本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
実施の形態に係る超電導システムは、極低温冷凍機を用いてコイルを冷却し、コイルを超電導状態にする。コイルに大電流を導入する導入ラインとして、高温超電導体を利用した電流リードを用いる。これにより、電流リードの電気抵抗を押さえ、ジュール熱による電流リードの発熱を抑えている。
ここで、一般に高温超電導体は温度が低いほど臨界電流値Icの値が大きくなり、電流リードに流すことができる電流の許容値が増加する。そこで実施の形態に係る超電導システムにおいては、ヒートブリッジを介して電流リードを極低温冷凍機と熱的に接続し、電流リードを冷却し、電流リードの通電特性を向上させる。
図1(a)−(b)は、実施の形態に係る超電導システム100の外観を示す図である。実施の形態に係る超電導システムは、コイル70と、1台以上の極低温冷凍機10と、極低温冷凍機10とコイル70とを熱的に接続する冷却部材72を備える。なお、極低温冷凍機10は、例えばGM冷凍機を用いて実現される。また超電導システム100のうち、寒冷が発生する部分は、図示しない真空容器に収容される。
図1(a)は、極低温冷凍機10の上方向から見た場合の配置を示す図であり、図1(b)は、図1(a)におけるB−B断面図を示す。図1(a)に示すようにコイル70は円環状のコイルであり、図示しない真空容器内に配置される。コイル70の軸方向の一端には冷却部材72が設けられており、複数の極低温冷凍機10によって冷却される。図1(a)−(b)に示す例では、超電導システムは4台の極低温冷凍機10を備える。しかしながら、超電導システムが備える極低温冷凍機10の数は4台に限られず、3台以下でも5台以上であってもよい。
図1(b)に示すように、4台の極低温冷凍機10それぞれには伝熱ロッド74が接続されている。極低温冷凍機10が発生した寒冷は、伝熱ロッド74を介して冷却部材72に伝達される。極低温冷凍機10および伝熱ロッド74は、例えば、冷却部材72の周方向に4等配に設けられる。なお、伝熱ロッド74は必須の構成ではなく、極低温冷凍機10とコイル70とが直接接触するようにしてもよい。
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10、コイル70、および電流リード82の位置関係を模式的に示す図である。詳細は後述するが、極低温冷凍機10は、高温側冷却ステージ19と低温側冷却ステージ20とを備える多段式極低温冷凍機である。極低温冷凍機10はまた、モータを収容するモータ収容部5、ロータリーバルブやスコッチヨーク機構等を収容するハウジング3、高温側シリンダ11、低温側シリンダ12も備える。
高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20は、それぞれ高温側シリンダ11および低温側シリンダ12内で膨張した作動ガスが発生させる寒冷を用いて、冷却対象物を冷却する。限定はしないが、一例として、高温側冷却ステージ19の温度はおよそ40[K]であり、低温側冷却ステージ20の温度はおよそ4[K]である。
コイル70は、冷却部材72を介して低温側冷却ステージ20と熱的に接続する。室内電流導入リード80は、図示しない真空容器の外側から真空容器内部にコイル70に供給するための電流を導入する。室内電流導入リード80は、高温側熱伝導体84aおよび高温側熱応力緩和機構88aを介して、高温超電導体である電流リード82の高温側端子82aと電気的に接続する。また電流リード82の低温側端子82bは、低温側熱伝導体84bおよび低温側熱応力緩和機構88bを介して、コイル70と電気的に接続する。
高温側熱伝導体84aは、電流リード82の高温側端子82aと極低温冷凍機10の高温側冷却ステージ19とを熱的に接続する。また低温側熱伝導体84bは、電流リード82の低温側端子82bと極低温冷凍機10の低温側冷却ステージ20とを熱的に接続する。これにより、電流リード82の高温側端子82aの温度は、極低温冷凍機10の高温側冷却ステージ19と同様の温度となる。また、電流リード82の低温側端子82bの温度は、GM冷凍機の低温側冷却ステージ20の温度と同様の温度となる。
図2に示すように、電流リード82は、支持部材92を介して、補強部材90によって支持される。補強部材90は例えばパイプ等で構成され、剛性の高い部材である。このため、仮に電流リード82低温側端子82bまたは高温側端子82aを固定すると、電流リード82または補強部材90が温度変化による伸縮が吸収できないかもしれない。場合によっては、電流リード82または補強部材90が破損したりするかもしれない。
