JP2016067279A - 生物体生育用ポリイミドフィルム及び生物体生育用容器 - Google Patents

生物体生育用ポリイミドフィルム及び生物体生育用容器 Download PDF

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Abstract

【課題】生物体を生育させる容器などの素材として利用価値が高い生物体生育用ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】生物体生育用ポリイミドフィルムは、シロキンサン含有ポリイミドによって形成され、生物体を収容する密閉された生育空間と、外部空間とを隔てる隔膜として用いられる。シロキサン含有ポリイミドは、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量として、シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下の範囲内で含むことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、動植物、それらの細胞もしくは組織、微生物などの生物体を生育する目的で使用される生物体生育用ポリイミドフィルム及びそれを利用した生物体生育用容器に関する。
近年、応用生物学や医療の発達に伴い、生物の細胞や組織、微生物などの培養が盛んに行われている。細胞培養や組織培養、微生物培養には、ハンドリング性が良好な合成樹脂製の培養容器が実用化されている。例えば、特許文献1では、細胞培養容器を形成するための素材として、異なる密度を有するポリエチレン樹脂の層を積層した多層フィルムが提案されている。また、特許文献2では、環状シロキサン化合物、親水性モノマー及び有機溶剤に可溶な熱硬化性のポリイミドシリコーン樹脂を重合して得られ、眼科用レンズ、細胞または臓器などの培養基材、生体物容器に適用可能な透明ゲルが提案されている。
近年、細胞培養や組織培養期間中における菌やウィルスのコンタミネーションによる汚染が課題となっており、このため、閉鎖系培養への期待が高まっている。この閉鎖系培養に対応可能な培養容器の性能として、細胞の生育に必要な酸素などのガスを透過させるガス透過性が求められるとともに、外部と遮断でき、フィルムとして形状を保てる十分な強度が必要になる。しかし、合成樹脂において、ガス透過性と強度は、トレードオフの関係にある。例えば、特許文献1では、酸素などのガス透過性を確保するためにポリエチレン樹脂を低密度化している一方で、低密度化によって低下した強度を補い、細胞培養容器として必要な強度を確保するために、多層に積層しているものと考えられる。
また、培養容器などの構造を簡易なものとするためには、熱圧着によって簡単に封止できる性能(以下、「ヒートシール性」と記す)を有する素材であることが好ましい。しかし、上記特許文献2に記載の透明ゲルは、フィルム状の形態が想定されていないため、ヒートシール性については何ら考慮されていない。
特許第5344094号公報 特開2007−14637号公報
本発明の目的は、柔軟性、伸縮性、ガス透過性、強度、放射線滅菌耐性、視認性及びヒートシール性に優れ、生物体を生育させる容器などの素材として利用価値が高い生物体生育用ポリイミドフィルムを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の化学構造を有するポリイミドを加工することによって、生体適合性に優れ、かつ上記要求を満たす生物体生育用ポリイミドフィルムを提供できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、シロキサン含有ポリイミドによって形成され、生物体を収容する密閉された生育空間と、外部空間とを隔てる隔膜として用いられる。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、前記シロキサン含有ポリイミドが、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量として、前記シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下の範囲内で含むものであってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、前記シロキサン含有ポリイミドが、ジアミノシロキサンを含有するジアミンと、芳香族テトラカルボン酸無水物と、を反応させて得られるものであってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、前記シロキサン含有ポリイミドが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドであってもよい。
Figure 2016067279
[式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミン残基、Rは芳香族ジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.4〜1.0の範囲内、nは0〜0.6の範囲内である]
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、前記ジアミノシロキサンが、下記の一般式(3)で表されるものであってもよい。
Figure 2016067279
[式中、R及びRは、それぞれ、酸素原子を含有していてもよい2価の有機基を示し、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6の炭化水素基を示し、平均繰り返し数であるmは、1〜20の範囲内である]
