラインにおける断面図を示す。印刷物(9)は、基材(10)上に立体画像(5’)を備える。基材(10)は、立体画像(5’)が形成できれば、紙、プラスチック又は金属等、特に材質に限定はない。また、立体画像(5’)は、透明であっても、着色されていても良く、その色彩は問わない。
図11に立体画像(5’)の構成の概要を示す。立体画像(5’)は、前述の立体画像発現構造におけるフィルタ画線群(6)にあたる蒲鉾状画線群(6’)と、立体画像発現構造における形状変化画線群(1’)が重なって形成されて成る。立体画像(5’)の積層構造は、蒲鉾状画線群(6’)の上に形状変化画線群(1’)が重なる構造を有している。
第二の実施形態において、印刷物(9)の蒲鉾状画線群(6’)の構成は、第一の実施形態で用いたフィルタ画線群(6)と同じ模様を用い、印刷物(9)の形状変化画線群(1’)の構成は、前述の図1の形状変化画線群(1)と同じ「月」の模様を用いた例で説明する。
まず、蒲鉾状画線群(6’)について説明する。前述のとおり、第1の実施形態で用いられたフィルタ画線群(6)と同じ模様を用いているが、フィルタ画線群(6)におけるフィルタ画線(7)と、本印刷物(9)における蒲鉾状画線群(6’)の違いとは、蒲鉾状画線群(6’)は、図12(b)に示すように、高さ方向に一定の盛り上がりを必要とすることと、後述する光学特性が必要なことであり、平面構造については、フィルタ画線(7)と同じである。
このような構成の蒲鉾状画線群(6’)を、印刷画線に盛り上がりを形成できる印刷方式によって形成する。出現する立体画像に一定の視認性を確保するためには、蒲鉾状画線(7’)の盛り上がり高さは3μm以上が必要であるため、スクリーン印刷、凹版印刷及びUV−IJPで形成することが望ましいが、グラビア印刷やフレキソ印刷、凸版印刷等であっても、この程度の画線の盛り上がり高さを形成することは可能である。また、盛り上がりの高さの上限に関しては、特に制限はないが、印刷物を大量に積載した場合の安定性や耐摩耗性及び流通適性等を考慮すると、1mm以下とする。
また、蒲鉾状画線(7’)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を備える必要がある。明暗フリップフロップ性とは、正反射した場合に明度が上昇する特性を指し、カラーフリップフロップ性とは、色相が変化する特性を指す。すなわち、蒲鉾状画線(7’)は、光が入射した場合に、明度や色相が変化することで、色彩が大きく変化する特性を有する必要がある。色彩の変化の大きさが大きければ大きいほど、出現する立体画像の視認性は高くなる。
前述のような盛り上がりを有する蒲鉾状画線(7’)に明暗フリップフロップ性を付与する方法の一例としては、高光沢なインキ樹脂を用いたり、インキ中に金属顔料を混合したりすることで容易に実現することができる。カラーフリップフロップ性を付与できる機能性材料の一例としては、パール顔料やコレステリック液晶、ガラスフレーク顔料、漢族粉顔料や鱗片状金属顔料等が考えられる。
続いて、形状変化画線群(1’)について説明する。前述した図2に示した原画像(4)を3つの領域に分割した形状変化画線群(1’)を用いた。形状変化画線群(1’)には盛り上がりは必須ではないため、如何なる印刷方式で形成しても良い。生産性を考えれば、オフセット印刷で形成することが最も望ましい。正反射光下で視認困難となっていた形状変化領域を可視化するために、形状変化画線(3’)は正反射時に蒲鉾状画線(7’)との間に色差が生じる必要があり、少なくとも反射時の色彩が蒲鉾状画線(7’)の正反射時の色彩と異なっている必要がある。
また、形状変化画線群(1’)、特にその中の形状変化画線(3’)は、蒲鉾状画線(7’)の上に重ねて形成されるために、形状変化画線(3’)下の蒲鉾状画線(7’)に入射する光を遮断し、正反射光下で生じる蒲鉾状画線(7’)の色彩変化を抑制する働きを成す。したがって、形状変化画線(3’)が重なっているか否かによって、蒲鉾状画線(7’)の正反射時に色彩により大きな違いが生じるため、立体画像(5’)の視認性をより高めるためには、形状変化画線(3’)は高い光遮断性を備えていることが望ましい。
