JP2016079187A - 懸濁液剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】WT1タンパク質由来癌抗原ペプチドを改変したペプチドを含有し、懸濁安定性を改善した癌ワクチン製剤の提供。
【解決手段】以下の成分を含む注射用医薬組成物。(a)Cys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leuで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、式(1)で表されるペプチド、式(2)で表されるペプチド、又はそれらの塩から選択される1種以上のペプチド、及び(b)アニオン性高分子


【選択図】図1

Description

本発明は、癌免疫療法の分野に属し、細胞傷害性T細胞誘導活性を有するWT1タンパク質由来癌抗原ペプチドを含有する懸濁液剤および凍結乾燥製剤に関するものであり、懸濁液剤の懸濁性の安定化に関する。
一般にWT1タンパク質由来癌抗原ペプチドとは、449個のアミノ酸からなるヒトのWT1タンパク質(配列番号:2)由来の部分ペプチドであり、具体的にはアミノ酸数8〜12のペプチドまたはそのダイマーであり、主要組織適合抗原(Major Histocompatibility Complex、MHC)クラスI抗原に提示されかつ
細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、Cytotoxic T−lymphocyte、Cytotoxic T−cell。以下、CTLと称する)により抗原認識されるペプチドを含有するものである。MHCは、ヒトではヒト白血球型抗原(HLA)と呼ばれる。
WT1タンパク質由来の部分ペプチドの内、9個のアミノ酸からなるWT1235−243ペプチドCys-Met-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:3)で表されるアミノ
酸配列からなる部分ペプチド、該ペプチドの一部のアミノ酸が改変された改変体(改変型ペプチド)および該ペプチドの二量体がHLAに結合しCTLを誘導するペプチドとして有用であることが報告されている(特許文献1〜4参照)。改変型ペプチドおよびその二量体ペプチドとしては例えばCys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:1)で
表されるアミノ酸配列からなるペプチド、式(1)で表されるペプチド(配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのシスチン体)および式(2)で表されるペプチド(配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの二量体ペプチド)が挙げられる。
一般に癌ワクチンに用いられる癌抗原タンパク質や癌抗原ペプチドは、CTLをより効率的に誘導する目的で、多くの場合、アジュバント(免疫増強剤)と共に投与される。そのため、癌抗原タンパク質や癌抗原ペプチドを目的に応じてさまざまなアジュバントと容易に組み合わせることが可能な、ペプチド含有を含有した、乳剤、液剤または懸濁液剤を開発することは有意義である。
特許文献3〜5には上述の改変型ペプチドおよびその二量体ペプチドを有効成分とするエマルション製剤が開示されているが、いずれの文献も製剤中のペプチドの分散状態、安定性については一切記載がない。
該ペプチドの生理的pH(2〜7.5)における水または水溶液への溶解度は0.5mg/mL未満であり、該ペプチドは実質的に水または水溶液に不溶と考えられる。
一般に実質的に水または水溶液に不溶(水に対して難溶性、難水溶性)である薬物の製剤化に用いられる技術としては、有機溶媒、界面活性成分、強酸性または強塩基性の成分等を用いた可溶化技術が挙げられる。しかしながら、該技術を上述のペプチドに適用したところ、可溶化技術を用いて溶液化した場合は、溶解後速やかに酸化体およびデアミノ体等の不純物が生成し、純度が低下することが分かった。
また、薬物を油性原料に分散または溶解した上で、乳化剤等の成分を用いて水相に分散させる乳化技術の適用が挙げられる。しかしながら、該ペプチドの化学的安定性は良くなく、原薬単独の状態でも冷蔵保存下において酸化体および二量体等が生成し、純度が低下することが分かっていることから、酸化劣化物を生じやすい油性原料や乳化剤を含む乳化技術を適用することも困難であった。
最後に、薬物を懸濁状態で水溶性溶媒中に分散させる懸濁技術の適用が挙げられる。この場合、化学的な安定性は確保されるものの、保存中に沈殿した粒子が容器底面に固着する現象や、巨大な凝集物が生じる現象等、物理化学的な安定性の面で課題があることが知られている。このような物理化学的な変化により、適正量を投薬することが困難になったり、目的の薬効が得られなくなったりすることが考えられる。
特許文献6には、ほとんど溶解しない塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液および凍結乾燥製剤が開示されているが、上述のペプチドに適用した場合、析出したペプチドが速やかに凝集、沈殿し、均一な懸濁液剤を得ることはできなかった。
国際公開第00/06602号 国際公開第02/079253号 国際公開第2004/063217号 国際公開第2007/063903号 国際公開第2004/024175号 特開2008−524284号公報
本発明の課題は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなる部分ペプチド、該ペプチドのシスチン体(式(1)で表されるペプチド)または該ペプチドの二量体ペプチド(式(2)で表されるペプチド)を含有する癌ワクチン製剤の調製に用いることが可能な、該ペプチドの懸濁安定性を改善した懸濁液剤を提供することにある。
