JP2016050338A - めっき皮膜付樹脂製品及びその製造方法、並びに導電膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂製品上に酸化亜鉛皮膜を短工程で作製する。
【解決手段】樹脂製品110の表面に紫外線を照射して表面を改質する。紫外線が照射された樹脂製品110の表面に無電解めっき触媒を付与する。無電解めっき触媒が付与された樹脂製品110を無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬する。
【選択図】図1

Description

本発明は、めっき皮膜付樹脂製品及びその製造方法、並びに導電膜に関する。
酸化亜鉛(ZnO)は、生活に深く結び付いており、様々な用途に使用されている。列挙すると、ゴム、顔料、セラミック、塗料、めっき、電池、ガラス・レンズ、触媒、圧電材料、バリスタ、医薬品、樹脂・紙、抗菌脱臭材料、電子写真、日焼け止め、UVカット材料、蛍光体、太陽電池、光触媒材料、透明導電体、LED、透明トランジスタ等である。酸化亜鉛(ZnO)は、透明性及び導電性を有することから、透明導電体又は透明電極の材料として期待されている。透明導電体の材料として現在、主に用いられている酸化インジウムスズ(ITO)の構成材料であるインジウム(In)は希少金属であるため、酸化亜鉛はこのような課題を解決できることが期待される。また、酸化亜鉛はn型半導体特性も有し、半導体材料としても期待されている。例えば、酸化亜鉛は、タッチパネル、有機EL素子、太陽電池、圧電材料、紫外線LED、及び透明磁性体等を作製するために用いることができる。酸化亜鉛を透明導電体として用いる場合には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、又はインジウム(In)等の第3族元素がドーピングされることが多い。
基材上に酸化亜鉛皮膜を形成するための方法としては、化学蒸着(CVD)法、マグネトロンスパッタ法、分子線エピタキシー(MBE)法、ゾル−ゲル法等が用いられる。しかしながら、これらの方法においては基板を300℃以上に加熱する処理が必要であるため、基板としてガラス等の無機物を用いることはできても、樹脂基板を用いることができないという課題があった。しかし、樹脂基板は、ガラスなどの無機物と比較して、軽量でありかつ可撓性に優れるという特徴がある。ここで、低温で樹脂基板に酸化亜鉛皮膜を成膜可能な方法として、無電解めっき法がある。例えば、非特許文献1には、亜鉛塩と還元剤とを含むめっき液に基板を浸漬することにより、基板上に酸化亜鉛皮膜を形成する方法が開示されている。
酸化亜鉛を用いた透明導電膜等を製造する際には、所定のパターンを有するように酸化亜鉛皮膜を形成することが望まれる。例えば、特許文献1には、触媒を有する感光膜をガラス基板上に形成し、所望の部分に紫外線を照射して、紫外線が照射されなかった感光膜に対して溶剤を用いることでこの感光膜を除去する方法(フォトリソグラフィー)が開示されている。その後、亜鉛塩と還元剤とを含むめっき液にガラス基板を浸漬することにより、感光膜が残っている所望の部分に酸化亜鉛膜が形成される。
また、特許文献2には、亜鉛塩と還元剤とを含むめっき液に基板を浸漬しながら、所望の部分に光を照射することにより、光が照射された部分に酸化亜鉛配線を形成する方法が開示されている。具体的には、まず、基板全面に触媒核を形成した後にめっき液に浸漬することにより酸化亜鉛の薄膜が形成される。その後、基板の所望の部分に光を照射することにより、光が照射された部分において酸化亜鉛が成長し、配線が形成される。最後に、基板を酸に浸漬することにより、光が照射されていない部分の酸化亜鉛薄膜が溶解し、酸化亜鉛の配線が基板上に残る。
特開2003−213436号公報 特開平10−245682号公報
片山順一、「めっきプロセスによるZnO透明導電膜の作製」、表面技術、2009年10月、60巻、10号、625頁
しかしながら、特許文献1の方法を用いる場合、感光膜を基材の全面に形成した後でフォトリソグラフィーを行う必要があるため、工程数が多く、廃液が増加するという課題があった。また、感光膜の材料が光により変性してその透明性が低下する可能性があり、この場合酸化亜鉛皮膜の透明性を生かすことができなかった。また、特許文献2の方法を用いる場合にも、触媒核を基材の全面に形成する必要があり、さらに酸化亜鉛配線を形成した後に基材全体を酸処理する必要があった。このように、特許文献2の方法も工程数が多く、また酸によりダメージを受ける材料を用いることは容易ではなかった。
