JP2016057304A - 加工獣毛及び放射性物質吸着材 - Google Patents

加工獣毛及び放射性物質吸着材 Download PDF

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Abstract

【課題】プルシアンブルーの担持量が十分であると共に堅牢性が十分であり、例えば放射性物質の吸着材として用いた場合に十分な吸着性能を発揮でき、種々形態で利用することが可能な加工繊維としての加工獣毛、及びかかる加工獣毛を利用してなる放射性物質吸着材を提供すること。
【解決手段】表面にフェロシアンの金属塩化合物を有する加工獣毛であって、毛表面におけるエピキューティクルが少なくとも一部除去されて、該毛表面に親水性部分が形成され、該親水性部分に上記金属塩化合物が導入されてなる加工獣毛及びこの加工獣毛を主成分とする放射性物質吸着材。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面にプルシアンブルーが導入されてなる加工獣毛及びそれを用いてなる放射性物質吸着材に関し、詳細には、放射性セシウムなどの放射性核種に対して高い吸着性を有する加工獣毛及び放射性物質吸着材に関する。
セシウム(Cs)は、自然界では少なくとも39種類の同位体を有し、その大半は放射性を示さないものであるが、原子力発電の燃料に使うウランなどが核分裂 反応を起こして生成される放射性セシウムと呼ばれるセシウム134およびセシウム137は、長い半減期(各々およそ2年、30年)に応じて放射線を放出し続けて人体に悪影響を及ぼすため、生活環境から排除する必要がある。
プルシアンブルーは、このような放射性セシウムに対する吸着性を有する物質として知られており、放射性物質の処理施設において、放射性セシウムイオンの捕捉剤として凝集沈殿処理剤と併用されることが知られている。また、近年、原子力発電所の放射能漏れ事故によって放出された放射性セシウムの結合剤(体外除去剤)としても知られている。
なお、プルシアンブルーは、フェロシアン酸塩化合物の一つとして、青色の無機の顔料であって、紺青、ミロリブルー、ベルリン ブルーなど多くの慣用名がある。これは、古くから藍色、紺色の顔料として塗料、印刷インキ、絵具に使用されてきた物質でもある。
このプルシアンブルーは、非常に細かな微粒子であるので、プルシアンブルー単体で用いた場合では、セシウムイオンの吸着後に水中などから分離・回収するのは容易なことではなく、現場で操作する際の薬剤の処理、汚泥の処理、吸着担体の分離、回収が容易ではないことおよびそれらの減量(容)化の困難さに起因する多くの問題点がある。
そこで、プルシアンブルーを布帛などの基材に固着させる方法や樹脂に分散させる方法により、使用後の回収等を容易にすることも知られており、最近でも多くの提案がなされている(例えば特許文献1〜5参照)。
しかし、布帛の繊維間などに担持させる方法では、十分な量のプルシアンブルーを担持させることが困難であり、かつ、基材の繊維との結合強度も十分なものとはいえず、吸着能力が低いという問題や繰り返し使用に耐えないという問題がある。また、バインダーを使用して担持させる方法や樹脂に分散させる方法では、プルシアンブルーの粒子がバインダーや樹脂により被覆されて吸着能力が低下するという問題がある。
さらに、プルシアンブルーの粒子を布帛に固定する場合の共通の問題として、布帛に要するコストや固定する処理のコストの問題がある。
特開2014−117655号公報 特開2013−253952号公報 特開2013−253361号公報 特開2013−061220号公報 特開2013−053389号公報
プルシアンブルーを担持させる基材として、大量に製造されていて廃棄される量も多い羊毛が、安価に調達できる可能性が高いと考えられる。特許文献4でも、プルシアンブルーを羊毛製布帛に担持させた放射性セシウム吸着布帛が提案されている。
しかしながら、布帛の繊維間隙にプルシアンブルーを侵入固定させるこの方法では、堅牢度(繰返して使用できる回数)が不十分である。また、繊維間隙を中心とする担持の方法では、十分な量のプルシアンブルーを担持させることができない。さらに、羊毛の吸着材としての利用形態が布帛に限られているため利用用途に限界がある。