また、該懸濁液剤を凍結乾燥した凍結乾燥製剤において、ペプチドの安定性を確保すること、および懸濁液剤を調製したときに再分散性が良好である凍結乾燥製剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、配列番号:1で表される配列を持つ部分ペプチド、該ペプチドのシスチン体(式(1)で表されるペプチド)または該ペプチドの二量体ペプチド(式(2)で表されるペプチド)(以下、単に本発明のペプチドということがある)を含有する懸濁液剤においては、アニオン性高分子を含有することにより、1日静置後も良好な懸濁状態を保持することを見出した。また、水溶性のアニオン性高分子を含有することにより、フィルターを用いて減菌または滅菌することが可能になる粒子径を確保することを見出した。さらに、糖または糖アルコールを含有することにより、製剤安定性に優れた懸濁液剤および/または凍結乾燥製剤を得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
項1.以下の成分を含む注射用医薬組成物;
(a)Cys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列
からなるペプチド、式(1):
(式中、Leu-OHはLeuのC末端が遊離のカルボキシル基であることを示す。)
で表されるペプチド、式(2):
(式中、CysとCysの間の結合はジスルフィド結合を表し、Leu-OHは前記と同義であり、他の結合はペプチド結合を示す。)
で表されるペプチド、またはそれらの塩から選択される1種以上のペプチド、および
(b)アニオン性高分子。
項2.成分(a)が式(1)で表されるペプチド、式(2)で表されるペプチド、またはそれらの塩から選択される1種以上のペプチドである、項1に記載の組成物。
項3.成分(a)が式(1)で表されるペプチドである、項1に記載の組成物。
項4.成分(b)が水溶性のアニオン性高分子であることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.成分(b)がカルボン酸を有するアニオン性高分子であることを特徴とする、項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
項6.成分(b)がカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムおよびアラビアガムからなる群から選択される1種以上である、項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
項7.成分(b)がカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムおよびキサンタンガムからなる群から選択される1種以上である、項6に記載の組成物。
項8.成分(b)がカルメロースナトリウムである、項7に記載の組成物。
項9.さらに糖および糖アルコールからなる群から選択される1種以上の成分(c)を含む、項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
項10.成分(c)がマンニトール、キシリトール、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される1種以上である、項9に記載の組成物。
項11.成分(c)がマンニトールまたはキシリトール、およびトレハロースである、項9に記載の組成物。
項12.成分(c)がマンニトールおよびトレハロースである、項9に記載の組成物。
項13.組成物が懸濁液剤または凍結乾燥製剤である、項1〜10のいずれかに記載の組成物。
項14.項1〜12のいずれかに記載の各成分を含み、成分(b)が、懸濁液剤1mL中、0.1〜20mgである、懸濁液剤。
項15.項9〜12のいずれかに記載の各成分を含み、成分(c)が、懸濁液剤1mL中、1〜200mgである、懸濁液剤。
項16.成分(b)が、懸濁液剤1mL中、0.1〜20mgである、項15に記載の懸濁液剤。
項17.成分(a)が、懸濁液剤1mL中、0.5mg〜200mgである、項14〜16のいずれかに記載の懸濁液剤。
項18.項14〜17のいずれかに記載の懸濁液剤を凍結乾燥することにより製造される、凍結乾燥製剤。
項19.成分を用いて、以下の工程を含む工程により製造される懸濁液剤である、項1〜12または14〜17のいずれかに記載の組成物;
(1)成分(a)をアルカリ性の溶媒中で溶解させる工程、
(2)工程(1)により得られる成分(a)の溶液に酸性の溶媒を添加し、成分(a)を析出させる工程、
(3)工程(1)、(2)により析出された成分(a)を溶媒から、分離し、回収する工程、および
(4)工程(1)〜(3)により回収された成分(a)を、成分(b)を含み、さらに必要に応じて成分(c)を含む溶液中に再分散し、粉砕・整粒する工程。
項20.さらに以下の工程(5)を含む、項19に記載の組成物;
(5)工程(1)〜(4)により得られた懸濁液剤を孔径0.1〜0.5μmのフィルターでろ過することにより、微生物を低減する工程。
項21.項19または20に記載の組成物を凍結乾燥することにより得られる凍結乾燥製剤。
項22.以下の工程(1)〜(4)を含む、懸濁液剤である項1〜12および14〜17のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(1)成分(a)をアルカリ性の溶媒中で溶解させる工程、
(2)工程(1)により得られる成分(a)の溶液に酸性の溶媒を添加し、成分(a)を析出させる工程、
(3)工程(1)、(2)により析出された成分(a)を溶媒から、分離し、回収する工程、および
(4)工程(1)〜(3)により回収された成分(a)、成分(b)を含み、さらに必要に応じて成分(c)を含む溶液中に再分散し、粉砕・整粒する工程。
項23.さらに以下の工程(5)を含む、項22に記載の製造方法;
(5)工程(1)〜(4)により得られた懸濁液剤を孔径0.1〜0.5μmのフィルターでろ過することにより、微生物を低減する工程。
項24.項22または23に記載の方法により得られる組成物を凍結乾燥することによる凍結乾燥製剤の製造方法。
項25.項1〜12のいずれかに記載の組成物を含む癌ワクチン組成物。
