JP2016086753A - 術後癒着モデル及びその作成方法 - Google Patents
術後癒着モデル及びその作成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2016086753A JP2016086753A JP2014225968A JP2014225968A JP2016086753A JP 2016086753 A JP2016086753 A JP 2016086753A JP 2014225968 A JP2014225968 A JP 2014225968A JP 2014225968 A JP2014225968 A JP 2014225968A JP 2016086753 A JP2016086753 A JP 2016086753A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- adhesion
- tissue
- postoperative adhesion
- postoperative
- adhesion model
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、術後癒着発生のメカニズムの解明や、医薬品、手術等を評価するために有用な術後癒着モデル及びその作成方法を提供する。【解決手段】非ヒト動物を開腹又は開胸し、組織をシート部材で擦過した後に、シート部材を組織部に留置することを特徴とする術後癒着モデルの作成方法。【選択図】なし
Description
本発明は、術後癒着モデル及びその作成方法に関する。
外科療法では、開腹手術の後遺症として、腸管癒着による腸閉塞、卵管癒着による不妊症、腹痛などを引き起こすことが少なくない。例えば腹部手術術後の合併症としての腸閉塞は、腹膜の損傷部位に炎症が起こり、炎症性参出液によって腸壁の間に線維性の癒着を生じることで引き起こされる。また、当該術後癒着は、心臓手術などの開胸手術でも生じる。
癒着とは、本来互いに近接して存在するが、遊離している周囲臓器間あるいは組織間に結合が生ずる状態をいう。癒着発生の原因として,機械的刺激、化学的刺激、温熱的刺激、細菌感染、異物、血液、)空気及び乾燥、及びアレルギー反応等が挙げられる。例えば、開腹又は開胸する手術操作そのものや、組織や皮膚を切除した後にそれらを縫合するときに用いる糸に対して過剰に炎症を引き起こし、瘢痕(傷あと)を生じ、癒着となる。このほかにも、出血による凝固の亢進、ガーゼや電気メスの機械的刺激による損傷、漏れた消化液や腹腔内に溜まった血液の菌感染により術後癒着となる場合がある。
したがって、術後癒着発生のメカニズムを解明したり、術後癒着の悪影響や、腸閉塞、不妊症、腹痛に有用な医薬品、手術等を評価するためには、術後癒着モデルの存在が有用となる。
癒着モデルは、例えば、CD4+T細胞(非特許文献1)、NKT細胞((非特許文献2)、腹腔内マクロファージ(非特許文献3)を用いて作成する方法や、ガーゼを擦過する方法(非特許文献4、特許文献1、2)が知られている。
Chung DR. CD4+ T Cells Regulate Surgical and Postinfectious Adhesion Formation. Journal of Experimental Medicine. 2002;195(11):1471-8.
Kosaka H, Yoshimoto T, Yoshimoto T, Fujimoto J, Nakanishi K. Interferon-gamma is a therapeutic target molecule for prevention of postoperative adhesion formation. Nature medicine. 2008;14(4):437-41.