要するに、従来提案されているプルシアンブルーが固定化された繊維は、担持量が不十分であると共に堅牢性が不十分であり、例えば放射性物質の吸着材として用いた場合に十分な吸着性能を発揮できないため、これらの問題を解消した加工繊維の開発が要望されている。
したがって本発明の目的は、プルシアンブルーの担持量が十分であると共に堅牢性が十分であり、例えば放射性物質の吸着材として用いた場合に十分な吸着性能を発揮でき、種々形態で利用することが可能な加工繊維としての加工獣毛、及びかかる加工獣毛を利用してなる放射性物質吸着材を提供することにある。
本発明者らは、特許文献4のように、プルシアンブルーの粒子を繊維間隙に侵入させて担持させるのでは十分にプルシアンブルーを導入できず、所望の放射線物質除去効果を発揮できない問題を解決するために、十分にプルシアンブルーを繊維に導入する手法を種々検討した。
プルシアンブルーは中性で無機の顔料であり、水に不溶の微粒子で、種々の繊維に対して何らの相互作用を持たないので、羊毛に十分な量のプルシアンブルーを担持出来ない原因は、羊毛の表面が疎水性であることによるものではないかと考えて検討し、毛表層のキューティクルのうち最外層を形成するエピキューティクルのみを少なくとも一部除去した後、プルシアンブルーをこの親水性部分に作用させれば上記目的を達成し得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下のとおりである。
1.表面にフェロシアンの金属塩化合物を有する加工獣毛であって、
毛表面におけるエピキューティクルが少なくとも一部除去されて、該毛表面に親水性部分が形成され、該親水性部分に上記金属塩化合物が導入されてなる加工獣毛。
2.上記金属塩化合物が、鉄、コバルト、ニッケル、又は銅を具備するフェロシアン酸金属塩化合物である1記載の加工獣毛。
3.上記金属塩化合物が、フェロシアンブルーである1記載の加工獣毛。
4.1〜3のいずれかに記載の加工獣毛を主成分とする放射性物質吸着材。
本発明の加工獣毛は、プルシアンブルーの染着量が増大し、かつ染色堅牢度が高いものである。また、加工獣毛を、布帛の形態に限らず、糸、綿、紡糸くず(くず繊維)の広い形態とすることができるため、使用済みの既染色羊毛衣服等種々獣毛の再利用が可能となる。
また、本発明の放射性物質吸着材は、上記加工獣毛を利用しているので、放射性セシウム等の放射性物質の吸着能が向上し、繰り返し使用してもプルシアンブルーの脱落が少なく、繰り返し利用することが可能である。具体的には、放射性物質として放射性セシウムを対象とした場合に、放射性セシウムの吸着性能が格段に向上し、吸着速度(処理速度)も速いので、放射性セシウムの除去処理を、時間を短縮して行うことができ、さらにまた、処理液の放射性セシウム濃度が極微量であっても吸着できる。さらに、本発明によれば、様々な形態の羊毛が利用できるので、処理形態に合わせた羊毛が利用でき、再利用なども可能であるため安価に製造することができる。
図1は、本発明の加工獣毛に用いられる羊毛の繊維構造を摸式的に示す断面図である。 図2は実施例で得られた加工獣毛のSEM写真(図面代用写真)であり、(a)は、繊維全体を側面側から撮影した写真、(b)はである。(c)は、繊維断面を撮影した写真、(d)はその鉄元素マッピング写真である。 図3は比較例で得られた加工獣毛のSEM写真(図面代用写真)であり、(a)は、繊維全体を側面側から撮影した写真、(b)はである。(c)は、繊維断面を撮影した写真、(d)はその鉄元素マッピング写真である。 図4は、実施例の加工獣毛と比較例の加工獣毛とのアルカリ性条件下での放射性セシウム吸着能を対比して示すグラフである。 図5は、図4に示す条件での実施例の加工獣毛と比較例の加工獣毛の吸着速度を示すグラフである。 図6は、実施例の加工獣毛と比較例の加工獣毛との酸性条件下での放射性セシウム吸着能を対比して示すグラフである。 図7は、図6に示す条件での実施例の加工獣毛と比較例の加工獣毛の吸着速度を示すグラフである。 図8は、再利用製品である実施例の加工獣毛と比較例の加工獣毛との放射性セシウム吸着能を対比して示すグラフである。 図9は、実施例3で得られた各加工獣毛の吸着能を示すグラフである。 図10は、実施例3における各加工獣毛の性能を数値で表示する図である。
