JP2016081842A - プラズマ処理装置 - Google Patents

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滝川 浩史
Hiroshi Takigawa
浩史 滝川
裕也 内田
Hironari Uchida
裕也 内田
肇 志岐
Hajime Shiki
肇 志岐
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Abstract

【課題】大気圧プラズマを用いるプラズマ処理装置において、プラズマの流出方向を高精度に制御することにより、より均一性の高い処理を行い得るプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】進行プラズマ4を発生させるための電極11と、電極11に対して作動ガスを供給する作動ガス供給手段14と、電極11間に電圧を印加する電圧印加手段12と、進行プラズマ4を略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内で偏向させる偏向手段13と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、処理対象物の表面処理等に用いるプラズマ処理装置に関し、特に、大気圧以上又は大気圧近傍の作動ガスにより生成したプラズマを用いるプラズマ処理装置に関する。
基材(生地)にない特性を表面に付与することによって、機能性を向上させ、基材の利用を拡大・促進することを目的とした加工として、表面処理がある。たとえば、基材表面の化学的修飾(官能基の付与)、基材表面の化学組成の変化(酸化処理、窒化処理、炭化処理、還元処理)、基材と異なる表面層の形成(溶射、CVD)、および基材表面の幾何学構造の変化(エッチング)等である。
近年実用化されたプラズマを用いた表面処理方法により、処理対象物表面の濡れ性改善、接着性改善、洗浄、殺菌、消毒、生体融和性改善、エッチング、デスミア処理、凸凹化、バリ取り、表面改質などを行うことができる。
化学修飾の官能基としては、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、カルボニル基(−C(=O)−)、アルデヒド基(−CHO)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NH−)、ニトロ基(−NO)、ニトロソ基(−NO)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、メチル基(−CH)、エチル基(−CHCH)などが挙げられる。
大気圧以上又は大気圧近傍の作動ガスによりプラズマを生成できる装置(以下、大気圧プラズマ生成装置とも呼ぶ)を開発し、作動ガスとして空気などを用いることにより、プラズマ生成装置のコストを低減しようとする試みがなされている。大気圧プラズマ生成装置は、真空容器や真空排気装置を必要としないため、装置のコストが格段に安価であり、さらに、原料ガスとして空気や窒素のような安価なガスが使用でき、運転コストが低廉である。特開平9−223595号公報(特許文献1)には、大気圧下における高周波誘導コイルを用いたアークプラズマの生成方法が記載されている。また、特開2012−38469号公報(特許文献2)には、各種材料表面のクリーニングや親水性改善のために用いられる大気圧プラズマジェット装置が提案されている。
更に、アークプラズマの生成方法としては、グライディングアークに着目したプラズマの生成方法がCzemichowski等により提案され、A.Czemichowski:Gliding Arc.Applications to engineering and environment control, Pure and Applied Chemical, Vol.66(1994)pp.1301−1310(非特許文献1)などに記載されている。グライディングアークとは、電極間の距離がプラズマの進行方向に沿って増大する2つの電極に高電圧を印加してアークを発生させたとき、アークが電極間の開方向に移動する現象を起源としている。
図30(A)は、グライディングアークを用いた従来例としてのプラズマ処理装置101の構成概略図である。例えば、プラズマ処理装置101から照射されたプラズマ104により処理対象物106の処理対象表面106aを処理する。プラズマ処理装置101は、プラズマ発生部108、作動ガス供給路110、作動ガス供給手段(図示せず)及び電圧印加手段112から構成される。作動ガス供給手段により作動ガス114が供給管116を通して作動ガス供給路110に導入され、作動ガス114は作動ガス供給路110を流通して一対の電極111が配設されたプラズマ発生部108に供給される。作動ガス供給路110はノズル部材113に形成され、プラズマ発生部108はノズル部材113内に形成されている。ノズル部材113にはプラズマを出射するための出射孔120が形成される。一対の電極111は、それぞれの電極先端111cが出射孔120の近傍に位置するように設置される。
一対の電極111は、作動ガスの進行方向に沿って電極間の距離が増大するように配設されている。電極間に供給された作動ガスは、電圧印加手段112による印加電圧が電極間最短ギャップ111aにおける絶縁破壊電圧に達すると、最短ギャップ位置111bにおいてスパークを生じ、アークが発生する。このアークは、供給される作動ガスのガス流で押し出されて電極に沿って下流へと移動する。アークが所定長さまで伸長すると、放電維持電圧が印加電圧を超え、アークが自己消弧し、このとき、プルーム104bもガス流により押し出され、出射孔120の方向へ進行する。続いて高電圧が印加されると最短ギャップ位置111bで再びアークが発生する。上述のような発生から消滅までのプロセスを繰り返すものがグライディングアークであり、プラズマ104が電極間に生成される。このプラズマ104は、電流路部分のプラズマであるアークコラム104aと弱電離プラズマ状態のプルーム104bから構成される。
図30(B)は、図30(A)のノズル部材113を示す斜視図である。ノズル部材113の出射孔120はスリット状に形成され、当該スリット形状の長手方向は、一対の電極111が結ぶ面の広がる方向と同一である。
特開平9−223595号公報 特開2012−38469号公報
A.Czemichowski:Gliding Arc.Applications to engineering and environment control, Pure and Applied Chemical, Vol.66(1994)pp.1301−1310
図31は、フィルム状の処理対象物106(例えば、プラスチックフィルム)の表面処理(例えば、インクの密着性を向上させる処理)のために、図30に示すプラズマ処理装置101を用いる場合を例示した図であり、図30(A)中の矢印XXXIの方向にノズル部材113を見た状態を示している。
図31に示す処理方法おいて、フィルム状の処理対象物106は、当該処理の間、矢印xの方向に連続的に送られるものとする。処理対象物106の処理対象表面106aに対して、プラズマ処理装置101のノズル部材113の出射孔120側が対向させられ、出射孔120からプラズマを出射することにより上記処理を連続的に行うことができる。このとき、出射孔120から出射されたプラズマは、処理対象表面106aに沿って図31中の領域Aに示す方向(以下、順方向Aと称する)に流出することが想定されている。プラズマの出射は、断続的なアーク放電に基づいて実現されるため、毎回のプラズマの流出方向が順方向Aで一定していれば、断続的なプラズマの出射によって、図32(A)の領域(1)、(2)、(3)に示す領域に対して処理を行うことができる。領域(1)、(2)、(3)は連続する3回のプラズマ出射により表面処理が行われた領域を例示したものである。これにより、処理対象表面106a上の処理を必要とする領域(例えば、図32(A)中の点線で示す領域M)に対して、略均一かつ漏れのない処理を行うことができる。なお、図32(A)において、各回のプラズマ出射におけるプラズマの流出方向はそれぞれ、(ア)→(ア’)、(イ)→(イ’)、(ウ)→(ウ’)の方向である。
