JP2016071988A - 有機el素子の異物判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダークスポット(DS)を引き起こす異物の混入経路の特定を容易に行える有機EL素子の異物判定方法を提供すること。【解決手段】有機EL素子を発光させてDSの有無を判定するステップS1と、ステップS1でDSが有る有機EL素子を発光させずに、可視光を照射して異物の有無を判定するステップS2と、ステップS1でDSが有る有機EL素子を発光させ、且つ可視光を照射して異物の有無を判定するステップS3と、を備え、ステップS2で異物が有る場合には、当該異物は機能層のうち可視光の入射側に最も近い第1層である正孔注入層に含まれると判定し、ステップS3で異物がある場合には、当該異物は機能層のうち正孔注入層または正孔注入層と発光層との間の第2層である正孔輸送層に含まれると判定し、ステップS3で異物がない場合には、当該異物は発光層に含まれると判定する。【選択図】図6

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の異物判定方法に関する。
近年、自発光型であり薄型の表示装置として画素に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備えた有機ELパネルが注目されている。このような有機ELパネルの製造過程において、画素(有機EL素子)に異物が混入すると、当該画素の発光機能が失われることによりダークスポットと呼ばれる暗点が生ずる。当該画素においてダークスポットが占める面積割合にもよるが、ダークスポットを有する当該画素は欠陥画素として扱われることになる。
例えば、特許文献1には、画素の発光層を励起させて色応答を出力させ、励起された画素により生じた出力光の画像を捕捉し、捕捉された光をデジタル画像に変換し、該デジタル画像からOLED(Organic light emitting diode)デバイスの画素のサイズ、形状、配置及び放出光強度を、許容できる所定のサイズ、形状、配置及び放出光強度と比較して、該OLEDデバイスに欠陥があるかどうか測定する方法が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、画素ごとに形成された画素電極内に混入した異物を検出する工程と、混入した異物を画素電極内下部方向へ押し込む工程とを有する有機ELディスプレイのリペア方法が開示されている。特許文献2には、異物を検出する方法として、顕微鏡を用いた外観検査による方法、画像検査方法、パターン検査方法が挙げられている。
特開2004−172127号公報 特開2012−243432号公報
有機ELパネルを製造する過程で、異物に起因する欠陥画素を上記特許文献1のように検出したり、また、上記特許文献2のように異物を検出した後にリペアしたりすることは重要なことであるが、異物を分析して、どのような工程で混入したのかを追求し、異物の混入を未然に防止することがより重要である。
一方で、有機EL素子は、一対の電極間に発光機能を有する機能層を備えている。機能層は発光層を含む複数の層からなる。ところが、機能層に混入する異物の種類や大きさは様々であり、ダークスポットを含む画素(有機EL素子)を例えば顕微鏡などで観察しても、機能層のうちいずれの層の形成工程で異物が混入したかを特定することは困難であった。また、顕微鏡で観察する方法では、異物がどのような物質かを推定することは困難であった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例]本適用例に係る有機EL素子の異物判定方法は、発光層を含む機能層が一対の電極間に挟持された有機EL素子の異物判定方法であって、前記有機EL素子を発光させてダークスポットの有無を判定する第1のステップと、前記第1のステップでダークスポットが有る前記有機EL素子を発光させずに、可視光を照射して異物の有無を判定する第2のステップと、前記第1のステップでダークスポットが有る前記有機EL素子を発光させ、且つ前記可視光を照射して異物の有無を判定する第3のステップと、を備え、前記第2のステップで異物が有る場合には、当該異物は前記機能層のうち前記可視光の入射側に最も近い第1層に含まれると判定し、前記第3のステップで異物がある場合には、当該異物は前記機能層のうち前記第1層または前記第1層と前記発光層との間の第2層に含まれると判定し、前記第3のステップで異物がない場合には、当該異物は前記発光層に含まれると判定することを特徴とする。
上記適用例に記載の有機EL素子の異物判定方法において、前記第2のステップの後、前記第3のステップを実施し、前記第2のステップで異物がなく、前記第3のステップで異物がある場合には、前記第2層に当該異物が含まれると判定することを特徴とする。
これらの適用例によれば、ダークスポットを引き起こす異物が機能層のうちどの層に含まれるか特定することができる。また、このような異物判定方法を用いてダークスポットの異物の判定を、同一工程で形成された異なる有機EL素子に対して繰り返し行うことで、どの層の形成工程で最も異物が混入し易い状態となっているか、異物の混入における傾向も推定することができる。これにより、異物の混入経路を特定して、混入を低減させる改善活動を容易に行うことができる。
上記適用例に記載の有機EL素子の異物判定方法において、前記有機EL素子は、透明な基板上に形成されており、前記機能層のうち、前記第1層が正孔注入層であり、前記第2層が正孔輸送層であることを特徴とする。
この方法によれば、ダークスポットを引き起こす異物が、機能層のうち、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層のいずれに含まれるか特定できる。また、ダークスポットを引き起こす異物が、少なくとも正孔注入層形成工程、正孔輸送層形成工程、発光層形成工程のいずれの工程で混入したかを推定できる。
上記適用例に記載の有機EL素子の異物判定方法において、前記第1のステップで異物が有る前記有機EL素子に紫外光を照射して前記異物が蛍光を発するか否か判定する第4のステップを、さらに備え、前記第4のステップで前記異物が蛍光を発する場合、前記異物が有機物であると判定し、前記第4のステップで前記異物が蛍光を発しない場合、前記異物が無機物であると判定することを特徴とする。