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、前記構成単位の存在モル比mが0.6〜1.0の範囲内であってもよく、nが0〜0.4の範囲内であってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、酸素ガスの透過係数が、1,000cm/m・24h・atm以上であってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、窒素ガスの透過係数が、1,000cm/m・24h・atm以上であってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、二酸化炭素ガスの透過係数が、10,000cm/m・24h・atm以上であってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、引張破断強度が、10MPa以上であってもよい。
本発明の生物体生育用容器は、上記いずれかに記載の生物体生育用ポリイミドフィルムを、少なくとも一部分に使用してなるものである。
本発明の生物体生育用容器は、動物又は植物の細胞培養用もしくは組織培養用の容器であってもよい。
本発明の生物体生育用容器は、植物の生育用容器であってもよい。
本発明の生物体生育用容器は、微生物の培養容器であってもよい。
本発明の生物体生育用容器は、発酵食品の包装容器であってもよい。
本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、シロキサンユニット構造を有するポリイミドによって形成されているため、生体適合性、柔軟性、ガス透過性、強度、放射線滅菌耐性、視認性及びヒートシール性に優れている。従って、本発明の生物体生育用ポリイミドフィルムは、生物体の生育用途に用いる容器などの素材として有用である。
本発明の一実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを適用した培養バッグを示す斜視図である。 本発明の一実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを適用した栽培容器を示す斜視図である。 本発明の一実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを適用した培養容器において、カバーを装着する前の状態を示す説明図である。 本発明の一実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを適用した培養容器において、カバーを装着した状態を示す説明図である。 本発明の一実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを適用した発酵食品容器を示す斜視図である。
[生物体生育用ポリイミドフィルム]
本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、シロキサンユニットを有するポリイミドによって実質的に形成され、生物体を収容する密閉された生育空間と、外部空間とを隔てる隔膜として用いられる。ここで、「実質的に」とは、発明の効果を損なわない範囲で他の種類の合成樹脂フィルムと積層されていてもよいことを意味する。例えば、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、単層のフィルムであってもよいし、複数層を積層した積層フィルムであってもよい。積層フィルムとする場合は、シロキサンユニットを有するポリイミドのフィルムのみを2層以上積層してもよいし、発明の効果を損なわない範囲で、他の種類の合成樹脂製フィルムと積層してもよい。
本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、シロキサンユニットを有するポリイミドによって実質的に形成されているため、優れた生体適合性、柔軟性、ガス透過性、強度、放射線滅菌耐性、視認性およびヒートシール性を有する。従って、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、生物体を生育する目的で使用される生物体生育用容器の材料として利用価値が高いものである。このようなシロキサン結合の特徴を有利にするため、シロキサン含有ポリイミドに含有するシロキサン結合(Si−O−Si)に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量として、前記シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、好ましくは10重量部以上50重量部以下の範囲内、より好ましくは20重量部以上50重量部の範囲内で含むものがよい。ここで、「生物体」とは、例えば、動植物、それらの細胞もしくは組織、微生物、微生物を含む発酵物もしくは培養物などを意味する。発酵物には、例えばヨーグルト、キムチなどの発酵食品を含んでいてもよい。また、「生物体生育用容器」は、生物体を収容する容器の全体だけでなく、その一部分であってもよい。
<ポリイミド>
生物体生育用ポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、原料として、テトラカルボン酸無水物を含む酸無水物成分と、ジアミンを含むジアミン成分とを反応させて得られるものであり、その分子構造中にシロキサン結合を有するものである。シロキサン結合はテトラカルボン酸無水物中に存在してもよく、ジアミン中に存在してもよい。耐熱性の観点から、シロキサン結合を有するテトラカルボン酸無水物若しくはシロキサン結合を有するジアミン以外のテトラカルボン酸無水物成分あるいはジアミン成分は芳香族化合物を使用することが好ましい。
生物体生育用ポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有することが好ましい。ポリイミドが上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有することによって、生物体生育用ポリイミドフィルムに十分な柔軟性、ガス透過性、強度、放射線滅菌耐性、視認性及びヒートシール性を付与できる。従って、生物体生育用ポリイミドフィルムを構成するポリイミド樹脂は、上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位のみからなることが好ましい。