項26.項14〜17のいずれかに記載の懸濁液剤を含む癌ワクチン組成物。
項27.項18に記載の凍結乾燥製剤を含む癌ワクチン組成物。
本発明の懸濁液剤を用いることにより、細胞傷害性T細胞誘導活性を有する本発明のペプチドを安定に含有する懸濁液剤を製造することができ、製剤安定性に優れた癌ワクチンを調製することができる。また、本発明によれば、該懸濁液剤を凍結乾燥した凍結乾燥製剤にした場合、ペプチドが安定に維持され、かつ再分散性が良好な凍結乾燥製剤を調製することができる。
図1は、試験例6においてCTL誘導活性を求めた試験結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、各例示の好ましい態様は、他の例示の好ましい態様と組み合わせてもよく、上述の項1〜項27に記載される対応する例示に組み込んでもよい。
本発明における「懸濁液剤」とは、主たる溶媒が水であり、本発明のペプチドが懸濁状態にあり、さまざまなアジュバントと混合することが可能な、癌ワクチンを調製するための液剤である。本発明における「溶媒」とは、通常水が挙げられるが、発明の効果に影響されない範囲で、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の薬理学的に許容された溶媒を水に一部混合することができる。好ましくは水のみである。
本発明における「凍結乾燥製剤」とは、本発明における「懸濁液剤」を凍結乾燥したものである。通常「懸濁液剤」におけるペプチドの化学的、物理的安定性を向上させるために行う。癌ワクチンとして使用する場合は、適量の水を添加し、攪拌することで懸濁液剤としてから、さまざまなアジュバントと混合し、癌ワクチンを調製する。
本発明における「ペプチド」とは、癌ワクチンを調製するための癌抗原ペプチドであり、Cys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列から
なるペプチド、式(1):
(式中、Leu-OHはLeuのC末端が遊離のカルボキシル基であることを示す。)で表されるペプチド、式(2):
(式中、CysとCysの間の結合はジスルフィド結合を表し、Leu-OHは前記と同義であり、他の結合はペプチド結合を示す。)で表されるペプチド、およびそれらの塩からなる群より選択されるペプチドのことである。好ましくは式(1)で表されるペプチドである。
「Cys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列か
らなるペプチド」とはウィルムス腫瘍の癌抑制遺伝子WT1の遺伝子産物であるタンパク
質であり、具体的には、449個のアミノ酸からなるヒトのWT1タンパク質(配列番号:2)由来の部分ペプチドのうち、9個のアミノ酸からなるCys-Met-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:3)の配列で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(WT1
35−243ペプチド)のN末端から2番目のアミノ酸をメチオニンからチロシンに改変した改変ペプチドである。当該ペプチドは、MHCクラスI抗原に提示されかつCTLに
より抗原認識されるペプチドである。
「式(1)で表されるペプチド」とは配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのシステイン残基の硫黄原子にシステインの硫黄原子がシスチン結合したシスチン体が挙げられる。当該ペプチドは、MHCクラスI抗原に提示されかつCTLにより抗原
認識されるペプチドである。
「式(2)で表されるペプチド」とは2つの配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのシステイン残基の硫黄原子同士がシスチン結合した二量体が挙げられる。当該ペプチドは、MHCクラスI抗原に提示されかつCTLにより抗原認識されるペプチ
ドである。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、式(1)で表されるペプチド、式(2)で表されるペプチドの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に制限されない。本発明における「塩」としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩が挙げられ、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩などが挙げられ、さらにはアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩基性あるいは酸性アミノ酸といったアミノ酸塩が挙げられる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその塩、式(1)で表されるペプチドまたはその塩、或いは式(2)で表されるペプチドまたはその塩の水和物、エタノール溶媒和物などの溶媒和物も、本発明のペプチドに含まれる。さらに、本発明のペプチドには、前記ペプチドのあらゆるジアステレオマー、エナンチオマーなどの存在し得るあらゆる立体異性体、およびあらゆる態様の結晶形も包含される。
本発明のペプチドまたはその塩の製造方法は公知の方法で製造することができる(特許文献2〜4等参照)。また、本発明のペプチドまたはその塩は、当該技術分野において通常用いられる方法によって製造され得る。例えば、Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966; The proteins, Vol 2, Academic Press Inc., New York, 1976; ペプチド合成、丸善(株)、1975; ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)1985; 医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成、廣川書店、1991等に記載されているペプチド合成方法によって合成することができる。