Akiyoshi Hoshino YIK, Masato Yasuhara, Noriko Toyama-Sorimachi, Kenji Yamamoto, Akihiro Matsukawa, Sergio A. Lira and Taeko Dohi. Inhibition of CCL1-CCR8 Interaction Prevents Aggregation of Macrophages and Development of Peritoneal Adhesions. J Immunol 2007;178:5296-5304.2007.Rolland E et al.,Hepatology, 10(1), 1-7, 1989
岡山大学温泉研究所報告 31号, 54-74, 1963
しかしながら、従来の方法では、電気メスの使用や細菌培養など手技設備の煩雑さ、癒着を形成する個体差、発症確率の低さ等により客観的な判断が困難であり、簡便で客観的に評価可能なモデルはこれまでに得られていない。
本発明は、術後癒着発生のメカニズムの解明や、医薬品、手術等を評価するために有用な術後癒着モデル及びその作成方法を提供する。
本発明者らは、術後癒着について検討したところ、非ヒト動物を開腹又は開胸した後の、組織をシート部材で擦過した後に、当該部位にシート部材を留置することにより、再現性の良い術後癒着モデルを作成できることを見出した。
すなわち本発明は、以下に係るものである。
1)非ヒト動物を開腹又は開胸し、組織をシート部材で擦過した後に、シート部材を組織部に留置することを特徴とする術後癒着モデルの作成方法。
2)上記作成方法により作成された癒着モデル。
1)非ヒト動物を開腹又は開胸し、組織をシート部材で擦過した後に、シート部材を組織部に留置することを特徴とする術後癒着モデルの作成方法。
2)上記作成方法により作成された癒着モデル。
本発明の方法によれば、術後癒着モデルが安定し、簡単に作成でき、これを用いることにより、術後癒着のメカニズムの解明や、それに起因する腸閉塞、腹痛の解明を行うことが可能となる。また、これを用いて、術後癒着に対する医薬品、手術等を評価することができる。
本発明の癒着モデルの作成方法は、非ヒト動物を開腹又は開胸し、組織をシート部材で擦過した後に、シート部材を組織部に留置することを特徴とする術後癒着モデルの作成するものである。
本発明では、動物を処置するため開腹又は開胸手術が行われるが、当該手術は、通常既知の方法が用いられ、例えば、ペントバルビタールなどの麻酔薬を投与し、立ち直り反射の消失、足指や尾への刺激に対する反応の消失を確かめた後、腹部を開腹又は開胸し、組織を露出させる。
次いで、露出した小腸および大腸組織を、シート部材で擦過した後に、シート部材を擦過した領域と同じ領域に留置したままで、閉腹又は閉胸する。
そして、シート部材による処置をした動物を元の飼育状態に戻すことで、術後癒着モデルを作成することができる。
本発明で使用される非ヒト動物は、ヒト以外であれば特に限定されないが、マウス、ラット、モルモット等のげっ歯類動物、ウサギ、犬等の哺乳類動物であり、好ましくはマウス、ラット、モルモットなどのげっ歯類である。また、その種類、年齢、性別等、特に限定されない。
本発明で使用される動物の組織としては、消化器官(胃、小腸、大腸など)、生殖器官(子宮または卵巣など)、循環器官(心臓、血管、リンパ管など)、呼吸器官(例えば肺)、運動器官(筋肉、骨、靭帯など)、感覚器官(眼球など)及び腹膜組織が好ましいが、小腸、大腸、腹膜組織がより好ましい。
組織の擦過する場所は、特に限定されないが、可能な限り小腸全体と大腸は盲腸から上行結腸、そして横行結腸が擦過しやすく、最後に左右腹膜組織をまんべんなく擦過することが好ましい。
本発明で使用されるシート部材としては、特に限定されないが、布、プラスチックシート、フィルム、紙、アルミホイル又はこれらのラミネートシートを用いることができ、これらの中でも特に布が好ましい。
布としては、厚織り、糸織り、ガーゼ、コール天、ネル等の織物、平編み、ゴム編み、タック編み、二目編み等の製法による編布、スパンレース、スパンボンド、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ等の製法による不織布などを挙げることができるが、これらの中でも特にガーゼが好ましい。
ガーゼとしては、特に限定されないが、レーヨン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維等の化学繊維を含んだものが例示され、好ましくはポリエチレン繊維である。
本発明で使用されるシート部材の大きさは、使用する動物や組織で異なるが、組織部の擦過した場所を覆うことができればよい。また、シート部材を折り曲げ等で重ねて使用することができる。
本発明で使用されるガーゼは、生体に適用されることから、滅菌処理に供されることが望ましい。滅菌方法としては特に制限されないが、例えば、EOG滅菌、電子線滅菌、γ線滅菌、紫外線照射等が挙げられる。
ガーゼによる擦過は、特に制限されないが、毎秒1cmの条件で、好ましくは2〜30回、より好ましくは5〜10回ほど往復することが好ましく、例えば上記非特許文献4に記載の手法により行うことができる。
ガーゼの留置は、擦過した領域に、ガーゼをそのまま配置することや、ガーゼを腸管等に結束させることができる。留置するガーゼは、擦過したガーゼと同一のものでも、新たなガーゼを使用してもよい。
閉腹又は閉胸した後は使用する動物や組織で異なるが、癒着は一般的に術後第1日目から形成され、少なくとも7日後には形成される。
本発明の作成方法で作成された術後癒着モデルの癒着は、再開腹又は開胸後に取り出した組織の目視や、解剖後の癒着部位の組織切片を作成し、染色後に顕微鏡などで染色による病理組織学的な方法で確認することができる。また、染色方法としては、ヘマトキシリンエオジン染色、Massonのトリクローム染色法、ワンギーソン染色法、マロリー染色法、またはアザン染色法等が挙げられる。