以下、本発明の加工獣毛及び放射性物質吸着材を詳細に説明する。
〔加工獣毛〕
本発明の加工獣毛は、毛表面におけるエピキューティクルが少なくとも一部除去されて、該毛表面に親水性部分が形成され、該親水性部分にフェロシアンの金属塩化合物が導入されてなることを特徴とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、まず、羊毛布にフェロシアンの金属塩化合物の1種であるプルシアンブルー微粒子で直接染色加工することを試みた。しかし、均一かつ濃紺に着色させることはできず、また、十分な染色堅牢度を得ることができなかった。
そこで、プルシアンブルー粒子を羊毛内に浸透させるべく、羊毛に種々の表面加工を施す実験を行ったところ、予めフェルト化防止剤を添加した溶液に所定時間浸漬する前処理を施した羊毛に、プルシアンブルー生成による染色加工を施すと、均一で濃紺の着色が可能になり、かつ、高い染色堅牢度を得られることが分かった。この前処理は、羊毛の表面に物質を付着等させてプルシアンブルーの吸着性を高めるというものではなく、羊毛の表面に存在するエピキューティクルのみが除去される処理であることが判った。プルシアンブルーの性質からすると親水性のキューティクルに対する親和性が高いとは考えられなかったが結果的にエピキューティクルが除去されて露出される親水性のキューティクル層にプルシアンブルーが何らかの作用をして染着されていると考えられる。なお、プルシアンブルーがどのような形で染着されているかは定かではないが、親水性のキューティクルとプルシアンブルーとの親和性が高く分子間力により染着されているものと考えられる。
以下、詳細に説明する。
<獣毛>
本発明においては、上記獣毛として、羊毛及び羊毛に類する獣毛のいずれかを単独であるいは混合して用いる。羊毛に類する獣毛としては、羊毛と同様に表面にキューティクル層を有する獣毛、例えばカシミア、アンゴラ、アルパカ、モヘア等を挙げることができる。
また、これら獣毛は、糸、布、綿、紡糸くず(くず繊維)などの種々の形態のものを使用することが可能である。特に、廃棄衣料、リサイクル衣料などを用いれば、省資源化、低コスト化に資する。なお、羊毛などでは補強等の目的で化学繊維を混合している場合も多いが、それらを取り除く必要はない。
<毛の構造>
本発明で用いることができる獣毛としての羊毛の構造は、図1(a)に示すように、コルテックスを中心にその上に、エンドキューティクル、エキソキューティクル、エピキューティクルからなるスケール層が形成されている。このような毛の構造は他の獣毛についても同様である。
実施例において具体的に説明するが、特許文献3等に記載の従来の手法でプルシアンブルーを導入してなる獣毛では、SEM観察とFe原子分布状態から、うろこ状に形成されている表層であるスケールの重なり合うエッジ部分に、プルシアンブルー粒子が主として染着しているのに対し、本発明の加工獣毛では、表面のスケールを形成している疎水性のエピキューティクルが除去されており、プルシアンブルー粒子は、表層内に均一に浸透して染着していることがわかった。
すなわち、本発明の加工獣毛は、表面のスケール層のうちエピキューティクルのみが除去されたものであり、他の2つのキューティクル層はそのまま残存して、毛の表面にエンドキューティクルが露出されて形成された親水性部分を形成している。
ここでエピキューティクルの除去率は、50%(面積比)以上とするのが好ましく、100%とするのが最も好ましいが、原料である毛が未使用品なのか何らかの加工品に基づいているのかといった条件や、使用目的等によって任意である。ただし、エピキューティクル以外のキューティクル層はそのまま残存しているのが好ましいので、エピキューティクルの除去処理はこれらのエピキューティクル以外のキューティクル層が残存する程度のものとするのが好ましい。
