JP2016079861A - 内燃機関のNOx浄化システム - Google Patents

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Kenji Hiraoka
賢二 平岡
山本 高之
Takayuki Yamamoto
高之 山本
和樹 西澤
Kazuki Nishizawa
和樹 西澤
将利 勝木
Masatoshi Katsuki
将利 勝木
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Abstract

【課題】No-DPFエンジンにおいて、SCR触媒に到達する排気ガスの温度を調整することで、NOx浄化性能を安定化させられる内燃機関のNOx浄化システムを提供する。
【解決手段】DPFを有しない内燃機関のNOx浄化システム1であって、内燃機関2からの排気通路5と、前記排気通路5に設けられるSCR触媒7と、前記SCR触媒7の上流側に設けられる前段酸化触媒56と、前記前段酸化触媒56と前記SCR触媒7との間の少なくとも一部である被バイパス部52を迂回するように設けられる排気バイパス通路8と、前記被バイパス部52を通過する前記排気ガスの流量、および前記排気バイパス通路8を通過する前記排気ガスの流量を制御するためのバルブ装置54と、前記バルブ装置54を制御するためのバルブ制御部9と、前記排気バイパス通路8に設けられ、排気ガス浄化機能を有する物体以外からなる所定の熱容量を有する熱容量体82と、を備える。
【選択図】図1

Description

本開示は、内燃機関のNOx浄化システムに関する。
従来から、エンジンの排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を低減させるシステムとして、尿素SCRシステムが知られている。この尿素SCRシステムでは、エンジンの排気通路(排気管)内に設けた噴射ノズルから排気ガス中に尿素水が噴射され、加水分解によりNH3が生成される。そして、排気ガス中のNOxは、SCR触媒(Selective Catalytic Reduction)においてこのNH3と反応し、無害なN2とH2Oに分解(浄化)される。このSCR触媒によるNOxの浄化性能は触媒温度に大きく依存しており、触媒温度を活性温度に維持することが尿素SCRシステムによるNOx浄化率向上のポイントとなっている。一般には、200degC(摂氏)付近でSCR触媒は活性化するため、触媒温度は200degC以下ではNOx浄化性能が悪い。
また、尿素SCRシステムはディーゼルエンジンに搭載されることで、近年の排ガス規制強化に対応されている。例えば、特許文献1では、過給機のタービン出口以降の排気通路に酸化触媒であるDOC(Diesel Oxide Catalytic)と、すす捕集フィルターであるDPF(Diesel Particulate Filter)を搭載することでHC、CO、PM、Sootを除去すると共に、さらにその下流の排気通路に上記SCR触媒を含む尿素SCRシステムが搭載されることでNOxの除去が行われている。
特開2013−2283号公報
一方、エンジンの燃焼システムの改善により、燃焼室内にて生成するSoot、PMを十分低減させることで、DPFを設置しないNo-DPFエンジンも市場で見られるようなってきている。このようなNo-DPFエンジンにSCRシステムを採用した場合、DPFという巨大な熱容量を持った装置が排気通路内のSCR触媒の上流に存在しないことになる。このため、エンジン始動時においては、エンジンから排出される高温の排気ガスがそのままSCR触媒に到達し通過することになる。これによって、SCR触媒を即座に暖めることができるので、エンジン始動後速やかにSCR触媒を活性化させることができ、NOx浄化性能(浄化率)が向上する。
しかしながら、冷間始動後のエンジン運動中においては、無負荷運転などの低出力モードに入るなどによって、排気ガスはSCR触媒の活性化温度(200degC)よりも低温となることがある。この場合には、この低温の排気ガス(200degCよりも低い)がSCR触媒に到達することによって、SCR触媒が急激に冷やされることになり、エンジン運転中にもかかわらずNOx浄化性能が悪化することになる。
逆に、エンジン運動中において、エンジン低出力モードから高出力モードに移行する場合など、高温の排気ガスがSCR触媒に到達する場合には、高温の排気ガスによってSCR触媒が急激に暖められることになる。一般に、触媒温度が高くなるとSCR触媒に吸着可能なNH3の吸着量(限界吸着量)は減少する。そうすると、SCR触媒の触媒温度の上昇によってSCR触媒に吸着されていたNH3が脱離するため、排気通路の出口からNH3を放出してしまうことになる。これを防ぐ手段としては、昇温速度が高い場合は尿素水を噴射しないといった制御が考えられるが、尿素水を噴射しない状態ではSCR触媒中のNH3吸着濃度にムラが生じるため、NOxの浄化率は悪化することになる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、No-DPFエンジンにおいて
SCR触媒に到達する排気ガスの温度を調整することで、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化させられる内燃機関のNOx浄化システムを提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る内燃機関のNOx浄化システムは、
DPFを有しない内燃機関のNOx浄化システムであって、
内燃機関からの排気ガスを排出するための排気通路と、
前記排気通路に設けられるSCR触媒と、
前記排気通路における前記SCR触媒の上流側に設けられる前段酸化触媒と、
前記排気通路における前記前段酸化触媒と前記SCR触媒との間の少なくとも一部である被バイパス部を迂回するように設けられる排気バイパス通路と、
前記被バイパス部を通過する前記排気ガスの流量、および前記排気バイパス通路を通過する前記排気ガスの流量を制御するためのバルブ装置と、
前記バルブ装置を制御するためのバルブ制御部と、
前記排気バイパス通路に設けられる所定の熱容量を有する熱容量体であって、前記排気ガスを浄化する機能を有する物体以外からなる熱容量体と、を備える。
上記(1)の構成によれば、排気通路には、SCR触媒の上流側において排気バイパス通路が設けられており、排気ガスは、バルブ装置によって、排気バイパス通路によって迂回される排気通路の部分(被バイパス部)と排気バイパス通路のうちの少なくとも一方を通過した後に、SCR触媒に到達する。この際、排気バイパス通路を通過する排気ガスは、排気バイパス通路に設けられる熱容量体によって熱交換された後に、SCR触媒に到達する。このため、SCR触媒に到達する排気ガスの温度を調整することができ、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記前段酸化触媒を通過し、前記SCR触媒または前記熱容量体に流れる前記排気ガスの排ガス温度を検知可能な排気温度検知手段と、
前記SCR触媒の上流の前記排気ガスの温度または前記SCR触媒の温度である触媒温度を検知可能な触媒温度検知手段と、
前記熱容量体の下流の前記排気ガスの温度または前記熱容量体の温度である物体温度を検知可能な物体温度検知手段と、をさらに備え、
前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度、前記触媒温度、および前記物体温度に基づいて、前記被バイパス部と前記排気バイパス通路とのうちの少なくとも一方を排気ガスが通過するように前記バルブ装置の制御を行うように構成される。
上記(2)の構成によれば、排気ガスは、排ガス温度、触媒温度と物体温度に基づいて通過する経路が決定される。このため、SCR触媒に到達する排気ガスの温度を、前記触媒温度と排ガス温度と物体温度に基づいてSCR触媒の活性化にとって好ましい温度に適切に調整することができ、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度以上の場合において、前記触媒温度が目標触媒温度以下の場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記被バイパス部を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成される。