そこで高温側熱伝導体84aおよび低温側熱応力緩和機構88bは、伸縮可能な弾性体(例えば、板バネ状の部材)で構成される。これにより、電流リード82または補強部材90が温度変化による伸縮が吸収され、電流リード82の破損を抑制し、電気的な接続を良好に維持することができる。
ヒートブリッジ86は、第1端部86aと第2端部86bとを備える。ヒートブリッジ86の第1端部86aは、高温側冷却ステージ19と低温側冷却ステージ20との間で極低温冷凍機10と熱的に接続する。またヒートブリッジ86の第2端部86bは、高温側端子82aと低温側端子82bとの間で電流リード82と熱的に接続する。より具体的には、ヒートブリッジ86の第2端部86bは支持部材92と接続し、支持部材92を介して電流リード82と熱的に接続する。これにより、ヒートブリッジ86は、極低温冷凍機10と電流リード82とを熱的に接続する。ヒートブリッジ86は、例えば柔軟性を持った熱伝導体を用いて実現できる。これにより、ヒートブリッジ86の温度変化によって伸縮を吸収することができる。
検出部94は、ヒートブリッジ86と電流リード82との間の電圧を検出する。検出部94については後述する。
以下、ヒートブリッジ86の第1端部86aが極低温冷凍機10と接続する位置、およびヒートブリッジ86の第2端部86bが電流リード82と接続する位置について説明するが、その前提として、まず極低温冷凍機10の構成を説明する。
図3、図4、および図5は、本発明のある実施の形態である極低温冷凍機10を説明する図である。上述したように、極低温冷凍機10はGM冷凍機である。本実施の形態に係る極低温冷凍機10は、圧縮機1、シリンダ2、ハウジング3、およびモータ収容部5等を有している。
圧縮機1は、低圧配管1aが接続された吸気側から低圧の冷媒ガスを回収し、これを圧縮した後に吐出側に接続された高圧配管1bに高圧の冷媒ガスを供給する。冷媒ガスとしては、例えばヘリウムガスを用いることができるが、これに限定されるものではない。
図3に例示する極低温冷凍機10は、2段式の極低温冷凍機10である。2段式の極低温冷凍機10では、シリンダ2は高温側シリンダ11と低温側シリンダ12の二つのシリンダを有している。高温側シリンダ11の内部には、高温側ディスプレーサ13が挿入される。また、低温側シリンダ12の内部には、低温側ディスプレーサ14が挿入される。
高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は相互に連結されており、それぞれ高温側シリンダ11および低温側シリンダ12の内部で、シリンダの軸方向に往復移動可能な構成とされている。高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14の内部には、それぞれ高温側内部空間15および低温側内部空間16が形成されている。高温側内部空間15および低温側内部空間16には蓄冷材が充填されており、それぞれ高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18として機能する。
上部に位置する高温側ディスプレーサ13は、上方(Z1方向)に向けて延出する駆動軸36に連結される。この駆動軸36は、後述するスコッチヨーク機構32の一部を構成する。
また、高温側ディスプレーサ13の高温端側(Z1方向側端部)には、ガス流路L1が形成されている。更に、高温側ディスプレーサ13の低温端側(Z2方向側端部)には、高温側内部空間15と高温側膨張空間21とを連通するガス流路L2が形成されている。
高温側シリンダ11の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、高温側膨張空間21が形成されている。また、高温側シリンダ11の高温側端部(図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、上部室23が形成されている。
更に、低温側シリンダ12内の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、低温側膨張空間22が形成されている。
低温側ディスプレーサ14は、図示しない連結機構により高温側ディスプレーサ13の下部に取り付けられている。この低温側ディスプレーサ14の高温側端部(図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、高温側膨張空間21と低温側内部空間16とを連通するガス流路L3が形成されている。また、低温側ディスプレーサ14の低温側端部(図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、低温側内部空間16と低温側膨張空間22とを連通するガス流路L4が形成されている。