本発明の懸濁液剤において、「ペプチド」の体積あたりの含有量は特に規定されず、薬理学的または物性的に許容される体積あたりの含有量であればよい。「ペプチド」のうち、例えば、式(1)で表されるペプチドの好ましい含有量としては、0.5mg〜200mg/mL、さらに好ましくは、0.5mg〜100mg/mLを挙げることができ、目的に応じて選択すればよい。
本発明の凍結乾燥製剤において、「ペプチド」の体積あたりの含有量は特に規定されない。本発明の凍結乾燥製剤は本発明の懸濁液剤を凍結乾燥したものであり、ペプチドの含有量は該懸濁液剤の含有量を満たすものであればよい。
本明細書において、上記のペプチドは左側がN末端であり、各アミノ酸記号はそれぞれ以下のアミノ酸残基であることを示している。
AlaまたはA:アラニン残基
ArgまたはR:アルギニン残基
AsnまたはN:アスパラギン残基
AspまたはD:アスパラギン酸残基
CysまたはC:システイン残基
GlnまたはQ:グルタミン残基
GluまたはE:グルタミン酸残基
GlyまたはG:グリシン残基
HisまたはH:ヒスチジン残基
IleまたはI:イソロイシン残基
LeuまたはL:ロイシン残基
LysまたはK:リジン残基
MetまたはM:メチオニン残基
PheまたはF:フェニルアラニン残基
ProまたはP:プロリン残基
SerまたはS:セリン残基
ThrまたはT:スレオニン残基
TrpまたはW:トリプトファン残基
TyrまたはY:チロシン残基
ValまたはV:バリン残基
一般に「水溶性」とは、水に溶解する成分を表す。本発明における「水溶性」としては、1mg/mL以上の溶解度を有することを表す。
一般に「アニオン性高分子」とは、陽イオンの金属イオンを含む高分子を表す。本発明における「アニオン性高分子」としては、例えば、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、キサンタンガム、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、トラガント、カラギーナン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは水溶性である、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、キサンタンガム、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、カラギーナン、またはコンドロイチン硫酸ナトリウムである。より好ましくは、カルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、またはアラビアガムであり、さらに好ましくはカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、またはキサンタンガムであり、もっとも好ましくはカルメロースナトリウムである。
本発明おける「カルボン酸を有する」とは、アニオン性高分子中に、水溶液中でカルボン酸イオンになる遊離のカルボキシル基を含むことを表す。カルボン酸を含むアニオン性高分子としては、例えば、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、キサンタンガム、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、トラガント、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは水溶性
である、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、キサンタンガム、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ペクチン、またはコンドロイチン硫酸ナトリウムである。より好ましくは、カルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、またはアラビアガムであり、さらに好ましくはカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、またはキサンタンガムであり、もっとも好ましくはカルメロースナトリウムである。
本発明の懸濁液剤において、「アニオン性高分子」の体積あたりの含有量は特に規定はないが、好ましくは0.1〜20mg/mLであり、さらに好ましくは0.5〜10mg/mL、最も好ましくは1〜5mg/mLである。
一般に「糖」とは、ポリヒドロキシル化されたアルデヒドもしくはケトンを有する単糖および2つ以上の単糖がグリコシド結合により連結した化合物を表し、「糖アルコール」とは、単糖のケトン基やアルデヒド基がアルコールに還元された化合物を表す。本発明における「糖または糖アルコール」としては、例えば、マンニトール、キシリトール、トレハロース、スクロース(白糖)、乳糖、果糖、エリスリトール等が挙げられる。好ましくはマンニトール、キシリトール、トレハロース、および/またはスクロースである。
本発明の懸濁液剤において、「糖または糖アルコール」の体積あたりの含有量は特に規定はないが、好ましくは1〜200mg/mLであり、さらに好ましくは10〜150mg/mL、最も好ましくは50〜100mg/mLである。
糖または糖アルコールは単独で含有することも可能であるが、2種類以上の糖または糖アルコールを組み合わせて含有することもできる。組み合わせに特に限定はないが、好ましい組み合わせはマンニトールおよびトレハロース、ならびにキシリトールおよびトレハロースであり、さらに好ましい組み合わせはマンニトールおよびトレハロースである。
2種類以上の糖または糖アルコールの含有量の比率は特に制限はないが、マンニトールおよびトレハロースの比率は好ましくは1:2〜100:1、さらに好ましくは1:1〜10:1である。キシリトールおよびトレハロースの比率は好ましくは1:2〜100:1、さらに好ましくは1:1〜10:1である。