しかしながら、実際のプラズマ処理装置101においては、出射されたプラズマの流出方向は必ずしも順方向Aに一定してはおらず、図31中の領域Bに示されるような方向(以下、逆方向Bと称する)となる場合もある。この場合、プラズマの流出方向が順方向Aと逆方向Bの両方向にばたつく(つまり、プラズマの流出方向が順方向Aと逆方向Bの間で不規則に入れ替わる)という問題があった。このようにプラズマの流出方向が両方向の間でばたつく場合の処理結果の例を図32(B)に示す。図32(B)において、領域(1)、(2)、(3)は連続する3回のプラズマ出射により処理対象表面106aに対する処理が行われた領域である。これらのうち、領域(1)、(3)に対応するプラズマの流出は、図32(A)の領域(1)〜(3)と同じ方向(順方向A)に生じている。一方、図32(B)中の領域(2)は、プラズマが逆方向Bに流出した場合に処理された領域である。より具体的には、図32(B)の領域(1)では(ア)→(ア’)の方向にプラズマが流出し、領域(3)では(ウ)→(ウ’)の方向にプラズマが流出しているのに対して、領域(2)では、(イ’)→(イ)のように流出している。
このようにプラズマの流出方向がばたつく場合、図32(B)において点線で囲んだ領域Nは、何らプラズマによる表面処理が行われていない領域となる。このように表面処理が行われない領域は、当然ながら、表面処理が行われた領域と比べて品質が劣る(本例の場合ではインクの密着性が劣る)。このように、プラズマの流出方向のばたつきはプラズマによる処理を不均一なものとし、プラズマ処理対象物の製品としての品質を低下させる一因となっていた。
そこで、本発明の目的は、大気圧プラズマを用いるプラズマ処理装置において、プラズマの流出方向を高精度に制御することにより、より均一性の高い処理を行い得るプラズマ処理装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の1つの態様のプラズマ処理装置は、進行プラズマを発生させるための電極と、電極に対して作動ガスを供給する作動ガス供給手段と、電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、進行プラズマを略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内で偏向させる偏向手段と、を備えるプラズマ処理装置である。
上記態様のプラズマ処理装置によれば、偏向手段により進行プラズマの流出方向を精度よく制御できるため、上述したようなプラズマの流出方向のばたつきによる処理ムラを抑制することができる。
本発明の別の態様においては、偏向手段は、進行プラズマと衝突する位置に配置され、該衝突により進行プラズマを偏向させる部材である。また、本発明の別の態様においては、偏向手段は、衝突前の進行プラズマの進行方向に対して略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度を成す面を有する部材である。このような構成によっても、進行プラズマの進行方向を精度よく制御することができる。なお、前記面は、凹凸形状、突起形状、溝形状等の微細構造を有していても良い。
本発明の別の態様においては、偏向手段は、進行プラズマを流通させる流通路を有する部材であって、偏向手段の流通路の少なくとも一部分は、衝突前の進行プラズマの進行方向に対して略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度で延伸する。このような構成によっても、進行プラズマの進行方向を精度よく制御することができる。
本発明の別の態様においては、上記プラズマ処理装置は、内部に進行プラズマを流通させる流通路が形成されたハウジングを更に備え、ハウジングは、該ハウジングの流通路内を流通する進行プラズマを出射するためのプラズマ出射孔を有し、偏向手段は、進行プラズマの変更前の進行方向に沿って見た場合に、プラズマ出射孔と、進行プラズマを偏向させる向きとは反対側から少なくとも部分的に重なるように設置される。このような構成により、進行プラズマの進行方向を任意に制御することができる。
本発明の別の態様においては、プラズマ出射孔は、一つまたは複数の孔である。例えば、プラズマ出射孔は、矩形状、円形状、スリット形状、多角形状、円弧形状のうちの一つの種類または複数の種類の組み合わせからなる。このように、要求されるプラズマ処理の態様に応じて、プラズマ出射孔の数や形状は任意に選択できる。
本発明の別の態様においては、上記プラズマ処理装置は、ハウジングに設置され、進行プラズマを整流する整流部材を更に備える。このような整流部材を備えることによって、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。なお、整流部材は、ハウジングの流通路内に設置されるものとしてもよい。あるいは、整流部材は偏向手段に設置されるものとしてもよい。
本発明の別の態様においては、上記プラズマ処理装置は、ハウジングの外周を覆う隔壁であって、プラズマ出射孔側に開口を有する隔壁を更に備える。更に、隔壁の内部に対して、隔壁内部の雰囲気を制御するための雰囲気制御用ガスを供給する雰囲気制御ガス供給手段を更に備えるものとしても良い。このような構成によれば、プラズマ処理雰囲気を制御することで、任意のプラズマ処理特性を得ることができる。
本発明の別の態様においては、上記プラズマ処理装置は、進行プラズマの電流路と接触可能な位置に配置される1つまたは複数のブロック部材を更に備える。このような構成によれば、アークコラムを遮断することができ、プルームのみを処理対象物に照射することができるため、処理対象物が導電性を有する場合に、処理対象物表面におけるアークスポットの発生を防止することができる。なお、ブロック部材は、例えば、複数の棒状部材、メッシュ状部材、ハニカム状部材、および、複数の孔を有する部材のうちの一種または複数種の組み合わせとすることができる。
本発明の別の態様においては、進行プラズマは処理対象物の表面処理に用いられ、処理対象物の表面形状に沿う形状のカバー部材を更に備える。このような構成によれば、進行プラズマが処理対象物の表面により跳ね返されることを抑制でき、処理効率を向上させることができる。なお、カバー部材は、異なる形状を有する複数のカバー部材として準備されたものの中から、処理対象物の表面形状に対応した形状を有するカバー部材が選択的に用いられ得るように構成してもよい。
本発明の更に別の態様においては、上記プラズマ処理装置は、進行プラズマに対して、該進行プラズマの進行方向を制御するための進行方向制御用ガスを吹き付けるための方向制御ガス噴射手段を更に備える。このような構成によれば、進行プラズマの流出方向をより精度よく制御することができる。
図1は本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置の構成概略図である。 図2は図1のプラズマ処理装置の一部を矢印IIの方向に見た概略図である。 図3は図1のプラズマ処理装置を処理対象物の表面処理に用いる状況を示す概略図である。 図4(A)は本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す部分断面図であり、図4(B)は図4(A)のプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を矢印IVBの方向に見た図であり、図4(C)は図4(B)のハウジングのみを示す図である。 図5(A)は図4(A)のプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を破線VA−VAに沿って示す部分断面図であり、図5(B)はハウジングおよび偏向部材を図5(A)の矢印VBの方向に見た図である。 図6(A)は本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装置の一部を示す斜視図であり、図6(B)は図6(A)のプラズマ処理装置を矢印VIBの方向に見た図であり、図6(C)は図6(B)のプラズマ処理装置を矢印VICの方向に見た図である。 図7は第2実施形態または第3実施形態の複数の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングに形成された出射孔を示す概略図である。 図8は第2実施形態または第3実施形態の別の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を示す部分断面図である。 図9は第2実施形態または第3実施形態の更に別の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を示す部分断面図である。 図10は第2実施形態または第3実施形態の更に別の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を示す部分断面図である。 