上記(3)の構成によれば、内燃機関の始動時など、SCR触媒の温度が目標触媒温度より低く暖機が必要な場合には、排気ガスの全てが被バイパス部を通過するように開度制御されるので、被バイパス部を通過する温度の高い排気ガスが主にSCR触媒に到達する。このため、SCR触媒をNOx浄化性能が高くなる目標触媒温度まで迅速に昇温させることを優先して行うことができ、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)または(3)の構成において、
前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度よりも低い場合において、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記物体温度以下の場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記排気バイパス通路を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成される。
上記(4)の構成によれば、SCR触媒の温度よりも低温の排気ガスは、より高温の熱容量体の設置される排気バイパス通路を通過するように制御されるので、熱容量体により排ガス温度が昇温される。このため、低温の排気ガスがSCR触媒を通過することによってSCR触媒の触媒温度が低下することを回避することができ、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の構成において、
前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度以上の場合において、前記触媒温度が目標触媒温度よりも高い場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスが、前記被バイパス部および前記排気バイパス通路の両方を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成される。
上記(5)の構成によれば、排気ガスの温度がSCR触媒の温度以上の場合において、SCR触媒が目標触媒温度に到達している場合には、被バイパス部と排気バイパス通路の両方に排気ガスが通過する。このため、高温の排気ガスによって必要以上にSCR触媒が昇温させることを回避する(熱劣化防止)と共に、排気バイパス通路を排気ガスが通過することによって熱容量体を昇温させることがきる。すなわち、昇温された熱容量体により、排気ガスによってSCR触媒の触媒温度が低下されるおそれがある場合には、必要に応じて、低温の排気ガスが熱容量体によって昇温させるよう制御するために備えることができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(5)の構成において、
前記バルブ制御部は、
前記SCR触媒に吸着されるアンモニア量の推定値である推定吸着量を推定可能なアンモニア量推定部と、
前記SCR触媒に吸着される前記アンモニア量の前記触媒温度に相関した限度値を示す制限吸着量を取得可能な制限吸着量取得部と、
前記SCR触媒に吸着される前記アンモニア量の前記触媒温度に相関した吸着量の目標値を示す目標吸着量を取得可能な目標吸着量取得部と、
前記推定吸着量、前記制限吸着量、前記目標吸着量、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度、および前記物体温度に基づいて、前記SCR触媒の昇温速度を抑制するための昇温抑制処理の実行を判定可能な昇温抑制実行判定部と、を含む。
上記(6)の構成によれば、昇温抑制処理の実行が必要と判断される場合には、昇温抑制処理によってSCR触媒の昇温が抑制されるので、NH3スリップを抑制することができる。また、昇温抑制処理によってSCR触媒の昇温を抑制することで、尿素水などの還元剤の停止時間を短縮し、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記昇温抑制実行判定部は、前記推定吸着量が前記制限吸着量以上の場合において、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記物体温度以上の場合には、前記昇温抑制処理の実行を判定するように構成される。
上記(7)の構成によれば、推定吸着量が制限吸着量以上の場合において、排ガス温度が物体温度以上の場合には、SCR触媒の昇温速度が急速と判定され、SCR触媒に対する昇温抑制処理の実行されるよう判定される。これによって、NH3スリップを抑制するための昇温抑制処理を実行することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記昇温抑制処理は、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記排気バイパス通路を通るように前記バルブ装置を制御するように構成される。
上記(8)の構成によれば、昇温抑制処理によって相対的に高温の排気ガスは、相対的に低温の熱容量体を通過することによって温度が低下された後に、SCR触媒に到達する。このため、SCR触媒の昇温速度を低下させることができ、NH3スリップを抑制することができる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)〜(8)の構成において、
前記昇温抑制実行判定部は、前記昇温抑制処理の実行中において、前記推定吸着量が前記目標吸着量以下の場合には、前記昇温抑制処理の停止を判定する。
上記(9)の構成によれば、昇温抑制処理の実行中において、推定吸着量が目標吸着量以下の場合には、SRC触媒の急激な昇温が収まったと判断することで昇温抑制処理を停止し、通常制御フローに戻る。これによって、NH3スリップを抑制しながら、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の構成において、
前記熱容量体は消音装置からなる。
上記(10)の構成によれば、排気ガスは、低負荷運転時など排ガス温度が低い場合には、消音装置(熱容量体)が設置される排気バイパス通路を通過するため、消音装置(熱容量体)により騒音を抑制することができる。また、高負荷運転時など排ガス温度が高い場合には、排気通路の消音装置(熱容量体)のない被バイパス部を通過するため、消音装置(熱容量体)の通過による抵抗を無くすことができるため、排気抵抗が低減する。これによって、内燃機関のポンピング損失を低減することができると共に、燃費を改善することができる。
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、
前記排気通路における前記SCR触媒の下流側に設けられる排気音を消音するための第2の消音装置をさらに備え、
前記消音装置は、前記第2の消音装置よりも低周波域における前記排気音の消音に適するように構成されている。
上記(11)の構成によれば、消音装置(熱容量体)により効果的に騒音を抑制することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、SCR触媒に到達する排気ガスの温度を調整することで、SCR触媒によるNOx浄化性能を安定化させられる内燃機関のNOx浄化システムを提供される。
本発明の一実施形態に係る内燃機関のNOx浄化システムの構成を概略的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るバルブ装置の制御フローを示す図である。 本発明の一実施形態に係るバルブ制御部の機能ブロックを示す図である。 本発明の一実施形態に係るバルブ制御部によるバルブ装置の制御フローを示す図である。 本発明の一実施形態に係るエンジンの運転条件の変化に伴う排気温度検知手段からの排ガス温度、触媒温度、物体温度の時間推移を説明する図である。 本発明の一実施形態に係る排気ガスの通過する経路を図5Aに対応して説明する図である。 本発明の一実施形態に係るNH3スリップ抑制機能を含むバルブ制御部の機能ブロックを示す図である。 本発明の一実施形態に係るNH3スリップ抑制のための昇温抑制処理の実行判定フローを説明する図である。 本発明の一実施形態に係る昇温抑制処理に伴うSCR触媒とNH3の推定吸着量の時間推移を説明する図である。 本発明の一実施形態に係る排気ガスの通過する経路を図8Aに対応して説明する図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関のNOx浄化システム1の構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、内燃機関のNOx浄化システム1は、エンジン2と、排気通路5と、排気バイパス通路8と、熱容量体82と、バルブ装置54(図1では、第1バルブ54aと第2バルブ54bで構成)と、バルブ制御部9とを備える。また、前段酸化触媒56とSCR触媒7も備えており、これらは排気通路5に設けられている。そして、内燃機関のNOx浄化システム1にはDPFは設けられておらず、DPFを有しないNo-DPFエンジンに対するシステムとなっている。