本発明は、樹脂製品上に酸化亜鉛皮膜を短工程で作製することを目的とする。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法は以下の構成を備える。すなわち、
樹脂製品の表面に紫外線を照射して前記表面を改質する照射工程と、
前記紫外線が照射された樹脂製品の表面に無電解めっき触媒を付与する付与工程と、
前記無電解めっき触媒が付与された前記樹脂製品を無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬するめっき工程と、
を含むことを特徴とする。
樹脂製品上に酸化亜鉛皮膜を短工程で作製することができる。
一実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品の製造方法を説明する図。 一実施形態に係るめっき皮膜の形成パターンを示す図。 一実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品の製造方法のフローチャート。 紫外線の照射に用いられるフォトマスクの一例を示す図。
以下、本発明を適用できる実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。図1(C)に示すように、本発明の一実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100は、表面に改質部140が形成されている樹脂製品110と、樹脂製品110上に所定のパターンを有するように形成されためっき皮膜120と、を備える。めっき皮膜120は酸化亜鉛を含んでいる。一実施形態において、改質部140は凹部であり、この凹部にはめっき皮膜120の一部又は全部が入り込んでいる。もっとも、後述するように、樹脂製品110が凹部を備えていること、及びこの凹部にめっき皮膜120の一部又は全部が入り込んでいることは必須ではない。以下に、図面を参照して、これらについて詳しく説明する。
めっき皮膜付樹脂製品100とは、樹脂製品110の上にめっき皮膜を形成することにより得られる製品であり、その種類は特に限定されない。例えば、めっき皮膜付樹脂製品100は、タッチパネル部品、有機EL素子部品、太陽電池部品、圧電素子部品、紫外線LED部品、又は透明磁性体部品等でありうる。すなわち、樹脂製品110の種類も特に限定されない。また、樹脂製品110が透明性を有している必要はなく、樹脂製品110は半透明又は不透明であってもよい。例えば、酸化亜鉛を含有しているめっき皮膜120は、上述の通り導電体として用いることができる他、UVカット材料又は触媒等として様々な機能を発揮しうる。このように、めっき皮膜付樹脂製品100は様々な用途に用いることができる。例えば、樹脂製品110がフィルム状又はシート状の部材である場合、めっき皮膜付樹脂製品100は、例えば導電性、紫外線遮断性、又は触媒機能等を有する機能性膜として様々な用途に用いることができる。
以下に、めっき皮膜付樹脂製品100の実施形態について説明する。一例として、めっき皮膜付樹脂製品100は導電膜である。この実施形態において、樹脂製品110は樹脂フィルムであり、めっき皮膜120は導電膜の導電体である。導電膜とは、導電体が形成されたフィルムのことを指す。導電膜は、例えば電極等として用いることができる。しかしながら、導電膜が、電力を供給するため又は取り出すために用いられる必要はない。例えば、導電膜は電磁波シールド等として用いることもできる。特に、樹脂製品110が透明樹脂フィルムである場合、めっき皮膜付樹脂製品100は透明導電膜である。透明導電膜は、透明でありながら電気をよく通すという性質を利用して、ディスプレイ用の電極、及び太陽電池用の電極等として用いることができる。また、透明導電膜は、タッチパネルの構成要素、例えば静電容量方式のタッチパネルの導電膜として用いることができる。用途に応じて、導電膜は、外部接続端子等の他の構成要素を備えていてもよい。
(樹脂製品)