本発明の懸濁液剤のpHは3〜7.5であるが、製造時に目的のpHでない場合は通常pH調節剤を使用し、調整することができる。安定性の観点から好ましいpHは4〜7であり、さらに好ましいのは5〜7である。
pH調節剤としては、一般に医薬品製剤に用いられるpH調節剤から適宜選択して使用する。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、酢酸ナトリウム水和物、無水酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムおよびリン酸三ナトリウム等が挙げられる。好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムであり、さらに好ましくは塩酸および/または水酸化ナトリウムである。
また、本発明の懸濁液剤には、上記の成分のほか、本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜、安定剤、可溶化剤、緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤等、医薬品製剤に一般に用いられる添加剤を使用することができる。特に溶解して金属イオンを生じる添加剤の添加量は、アニオン性高分子が塩析をおこさない程度の量に留めておく必要がある。
本発明の懸濁液剤は、医薬品製造等で一般的に用いられる方法で製造することができる。具体的には、例えば、以下の工程を含む工程により製造することができる。
(1)成分(a)をアルカリ性の溶媒中で溶解させる工程。
(2)工程(1)の溶液に酸性の溶媒を添加し、成分(a)を析出させる工程。
(3)工程(2)の析出物を溶媒から、分離し、回収する工程。
(4)工程(3)の析出物を成分(b)、さらに必要に応じて成分(c)を含む溶液中に再分散し、粉砕・整粒する工程。
(5)必要に応じて、工程(4)の懸濁液剤を孔径0.1〜0.5μmのフィルターでろ過することにより、微生物を低減する工程。
工程(1)は、具体的には、例えば、成分(a)であるペプチドを注射用水で懸濁し、アルカリ性のpH調節剤を加えて溶解させることが挙げられる。また、予めアルカリ性にした水溶液にペプチドを溶解させても良い。必要に応じて、孔径0.22μmのフィルターを用いて滅菌してもよい。使用するpH調節剤は、アルカリ性であれば特に制限はないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
工程(2)は、具体的には、例えば、工程(1)で製造した溶液に、酸性のpH調節剤を加えて、攪拌することにより析出させることが挙げられる。使用するpH調節剤は、酸性であれば特に制限はないが、塩酸、硫酸または硝酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
工程(3)は、具体的には、例えば、工程(2)で析出した成分(a)であるペプチドを含む水溶液を遠心分離することでペプチドを沈殿させた後、上澄みを除去することにより、分離し、回収する方法が挙げられる。
工程(4)は、具体的には、例えば、工程(3)で回収した析出物を、成分(b)、必要に応じて成分(c)、さらに必要に応じて、医薬品製剤に一般に用いられる添加剤を含んだ水溶液に加えて、攪拌し、再分散させる。水溶液は必要に応じて、予め、孔径0.22μmのフィルターを用いて滅菌してもよい。再分散した懸濁液が目的のpHでない場合はpH調節剤を用いて、pHを調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、分散処理を1回ないし、複数回行うことで、粉砕・整粒を行うことで懸濁液剤を得る製造方法が挙げられる。
工程(5)は、具体的には、例えば、工程(4)で得られた懸濁液剤を孔径が0.45μmまたは0.22μmであるフィルターを用いて、ろ過をすることにより、微生物を低減および除去をする方法が挙げられる。
本発明の懸濁液剤の製造においては、上記工程に加えて、次工程に影響を及ぼさない範囲で途中に滅菌処理、ろ過、pH調整、液量調整、洗浄等の医薬品製造等で一般的に用いられる工程を適宜加えてもよい。
本発明の凍結乾燥製剤は、本発明の懸濁液剤を用いて通常の方法で製造することができる。具体的には例えば、懸濁液剤をバイアルに充填し、凍結乾燥機を用いて、通常の製造条件で凍結乾燥を行う。製造条件は特に規定はないが、具体的には、例えば、−40℃付近で凍結させた後、庫内を真空に減圧し、同時に、庫内の温度を−20℃に上昇させて10〜30時間程度乾燥させた上で、庫内の温度を30℃に上昇させて10〜30時間程度乾燥させる条件等が挙げられる。
本発明の懸濁液剤を用いて癌ワクチン組成物を調製することにより、癌ワクチンとして使用することができる。本発明の凍結乾燥製剤を使用する場合は公知の方法により、予め
懸濁液剤に調製して使用する。本発明の懸濁液剤を用いて癌ワクチン組成物に調製する方法は特に限定されないが、例えば、適切なアジュバンドと混合し、癌ワクチンを調製する方法;予め適切なアジュバントと混合した後、さらに凍結乾燥等により癌ワクチン組成物(癌ワクチン製剤)を調製する方法;本発明の懸濁液剤を用時調製により種々のアジュバントと混合し、癌ワクチン組成物とする方法等が挙げられる。アジュバントとしては、例えば、フロイントアジュバント;水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル;リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような表面活性物質;ならびにBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム−パルヴムのようなヒトアジュバント等が挙げられる。