上記一般式(1)及び(2)中の基Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基であり、基Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミン残基であり、基Rは芳香族ジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基である。また、構成単位の存在モル比を示すmは0.4〜1.0の範囲内、nは0〜0.6の範囲内、好ましくは、mは0.6〜1.0の範囲内、nは0〜0.4の範囲内である。
(芳香族テトラカルボン酸)
一般式(1)及び(2)で表される構成単位において、基Arを形成するための原料となる芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジシクロへキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(HBPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA、別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等を使用することができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ジアミノシロキサン)
一般式(1)で表される構成単位において基Rがジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基である場合、例えば、上記式(3)で表されるジアミノシロキサンから誘導されたジアミノシロキサン残基を挙げることができる。特に、基Rとしては、ポリイミドに可溶性を付与するために、式(3)中のR及びRがそれぞれ2価の炭化水素基であり、R〜Rがそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、平均繰り返し数であるmが5〜15であるものが好ましい。また、式(3)中のシロキサン部位は主鎖に導入されたものであるが、これは限定されるものではなく、側鎖にシロキサン骨格が導入されていてもよい。さらに、これらジアミノシロキサンは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ジアミノシロキサン残基は、ジアミノシロキサンからアミノ基を除いたシロキサン結合(Si−O−Si)を有する基であるが、このシロキサン結合の割合を増加させることによって、生物体生育用素材として求められる諸特性、例えば柔軟性、ガス透過性、放射線滅菌耐性、視認性及びヒートシール性を向上させる効果が得られる。具体的には、シロキサン結合の割合を増加させることによって、生物体生育用ポリイミドフィルムの柔軟性や伸縮性、視認性を大幅に向上させることができる。また、シロキサン結合は炭素―炭素結合よりも結合間距離が長くて結合角が大きく、且つらせん状の分子構造を取るため分子間力が小さい。そのため、シロキサン構造の割合が多くなると、ポリイミド鎖同士の間に空間が生じてガスを容易に通しやすい状態となるため、生物体生育用ポリイミドフィルムに優れたガス透過性を付与することができる。以上のような理由から、本実施の形態では、式(1)におけるmの値を0.4以上、好ましくは0.6以上とする。mの値が0.4未満では、生物体生育用素材に求められる上記諸特性を向上させる効果が十分に得られない。このように、ポリイミド中にシロキサン骨格を導入することにより、得られるポリイミドに生物体生育用素材として有利な特性を与えることができる。
一般式(3)で表されるジアミノシロキサンの具体例としては、下記の式(4)〜式(8)で表されるジアミノシロキサンが好ましく、これらの中でも式(4)又は式(5)で表される脂肪族のジアミノシロキサンがより好ましく、式(4)で表されるジアミノシロキサンが最も好ましい。これらのジアミノシロキサンは、2種以上を組み合わせて配合することもできる。また、2種以上のジアミノシロキサンを組み合わせて配合する場合、式(4)又は式(5)で表される脂肪族のジアミノシロキサンを全ジアミノシロキサン100重量部に対し、90重量部以上配合することが好ましい。なお、式(4)〜式(8)において、平均繰り返し数であるmは1〜20の範囲内であり、5〜15の範囲内が最も好ましい。mが1より小さいと生物体生育用ポリイミドフィルムの柔軟性、ガス透過性及びヒートシール性が低下し、20を超えると引張り強度等の機械的強度が低下する。
Figure 2016067279
一般式(2)で表される構成単位において、基R(芳香族ジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基)としては、例えば以下の式(9)、(10)で表される芳香族ジアミン残基を挙げることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2016067279
[ここで、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、XはCOを示し、nは独立に0〜4の整数を示す]
上記式(9)、(10)で表される基Rを形成するための芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’―ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等を挙げることができる。
また、一般式(2)で表される構成単位において、基Rを形成するための原料となる他の芳香族ジアミン化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、3,4,5,6−テトラフルオロ−1,2−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)エーテル、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)スルフォン、ヘキサフルオロ−2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン、イソフタル酸ジヒドラジド等の芳香族ジヒドラジドなどを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリイミドの原料となる以上の酸無水物成分及びジアミン成分は、それぞれ、その1種のみを使用してもよいし、あるいは2種以上を併用することもできる。また、上記以外の酸無水物及びジアミンを併用することもできる。