エンジン2は、ディーゼルエンジンなどの内燃機関である。そして、エンジン2には給気通路3と排気通路5が接続されており、給気通路3を介して車両外部からエンジン2内部のシリンダ内に空気Fiを吸入し、エンジン2の燃焼室で空気Fiと共に燃料を燃焼し、燃焼によって発生する燃焼ガスを排気通路5により車両外部に排出する。給気通路3は、吸気マニホールドや給気管などにより構成されている。そして、図1に例示のように、給気通路3には、インタークーラ32、スロットルバルブ34、過給機4のコンプレッサ4Cが接続されても良く、空気Fiはこれらを通過しながらエンジン2に給気される。また、燃焼室内への燃料供給はコモンレールシステム22により行っても良く、サプライポンプで高圧にされた燃料をレール内に蓄え、電子制御によってタイミングよく適切な燃料が各シリンダに噴射される。
排気通路5は、燃焼ガス(排気ガスFe)を排出するための通路であり、各シリンダからの排気を束ねる排気マニホールドや排気管などにより構成されている。そして、排気通路5には前段酸化触媒56が設けられると共に、前段酸化触媒56の下流にはSCR触媒7が設けられている。なお、排気通路5には過給機4のタービン4Tが接続されても良く、図1の例示では、前段酸化触媒56はタービン4Tの下流に設けられている。そして、前段酸化触媒56とSCR触媒7の間には排気バイパス通路8も設けられている。
排気バイパス通路8は、排気通路5の少なくとも一部を迂回するように設けられた通路である。図1の例示では、排気バイパス通路8は、排気通路5における前段酸化触媒56とSCR触媒7との間の少なくとも一部である被バイパス部52を迂回するように設けられている。すなわち、排気バイパス通路8によって、排気ガスFeは、排気通路5の被バイパス部52を迂回してSCR触媒に達することが可能に構成されている。そして、排気バイパス通路8には、熱容量体82が設けられている。
熱容量体82は、所定の熱容量を有する物体であり、排気バイパス通路8を排気ガスFeが通過する際には排気ガスFeと熱容量体82との間で熱交換がなされる。具体的には、排気ガスFeの温度である排ガス温度Teが熱容量体82の温度である物体温度Tcよりも大きい場合には(Te>Tc)、排気ガスFeから熱容量体82に熱が移動し、排ガス温度Teは低下されると共に物体温度Tcは上昇される。逆に、排ガス温度Teが物体温度Tcよりも小さい場合には(Te<Tc)、熱容量体82から排気ガスFeに熱が移動し、排ガス温度Teは上昇すると共に物体温度Tcは低下される。
また、熱容量体82は酸化触媒(DOC)以外からなっている。酸化触媒(DOC)は、排気ガスFe中の未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)等との反応による酸化熱によって、排気を昇温させる。しかし、熱容量体82は酸化触媒ではない。例えば、昇温装置(マフラー)であっても良く(後述)、このため、上記の酸化触媒である場合の化学反応による酸化熱によっては排ガス温度Teを昇温させない。
このような排気バイパス通路8によって、排気ガスFeは、排気バイパス通路8と排気通路5の被バイパス部52の少なくとも一方の経路を通過して、排気バイパス通路8の下流にあるSCR触媒7に到達するように構成されている。そして、この経路は、バルブ装置54によって決定される。
バルブ装置54は、被バイパス部52を通過する排気ガスFeの流量、および、排気バイパス通路8を通過する排気ガスFeの流量を制御している。図1の実施形態では、バルブ装置54は、第1バルブ54aと第2バルブ54bによって構成されている。
詳述すると、第1バルブ54aは被バイパス部52に設けられており、第2バルブ54bは、排気バイパス通路8において熱容量体82の上流側に設けられている。そして、第1バルブ54aが開いている場合には、排気ガスFeは被バイパス部52を通過することができ、被バイパス部52を経由して下流のSCR触媒7に到達する。逆に、第1バルブ54aが閉じている場合には、排気ガスFeは、被バイパス部52を通過してSCR触媒7に到達することはできない。同様に、第2バルブ54bが開いている場合には、排気ガスFeは排気バイパス通路8を通過することができ、排気バイパス通路8を経由して下流のSCR触媒7に到達する。逆に、第2バルブ54bが閉じている場合には、排気ガスFeは、排気バイパス通路8を通過してSCR触媒7の到達することはできない。
上述のようなバルブ装置54による排気ガスFeの流量の制御は、バルブ制御部9がバルブ装置54を制御することによって行われる。幾つかの実施形態では、バルブ制御部9は、図2に示されるように、第1バルブ54aと第2バルブ54bによって構成されるバルブ装置54を制御している。
すなわち、排気ガスFeが被バイパス部52のみ通過するように制御する場合には、第1バルブ54aを開くと共に、第2バルブ54bを閉じる(ステップS21〜S22)。また、排気ガスFeが排気バイパス通路8のみ通過するように制御する場合には、第1バルブ54aを閉じると共に、第2バルブ54bを開ける(ステップS23〜S24)。一方、排気ガスFeが、被バイパス部52および排気バイパス通路8の両方を通過するように制御する場合には、第1バルブ54aと第2バルブ54bの両方を開ける(ステップS25〜S26)。
なお、図2における条件判断(ステップS21、S23、S25)の順番はこれに限定されないことは当然である。また、第1バルブ54aと第2バルブ54bの両方を開ける場合のそれぞれの開度は全開、全閉に限定されず、排ガス温度Te、触媒温度Ts、物体温度Tcの少なくとも1つに基づいてそれぞれの開度を調整しても良い。
このバルブ制御部9は、ECU(電子制御ユニット)であっても良い。さらに、エンジン2を制御するエンジン制御ECUなどの周知のECUに設けられても良く、新たなECUとして別個に設けられても良い。
また、図1の実施形態では、第1バルブ54aと第2バルブ54bによって排気ガスFeの流路(経路)を制御している。他の幾つかの実施形態では、1つのバルブにより被バイパス部52を通過する排気ガスFeの流量、および、排気バイパス通路8を通過する排気ガスFeの流量を制御しても良い。例えば、排気バイパス通路8の入口にバタフライ弁を設けても良いし、被バイパス部52と排気バイパス通路8の接続箇所に三方弁を設けても良い。また、車両への実装時に前段酸化触媒56から直線的に伸びる被バイパス部52または排気バイパス通路8にバルブを設けても良い。
SCR触媒は、周知の通り、NOxの浄化に用いられる触媒であり、前段酸化触媒56とSCR触媒7の間には、還元剤として尿素水を排気通路5に噴射するための噴射ノズル72が設けられている。図1の例示のように、噴射ノズル72は、前段酸化触媒56とSCR触媒7の間であって、被バイパス部52および排気バイパス通路8の下流に設けられても良い。また、図1の例示のように、SCR触媒7の下流には後段酸化触媒58が設置されても良い。なお、図1の例示では、還元剤を噴射する噴射ノズル72はバルブ制御部9によって制御されているが、これには限定されず還元剤の噴射は別の制御部によって制御されても良い。
なお、排気通路5にはEGR通路6が設けられても良く、排気ガスFeを給気通路3へ再循環させることで、燃焼温度を低下させ、NOxなどの排出量を低減させることができる。図1の例示では、EGR通路6は排気通路5のタービン4T上流から分岐され、給気通路3のスロットルバルブ34の下流に接続されている。また、EGR通路6には、EGRクーラ62やEGR弁64が設けられており、再循環される排気ガスFe(EGRガスFr)の冷却やEGRガスFrの環流量が調整可能となっている。なお、図1の例示では、EGR通路6はタービン4Tの上流とコンプレッサ4Cの下流に設けられているが(HPL−EGR)、LPL−EGRや、その他の態様によってEGR通路6の接続がなされていても良い。
