以下、図面を用いて一実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両用空調装置1は、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ(車載バッテリ)81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、駆動力制御装置70(図2)によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、バッテリ81から供給される電力による車室内の空調に加えて、車両走行前の車両停車時に外部電源から供給される電力によって車室内の空調(例えば、プレ空調)を実行可能に構成されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内に形成される空気通路は、外気側通路31aと内気側通路31bとに仕切板31c(仕切部)によって仕切られている。
ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、第1内気導入口21A、第2内気導入口21B、第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bが形成されている。第1内気導入口21Aは、外気側通路31aに内気を導入させる。第2内気導入口21Bは、内気側通路31bに内気を導入させる。第1外気導入口22Aは、外気側通路31aに外気を導入させる。第2外気導入口22Bは、内気側通路31bに外気を導入させる。
さらに、内外気切替箱20の内部には、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bが配置されている。
第1内外気切替ドア23Aは、第1内気導入口21Aおよび第1外気導入口22Aの開口面積を連続的に調整する。第2内外気切替ドア23Bは、第2内気導入口21Bおよび第2外気導入口22Bの開口面積を連続的に調整する。
従って、第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段(内外気比率調整手段)を構成する。より具体的には、第1内外気切替ドア23Aは、電動アクチュエータ62Aによって駆動され、第2内外気切替ドア23Bは、電動アクチュエータ62Bによって駆動される。この電動アクチュエータ62A、62Bは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、全内気モード、全外気モード、内外気混入モード、および内外気2層流モードがある。
内気モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2内気導入口21Bを全開とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bを全閉としてケーシング31内の外気側通路31aおよび内気側通路31bへ内気を導入する。
外気モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2内気導入口21Bを全閉とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bを全開としてケーシング31内の外気側通路31aおよび内気側通路31bへ外気を導入する。
内外気混入モードでは、内気モードと外気モードとの間で、第1内気導入口21A、第2内気導入口21B、第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bの開口面積を連続的に調整することにより、ケーシング31内の外気側通路31aおよび内気側通路31bへの内気と外気の導入比率を連続的に変化させる。
内外気2層流モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2外気導入口22Bを全開とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2内気導入口21Bを全閉としてケーシング31内の外気側通路31aへ外気を導入するとともに内気側通路31bへ内気を導入する。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、第1ファン32aおよび第2ファン32bを共通の電動モータ32cにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、この電動モータ32cは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
第1ファン32aおよび第2ファン32bは、遠心多翼ファン(シロッコファン)である。第1ファン32aは、外気側通路31aに配置されており、第1内気導入口21Aからの内気、および第1外気導入口22Aからの外気を外気側通路31aに送風する。第2ファン32bは、内気側通路31bに配置されており、第2内気導入口21Bからの内気、および第2外気導入口22Bからの外気を内気側通路31bに送風する。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、外気側通路31aおよび内気側通路31bの全域に亘って配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒(熱媒体)と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却・除湿する冷却手段(熱交換手段)として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61(図2)から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させて凝縮させる室外熱交換器(放熱器)である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内の外気側通路31aおよび内気側通路31bにおいて、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路、冷風バイパス通路が並列に形成されている。加熱用冷風通路には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。
外気側通路31aおよび内気側通路31bにおいて、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の空気流れ下流側には、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路から流出した空気を混合させる混合空間35A、35Bが形成されている。
ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)を熱媒体として蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱手段(熱交換手段)として機能する。エンジンEGは、冷却水を加熱する冷却水加熱手段(冷却水加熱手段)として機能する。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
冷風バイパス通路は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35A、35Bに導くための空気通路である。従って、混合空間35A、35Bにて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路を通過する空気および冷風バイパス通路を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、外気側通路31aおよび内気側通路31bにおける蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の入口側に、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39A、39Bを配置している。