実施例1:癒着のスコア化
日本チャールスリバーより購入したC57BL6Jマウスで約20−25g、性別不問、10匹をイソフルレンで全身麻酔下にて腹部正中切開で開腹又は開胸し、小腸の腸管を腹腔外へ取り出し、その面を小出血3cm2のガーゼで小腸、大腸及び腹膜組織を5回毎秒1cm擦過し、最後にそのガーゼを丸めて擦過した領域に挿入し、側腹部へ留置する。3−0吸収糸を用い連続縫合で閉創する。その7日後再度開腹又は開胸し、ガーゼとの癒着状況を観察し、腹腔内の癒着の程度を目視により判定した。図1に基づき、下記5段階のスコア化を行った。
日本チャールスリバーより購入したC57BL6Jマウスで約20−25g、性別不問、10匹をイソフルレンで全身麻酔下にて腹部正中切開で開腹又は開胸し、小腸の腸管を腹腔外へ取り出し、その面を小出血3cm2のガーゼで小腸、大腸及び腹膜組織を5回毎秒1cm擦過し、最後にそのガーゼを丸めて擦過した領域に挿入し、側腹部へ留置する。3−0吸収糸を用い連続縫合で閉創する。その7日後再度開腹又は開胸し、ガーゼとの癒着状況を観察し、腹腔内の癒着の程度を目視により判定した。図1に基づき、下記5段階のスコア化を行った。
(スコア)
スコア0:癒着なし
スコア1:1cm引っ張ることで除去可能な癒着
スコア2:5cm引っ張ることで除去可能な癒着
スコア3:鉗子を用いて簡単に除去可能な癒着
スコア4:鉗子を使用すれば除去可能な癒着;
スコア5:鉗子を使用しても除去困難な癒着
スコア0:癒着なし
スコア1:1cm引っ張ることで除去可能な癒着
スコア2:5cm引っ張ることで除去可能な癒着
スコア3:鉗子を用いて簡単に除去可能な癒着
スコア4:鉗子を使用すれば除去可能な癒着;
スコア5:鉗子を使用しても除去困難な癒着
本発明の作成方法では、マウスの個体差があるが、スコア4−5の術後癒着モデルを作成することができた。
実施例2:癒着組織の浸潤
C57BL6Jマウスの腸管を切除し、凍結組織切片作製用包埋剤であるOCTコンパウンドにつけ、−80℃に凍結保存し、7日後クライオマイクロトームで5μmに切片を切り出し、ヘマトキシリンエオジン染色、各種必要な細胞表面マーカで染色した(Gr−1: 好中球マーカー、F4/80: マクロファージマーカー、 CD3e: Tリンパ球マーカー、NK1.1: ナチュラルキラーT細胞マーカー、B220: Bリンパ球マーカー、CD11c: 樹状細胞マーカー)。染色はエタノール固定後、0.05%Tweenで洗浄し、2%FBS/PBSでブロッキングを行い、各種抗体を加え、37℃30分で反応させた。2次抗体が必要なものはさらに抗体をのせ、同条件で反応させた後、DAPIで核染色を行い、観察した。
C57BL6Jマウスの腸管を切除し、凍結組織切片作製用包埋剤であるOCTコンパウンドにつけ、−80℃に凍結保存し、7日後クライオマイクロトームで5μmに切片を切り出し、ヘマトキシリンエオジン染色、各種必要な細胞表面マーカで染色した(Gr−1: 好中球マーカー、F4/80: マクロファージマーカー、 CD3e: Tリンパ球マーカー、NK1.1: ナチュラルキラーT細胞マーカー、B220: Bリンパ球マーカー、CD11c: 樹状細胞マーカー)。染色はエタノール固定後、0.05%Tweenで洗浄し、2%FBS/PBSでブロッキングを行い、各種抗体を加え、37℃30分で反応させた。2次抗体が必要なものはさらに抗体をのせ、同条件で反応させた後、DAPIで核染色を行い、観察した。
図2は、好中球マーカー(Gr−1)、腹腔内マクロファージマーカー(F4/80)、Tリンパ球マーカー(CD3e)、Bリンパ球マーカー(B220)、樹状細胞マーカー(CD11c)及びNKT細胞(NK1.1)マーカーにより作成したモデルを示す図である。
図2より、F4/80が赤色、CD3e及びB220が緑色に染色されたことから、本発明の方法で作成した術後癒着モデルは、腹腔内マクロファージとT細胞およびB細胞の癒着組織への浸潤が確認された。
図2より、F4/80が赤色、CD3e及びB220が緑色に染色されたことから、本発明の方法で作成した術後癒着モデルは、腹腔内マクロファージとT細胞およびB細胞の癒着組織への浸潤が確認された。
Claims (4)
- 非ヒト動物を開腹又は開胸し、組織をシート部材で擦過した後に、シート部材を組織部に留置することを特徴とする術後癒着モデルの作成方法。
- 組織が腹部組織である請求項1に記載の術後癒着モデルの作成方法。
- シート部材が布である請求項1又は2に記載の術後癒着モデルの作成方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により作成された癒着モデル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014225968A JP2016086753A (ja) | 2014-11-06 | 2014-11-06 | 術後癒着モデル及びその作成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014225968A JP2016086753A (ja) | 2014-11-06 | 2014-11-06 | 術後癒着モデル及びその作成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016086753A true JP2016086753A (ja) | 2016-05-23 |
Family
ID=56015398