上記の構成によれば、排気通路5には、SCR触媒7の上流側において排気バイパス通路8が設けられており、排気ガスFeは、バルブ装置54によって、排気バイパス通路8によって迂回される排気通路の部分(被バイパス部52)と排気バイパス通路8のうちの少なくとも一方を通過した後に、SCR触媒7に到達する。この際、排気バイパス通路8を通過する排気ガスFeは、排気バイパス通路8に設けられる熱容量体82によって熱交換された後に、SCR触媒7に到達する。このため、SCR触媒7に到達する排気ガスFeの排ガス温度Teを調整することができ、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
幾つかの実施形態では、内燃機関のNOx浄化システム1は、図1に示されるように、前段酸化触媒56を通過し、SCR触媒7または熱容量体82に流れる排気ガスFeの排ガス温度Teを検知可能な温度センサなどの排気温度検知手段5sと、SCR触媒7の上流の排気ガスFeの温度またはSCR触媒7の温度である触媒温度Tsを検知可能な温度センサなどの触媒温度検知手段7sと、熱容量体82の下流の排気ガスFeの温度または熱容量体82の温度である物体温度Tcを検知可能な物体温度検知手段82sと備えている。そして、バルブ制御部9は、排気温度検知手段5sにより検知される排ガス温度Te、触媒温度Ts、および、物体温度Tcに基づいて、被バイパス部52と排気バイパス通路8とのうちの少なくとも一方を排気ガスFeが通過するようにバルブ装置54の制御を行うように構成されている。
図3は、幾つかの実施形態における、バルブ制御部9の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、バルブ制御部9は、排ガス温度取得部91と、触媒温度取得部92と、物体温度取得部93と、制御実行部95とを備える。
そして、排ガス温度取得部91は排気温度検知手段5sと接続されており、排気温度検知手段5sから入力される排ガス温度Teを取得する。同様に、触媒温度取得部92は触媒温度検知手段7sと接続されており、触媒温度検知手段7sから入力されるSCR触媒7の触媒温度Tsを取得する。また、物体温度取得部93は物体温度検知手段82sと接続されており、物体温度検知手段82sから入力される物体温度Tcを取得する。
また、制御実行部95はバルブ装置54と接続されており、バルブ装置54を制御する。具体的には、バルブ制御部9の内部において、制御実行部95は、排ガス温度取得部91と触媒温度取得部92と物体温度取得部93とそれぞれ接続されている。そして、これらの機能部から入力される排ガス温度Teと触媒温度Tsと物体温度Tcに基づいて、被バイパス部52と排気バイパス通路8とのうちの少なくとも一方を排気ガスFeが通過するようにバルブ装置54の制御を行う(図2参照)。
バルブ制御部9と、各温度検知手段(5s、7s、82s)やバルブ装置54との接続については、CANを含む車載ネットワークなどの通信ネットワークで接続されても良いし、それぞれが直接接続されても良い。
なお、図1の例示では、排気温度検知手段5sは、排気バイパス通路8および被バイパス部52と前段酸化触媒56との間に1つ設けられている。他の幾つかの実施形態では、バルブ装置54の上流に設けられている。
物体温度検知手段82sについては、図1の例示では、熱容量体82に設けられている。他の幾つかの実施形態では、排気バイパス通路8において熱容量体82とSCR触媒7の間に設けられることで、熱容量体82から流出する直後の排ガス温度Teを検知し、これを熱容量体82の物体温度Tcとしても良い。
また、触媒温度検知手段7sについては、図1の例示では、触媒温度検知手段7sは、SCR触媒7に設けられている。他の幾つかの実施形態では、排気通路5において、排気バイパス通路8および被バイパス部52の下流側の合流部とSCR触媒7の間に設けられることで、SCR触媒7の直前の排ガス温度Teを検知し、これをSCR触媒7の触媒温度Tsとしても良い。
上記(2)の構成によれば、排気ガスFeは、排ガス温度Te、触媒温度Tsと物体温度Tcに基づいて通過する経路が決定される。このため、SCR触媒7に到達する排気ガスFeの排ガス温度Teを、触媒温度Tsと排ガス温度Teと物体温度Tcに基づいてSCR触媒7の活性化にとって好ましい温度に適切に調整することができ、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
図4は、幾つかの実施形態における、バルブ制御部9による、排気温度検知手段5sにより検知される排ガス温度Te、触媒温度Ts、および、物体温度Tcに基づく、排気ガスFeの通過する経路の制御フローを示す図である。そして、バルブ制御部9には、この制御を行うために、排気温度検知手段5sにより検知される排ガス温度Te、触媒温度Ts、物体温度Tcが入力される(図3参照)。また、バルブ制御部9は、触媒温度Tsに対する目標温度である目標触媒温度Tstを保持している。例えば、図3の例示にように、バルブ制御部9は目標触媒温度管理部94を備えており、目標触媒温度管理部94と制御実行部95とが接続されることによって、目標触媒温度管理部94に保持されている目標触媒温度Tstが制御実行部95に入力されるよう構成されても良い。この目標触媒温度TstはSCR触媒7が活性化される温度であり、例えば、200degCであっても良い。また、目標触媒温度Tstは予め設定されても良い。
図4に例示されるように、ステップS41において、制御実行部95において、排気温度検知手段5sからの排ガス温度TeとSCR触媒7の触媒温度Tsを取得し、両者を比較する。この比較の結果、排気温度検知手段5sからの排ガス温度Teが触媒温度Ts以上の場合には、ステップS42において、目標触媒温度TstとSCR触媒7の触媒温度Tsを比較する。この比較の結果、SCR触媒7の触媒温度Tsが目標触媒温度Tst以下の場合には、ステップS43において、制御実行部95は、排気ガスFeが被バイパス部52を通過するようにバルブ装置54を制御する(図2のS21〜S22参照)。つまり、この場合には、触媒機能の活性化のためにSCR触媒7の暖機が必要な状況である。そして、このように制御することで、触媒温度Tsに比較して相対的に高温である排気ガスFeが被バイパス部52を通過してSCR触媒7に直接到達させられる。このため、SCR触媒7をNOx浄化性能が高くなる目標触媒温度Tstまで迅速に昇温させることを優先して行うことができ、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
逆に、上記のステップS42での比較において、SCR触媒7の触媒温度Tsが目標触媒温度Tstよりも大きい場合には、ステップS44において、制御実行部95は、排気ガスFeが被バイパス部52と排気バイパス通路8の両方を通過するようにバルブ装置54を制御する(図2のS25〜S26参照)。つまり、この場合には、SCR触媒7は既に活性化されているので、触媒温度Tsに比較して相対的に高温である排気ガスFeを排気バイパス通路8にも通過させることで、排気ガスFeの熱を熱容量体82に与えるようバルブ装置54は制御される。このため、高温の排気ガスFeによって必要以上にSCR触媒7が昇温させることを回避する(熱劣化防止)と共に、排気バイパス通路8を排気ガスFeが通過することによって熱容量体82を昇温させることがきる。すなわち、下記に説明するような、低温の排気ガスFeが熱容量体82によって昇温させる制御のために備えることができる。
一方、上記のステップS41における比較の結果、排気温度検知手段5sからの排ガス温度Teが触媒温度Tsより小さい場合には、ステップS45において、排気温度検知手段5sからの排ガス温度Teと熱容量体82の物体温度Tcを比較する。この比較の結果、排気温度検知手段5sからの排ガス温度Teが熱容量体82の物体温度Tc以下の場合には、ステップS46において、排気ガスFeが排気バイパス通路8のみを通過するようにバルブ装置54を制御する(図2のS23〜S24参照)。つまり、この場合には、排気ガスFeの排ガス温度TeはSCR触媒7の触媒温度Tsおよび熱容量体82の物体温度Tcよりも低く、このような低温の排気ガスFeがSCR触媒7に到達することにより、SCR触媒7が活性化される温度よりも低い温度に冷却されるおそれがある。ところが、SCR触媒7の温度よりも低温の排気ガスFeは、より高温の熱容量体82の設置される排気バイパス通路8を通過するように制御されるので、熱容量体82により排ガス温度Teが昇温される。このように、低温の排気ガスFeがSCR触媒7を通過することによってSCR触媒7の触媒温度Tsが低下することを回避することができ、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