アジュバントは別の分類として、沈降性アジュバントおよび油性アジュバント等が挙げられる。沈降性アジュバントは、ペプチドが吸着する無機物の懸濁剤を表す。沈降性アジュバントとしては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム(アラム、Alum)、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン、ペペス、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。油性アジュバントは、ペプチドを含む水溶液を鉱油で包みミセルをつくり乳化する油乳剤を表す。油性アジュバントとしては、具体的には、流動パラフィン、ラノリン、フロイントアジュバント(完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント)、モンタナイド、W/Oエマルション(国際公開第2006/078059号参照)等が挙げられる。
本発明の懸濁液剤を用いて調製される癌ワクチン組成物は、癌ワクチンとして、WT1遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌、例えば白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等の血液の癌、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頚癌、卵巣癌等の固形癌の予防または治療のために使用することができる。
本発明の懸濁液剤は、必要に応じて凍結乾燥製剤にすることで、有効成分である癌抗原ペプチドを安定に保持できることから、種々の投与形態を選択することができる。具体的には、経口、経鼻、経肺、経皮、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内等が挙げられ、上記の方法により、目的に応じて癌ワクチン組成物を調製すればよい。一般に、癌ワクチンとして、免疫賦活するのに好ましい投与経路としては非経口投与が知られており、例えば、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与のほか、経鼻投与や経皮投与等が挙げられる。このうち、好ましくは皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、筋肉内投与等の注射的投与が挙げられる。
以下に、実施例、比較例、試験例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
式(1)で表されるペプチド(ペプチド(シスチン体)ともいう。)として、特許文献(国際公開第2007/063903号)に記載されている方法で製造したペプチドを用い、式(2)で表されるペプチド(ペプチド(二量体)ともいう。)として、特許文献(国際公開第2004/063217号)に記載されている方法で製造したペプチドを用い、スクロースとして、「スクロース(ナカライテスク社製)」を用い、キシリトールとして、「キシリトール(ナカライテスク社製)」を用い、アルギン酸ナトリウムとして、「アルギン酸ナトリウム(ナカライテスク社製)」を用い、マンニトールとして、「マンニトール(三菱フードテック社製)」を用い、トレハロースとして、「トレハロース(林原生物化学研究所製)」を用いた。カルメロースナトリウムとして、「CMC−Na(第一工業製薬社製)」を用い、キサンタンガムとして、「キサンタンガム(CP Kelco
社製)」を用い、マクロゴールとして、「マクロゴール4000(日油社製)」を用い、プルロニック(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)として、「プルロニックF−68(MP Biochemical社製)」を用い、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(POE硬化ヒマシ油60)として、「NIKKOL
HCO−60(日光ケミカルズ社製)」を用いた。pH調節剤である塩酸としては「1mol/l−塩酸(ナカライテスク社製)」を用い、pH調節剤である水酸化ナトリウムとしては「1mol/l−水酸化ナトリウム溶液(ナカライテスク社製)」を用いた。
オレイン酸エチルとして、「NOFABLE EO−85S(日油社製)」を用い、ミリスチン酸オクチルドデシルとして、「NIKKOL ODM−100(日光ケミカルズ社製)」を用い、モノオレイン酸ソルビタンとして、「NOFABLE SO−991(日油社製)」を用い、モノオレイン酸グリセリンとして、「NOFABLE GO−991(日油社製)」を用いた。濃グリセリンとして、「日本薬局方濃グリセリン(日油社製)」を用い、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20として、「NIKKOL HCO−20(日光ケミカルズ社製)」を用い、リン酸二水素ナトリウムとして、「リン酸二水素ナトリウム二水和物(ナカライテスク社製)」を用いた。
〔懸濁液剤の調製〕
〔実施例1〕
適量の注射用水にペプチド(シスチン体)を加えて混合後、水酸化ナトリウムを加えてpHを10以上に調整し、ペプチドが溶解するまで混合した。次に塩酸を加えてpHを6以下に調整し、析出したペプチドを遠心分離することで単離した。単離したペプチドに、表1に記載の組成になるように各成分を加え、pH調整後、攪拌機で分散後、高圧ホモジナイザーを用いて処理圧力210MPa、パス回数30回の処理条件で分散処理を行うことで懸濁液剤を得た。
〔実施例2〜6〕〔比較例1、2〕
ペプチド(シスチン体)用いて、実施例1と同様に溶解、単離した後、表1および2に記載の量を用いて、実施例1と同様に製造し、懸濁液剤を得た。
〔凍結乾燥製剤の調製〕
〔実施例4A〜6A〕
実施例4〜6で製造した懸濁液剤をガラスバイアルに充填後、凍結乾燥機に入れ、凍結乾燥を行い、凍結乾燥製剤を製造した。なお、凍結乾燥は、−40℃付近で懸濁液剤を凍結させた後、庫内を真空に減圧し、同時に、庫内の温度を−20℃付近に上昇させて20時間程度乾燥させ、さらに、庫内の温度を30℃付近に上昇させて12時間程度乾燥させる条件により、実施した。
〔懸濁液剤の調製〕
〔実施例7〜20〕
ペプチド(シスチン体)用いて、実施例1と同様に溶解、単離した後、表3〜5に記載の量を用いて、実施例1と同様に製造し、懸濁液剤を得た。