高温側冷却ステージ19は、高温側シリンダ11の外周面で、高温側膨張空間21と対向する位置に配設されている。また低温側冷却ステージ20は、低温側シリンダ12の外周面で低温側膨張空間22と対向する位置に配設されている。
上記の高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は、スコッチヨーク機構32により、それぞれ高温側シリンダ11および低温側シリンダ12内を図中上下方向(矢印Z1、Z2方向)に移動する。
図3に示すように、ハウジング3はロータリーバルブ40等を有し、モータ収容部5はモータ31を収容する。
モータ31、駆動回転軸31a、およびスコッチヨーク機構32は、駆動装置を構成する。モータ31は回転駆動力を発生し、モータ31に接続された回転軸(以下、「駆動回転軸31a」という。)は、モータ31の回転運動をスコッチヨーク機構32に伝達する。駆動回転軸31aは、軸受60によって支持される。
図4は、スコッチヨーク機構32を拡大して示す図である。スコッチヨーク機構32は、クランク33とスコッチヨーク34等を有している。このスコッチヨーク機構32は、例えばモータ31等の駆動手段により駆動することができる。
クランク33は、駆動回転軸31aに固定される。クランク33は、駆動回転軸31aの取り付け位置から偏心した位置にクランクピン33bを設けた構成とされている。従って、クランク33を駆動回転軸31aに取り付けると、駆動回転軸31aに対しクランクピン33bは偏心した状態となる。この意味で、クランクピン33bは、偏心回転体として機能する。なお、駆動回転軸31aは、その長手方向に複数の場所で回転自在に支持してもよい。
スコッチヨーク34は、駆動軸36a、駆動軸36b、ヨーク板35、及びころ軸受37等を有している。ハウジング3内には、収容空間が形成されている。この収容空間は、スコッチヨーク34及び後述するロータリーバルブ40のロータバルブ42等を収容する気密性を持った気密容器となっている。そこで、以下本明細書においてハウジング3内の収容空間を、「気密容器4」という。気密容器4は、低圧配管1aを介して圧縮機1の吸気口と連通している。そのため、気密容器4は常に低圧に維持される。
駆動軸36aは、ヨーク板35から上方(Z1方向)に延出している。この駆動軸36aは、ハウジング3内に設けられた摺動軸受38aによって支持されている。よって駆動軸36aは、図中上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
駆動軸36bは、ヨーク板35から下方(Z2方向)に延出している。この駆動軸36bは、ハウジング3内に設けられた摺動軸受38bによって支持されている。よって駆動軸36も、図中上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
駆動軸36aおよび駆動軸36bが、それぞれ摺動軸受38aおよび摺動軸受38bによって支持されることにより、スコッチヨーク34はハウジング3内で上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
なお、本実施の形態では、極低温冷凍機の構成要素の位置関係を分かりやすく表すために、「軸方向」という用語を使用することがある。軸方向は駆動軸36aおよび駆動軸36bが延在する方向を表し、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が移動する方向とも一致する。便宜上、軸方向に関して膨張空間又は冷却ステージに相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。つまり、低温側端部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。なお、こうした表現は極低温冷凍機10が取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、極低温冷凍機10は鉛直方向に膨張空間を上向きにして取り付けられてもよい。
ヨーク板35は、横長窓35aが形成されている。この横長窓35aは、駆動軸36aおよび駆動軸36bの延出する方向に対して交差する方向、例えば直交する方向(図4中、矢印X1、X2方向)に延在している。