なお、本発明においては、1部分だけでも上述のようにエピキューティクルのみがはがれ、それにより形成された親水性部分に上記金属塩化合物が導入されていればよく、キューティクルが全部はがれた部分や、エンドキューティクルもはがれてエキソキューティクルのみが残存している部分があってもよい。
<金属塩化合物>
上記金属塩化合物は、フェロシアンの金属塩化合物であり、具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又は銅を具備するフェロシアン酸金属塩化合物等を挙げることができる。
上記フェロシアン酸金属塩化合物としては、例えば、硫酸第一鉄(Fe2+)、硫酸銅(Cu2+)、硫酸ニッケル(Ni2+)、硫酸コバルト(Co2+)等をフェロシアン酸塩と処理することにより得られるフェロシアン酸金属塩化合物を挙げることができる。
(プルシアンブルー)
以下、上記金属塩化合物の中でも代表的なプルシアンブルーを例に金属塩化合物について詳述する。なお配合量や製造方法などは他の金属塩化合物についても特に制限なく以下の記載内容が適用される。
本発明において繊維表面に導入されるプルシアンブルーは、一般にFe[Fe(CN)で示されるものであるが、Fe3+ [Fe2+(CN)・xHO(x=14〜16)で示されるものと、MFe3+[Fe2+(CN)]・yHO(MはK、NH などを示し、y=1〜5)で示されるもののいずれをも用いることができる。
プルシアンブルーの配合量は、使用目的や親水性部分の露出比率により任意であるが、獣毛100重量部に対して0.1〜5重量部とするのが、堅牢性と放射性物質吸着性とのバランスの観点で好ましい。
また、本発明の加工獣毛においてプルシアンブルーは、上記親水性部分に導入されてなる。ここで「導入」とは、物理的に吸着された状態、化学的に結合した状態、上記親水性部分に対する親和性が高く分子間力で該親水性部分にプルシアンブルーがひきつけられている状態のいずれかの状態として獣毛にプルシアンブルーを染着した態様を意味する。
<製造方法>
本発明の加工獣毛の製造方法について説明する。
なお、以下の説明においては、獣毛として羊毛を用いた例を示して説明するが、そのほかの獣毛についても同様に適用可能である。また、羊毛を用いた製品には、糸、綿、布(織物、編物)など多様なものがあるが、処理対象の製品がいずれであっても、処理方法は基本的に異なることはないので、以下それらを羊毛と総称して説明する。
上記製造方法は、原料である獣毛からその表面に位置するエピキューティクルを除去する脱スケール処理工程と、エピキューティクルが除去されて形成された親水性部分にプルシアンブルーを導入する染色加工工程とを行うことにより実施できる。
以下、それぞれ説明する。
(脱スケール処理工程)
脱スケール処理は、羊毛の表層のエピキューティクルの少なくとも一部を除去して親水性部分を形成する工程である。
エピキューティクルを除去する脱スケール処理は、フェルト化防止剤を添加した水中に羊毛を浸漬し、所定時間撹拌することによって行うことができる。
その際に、あらかじめ羊毛に湿潤処理をして水となじみやすいようにしておくのが好ましい。湿潤処理は、例えば、水中に6〜24時間程度浸漬した後、脱水するなどの方法により行うことができる。
フェルト化防止剤を添加した水中に羊毛を浸漬し、所定時間撹拌する処理は、1回でもよいが、エピキューティクルの除去を十分に行うには、複数回(好ましくは2〜5回)繰り返して行うのが好ましい。浸漬・撹拌時間としては、フェルト化防止剤の効果が有効な1時間以内とするのが好ましい。
フェルト化防止剤としては、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤や、ジクロロイソシアヌル酸、モノ過硫酸塩等の酸化薬剤を用いることができ、市販品を用いることができる。また、水中への添加量は、水1リットルに対してフェルト化防止剤1〜5gとするのが好ましい。また、獣毛の種類によって脱スケール処理を強く行わなければならない時はクロイ法(塩素による酸化処理)や「過マンガン酸カリ+塩素」(FTC)処理を行うことも有効である。