この方法によれば、ダークスポットを引き起こす異物が有機物であるか無機物であるかを特定することができる。これにより、異物が蛍光を発する有機物である場合、当該異物が機能層を構成する材料に含まれると推定できる。また、異物が蛍光を発しない無機物である場合、当該異物が機能層を構成する各層の形成工程における環境由来の例えば金属や金属化合物などの無機物であると推定できる。
上記適用例に記載の有機EL素子の異物判定方法において、前記機能層のうち少なくとも1層が液相プロセスで形成されていることを特徴とする。
この方法によれば、例えば真空蒸着法などの気相プロセスに比べて環境由来の異物が混入し易い液相プロセスを用いて機能層のうちの少なくとも1層を形成したとしても、異物の混入工程を特定したり、異物がどのような物質であるかを推定したりすることができる。
有機ELパネルの構成を示す概略平面図。 有機EL素子の構成を示す模式断面図。 有機ELパネルの製造方法を示すフローチャート。 (a)〜(d)は有機ELパネルの製造方法を示す概略断面図。 (e)〜(h)は有機ELパネルの製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の異物判定方法を示すフローチャート。 有機EL素子の異物判定装置の構成を示す概略図。 (a)〜(c)は異物判定方法を説明する図。 変形例の有機ELパネルにおける有機EL素子の構成を示す模式断面図。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
<有機ELパネル>
まず、本実施形態の有機ELパネルの一例について、図1及び図2を参照して説明する。図1は有機ELパネルの構成を示す概略平面図、図2は有機EL素子の構成を示す模式断面図である。
図1に示すように、有機ELパネル100は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光(発光色)が得られるサブ画素107R,107G,107Bを有している。各サブ画素107R,107G,107Bは略矩形状であり、素子基板101の表示領域Eにおいてマトリックス状に配置されている。サブ画素107R,107G,107Bのそれぞれには、対応する色の発光が得られる有機EL素子130(図2参照)が設けられている。同色の発光が得られるサブ画素107が図面上において垂直方向(列方向あるいはサブ画素107の長手方向)に配列し、異なる発光色のサブ画素107が図面上において水平方向(行方向あるいはサブ画素107の短手方向)にR,G,Bの順で配列している。すなわち、異なる発光色のサブ画素107R,107G,107Bが所謂ストライプ方式で配置されている。
以降、異なる発光色のサブ画素107R,107G,107Bを総称してサブ画素107と呼ぶこともある。また、異なる発光色のサブ画素107が配列する方向をX方向、同色のサブ画素107が配列する方向をY方向として説明する。
このような有機ELパネル100を表示装置として用いるならば、異なる発光色が得られる3つのサブ画素107R,107G,107Bを1つの表示画素単位108として、それぞれのサブ画素107R,107G,107Bは電気的に制御される。これによりフルカラー表示が可能となる。
なお、異なる発光色のサブ画素107R,107G,107Bの平面形状及び配置は、これに限定されるものではなく、例えば、デルタ方式、モザイク方式の配置であってもよい。また、サブ画素107は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色に対応して設けられることに限定されず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)以外の例えば黄色(Y)の発光が得られるサブ画素107を含んでいてもよい。
素子基板101は、発光が得られる有機EL素子130に水分や酸素などが浸入して発光機能が低下あるいは失われることを防止するために、少なくともサブ画素107R,107G,107Bが配置された表示領域Eを覆う封止層(図示省略)などを介して封止基板102と貼り合わされる。
図2は、赤色(R)の発光が得られるサブ画素107Rに配置される有機EL素子130Rの構成を示すものである。図2に示すように、有機EL素子130Rは、素子基板101上に設けられた画素電極131と、画素電極131に対向して設けられた対向電極134と、画素電極131と対向電極134との間(一対の電極間)に挟持された発光機能を有する機能層132Rとを有している。
本実施形態における素子基板101は、透明な例えば石英(無アルカリ)や低アルカリガラスなどの基板からなる。画素電極131は、陽極として機能するものであり、可視光透過率が例えば85%以上であって、仕事関数が大きいITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなる。対向電極134は、陰極として機能するものであり、例えば、Al(アルミニウム)などの低抵抗電極材料からなる。
機能層132Rは、画素電極131側から順に積層された、正孔注入層132a、正孔輸送層132c、赤色の発光が得られる発光層132r、電子輸送層132d、電子注入層132eを含むものである。画素電極131と対向電極134との間に駆動電位を印加することにより、画素電極131から機能層132Rに正孔が注入され、対向電極134から機能層132Rに電子が注入される。機能層132Rに含まれる発光層132rでは、注入された正孔と電子が励起子(エキシトン)を形成し、励起子(エキシトン)が消滅する際(電子と正孔とが再結合する際)にエネルギーの一部が蛍光や燐光となって放出される。つまり、画素電極131と対向電極134との間に駆動電位を印加し、機能層132Rを流れる電流の大きさに応じた輝度の赤色の発光が得られる。
正孔注入層132aは画素電極131から正孔輸送層132cへの正孔の注入性を向上させるものである。正孔輸送層132cは発光層132rへの正孔の輸送性を向上させると共に、発光層132rから正孔注入層132a側に電子が漏れることを抑制するものである。電子注入層132eは対向電極134から電子輸送層132dへの電子の注入性を向上させるものである。電子輸送層132dは発光層132rへの電子の輸送性を向上させると共に、発光層132rから電子注入層132e側に正孔が漏れることを抑制するものである。なお、機能層132Rの構成は、これに限定されるものではなく、例えば正孔輸送層132c、電子輸送層132dを除いたり、キャリア(正孔や電子)の移動に係る機能を有する中間層を含んでいたりしてもよい。