エアミックスドア39A、39Bは、混合空間35A、35B内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39A、39Bは、共通の電動アクチュエータ63によって駆動される共通の回転軸と、その共通の回転軸に連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、外気側通路31aと内気側通路31bとを連通させる連通路31dが形成されている。ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、連通路31dを開閉する連通ドア38が配置されている。連通ドア38は、電動アクチュエータ65によって駆動される。この電動アクチュエータ65は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
全内気モード、全外気モードおよび内外気混入モードでは、連通ドア38が連通路31dを開けるので、外気側通路31aと内気側通路31bとが連通される。内外気2層流モードでは、連通ドア38が連通路31dを閉じるので、外気側通路31aと内気側通路31bとが連通せずに仕切られる。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35A、35Bから空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
フェイス吹出口24およびデフロスタ吹出口26は、外気側通路31aの送風空気流れ最下流部に配置されている。フット吹出口25は、内気側通路31bの送風空気流れ最下流部に配置されている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が、図2に示す操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、図2に示すシート空調装置90を備えている。シート空調装置90は、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段である。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26から吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータを備えていてもよい。シート送風装置は、座席の内側から乗員に向けて空気を送風する送風手段である。ステアリングヒータは、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリング加熱手段である。膝輻射ヒータは、輻射熱の熱源となる熱源光を乗員の膝に向けて照射する暖房手段である。シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御できる。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50(空調制御手段)、駆動力制御装置70(駆動力制御手段)および電力制御装置71(電力制御手段)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABoutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62A、62B、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、内気センサ51、外気センサ52(外気温検出手段)、日射センサ53、吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、冷却水温度センサ58、窓近傍湿度センサ59(湿度検出手段)、窓ガラス近傍空気温度センサ、および窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
内気センサ51は、車室内温度Trを検出する。外気センサ52は、外気温Tamを検出する。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する。吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する。吐出圧力センサ55は、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する。蒸発器温度センサ56は、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する。
冷却水温度センサ58は、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する。窓近傍湿度センサ59は、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度(以下、窓近傍相対湿度と言う。)を検出する。窓ガラス近傍空気温度センサは、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する。窓ガラス表面温度センサは、窓ガラス表面温度を検出する。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、窓近傍湿度センサ59、温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ60a、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60aは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。
さらに、操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、エコノミースイッチ60bが設けられている。
エコノミースイッチ60bは、環境への負荷の低減を優先させるスイッチである。エコノミースイッチ60bを投入することにより、車両用空調装置1の作動モードが、空調の省動力化を優先させるエコノミーモード(略してエコモード)に設定される。したがって、エコノミースイッチ60bを省動力優先モード設定手段と表現することもできる。
また、エコノミースイッチ60bを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。なお、駆動力制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
さらに、空調制御装置50は、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う電力制御装置71が電気的に接続されている。本実施形態の空調制御装置50には、電力制御装置71から出力される出力信号(空調用に使用を許可する空調使用許可電力を示すデータ等)が入力される。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風能力制御手段50aを構成し、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替手段50bを構成している。
また、冷却手段である蒸発器15の冷却能力を制御する構成が冷却能力制御手段50cを構成し、加熱手段であるヒータコア36の加熱能力を制御する構成が加熱能力制御手段を構成している。
また、空調制御装置50における駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力手段50dを構成している。また、駆動力制御装置70における空調制御装置50と制御信号の送受信を行うと共に、要求信号出力手段50d等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定する構成(作動要否決定手段)が、信号通信手段を構成している。