また、獣毛製品等の繊維同士を樹脂で接着することにより、スケールを樹脂で被覆して繊維同士の絡み合いを防止する、クロイ樹脂法や、シロランBAP法、DC−109法等の樹脂法や、獣毛製品等を湿潤時に柔軟化させて繊維同士の絡み合いを防止する方法として、FTC法以外に、プロテイン法等の柔軟化法を用いても良い。
脱スケール処理は、フェルト化防止剤を用いる方法以外にも酵素処理による方法を用いて行うことも可能である。
また、スケール処理は、紡糸したままの羊毛、製品化のための表面加工(防縮処理)や染色などの種々の処理を経た羊毛のどちらでも適用が可能であり、さらに、糸、布、綿、紡糸くず(くず繊維)などの種々の形態での適用が可能である。
(染色加工工程)プルシアンブルー担持羊毛繊維(放射性セシウム吸着繊維)の作製
脱スケール処理後の親水性部分が形成されてなる羊毛(以下導入用羊毛という場合にはこの羊毛を指す)にプルシアンブルーを導入するにはまず、フェロシアン化ナトリウムを水に溶解し、酢酸(ギ酸、スルファミン酸、硫酸などの他の酸も使用可能である)を加えてpH3〜4に調整した水溶液に、撹拌しながら導入用羊毛を浸漬させる。浸漬は室温で行うのが好ましく、3〜10時間行うのが好ましい。
続いて硫酸第一鉄と硫酸アンモニウムを水に溶解し、酢酸を加えてpH3〜4に調整した水溶液を調整し、この水溶液に浸漬処理後脱水した羊毛を浸漬し、浸漬したままこの水溶液を20〜40分程度の時間でゆっくりと70〜75℃に加温して反応を完成させる。この過程で2価の鉄から3価の鉄に速やかに酸化され、濃紺のプロシアンブルーを担持(染色)した羊毛が得られる。場合によっては2価の鉄イオンに代って3価の鉄イオンを用いてもよい。
上述のように脱スケール処理を行うことにより羊毛へのプルシアンブルーの染着率が増大する。染色に要する処理時間の短縮、反応試薬の使用量の減量、副反応の抑制も図られる。
〔使用方法、本発明の放射性物質吸着材〕
本発明の加工獣毛は、本発明の放射性物質吸着材として使用することができる。
本発明の放射性物質吸着材は、加工獣毛を主成分とすることを特徴とする。
ここで本発明の放射性物質吸着材は、上記加工獣毛のみにより形成されていてもよく、また適当な添加剤を加えて組成物として用いてもよく、さらには繊維を種々形態に成形して用いてもよい。
また、安定セシウムイオンおよび吸着対象である放射性セシウム134Csイオン、 137Csイオン等を吸着することができる。
以下に本発明の加工獣毛のみからなる本発明の放射性物質吸着材を用いた除染方法について説明する。
(除染方法)
本発明の放射性物質吸着材は、そのまま放射性物質としての放射性セシウムイオンを含む排水や土壌処理水に投入して用いることができる。
所定時間放置して放射性セシウムを吸着させた後、水を回収する等して放射性セシウムを吸着した放射性物質吸着材を分離回収する等して使用することができる。回収された放射性物質吸着材は、燃焼させて充分に減量(減容)化することができ、その際に生じた放射性セシウムイオンを含む焼却灰は、別途安全に保管することができる。
すなわち、本発明の放射性物質吸着材を用いた放射性物質汚染水の処理は、従来の処理技術に比べて、処理方法の簡便さ、設備設置上での小スペース化、低い設備コスト、低ランニングコスト、巻き取られた布帛の焼却による容易な減量化を可能にすること、および実用面でも優れた効果を発揮することができる。
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
羊毛布(30cm×40cm:31.0gと10cm×10cm:2.6g、厚さ0.4mm)を素材として上述の製造方法に従って本発明の加工獣毛を作製した。
脱スケール処理工程は、少量(0.1重量%)の洗浄剤を添加した水に、羊毛布素材を浸漬した後、水洗して脱水し、次いで、水600mlにフェルト化防止剤としてFasolan DC(商品名)を0.8g添加した処理液中に、上記の湿潤処理後の羊毛を加えて、振盪式染色機で27〜35℃、30分処理し、Fasolan DC 0.8gを追加して更に30分処理を行った。処理後は、ハイドロサルファイト水溶液による還元、水洗して脱水した。