逆に、上記のステップS45における比較の結果、排気温度検知手段5sからの排ガス温度Teが熱容量体82の物体温度Tcより大きい場合には、図4のステップS47において、排気ガスFeが被バイパス部52と排気バイパス通路8の両方を通過するようにバルブ装置54を制御しても良い(図2のS25〜S26参照)。この場合には、触媒温度Tsが目標触媒温度Tstより高い場合など、排気ガスFeによる触媒温度Tsの変化を抑制することができる。
上記に説明されるようにバルブ装置54が制御されることにより、図5A〜図5Bに例示するような運転条件に応じたSCR触媒7によるNOx浄化性能の安定化がなされる。
図5A〜5Bは、幾つかの実施形態における、エンジン2の運転条件の変化に伴う内燃機関のNOx浄化システム1の動作の時間推移を説明する図である。また、図5Aは、エンジン2の運転条件の変化に伴う排気温度検知手段5sからの排ガス温度Te、SCR触媒7の触媒温度Ts、熱容量体82の物体温度Tcの時間推移を説明する図であり、図5Bは、排気ガスFeの通過する経路を図5Aに対応して説明する図である。
時刻t1において、エンジン2は冷間始動(cold start)されており、この時から、エンジン2の燃焼ガスである排気ガスFeが排気通路5を通過するようになる。このため、排気ガスFeの温度は、時刻t0より前の温度(常温)よりも高温として検知されている(図5Aの細実線)。また、冷間始動時のため、時刻t1においては、SCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Te以下で、かつ、目標触媒温度Tst以下となっており、排気ガスFeが被バイパス部52を通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS43参照)。このため、排気ガスFeは被バイパス部52のみ通過し、排気バイパス通路8は通過しない(図5B)。また、時刻t1以降は、被バイパス部52を経由する高温の排気ガスFeによってSCR触媒7の温度は順次上昇をし続け(図5Aの太実線)、逆に、排気ガスFeが遮断される排気バイパス通路8に設けられた熱容量体82の物体温度Tcは変化しない(図5Aの破線)。
時刻t2において、エンジン2の負荷の上昇が始まっており、これに伴って排ガス温度Teは上昇し始めている。また、被バイパス部52を経由する排気ガスFeによって触媒温度Tsも上昇し始めている。図5Aの例示では、この時も、SCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Te以下で、かつ、目標触媒温度Tst以下であるため、排気ガスFeが被バイパス部52を通過するようにバルブ装置54は制御されている。また、同様に、物体温度Tcの変化もない。
そして、時刻t3において、時刻t2からの排ガス温度Teの上昇に伴って上昇しているSCR触媒7の触媒温度Tsは、図5Aの例示では、目標触媒温度Tstよりも高温となっている。つまり、時刻t3から、SCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Te以下で、かつ、目標触媒温度Tstよりも高温となっている。このため、排気ガスFeが被バイパス部52および排気バイパス通路8の両方を通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS44参照)。また、排気ガスFeが排気バイパス通路8を通過することにより、時刻t3において、熱容量体82の物体温度Tcは上昇を始めると共に、触媒温度Tsの上昇速度は、被バイパス部52を経由した排気ガスFeの流量の減少および排気バイパス通路8における低温側の熱容量体82との熱交換によって排ガス温度Teが低下された排気ガスFeによって低減されている。
その後、図5Aの例示では、上述の状態で上昇していた排ガス温度Teは一定となっている。これと共に、これより進んだ時刻t4において、上昇を続けていた触媒温度Tsと物体温度Tcは、目標触媒温度Tstより高温であって排ガス温度Teよりも低温の状態であって、物体温度Tcよりも触媒温度Tsが大きい状態を維持している。このため、排気ガスFeの経路も維持されたまま、時刻t5に至っている。
時刻t5においてエンジン2の負荷ダウンが始まり、これに伴って排ガス温度Teも下降し始めている。そして、エンジン負荷ダウンに伴って排ガス温度Teは急激に下降する一方で、排気ガスFeよりも熱容量が大きいSCR触媒7の触媒温度Tsや熱容量体82の物体温度Tcの温度変化は小さく、図5Aの例示では、時刻t6において排ガス温度Teは触媒温度Tsよりも小さくなっている。つまり、時刻t6からSCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Teよりも低温で、かつ、物体温度Tcよりも高温となっている。このため、引き続き、排気ガスFeが被バイパス部52および排気バイパス通路8の両方を通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS47参照)。
そして、エンジン2の負荷ダウンに伴って低下し続けていた排ガス温度Teは、図5Aの例示では、時刻t7において物体温度Tc以下に達している。つまり、時刻t7からSCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Teよりも低温で、かつ、排ガス温度Teは物体温度Tc以下となっている。このため、排気ガスFeが排気バイパス通路8のみを通過するようにバルブ装置54は制御されており(図4のS46参照)、排気ガスFeは排気バイパス通路8のみ通過し、被バイパス部52は通過していない(図5B)。
また、排ガス温度Teは、時刻t7以降急激な温度下降を続けることで目標触媒温度Tstを越えて大きく低温となるが、高温である熱容量体82(図5Aの例示では目標触媒温度Tstよりも高温)を通過することになり、昇温される。このように、熱容量体82により昇温された排気ガスFeがSCR触媒7に到達するためSCR触媒7の触媒温度Tsは急激に低下することなく、図5Aの例示では、触媒温度Tsは、物体温度Tcと共に、時刻t8におけるエンジン2の停止されるまで目標触媒温度Tstよりも高温側にあり、活性化し続けている。
そして、時刻t8で停止したエンジン2は、時刻t9において再起動(hot start)されている。時刻t8から時刻t9の間はエンジン2からの燃焼ガスはなく、排気温度検知手段5sに排気ガスFeは通過しないため、排ガス温度Teは常温に近い状態で検出されている。同様に、この間には、SCR触媒7と熱容量体82にも排気ガスFeは通過しないため、物体温度Tcよりも触媒温度Tsが高温である関係を維持しながらゆるやかに下降を続けている。なお、図5Aの例示では、再起動に備えてバルブ装置54の制御状態は維持されているが、冷間始動の場合に備えた制御状態にされても良い。
時刻t9において、上述の通り、エンジン2の再起動されており、この再起動によって排気ガスFeがSCR触媒7を再び通過するようになる。図5Aの例示では、時刻t9においては、触媒温度Tsは目標触媒温度Tst付近にあると共に、物体温度Tcも触媒温度Tsよりも低温側において目標触媒温度Tst付近にある。つまり、時刻t9において、SCR触媒7の触媒温度Tsは排ガス温度Teよりも低温で、かつ、排ガス温度Teは物体温度Tc以下となっているため、引き続き、排気ガスFeは排気バイパス通路8のみを通過するようにバルブ装置54は制御されている(図5B)。時刻t9以降においてエンジン2の負荷は再び上昇するが、このバルブ装置54の状態は時刻t10まで維持されている。
そして、時刻10において、図5Aの例示では、エンジン2の負荷上昇に伴って排ガス温度Teが上昇した結果、排ガス温度Teは物体温度Tcよりも高温となっている。つまり、排ガス温度TeはSCR触媒7の触媒温度Tsよりも低温ではあるが、熱容量体82の物体温度Tcよりも高温となっている。このため、被バイパス部52および排気バイパス通路8の両方を排気ガスFeが通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS47参照)。
また、その後の時刻t11において、図5Aの例示では、排ガス温度Teがさらに上昇を続けた結果、排ガス温度Teは触媒温度Ts以上となるが、目標触媒温度Tst以下となっている。このため、被バイパス部52のみに排気ガスFeが通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS43参照)。すなわち、SCR触媒7の昇温が優先されている。