赤色の発光が得られる有機EL素子130Rは、サブ画素107Rに配置されるものである。他のサブ画素107Gには、緑色の発光が得られる有機EL素子130Gが配置され、サブ画素107Bには、青色の発光が得られる有機EL素子130Bが配置される。ここでは、有機EL素子130G,130Bの構成について図示していないが、基本的には有機EL素子130Rと同じ構成となっている。なお、各色の有機EL素子130R,130G,130Bを総称して有機EL素子130と呼ぶこともある。また、それぞれに異なる色の発光が得られる機能層132R,132G,132Bを総称して機能層132と呼ぶこともある。
本実施形態の有機ELパネル100は、サブ画素107R,107G,107Bの有機EL素子130R,130G,130Bからの発光が、透明な素子基板101側から射出されるボトムエミッション方式となっている。対向電極134は機能層132における発光を素子基板101側に反射させる反射膜としても機能している。したがって、機能層132における発光を無駄なく素子基板101側から取り出し、明るいカラー表示が可能となっている。
本実施形態では、有機ELパネル100における有機EL素子130の形成方法として、気相プロセスと液相プロセスとが用いられている。詳しくは後述するが、画素電極131及び対向電極134、並びに機能層132のうち電子輸送層132d、電子注入層132eは、気相プロセスとしての真空蒸着法を用いて形成されている。機能層132のうち正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132r,132g,132b(図5(g)参照)は、液相プロセスとしての液滴吐出法(インクジェット法)が用いられている。
<有機ELパネルの製造方法(有機EL素子の形成方法)>
次に、有機ELパネル100の製造方法、とりわけ各サブ画素107R,107G,107Bに対応して配置される有機EL素子130の形成方法について、図3〜図5を参照して説明する。図3は有機ELパネルの製造方法を示すフローチャート、図4(a)〜(d)及び図5(e)〜(h)は有機ELパネルの製造方法を示す概略断面図である。
図3に示すように、有機ELパネル100の製造方法は、バンク形成工程(ステップS11)と、正孔注入層形成工程(ステップS12)と、正孔輸送層形成工程(ステップS13)と、発光層形成工程(ステップS14)と、電子輸送層形成工程(ステップS15)と、電子注入層形成工程(ステップS16)と、陰極形成工程(ステップS17)と、有機EL素子130が形成された素子基板101と封止基板102とを接着する基板接着工程(ステップS18)と、を少なくとも備えている。なお、素子基板101上に有機EL素子130を駆動するための画素回路を形成する工程や画素回路に電気的に接続した画素電極131を形成する工程は、公知の製造方法を用いればよく、本実施形態では詳細の説明は省略する。したがって、図4(a)〜(d)及び図5(e)〜(h)では、画素回路の図示を省略している。
図3のバンク形成工程(ステップS11)では、図4(a)に示すように、画素電極131の外縁を覆って画素電極131を区画するようにバンク133を形成する。バンク133の形成方法は、例えば、画素電極131が形成された素子基板101の表面に、例えばフッ素系の撥液材料を含む感光性レジスト(感光性樹脂材料)をおよそ1μm〜3μm程度の厚みで塗布して乾燥(プレベーク)することにより、レジスト層を形成する。感光性レジストの塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、転写法などが挙げられる。そして、サブ画素107R,107G,107Bの形状に対応した露光用マスクを用いてレジスト層を露光し、現像することにより断面が台形状のバンク133を形成する。バンク133は撥液材料を含んでおり、バンク133の表面が後述する機能液に対して好適な撥液性を示すと共に、バンク133中の溶媒成分を除去し、機能液に含まれる溶媒に対して不溶となるようにポストベークが施されている。以降、バンク133により区画された領域を膜形成領域Aと呼ぶ。なお、撥液材料を含まない感光性レジストを用いてバンク133を形成した後に、フッ素系の処理ガスに晒すことでバンク133の表面に撥液性を付与してもよい。
また、次工程で正孔注入層132aを液相プロセス(液滴吐出法)で形成するに際して、膜形成領域Aにおいて機能液がむらなく濡れ広がるように、画素電極131の表面のバンク残渣などの不要物を取り除く目的で表面処理を行ってもよい。表面処理方法としては、例えば紫外線を照射してオゾンを発生させ、オゾンの作用で上記不要物を酸化させて取り除く方法などを挙げることができる。表面処理は、画素電極131の表面を清浄化できればよく、例えば溶媒による洗浄・乾燥工程を行ってもよい。また、画素電極131の表面が清浄な状態であれば、表面処理を実施しなくてもよい。そして、ステップS12へ進む。
図4の正孔注入層形成工程(ステップS12)では、まず、図4(b)に示すように、正孔注入層形成材料を含む機能液70を膜形成領域Aに塗布する。機能液70は、例えば、溶媒に正孔注入層形成材料として例えばPEDOT/PSS(1/6)の混合物を重量比で1.0%〜2.0%程度含んだものを用いた。溶媒は、芳香族炭化水素、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスソルアミド(HMPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン(DMI)及びその誘導体、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエーテル類の中から少なくとも1種を選択して用いる。機能液70の粘度は、液滴吐出法を適用可能な程度(例えば、20mPa・s(ミリパスカル秒)以下)に溶媒の割合が調整されている。
機能液70を塗布する方法としては、機能液(インク)をノズルから液滴として吐出可能な吐出ヘッド(インクジェットヘッド)50を備えた液体吐出装置を用いる。吐出ヘッド50とワークである素子基板101とを対向させ、吐出ヘッド50から機能液70を吐出する。吐出された機能液70は、液滴として画素電極131に着弾して濡れ拡がる。また、乾燥・焼成後の正孔注入層132aの膜厚がおよそ50nm〜60nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。吐出された機能液70は、バンク133の表面が撥液性を有していることも手伝って、膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