ついで染色加工工程を次のように行った。脱スケール処理工程終了後の羊毛布素材を、まず、フェロシアン化ナトリウム8.9gを580mlの水に溶解し、酢酸を加えてpH3に調整した水溶液に脱スケール処理布を入れ、染色機にて振盪撹拌を加えながら、28〜33℃で5時間浸漬処理した。
浸漬処理後、脱水した羊毛布素材を、硫酸第一鉄と硫酸アンモニウムを各々10.1gづつ580mlの水に溶解し、酢酸を加えてpH3に調整した水溶液に浸漬し、30分程度ゆっくりと70〜75℃の範囲内に加温して反応を完成させ、プルシアンブルーが導入された加工獣毛としての加工羊毛を得た。
得られた加工羊毛のSEM写真及び鉄元素マッピング写真(これもSEMで元素分析できる)を図2に示す。図2(a)及び(b)に示すように加工羊毛の表面全面にプルシアンブルーが導入されていることが判る。また、図2(c)及び(d)に示すように加工羊毛の表面層に吸着されていることが判る。
〔比較例1〕
脱スケール処理工程を行わない以外は実施例1と同様にして比較例の加工羊毛を得た。得られた加工羊毛のSEM写真を図3に示す。図3(a)及び(b)に示すように、比較例の加工羊毛では、羊毛の隣片状の表面が重なり合った隙間にプルシアンブルーが導入されており、全面には導入されていないことが判る。また、図3(c)及び(d)に示すように加工羊毛の表面のエピキューティクルは除去されておらず、エピキューティクルの隙間にプルシアンブルーが入り込んで吸着されていることが判る。
〔試験例〕
実施例1及び比較例1で得られた加工獣毛としての加工羊毛をフィルターや充填剤として用いたセシウム吸着性試験と加工羊毛の堅牢性を確認するための染色堅牢度の各試験を行った。
(セシウム吸着性)
a.吸着性試験
実施例1及び比較例1で得られた加工羊毛をそれぞれカラムに5g充填して、アルカリ性と酸性の処理水に含まれる放射性物質(セシウム)のろ過試験を行った。
まず、放射性物質(セシウム)によって汚染された草木灰抽出水(pH9)をカラムに約1リットルを流して、カラムから排出させ、加工羊毛に放射性物質を吸着させた。排出後の抽出水の放射性物質量を高純度ゲルマニウム半導体検出器で測定した。また、その際の加工羊毛への放射性物質の吸着量も合わせて測定した。その結果を図4に示す。
図4に示す結果から明らかなように本発明の加工獣毛(実施例1)を用いた場合には、カラム通過後の液体の放射性物質量はほとんどなく、放射性物質吸着材として優れていることが判る。また、ろ過後の加工獣毛に吸着した放射性物質量とろ過により汚染水中から除去された放射性物質量が一致した。これは、本発明の加工獣毛の吸着性がよく、効率的に汚染水中の放射性物質を除去することを示している。
なお、別に、実施例1の加工羊毛をカラムに2倍の10g充填して同様のろ過を行ったが、その場合は、検出器の検出限界値を超え不検出(N.D)であった。
次に、放射性物質によって汚染された焼却ガスの洗浄水(pH6)についても同様の試験を行った。その結果を図6に示す。図6に示す結果から明らかなように、本発明の加工獣毛(実施例1)は酸性領域でも十分な放射性物質吸着能を示すことが判る。さらに、図6に示した結果は、本発明の加工獣毛が極微量の放射性セシウムも吸着して除去することができることも判る。
b.処理速度試験
実施例1及び比較例1で得られた加工羊毛の放射性物質(セシウム)の除去速度を調べるために、少ない量の加工羊毛を用いてろ過を繰り返し行った。
フィルターとして、吸引ろ過では1g(直径6cm)の加工羊毛布を用い、カラムろ過では5gの加工羊毛糸を用いて、ろ過繰り返し行い、各処理後の処理水の放射性物質濃度を測定し、各回のろ過の処理時間(分)を積算して、処理時間に対する放射性物質濃度の変化を調べた。
前記草木灰抽出水(pH9)を真空ポンプで吸引しながらろ過を行う吸引ろ過した場合に得られた結果を図5に、焼却ガス洗浄汚染水(pH6)をカラムろ過した結果を図7に示す。