図11(A)は第2実施形態または第3実施形態の更に別の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を示す部分断面図であり、図11(B)は図11(A)のプラズマ処理装置の一部を矢印XIBの方向に見た図である。 図12は本発明の第2実施形態または第3実施形態の更に別の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび電極を示す部分断面図である。 図13(A)は本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装置のハウジングおよび偏向部材を示す部分断面図であり、図13(B)は図13(A)のプラズマ処理装置の一部を矢印XIIIBの方向に見た図である。 図14は第4実施形態の複数の変更例に係るプラズマ処理装置の偏向部材の流通路および整流部材を示す図である。 図15(A)は本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理装置を示す部分断面図であり、図15(B)は図15(A)のプラズマ処理装置を矢印XVBの方向に見た図である。 図16(A)は第5実施形態の変更例に係るプラズマ処理装置を示す部分断面図であり、図16(B)は図16(A)のプラズマ処理装置を矢印XVIBの方向に見た図である。 図17はブロック部材の径の大小による効果の違いを説明するための説明図である。 図18は第5実施形態の別の複数の変更例に係るプラズマ処理装置を示す部分断面図である。 図19は第5実施形態の更に別の複数の変更例に係るプラズマ処理装置のハウジングおよびブロック部材を示す図である。 図20(A)は本発明の第6実施形態に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図であり、図20(B)は図20(A)のハウジングおよび隔壁を示す図であり、図20(C)は第6実施形態の変更例を示す図である。 図21(A)は第6実施形態の別の変更例に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図であり、図21(B)は図21(A)のハウジングおよび隔壁を示す図であり、図21(C)は第6実施形態の更に別の変更例を示す図である。 図22(A)は本発明の第7実施形態に係るプラズマ処理装置の要部を示す概略図であり、図22(B)は第7実施形態の変更例に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図であり、図22(C)は図22(B)のプラズマ処理装置の要部を矢印XXIICの方向に見た図であり、図22(D)は第7実施形態の別の変更例に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図である。 図23は本発明の第8実施形態に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図である。 図24は第8実施形態の変更例に係るプラズマ処理装置の要部を示す部分断面図である。 図25は本発明の第9実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す概略の部分断面図である。 図26は、本発明の一実施例に係るプラズマ処理装置によるフリーバーニングの状態の放電プラズマジェットの様相を撮影した写真である。 図27は、一実施例に係るプラズマ処理装置を平面に固定してプラズマを照射した様子を撮影した写真である。 図28は、図27(B)に示すプラズマ処理装置のカバー部材を延長した場合において出射されるプラズマの様相を撮影した写真である。 図29は一実施例のプラズマ処理装置を用いたラビング試験の結果を表す図である。 図30(A)は従来例のプラズマ処理装置を示す部分断面図であり、図30(B)は図30(A)のプラズマ処理装置のノズル部材を概略的に示す斜視図である。 図31は図30のプラズマ処理装置を処理対象物の表面処理に用いる状況を示す説明図である。 図32はプラズマ処理装置による処理対象物の表面処理における課題を説明するための説明図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の複数の実施形態およびその変更例を、添付の図面に従って詳細に説明する。まず、本発明に係るプラズマ処理装置の基本的な構成を、第1実施形態として図1に示すプラズマ処理装置1を例に取り説明する。図1のプラズマ処理装置1は、グライディングアークを用いたプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、プラズマ発生部としての一対の電極11、電圧印加装置12(電圧印加手段)、偏向部材13(偏向手段)、作動ガス供給装置14(作動ガス供給手段)を有する。作動ガス供給装置14により大気圧以上又は大気圧近傍の作動ガス15が電極11に供給される。作動ガス供給装置14としては、市販のガスボンベ、コンプレッサ、ブロア、窒素ガス供給装置などを利用できる。また、作動ガスの流量制御は、市販のバルブ、マスフローコントローラやロタメーターなどを利用して行われ、またガス供給圧を制御するレギュレータ(図示せず)が配置される。作動ガス15として、乾燥空気、加湿空気、ヘリウムやアルゴン等の希ガス、酸素、窒素、水素、硫化水素、炭化水素ガス、塩素ガス等のハロゲンガス、フロンガス、有機溶媒の蒸気、特別化学物質の蒸気、大気圧0〜100℃でガス状の物質、大気圧0〜30℃で液体である物質を30〜300℃に加熱して発生した蒸気・ミスト、及びこれらの混合気体等から目的に応じて適宜選択し、所望のプラズマを生成することができる。なお、各装置および部材を保持するための手段については図示を省略した。
一対の電極11は、作動ガス15の進行方向に沿って電極間の距離が最短ギャップ位置11bから増大するように配置される。電圧印加装置12による印加電圧が電極間最短ギャップ11aにおける絶縁破壊電圧に達すると、最短ギャップ位置11bにスパークを生じ、これにより、電極11間に供給された作動ガス15に基づくプラズマ4が発生する。このプラズマ4は、電流路部分のプラズマであるアークコラム4aと弱電離プラズマ状態のプルーム4bから構成される。電圧印加装置12としては、市販の直流電源、交流電源、パルス電源などを使用できる。
アークコラム4aは、供給される作動ガス15の流れにより押し出されて電極11、11に沿って下流へと移動する。アークコラム4aが所定長さまで伸長すると、アークコラムの放電維持電圧が印加電圧を超え、アークコラム4aが自己消弧する。このとき、プルーム4bもガス流により押し出され、偏向部材13の方向へ進行し、これに衝突する。
図2は、図1のプラズマ処理装置1を、矢印IIの方向に見た概略図である。本例では、偏向部材13は、衝突前のプラズマ4の進行方向m1に対して傾斜する衝突面13aを有する部材により構成されている。衝突前のプラズマの進行方向m1とは、作動ガス15の供給方向および電極11の形状や配置によって決定されるプラズマの進行方向のことを指称するものとする。本例のグライディングアークを用いた装置においては、一対の電極11の最短ギャップ位置11b近傍(特に、最短ギャップ位置11bから下流側へ5mmまでの範囲)を流れる作動ガス15の流れる方向と定義しても良い。
図2に示すように、電極11間に発生し、作動ガス15の流れにより押し出されたプラズマ4は、偏向部材13に衝突する。この衝突により、プラズマ4の進行方向が方向m1から方向m2に角度αだけ曲げられる。衝突後のプラズマ4の進行方向m2を図2において点線m2により示す。角度αは略10°以上90°未満の範囲内の角度、または、略30°〜略60°の範囲内の角度とすることが好ましい。プラズマを方向m1から方向m2へ偏向させるには、例えば、偏向部材13の衝突面13aを、方向m1に対して必要な角度だけ傾斜させればよい。例えば、偏向部材13の衝突面13aを所望の偏向角度αと略等しい角度だけ傾斜させる場合もあり得る。しかしながら、衝突面13aの傾斜角度とプラズマ4の偏向角度αは必ずしも一致しない。そこで、所望の偏向角を得たい場合には、衝突面13aの角度や偏向部材13の取り付け位置、その他種々の放電条件を変えて、適切に調整する必要がある。偏向部材13は高温になることから、その材料としてポリテトラフルオロエチレン等の耐熱樹脂、ボロンナイトライド等のセラミックス、クオーツ(石英)等を選択することが望ましい。偏向部材13の衝突面13aは完全な平面に限らず、凹凸形状、突起形状、溝形状等の微細構造を有していても良い。特に衝突面13aが溝形状の微細構造を有する場合、当該溝形状は、プラズマ4を偏向させようとする方向に延伸することが好ましい。また、上記したプラズマ4の偏向角度αを達成できる限り、偏向部材13の衝突面13aを曲面状としても良い。