そのため、形状変化画線(3’)を印刷で形成する場合には、低光沢なマットインキを用いることが望ましい。また、これらのインキにチタンのような光遮断性の高い機能性材料を配合すると、より高い効果を得ることができる。
また、形状変化画線(3’)は、版面を用いる印刷機で形成するだけでなく、プリンター等のデジタル印刷機を用いて形成しても良い。また、形状変化画線(3’)にあたる模様を、蒲鉾状画線(7’)を切削して形成することもできる。このような切削は、レーザ加工機を用いることで容易に実施することができる。レーザが照射された蒲鉾状画線(7’)は、多くの場合、明暗フリップフロップ性やカラーフリップフロップ性が失われるか、又は大きく低下するために、本発明で形状変化画線(3’)に必要とする特性を付与することができる。これらのプリンターやレーザ加工機を用いる場合には、一枚一枚異なる情報を与える可変情報を容易に付与できるという特徴がある。
本発明における印刷物(9)は、蒲鉾状画線(7’)の上に形状変化画線(3’)を重ねて形成するが、この二つの画線群の重ね合わせの位置関係について説明する。図12は、蒲鉾状画線群(6’)と形状変化画線群(1’)の二つの画線群の重なり合いの適正な位置関係を示す。印刷物(9)において、まず、ピッチ(P1)と画線幅(W1)が等しいことから実質上はベタ刷りとなって形成された第1の画線群(2−1)が蒲鉾状画線(7’)の上に重なる場合、一部拡大断面図の図12(b)に示すように、特に蒲鉾状画線(7’)との刷り合わせは問題なく、蒲鉾状画線(7’)を全体的に覆うように第1の画線(3’−1)がベタ刷りにより配置される。ここで重要なことは、立体画像(5’)の形状を観察角度の変化に伴い変形させる役割を担う形状変化画線(3’)との重なる位置関係である。
蒲鉾状画線(7’)と形状変化画線(3’)の重なり合いについては、二つの画線が単に重なれば良いのではなく、それぞれ一対に対応した蒲鉾状画線(7’)と形状変化画線(3’)同士が重なる必要がある。つまり、図12(b)の拡大断面図の右側二つに示したように、それぞれの蒲鉾状画線(7’)に対して、それぞれ対を成す関係にある形状変化画線(3’−2)がそれぞれ重なり合う位置関係が、本発明における最も適正な重ね合わせの位置関係である。なお、図12(a)の点線囲の拡大図のように、1本の画線内で画線幅(W)が異なる場合にも、図12(c)に示すように、蒲鉾状画線(7’)に形状変化画線(3’)が重なって配置されることとなる。
蒲鉾状画線群(6’)と形状変化画線群(1’)の位置関係については、印刷時の刷り合わせの変動(アバレ)によっては適正な位置関係から外れる可能性もある。このような場合でも、それぞれ対と成る関係の蒲鉾状画線(7’)と実質上ベタ刷りの第1の画線(3’−1)以外の形状変化画線(3’−2、3’−3、・・・、3’−n)が少なくとも一部重なった状態であれば、本発明の効果は発揮される。
次に、本第二の実施形態における印刷物(9)の効果について説明するが、前述した第一の実施形態で既に説明した効果と同様、所定の角度で視認された原画像(4’)が、観察角度の変化に伴い形状も変化して視認することができる。この形状変化の態様については、例えば、前述した図8のような「月」の形状変化や、図9のような「蝶」の大小の変化である。
このような効果が生じる原理については図13を用いて説明する。図13(a)に示すように、基材(10)上に蒲鉾状画線(7’)が万線状に配列され、各蒲鉾状画線(7’)に対となって形状変化画線(3’)が積層されている状態である。
蒲鉾状画線(7’)のような盛り上がりを有する画線が光を反射する場合、入射する光(11)に対して入射光と法線を成す画線表面を中心に光を反射しており、言い換えれば、入射する光の角度に応じて、盛り上がりを有する画線表面のうち、強く光を反射する領域は変化している。
蒲鉾状画線(7’)の表面には、形状変化画線(3’)が形成されていることから、蒲鉾状画線(7’)が光を強く反射した場合には、その画線上に重ねられた形状変化画線(3’)と蒲鉾状画線(7’)とは異なる色彩に変化し、それまで隠蔽されていた形状変化画線(3’)が色彩の違いによって明確に可視化される。