時刻t12において、排ガス温度Teがさらに上昇を続けた結果、排ガス温度Teは触媒温度Ts以上のまま、SCR触媒7が昇温され目標触媒温度Tstよりも高温となっている。このため、被バイパス部52および排気バイパス通路8の両方を排気ガスFeが通過するようにバルブ装置54は制御されている(図4のS44参照)。すなわち、熱容量体82の昇温が再び開始されている。
上述した図5A〜図5Bのように、エンジン2の運転条件に応じてバルブ装置54を制御することにより、排気ガスFeは、排ガス温度Te、触媒温度Tsと物体温度Tcに基づいて通過する経路が決定される。このため、SCR触媒7に到達する排気ガスFeの排ガス温度Teを、触媒温度Tsと排ガス温度Teと物体温度Tcに基づいてSCR触媒7の活性化にとって好ましい温度に適切に調整することができ、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。
すなわち、SCR触媒7により冷間始動時に被バイパス部52のみ排気ガスFeを通過させることで、SCR触媒7の触媒温度Tsを迅速に所定の温度(SCR活性温度)に昇温させている。また、SCR触媒7が所定の温度に達した後は、排気バイパス通路8と被バイパス部52の両方に排気ガスFeを通過させ、熱容量体82を暖めるようにしている。そして、エンジン2の運転条件の変化に応じて排気ガスFeの通過する経路を制御することで、SCR触媒7が所定の温度以上あるいは所定の温度付近に維持されるように制御している。このように、SCR触媒7の活性化を維持し、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化させている。
幾つかの実施形態では、内燃機関のNOx浄化システム1は、アンモニアスリップ(NH3スリップ)を抑制するための機能を備えている。
一般に、SCR触媒7はアンモニア(NH3)を吸着させることができるが、NH3の最大吸着量は触媒温度Tsに大きく影響される。具体的には、SCR触媒7が低温であるほど大量のNH3をSCR触媒7に吸着させることができるが、高温だと脱離速度が大きく上昇するためSCR触媒7におけるNH3の吸着量は大きく低下する。このため、急激なSCR触媒7の昇温が実行される場合など触媒温度Tsが瞬時に高温となる場合は、低温時に蓄えていたNH3がSCR触媒7から脱離するため、エンジン2の排気通路5から多くのNH3を車外などの系外に排出してしまうリスクがある。特に、No−DPFのエンジン2では、DPFという一種の温度干渉物体がなく、上記リスクの懸念が高まる。
このため、幾つかの実施形態では、図6に示されるように、バルブ制御部9は、アンモニア量推定部96と、制限吸着量取得部97と、目標吸着量取得部98と、昇温抑制実行判定部99とを備えている。なお、排気ガスFeの排ガス温度Te、SCR触媒7の触媒温度Ts、熱容量体82の物体温度Tcは、それぞれ排気温度検知手段5sに接続される排ガス温度取得部91と、触媒温度検知手段7sに接続される触媒温度取得部92と、物体温度検知手段82sに接続される物体温度取得部93によりバルブ制御部9に入力されも良い。また、制御実行部95には、上記の排ガス温度Te、触媒温度Ts、物体温度Tc、および、目標触媒温度管理部94からの目標触媒温度Tstが入力され、制御実行部95はこれらの入力に基づいてバルブ装置54を制御しても良い(図3参照)。
アンモニア量推定部96は、SCR触媒7に吸着されるアンモニア量の推定値である推定吸着量Qcを推定可能に構成されている。アンモニア(NH3)の推定吸着量Qcを求めるにあたっては種々の方法を用いても良い。例えば、尿素水の噴射量(NH3供給量)と排気通路5におけるSCR触媒7の排気ガスFeの出入口でのNOxの変化量(NH3消費量)を用いて、その差の積算値をアンモニアの推定吸着量Qcとしても良い。なお、図6の例示では、アンモニア量推定部96には触媒温度Tsは入力されていないが、推定に用いる場合にはアンモニア量推定部96に触媒温度Tsが入力されても良い。
制限吸着量取得部97は、SCR触媒7に吸着されるアンモニア量の触媒温度Tsに相関した限度値を示す制限吸着量Qlを取得可能に構成されている。また、目標吸着量取得部98は、SCR触媒7に吸着させるアンモニア量の触媒温度Tsに相関した吸着量の目標値を示す目標吸着量Qtを取得可能に構成されている。そして、上述の通り、SCR触媒7に吸着されるNH3の量は温度に依存するため、制限吸着量取得部97と目標吸着量取得部98には触媒温度Tsが入力され、入力される触媒温度Tsに相関する制限吸着量Qlと目標吸着量Qtがそれぞれ取得される。
制限吸着量Qlは、言い換えると、SCR触媒7に吸着されているアンモニア量の離脱のリスクを示すものであり、設定したいリスクの度合い(NH3離脱の可能性や離脱する可能性のあるNH3量)に応じて適宜設定することができる。また、目標吸着量Qtは、SCR触媒7に吸着させるNH3の目標量は最大吸着量の温度依存性に従い、低温では多く、高温では小さくなるよう適宜設定することができる。
昇温抑制実行判定部99は、SCR触媒7の触媒温度Tsの昇温速度Vsを抑制するための昇温抑制処理の実行を判定する。具体的には、SCR触媒7におけるNH3の推定吸着量Qc、制限吸着量Ql、目標吸着量Qt、排気温度検知手段5sにより検知される排ガス温度Te、および物体温度Tcに基づいて、昇温抑制処理の実行の必要性を判断する。このように、昇温抑制処理の実行が必要と判断される場合には、昇温抑制処理によってSCR触媒の昇温が抑制されるので、NH3スリップを抑制することができる。
幾つかの実施形態では、昇温抑制実行判定部99による判定は、図7に示されるように行われる。すなわち、図7は、NH3スリップ抑制のための昇温抑制処理(制御)の実行判定フローを説明する図である。
図7の前提として、バルブ制御部9は、昇温抑制処理の実行許可と実行時禁止を管理している。例えば、昇温抑制モードのON(実行許可)、OFF(実行禁止)によって管理しても良い。また、図7に例示されるような昇温抑制処理(制御)の実行判定フローは繰り返し行われる。例えば、周期的や定期的に行っても良い。また、エンジン2の運転条件の変化を契機(トリガ)として行っても良く、トリガを受けてから周期的や定期的に行っても良い。
また、図7の例示では、昇温抑制処理が実行禁止とされているところから開始されている。昇温抑制処理が実行禁止されている場合とは昇温抑制処理が不要な場合を意味しており、この間には昇温抑制処理は行われない。例えば、エンジン2の冷間始動時など、SCR触媒7の触媒温度Tsと推定吸着量Qcが低い場合などが該当する。
図7のステップS71において、SCR触媒7に吸着されているNH3の推定吸着量Qcを取得される。また、ステップS72において昇温抑制処理の実行が許可されているか判断される。上述の通り、昇温抑制処理の実行は実行禁止(昇温抑制モードOFF)で始まっているので、ステップS73に移る。
ステップS73では、SCR触媒7のNH3の制限吸着量Qlが取得される。また、ステップS74において、取得された推定吸着量Qcと制限吸着量Qlとを比較することで昇温抑制処理の必要性が判断される。すなわち、推定吸着量Qcが制限吸着量Ql以上の場合には、NH3スリップのリスクが高いことになる。
そして、ステップS75において昇温抑制処理の実行可否が判断される。すなわち、ステップS75では、排気ガスFeの排ガス温度Teが熱容量体82の物体温度Tc以上であるか判断される。そして、排ガス温度Teが物体温度Tc以上の場合には、排気ガスFeをより低温の熱容量体82を通過させることで、排気ガスFeの排ガス温度Teを熱交換により低下させることができるので、ステップS76の昇温抑制処理に進む。このように昇温抑制処理の実行を判定すれば、推定吸着量Qcが制限吸着量Ql以上の場合において、排ガス温度Teが物体温度Tc以上の場合には、SCR触媒7の昇温速度Vsが急速と判定され、SCR触媒7に対する昇温抑制処理が実行されるよう判定される。これによって、NH3スリップを抑制するための昇温抑制処理を実行することができる。
ステップS76において、昇温抑制実行判定部99は、昇温抑制処理を実行禁止から実行許可に変更すると共に(昇温抑制モードのON)、昇温抑制処理として、制御実行部95は、排気ガスFeが排気バイパス通路8のみを通るようにバルブ装置54を制御する。その後に、昇温抑制処理の実行判定フローは終了する。なお、昇温抑制実行判定部99は制御実行部95に対して昇温抑制処理を指示するよう構成しても良く、この場合には、指示を受けた制御実行部95が昇温抑制処理を実行する。あるいは、制御実行部95は昇温抑制処理の実行許可の変更(昇温抑制モードの変更)を監視しており、実行許可(昇温抑制モードのON)になることを検知することによって、制御実行部95は昇温抑制処理を開始しても良い。このような制御によれば、昇温抑制処理によって相対的に高温の排気ガスFeは、相対的に低温の熱容量体82を通過することによって温度が低下された後に、SCR触媒7に到達する。このため、SCR触媒の昇温速度Vsを低下させることができ、NH3スリップを抑制することができる。