〔凍結乾燥製剤の調製〕
〔実施例7A〜19A〕
実施例7〜19で製造した懸濁液剤を孔径0.22μmのフィルターを用いて、ろ過した後に、ガラスバイアルに充填した。懸濁液剤を充填したガラスバイアル瓶を凍結乾燥機に入れ、実施例4Aと同様の条件により凍結乾燥を行い、凍結乾燥製剤を製造した。
〔懸濁液剤の調製〕
〔実施例21〜24〕
ペプチド(二量体)用いて、実施例1と同様に溶解、単離した後、表6に記載の量を用いて、実施例1と同様に製造し、懸濁液剤を得た。
〔試験例1〕 懸濁性評価(1)
実施例1〜6および比較例1、2で製造した懸濁液剤について、粒度分布および性状を評価した。粒度分布は調製直後のサンプルを用いて、注射用水で希釈後、動的光散乱法により測定した。性状は調製直後および1日静置後のサンプルについて、目視にて評価した。表7に評価結果を示す。
どの製剤も製造直後は懸濁状態であったが、アニオン性高分子を含有することにより、1日静置後も懸濁状態を維持することが確認され、懸濁液剤としての使用性が良好であることが示唆された。また、懸濁状態が保たれている懸濁液剤は、50%Dが1μm以下であり、また、90%Dも2μm以下であり、液中の懸濁粒子が微小な粒子として含有されていることが確認された。特にアルギン酸ナトリウム、キサンタンガムを含有することにより、孔径0.45μmのフィルターを用いた減菌が可能であり、カルメロースナトリウムを含有することにより、孔径0.22μmのフィルターを用いた滅菌が可能になることが示唆された。また、90%Dが0.20μm未満である、実施例4、5において、孔径0.22μmのフィルターを用いて、ろ過したところ、懸濁物によるフィルターの閉塞やろ過抵抗の増加は認められず、滅菌が可能であることを確認した。
〔試験例2〕 懸濁性評価(2)
実施例7〜20で製造した懸濁液剤について、試験例1と同様に粒度分布および性状を評価した。表8に評価結果を示す。
カルメースナトリウムを含有したサンプルに糖または糖アルコールを含有した懸濁液剤は、いずれも1日静置後も懸濁状態を保持可能であること、90%Dが0.20μm以下であった。また、実施例7〜20において、孔径0.22μmのフィルターを用いて、ろ過したところ、懸濁物によるフィルターの閉塞やろ過抵抗の増加は認められず、滅菌が可能であることを確認した。
〔試験例3〕 懸濁性評価(3)
実施例21〜24で製造した懸濁液剤について、試験例1と同様に粒度分布および性状を評価した。表9に評価結果を示す。
分子量の高いペプチド(二量体)を含有した懸濁液剤についても、1日静置後も懸濁状態を保持可能であることが確認された。また、実施例23において、孔径0.22μmのフィルターを用いて、ろ過したところ、懸濁物によるフィルターの閉塞やろ過抵抗の増加は認められず、滅菌が可能であることを確認した。
〔試験例4〕 安定性評価(1)
実施例4〜6で製造した懸濁液剤を5℃で3箇月、および実施例4A〜6Aで製造した凍結乾燥製剤を5℃、25℃および40℃で3箇月保存後、凍結乾燥製剤は注射用水を加え、懸濁液剤にした後、粒度分布、性状、および純度を評価した。粒度分布は試験例1と
同様に測定した。性状は、懸濁液剤は保管庫から取り出した直後の時点、凍結乾燥製剤は、保管庫から取り出し、注射用水を加えて再懸濁させた直後および室温で一日静置後の両時点で、サンプルを目視で評価した。純度は、C18逆相カラム(4.6mm×150mm、5μm)を用い、純水、アセトニトリル、2−プロパノール、トリフルオロ酢酸を移動相に用いた逆相高速液体クロマトグラフィー法(検出波長:220nm)により測定した。本法で測定したピーク面積を用いて、以下の式によりペプチド純度および開始時の純度を100%とした場合の相対純度(対initial値)を算出した。
ペプチド純度(%)=ペプチドのピーク面積/類縁物質を含む総ピーク面積×100
相対純度(対initial値)(%)=保存時点のペプチド純度/開始時のペプチド純度×100
表10〜表13に評価結果を示す。
〔試験例5〕 安定性評価(2)
実施例7A〜19Aで製造した凍結乾燥製剤を5℃、25℃で6箇月保存後、および40℃で3箇月保存後、注射用水を加え、懸濁液剤にした後、試験例4と同様に粒度分布、性状および純度を評価した。表14〜17に評価結果を示す。
試験例4および5に示されるように、5℃保存下では安定であるが、トレハロースを添加することにより、粒子径の増大を抑えることが確認された。また、トレハロース、および/またはマンニトールを添加することで、40℃保存下でも、ペプチドの純度が保持されることが確認された。
以上をまとめると、アニオン性高分子を添加することによって、本発明のペプチドの微粒化ならびに分散安定化が可能となること、さらに、特定の成分(c)を添加することで、製剤安定性に優れた凍結乾燥製剤を得ることが可能となることが示唆された。
〔試験例6〕 特異的CTL誘導活性の確認
実施例11の懸濁液剤を用いて、アジュバントと混合することにより癌ワクチン組成物を調製した。
1)癌ワクチン組成物の調製
あらかじめ、オレイン酸エチル(595g)と、ミリスチン酸オクチルドデシル(595g)と、モノオレイン酸ソルビタン(85g)と、モノオレイン酸グリセリン(119g)と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(17g)と、濃グリセリン(17g)と、25mMのリン酸二水素ナトリウム水和物を含有する水溶液(272g)とを容器に取り、CLEAMIX CLM−1.5(エムテクニック)を用いて、10000rpmで60分間攪拌することにより、アジュバントを得た。
次いで、300μLの懸濁液剤(実施例11)と、700μLのアジュバントとを試験管ミキサーを用いて混合することにより、癌ワクチン組成物を得た。
2)CTL誘導活性評価
上記1)にて調製した癌ワクチン組成物の特異的CTL誘導能をHLA−A2402/K1トランスジェニックマウス(WO2002/47474号参照、以下、HLA−
A24マウスとも称する)を用いて評価した。