ころ軸受37は、この横長窓35a内に配設されている。ころ軸受37は、横長窓35a内で転動可能な構成とされている。また、クランクピン33bと係合する孔37aは、ころ軸受37の中心位置に形成されている。横長窓35aは、クランクピン33bおよびころ軸受37の横方向の移動を許容する。横長窓35aは、横方向に延在する上枠部及び下枠部と、上枠部及び下枠部それぞれの横方向端部にて軸方向ないし縦方向に延在し上枠部と下枠部とを結合する第1側枠部及び第2側枠部と、を備える。
モータ31が駆動し駆動回転軸31aが回転すると、クランクピン33bは円弧を描くように回転する。これにより、スコッチヨーク34は図中矢印Z1、Z2方向に往復移動する。この際、ころ軸受37は、横長窓35a内を図中矢印X1、X2方向に往復移動する。
高温側ディスプレーサ13は、スコッチヨーク34の下部に配設された駆動軸36bに接続されている。よって、スコッチヨーク34が図中矢印Z1、Z2方向に往復移動することにより、高温側ディスプレーサ13及びこれに連結された低温側ディスプレーサ14も高温側シリンダ11及び低温側シリンダ12内で矢印Z1、Z2方向に往復移動する。
次に、バルブ機構について説明する。実施の形態に係る極低温冷凍機10は、バルブ機構としてロータリーバルブ40を用いる。
ロータリーバルブ40は、冷媒ガスの流路を切り換えるものである。このロータリーバルブ40は、圧縮機1の吐出側から吐出された高圧の冷媒ガスを高温側ディスプレーサ13の上部室23に導く供給用バルブとして機能すると共に、上部室23から冷媒ガスを圧縮機1の吸気側に導く排気用バルブとして機能する。
このロータリーバルブ40は、図3に加えて図5に示すように、ステータバルブ41とロータバルブ42とを有している。ステータバルブ41は平坦なステータ側摺動面45を有し、ロータバルブ42は同じく平坦なロータ側摺動面50を有している。そして、このステータ側摺動面45とロータ側摺動面50が面接触することにより、冷媒ガスの漏れが防止される。
ステータバルブ41は、ハウジング3内に固定ピン43で固定される。この固定ピン43で固定されることにより、ステータバルブ41は回転が規制される。
ロータバルブ42は、ロータバルブ軸受62により回転可能に支持されている。ロータバルブ42のロータ側摺動面50と反対側に位置する反対側端面52には、クランクピン33bと係合する係合穴(図示せず)が形成されている。クランクピン33bは、ころ軸受37に挿通された際にその先端部がころ軸受37から矢印Y1方向に突出する(図1参照)。
そして、ころ軸受37から突出したクランクピン33bの先端部は、ロータバルブ42に形成された係合穴と係合する。よって、クランクピン33bが回転(偏心回転)することにより、ロータバルブ42はスコッチヨーク機構32と同期して回転する。
ステータバルブ41は、冷媒ガス供給孔44、円弧状溝46、及びガス流路49を有している。冷媒ガス供給孔44は圧縮機1の高圧配管1bに接続されており、ステータバルブ41の中心部を貫通するよう形成されている。
円弧状溝46は、ステータ側摺動面45に形成されている。この円弧状溝46は、冷媒ガス供給孔44を中心とした円弧形状を有している。
ガス流路49は、ステータバルブ41とハウジング3とにわたって形成されている。ガス流路49のうち、バルブ側の一端部は、円弧状溝46内に開口し開口部48を形成している。また、ガス流路49において、ステータバルブ41の側面には吐出口47が開口している。吐出口47は、ハウジング内のガス流路49と連通している。また、ハウジング内のガス流路49の他端部は、上部室23、ガス流路L1、高温側蓄冷器17等を介して高温側膨張空間21に接続されている。
一方、ロータバルブ42は、長円状溝51及び円弧状孔53を有している。
長円状溝51は、ロータ側摺動面50にその中心から径方向に延在するよう形成されている。また円弧状孔53は、ロータバルブ42のロータ側摺動面50から反対側端面52まで貫通し、気密容器4と接続している。この円弧状孔53は、ステータバルブ41の円弧状溝46と同一円周上に位置するよう形成されている。
上記した冷媒ガス供給孔44、長円状溝51、円弧状溝46、及び開口部48により供給弁が構成される。また、開口部48、円弧状溝46、及び円弧状孔53により排気弁が構成される。本実施の形態では、長円状溝51、円弧状溝46などのバルブの内部に存在する空間をまとめてバルブ内部空間と呼ぶことがある。
上記構成とされた極低温冷凍機10において、モータ31の回転駆動力が駆動回転軸31aを介してスコッチヨーク機構32に伝達されてスコッチヨーク機構32が駆動されると、スコッチヨーク34はZ1、Z2方向に往復移動する。このスコッチヨーク34の動作により、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は、高温側シリンダ11および低温側シリンダ12内を下死点LPと上死点UPとの間で往復移動する。