次に、図4〜図16により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図15中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。なお、電力状態信号が、外部電源から車両に電力を供給可能な状態(プラグイン状態)を示す場合には、外部電源フラグがONされ、外部電源から車両に電力を供給できない状態(プラグアウト状態)を示す場合には、外部電源フラグがOFFされる。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。従って、ステップS4は目標吹出温度決定手段を構成している。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調熱負荷として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、次の数式F2により仮のエアミックス開度SWddを算出して、ステップS52へ進む。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10,Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10,Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
続く、ステップS52では、ステップS51にて算出された仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。なお、この制御マップでは、図5のステップS52に示すように、仮のエアミックス開度SWddに対するエアミックス開度SWの値を非線形的に決定している。
これは、前述の如く、本実施形態では、エアミックスドア39として片持ちドアを採用しているために、エアミックス開度SWの変化に対する実際の送風空気の流れ方向から見た冷風バイパス通路の開口面積および加熱用冷風通路の開口面積の変化が非線形的な関係となるからである。
次のステップS6では、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。このステップS6の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。
図6に示すように、まず、ステップS611では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS612で、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS611にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS613で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮ブロワレベルf(TAO)を決定する。
本実施形態における仮ブロワレベルf(TAO)を決定する制御マップは、TAOに対する仮ブロワレベルf(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。
すなわち、図6のステップS613に示すように、TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように仮ブロワレベルf(TAO)を高レベルに上昇させる。
また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。
そして、TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜40℃)に入ると、送風機32の風量が最低風量となるように仮ブロワレベルf(TAO)を低レベルに低下させる。これにより、空調熱負荷に応じた基本ブロワレベルが算出される。
上述の説明から明らかなように、この仮ブロワレベルf(TAO)は、TAOに基づいて決定される値であるから、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
続くステップS614では、窓近傍湿度センサ59が検出した窓近傍相対湿度に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を決定する。
すなわち、図6のステップS614に示すように、窓近傍相対湿度が95%未満の場合、下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を0とし、窓近傍相対湿度が100%以上の場合、下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を20とし、窓近傍相対湿度が95%以上100%未満の場合、窓近傍相対湿度の上昇に応じて下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を上昇させる。
続くステップS615では、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。具体的には、次の数式F3によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MAX(f(TAO),f(窓近傍相対湿度))…(F3)
なお、数式F3のMAX(f(TAO),f(窓近傍相対湿度))とは、f(TAO)およびf(窓近傍相対湿度)のうち大きい方の値を意味している。
そして、ステップS616へ進み、ステップS615にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
すなわち、図6のステップS615に示すように、ブロワレベルの上昇に応じて送風機電圧(ブロワモータ電圧)を上昇させる。
これによると、窓近傍相対湿度が高いほど下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)が大きな値に決定される。このため、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、ブロワレベルとして下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)が選択されやすくなって、送風機32の送風能力が増加されやすくなる。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。このステップS7の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。図7に示すように、まず、ステップS701では、蒸発器15を乾燥させる時間(蒸発器乾燥時間)を外気温に基づいて演算する。
具体的には、外気温が高い場合、蒸発器乾燥時間が長く設定される。すなわち、外気温が高い程、冷凍サイクル10の作動時に蒸発器15で発生した凝縮水の量が多くなることから、蒸発器15が乾くのに時間がかかるためである。図7の例では、外気温0℃で30秒、外気温10℃、20℃で120秒としている。
外気の湿度が低い場合、蒸発器乾燥時間を短く設定してもよい。外気湿度が低い程、外気導入による蒸発器15の乾燥が早くなるからである。送風機32の風量が多い程、蒸発器乾燥時間を短く設定してもよい。送風機32の風量が多い程、蒸発器15が早く乾くからである。
次に、ステップS702では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS703〜S705で、マニュアルモードに応じた外気導入率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、吸込口モードが全内気モード(RECモード)の場合、外気率を0%に決定し(ステップS704)、吸込口モードが全外気モード(FRSモード)の場合、外気率を100%に決定する(ステップS705)。外気率は、内外気切替箱20からケーシング31内に導入される導入空気(外気および内気)のうち外気が占める比率である。
一方、ステップS702にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS706へ進み、ステップS4で算出した目標吹出温度TAOに基づいて、空調運転状態が冷房運転か暖房運転かを判定する。図7の例では、目標吹出温度TAOが25℃を上回っている場合、暖房運転と判定し、それ以外の場合、冷房運転と判定する。
冷房運転と判定した場合、ステップS707へ進み、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、TAOが低いときは外気率を小さくし、TAOが高いときは外気率を大きくする。図7の例では、TAO≦0℃であれば外気率を0%とし、TAO≧15℃であれば外気率を100%とし、0℃<TAO<15℃であればTAOが高いほど外気率を0〜100%の範囲で大きくする。