癌ワクチン組成物200μL(ペプチド投与量300μg)をHLA−A24マウスの尾根部皮内に投与し、投与7日後に脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。その後、Elispot法(J.Immunological Methods,1995,181,45−54参照)により、MABTECH ELISpot PLUS for Mouse I
nterferon−γ(マブテック社製)を用いて、癌ワクチン組成物のCTL誘導活
性を評価した。方法は添付書に従って行い、1ウェルあたり1×10個の脾細胞を注ぎ、さらに、配列番号:1のペプチドを含む細胞培地(ペプチドの濃度10μg/mL)を注いだ。その後、37℃ COインキュベーターで約18時間培養した。添付書に従っ
て、プレートを洗浄し、専用解析機(KS Elispot Researchシステム)にてスポット数を検出した。
結果を図1に示す。スポット数は3匹のマウスの平均値で表している。図1に示すように、本発明の懸濁液剤を用いて調製した癌ワクチン組成物は、HLA−A24特異的な細胞性免疫を誘導できることが判明し、癌ワクチンとして有用であることが分かった。
本発明により、WT1タンパク質由来癌抗原ペプチドを含有する良好な懸濁性を持つ懸濁液剤、および懸濁液剤を凍結乾燥した安定性の高い凍結乾燥製剤を提供することが可能になり、当該ペプチドは癌ワクチンとして使用できる。

Claims (17)

  1. 以下の成分を含む注射用医薬組成物;
    (a)Cys-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列
    からなるペプチド、式(1):
    (式中、Leu-OHはLeuのC末端が遊離のカルボキシル基であることを示す。)
    で表されるペプチド、式(2):
    (式中、CysとCysの間の結合はジスルフィド結合を表し、Leu-OHは前記と同義であり、他の結合はペプチド結合を示す。)
    で表されるペプチド、またはそれらの塩から選択される1種以上のペプチド、および
    (b)アニオン性高分子。
  2. 成分(b)が水溶性のアニオン性高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 成分(b)がカルボン酸を有するアニオン性高分子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 成分(b)がカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムおよびアラビアガムからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 成分(b)がカルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムおよびキサンタンガムからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 成分(b)がカルメロースナトリウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  7. さらに糖および糖アルコールからなる群から選択される1種以上の成分(c)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 成分(c)がマンニトール、キシリトール、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される1種以上である、請求項7に記載の組成物。
  9. 成分(c)がマンニトールまたはキシリトール、およびトレハロースである、請求項7に記載の組成物。
  10. 成分(c)がマンニトールおよびトレハロースである、請求項7に記載の組成物。
  11. 組成物が懸濁液剤または凍結乾燥製剤である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 以下の工程(1)〜(4)を含む工程により製造される懸濁液剤である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物;
    (1)成分(a)をアルカリ性の溶媒中で溶解させる工程、
    (2)工程(1)により得られる成分(a)の溶液に酸性の溶媒を添加し、成分(a)を析出させる工程、
    (3)工程(1)、(2)により析出された成分(a)を溶媒から、分離し、回収する工程、および
    (4)工程(1)〜(3)により回収された成分(a)を、成分(b)を含み、さらに必要に応じて成分(c)を含む溶液中に再分散し、粉砕・整粒する工程。
  13. さらに以下の工程(5)を含む、請求項12に記載の組成物;
    (5)工程(1)〜(4)により得られた懸濁液剤を孔径0.1〜0.5μmのフィルターでろ過することにより、微生物を低減する工程。
  14. 請求項12または13に記載の組成物を凍結乾燥することにより得られる凍結乾燥製剤。
  15. 以下の工程(1)〜(4)を含む、懸濁液剤である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
    (1)成分(a)をアルカリ性の溶媒中で溶解させる工程、
    (2)工程(1)により得られる成分(a)の溶液に酸性の溶媒を添加し、成分(a)を析出させる工程、
    (3)工程(1)、(2)により析出された成分(a)を溶媒から、分離し、回収する工程、および
    (4)工程(1)〜(3)により回収された成分(a)を、成分(b)を含み、さらに必要に応じて成分(c)を含む溶液中に再分散し、粉砕・整粒する工程。
  16. さらに以下の工程(5)を含む、請求項15に記載の製造方法;
    (5)工程(1)〜(4)により得られた懸濁液剤を孔径0.1〜0.5μmのフィルターでろ過することにより、微生物を低減する工程。
  17. 請求項15または16に記載の方法により得られる組成物を凍結乾燥することによる凍結乾燥製剤の製造方法。
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