プラズマ処理装置1を処理対象物2の表面処理に用いる場合の態様の例を図3に示す。本例においては、図31の従来例と同様に、フィルム状の処理対象物2が、図3中の矢印xの方向に送られつつ、プラズマ4による表面処理を受けるものとする。本実施形態によるプラズマ処理装置1によれば、プラズマ4の流出方向が進行方向変更部13により、処理対象物2の送り方向と逆向きの一方向のみに効果的に制御されているため、プラズマの流出方向のばたつきによる処理ムラが抑制でき、例えば、図32(A)に示すような理想的な表面処理をより高い確率で実現することができる。なお、本発明のプラズマ処理装置1によれば、処理対象物2の送り方向がxと逆の場合であっても、同様の効果を得ることができる。
(第2実施形態)
図4には本発明の第2実施形態を示す。図4(A)は本実施形態に係るプラズマ処理装置1を概略的に示す部分断面図である。図示するように、本実施形態のプラズマ処理装置1は内部に流通路16aを有するハウジング16を備え、各電極11の導線と結合されている側の部分はハウジング16の周壁内に埋設されている。本例においては、第1実施形態とは電極11の形状が異なるが、作動ガス15の進行方向に沿って電極11間の距離が最短ギャップ位置11aから増大するように配置されるという点は同じである。流通路16aは、作動ガス15が電極11に向かって流通できるように形成されている。流通路16aは同じくハウジング16に形成された出射孔16bと連通し、出射孔16bからはプラズマ4が出射できるように構成されている。
図4(B)は図4(A)のプラズマ処理装置1のハウジング16を矢印IVBの方向に見た図である。図4(C)は図4(B)において偏向部材13を透視的に表した図であり、偏向部材13の輪郭を点線にて表した。本実施形態においては、出射孔16bは一対の電極11の結ぶ面と重なる方向に延びるスリットの形状に形成されている。
図4(A)の偏向部材13とハウジング16を図中の点線VA−VAに沿って見た部分断面図を図5(A)に示す。図5(B)はハウジングおよび偏向部材を図5(A)の矢印VBの方向に見た図である。図5に示すように、出射孔16bの外側に偏向部材13の衝突面13aが存在する。そのため、出射孔16bから出射されたプラズマ4(図5では図示略)は衝突面13aに衝突し、それにより、第1実施形態と同様にプラズマ4の進行方向が変えられる。これによって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。更に、衝突面13aのうち、プラズマを偏向させる向きとは反対側の部分がハウジング16に接することで、その部分における偏向部材13とハウジング16の間をプラズマが流通できないようにしている。このような構成によって、第1実施形態の有するプラズマの進行方向制御効果をより確実なものとしている。
偏向部材13とハウジング16を別体のものとして図示したが、これらを一体のものとして形成してもよい。出射孔16bの周囲は高温になることから、ハウジング16のうち少なくとも出射孔16bの周辺部分の材料には耐熱樹脂やセラミックスを用いることが望ましい。
図4(C)に示すように、衝突前の進行プラズマの進行方向に沿って見た場合に、偏向部材13は、プラズマを偏向させる向きとは反対側から、出射孔16bと少なくとも部分的に重なっている。その場合、例えば、偏向部材13は出射孔16bの面積の略50〜略90%の面積、または、略60%〜略80%の面積、または、略75%の面積と重なることが好ましい。偏向部材13は、出射孔16bの全体と重なっていても良い。偏向部材13とハウジング16の相対的位置を変更可能とすることで、出射孔16bの開度(図5の例の場合、スリット幅)を調節できるような構成としてもよい。例えば図5の場合、偏向部材13を、図5(A)の左右方向にスライド可能とすればよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装置1を図6に基づき説明する。図6(A)は本実施形態のプラズマ処理装置1の一部を示す斜視図である。本実施形態は第2実施形態のプラズマ処理装置1に対して、側方カバー部材17を取り付けたものである。側方カバー部材17の材質は、偏向部材13と同様の材質とすることが好ましい。図6(B)は図6(A)のプラズマ処理装置1を矢印VIBの方向に見た図であり、図6(C)は図6(B)のプラズマ処理装置1を矢印VICの方向に見た図である。図示するように、側方カバー部材17は、偏向部材13の両側に取り付けられ、衝突後のプラズマ4の流出方向に衝突面13aよりも更に延伸することで、出射されたプラズマ4の横方向への広がりを抑制するための部材である。
(変更例)
図7(A)、(B)は上述の第2実施形態または第3実施形態の複数の変更例に係る出射孔16bを示す図である。図7(A)に示すように、出射孔16bが円弧などの曲線状に形成される場合においても、出射孔16bから弱電離プラズマ状態であるプルームが出射される。従って、出射孔16bの形状は、処理対象物が設置される環境、処理対象物の状態・形状に応じて、適宜に選択することができる。また、図7(B)に示すように、出射孔16bの個数も適宜に選択することができる。
図7(A)、(B)のように出射孔16bが縦方向(図の上下方向)においてある程度広がりをもって形成される場合等には、図8に示すように、偏向部材13の衝突面13aがハウジング16の縁に近い位置まで延びるように形成することが好ましい。これによって、スリット形状と比べて縦方向に広がった出射孔16bにも対応できる。図8は偏向部材13とハウジング16の縦断面図であり、第2実施形態の図5(A)に対応するものである。
第2実施形態または第3実施形態の別の複数の変更例に係るハウジング16および偏向部材13の断面図を図9〜図11に示す。これらは第2実施形態の図5(A)に対応する部分断面図である。
図9に示す偏向部材13は、衝突前のプラズマ4の進行方向m1と衝突面13aとが垂直となるように構成される。ハウジング16の出射孔16bを有する面のうち、出射孔16bの一方側の面部分が下げられることにより、対向する偏向部材13との間に流通路18を形成する。出射孔16bから出射されたプラズマ4は、この流通路18を通って流出できるように構成されている。流通路18と反対側においては、ハウジング16と偏向部材13の間は閉じている。この場合、プラズマ4の進行方向は方向m1から方向m2へ90°曲げられることとなる。
このように構成されたプラズマ処理装置1を処理対象物2の表面処理に用いる場合には、図9に示すように、流通路18の出口が処理対象物2の処理対象表面2aに対向するように、プラズマ処理装置1を処理対象物2に対して配置して用いることができる。このような配置は、例えば、処理対象物2が比較的細長い筒状または箱状の部材であって、処理対象表面2aが当該部材の内周面であるときなどに用いれば、当該部材の奥の方の内周面にまでプラズマを的確に照射することができ、有利である。本例ではプラズマ4の進行方向を方向m1から方向m2へ90°曲げるように流通路18を形成したが、これに限らず、プラズマ4を略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内で偏向するように流通路18を形成しても良い。
偏向部材13の断面形状は矩形状や多角形形状に限定されず、例えば図10の楕円形状のような曲線を有するものであってもよい。
更には、図11のように、偏向部材13は、その内部に流通路13bを有するものとしてもよく、進行方向が変更される前の進行プラズマの進行方向m1に対して流通路13bの少なくとも一部分(特に出口側部分)の延伸方向が所定角度(例えば略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度)傾斜させられていることによって、進行プラズマの進行方向を略10°〜略90°または略30°〜略60°偏向することができる。図11(A)は図5に対応する部分断面図であり、図11(B)は図11(A)のハウジング16および偏向部材13を矢印XIBの方向に見た図である。