乾燥・焼成工程では、素子基板101を例えば真空乾燥後、大気雰囲気下で150℃、1時間程度加熱する焼成処理を行う。これにより、機能液70の溶媒成分を蒸発させて除去し、図4(c)に示すように膜形成領域Aの画素電極131上に正孔注入層132aを形成する。なお、本実施形態では、各膜形成領域Aに同一材料からなる正孔注入層132aを形成したが、後に形成される発光層に対応して正孔注入層132aの材料を発光色ごとに変えてもよい。そしてステップS13へ進む。
図3の正孔輸送層形成工程(ステップS13)では、図4(d)に示すように、正孔輸送層形成材料を含む機能液80を膜形成領域Aに塗布する。
機能液80は、溶媒として例えばジメチルナフタレンを含み、正孔輸送層形成材料として例えばトリフェニルアミン系ポリマー(TFB)を重量比で1.5%〜2.0%程度含んだものを用いた。機能液80の粘度も、液滴吐出法を適用可能な程度に溶媒の割合が調整されている。
機能液80を塗布する方法としては、機能液70を塗布する場合と同様に、吐出ヘッド50を備えた液体吐出装置を用いる。乾燥・焼成後の正孔輸送層132cの膜厚がおよそ10nm〜30nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。機能液80も膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
乾燥・焼成工程では、素子基板101を例えば真空乾燥後、窒素雰囲気下で180℃、1時間程度加熱する焼成処理を行う。これにより、機能液80の溶媒成分を蒸発させて除去し、図5(e)に示すように膜形成領域Aの正孔注入層132a上に正孔輸送層132cを形成する。そしてステップS14へ進む。
図3の発光層形成工程(ステップS14)では、図5(f)に示すように、発光層形成材料を含む機能液90R,90G,90Bをそれぞれ対応する膜形成領域Aに塗布する。
機能液90R,90G,90Bは、溶媒として例えばジメチルナフタレンを含んでおり、発光層形成材料(蛍光発光材料もしくは燐光発光材料を含む)を重量比で1.5%〜2.0%程度含んだものを用いた。機能液90R,90G,90Bの粘度も、液滴吐出法を適用可能な程度にそれぞれ溶媒の割合が調整されている。
機能液90R,90G,90Bを塗布する方法は、やはり吐出ヘッド50を備えた液体吐出装置を用い、それぞれ異なる吐出ヘッド50に充填されて吐出される。
機能液90R,90G,90Bは、乾燥・焼成後の発光層132r,132g,132bの膜厚がおよそ60nm〜80nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出される。機能液90R,90G,90Bもまた、膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
本実施形態における吐出された機能液90R,90G,90Bの乾燥・焼成工程は、一般的な加熱乾燥に比べて溶媒成分を比較的均一に乾燥可能な真空乾燥を用いている。また、真空乾燥後、窒素雰囲気下で130℃、30分程度加熱する焼成処理を行う。膜形成領域Aには満遍なく必要量の機能液90R,90G,90Bが塗布されているので、図5(g)に示すように、乾燥・焼成後に形成された発光層132r,132g,132bは膜形成領域Aごとにほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)を有する。これにより、各機能層132R,132G,132Bができあがる。そして、ステップS15へ進む。
次に、図3の電子輸送層形成工程(ステップS15)〜陰極形成工程(ステップS17)では、気相プロセスにより、電子輸送層132d、電子注入層132e、陰極としての対向電極134を形成する。具体的には、前述した各層の材料を例えば真空蒸着法により逐次成膜して、図5(h)に示すように、バンク133で区画された膜形成領域Aと、露出したバンク133の表面とを覆って、各層を積層形成する。特に、機能層132の熱による損傷を防止できるという点では、対向電極134を真空蒸着法で形成することが好ましい。また、機能層132に外部から水分や酸素などのガスが浸入して、機能層132の発光機能や発光寿命が低下することを防ぐために、対向電極134の表面を覆うように、ガスバリア性を有する例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいはシリコンの酸窒化物などの無機材料を成膜してもよい。これにより、優れた発光特性(発光輝度、発光寿命など)を有する有機EL素子130R,130G,130Bができあがる。
電子輸送層132dの構成材料(電子輸送材料)としては、特に限定されないが、蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、BALq、OXD−1(1,3,5−トリ(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール))、BCP(Bathocuproine)、PBD(2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール)、TAZ(3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール)、DPVBi(4,4’−ビス(1,1−ビスージフェニルエテニル)ビフェニル)、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール)、DTVBi(4,4’−ビス(1,1−ビス(4−メチルフェニル)エテニル)ビフェニル)、BBD(2,5−ビス(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール)などを挙げることができる。
また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体などを挙げることができる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層132dの膜厚は、特に限定されないが、1nm〜100nmの範囲にあることが好ましく、5nm〜50nmの範囲にあることがより好ましい。