樹脂製品110は、樹脂材料を有する製品であれば特に限定されない。例えば、めっき皮膜付樹脂製品100が導電膜である実施形態において、樹脂製品110は、樹脂材料のフィルムである。フィルムの種類は特に限定されず、導電膜の用途に応じて適宜選択することができる。透明導電膜を作製する場合には、樹脂材料としては透明性を有する樹脂材料が選択される。一実施形態において、透明性を有する樹脂材料の全光線透過率(JIS K7361−1:1997)は、80%以上である。透明性を有する樹脂材料の例としては、シクロオレフィンポリマー及びポリスチレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、並びにポリ塩化ビニルのようなビニル樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂材料に対しては、後述するように、紫外線レーザを照射することにより凹部を形成することができる。また、これらの樹脂材料に紫外線を照射することにより、照射部に選択的にめっきが析出するようにフィルムを改質することができる。したがって、これらの樹脂材料のフィルムを用いることで、容易に本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100を作製することができる。
樹脂製品110が樹脂フィルムではない実施形態においても、同様の樹脂材料を用いて、任意の形状、例えば板状、ブロック状、又は円筒状等、の樹脂製品110を作製することができる。
樹脂製品110は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、樹脂製品110に、無機層が積層されていてもよい。この場合、めっき皮膜120が形成される面が、紫外線による改質が可能な材料で形成されていると、容易に本実施形態に係る導電膜を作製することができる。
一実施形態においては、樹脂材料は炭素原子及び水素原子で構成される炭素ポリマーであり、炭素ポリマーにはシクロオレフィンポリマーが含まれる。シクロオレフィンポリマーは、例えば、下式(I)に示す繰り返し単位を有するポリマーでありうる。
Figure 2016050338
上式において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1以上12以下の炭化水素基を表す。炭化水素基には、炭素数1以上12以下のアルキル基等が含まれる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。一実施形態において、R及びRは、炭素数1以上12以下の2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基には、炭素数1以上12以下の2価のアルキル基等が含まれる。2価のアルキル基の例としては、1,3−プロパンジイル基、1,3−シクロペンタンジイル基及び5−メチルシクロペンタン−1,3−ジイル基等が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの例としては、以下の繰り返し単位A〜Eのいずれかを有するものが挙げられる。
Figure 2016050338
シクロオレフィンポリマーは、複数の繰り返し単位を含んでいてもよい。また、樹脂材料が、複数のシクロオレフィンポリマーを含んでいてもよい。異なるガラス転移温度(Tg)を有する複数のシクロオレフィンポリマーを混合することにより、Tgを調整することができる。一実施形態で用いられるシクロオレフィンポリマーは、上記の繰り返し単位A〜Eのいずれかを有するシクロオレフィンポリマーを混合して得られるものであり、そのTgは160℃である。このシクロオレフィンポリマーは、主に、上記の繰り返し単位Eを有するシクロオレフィンポリマーで構成される。
上式に示すシクロオレフィンポリマーは、炭素原子及び水素原子で構成される。一実施形態に係るシクロオレフィンポリマーは、化学的に安定性の高い物質である。シクロオレフィンポリマーの重量平均分子量は特に限定されず、一実施形態においては1×10以上、1×10以下である。
樹脂製品110の形状は特に限定されず、用途により適宜選択することができる。めっき皮膜付樹脂製品100が導電膜である場合、樹脂製品110である樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、強度を確保するとともに巻き取りを容易とするために、一般的には5.0μm以上1.0mm以下が好ましい。