外気率が0%に設定された場合、吸込口モードが全内気モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。外気率が100%に設定された場合、吸込口モードが全外気モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。
外気率が50%に設定された場合、吸込口モードが内外気2層流モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。外気率が0%超、50%未満または50%超、100%未満に設定された場合、吸込口モードが内外気混入モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。
このように、本例では、内外気2層流モード時の外気率は50%であるが、内外気2層流モード時の外気率は、室内空調ユニット30の仕様によって異なる。
一方、ステップS706にて、暖房運転と判定された場合、ステップS708へ進み、圧縮機11が停止しているか否かを判定する。具体的には、ステップS9における圧縮機11の回転数を決定する制御処理にて圧縮機11の回転数が0に決定されているか否かを判定する。
圧縮機11が停止していない、すなわち圧縮機11が作動していると判定した場合、ステップS709へ進み、外気率を100%に決定してステップS8へ進む。これにより、内気よりも低温の外気が蒸発器15に吸い込まれるので、圧縮機11の消費動力を低減して燃費を向上できる。
一方、圧縮機11が停止していると判定した場合、ステップS710へ進み、送風機32が作動(ON)しているか否かを判定する。送風機32が作動していると判定した場合、ステップS711へ進み、蒸発器乾燥タイマをカウントしてステップS713へ進む。送風機32が停止(OFF)していると判定した場合、ステップS712へ進み、蒸発器乾燥タイマを停止してステップS713へ進む。
ステップS713では、蒸発器乾燥タイマのカウント時間が、ステップS701で設定された蒸発器乾燥時間以上であるか否かを判定する。蒸発器乾燥タイマのカウント時間が蒸発器乾燥時間以上であると判定した場合、蒸発器15から臭いが発生しない程度に蒸発器15が乾いていると判断されるので、ステップS714へ進み、窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、窓ガラス表面の相対湿度RHWが高いときは外気率を大きくし、窓ガラス表面の相対湿度RHWが低いときは外気率を小さくする。ステップS714で設定される外気率の最大値は、内外気2層流モード時の外気率(図7の例では50%)になっている。
図7の例では、RHW≧95%であれば外気率を50%(内外気2層流モード時の外気率)とし、RHW≦70%であれば外気率を20%とし、70%<RHW<95%であればRHWが低くなるにつれて外気率を50%から20%まで小さくする。これにより、RHWが低いほどヒータコア36の吸込空気温度を高くすることができるので、暖房性能を向上できるとともに、暖房のために消費される動力を低減できる。
ステップS714において、窓ガラス表面の相対湿度RHWの代わりに、窓ガラスが曇る可能性を推定できる種々の物理量を用いてもよい。
一方、ステップS713において、蒸発器乾燥タイマのカウント時間が、ステップS701で設定された蒸発器乾燥時間以上でないと判定した場合、蒸発器15が凝縮水で湿っていて臭いが発生する可能性があると判断されるので、ステップS715へ進み、外気率を、内外気2層流モード時の外気率(図7の例では50%)に決定してステップS8へ進む。なお、内外気2層流モード時の外気率は、室内空調ユニット30の仕様によって異なる。
すなわち、ステップS713では、蒸発器15が乾いていると判断される場合(ステップS714)と比較して、外気率が大きく設定される。換言すれば、蒸発器15が乾いていると判断される場合と比較して内気率を小さく制限する内気比率制限制御を行う。内気率は、内外気切替箱20からケーシング31内に導入される導入空気(外気および内気)のうち内気が占める比率である。
このように、除湿停止時でも、蒸発器15が凝縮水で湿っていると判定されるときは、内気率上昇を抑制することによって内気の割合を少なくできるので、内気が外気よりも高温になる暖房状態においては蒸発器15に流入する空気の温度を低下させることができる。そのため、蒸発器15が乾いて臭いが発生することを抑制できるので、乗員の不快感を低減できる。
また、外気側通路31aに低温の外気が導入されるので、外気側通路31aにおいては蒸発器15が乾く速度が遅くなって臭いの発生が抑制される。そして、外気側通路31aの空気が乗員の上半身に吹き出されるので、臭いを感じやすい上半身への吹出空気における臭いを低減でき、ひいては乗員の不快感を一層低減できる。
また、内気側通路31bに高温の内気が導入され、内気側通路31bの空気が乗員の下半身へ吹き出されるので、温風を快適に感じやすい乗員の下半身への吹出空気の温度を高めることができ、ひいては乗員の暖房感を高めることができる。また、内気側通路31bにおいてはヒータコア36で冷却水から奪われる熱量を低減できるので、エンジンEGの作動頻度を下げてもヒータコア36通過後の空気温度を高く維持することが可能になり、ひいては車両の実用燃費を向上できる。
また、内気の比率を小さくすることによって、車室内の換気が促進される。そのため、駐車時(空調停止時)に車室内にこもった臭いを外部に排出できるので、車室内にこもった臭いが空調開始時に室内空調ユニット30に吸い込まれて再び車室内に吹き出されることを抑制できる。
次のステップS8では、吹出口モード、すなわちフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aの切替状態を決定する。このステップS8の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。
図8に示すように、まず、ステップS81では、TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮吹出口モードf1(TAO)を決定する。
本実施形態では、図8のステップS81に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて仮吹出口モードf1(TAO)をフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。なお、図8のステップS81に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
続くステップS82では、仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードであるか否かを判定する。仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードであると判定した場合、ステップS83へ進み、窓近傍湿度センサ59が検出した窓近傍相対湿度に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。
具体的には、窓近傍相対湿度が95%未満の場合、吹出口モードを、ステップS81で決定した仮吹出口モードf1(TAO)とし、窓近傍相対湿度が95%以上99%未満の場合、吹出口モードをフットデフロスタモードとし、窓近傍相対湿度が99%以上の場合、吹出口モードをデフロスタモードとする。なお、図8のステップS83に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
一方、ステップS82にて仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードでないと判定した場合、ステップS84へ進み、吹出口モードを、ステップS81で決定した仮吹出口モードf1(TAO)とする。