電子注入層132eの構成材料(電子注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。
アルカリ金属の化合物としては、例えば、LiF、Li2CO3、LiCl、NaF、Na2CO3、NaCl、CsF、Cs2CO3、CsClなどのアルカリ金属塩が挙げられる。また、アルカリ土類金属の化合物としては、例えば、CaF2、CaCO3、SrF2、SrCO3、BaF2、BaCO3などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。
電子注入層132eの膜厚は、特に限定されないが、0.01nm〜10nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜5nmの範囲であることがより好ましい。
対向電極134の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。また、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Auまたはこれらを含む合金等が用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
特に、本実施形態のように、ボトムエミッション構造の有機ELパネル100とする場合、対向電極134には光透過性が求められず、対向電極134の構成材料としては、例えば、Al、Ag、AlAg、AlNd等の金属または合金が好ましく用いられる。このような金属または合金を対向電極134の構成材料として用いることにより、対向電極134の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。
ボトムエミッション構造における対向電極134の膜厚は、特に限定されないが、50nm〜1000nmの範囲にあることが好ましく、100nm〜500nmの範囲にあることがより好ましい。ここまでが、有機EL素子130の形成工程を示すものである。そして、ステップS18へ進む。
図3の基板接着工程(ステップS18)では、有機EL素子130が形成された素子基板101に封止層を塗布して、封止基板102と隙間なくベタ封止する。さらに封止基板102の外周領域において水分や酸素等の浸入を防ぐ接着層を設けて接着することが望ましい。これにより、水分や酸素の影響を受けて有機EL素子130の発光機能が損なわれ難い優れた表示品質を有する有機ELパネル100ができあがる。
以上のような有機EL素子130の形成方法によれば、液相プロセス(液滴吐出法)により成膜された機能層132R,132G,132Bは、ほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)の正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132r,132g,132bを有している。したがって、膜厚ムラに起因する輝度ムラが低減された有機EL素子130を形成することができる。
このようにして製造された異なる発光色が得られる有機EL素子130を備えた有機ELパネル100は、所望の発光特性が実現され、見映えのよいカラー表示が可能である。
一方で、上記有機EL素子130の形成方法は、上述したように気相プロセスと液相プロセスとを用いている。気相プロセスは、例えば真空蒸着法のように減圧されたチャンバー内に素子基板101を配置して行われる。これに対して液相プロセスは、例えば液滴吐出法のように常圧下に素子基板101を配置して行われる。液相プロセスは、クリーン度が管理された環境下で行われるものの、気相プロセスに比べて異物などが混入し易い。有機EL素子130の形成過程、とりわけ液相プロセスを用いる機能層132の形成過程で異物が混入すると、機能層132における発光機能が低下あるいは失われてダークスポット(DS)と呼ばれる暗点が生ずる。ダークスポット(DS)は、有機EL素子130を駆動して発光させることにより確認することができる。大きさがおよそ0.1mm以上のダークスポット(DS)がある有機EL素子130すなわちサブ画素107は、視認され易く欠陥画素として扱われる。ダークスポット(DS)を科学的に分析することにより異物の大きさや材質を特定することができる。複数のダークスポット(DS)を分析した結果、異物の大きさはダークスポット(DS)の大きさの1/3〜1/8程度であることが分かった。また、異物の種類も様々で、有機物や無機物であることが分かった。しかしながら、異物がどの工程で混入したのか、また異物は環境由来なのか、あるいは機能層132を構成する各層の形成材料に含まれるものなのか、とりわけ液相プロセスでは機能液に含まれるものなのか、特定することは難しかった。そこで、発明者らは、ダークスポット(DS)の観察と科学的な分析とを繰り返すことで、これまでに比べて、機能層132のうち異物が含まれる層や、異物の材質を容易に特定することが可能な異物判定方法を開発した。以降、有機EL素子130の異物判定方法について説明する。
<有機EL素子の異物判定方法>
本実施形態の有機EL素子130の異物判定方法について、図6〜図8を参照して説明する。図6は有機EL素子の異物判定方法を示すフローチャート、図7は有機EL素子の異物判定装置の構成を示す概略図、図8(a)〜(c)は異物判定方法を説明する図である。なお、図8(a)〜(c)は赤色の発光が得られる有機EL素子130Rを示すものである。
図6に示すように、本実施形態の有機EL素子130の異物判定方法は、有機EL素子130(有機ELパネル100)を点灯(発光)させて、ダークスポット(DS)が有るか否か(有/無;YES/NO)を判定するステップS1(第1のステップ)と、ダークスポット(DS)がある有機EL素子130に可視光を照射して、異物が有るか否か(有/無;YES/NO)を判定するステップS2(第2のステップ)と、有機EL素子130を点灯(発光)させると共に可視光を照射して、異物が有るか否か(有/無;YES/NO)を判定するステップS3(第3のステップ)と、を備えている。また、ステップS2〜ステップS3によって異物の存在が認められた場合、あるいは推定された場合に、当該異物に紫外線(UV)を照射して蛍光を発するか否か(YES/NO)を判定するステップS4(第4のステップ)をさらに備えている。
図7に示すように、本実施形態の有機EL素子130の異物判定方法に用いられる異物判定装置500は、実体顕微鏡501と、これを制御するコントローラー520とを含んで構成されている。実体顕微鏡501により有機ELパネル100のサブ画素107R,107G,107B(有機EL素子130R,130G,130B)のダークスポット(DS)を観察して、異物を判定する装置である。