一実施形態において、樹脂製品110は改質部140を有している。後述するように、改質部140にはめっき皮膜120が設けられる。改質部140の形状及び配置は、設けようとするめっき皮膜120の形状に合わせて適宜選択することができる。一実施形態においては、改質部140は樹脂製品110の平滑な平面又は曲面上に設けられている。樹脂製品110は複数の改質部140を有していてもよい。改質部140は凹部であってもよく、この場合凹部の深さは0.01μm以上5.0μm以下でありうる。
(めっき皮膜)
樹脂製品110の表面には、めっき皮膜120が設けられている。めっき皮膜120は、酸化亜鉛を含んでいる。一実施形態においては、めっき皮膜120は実質的に酸化亜鉛からなる。
めっき皮膜120の形状は任意である。めっき皮膜120は、樹脂製品110上に所定のパターンに従って配置されている。本実施形態において、めっき皮膜120は、樹脂製品110の改質部140に形成されている。めっき皮膜120は、改質部140の表面の実質的に全体を覆っていてもよい。一実施形態において、めっき皮膜120の厚さは、特に限定されないが0.02μm以上100μm以下の範囲内、中でも0.1μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。膜厚が薄いことにより光透過性が向上するとともにパターンの線幅を細かくすることが容易となり、膜厚を厚くすることにより、十分に低い抵抗を実現することができる。
(めっき皮膜付樹脂製品の製造方法)
本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100の製造方法は特に限定されない。以下に、本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100の製造方法の一例(以下、本実施形態に係る製造方法と呼ぶ)について、図3を参照して説明する。本実施形態に係る製造方法は、照射工程と、付与工程と、めっき工程と、を有する。また、本実施形態に係る製造方法が、さらに酸化工程と処理工程との少なくとも一方を有していてもよい。以下に、これらの工程について詳しく説明する。
(照射工程)
照射工程(S310)においては、樹脂製品110の表面に紫外線が照射される。本実施形態においては、樹脂製品110の表面の一部分に紫外線が照射される。この紫外線が照射された部分に、めっき皮膜120が形成される。図1(A)は樹脂製品の断面図である。また、図2は樹脂製品110の上面図である。図2に示すように、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分210に紫外線を照射することにより、この部分210が改質される。一実施形態においては、243nm以下の波長の紫外線が照射される。波長が243nm以下であることにより、樹脂製品110の表面の改質がより促進される。また、波長243nm以下の紫外線を用いることにより、微細なパターンの形成が容易となる。
例えば、酸素を含む雰囲気下で、酸素を分解可能な特定の波長以下の紫外線を照射すると、雰囲気中の酸素は分解されてオゾンが生成する。更にはオゾンが分解する過程で活性酸素が発生する。
特定波長のフォトンのエネルギーは次の式で表せる。
E=Nhc/λ(KJ・mol−1
N=6.022×1023mol−1(アボガドロ数)
h=6.626×10−37KJ・s(プランク定数)
c=2.988×10m・s−1(光速)
λ=光の波長(nm)
ここで、酸素分子の結合エネルギーは490.4KJ・mol−1である。フォトンのエネルギーの式から、この結合エネルギーを光の波長へと換算すると約243nmとなる。このことは、雰囲気中の酸素分子は、波長243nm以下の紫外線を吸収し分解することを示している。これによりオゾンOが発生する。さらに、オゾンが分解する過程で活性酸素が発生する。このとき、波長310nm以下の紫外線が存在すると、効率よくオゾンが分解され、活性酸素が発生する。さらには、波長254nmの紫外線がオゾンを最も効率よく分解する。
+hν(243nm以下)→O(3P)+O(3P)
+O(3P)→O(オゾン)
+hν(310nm以下)→O+O(1D)(活性酸素)
O(3P):基底状態酸素原子
O(1D):励起酸素原子(活性酸素)