<ポリイミドの合成>
ポリイミドは、上記芳香族テトラカルボン酸無水物、上記ジアミン成分[ジアミノシロキサン及び芳香族ジアミン化合物]を溶媒中で反応させ、前駆体樹脂であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜300℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
また、ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物と、上記ジアミン成分との反応で得られるイミド構造となる。本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、フィルムとしての物理的・化学的特性を安定させるために、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm−1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm−1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
(ガラス転移温度)
本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムの原料として用いるポリイミドのガラス転移温度は、30〜250℃の範囲内であることが好ましく、45〜200℃の範囲内であることがより好ましい。原料として用いるポリイミドが、上記のようなガラス転移温度を有することによって、生物体生育用ポリイミドフィルムに柔軟性、伸縮性及びヒートシール性を付与できる。ポリイミドのガラス転移温度は、主として原料として使用するジアミノシロキサン又は芳香族ジアミンの種類とその使用量により調節できる。
(分子量)
原料として用いるポリイミドの分子量(重量平均)は、生物体生育用ポリイミドフィルムに十分な柔軟性、ガス透過性、強度、放射線滅菌耐性、視認性及びヒートシール性を付与する観点から、例えば100〜500,000の範囲内とすることが好ましく、1,000〜200,000の範囲内とすることがより好ましい。
(弾性率)
原料として用いるポリイミドの弾性率は、生物体生育用ポリイミドフィルムに十分な柔軟性及び伸縮性を与えるために、例えば1000MPa以下であることが好ましく、750MPa以下であることがより好ましい。ポリイミドの弾性率を上記範囲内とすることによって、生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば動植物の細胞培養容器や組織培養容器、微生物の培養容器、発酵食品包装容器などに利用する場合に優れた柔軟性が得られる。
(引張破断強度)
原料として用いるポリイミドは、生物体生育用ポリイミドフィルムを隔膜として機能させる上で十分な強度を付与するために、引張破断強度が例えば10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましい。ポリイミドの引張破断強度を上記範囲内とすることによって、生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば動植物の細胞培養容器や組織培養容器、微生物の培養容器、発酵食品包装容器などに利用する場合に、容器を落下させた際でも傷や破損が発生しにくくなり、外部と内部の遮断性を確保できる。
(気体透過度)
原料として用いるポリイミドは、生物体生育用ポリイミドフィルムに十分な通気性(ガス透過性)を付与する観点から、次に例示する程度の気体透過度を有することが好ましい。
酸素ガス;1,000cm/m・24h・atm以上が好ましく、3,000cm/m・24h・atm以上がより好ましい。
窒素ガス;1,000cm/m・24h・atm以上が好ましく、3,000cm/m・24h・atm以上がより好ましい。
二酸化炭素ガス;10,000cm/m・24h・atm以上が好ましく、30,000cm/m・24h・atm以上がより好ましい。
ポリイミドの気体透過度を上記範囲内とすることによって、生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば動植物の細胞培養容器や組織培養容器、微生物の培養容器、発酵食品包装容器などに利用する場合に優れた通気性(ガス透過性)が得られ、細胞や組織に良好な培養環境を作ることができる。
また、生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば動植物の細胞培養容器や組織培養容器、微生物の培養容器、発酵食品包装容器などの用途に使用する場合、互いにトレードオフの関係にある引張破断強度とガス透過性とを両立させることが重要である。かかる観点から、生物体生育用ポリイミドフィルムは、例えば、上記引張破断強度が10〜70MPaの範囲内であり、かつ、酸素ガス透過度が1000〜300000cm/m・24h・atmの範囲内であることが好ましく、引張破断強度が15〜50MPaの範囲内であり、かつ、酸素ガス透過度が10000〜200000cm/m・24h・atmの範囲内であることがさらに好ましい。生物体生育用ポリイミドフィルムの引張破断強度とガス透過性を上記範囲内に調節するために、上記一般式(1)及び(2)で表される構成単位において、基Arを形成するための酸無水物が芳香族テトラカルボン酸無水物であり、基Rを形成するためのジアミノシロキサンが上記式(4)〜(8)のようなジメチルシロキサン骨格を有するものであり、基Rを形成するためのジアミン化合物が芳香族ジアミンである組み合わせが好ましい。この場合、mが0.4〜1.0の範囲内、nが0〜0.6の範囲内であることが好ましい。