この場合、可視化される形状変化画線(3’)は、蒲鉾状画線(7’)のうち光を強く反射した領域に重ねられて形成されていた形状変化画線(3’)のみであり、それ以外の領域に重ねられて形成されていた形状変化画線(3’)は、隠蔽されたままとなる。このため、光が入射した場合、蒲鉾状画線(7’)には、その画線表面の一部にのみ、光を強く反射する領域が形成されるため、この光を強く反射した領域の上に重ねられた形状変化画線(3’)のみがサンプリングされて可視化される。このサンプリングの仕組みは、前述の立体画像発現構造における形状変化画線群(1)にフィルタ画線群(6)を重ねた場合と同じであるため、サンプリングの結果、原画像(4)の輪郭と同じに再現される。
観察者の視点(8)が動いたり、印刷物(9)を傾けたりした場合には、光が入射する角度が変化するために、蒲鉾状画線(7’)の表面のうち、光を反射する領域も移動し、それに伴って形状変化画線(3’)のサンプリングされる領域も移動することで、観察者には出現した原画像(4)の形状が変化しているように見える。
また、印刷物(9)に正対して観察した場合、右眼と左眼とでは、入射した光が印刷物で反射して眼に入る角度がわずかに異なるため、蒲鉾状画線(7’)の光を反射する画線表面もわずかに異なっている。このため、出現する立体画像(5)は、右眼から見た場合と左眼から見た場合では、水平方向の位相が異なり、これによって両眼視差に起因する立体的な視覚効果が生じる。
例えば、立体画像(5)が右眼から見た場合よりも左眼から見た場合の方が、右にある場合には立体画像(5)は印刷物の表面よりも手前にあるように感じられる。逆に立体画像(5)が右眼から見た場合よりも左眼から見た場合の方が、左にある場合には立体画像(5)は印刷物の表面よりも奥にあるように感じられる。
したがって、この印刷物(9)を基材(10)に対して拡散反射光領域となる真上から観察(8)した場合、図13(b)に示すように、画線幅(W)の最も広い第1の画線(3’−1)が視認でき、その第1の画線群(2’−1)により構成されている「月形状(ア)」となって視認できる。次に観察角度を変化させて、図13(c)に示す観察位置(8)から観察すると、第1の画線(3’−1)及び第2の画線(3’−2)が視認でき、その二つの画線群(2’−1、2’−2)により構成されている「月形状(イ)」となって視認できる。更に観察角度を正反射光領域まで変化させ、図13(d)に示す観察位置(8)から観察すると、第1の画線(3’−1)、第2の画線(3’−2)及び第3の画線(3’−3)が視認でき、その三つの画線群(2’−1、2’−2、2’−3)により構成されている「月形状(ウ)」となって視認できる。
このような視覚効果を生じさせるためには、観察者から見て水平方向となる第1の方向(S1)に形状が変化して見える効果が必須であるため、蒲鉾状画線(7’)を垂直方向に近い角度(より具体的には観察者の左右の眼を結んだ方向と直交する方向)で並べた方が、この効果は高くなる。
以上が、本印刷物(9)において、印刷物(9)が光を強く反射した場合に、立体画像(5)として原画像(4)が出現し、形状変化と立体的な視覚効果が生じる原理である。
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した印刷物(9)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
図14に、本発明の実施例1における印刷物(9’)を示す。なお印刷物(9’)には、立体画像(5’)以外に、料額やロゴマーク等の他の印刷模様等が印刷されている。基材(10’)は、一般的な白色コート紙(日本製紙製)を用いた。立体画像(5’)は拡散反射光下では黒色に視認される色彩で構成した。
図15(a)に立体画像(5’)の構成の概要を示す。立体画像(5’)は、蒲鉾状画線群(6’)と形状変化画線群(1’)を図15(b)に示すように、基材(10’)上に重ねて構成した。立体画像(5’)の積層構造は、蒲鉾状画線群(6’)の上に形状変化画線群(1’)が重なる構造とした。さらに、形状変化画線群(1’)は、複数の単位画線群(2’)から構成されている。本実施例1では、第1の画線群(2’−1)、第2の画線群(2’−2)及び第3の画線群(2’−3)の三つの単位画線群(2’)により構成されている。また、原画像(4)は、「月」とした。
まず、蒲鉾状画線群(6’)について図16を用いて説明する。蒲鉾状画線群(6’)は、画線幅(T’)0.4mmの蒲鉾状画線(7’)を第1の方向(S1)にピッチ(P1’)0.6mmで万線状に形成した。