実体顕微鏡501は、有機ELパネル100を載置可能なテーブル502と、テーブル502の長手方向(X方向)、短手方向(Y方向)、法線方向(Z方向)にテーブル502を移動可能な状態で支持するテーブル支持部503aと、テーブル502の法線方向(Z方向)における上方側に位置する鏡筒支持部503bとを有している。テーブル支持部503aと鏡筒支持部503bとは一体となっており、実体顕微鏡501における支持部503を構成するものである。
テーブル支持部503aには、テーブル502を上下方向(Z方向)に移動させる回転式の操作部(つまみ)503cが取り付けられている。テーブル502には、テーブル502をX方向とY方向とに移動させるための操作部503dが取り付けられている。
鏡筒支持部503bには、鏡筒506と、対物レンズ取付け部504とが、鏡筒506の光軸周りにそれぞれ回動可能に取り付けられている。
鏡筒支持部503bのY方向の後端に光源505が取り付けられている。また、鏡筒支持部503bには、光源505と鏡筒506との間の光軸に直交するX方向に移動可能な状態でフィルター508が取り付けられている。
鏡筒506の上部には撮像装置507が取り付けられている。鏡筒506の上部側面には両眼に対応した2つの接眼レンズ509が取り付けられている。
対物レンズ取付け部504には、倍率が異なる複数の対物レンズ510が取り付けられており、対物レンズ取付け部504を回転させることにより、所望の倍率の対物レンズ510を鏡筒506の光軸上に配置することができる。対物レンズ510の倍率は、接眼レンズ509を通して少なくとも0.5μm(ミクロン)の大きさの異物を視認可能となるように適宜設定される。対物レンズ510に対してテーブル502を上下動させて光学的な焦点を異物に合わせ、異物の大きさを確認する。したがって、この場合、大きさが0.5μm以上の異物があれば、「異物あり」として判定されることになる。言い換えれば、0.5μm未満の異物は、「異物なし」と判定される。なお、異物の有無を判定する大きさの基準は、0.5μmであることに限定されるものではない。
コントローラー520は、光源505及び撮像装置507の制御回路と、有機ELパネル100を点灯(発光)させることが可能な駆動回路とを備えている。コントローラー520の筐体の上面には、2つのスイッチ(SW)521,522と、スイッチ機能付きのボリューム(VOL;可変抵抗器)523とが設けられている。
コントローラー520と光源505とは接続ケーブル524を介して電気的に接続されている。同様に、コントローラー520と撮像装置507とは接続ケーブル525を介して電気的に接続されている。また、テーブル502に載置される有機ELパネル100とコントローラー520とは接続ケーブル526を介して電気的に接続される。なお、これらの接続ケーブル524,525,526はそれぞれ脱着可能となっている。
SW521は光源505のON/OFFを切り替える。SW522は撮像装置507における撮像のON/OFFを切り替える。VOL523は、有機ELパネル100のON/OFF(点灯・非点灯)を切り替えると共に、ON状態における輝度の調整(駆動電圧の調整)が可能となっている。
図7には図示を省略したが、撮像装置507で撮像した画像を表示可能なモニターや画像を保存可能な記録装置などがコントローラー520に接続可能となっている。また、コントローラー520は接続された各種装置に電源を供給可能となっている。
実体顕微鏡501の光源505は、紫外光波長領域(300nm〜400nm)から可視光波長領域(400nm〜700nm)までの光を発する構成となっている。フィルター508は、紫外光波長領域の光をカットする第1の部分と、紫外光波長領域及び可視光波長領域の光を透過させる第2の部分とを有しており、X方向にスライドさせることにより、光源505と鏡筒506との間の光軸上に上記第1の部分と上記第2の部分とをそれぞれ配置できる構成となっている。
まず、ステップS1では、有機ELパネル100をコントローラー520に接続してすべてのサブ画素107R,107G,107B(有機EL素子130R,130G,130B)を点灯(発光)させる。本実施形態では、まず目視によりダークスポット(DS)が有るか否か(YES/NO)を確認する。ダークスポット(DS)があるサブ画素107(有機EL素子130)の位置を特定できるようにマーキングを施す。もちろん、ダークスポット(DS)がなければ(NO)、当該有機ELパネル100は問題なしとして、他の有機ELパネル100を観察する。なお、予め点灯検査してダークスポット(DS)がある有機ELパネル100を選別して用いてもよい。
次に、ステップS2では、ダークスポット(DS)がある有機ELパネル100を点灯させないで実体顕微鏡501のテーブル502に載置する。そして、紫外光波長領域の光をカットする第1の部分が光軸上に配置されるようにフィルター508の位置を調整し、光源505を点灯させてダークスポット(DS)があるサブ画素107R(有機EL素子130R)に可視光を照射して観察する。このとき、有機ELパネル100は、図8(a)〜(c)に示すように、透光性の素子基板101側から可視光が入射するようにテーブル502上に配置される。図8(a)に示すように、機能層132Rのうち素子基板101に最も近い第1層である正孔注入層132aに異物が含まれる場合、可視光によって照明することで容易に異物を視認できる。素子基板101からさらに離れた正孔輸送層132cや発光層132rに異物が含まれていても途中に他の層があるので、異物は視認され難い。言い換えれば、ダークスポット(DS)がある有機EL素子130Rに可視光を照射して異物が有る(YES)と判定したとき、当該異物は正孔注入層132a中に含まれると特定できる。つまり、当該異物は正孔注入層132aの形成工程で混入したものであると推定できる。
次に、ステップS3では、ダークスポット(DS)があるにも関わらず、ステップS2で異物が認められない有機EL素子130Rを点灯(発光)させた状態で、可視光を照射して観察する。このとき、図8(b)に示すように、第1層である正孔注入層132aと発光層132rとの間の第2層である正孔輸送層132cに異物があると、当該異物を視認することができる。正孔輸送層132c中の異物は、可視光の照射だけでは視認し難いが、発光層132rを発光させることで異物が照明されて視認可能となる。言い換えれば、ステップS2の可視光の照射で発見できず(NO)、発光層132rを発光させることで視認できる異物(YES)は、正孔注入層132aと発光層132rとの間の第2層である正孔輸送層132cに含まれると特定できる。つまり、当該異物は、正孔輸送層132cの形成工程で混入したものであると推定できる。