生物体生育用ポリイミドフィルムの原料であるポリイミドの柔軟性、ガス透過性、強度、ヒートシール性は、原料となるポリイミド中で、主として、基Rで表されるジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミン残基の量によって調節することができる。そして、上記一般式(1)中のmの値を0.4以上とすることによって、生物体生育用ポリイミドフィルムを生物体生育用容器材料として用いる場合に必要な上記諸特性を満足することができる。
(生体適合性)
生物体生育用ポリイミドフィルムの原料となるポリイミドは、生物学的安全性試験の細胞毒性試験、全身毒性試験、皮内反応試験に合格しており、例えば生物体生育用容器として利用する上で十分な生体適合性を有している。
<厚み>
本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムの厚みは、使用目的に応じて設定できる。例えば、生物体生育用ポリイミドフィルムを動植物の細胞培養容器や組織培養容器に使用する場合は、優れたガス透過性を維持しながら、強度を確保する観点から、例えば10〜150μmの範囲内とすることが好ましく、20〜100μmの範囲内がより好ましい。
[生物体生育用ポリイミドフィルムの製造方法]
本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムは、任意の方法により製造することができる。生物体生育用ポリイミドフィルムの製造方法の好ましい例を挙げれば以下のとおりである。まず、任意の基材上に、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布・乾燥し、所定の厚みでポリアミド酸層を形成する。次に、ポリアミド酸層を熱処理することによってイミド化し、ポリイミドフィルム層を形成する。次に、ポリイミドフィルム層を支持基材から剥離することによって、生物体生育用ポリイミドフィルムを得ることができる。
[適用例]
次に、図1〜4を参照しながら、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを、少なくとも一部分に使用してなる生物体生育用容器について説明する。
[第1の適用例]
図1は、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば動物又は植物の細胞培養用もしくは組織培養用の容器としての培養バッグに使用した例を示している。培養バッグ10は、細胞や組織(図示省略)を収容する本体11と、本体11に細胞や組織を注入もしくは抽出するための注入出部12とを備えている。本体11は、2枚の矩形の生物体生育用ポリイミドフィルムを重ね、その縁をヒートシールによって密着させることによって袋状に形成されている。図1ではヒートシール部を符号13で示している。注入出部12は、円筒状の注入出口14と、注入出口14を密閉するキャップ15とを備えている。注入出口14は、本体11の一辺において、2枚の生物体生育用ポリイミドフィルムの間に挿入されている。注入出口14の周囲には、生物体生育用ポリイミドフィルムが巻きつくようにヒートシールされ、内部の密閉性が保たれている。培養バッグ10において、本体11を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、柔軟性に優れているため、加工やハンドリングが容易である。また、生物体生育用ポリイミドフィルムは、十分な強度を有するので、破断、ピンホールなどの損傷が発生し難く、本体11の外部から内部へウィルスや細菌が進入することを確実に防止できる。また、本体11を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、酸素、二酸化炭素などのガス透過性に優れているため、外気とほぼ同様のコンディションで培養を行うことができる。また、本体11を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、ヒートシール性に優れているため、特別な部材や機材を使用せずに、ヒートシールのみによる簡素な構成で、本体11を形成できるとともに、内部の密閉性を保持できる。
[第2の適用例]
図2は、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えばキノコなどの菌類を含む植物の無菌栽培、カルス培養などの用途の栽培容器として使用した例を示している。栽培容器20は、袋状に形成されており、内部に、例えば無菌苗、カルスなどの植物21を収容する収容部22を備えている。収容部22は、1枚の長尺な矩形の生物体生育用ポリイミドフィルムを折り返し、その縁を含む重ね合わせ部位をヒートシールによって密着させることによって袋状に形成されている。図2ではヒートシール部を符号23で示している。なお、複数枚の生物体生育用ポリイミドフィルムを用いて収容部22を形成してもよい。また、厳密な気密性が要求されない用途では、ヒートシールを省略して包み込むだけでもよい。栽培容器20において、収容部22を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、柔軟性に優れているため、加工やハンドリングが容易である。また、生物体生育用ポリイミドフィルムは、十分な強度を有するので、破断、ピンホールなどの損傷が発生し難く、収容部22の外部から植物病原性のウィルスや細菌が進入することを確実に防止できる。また、収容部22を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、酸素、二酸化炭素などのガス透過性に優れているため、外気とほぼ同様のコンディションで植物の栽培を行うことができる。また、収容部22を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、ヒートシール性に優れているため、特別な部材や機材を使用せずに、ヒートシールのみによる簡素な構成で、収容部22を形成できるとともに、内部の気密性を保持できる。
[第3の適用例]