以上のような構成の蒲鉾状画線群(6’)を、表1に示すUV乾燥型のスクリーンインキを用いて、スクリーン印刷によって基材(10’)に印刷した。表1に示すインキは、拡散反射光下では着色顔料の色である黒色に見えるが、正反射光下では虹彩色パール顔料の干渉色である金色に変化する、優れたカラーフリップフロップ性を備えたインキである。このインキによって形成した蒲鉾状画線(7’)の盛り上がり高さ(h)は、約10μmであった。
続いて、形状変化画線群(1’)について図17を用いて説明する。図17に示すのは、形状変化画線群(1’)及びその一部を抜粋し、拡大して示したものである。この形状変化画線群(1’)は、前述したとおり、第1の画線群(2’−1)、と第2の画線群(2’−2)及び第3の画線群(2’−3)の三つの単位画線群(2’)から構成されている。
第1の画線群(2’−1)は、画線幅(W1’)0.6mmの第1の画線(3’−1)が第1の方向(S1)に、ピッチ(P1’)が0.6mmで万線状に配置されており、実質上ベタ刷り印刷されている状態と同じである。また、第2の画線群(2’−2)は、画線幅(W2’)0.4mmの第2の画線(3’−2)が第1の方向(S1)に、ピッチ(P1’)が0.6mmで万線状に第1の画線群(2’−1)に対して図面上の右側に隣接して配置されている。さらに、第3の画線群(2’−3)は、画線幅(W3’)0.2mmの第3の画線(3’−3)が第1の方向(S1)に、ピッチ(P1’)が0.6mmで万線状に第2の画線群(2’−2)に対して図面上の右側に隣接して配置されている。したがって、本実施例1では、三つの画線(3’−1、3’−2、3’−3)の画線幅(W1’、W2’、W3’)は0.2mmずつ異なっており、ピッチ(P1’)は全て同じとなっている。
以上の構成の形状変化画線群(1’)を、透明なマットインキ(マットメジウム T&K TOKA製)を用いてドライオフセット印刷方式で、それぞれの形状変化画線(3’)が対を成す蒲鉾状画線(7’)に重ね合わせて、印刷物(9’)を形成した。
以上の手順で作製した本発明の印刷物(9’)の効果について説明する。図18に本発明の効果を示す。印刷物(9’)に対して観察者の視点(8)を拡散反射光下とすると、最も広い画線幅(W1’)を有する第1の画線群(2’−1)が視認でき、図18(a)に示す「月形状(ア)」として確認できる。そこから徐々に観察角度を連続的に正反射光下へと変化させていった時、次に画線幅(W2’)の広い第2の画線群(2’−2)までが視認できるため、図18(b)に示すような「月形状(イ)」が確認できる。さらに観察角度を正反射光下へと連続的に変化させると、一番画線幅(W3’)の狭い第3の画線群(2’−3)までが視認できるため、図18(c)に示すような「月形状(ウ)」が確認できる。
また、観察角度を連続的に元の位置に変化させていった時、前述した図18(c)に示す「月形状(ウ)」から図18(b)の「月形状(イ)」へ、更に図18(c)の「月形状(ア)」へ視認される立体画像(5’)は変化して視認できた。
以上のように、本発明の印刷物(9’)に対して、徐々に観察角度を連続的に変化させていった時、立体画像(5’)は、基材(10’)に対して水平方向(第1の方向(S1))及び垂直方向(第2の方向(S2))に原画像(4’)の「月」が月形状(ア)から月形状(ウ)へ形状が変化しているように視認できた。
図19に、本発明の実施例1における印刷物(9’)を示す。なお印刷物(9’)には、立体画像(9’)以外に、料額やロゴマーク等の他の印刷模様等が印刷されている。基材(10’)は、一般的な白色コート紙(日本製紙製)を用いた。立体画像(5’)は拡散反射光下では赤色に視認される色彩で構成した。
図20(a)に立体画像(5’)の構成の概要を示す。立体画像(5’)は、蒲鉾状画線群(6’)と形状変化画線群(1’)を図20(b)に示すように、基材(10’)上に重ねて構成した。立体画像(5’)の積層構造は、蒲鉾状画線群(6’)の上に形状変化画線群(1’)が重なる構造とした。さらに、形状変化画線群(1’)は、複数の単位画線群(2’)から構成されている。本実施例2では、第1の画線群(2’−1)、第2の画線群(2’−2)及び第3の画線群(2’−3)の三つの単位画線群(2’)により構成されている。また、原画像(4)は、「蝶」とした。