グライディングアーク用の電極11は、上述のように、電極対が末広がり状に配設されていれば良く、上述のものの他、図12に示すような種々の形状の電極を用いることもでき、更にはこれらに限定されない。図12(A)は三角板形状の電極11の対を用いる構成の部分断面図である。図12(B)は、湾曲面を有する板状の電極11の対を用いた構成の部分断面図である。図12(A)、(B)に示される電極対は、作動ガス15の進行方向に沿った少なくとも一部の電極間距離が増大しており、これらの電極を用いてグライディングアークを発生させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態は、第1実施形態、第2実施形態またはその変更例のプラズマ処理装置1に対して、以下に説明する整流部材19を追加したものである。
例えば、図11に示す変更例に対して整流部材19を付加した例を図13に示す。図13(A)に示すように、図11(A)に示す流通路13b内に、整流部材19を配置している。図13(B)は図13(A)のハウジング16および偏向部材13を矢印XIIIBの方向に見た図である。図13(B)においては識別しやすいように整流部材19に斜線によるハッチングを付した。図13(A)、(B)に示すように、本例の整流部材19は、複数の板状部材が流通路13bの延伸方向に沿って延びるように、かつ、流通路13bの横断方向、すなわち、流通路13bの延伸方向と直行する方向であって、流通路13bが広がる方向に分散するように配置されている。
整流部材19によって、流通路13b内を流れるプラズマ4が整流される。すなわち、流通路13bの延伸方向と直行する方向であって、流通路13bが広がる方向におけるプラズマ4の分布の均一性が向上する。結果として、プラズマ処理の均一性の向上を図ることができる。整流部材19の形状や個数は必要に応じて任意に選択できる。例えば、図14(A)に示すように、整流部材19が配置される流通路を形成する向かい合う壁面のいずれか一方のみに整流部材19を配置してもよい。または、図14(B)のように、整流部材19が配置される流通路を形成する向かい合う壁面の両方に互い違いに整流部材19を配置してもよい。形状については板状のものに限らず、図14(C)のような円柱状のもの、あるいは図14(D)のような波板状のものでもよく、更にはこれらの形状に限られない。更には、図14(E)のように、ブロック状の部材(斜線のハッチングにより示す)に複数の貫通孔が設けられたものを整流部材19として用いても良い。貫通孔の断面形状は任意である。整流部材19により形成される複数の通路が互いに平行である必要はなく、各通路は延伸方向において一定の断面形状である必要もない。
整流部材19は、図13に示すように偏向部材13内に設置する構成に限らず、出射孔16b内に設置したり、ハウジング16の流通路16aに設置したりしてもよい。あるいは、図5、6、8、9等に示す例においてハウジング16と偏向部材13とが対向する位置に設置してもよい。特に図9の例においては流通路18内に設置してもよい。その場合、整流部材19をハウジング16側または偏向部材13側のみに設置しても良い。整流部材19は、ハウジング16や偏向部材13と別体でも一体でも良い。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。図15(A)は本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理装置1を示す部分断面図である。図15(B)は図15(A)中の一点鎖線で示すプラズマ処理装置1のハウジング16の端面を矢印XVBの方向に見た図である(すなわち、偏向部材13を省略している)。本実施形態は、図4(A)に示すプラズマ処理装置1の出射孔16bに対してブロック部材20が付設されたものである。図15(B)中のwはプラズマが出射されるスリット状の出射孔16bの短尺方向の長さである。図示するように、出射孔16bに複数のブロック部材20が取り付けられ、プラズマは出射孔16bとブロック部材20とが形成する隙間から出射される。ブロック部材20としては、耐熱絶縁材料が用いられ、例えば、耐熱樹脂、セラミック材料、クオーツ(石英)などからブロック部材が形成される。
図15は、取付けられるブロック部材20の太さSが全て等しく、各ブロック部材20の間隙dが等間隔に設定された例を示している。ブロック部材20が付設される位置は、出射孔16bに限定されるものではなく、出射孔16bの近傍に配設されてアークコラムを遮断し、プルームを処理対象物に照射することが可能であれば、ブロック部材20を任意の位置に配設することができる。図16は、ブロック部材20の取付け位置が出射孔16bの端部側から中心位置に近づくにつれて、ブロック部材20の間隙dを狭め、ブロック部材20の太さSが徐々に大きくなるように設定されている。ブロック部材20の大きさは同一である必要は無く、ブロック部材同士の間隙dを等しく配設する必要も無い。従って、電極間の中心位置では、アークコラムが最も伸張するため、電極間の中心において、間隙dが小さく、電極間近傍では間隙dが大きくなるように配置することができる。このようにプラズマの出射形状に適応させて、好適な形状および配置間隔を選択できる。
図17は、本発明に係るブロック部材20が配設されたプラズマ発生部の構成概略図である。図17(A)及び図17(B)には、複数の円柱状あるいは円筒状ブロック部材20が等間隔に、電極間距離が広がる方向に対し垂直に配設されている。ブロック部材20によりプラズマ4の電流路であるアークコラム4aを遮断して弱電離プラズマであるプルーム4bのみを処理対象物表面に照射するから、処理対象物表面におけるアークスポットの発生が防止され処理対象物の好適な表面処理を行うことができる。
図17(B)は、ブロック部材20の太さ及び間隔を変化させた比較例におけるプラズマ発生部の構成概略図である。図17(A)のブロック部材20に比べ、径の細いブロック部材20を使用した場合、印加電圧を増大させていくと、図17(B)に示すようにアークコラム4aがブロック部材の外側を迂回してしまう。更に、ブロック部材20の間隔を広くした場合、アークコラム4aが動作ガスによって押し出され易くなるから、アークコラムが処理対象物表面に到達し、導電性処理対象物表面にアークスポットが発生しやすくなる。以上のことから、アークスポットの発生を抑えるためには、径の大きなブロック部材20を使用し、狭い棒間隔で配置することが好ましい。ブロック部材20の径若しくは幅は0.1〜10mm、好ましくは2〜4mmがよい。ブロック部材20同士が成す間隙は0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mmがよい。なお、それぞれのブロック材の形状が同一である必要は無い。例えば、細いブロック材と太いブロック部材20とを交互に配設することもできる。
図18は、本発明に係る種々の形状のブロック部材20が配設されたプラズマ発生部の構成概略図である。図18(A)には、四角形の断面形状を有するブロック部材20が配設されたプラズマ発生部を示している。ブロック部材20の断面形状が円形でない場合においても、ブロック部材20によりプラズマの電流路であるアークコラムを遮断して弱電離プラズマであるプルームのみを処理対象物表面に照射することができる。ブロック部材の断面形状は、上述の形状に限定されず、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、星形、その他さまざまな断面形状を呈してよい。ブロック部材20は中空でも中実でもかまわない。また、ブロック部材20は、軸方向に断面積や断面形状が変化していても構わない。湾曲したブロック部材20を用いてもよい。更に、ブロック部材20は電極間距離が広がる方向に対して必ずしも垂直に配置する必要は無く、それぞれのブロック部材20の配置角度が変化していても良く、プラズマ出射孔に対して斜向配置される場合においてもブロック部材20によりアークコラムを遮断することができる。
図18(B)は、ブロック部材20の配列が2重配列されたプラズマ発生部を示している。ブロック部材20を2重に配列することにより、電極11間に発生するアークプラズマがより確実に遮断され、プルームのみを生成することができる。また、ブロック部材20の配設位置は、プラズマ出射孔16bの出口側から等距離に設定される必要はなく、処理対象物の形状や配置、表面処理の種類に応じて、ブロック部材20を自在に配列することができる。プラズマ出射孔16bに処理対象物を近接させる場合などでは、図18(C)に示すように、ブロック部材20をプラズマ出射孔16bの内側に配設することができる。