高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が下死点LPに達する前に、排気弁が閉じ、その後、供給弁が開く。即ち、冷媒ガス供給孔44、長円状溝51、円弧状溝46、及びガス流路49との間に冷媒ガス流路が形成される。
よって高圧の冷媒ガスは、圧縮機1から上部室23に充填され始める。その後、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は下死点LPを過ぎて上昇を始め、冷媒ガスは高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18を上から下に通過し、高温側膨張空間21および低温側膨張空間22に充填されてゆく。
そして、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が上死点UPに達する際に、供給弁は閉じる。それと同時、もしくはその後、排気弁が開弁する。即ち、ガス流路49、円弧状溝46、及び円弧状孔53との間に冷媒ガス流路が形成される。
これにより、高圧の冷媒ガスは高温側膨張空間21および低温側膨張空間22内で膨脹することによって寒冷を発生させ、高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20を冷却する。また、寒冷を発生させた低温の冷媒ガスは、高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18内の蓄冷材を冷却しながら下から上に流れ、その後に圧縮機1の低圧配管1aに還流する。
その後、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が下死点LPに達する前に、排気弁が閉じ、その後、供給弁が開いて1サイクルを終了する。このようにして、冷媒ガスの圧縮、膨張のサイクルを繰り返すことによって、極低温冷凍機10の高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20は極低温に冷却される。極低温冷凍機10の高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20は、それぞれ高温側膨張空間21および低温側膨張空間22内の冷媒ガスを膨張させることにより発生した寒冷を、高温側シリンダ11および低温側シリンダ12の外部に伝導する。
以上説明したように、実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、モータ31等の駆動装置の駆動力を高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14の往復移動に変換することで寒冷を発生させる。これにより、高温側冷却ステージの温度はおよそ40Kとなり、低温側冷却ステージ20の温度はおよそ4Kの極低温となる。また、高温側冷却ステージ19と熱的に接続される電流リード82の高温側端子82aの温度はおよそ40[K]となる。また低温側冷却ステージ20と熱的に接続される電流リード82の低温側端子82bの温度は、およそ4[K]となる。
図6は、極低温冷凍機10の低温側蓄冷器18の温度プロファイルと、電流リード82の温度プロファイルとを示す図である。より具体的に、図6の実線で示すグラフは、極低温冷凍機10の高温側冷却ステージ19の位置を0とし、低温側冷却ステージ20の位置を1とした場合の低温側蓄冷器18の温度プロファイルを示す。また図6の破線で示すグラフは、電流リード82の高温側端子82aの位置を0とし、電流リード82の低温側端子82bの位置を1とした場合の、電流リード82の温度プロファイルを示す。
図6の破線で示すように、電流リード82の温度プロファイルは、高温側端子82aから低温側端子82bに向かって直線的に温度が下がる。一方、図6の実線で示すように、低温側蓄冷器18は高温側冷却ステージ19側、すなわち高温端側における温度の降下率は、低温側冷却ステージ20側、すなわち低温端側における温度の降下率よりも大きい。つまり、低温側蓄冷器18の温度プロファイルは、下に凸な非線形なグラフとなる。このように、電流リード82と低温側蓄冷器18とは、それぞれ両端の温度はほぼ等しい。しかしながら、電流リード82と低温側蓄冷器18との中間部の温度は、それぞれ高温端からの距離が等しい位置で計測した場合、低温側蓄冷器18の方が電流リード82より低くなる。