まず、蒲鉾状画線群(6’)について図21を用いて説明する。蒲鉾状画線群(6’)は、画線幅(T’)0.4mmの蒲鉾状画線(7’)を第1の方向(S1)にピッチ(P1’)0.6mmで万線状に形成した。
以上のような構成の蒲鉾状画線群(6’)を、前述の表1に示したUV乾燥型のスクリーンインキを用いて、スクリーン印刷によって基材(10’)に印刷した。表1に示すインキは、拡散反射光下では着色顔料の色である黒色に見えるが、正反射光下では虹彩色パール顔料の干渉色である金色に変化する、優れたカラーフリップフロップ性を備えたインキである。このインキによって形成した蒲鉾状画線(7’)の盛り上がり高さ(h)は、約10μmであった。
続いて、形状変化画線群(1’)について図22を用いて説明する。図22に示すのは、形状変化画線群(1’)を拡大して示したものである。この形状変化画線群(1’)は、前述したとおり、第1の画線群(2’−1)、と第2の画線群(2’−2)及び第3の画線群(2’−3)の三つの単位画線群(2’)から構成されている。
第1の画線群(2’−1)は、画線幅(W1’)0.525mm(0.6mmから0.45mm)の第1の画線(3’−1)が第2の方向(S2)に、ピッチ(P1’)0.6mmで配置されている。また、第2の画線群(2’−2)は、画線幅(W2’)0.375mm(0.45mmから0.30mm)の第2の画線(3’−2)が第2の方向(S2)に、ピッチ(P1’)が0.6mmで第1の画線群(2’−1)に対してS1の方向に隣接して配置されている。さらに、第3の画線群(2’−3)は、画線幅(W3’)0.225mm(0.30mmから0.15mm)の第3の画線(3’−3)が第2の方向(S2)に、ピッチ(P1’)が0.6mmで第2の画線群(2’−2)に対してS1の方向に隣接して配置されている。したがって、本実施例2では、三つの画線(3’−1、3’−2、3’−3)の画線幅(W1’、W2’、W3’)は0.15mmから0.60mmに連続的に変化し、ピッチ(P1’)は全て同じとなっている。
以上の構成の形状変化画線群(1’)を、透明なマットインキ(マットメジウム、T&K TOKA製)に赤色インキ(UV VECTA カートン 紅M、T&K TOKA製)を微量加えたインキを用いてドライオフセット印刷方式で、それぞれの形状変化画線(3’)が対を成す蒲鉾状画線(7’)に重ね合わせて、印刷物(9’)を形成した。
以上の手順で作製した本発明の印刷物(9’)の効果について説明する。図23に本発明の効果を示す。印刷物(9’)に対して観察者の視点(8)を拡散反射光下とすると、最も広い画線幅(W1’)を有する第1の画線群(2’−1)が視認でき、図23(a)に示す「蝶形状(ア)」として確認できる。そこから徐々に観察角度を連続的に正反射光下へと変化させていった時、次に画線幅(W2’)の広い第2の画線群(2’−2)までが視認できるため、図23(b)に示すような「蝶形状(イ)」が確認できる。さらに観察角度を正反射光下へと連続的に変化させると、一番画線幅(W3’)の狭い第3の画線群(2’−3)までが視認できるため、図23(c)に示すような「蝶形状(ウ)」が確認できる。なお、画線幅はS1方向の変化に加え、特にS2方向に連続的に変化しているため、蝶形状(ア)から蝶形状(ウ)への変化はより滑らかに視認できる。また、形状変化画線群(1’)を赤色のインキで印刷したため色彩豊かな変化が確認できる。
また、観察角度を連続的に元の位置に変化させていった時、前述した図23(c)に示す「蝶形状(ウ)」から図23(b)の「蝶形状(イ)」へ、更に図23(c)の「蝶形状(ア)」へと視認される立体画像(5’)は変化して視認できた。
以上のように、本発明の印刷物(9’)に対して、徐々に観察角度を連続的に変化させていった時、立体画像(5’)は、基材(10’)に対して水平方向(第1の方向(S1))及び垂直方向(第2の方向(S2))に原画像(4’)の「蝶」が蝶形状(ア)から蝶形状(ウ)へと形状が変化しているように視認できた。
1 形状変化画線群
2 単位画線群
3 形状変化画線
4 原画像
5 立体画像
6 フィルタ画線群、蒲鉾状画線群
7 フィルタ画線、蒲鉾状画線
8 観察視点