図3A及び図3Bは、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば微生物の培養や動植物の組織培養における培養容器の一部分に使用した例を示している。培養容器30は、培地31を入れたシャーレ32と、円形の生物体生育用ポリイミドフィルムからなるカバー33とを備えている。図3Aは、カバー33を装着する前の状態を示し、図3Bは、カバー33を装着した後の状態を示している。カバー33は、シャーレ32の開口部に対し、上から覆いかぶせるように使用される。なお、気密性が要求される場合には、カバー33の縁をシャーレ32の側部にヒートシール等の方法で密着させてもよい。培養容器30において、カバー33を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、柔軟性に優れているため、加工やハンドリングが容易である。また、生物体生育用ポリイミドフィルムは、十分な強度を有するので、破断、ピンホールなどの損傷が発生し難く、外部からウィルスや細菌が進入することを確実に防止できる。また、カバー33を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、酸素、二酸化炭素などのガス透過性に優れているため、外気とほぼ同様のコンディションで培養を行うことができる。なお、生物体生育用ポリイミドフィルムは、シャーレ32以外にも、例えばフラスコの開口部を覆うカバーとして、微生物の培養や動植物の組織培養に利用可能である。
[第4の適用例]
図4は、本実施の形態の生物体生育用ポリイミドフィルムを、例えば発酵食品容器の一部分に使用した例を示している。発酵食品容器40は、例えばヨーグルト、キムチなどの発酵食品(図示省略)を入れた容器本体41と、生物体生育用ポリイミドフィルムからなる蓋部42とを備えている。蓋部42は、容器本体41の開口部を封止するように覆っている。気密性が要求される場合には、蓋部42を容器本体41の上端の縁にヒートシール等によって密着させてもよい。発酵食品容器40において、蓋部42を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、柔軟性に優れているため、加工やハンドリングが容易である。また、生物体生育用ポリイミドフィルムは、十分な強度を有するので、破断、ピンホールなどの損傷が発生し難く、外部から雑菌が進入したり、外部へ液漏れしたりすることを確実に防止できる。また、蓋部42を構成する生物体生育用ポリイミドフィルムは、酸素、二酸化炭素などのガス透過性に優れているため、外気とほぼ同様のコンディションで発酵食品を保存することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC−8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、以下の手順で測定した。まず、ポリイミド溶液をガラス基板上に塗布し、80℃で15分間乾燥してフィルム状にしたサンプルを作製した。このフィルム状のサンプルから、試験片(幅2mm×長さ30mm)を作製した。この試験片を、熱機械分析装置(Bruker製、4000SA)を用いて、チャック間距離15mmにて、荷重2g、昇温速度5℃/分の条件で試験片の長さ方向の熱膨張量を測定し、その変曲点をガラス転移温度(Tg)とした。
[弾性率、伸度及び引張破断強度の測定]
弾性率、伸度及び引張破断強度は、以下の手順で測定した。まず、ポリイミド溶液をガラス基板上に塗布し、80℃で15分間乾燥してフィルム状にしたサンプルを作製した。このフィルム状のサンプルから、試験片(幅12.7mm×長さ127mm)を作製した。テンションテスター(オリエンテック製、テンシロン)を用いて、この試験片を50mm/minで引張り試験を行い、25℃における引張弾性率、引張伸度及び引張破断強度を求めた。
[気体透過度の測定]
気体透過度は、以下の手順で測定した。まず、ポリイミド溶液をガラス基板上に塗布し、80℃で15分間乾燥してフィルム状にしたサンプルを作製した。このフィルム状のサンプルについて、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製・ヤナコテクニカルサイエンス社製)及びガスクロマトグラフィーを用いて、差圧1atmとして、23℃、65%RHにおける酸素、窒素、二酸化炭素、エチレンの透過度を測定した。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸無水物(別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
BAFL:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
PSX−A:下記式で表されるジアミノシロキサン(但し、m1の数平均値は1〜20の範囲内であり、重量平均分子量は740である)
PSX−B:下記式で表されるジアミノシロキサン(但し、m1の数平均値は1〜20の範囲内であり、重量平均分子量は920である)
PSX−C:ジメチルシロキサンテトラカルボン酸二無水物(数平均値は1〜20の範囲内であり、重量平均分子量は1000である)
Figure 2016067279
合成例1
500mlのセパラブルフラスコに、24.08gのBTDA(0.0747モル)、105gのN−メチル−2−ピロリドン及び70gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、44.69gのPSX−A(0.0604モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、6.22gのBAPP(0.0151モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液aを得た。ポリイミド溶液aにおけるポリイミドの重量平均分子量は、55,000であった。得られたポリイミドは、シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量は20重量部である。
合成例2