一方、上記のステップS74で判断において推定吸着量Qcが制限吸着量Qlより小さい場合や、上記のステップS75での判断において排ガス温度Teが物体温度Tcより小さい場合には、昇温抑制処理は行われず、昇温抑制処理の実行判定フローは終了する。
この昇温抑制処理の実行判定フローは、上述の通り繰り返し実行されている。このため、
次のタイミングにおいて、再度、ステップS71から昇温抑制処理の実行判定フローが開始され、ステップS71においてSCR触媒7に吸着されているNH3の推定吸着量Qcが取得され、ステップS72において昇温抑制処理が実行許可(昇温抑制モードON)であるか判定される。今回は、前回の昇温抑制処理の実行判定により昇温抑制処理が実行許可(昇温抑制モードON)になっているため、ステップS77に進むことになる。そして、ステップS77において、SCR触媒7のNH3の目標吸着量Qtを取得される。また、ステップS78において昇温抑制処理の実行許可(昇温抑制モードON)を継続するか、あるいは、停止するかが判断される。
すなわち、ステップS78において推定吸着量Qcと目標吸着量Qtを比較し、その結果、推定吸着量Qcが目標吸着量Qt以下である場合には、ステップS79において、昇温抑制処理の実行禁止(昇温抑制モードOFF)にする。すなわち、この条件に一致する場合には、SCR触媒7の急激な昇温が収まったと判断することで、昇温抑制処理を停止する。これによって、制御実行部95による昇温抑制処理は解除されるので、バルブ制御部9(制御実行部95)によってバルブ装置54は、例えば図4に例示されるような通常制御フローに従って制御される。このように判定することにより、昇温抑制処理の実行中において、推定吸着量Qcが目標吸着量Qt以下の場合には、SRC触媒7の急激な昇温が収まったと判断することで昇温抑制処理を停止し、通常制御フローに戻る。これによって、NH3スリップを抑制しながら、SCR触媒7によるNOx浄化性能を安定化さることができる。その後、昇温抑制処理の実行判定フローは終了する。
なお、昇温抑制実行判定部99は制御実行部95に対して昇温抑制処理の停止を指示するよう構成しても良く、この場合には、指示を受けた制御実行部95が昇温抑制処理の停止を実行する。あるいは、制御実行部95は昇温抑制処理の実行許可の変更(昇温抑制モードの変更)を監視しており、実行禁止(昇温抑制モードのOFF)になることを検知することによって、制御実行部95は昇温抑制処理を停止しても良い。
一方、上記のステップS78における推定吸着量Qcと目標吸着量Qtとの比較の結果、推定吸着量Qcが目標吸着量Qtより大きい場合には、そのまま昇温抑制処理の実行判定フローは終了する。すなわち、SCR触媒7には目標量以上にNH3が吸着していることになるため、昇温抑制処理の実行許可(昇温抑制モードON)を継続している。
上記に説明したようにバルブ装置54が制御されることにより、図8A〜図8Bに例示すように、NH3スリップは抑制される。すなわち、図8Aは、幾つかの実施形態における、昇温抑制処理に伴うSCR触媒7と推定吸着量Qcの時間推移を説明する図であり、図8Bは、排気ガスの通過する経路を図8Aに対応して説明する図である。
図8Aの記号について説明すると、図8Aでは、太実線でNH3の推定吸着量Qcが示されている。そして、この太実線上には複数の丸印が表記されているが、この丸印は、上記の昇温抑制処理の実行判定フローが実行されるタイミング(以下「チェックポイント」)を示している。また、NH3の制限吸着量Qlは破線で示され、目標吸着量Qtは一点鎖線で示されている。SCR触媒7の触媒温度Tsは細実線で示されている。
また、図8Aでは、全時間帯を通して、触媒温度Tsは目標触媒温度Tstに達していないと共に、排ガス温度Teは触媒温度Tsより高温である状態となっている。
図8Aの例示では、時刻t1はチェックポイントC1に一致している。時刻t1より前は、推定吸着量Qc≦目標吸着量Qtの状態にあり、このため、尿素水などの還元剤が噴射ノズル72から噴射されている状態にある。そして、チェックポイントC1において、推定吸着量Qc>目標吸着量Qtの状態への変化が検知されており、この状態の検知によって、噴射ノズル72からの尿素水などの還元剤の噴射は停止されている(図8B)。つまり、時刻t1以後は、尿素水は供給されないままSCR触媒7においてNOxの分解反応が行われている状況であり、推定吸着量Qcは緩やかに低下している(図8A)。一方、上記に説明したように、排ガス温度Teは触媒温度Ts以上であり、触媒温度Tsは目標触媒温度Tst以下であるため、排気ガスFeが被バイパス部52のみ通過するようにバルブ装置54は制御されている(図8B)。
また、時刻t1以降、排ガス温度Teに伴って触媒温度Tsは急激に上昇しており、これに伴って制限吸着量Qlと目標吸着量Qtは低下されている。そして、時刻t2において、推定吸着量Qcは制限吸着量Qlに一致しているが、時刻t3におけるチェックポイントC2において推定吸着量Qcが制限吸着量Ql以上であることが検知されている(図7のS74のYes)。このため、時刻t3において昇温抑制処理が実行されている(図7のS76参照)。つまり、排気バイパス通路8のみに排気ガスFeが通過するようバルブ装置54が制御されている(図8B)。
すなわち、図4に例示されるような通常制御フローの場合には、排ガス温度Teは触媒温度Ts以上であり、触媒温度Tsは目標触媒温度Tst以下であるため、排気ガスFeは被バイパス部52のみ通過するようにバルブ装置54は制御されることになる。ところが、図8Bの例示では、昇温抑制処理が実行されることによって、排気ガスFeは排気バイパス通路8のみを通過するようバルブ装置54は制御されている。
そして、時刻t3以降においては、排気バイパス通路8のより低温である熱容量体82を排気ガスFeが通過することにより、排ガス温度Teは熱交換によって低下され、この低下された排気ガスFeがSCR触媒7を通過する。このため、時刻t3以降においての昇温速度Vsaは、触媒温度Tsは時刻t1から時刻t3の間での昇温速度Vsbよりも小さい速度で昇温されている。また、昇温速度Vsが小さくなることに伴って、図8Aの例示においては、目標吸着量Qtと制限吸着量Qlも緩やかに低下されており、NOxの分解により減少し続ける推定吸着量Qcは、時刻t4において、制限吸着量Qlを下回るまでに低下している。
図8Aの例示では、推定吸着量Qcが低下を続けた結果、時刻t5において、推定吸着量Qcは目標吸着量Qt以下となっており(推定吸着量Qc≦制限吸着量Ql)、チェックポイントC3(時刻t5)においてこの状況がバルブ制御部9によって検知される(図7のS78参照)。このため昇温抑制処置の実行が停止され、バルブ制御部9による通常制御フローに戻る(図7のS79参照)。また、バルブ制御部9が通常制御フローに戻るため、排気ガスFeは被バイパス部52のみを通過するようにバルブ装置54は制御されている。なお、図8Aの例示では、時刻t5以降に尿素水噴射が開始されているが、これには限定されず、尿素水噴射は停止したままでも良い。また、Vsbは0やマイナスの値であっても良いし、昇温抑制処理の前後でVsaとVsbはそれぞれ一定でなくても良いことは当然である。このように、昇温抑制処理の実行が必要と判断される場合には、昇温抑制処理によってSCR触媒7の昇温が抑制されるので、NH3スリップを抑制することができる。
幾つかの実施形態では、内燃機関のNOx浄化システム1は、熱容量体82は消音装置からなっている。
一般に、エンジン2の低負荷運転時は、点火による着火遅れが長いためシリンダの筒内圧変化が大きく、騒音が高くなる傾向にある。しかし、このような構成によれば、排気ガスFeは、低負荷運転時など排ガス温度Teが低い場合には、消音装置(熱容量体82)が設置される排気バイパス通路8を通過するため、消音装置(熱容量体82)により騒音を抑制することができる。また、高負荷運転時など排ガス温度Teが高い場合には、排気通路5の消音装置(熱容量体82)のない被バイパス部52を通過するため、消音装置(熱容量体82)の通過による抵抗を無くすことができるため、排気抵抗が低減する。これによって、エンジン2のポンピング損失を低減することができると共に、燃費を改善することができる。