9 形状変化印刷物
10 基材
11 光源
W1、W2、W3、T 画線幅
P1 ピッチ
S1 第1の方向
S2 第2の方向
2 単位画線群
3 形状変化画線
4 原画像
5 立体画像
6 フィルタ画線群、蒲鉾状画線群
7 フィルタ画線、蒲鉾状画線
8 観察視点
9 形状変化印刷物
10 基材
11 光源
W1、W2、W3、T 画線幅
P1 ピッチ
S1 第1の方向
S2 第2の方向
Claims (6)
- 原画像が第1の方向に対して複数の領域に分割され、前記複数の領域に対して、前記第1の方向又は前記第1の方向と垂直の第2の方向に前記原画像を分割した形状変化画線が万線状に所定のピッチで配置された形状変化画線群と、
透明又は半透明のフィルタ画線が万線状に前記所定のピッチで配置されたフィルタ画線群とを含むセキュリティ印刷物を認証するための立体画像発現構造であって、
前記形状変化画線群は、第1の画線幅の第1の画線が複数配置された第1の画線群と、前記第1の画線幅より細い第2の画線幅の第2の画線が複数配置された第2の画線群と、・・・、前記第(n−2)の画線幅より細い第(n−1)の画線幅の第(n−1)の画線が複数配置された第(n−1)の画線群と、前記第(n−1)の画線幅より細い第nの画線幅の第nの画線が複数配置された第nの画線群(nは3以上の整数)が前記複数の領域に各々対応して配置されて成り、
前記第1の画線群から第nの画線群まで順次隣接して配置され、
前記形状変化画線群と前記フィルタ画線群とを重ね合わせて観察角度を変化させることにより、前記原画像の形状が変形して視認可能なことを特徴とする立体画像発現構造。 - 前記第1の画線、前記第2の画線、・・・、前記第(n−2)の画線、前記第(n−1)の画線及び前記第nの画線の少なくとも二つの連続する画線が同一位相方向に隣接して配置されたことを特徴とする請求項1記載の立体画像発現構造。
- 前記第1の画線、前記第2の画線、・・・、前記第(n−2)の画線、前記第(n−1)の画線及び前記第nの画線の各々の画線が、前記第1の方向又は前記第2の方向に滑らかに画線幅が異なって形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の立体画像発現構造。
- 基材上の少なくとも一部に立体画像を備え、
前記立体画像は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を有する蒲鉾状画線が万線状に所定のピッチで配置された蒲鉾状画線群の上に、正反射時において前記蒲鉾状画線群の色彩とは異なる色彩を有し、原画像が第1の方向に対して複数の領域に分割され、前記複数の領域に対して前記第1の方向又は前記第1の方向と垂直の第2の方向に前記原画像を分割した形状変化画線が万線状に所定のピッチで配置された形状変化画線群が積層されており、
前記形状変化画線群は、第1の画線幅の第1の画線が複数配置された第1の画線群と、前記第1の画線幅より細い第2の画線幅の第2の画線が複数配置された第2の画線群と、・・・、前記第(n−2)の画線幅より細い第(n−1)の画線幅の第(n−1)の画線が複数配置された第(n−1)の画線群と、前記第(n−1)の画線幅より細い第nの画線幅の第nの画線が複数配置された第nの画線群(nは3以上の整数)が前記複数の領域に各々対応して配置されて成り、
前記第1の画線群から第nの画線群まで順次隣接して配置され、
前記蒲鉾状画線群の少なくとも一部に、前記形状変化画線群の少なくとも一部が重なって形成され、
前記基材に対して観察角度を変化させて観察すると、前記立体画像が変形して視認可能なことを特徴とする形状変化印刷物。 - 前記第1の画線、前記第2の画線、・・・、前記第(n−2)の画線、前記第(n−1)の画線及び前記第nの画線の少なくとも二つの連続する画線が同一位相方向に隣接して配置されたことを特徴とする請求項4記載の形状変化印刷物。
- 前記第1の画線、前記第2の画線、・・・、前記第(n−2)の画線、前記第(n−1)の画線及び前記第nの画線の各々の画線が、前記第1の方向又は前記第2の方向に滑らかに画線幅が異なって形成されたことを特徴とする請求項4又は5記載の形状変化印刷物。
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