図7は、実施の形態に係る電流リード82に用いる高温超電導体のIc−B−T特性を示す図である。図7は、高温超電導体の経験磁場[T]を横軸、高温超電導体の臨界電流[A]を縦軸としたグラフであり、高温超電導体の温度が4[K]の場合(実線)と40[K]の場合(破線)とをプロットしたグラフである。
図7に示すように、高温超電導体の臨界電流Icは、高温超電導体の経験磁場が大きいほど、小さな値となる。また、経験磁場は、コイルに近いほど、大きくなる。そのため、高温超電導体の安定化のためには、コイル70に近い位置を冷却することが好ましい。限定はしないが、一例として、実施の形態に係る超電導システム100が用いるコイル70は、5[T]以上の磁場を発生する。仮に高温超電導体の経験磁場が2[T]であるとする。図7より、高温超電導体の温度が4[K]のとき臨界電流Icは、温度が40[K]のときの臨界電流Icの2倍程度かそれ以上となる。なお、臨界電流Icは、数百[A]から千数百[A]程度の電流である。
高温超電導体を流れる電流が臨界電流Icを超過すると、高温超電導体は常伝導体に転移してしまう。一般に、電流リード82を構成する高温超電導体の臨界電流Icの値は大きい方が、コイル70により多くの電流をより安全に供給できるため好ましい。
そこで実施の形態に係る超電導システム100においては、低温側蓄冷器18と電流リード82とをヒートブリッジ86を介して熱的に接続する。上述したように、電流リード82と低温側蓄冷器18との中間部の温度は、それぞれ高温端からの距離が等しい位置で計測した場合、低温側蓄冷器18の方が電流リード82より低くなる。このため、低温側蓄冷器18と電流リード82とを熱的に接続すると、電流リード82から低温側蓄冷器18に向かって熱が移動し、電流リード82の温度を下げることができる。
ここで、電流リード82の臨界電流Icの値を大きくするためには、電流リード82の温度はなるべく低くした方がよい。このため、ヒートブリッジ86の第2端部86bは、電流リード82の高温側端子82aと低温側端子82bとの中間部よりも高温側端子82a側で熱的に接続する。これにより、電流リード82の高温側端子82aに近いところから温度を降下させることが可能となる。
一方、低温側蓄冷器18の低温側端部は低温側冷却ステージ20と熱的に接続しており、低温側冷却ステージ20はコイル70を冷却する。このため、低温側冷却ステージ20の温度が上昇してしまうかもしれない。そこで、ヒートブリッジ86の第1端部86aは、高温側冷却ステージ19と低温側冷却ステージ20との中間部よりも高温側冷却ステージ19側において低温側蓄冷器18と熱的に接続する。これにより、低温側冷却ステージ20の温度の上昇を抑制しつつ、電流リード82の温度を下げることができる。
また、電流リード82の熱が低温側蓄冷器18に移動することにより、低温側蓄冷器18の温度プロファイルが直線に近づく。低温側蓄冷器18の温度プロファイルは、直線に近いほど極低温冷凍機10の冷凍性能が向上することが知られている。この点において、低温側蓄冷器18と電流リード82とを熱的に接続することは、極低温冷凍機10の冷凍性能を向上させうる。
このように、電流リード82の温度を下げることで、電流リード82の臨界電流Icを大きくすることができる。電流リード82が超電導状態のとき、電流リード82の電気抵抗は0となるため、室内電流導入リード80から電流リード82に高温側端子82aに到達した電流は、全て電流リード82に流れる。しかしながら、何らかの理由で電流リード82の少なくとも一部が常伝導体に転移すると、電流リード82が電気抵抗を持つことになる。
そこで検出部94はヒートブリッジ86と電流リード82の高温側端子82aとの間の電圧を計測する。電流リード82が超電導状態であれば電流リード82に電流が流れても電圧降下はないが、万が一、電流リード82が常伝導体に転移すると抵抗のためヒートブリッジ86と電流リード82の高温側端子82aとの間に電位差が生じる。検出部94がヒートブリッジ86と電流リード82との間の電圧を計測することで、電流リード82が超電導状態であるかまたは常伝導体であるかを検知することができる。
以上説明したように、実施の形態に係る超電導システム100によれば、電流リード82の通電特性を向上することができる。
また、低温側蓄冷器18の温度プロファイルを線形に近づけることができ、極低温冷凍機10の冷凍性能を向上することもできる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。