これにより、窓近傍相対湿度が高くて窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合にフットデフロスタモードまたはデフロスタモードを選択して、デフロスタ吹出口26から吹き出される風量の割合を増加させることができる。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。なお、ステップS9における圧縮機回転数の決定は、図4のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
このステップS9の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。図9に示すように、まず、ステップS901では、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。具体的には、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップ(例えば図10)を参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))を算出し、偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
次のステップS902では、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されているか否か(エコモードになっているか否か)が判定される。
ステップS902にて、エコノミースイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS903へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を10000rpmとしてステップS905へ進む。
エコノミースイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS904へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を7000rpmとしてステップS905へ進む。
つまり、エコノミースイッチが投入されている場合は、投入されていない場合よりも圧縮機11の回転数の上限値を低下させて車室内の空調を行うために消費されるエネルギ(電気エネルギ)を低減させている。
ステップS905では、空調使用許可電力から圧縮機消費電力を減算した値、すなわち空調使用許可電力−圧縮機消費電力の値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を決定する。
空調使用許可電力は、「車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力」であり、電力制御装置71から空調制御装置50に出力される。
本実施形態では、電力制御装置71は、空調使用許可電力を次のように算出する。まず、仮の空調使用許可電力と空調使用可能電力とを算出し、仮の空調使用許可電力および空調使用可能電力のうち小さい方の値を空調使用許可電力とする。
仮の空調使用許可電力は次のように算出される。エコモードでなく且つバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っていない場合、仮の空調使用許可電力を8000Wに決定する。エコモードである場合、またはバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っている場合、仮の空調使用許可電力を4000Wに決定する。
空調使用可能電力は、次の数式F4により算出される。
空調使用可能電力=最大供給電力−空調以外の消費電力…(F4)
最大供給電力は、バッテリ81が供給できる最大の電力のことであり、空調以外の消費電力は、空調以外の用途で消費される電力のことである。
具体的には、ステップS905では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を次のように決定する。図9のステップS905に示すように、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極小域(本実施形態では、−1000W以下)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が負の値(本実施形態では、−300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極大域(本実施形態では、1000W以上)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が正の値(本実施形態では、+300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の中間域(本実施形態では、−1000W以上、1000W以下)では、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の上昇に応じて回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を増加させる。
次のステップS906では、圧縮機11の回転数変化量Δfを次の数式F5により算出して、ステップS907へ進む。
Δf=MIN(Δf,f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))…(F5)
なお、数式F5のMIN(Δf,f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))とは、Δfおよびf(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)のうち小さい方の値を意味している。
続くステップS907〜S910では、圧縮機11を自動停止する圧縮機自動停止制御を行うか否かを判定する。まず、ステップS907では、外気温が15℃未満であるか否かを判定する。外気温が15℃未満であると判定した場合、圧縮機11を停止しても外気を導入すれば蒸発器15の乾燥が遅く臭いが発生しにくいと判断できるので、ステップS908へ進み、吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)でないか否かを判定する。
吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)でないと判定した場合、圧縮機11を停止しても外気の導入によって蒸発器15の乾燥が遅く臭いが発生しにくいと判断できるので、ステップS909へ進み、窓ガラス表面の相対湿度RHWが100%未満であるか否かを判定する。
窓ガラス表面の相対湿度RHWが100%未満であると判定した場合、圧縮機11を停止して除湿を行わなくても窓ガラスが曇りにくいと判断できるので、ステップS910へ進み、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っているか否かを判定する。
車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っていると判定した場合、冷房運転が必要ないと判断できるので、ステップS911へ進み、今回の圧縮機回転数を0に決定する。これにより、圧縮機自動停止制御を行って圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。すなわち省エネルギー化できる。
一方、ステップS907で外気温が15℃未満でないと判定した場合、ステップS908で吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)であると判定した場合、ステップS909で窓ガラス表面の相対湿度RHWが100%未満でないと判定した場合、またはステップS910で車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っていないと判定した場合、圧縮機11を作動させて蒸発器15で空気を冷却・除湿する必要があると判断できるので、ステップS912へ進み、今回の圧縮機回転数を次の数式F6により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}…(F6)