また、幾つかの実施形態では、内燃機関のNOx浄化システム1は、排気通路5におけるSCR触媒7の下流側に設けられる排気音を消音するための第2の消音装置をさらに備え、消音装置(熱容量体82)は、SCR触媒7の下流の第2の消音装置よりも低周波域における排気音の消音に適するように構成されている。
このような構成によれば、消音装置(熱容量体)により効果的に騒音を抑制することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
また、本発明は、ディーゼルエンジンなどの内燃機関全般に適用できると共に、例えば、車両、船舶、発電用エンジンなどに適用できる。
1 内燃機関のNOx浄化システム
2 エンジン
22 コモンレールシステム
3 給気通路
32 インタークーラ
34 スロットルバルブ
4 過給機
41 軸
4C コンプレッサ
4T タービン
5 排気通路
52 被バイパス部
54 バルブ装置
54a 第1バルブ
54b 第2バルブ
56 前段酸化触媒
5s 排気温度検知手段
58 後段酸化触媒
59 第2の消音装置
6 EGR通路
62 EGRクーラ
64 EGR弁
7 SCR触媒
72 噴射ノズル
74 還元剤噴射部
7s 触媒温度検知手段
8 排気バイパス通路
82 熱容量体
82s 物体温度検知手段
9 バルブ制御部
91 排ガス温度取得部
92 触媒温度取得部
93 物体温度取得部
94 目標触媒温度管理部
95 制御実行部
96 アンモニア量推定部
97 制限吸着量取得部
98 目標吸着量取得部
99 昇温抑制実行判定部

Qc 推定吸着量Qc
Ql 制限吸着量Ql
Qt 目標吸着量Qt
Vs SCR触媒の昇温速度Vs
Vsa 昇温速度(昇温抑制処理の実行後)
Vsb 昇温速度(昇温抑制処理の実行前)

Fi 吸入空気
Fr EGRガス
Fe 排気ガス

Te 排気ガスの温度
Tc 熱容量体の温度
Ts SCR触媒の温度
Tst SCR触媒の目標温度

Claims (11)

  1. DPFを有しない内燃機関のNOx浄化システムであって、
    内燃機関からの排気ガスを排出するための排気通路と、
    前記排気通路に設けられるSCR触媒と、
    前記排気通路における前記SCR触媒の上流側に設けられる前段酸化触媒と、
    前記排気通路における前記前段酸化触媒と前記SCR触媒との間の少なくとも一部である被バイパス部を迂回するように設けられる排気バイパス通路と、
    前記被バイパス部を通過する前記排気ガスの流量、および前記排気バイパス通路を通過する前記排気ガスの流量を制御するためのバルブ装置と、
    前記バルブ装置を制御するためのバルブ制御部と、
    前記排気バイパス通路に設けられる所定の熱容量を有する熱容量体であって、前記排気ガスを浄化する機能を有する物体以外からなる熱容量体と、
    を備えることを特徴とする内燃機関のNOx浄化システム。
  2. 前記前段酸化触媒を通過し、前記SCR触媒または前記熱容量体に流れる前記排気ガスの排ガス温度を検知可能な排気温度検知手段と、
    前記SCR触媒の上流の前記排気ガスの温度または前記SCR触媒の温度である触媒温度を検知可能な触媒温度検知手段と、
    前記熱容量体の下流の前記排気ガスの温度または前記熱容量体の温度である物体温度を検知可能な物体温度検知手段と、をさらに備え、
    前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度、前記触媒温度、および前記物体温度に基づいて、前記被バイパス部と前記排気バイパス通路とのうちの少なくとも一方を排気ガスが通過するように前記バルブ装置の制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  3. 前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度以上の場合において、前記触媒温度が目標触媒温度以下の場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記被バイパス部を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  4. 前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度よりも低い場合において、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記物体温度以下の場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記排気バイパス通路を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  5. 前記バルブ制御部は、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記触媒温度以上の場合において、前記触媒温度が目標触媒温度よりも高い場合には、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスが、前記被バイパス部および前記排気バイパス通路の両方を通過するように前記バルブ装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  6. 前記バルブ制御部は、
    前記SCR触媒に吸着されるアンモニア量の推定値である推定吸着量を推定可能なアンモニア量推定部と、
    前記SCR触媒に吸着される前記アンモニア量の前記触媒温度に相関した限度値を示す制限吸着量を取得可能な制限吸着量取得部と、
    前記SCR触媒に吸着される前記アンモニア量の前記触媒温度に相関した吸着量の目標値を示す目標吸着量を取得可能な目標吸着量取得部と、
    前記推定吸着量、前記制限吸着量、前記目標吸着量、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度、および前記物体温度に基づいて、前記SCR触媒の昇温速度を抑制するための昇温抑制処理の実行を判定可能な昇温抑制実行判定部と、を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  7. 前記昇温抑制実行判定部は、前記推定吸着量が前記制限吸着量以上の場合において、前記排気温度検知手段により検知される前記排ガス温度が前記物体温度以上の場合には、前記昇温抑制処理の実行を判定するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  8. 前記昇温抑制処理は、前記前段酸化触媒を通過する前記排気ガスの全量が前記排気バイパス通路を通るように前記バルブ装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  9. 前記昇温抑制実行判定部は、前記昇温抑制処理の実行中において、前記推定吸着量が前記目標吸着量以下の場合には、前記昇温抑制処理の停止を判定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  10. 前記熱容量体は消音装置からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
  11. 前記排気通路における前記SCR触媒の下流側に設けられる排気音を消音するための第2の消音装置をさらに備え、
    前記消音装置は、前記第2の消音装置よりも低周波域における前記排気音の消音に適するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の内燃機関のNOx浄化システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110100080A (zh) * 2016-10-24 2019-08-06 巴斯夫公司 用于减少NOx的集成SCR催化剂和LNT
CN112502813A (zh) * 2020-11-30 2021-03-16 潍柴动力股份有限公司 发动机尾气处理装置及发动机
JP7212723B2 (ja) 2021-06-18 2023-01-25 ヤフー株式会社 情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム

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