また、ダークスポット(DS)があるにも関わらず、ステップS2で異物が認められない有機EL素子130Rを点灯させた状態で、可視光を照射してもやはり異物が認められない場合(NO)は、図8(c)に示すように、ダークスポット(DS)を引き起こす異物が発光層132rにあると特定できる。発光層132r中の異物は発光層132rを発光させても異物の周囲からの発光の影響を受けて視認し難い。つまり、当該異物は発光層132rの形成工程で混入したものであると推定できる。
次に、ステップS4では、ステップS2及びステップS3で認められた正孔注入層132a中の異物、または正孔輸送層132c中の異物、あるいは発光層132r中の異物を有する有機EL素子130Rに対して、紫外光(UV)を照射して、当該異物が蛍光を発するか否か(YES/NO)を判定する。具体的には、テーブル502に有機ELパネル100を載置して、紫外光波長領域及び可視光波長領域の光を透過させる第2の部分が光源505と鏡筒506との間の光軸上に位置するようにフィルター508の位置を調整し、SW521を押下して光源505を点灯させる。これにより、有機EL素子130Rに含まれる異物に対物レンズ510を通して光源505から発した紫外光(UV)と可視光とが照射される。
紫外光(UV)が照射された当該異物が有機物である場合、当該異物は紫外光(UV)によって励起され蛍光を発する。とりわけ、当該異物が正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132rのそれぞれに含まれる有機半導体材料である場合、強い蛍光を発する。一方で紫外光(UV)を長時間に亘って有機EL素子130に照射すると、機能層132Rにおける発光機能が損なわれるおそれがある。本実施形態では、光源505の電気的なパワーが例えば100W(ワット)であるとき、紫外光(UV)の照射時間をおよそ5秒程度としている。紫外光(UV)の照射時間が経過したら紫外光波長領域の光をカットする第1の部分が光源505と鏡筒506との間の光軸上に位置するようにフィルター508をX方向に移動させる。このようにすることで、紫外光(UV)の照射を止め、可視光を照射した状態で紫外光(UV)によって励起された蛍光を観察することが可能である。つまり、ダークスポット(DS)を引き起こす異物に対して紫外光(UV)を照射して、当該異物が蛍光を発する場合(YES)は有機物であると特定できる。また、有機物は正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132rを構成する材料に含まれると推定できる。
一方で、ダークスポット(DS)を引き起こす異物に対して紫外光(UV)を照射して、当該異物が蛍光を発しない場合(NO)は無機物であると特定できる。また、無機物は正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132rの各層を形成する工程で混入した環境由来のものであると推定できる。このような環境由来の無機物としては、金属や金属化合物(例えば、金属の酸化物、窒化物など)が挙げられる。
なお、上記異物判定方法の説明において、機能層132を構成する1つの層に異物が含まれるとは、当該異物が完全に当該1つの層に含まれる場合、または当該異物の大部分が当該1つの層に含まれ、当該異物の一部が他の層に含まれる場合を含むものである。
また、上記異物判定方法の説明は、赤色の発光が得られる有機EL素子130Rを例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の発光色が得られる有機EL素子130G,130Bについても同様に適用することができる。
また、ステップS1〜ステップS4において確認されたダークスポット(DS)や異物、あるいは異物の蛍光は、撮像装置507を用いて撮像することができる。撮像された画像は、前述したようにコントローラー520を介してモニターで確認したり、記録装置に保存したりすることができる。
上記実施形態の有機EL素子130の異物判定方法によれば、以下の効果が得られる。
(1)ダークスポット(DS)がある有機EL素子130に対して、有機EL素子130を発光させないで可視光を照射したり、有機EL素子130を発光させて可視光を照射したりして観察することで、ダークスポット(DS)を引き起こす異物が、機能層132のうちいずれの層に含まれるものか、科学的な分析を行わなくても容易に特定できる。これにより、異物が混入した工程を推定することができる。
なお、ステップS2とステップS3は、どちらを先に行っても異物の特定ができる。ただし、ステップS2の後にステップS3を実施することが望ましい。何故なら、ステップS2で異物が特定できた場合、検査のために有機EL素子130を再点灯させることがないため、有機EL素子130に余計な負荷をかけることがないし、再点灯させるためのエネルギーの節約にもなるからである。
(2)ダークスポット(DS)を引き起こす異物を含む有機EL素子130に紫外光(UV)を照射して、当該異物が蛍光を発するか否か確認することで、当該異物が有機物か無機物かを特定することができる。また、蛍光の発生具合により、当該異物が機能層132を構成する各層に由来するものかを推定することができる。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有機EL素子の異物判定方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)上記実施形態の有機EL素子130の異物判定方法を適用可能な有機ELパネル100は、赤、緑、青の有機EL素子130R,130G,130Bがそれぞれに独立した発光層132r,132g,132bを有する構成に限定されない。