図19は、メッシュ状(またはハニカム状)ブロック部材20a又は孔部20cが形成された多孔型ブロック部材20bが取り付けられたプラズマ生成装置1の端面概略図である。ブロック部材は、前述したような棒状のブロック部材20に限定されるものではなく、図19(A)に示すメッシュ状(またはハニカム状)ブロック部材20aや図19(B)及び図19(C)に示す多孔型ブロック部材20bなどを用いることができる。即ち、ブロック部材20によりアークコラムを複数箇所で遮断して、プルームのみを処理対象物表面に照射し、アークスポットの発生を防止できれば、メッシュ状(またはハニカム状)ブロック部材20aや多孔型ブロック部材20bなどの種々の形状を有するブロック部材を用いることができる。アークコラムを遮断する効果を得るためには、これらのブロック部材20a、20bの、プラズマ進行方向における寸法は、略0.1mm〜略10mmの範囲内であることが好ましく、ブロック部材20a、20bを設置する位置が電極11に近いほど当該寸法を大きくすることが好ましい。
なお、図19(B)及び図19(C)に示す多孔型ブロック部材20bの孔20cは円形である必要は無く、三角形、四角形、五角形、六角形など、様々な形状が利用できる。望ましくは、正方形あるいは長方形の孔である。例えば、正方形または長方形の孔の場合、孔幅は0.1〜10mm、好ましくは2〜4mmがよい。孔20c同士が成す間隙は0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mmがよい。また、孔20cはブロック部材20bに対し垂直に開いている必要は無く、また、テーパー状の孔でもよい。更に、孔20cは、出射孔16bに対し一列状に空いている必要はなく、図19(C)に示すように、孔20cを多段に形成してもよい。また、メッシュ状ブロック部材20aの場合、メッシュ形状が四角形、円径などさまざまな形状のものを利用できる。更に、市販のセラミックメッシュを利用することもできる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。本実施形態のプラズマ処理装置1は、第2実施形態、第3実施形態またはそれらの変更例のプラズマ処理装置1のハウジング16の外側を覆う隔壁21を更に有するものである。例えば、部分断面図である図20(A)に示すものは、図5(A)に示すプラズマ処理装置1のハウジング16の先端側(出射孔16b側)部分の外側を覆う隔壁21を有し、隔壁21は先端側が開口端21aとなっている。図20(B)は図20(A)のハウジング16と隔壁21を示した図である。このような隔壁21により外部からの酸素の侵入を抑制することができ、結果として、処理対象表面2aのプラズマ処理直後の酸化を防止することができる。また、図20(C)のように、隔壁21にガス流入口211を設け、隔壁21内部に対して隔壁21内部の雰囲気を制御するための雰囲気制御ガス212を雰囲気制御ガス供給装置213(雰囲気制御ガス供給手段)により供給しても良い。例えば、隔壁21の内部に対して窒素ガス等の不活性ガスや水素等の還元性ガスを雰囲気制御ガス212として供給することで上記効果をより確実に奏するものとしてもよい。隔壁21の材質としてはガラス、クオーツ(石英)、金属、木材など、またはブロック部材と同様の材質を用いることができる。処理表面を酸化させたい場合には、酸素などの酸化性のガスを雰囲気制御ガス212として供給してもよい。作動ガス15と同じ物質を雰囲気制御ガス212として用いてもよい。
図21(A)、(B)は第6実施形態の変更例を示す図であり、それぞれ図20(A)、(B)に対応する図である。図21(A)、(B)に示すように、プラズマ処理装置1を処理対象表面2aに対向させたときに、隔壁21の開口端21aが処理対象表面2aに対して傾斜し、偏向部材13と衝突した後のプラズマ4が流出する側における開口端21aと処理対象表面2aとの隙間が広くなるように、隔壁21を構成しても良い。このようにすれば、広がった隙間からプラズマ4が流出しやすくなり、プラズマ4による処理域を広く確保することができる。また、同じ理由により、図21(C)に示すように、プラズマ4が流出する側における開口端21aと処理対象表面2aとの隙間が広くなるように、開口端21aを段差状に形成しても良い。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。本実施形態のプラズマ処理装置1は、図22(A)に示すように、上記各実施形態および変更例に係るプラズマ処理装置1に対して、方向制御ガス噴射装置22(方向制御ガス噴射手段)を追加したものである。方向制御ガス噴射装置22は、処理対象表面2aのプラズマ4が照射される部分に対して、プラズマ4を偏向させる側と反対側から不活性ガス(窒素ガスなど)である方向制御ガス23を噴射するための装置である。そのとき、偏向前のプラズマ4の進行方向に対して略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度で方向制御ガス23を噴射する。これにより、プラズマ4の流出方向のばらつきを抑制し、流出方向を更に高精度に制御することができる。方向制御ガス23としては、不活性ガスに限らず、作動ガス15や雰囲気制御ガス212と同じ物質を用いても良い。
図22(A)の例のように方向制御ガス23を処理対象表面2aの処理対象部分に対して噴射する構成に限らず、図22(B)のように、偏向部材13のハウジング16と接する面に方向制御ガス流通路13cを設け、方向制御ガス流通路13cを通して方向制御ガス23を噴射しても良い。図22(C)は図22(B)に示すプラズマ処理装置1の要部を矢印XXIICの方向に見た図である。この図のように、複数の方向制御ガス流通路13cを設けても良く、あるいは1つでも良い。また、方向制御ガス流通路13cの断面形状も任意である。また、図22(D)に示すように、方向制御ガス流通路13cを変更部材13の貫通孔として設けても良い。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、上述の各実施形態または変更例の構成に対して、例えば図23に示すように、カバー部材24を更に備えたものである。図23は、図5に示す構成に対してカバー部材24を付加した構成を示す部分断面図である。処理対象物2の処理対象表面2aに照射されたプラズマ4は、処理対象表面2aによって跳ね返されることがあり、結果として処理効率が低下することがある。そこで、本実施形態のカバー部材24は、このようなプラズマ4の跳ね返りを抑制することで、処理対象表面2aに対するプラズマ処理の効率を向上させようとするものである。そのため、カバー部材24は、偏向部材13の衝突面13aと衝突した後のプラズマ4の流出方向に、処理対象表面2aに沿って延在する。図23の例では、カバー部材24はハウジング16の端部外周に取り付けられる。処理対象表面2aに沿う方向における、出射孔16bの中心からカバー部材24の遠位端までの距離(図23中の記号aで示す寸法)は、例えば略10〜略80mmである。また、カバー部材24の材料としてポリテトラフルオロエチレン等の耐熱樹脂、ボロンナイトライド等のセラミックス、クオーツ(石英)等を選択することが望ましい。
図24は第8実施形態の変更例に係るプラズマ処理装置1の要部の部分断面図および処理対象物2を示す図である。図24の例では、回転するローラー3に沿うように送られる処理対象物2に対してプラズマ処理装置1によりプラズマ処理を行う。図示するように、処理対象表面2aの処理対象箇所はローラー3の形状に沿って曲面形状となっているため、本例のカバー部材24は、当該曲面形状に沿う側が曲面形状となっており、これにより、処理対象表面2aにおけるプラズマ4の跳ね返りを効果的に抑制することができる。異なる形状の複数のカバー部材24を用意しておき、処理対象物2の処理対象表面2aの形状に対応したカバー部材24を適宜選択して用いることもできる。
(第9実施形態)
本発明は、グライディングアーク方式のプラズマ処理装置に限らず、円柱状プラズマジェットの一種であるペンジェット方式のプラズマ処理装置に対しても適用可能である。そこで、本発明をペンジェット方式のプラズマ処理装置に対して適用した例を第9実施形態として、図25を参照して説明する。図25は、プラズマ発生部にペンジェット方式を適用したプラズマ処理装置30の構成概略図である。このペンジェット型プラズマ発生部は、円筒状ガイド本体31の中空部に設けた軸心電極32を有し、ガイド本体31の先端側には、微細な貫通孔33aを有するノズル状電極33が設けられている。軸心電極32の一端側に電源(図示せず)の高電圧極が接続され、ノズル状電極33は電源の低電圧極に接続され低電圧電極として機能する。あるいは、ノズル状電極33は、図示するようにアース35と接続されていても良い。ノズル状電極33と軸心電極32の先端は間隙を介して対向し、プラズマ発生領域が形成されている。このプラズマ発生領域周辺のガイド本体31内側には、絶縁部36が設けられている。軸心電極32とノズル状電極33との電極間ギャップは、電界を電極先端面に集中させるために0.5mm〜3mm程度に設定されることが好ましい。