なお、数式F6のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfおよびMAX回転数のうち小さい方の値を意味している。
これにより、圧縮機11を作動させる必要がある場合であっても、エコモード時や圧縮機消費電力が大きい場合、すなわち空調用電力を減少させる必要がある場合に圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させて圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
このステップS10の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
ステップS102、S103では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
一方、エアミックス開度が第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定して、ステップS11へ進む。
ステップS104では、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw<第1所定温度T1であれば作動本数を3本とし、第1所定温度T1≦冷却水温度Tw<第2所定温度T2であれば作動本数を2本とし、第2所定温度T2≦冷却水温度Tw<第3所定温度T3であれば作動本数を1本とし、第3所定温度T3≦冷却水温度Twであれば作動本数を0本とする。
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4所定温度T4<冷却水温度Twであれば作動本数を0本とし、第5所定温度T5<冷却水温度Tw≦第4所定温度T4であれば作動本数を1本とし、第6所定温度T6<冷却水温度Tw≦第5所定温度T2であれば作動本数を2本とし、冷却水温度Tw≦第6所定温度T6であれば作動本数を3本としてステップS11へ進む。
なお、各所定温度には、T3>T2>T4>T1>T5>T6の関係があり、本実施形態では、具体的に、T3=75℃、T2=70℃、T4=67.5℃、T1=65℃、T5=62.5℃、T6=57.5℃としている。また、上昇過程、および下降過程、における各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)や、EV/HV運転モードの要求信号等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満たした場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
ステップS11の詳細については、図12、図13のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101では、ステップS4で決定した目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、仮のエンジンOFF水温f(TAO)を決定する。仮のエンジンOFF水温f(TAO)は、車両用空調装置が高い暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度である。
具体的には、図12のステップS1101に示すように、TAOが30℃未満の場合、仮のエンジンOFF水温f(TAO)を40とし、TAOが85℃以上の場合、仮のエンジンOFF水温f(TAO)を75とし、TAOが30℃以上85℃未満の場合、TAOの上昇に応じて仮のエンジンOFF水温f(TAO)を上昇させる。
続くステップS1102では、EV運転モードであるか否かを判定する。なお、本実施形態のハイブリッド車両では、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めて走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとしている。
より具体的には、図14の図表に示すように運転モードが決定されている。また、乗員の操作によって、駆動力制御装置70に対して、EV運転モードを実行しないことを要求するEVキャンセルスイッチが投入(ON)されている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であっても、HV運転モードとしている。
図12に示すステップS1102にてEV運転モードであると判定された場合、ステップS1103へ進み、窓近傍湿度センサ59が検出した窓近傍相対湿度に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)を決定する。仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)は、防曇性を確保するために望ましい冷却水温度である。
具体的には、図12のステップS1103に示すように、窓近傍相対湿度が70%未満の場合、仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)を40とし、窓近傍相対湿度が95%以上の場合、仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)を55とし、窓近傍相対湿度が70%以上95%未満の場合、窓近傍相対湿度の上昇に応じて仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)を上昇させる。
仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)の上限値は55に設定されており、上述の仮のエンジンOFF水温f(TAO)の上限値は75に設定されている。したがって、仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)の上限値は、仮のエンジンOFF水温f(TAO)の上限値よりも大幅に小さく設定されている。
続くステップS1104では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる閾値であり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる閾値である。
エンジンON水温Twonは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の下限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度TwがエンジンON水温Twonを下回ったら冷却水温度Twを昇温させるためにエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS11は、下限温度決定手段を構成している。
エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS11は、上限温度決定手段を構成している。
換言すると、本実施形態の制御ステップS11は、下限温度および上限温度を決定する温度決定手段を構成している。
ステップS1104では、具体的には、エンジンOFF水温Twoffを、次の数式F7により算出する。
エンジンOFF水温Twoff=MIN(f(窓近傍相対湿度),f(TAO))…(F7)
なお、数式F7の(f(窓近傍相対湿度),f(TAO))とは、f(窓近傍相対湿度)およびf(TAO)のうち小さい方の値を意味している。本実施形態では、通常の使用環境において、基本的にf(窓近傍相対湿度)≦f(TAO)となるように、ステップS1101、S1103の制御マップが設定されている。
一方、エンジンON水温Twonを、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定する。この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。これにより、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止することができる。