アルカリ性の草木灰抽出水をろ過した場合、実施例1の加工羊毛では、6回のろ過で90%の除去が、8回のろ過では約95%の除去が可能であったが、比較例1の加工羊毛では、6回のろ過で75%除去できたに過ぎなかった。両者の放射性物質の除去速度を比較すると、本発明加工獣毛と比較例では放射性物質の除去速度が約2.5倍大きいことが判る。
酸性の焼却ガス洗浄汚染水(pH6)をカラムろ過した場合、比較例1の加工羊毛は、酸性条件下では吸着速度が非常に低下するが、本発明の加工羊毛(実施例1)の場合は、前述のアルカリ性処理水のろ過と同じくより早い速度(約5倍)で吸着することが判る。
(染色堅牢度)
実施例1及び比較例1で得られた加工羊毛に対する染色堅牢度(洗濯堅牢度、摩擦堅牢度)の試験を、各々JIS L0844 A法、L08479により行った。
その結果、実施例1の加工羊毛では、洗濯堅牢度の汚染の評価は最も優れていることを示す5級であり、摩擦堅牢度の乾摩擦で5級、湿摩擦の汚染では4級であった。比較例1の加工羊毛では洗濯堅牢度は同様であったが、摩擦堅牢度においては、それぞれ4級、3級となり、本発明の加工獣毛の方がより堅牢な染色物であることが判った。
この染色堅牢度の結果から、本発明の加工獣毛は、セシウムを吸着したプルシアンブルー粒子が羊毛から処理済みの水溶液中に脱落して、処理済みの水溶液が再度放射性セシウムに汚染される問題が解決されていることが確認できた。
(まとめ)
以上のように、表層のエピキューティクルの少なくとも一部を除去して親水性部分を形成した後プルシアンブルーで染色した本発明の加工獣毛は、格段に優れた放射性セシウム吸着性を有するとともに、染着されたプルシアンブルー粒子は、強固に羊毛素材中に浸透していて、繰り返し使用でも特性が劣化しない優れた性能を有するものである。
〔実施例2〕
羊毛として衣服を裁断して得た使用済み羊毛を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の加工獣毛を得、得られた加工獣毛を用いてセシウム吸着性を確認した。また、原料とした布そのものを細かく裁断して得た羊毛についても同様に試験した。その結果を図8に示す。
図8に示す結果から明らかなように、本発明の加工獣毛は使用済み繊維を用いても高い吸着性能を示すことが判る。このことから資源の再利用に資し、低コスト化を図ることができることが判る。
〔実施例3〕
スケール処理として、クロイ法(塩素による酸化処理)及びFTC法(過マンガン酸カリ+塩素処理)を用いた以外は実施例1と同様にしてPBを担持した加工獣毛を得た(クロイPB−1、クロイPB−2、FTCPB−1、FTCPB−2)。また鉄に代えてCu、Ni、Coを有するプルシアンブルー加工獣毛(PB−T(Cu)、PB−T(Ni)、PB−T(Co))を製造した。得られた加工獣毛について実施例1における試験例のカラムろ過と同様にして放射性セシウム吸着特性を評価した。その結果を図9及び図10に示す。

Claims (4)

  1. 表面に
    フェロシアンの金属塩化合物を有する加工獣毛であって、
    毛表面におけるエピキューティクルが少なくとも一部除去されて、該毛表面に親水性部分が形成され、該親水性部分に上記金属塩化合物が導入されてなる加工獣毛。
  2. 上記金属塩化合物が、鉄、コバルト、ニッケル、又は銅を具備するフェロシアン酸金属塩化合物である請求項1記載の加工獣毛。
  3. 上記金属塩化合物が、フェロシアンブルーである請求項1記載の加工獣毛。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工獣毛を主成分とする放射性物質吸着材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105944690A (zh) * 2016-07-14 2016-09-21 四川大学 一种生物质吸附剂及其制备方法和用途
JP2019132651A (ja) * 2018-01-30 2019-08-08 日本製紙株式会社 セシウムを含む液体の処理技術

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