具体的には、波長243nm以下の紫外線を照射すると、雰囲気中の酸素は分解されてオゾンが生成する。さらに、オゾンが分解する過程で活性酸素が発生する。また、樹脂製品110の表面において、樹脂製品110を構成する分子中の結合も切断される。このとき、樹脂製品110を構成する分子と活性酸素とが反応し、樹脂製品110の表面が酸化され、すなわち樹脂製品110の表面にC−O結合、C=O結合、C(=O)−O結合(カルボキシル基の骨格部分)等が形成される。このような親水性基は、樹脂製品110とめっき皮膜120との化学的吸着性を増大させる。また、樹脂製品110表面の酸化により、特にめっきの前処理を行った後に微細な粗面が形成されるため、投錨効果により樹脂製品110とめっき皮膜120との物理的吸着性が増大する。さらに、改質された部分については、無電解めっきを行う場合に触媒イオンを選択的に吸着させることができる。
このように、一実施形態において、紫外線の樹脂製品110への照射は、酸素又はオゾンを含む雰囲気下で行われる。具体的な例としては、紫外線の樹脂製品110への照射は、大気中で行われうる。別の実施形態においては、より改質を促進するために、オゾンを含む雰囲気中で照射が行われる。
一方で、別の実施形態において、紫外線の樹脂製品110への照射は、例えばアミン化合物ガス雰囲気下又はアミド化合物ガス雰囲気下等の、他の気体雰囲気下で行うこともできる。ここで、アミン化合物にはアンモニアも含まれる。これらの気体雰囲気下で照射を行うことにより、樹脂製品110の表面を酸化する、すなわち樹脂製品110の表面に窒素原子を含む結合を生成することができる。すなわち、樹脂製品110の表面が窒素原子を含むように改質され、めっき層との吸着性が向上するため、照射部分に選択的なめっきを行うことが可能となる。加工対象物を、常圧大気中から隔離し、圧力を変え又は化合物ガスを封入して紫外線による改質を行う場合には、反応に適した波長を適宜選択することができる。一方で、酸素を含む大気中で243nm以下の波長を有する紫外線を照射することは、低コストに改質を行うことができる点で有利である。
もっとも、別の実施形態においては、樹脂製品の全面に対して紫外線を照射してもよい。紫外線照射により、樹脂製品の表面にはナノレベル微細な凹凸が形成される。このため、無電解めっきに用いられる触媒イオンの吸着性が増大するために無電解めっき皮膜が析出しやすくなる。また、樹脂製品と形成された無電解めっき皮膜との接着性が向上する。この実施形態においても、紫外線を照射するという簡便な操作により、樹脂製品の表面を改質することができる。
以下で説明する実施形態のように、紫外線レーザ又は紫外線ランプ等を用いて表面を改質するために紫外線を照射する場合に樹脂製品110の表面に形成される凹凸は、ナノメートルオーダーの微細なものである。一実施形態において、めっき皮膜120が形成されている部分における樹脂製品110の表面粗さRaは、10nm以下である。本明細書において、表面粗さは、JIS B0601:2001により定義される、算術平均粗さRaのことを指す。凹凸を微細にすることにより、例えばめっき皮膜120が導電体として用いられる場合に高周波特性を改善することができる。すなわち、高周波領域の信号は表皮効果により導体表面近傍を流れるため、凹凸が大きいと信号損失が大きくなるが、凹凸を微細とすることにより高周波信号のロスを抑えることができる。以下のように紫外線を照射する場合、例えば過マンガン酸カリウム、又は切削用途等の高強度レーザ等を用いて形成されるマイクロメートルオーダーの凹凸よりも格段に小さい凹凸を形成することができる。
以下に、紫外線による樹脂製品110の改質方法として、第1の方法及び第2の方法を説明する。
一実施形態によれば、照射工程(S310)において、継続的に紫外線を放射する紫外線ランプ又は紫外線LED等を用いて紫外線を照射することにより、樹脂製品110の改質が行われる。例えば、紫外線の光学系に、めっき皮膜120の形状に対応するフォトマスクやメタルマスク等を挿入することにより、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分210に紫外線を選択的に照射することができる。
このような紫外線は、継続的に紫外線を放射する紫外線ランプ又は紫外線LED等を用いて照射することができる。照射される紫外線の主波長についてのエネルギー密度は、改質が進行するのであれば特に限定されず、例えば1.0×10−3W/cm以上であってもよく、1.0×10W/cm以下であってもよい。本明細書において、主波長とは、243nm以下の領域においてもっとも強度が高い波長のことを指す。具体的には、低圧水銀ランプであれば主波長は185nmである。