続くステップS1105では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1104で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS1106では、送風機32の作動状態、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図4に示すステップS12へ進む。
具体的には、ステップS1106では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
また、送風機32が作動しているときであって、目標吹出温度TAOが28℃以上の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONであれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
制御ステップS1104にて説明したように、仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)および仮のエンジンOFF水温f(TAO)のうち小さい方の値をエンジンOFF水温Twoffとして選択するので、仮のエンジンOFF水温f(TAO)のみをエンジンOFF水温Twoffとして選択する場合と比較してエンジンEGを停止させる要求信号に決定される頻度が増加し、エンジンEGを作動させる要求信号に決定される頻度が減少する。
しかも、制御ステップS1103にて説明したように、仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)の上限値は、仮のエンジンOFF水温f(TAO)の上限値よりも大幅に小さく設定されている。このため、窓近傍相対湿度に基づいて決定された仮のエンジンOFF水温f(窓近傍相対湿度)がエンジンOFF水温Twoffとして選択されやすくなるので、防曇性を確保するために望ましい冷却水温度になるようにエンジンEGを作動させて窓曇りを抑制することができる。
一方、ステップS1101にてEV運転モードでないと判定された場合、図13に示すステップS1107へ進み、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動本数に基づいて吹出温上昇量ΔTptcを決定する。このΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち各吹出口24〜26から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の発熱分が寄与した温度上昇量である。
従って、吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の作動本数の増加に伴って高い値となる。本実施形態では、具体的に、図13のステップS1107に示すように、PTCヒータ37の作動本数が0本であれば、ΔTptc=0℃とし、作動本数が1本であれば、ΔTptc=3℃とし、作動本数が2本であれば、ΔTptc=6℃とし、作動本数が3本であれば、ΔTptc=9℃としている。
続くステップS1108では、外気温TamおよびステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動本数に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、冷却水の仮の上限温度f(TAMdisp)を決定する。この仮の上限温度f(TAMdisp)は、車両用空調装置がある程度の暖房能力を発揮でき、さらに、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させないために決定される値である。
具体的には、図13のステップS1108に示すように、外気温Tamの上昇に伴って、仮の上限温度f(TAMdisp)が徐々に低下するように決定される。さらに、PTCヒータ37の作動本数が少なくなるに伴って、仮の上限温度f(TAMdisp)が低下するように決定される。
次に、ステップS1109では、エコノミースイッチが投入(ON)されているか否かに基づいて、仮の上限温度f(TAMdisp)に加算するエコノミー補正項f(エコノミー)を決定する。具体的には、ステップS1109では、エコノミースイッチが投入されている場合(エコモードON)にはエコノミー補正項f(エコノミー)を−5℃に決定し、エコノミースイッチが投入されていない場合(エコモードOFF)にはエコノミー補正項f(エコノミー)を0℃に決定する。
より詳細には、このステップS1109では、ステップS1112にて説明するように、省動力化要求手段であるエコノミースイッチが投入(ON)されていると、投入されていない場合(OFF)よりもエンジンOFF水温Twoffが低い温度に決定されるようにエコノミー補正項f(エコノミー)を決定している。
続くステップS1110では、車室内温度設定スイッチによって設定された車室内目標温度Tsetに基づいて、仮の上限温度f(TAMdisp)に加算する設定温度補正項f(設定温度)を決定する。具体的には、ステップS1110では、車室内目標温度Tsetが、28℃未満であれば、設定温度補正項f(設定温度)を0℃に決定し、28℃以上であれば、設定温度補正項f(設定温度)を5℃に決定する。
より詳細には、このステップS1110では、ステップS1112にて説明するように、目標温度設定手段である車室内温度設定スイッチによって設定された車室内目標温度Tsetが予め定めた基準車室内目標温度(本実施形態では、28℃)以上になると、エンジンOFF水温Twoffが高くなるように設定温度補正項f(設定温度)を決定している。換言すると、車室内目標温度Tsetの低下に伴って、エンジンOFF水温Twoffが低く決定されるように設定温度補正項f(設定温度)を決定している。
次に、図13に示すステップS1111では、エンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、図13のステップS1111に示すように、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値、仮の上限温度f(TAMdisp)に運転モード補正項エコノミー補正項f(エコノミー)と設定温度補正項f(設定温度)とを加えた値、および70℃のうち一番小さい値と、30℃とのうち大きい方の値に決定する。
ここで、ステップS1111における冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値(図13のステップS1111のA)は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
次に、仮の上限温度f(TAMdisp)に各補正項f(エコノミー)、f(設定温度)を加えた値(図13のステップS1111のB)は、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させない冷却水温度Twを、運転モード、エコノミースイッチの投入状態、車室内目標温度Tset等に基づいて補正した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、エンジンEGの作動頻度の増加を抑制できる。
次に、70℃(図13のステップS1111のC)は、ステップS1108で決定される仮の上限温度f(TAMdisp)の最大値と同じ値であり、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
従って、これらのうちの一番小さい値を採用することで、エンジンOFF水温Twoffを、車両用空調装置が高い暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwあるいはエンジンEGの作動頻度を増加させないための冷却水温度Twに決定することができる。
また、これらのうちの一番小さい値と、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための下限値として決定された30℃とのうち、大きい方の値をエンジンOFF水温Twoffと決定することで、車両用空調装置1の要求によってエンジンEGの作動が継続されてしまうことを確実に抑制できる。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、上述のステップS1105へ進み、冷却水温度Twに応じて仮の要求信号フラグf(Tw)を決定し、さらに上述のステップS1106へ進み、送風機32の作動状態、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図4に示すステップS12へ進む。