ペンジェット型プラズマ発生部において、作動ガス15がガイド本体31の開口部より導入される。作動ガス15として、乾燥空気、加湿空気、ヘリウムやアルゴン等の希ガス、酸素、窒素、水素、硫化水素、炭化水素ガス、塩素ガス等のハロゲンガス、フロンガス、有機溶媒の蒸気、特別化学物質の蒸気、大気圧0〜100℃でガス状の物質、大気圧0〜30℃で液体である物質を30〜300℃に加熱して発生した蒸気・ミスト、及びこれらの混合気体等から目的に応じて適宜選択し、所望のプラズマを生成することができる。図示していないが、作動ガスの供給は、市販のガスボンベ、コンプレッサ、ブロア、窒素ガス供給装置などを利用できる。また、作動ガスの流量制御は、市販のバルブ、マスフローコントローラやロタメーターなどを利用して行われ、またガス供給圧を制御するレギュレータ(図示せず)が配置される。
作動ガス15は、軸心電極32の側面とガイド本体31の間を流通して前記プラズマ発生領域に供給される。電源の高電圧極に接続された軸心電極32と、低電圧極(またはアース35)に接続されたノズル状電極33との間に、アーク放電に至るのに十分な電圧が印加されることで、電極32、33の間でアーク放電が生じる。作動ガス15は軸心電極32の先端面とノズル状電極33の間のアーク放電によりプラズマ化され、貫通孔33aの下端出射孔からプラズマ4が進行プラズマとして出射される。
本実施形態のプラズマ処理装置30は、先に説明した複数の実施形態またはそれらの変更例と同様の偏向部材13を有する。図25に示すものは、第1実施形態と同様の偏向部材13を有する。図25に示すように、出射孔から出射されたプラズマ4は、偏向部材13に衝突する。この衝突により、プラズマ4の進行方向が方向m1から方向m2に角度αだけ曲げられる。角度αは略10°以上90°未満の範囲内または略30°〜略60°の範囲内の角度とすることが好ましい。プラズマの進行方向を方向m1から方向m2へ変更させるには、偏向部材13の衝突面13aを、方向m1に対して必要な角度だけ傾斜させればよい。所望の偏向角度αを得る為に、衝突面13aの傾斜角度を諸条件のもとで適切に調整することが必要であることは上述の通りである。偏向部材13は高温になることから、その材料としてポリテトラフルオロエチレン等の耐熱樹脂、ボロンナイトライド等のセラミックス、クオーツ(石英)等を選択することが望ましい。第1実施形態に限らず、その他の各実施形態および各変更例の構成においてペンジェット型プラズマ発生部を用いてもよい。
実際の使用状態におけるプラズマ処理装置1、30の向きは、各図に示した向きには何ら限定されない。
処理対象物2は上述した平面的または曲面的な表面を有するものには何ら限定されず、プラズマ処理装置1、30との位置関係も適宜設定されるものである。また、プラズマ処理装置1、30に対して処理対象物2を移動させるものには限定されず、プラズマ処理装置1、30を、例えばロボットアームに取り付けるなどして、処理対象物2に対して移動させることも可能である。
上記の各実施形態および変更例の各要素を組み合わせても良い。
(実施例)
次に、本発明の実施例を示す。出射孔寸法において電極対が結ぶ面の広がる方向と同一の方向に35mm、該方向と直行する方向に6mmの長方形の出射孔を有するグライディングアーク(GA)プラズマジェット発生装置を用い、端部が30度、45度、60度の角度を持つPTFE製の厚さ3mmの板からなる偏向板(偏向部材)をプラズマ出射孔に図23のように取り付けた。このとき、電極対が結ぶ面に対して平行に、出射孔の中央から1.5mmの位置に偏向板の先端を合わせた。すなわち、図4(B)のようにプラズマ出射孔出口をプラズマジェット下流方向から見て、偏向板が出射孔と重なる率が約75%となるようにした。電源には、無負荷出力電圧17kV、放電出力電圧10kV、無負荷周波数60Hz、入力電力600Wの電源を用いた。動作ガスとした空気は、ブロワで供給し、流量約90L/minとした。このとき、出射孔から出たアークコラムの全長が約60mm以上となる比較的強い放電プラズマが発生する周波数は120Hz(周期約8.3ms)であり、その強い放電プラズマの一周期の間に、出射孔から出たアークコラムの全長が約30mmに満たない弱い放電プラズマが約2回発生した。偏向板なしの場合、プラズマジェットの側面から見て、左右に振れてバタつく平均的周波数は約55.4kHzだった。処理対象物は、厚さ50μmのポリプロピレン(PP; Polypropylene)フィルムとした。なお、フィルムの処理はもっぱら前記の強い放電プラズマによって行われる。
図26に、処理物に照射しない状態、すなわち、フリーバーニングの状態の放電プラズマジェットの様相を撮影した写真を示す。電極対が結ぶ面に沿った方向から、つまり、見かけ上平面状に形成されるプラズマジェットの側方から観測したものである。撮影シャッター速度1/30s、つまり、露光時間約33.3msとした。この写真では、アークコラム自体は認識できないが、プルームを含めたプラズマの全体が撮影されている。図26において、(A)偏向板なし、(B)30度角偏向板、(C)45度角偏向板、(D)60度角偏向板である。図26(A)はプラズマの進行方向が装置軸とほぼ一直線上であり、プラズマジェットは偏向していない。図26(B)〜(D)はそれぞれ、(A)と比べて、約30度、約35度、約35度偏向していることがわかる。このように、偏向板の角度とプラズマジェットの偏向角とが必ずしも一致するわけではない。所望の偏向角を得たい場合には、偏向板の角度や取り付け位置、その他種々の放電条件を変えて、適切に調整する必要がある。
図27に、平面に固定して送りのない状態、つまり静止状態のPPフィルムに、プラズマを照射した様子を示す。プラズマ発生装置も固定したままで照射、つまり定点照射したものである。言い換えれば、電極対が結ぶ面に沿った方向から、つまり見かけ上平面状プラズマの側方から観測したものである。撮影シャッター速度1/30s、つまり、露光時間約33.3msとした。この撮影条件の場合、露光時間内に、強い放電プラズマが約4回発生し、弱い放電プラズマが約8回発生した。偏向板とPPフィルムとの距離は1mmとした。偏向板なしの場合、プラズマ出射孔とPPフィルムとの距離を4mmとした。図27(A)の偏向板なしの場合、プラズマジェットが左右に広がっている様子がわかる。これは、ある放電タイミングでは右側にプラズマが放出され、別のタイミングでは左にプラズマが放出された、つまりプラズマがバタつく状態であったことがわかる。一方、図27(B)30度角偏向板、図27(C)45度角偏向板、図27(D)60度角偏向板を取り付けた場合、プラズマは左側にのみ放出されていることがわかる。このように、このような状態は、偏向板の端部の角度が5度〜90度の範囲で確認された。なお、GAプラズマジェット発生装置の電極対が結ぶ面と垂直方向の幅は約32mmであったので、追加のカバー部材を付けない状態でプラズマを処理物に沿わせるためのカバー部材をひさしと称することにすれば、ひさしの長さは、プラズマ出射孔の端部から約13mmの長さであった。
図28に、図27(B)の場合において、ひさし長さ、つまり、プラズマ出射孔から処理物に沿うカバー部材の長さを約37mmにした場合の様相を示す。処理物とひさしとの間で左方向に伸びたプラズマが形成されていることがわかる。図27(B)および図28において、プラズマの伸びはそれぞれ、約35mmおよび約50mmであった。このようにしてプラズマジェットを伸ばすことで、プラズマが処理物と接触する面積を増やすことができ、処理物が移動している場合にはプラズマが処理物に接触する時間を増やすことができ、より処理効果が向上する。この実験においては、ひさし長さ60mmまで同様な効果があったが、電源出力を上げるなどすれば、更に長いひさしに対しても有効である。