紫外線ランプの例としては、低圧水銀ランプ及びエキシマランプ等が挙げられる。低圧水銀ランプは、波長185nm及び254nmの紫外線を照射することができる。また、参考として、大気中で使用できるエキシマランプの例を以下に挙げる。エキシマランプとしては、一般的にはXeエキシマランプが用いられている。
Xeエキシマランプ :波長172nm
KrBrエキシマランプ:波長206nm
KrClエキシマランプ:波長222nm
紫外線を樹脂製品110へと照射する際には、照射量が所望の値となるように、紫外線の照射が制御される。照射量は、照射時間を変えることにより制御することができる。また、照射量は、紫外線ランプの出力、本数、又は照射距離等を変えることにより制御することもできる。
一実施形態においては、主波長についての積算照射量が300mJ/cm以上となるように、紫外線が照射される。積算照射量に特に上限はなく、例えば2000mJ/cm以下でありうる。もっとも、めっきの析出条件は、めっき液の種類、樹脂製品110の種類、樹脂製品110表面の汚染度、めっき液の濃度、温度、pH、及び経時劣化、並びに紫外線ランプ等の出力の変動等により変化しうる。この場合には、上述の数値を参考に、紫外線の照射量を適宜決定すればよい。
(2)第2の方法
別の実施形態においては、大きいエネルギー密度を有する紫外線を照射する照射工程(S310)と、酸化処理により樹脂製品110の表面を改質する酸化工程(S320)と、の双方により、樹脂製品110の改質が行われる。この場合、照射工程において樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分210に紫外線が選択的に照射される。そして、酸化工程においては、めっき皮膜120を形成する部分210を含む部分に対して酸化処理が行われる。一実施形態においては、酸化処理は、めっき皮膜120を形成する部分210を包含しこの部分210より広い部分に対して、又は樹脂製品110の全面に対して行われる。
一実施形態においては、照射される紫外線としては紫外線レーザが用いられる。紫外線レーザの種類及びレーザの波長は特に限定されず、樹脂製品110の表面の改質を促進するものが選択される。紫外線レーザは、紫外線ランプからの紫外線と比較して高密度のエネルギーを有する。したがって、短時間のうちに、ある程度の表面改質量を得ることができる。このように短時間の照射を行う場合には、樹脂製品110の熱膨張はほとんど抑えられるために、高い精度で樹脂製品110の上に所望のパターンを有する改質部分を形成することができる。一実施形態においては、高いエネルギー密度を得ることが容易である紫外線パルスレーザが用いられる。以下では、照射工程においては紫外線レーザが用いられるものとして説明する。
一方で、樹脂製品110の表面のめっき皮膜120を形成する部分210に紫外線レーザ等の大きいエネルギー密度を有する紫外線を照射しただけでは、この部分210にめっきは析出しないことがある。紫外線レーザを照射することにより樹脂製品110の表面は改質されるが、紫外線レーザにはアブレーション効果があり、改質層が除去されるため、ある一定以上の改質量は得られない。よって、めっきが析出する程度に十分な改質が行われない可能性がある。アブレーションとは、材料の表面が蒸発することにより除去される現象のことをいう。
そこで、酸化工程では、めっき皮膜120を形成する部分210を含む部分に対して酸化処理を行うことにより、樹脂製品110の表面をさらに改質する。このとき、レーザが照射された部分については、めっきが析出する程度に表面改質量が大きくなり、レーザが照射されていない部分については、めっきが析出しない程度に表面改質量を抑えるように、酸化処理が行われる。
以下、この実施形態における照射工程及び酸化工程についてより詳しく説明する。一実施形態において、照射工程において照射される紫外線の、主波長についてのエネルギー密度は1.0×10W/cm以上である。エネルギー密度の上限は特に限定されず、例えば1.0×1015W/cm以下でありうる。単一波長レーザを紫外線レーザとして用いる場合には、レーザの波長が主波長となる。また、紫外線レーザを用いる一実施形態において、紫外線レーザの波長は243nm以下である。波長が243nm以下であることにより、樹脂製品110の表面の改質がより促進される。