次に、ステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図15のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、ステップS2で読み込んだ外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62A、62B、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入する。
加熱用冷風通路へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35A、35Bにて冷風バイパス通路を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35A、35Bにて温度調整された空調風が、混合空間35A、35Bから各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
本実施形態による作動の一例を図16のタイムチャートに基づいて説明する。図16の例では、乗員が車両のイグニッションスイッチ(IG)をオフからオンに切り替えたとき、送風機32にブロワモータ電圧が印加されて送風機32が作動する。
また、図16の例では、乗員が車両のイグニッションスイッチ(IG)をオフからオンに切り替えたときの外気温が10℃であるので、ステップS907にて蒸発器15が乾きにくい外気温であると判断されて、ステップS911にて圧縮機11が停止状態にされる。これにより、圧縮機自動停止制御が開始される。換言すれば、蒸発器15による除湿が自動的に停止されるオート除湿OFF制御が開始される。
また、乗員が車両のイグニッションスイッチ(IG)をオフからオンに切り替えると、ステップS711にて蒸発器乾燥タイマのカウントが開始される。そして、蒸発器乾燥タイマのカウント時間がステップS701で設定された蒸発器乾燥時間に達するまで、ステップS713にて蒸発器15が湿っていると判断されるので、ステップS715にて内外気2層流モードが設定される。
これにより、ステップS713で説明したように、暖房時のように内気が外気よりも高温になる状態においては、臭いを感じやすい上半身への吹出空気における臭いを低減して乗員の不快感を低減できるとともに、温風を快適に感じやすい乗員の下半身への吹出空気の温度を高めて乗員の暖房感を高めることができる。
また、エンジンEGの作動頻度を下げてもヒータコア36通過後の空気温度を高く維持することが可能になるので、車両の実用燃費を向上できる。また、車室内の換気が促進されるので、駐車時(空調停止時)に車室内にこもった臭いを外部に排出できる。
本実施形態では、ステップS713〜S715で説明したように、空調制御装置50は、圧縮機11が停止していて送風機32が作動している状態において、蒸発器15の表面が凝縮水で濡れていると判断される場合、内気比率制限制御を行う。内気比率制限制御では、蒸発器15の表面が乾いていると判断される場合と比較して空気通路31a、31bに導入される内気の比率が小さくなるように内外気切替ドア23A、23Bの作動を制御する。
これによると、蒸発器15が空気を冷却しない場合において蒸発器15の表面が凝縮水で濡れていると判断される場合、内気の比率を小さくするので、暖房時のように内気が外気よりも高温になる状態においては蒸発器15に流入する空気の温度を低下させることができる。そのため、蒸発器15の表面に付着した凝縮水が乾くことを抑制できるので、悪臭が発生することを抑制できる。
また、内気の比率を小さくすることによって、車室内の換気を促進して、車室内にこもった臭いを外部に排出できるので、車室内にこもった臭いが空調装置を循環して再び吹き出されることを抑制できる。
具体的には、空調制御装置50は、内気比率制限制御における内気の比率を0より大きくする。これにより、暖房時のように内気が外気よりも高温になる状態においては、内気の比率を0にする場合と比較してケーシング31内に導入される空気の温度を高めることができるので、暖房性能を向上できる。また、暖房で消費されるエネルギを低減できるので、車両燃費を向上できる。
また、空調制御装置50は、内気比率制限制御を行っているときに、蒸発器15の表面が、臭いを発生しにくい程度まで乾いたと判定した場合、内気比率制限制御を終了して内気の比率を大きくする。
これにより、暖房時のように内気が外気よりも高温になる状態においては、蒸発器15から臭いが発生する可能性が低くなったときにケーシング31内に導入される空気の温度を高めることができるので、暖房性能を向上できる。また、暖房で消費されるエネルギを低減できるので、車両燃費を向上できる。
本実施形態では、空調制御装置50は、内気比率制限制御を行う場合、第1空気通路31aに外気が導入されて第2空気通路31bに内気が導入される内外気2層流モードになるように内外気切替ドア23A、23Bの作動を制御する。
これによると、暖房時のように内気が外気よりも高温になる状態においては、蒸発器15のうち第1空気通路31aに位置する部位に流入する空気の温度が低くなるので、蒸発器15の当該部位に付着した凝縮水が乾くことを抑制できる。そのため、第1空気通路31aから乗員の上半身に向けて吹き出される空気の臭いを低減できるので、乗員が感じる臭いを低減できる。
また、第2空気通路31bに導入される空気の温度が高くなるので、第2空気通路31bから乗員の足元に向けて吹き出される空気の温度も高くでき、ひいては乗員の暖房感を向上できる。また、暖房で消費されるエネルギを低減できるので、車両燃費を向上できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上記実施形態では、ケーシング31内の空気通路が外気側通路31aと内気側通路31bとに仕切られており、内気と外気とを別々の吹出口から吹き出す内外気2層流モードを設定可能な構成になっているが、ケーシング31内の空気通路が外気側通路31aと内気側通路31bとに仕切られておらず、内外気2層流モードを設定できない構成になっていてもよい。
この構成においては、フェイス吹出口24からの吹出空気に内気が混合されるため、ステップS715において、上記実施形態よりも外気率を大きくすることによって、乗員が感じる臭いを極力少なくすることが好ましい。例えば、図7に示すステップS715において、外気率を75%にすることが好ましい(図16の二点鎖線を参照)。
(2)上記実施形態では、ステップS713において、蒸発器15が乾いているか否かをタイマの計測値に基づいて判断するが、蒸発器15が乾いているか否かを、蒸発器15前後の空気温度差や蒸発器15前後の空気湿度差に基づいて判断すれば、より精度良く蒸発器15の乾燥を判断できる。
すなわち、蒸発器15への冷媒の供給が停止している場合、蒸発器15の表面に付着した凝縮水は、蒸発器15を通過する空気から吸熱するとともに、蒸発器15を通過する空気中に蒸発する。したがって、蒸発器15が乾いている場合、蒸発器15が凝縮水で湿っている場合と比較して、蒸発器15前後の空気温度差が小さくなるとともに、蒸発器15前後の空気湿度差が小さくなる。
(3)上記実施形態では、ハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
また、車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。この場合、冷却水を加熱するための冷却水加熱手段として、例えばPTCヒータ等の電気ヒータを用いることができる。
また、車両用空調装置1を、走行用電動モータを備えることなく車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る自動車に適用してもよい。この場合、圧縮機11は、エンジンEGの駆動力によってエンジンベルトで駆動されるベルト駆動式圧縮機を用いることができる。