500mlのセパラブルフラスコに、21.84gのBTDA(0.0676モル)、105gのN−メチル−2−ピロリドン及び70gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、44.74gのPSX−B(0.0479モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、8.42gのBAPP(0.0205モル)を添加し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液bを得た。ポリイミド溶液bにおけるポリイミドの重量平均分子量は、45,000であった。得られたポリイミドは、シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量は20重量部である。
合成例3
500mlのセパラブルフラスコに、12.09gのBTDA(0.0747モル)、105gのN−メチル−2−ピロリドン及び70gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、55.91gのPSX−B(0.0598モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、室温にて2時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液cを得た。ポリイミド溶液cにおけるポリイミドの重量平均分子量は、63,000であった。得られたポリイミドは、シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量は25重量部である。
合成例4
500mlのセパラブルフラスコに、47.41gのPSX−C(0.0474モル)、105gのN−メチル−2−ピロリドン及び70gのキシレンを装入し、室温で良く混合した。次に滴下ロートを用いて、17.72gのPSX−A(0.0239モル)を滴下し、この反応溶液を攪拌下で氷冷し、室温にて2時間攪拌し、9.87gのBAPP(0.0239モル)を添加し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液dを得た。ポリイミド溶液dにおけるポリイミドの重量平均分子量は、63,000であった。得られたポリイミドは、シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量は30重量部である。
(実施例1−1)
<生物体生育用ポリイミドフィルムの作製>
合成例1で調製したポリイミド溶液aをガラス基板上に塗布し、80℃で15分間乾燥してフィルム状にしたサンプルから、生物体生育用ポリイミドフィルム1(縦×横×厚さ=200mm×300mm×35μm)を作製した。生物体生育用ポリイミドフィルム1の評価結果は、以下のとおりである。
ガラス転移温度;50℃、弾性率;217MPa、伸度;427%、引張破断強度;20MPa、気体透過度;1.4×10cm/m・24h・atm(O)、4.2×10cm/m・24h・atm(N)、1.1×10cm/m・24h・atm(CO)、3.7×10cm/m・24h・atm(C
<動物細胞培養試験>
生物体生育用ポリイミドフィルム1を2枚用い、100×100mmに整角後、ヒートシールにて張り合わせすることで図1の形状の培養容器を作製し、培養試験を実施した。培養液としては、AlyS505N−7(株式会社細胞科学研究所製)50mlをそれぞれに使用した。また、培養細胞には、hPBMC(Human Periphery Blood Mononuclear Cells、Cell Applications,Inc)を使用し、初期細胞密度をそれぞれ約18万cells/mlとした。
その結果、培養時間を96時間としたときの回収時細胞密度(cells/ml)は、約300万であった。
参考例1−1
汎用のガラス製細胞培養用ディッシュを使用して、生物体生育用ポリイミドフィルム1を用いることなく開放系にて実施した以外は、実施例1−1と同様に細胞培養試験を行った。
その結果、培養時間を96時間としたときの回収時細胞密度(cells/ml)は、約300万であった。
実施例1−1の結果に示される通り、生物体生育用ポリイミドフィルム1を用いた培養容器中で培養を行ったものは、参考例1−1の開放系で細胞培養を実施した場合とほぼ同様の効率で培養を行うことができた。
(実施例1−2)
<植物培養試験>
実施例1−1で作製した生物体生育用ポリイミドフィルム1を2枚用い、200×300mmに整角後、ヒートシールにて張り合わせすることで図2の形状の容器を作製した。
この袋の中に、汎用のガラス製ビーカーに予め発根用液体培地で湿潤させた発泡フェノール樹脂成型品を入れておき、シンビジウム幼苗(Cymbidium Melody Fair’Marilyn Monroe’展開葉3枚、苗丈25〜30mm)をフェノール樹脂成型品上に置床した後、無菌的に密封し無菌培養を行った。
照明は、植物育成用蛍光灯(東芝ライテック社製プラントルクス)を用い、16時間日長、1700ルクスで行った。湿度を調整し、炭酸ガス濃度1000〜1200ppmに制御した培養室に入れ、温度24℃、光強度50μmol/m/secの光を1日16時間照射して98日間培養を行ったところ、草丈12.7cm、根長は3.5cmまで成長した。
参考例1−2
生物体生育用ポリイミドフィルム1を用いることなく汎用のガラス製ビーカーのみを使用して開放系にて実施した以外は、実施例1−2と同様に試験を実施した。
その結果、98日間培養後の草丈は13.1cm、根長は3.2cmまで成長した。
実施例1−2の結果に示される通り、生物体生育用ポリイミドフィルム1を用いた培養容器中で培養を行ったものは、参考例1−2の開放系で培養を実施した場合とほぼ同様の効率で培養を行うことができた。
(実施例2−1)
<生物体生育用ポリイミドフィルムの作製>
合成例2で調製したポリイミド溶液bを使用したこと以外、実施例1と同様にして、生物体生育用ポリイミドフィルム2を作製した。
<動物細胞培養試験>
実施例1−1と同様にして、図1の形状の培養容器を作製し、培養試験を実施した。培養時間を96時間としたときの回収時細胞密度(cells/ml)は、約300万であった。
(実施例2−2)
<植物培養試験>