図9は変形例の有機ELパネルにおける有機EL素子の構成を示す模式断面図である。例えば、図9に示すように、変形例の有機ELパネル200は、素子基板101上に配置され、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応して形成された画素電極131R,131G,131Bと、各画素電極131R,131G,131B上に液相プロセス(液滴吐出法)により形成された正孔注入層(HIL)132a及び正孔輸送層(HTL)132cとを有する。また、画素電極131R上において正孔輸送層(HTL)132cに積層された発光層(R−EML)132rと、画素電極131G上において正孔輸送層(HTL)132cに積層された発光層(G−EML)132gと、を有する。発光層(R−EML)132r及び発光層(G−EML)132gは液相プロセス(液滴吐出法)により形成されている。また、各画素電極131R,131G,131B上において、それぞれに共通して、気相プロセス(真空蒸着法)により形成されこの順に積層された、発光層(B−EML)132b、電子輸送層(ETL)132d、電子注入層(EIL)132e、対向電極134を有する。したがって、有機EL素子130Rは、液相プロセスで形成された発光層132rと、気相プロセスで形成された発光層132bとを有する。同様に、有機EL素子130Gは、液相プロセスで形成された発光層132gと、気相プロセスで形成された発光層132bとを有する。有機EL素子130Bは、気相プロセスで形成された発光層132bを有する。このような、有機EL素子130R,130G,130Bを有する有機ELパネル200は、ハイブリット方式と呼ばれるものであって、有機EL素子130R,130Gにおける発光層132bは電子輸送機能を有すると共に、正孔が電子輸送層132d側に漏れることを抑制する中間層として機能するものである。このような有機ELパネル200においても上記有機EL素子130の異物判定方法を適用することができる。
(変形例2)上記有機EL素子130の異物判定方法を適用可能な有機EL素子は、ボトムエミッション方式であることに限定されない。機能層132からの発光を対向電極(陰極)134側から取り出すトップエミッション方式、あるいは機能層132からの発光を画素電極131側と対向電極134側の双方から取り出す透過方式であってもよい。
(変形例3)上記有機EL素子130の異物判定方法を適用可能な有機EL素子は、機能層132を構成する各層のうち少なくとも1層が液相プロセスを用いて形成される場合に、異物の混入のおそれが高まることから特に有効であって、機能層132を構成する各層がすべて気相プロセスで形成されている場合にも有効である。
(変形例4)上記有機EL素子130の異物判定方法は、ステップS1〜ステップS4を順に行うことに限定されず、例えば、ダークスポット(DS)の有無を確認するステップS1の後に、ダークスポット(DS)を有する有機EL素子130を発光させ、可視光を照射して異物の有無を観察してもよい。これによって、異物を発見できれば、当該異物は第1層である正孔注入層132aまたは第2層である正孔輸送層132cに含まれると特定できる。また、異物を発見できなければ、ダークスポット(DS)を引き起こす異物が発光層に含まれると特定できる。また、紫外光(UV)を照射して異物が蛍光を発するか否か確認するステップS4は、ダークスポット(DS)の有無を確認するステップS1の後に、単独に実施してもよい。これによって、ダークスポット(DS)を引き起こす異物が有機物か無機物かを判別できる。
(変形例5)上記有機EL素子130の異物判定方法を適用する有機ELパネル100における有機EL素子130の数は、複数であることに限定されない。言い換えれば、1つの有機EL素子130を備えた面発光の発光体(例えば照明装置や露光装置など)に対しても適用できる。
100…有機ELパネル、101…基板としての素子基板、102…封止基板、107,107R,107G,107B…サブ画素、130,130R,130G,130B…有機EL素子、131…画素電極、132,132R,132G,132B…機能層、132a…第1層としての正孔注入層、132c…第2層としての正孔輸送層、132r,132g,132b…発光層、134…対向電極、200…変形例の有機ELパネル。

Claims (5)

  1. 発光層を含む機能層が一対の電極間に挟持された有機EL素子の異物判定方法であって、
    前記有機EL素子を発光させてダークスポットの有無を判定する第1のステップと、
    前記第1のステップでダークスポットが有る前記有機EL素子を発光させずに、可視光を照射して異物の有無を判定する第2のステップと、
    前記第1のステップでダークスポットが有る前記有機EL素子を発光させ、且つ前記可視光を照射して異物の有無を判定する第3のステップと、を備え、
    前記第2のステップで異物が有る場合には、当該異物は前記機能層のうち前記可視光の入射側に最も近い第1層に含まれると判定し、
    前記第3のステップで異物がある場合には、当該異物は前記機能層のうち前記第1層または前記第1層と前記発光層との間の第2層に含まれると判定し、
    前記第3のステップで異物がない場合には、当該異物は前記発光層に含まれると判定することを特徴とする有機EL素子の異物判定方法。
  2. 前記第2のステップの後、前記第3のステップを実施し、
    前記第2のステップで異物がなく、前記第3のステップで異物がある場合には、前記第2層に当該異物が含まれると判定することを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子の異物判定方法。
  3. 前記有機EL素子は、透明な基板上に形成されており、
    前記機能層のうち、前記第1層が正孔注入層であり、前記第2層が正孔輸送層であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子の異物判定方法。
  4. 前記第1のステップで異物が有る前記有機EL素子に紫外光を照射して前記異物が蛍光を発するか否か判定する第4のステップを、さらに備え、
    前記第4のステップで前記異物が蛍光を発する場合、前記異物が有機物であると判定し、
    前記第4のステップで前記異物が蛍光を発しない場合、前記異物が無機物であると判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL素子の異物判定方法。
  5. 前記機能層のうち少なくとも1層が液相プロセスで形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL素子の異物判定方法。
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