工業用インクジェットプリンタで印刷した文字、すなわち印字をこすった場合にどうなるかを判断するため、ラビング試験を行った。PPフィルムを直径110mmの回転ローラー上で送り速度100m/minで送った状態でGAプラズマジェット照射処理を施した。GAプラズマジェット発生装置は回転ローラー面と電極配置が垂直になるように取付け、偏向板と処理フィルム間との最短距離を1mmとした。偏向板なしの場合には、プラズマ出射孔とPPフィルムとの距離を4mmとした。プラズマジェットの吹き出し方向は、PPフィルムと送り方向に逆らう方向とした。プラズマ処理後、ABC・・・XYZのアルファベット26文字1列の印字パターンを印字した。文字高さは3mm、文字列長さは44mmとした。この文字列長さにおいて、プラズマの発生周波数とフィルム送り速度から、計算上、強い放電プラズマが約3.2回、弱い放電プラズマが約6.4回、照射される。また、偏向板なしの場合に、プラズマジェットがバタつく平均周波数と送り速度および文字列長さから、文字列長さ内でプラズマジェットがバタつく回数は約1.5回である。
図29にラビング試験の結果を示す。印字後、連続加重式引掻強度試験機を用いてラビング試験を行った。ラビング材にはプラスチック消しゴム(直径4.7mm)を用いた。ラビング条件は、垂直荷重:500g重、掃引速度:100mm/s、ラビング回数:同一方向に繰り返し10回、とした。図29(A)のラビング試験前の印字、に対し、(B)の偏向板なしの結果の一例では、一部印字が薄くなっている箇所、すなわち処理ムラがあることがわかる。これに対し、偏向板を取付けた場合には、(C)30度角偏向板、ひさし長さ約13mm、および(D)30度角偏向板、ひさし長さ約37mm、において処理ムラは観測されなかった。
本発明は、上記実施形態、変更例、実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変更例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものである。
本発明に係るプラズマ処理装置は、大気圧以上又は大気圧近傍の作動ガスからプラズマを生成し、このプラズマによる表面処理において、流出するプラズマの方向を精度よく制御することができる。従って、本発明に係るプラズマ処理装置により、濡れ性改善、接着性改善、印刷(インクジェット印刷、シルク印刷、グラビア印刷、ロール印刷など)、塗装(バンパー塗装、車体塗装など)、接着(ガラス、樹脂、ゴム、金属など)、絶縁線と電線の密着工程、シール部材の取付けなどの封止工程及び注射針などの接合における前処理などの表面処理を好適に行うことができる。更に、種々の処理対象物表面の静電気防止処理、デスミア処理、エッチング、アッシング、固体表面の酸化、表面加工(例えば、ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボン膜の微細加工・除去、各種膜の焼結、各種膜の酸化、各種膜の合成)などを好適に行うことができる。また、メス、カテーテル、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、入れ歯、複合チップ及び注射針などの消毒・殺菌・滅菌処理などの表面処理を好適に行うことができ、気体や液体の処理も可能であり、例えば、大気浄化、排ガス処理、排煙処理及び気体や液体のpH制御などの環境浄化処理に用いることができる。
1、30 プラズマ処理装置
2 処理対象物
4 プラズマ
11 電極
12 電圧印加装置(電圧印加手段)
13 偏向部材(偏向手段)
14 作動ガス供給装置(作動ガス供給手段)
15 作動ガス
16 ハウジング
17 側方カバー部材
18 流通路
19 整流部材
20、20a、20b ブロック部材
21 隔壁
22 方向制御ガス噴射装置(方向制御ガス噴射手段)
24 カバー部材
31 ガイド本体
32 軸心電極
33 ノズル状電極
35 アース
36 絶縁部
213 雰囲気制御ガス供給装置(雰囲気制御ガス供給手段)

Claims (17)

  1. 進行プラズマを発生させるための電極と、
    前記電極に対して作動ガスを供給する作動ガス供給手段と、
    前記電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
    前記進行プラズマを略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内で偏向させる偏向手段と、
    を備えるプラズマ処理装置。
  2. 前記偏向手段は、前記進行プラズマと衝突する位置に配置され、該衝突により前記進行プラズマを偏向させる部材である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  3. 前記偏向手段は、前記衝突前の前記進行プラズマの進行方向に対して略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度を成す面を有する部材である、請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
  4. 前記偏向手段は、前記進行プラズマを流通させる流通路を有する部材であって、
    前記偏向手段の前記流通路の少なくとも一部分は、前記衝突前の前記進行プラズマの進行方向に対して略10°〜略90°または略30°〜略60°の範囲内の角度で延伸する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  5. 内部に前記進行プラズマを流通させる流通路が形成されたハウジングを更に備え、
    前記ハウジングは、該ハウジングの前記流通路内を流通する前記進行プラズマを出射するためのプラズマ出射孔を有し、
    前記偏向手段は、前記進行プラズマの偏向前の進行方向に沿って見た場合に、前記プラズマ出射孔と、前記進行プラズマを偏向させる向きとは反対側から少なくとも部分的に重なるように設置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  6. 前記プラズマ出射孔は、一つまたは複数の孔である、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
  7. 前記プラズマ出射孔は、矩形状、円形状、スリット形状、多角形状、円弧形状のうちの一つの種類または複数の種類の組み合わせからなる、請求項5または請求項6に記載のプラズマ処理装置。
  8. 前記ハウジングに設置され、前記進行プラズマを整流する整流部材を更に備える、請求項5〜7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  9. 前記整流部材は、前記ハウジングの前記流通路内に設置される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
  10. 前記ハウジングの外周を覆う隔壁であって、前記プラズマ出射孔側に開口を有する隔壁を更に備える、請求項5〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  11. 前記隔壁の内部に対して、該隔壁内部の雰囲気を制御するための雰囲気制御用ガスを供給する雰囲気制御ガス供給手段を更に備える、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
  12. 前記偏向手段に設置され、前記進行プラズマを整流する整流部材を更に備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  13. 前記進行プラズマの電流路と接触可能な位置に配置される1つまたは複数のブロック部材を更に備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  14. 前記ブロック部材は、複数の棒状部材、メッシュ状部材、ハニカム状部材、および、複数の孔を有する部材のうちの一種または複数種の組み合わせである、請求項13に記載のプラズマ処理装置。
  15. 前記進行プラズマは処理対象物の表面処理に用いられ、
    前記処理対象物の表面形状に沿う形状のカバー部材を更に備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  16. 前記カバー部材は、異なる形状を有する複数のカバー部材として準備されたものの中から、前記処理対象物の表面形状に対応した形状を有する前記カバー部材が選択的に用いられ得るように構成される、請求項15に記載のプラズマ処理装置。
  17. 前記進行プラズマに対して、該進行プラズマの進行方向を制御するための進行方向制御用ガスを吹き付けるための方向制御ガス噴射手段を更に備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
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