実施例1−2と同様にして、図2の形状の容器を作製し、植物培養試験を実施した。シンビジウム幼苗は、草丈12.7cm、根長は3.5cmまで成長した。
(実施例3−1)
<生物体生育用ポリイミドフィルムの作製>
合成例3で調製したポリイミド溶液cを使用したこと以外、実施例1−1と同様にして、生物体生育用ポリイミドフィルム3を作製した。
<動物細胞培養試験>
実施例1−1と同様にして、図1の形状の培養容器を作製し、培養試験を実施した。培養時間を96時間としたときの回収時細胞密度(cells/ml)は、約300万であった。
(実施例3−2)
<植物培養試験>
実施例1−2と同様にして、図2の形状の容器を作製し、植物培養試験を実施した。シンビジウム幼苗は、草丈12.7cm、根長は3.5cmまで成長した。
(実施例4−1)
<生物体生育用ポリイミドフィルムの作製>
合成例4で調製したポリイミド溶液dを使用したこと以外、実施例1−1と同様にして、生物体生育用ポリイミドフィルム4を作製した。
<動物細胞培養試験>
実施例1−1と同様にして、図1の形状の培養容器を作製し、培養試験を実施した。培養時間を96時間としたときの回収時細胞密度(cells/ml)は、約300万であった。
(実施例4−2)
<植物培養試験>
実施例1−2と同様にして、図2の形状の容器を作製し、植物培養試験を実施した。シンビジウム幼苗は、草丈12.7cm、根長は3.5cmまで成長した。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。
10…培養バッグ、11…本体、12…注入出部、13…ヒートシール部、14…注入出口、15…キャップ、20…栽培容器、21…植物、22…収容部、23…ヒートシール部、30…培養容器、31…培地、32…シャーレ、33…カバー、40…発酵食品容器、41…容器本体、42…蓋部

Claims (15)

  1. シロキンサン含有ポリイミドによって形成され、生物体を収容する密閉された生育空間と、外部空間とを隔てる隔膜として用いられる生物体生育用ポリイミドフィルム。
  2. 前記シロキサン含有ポリイミドが、シロキサン結合に由来するケイ素元素及び酸素元素の合計量として、前記シロキサン含有ポリイミドの100重量部に対して、10重量部以上50重量部以下の範囲内で含むものである請求項1に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  3. 前記シロキサン含有ポリイミドが、ジアミノシロキサンを含有するジアミンと、芳香族テトラカルボン酸無水物と、を反応させて得られるものである請求項1又は2に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  4. 前記シロキサン含有ポリイミドが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位:
    Figure 2016067279
    [式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミン残基、Rは芳香族ジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.4〜1.0の範囲内、nは0〜0.6の範囲内である]
    を有するポリイミドである請求項1から3のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  5. 前記ジアミノシロキサンが、下記の一般式(3):
    Figure 2016067279
    [式中、R及びRは、それぞれ、酸素原子を含有していてもよい2価の有機基を示し、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6の炭化水素基を示し、平均繰り返し数であるmは、1〜20の範囲内である]
    で表されるものである請求項3又は4に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  6. 前記構成単位の存在モル比mが0.6〜1.0の範囲内であり、nが0〜0.4の範囲内である請求項4又は5に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  7. 酸素ガスの透過係数が、1,000cm/m・24h・atm以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  8. 窒素ガスの透過係数が、1,000cm/m・24h・atm以上である請求項1から7のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  9. 二酸化炭素ガスの透過係数が、10,000cm/m・24h・atm以上である請求項1から8のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  10. 引張破断強度が、10MPa以上である請求項1から9のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルム。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載の生物体生育用ポリイミドフィルムを、少なくとも一部分に使用してなる生物体生育用容器。
  12. 動物又は植物の細胞培養用もしくは組織培養用の容器である請求項11に記載の生物体生育用容器。
  13. 植物の生育用容器である請求項11に記載の生物体生育用容器。
  14. 微生物の培養容器である請求項11に記載の生物体生育用容器。
  15. 発酵食品の包装容器である請求項11に記載の生物体生育用容器。
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WO2023234170A1 (ja) * 2022-05-30 2023-12-07 三井化学株式会社 培養容器、その製造方法、および培養方法

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