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014225968A Pending JP2016086753A (ja) | 2014-11-06 | 2014-11-06 | 術後癒着モデル及びその作成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2016086753A (ja) |
-
2014
- 2014-11-06 JP JP2014225968A patent/JP2016086753A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Byrd et al. | Evaluation of absorbable and permanent mesh fixation devices: adhesion formation and mechanical strength | |
Vilar et al. | Double-layer mesh hernioplasty for repairing umbilical hernias in 10 goats | |
US11793548B2 (en) | Organ enclosures for inhibiting tumor invasion and detecting organ pathology | |
Deleuze et al. | Tubectomy of pregnant and non-pregnant female Balinese macaques (Macaca fascicularis) with post-operative monitoring | |
Prządka et al. | Laparoscopic assisted percutaneous herniorrhapy in dogs using PIRS technique | |
Wang et al. | Retroperitoneal laparoscopic versus open dismembered pyeloplasty for ureteropelvic junction obstruction | |
JP2016086753A (ja) | 術後癒着モデル及びその作成方法 | |
Schwab et al. | Video-assisted mini-open sublay (VAMOS): a simple hybrid approach for lateral incisional hernias | |
RU2311879C1 (ru) | Миниинвазивный способ хирургического лечения дефектов брюшной стенки | |
Lingohr et al. | Development of a standardized laparoscopic caecum resection model to simulate laparoscopic appendectomy in rats | |
RU2536265C1 (ru) | Способ хирургического лечения пупочных грыж с диастазом прямых мышц живота | |
RU2431448C2 (ru) | Способ хирургического лечения грыж пищеводного отверстия диафрагмы | |
RU2658161C1 (ru) | Способ хирургического лечения грыж в сочетании с абдоминопластикой | |
RU2393786C1 (ru) | Мини-инвазивный способ пластики послеоперационных вентральных грыж брюшной стенки | |
Forbes | Soft tissue surgery | |
Doneley | Soft tissue surgery | |
RU2570760C1 (ru) | Способ аллопластики при послеоперационных вентральных грыжах | |
RU2640109C2 (ru) | Способ лечения сочетанных флегмон поднижнечелюстной и подподбородочной областей | |
Devan | Surgical Models of Laboratory Animals | |
Hamilton | Traumatic and incisional hernias | |
RU2480168C1 (ru) | Способ герниопластики ущемленных паховых грыж | |
Ngim et al. | Acute intestinal obstruction from postoperative adhesions in a tertiary health facility, South-South, Nigeria: A one year prospective study | |
Ekçi | Appendectomy with single-port laparoscopic transumbilical surgery | |
Alkhilani et al. | A comparative study between two techniques of subtotal laparoscopic cholecystectomy in goats | |
Seksenbayev et al. | The Treatment of Wounds by Device Method in the Experiment |