一実施形態においては、エキシマレーザが紫外線レーザとして用いられる。エキシマレーザは、ガスレーザの一種である。具体的には、不活性ガスとハロゲンガスとの混合ガスに高い電圧を瞬間的にかけることで励起状態を作り出し、高い出力のパルス発振が行われる。エキシマレーザを用いることにより、熱膨張が大きくならないように、樹脂製品110の表面の改質をできるだけ短時間で行うことができる。
エキシマレーザを発生させるために用いる不活性ガスとハロゲンガスとの組合せにより、レーザの波長は変化する。以下に、ガスの組み合わせと、レーザの波長との関係を示す。
エキシマレーザ :波長157nm
ArFエキシマレーザ :波長193nm
KrClエキシマレーザ:波長222nm
一実施形態においては、ArFエキシマレーザが紫外線レーザとして用いられる。ArFエキシマレーザは比較的短い波長を有するため、樹脂製品110の表面の改質がより効率的に行われる。また、ArFエキシマレーザはFエキシマレーザと比べれば空気による吸収が少ないため、取り扱いが容易である。
一実施形態においては、エキシマレーザはパルス状に樹脂製品110の所望部分に照射される。短時間、パルス状のレーザを照射することにより、樹脂製品110の熱膨張を抑止することができる。一実施形態において、パルス幅は10ns以上100ns以下である。高い強度のパルスレーザは、光共振器内でレーザ光を往復させ、ある程度の時間が経ったところでレーザ光を取り出すことにより得られる。
レーザの照射量及びパルス数は、樹脂製品110の種類及び形成しようとする凹部の深さに応じて適宜選択することができる。一実施形態においては、1パルスあたりのエネルギー密度が80mJ/cm以上2000mJ/cm以下であるレーザが照射される。また、一実施形態においては、積算照射量が1000mJ/cm以上20000mJ/cm以下となるように、レーザが照射される。
エキシマレーザからのレーザビームは、放電領域の形状を反映した、例えば20×10mm程度の長方形のビーム形状を有しうる。ビームが太く、パルスエネルギーも大きいために、エキシマレーザを用いる場合、比較的高い照射強度で比較的大きな面積を一括処理することができる。
例えば、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する各部分に、予め定められた回数だけレーザビームが照射されるように、レーザビームで樹脂製品110を走査することができる。こうして、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分に紫外線レーザを照射することができる。一方で、紫外線レーザの光学系に、めっき皮膜120の形状に対応するフォトマスクやメタルマスク等を挿入することにより、樹脂製品110上のめっき皮膜を形成する部分に紫外線レーザを照射することもできる。
樹脂製品110が立体的形状を有する場合も、所望のパターンが形成されたマスクを樹脂製品110にフィットさせ、その上から紫外線レーザを照射することができる。一実施形態を示すと、所望のパターン状に穴のあいた薄い金属板をマスクとして用い、立体形状を有する樹脂製品110にフィットするよう、この金属板を折り曲げることにより、立体的な樹脂製品110に選択的に紫外線レーザを照射することができる。別の方法として、所望のパターンに従って、樹脂製品110の上のめっきが形成される所望部分を直接走査しながら紫外線レーザを照射してもよい。
樹脂製品110にレーザを照射すると、改質部140であるレーザ照射部分には凹部が形成される。すなわち、レーザ照射部分における樹脂製品110の表面は、この照射部分に隣接する樹脂製品110の表面に対して陥入している。この凹部の深さは、レーザの照射量を変化させることにより制御できる。具体的には、レーザのエネルギー密度が大きいほど、またパルス数が多いほど、より深い凹部が得られる。
後述するめっき工程においては、改質部140であるこの凹部にめっき皮膜120が形成される。すなわち、本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100においては、めっき皮膜120が樹脂製品110に埋め込まれる。このために、平滑な樹脂製品上にめっき皮膜を形成して得られるめっき皮膜付樹脂製品と比較して、本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100からはめっき皮膜120が剥離しにくい。また、めっき皮膜120が樹脂製品110に埋め込まれるため、特に、本実施形態に係るめっき皮膜付樹脂製品100が導電膜のような機能性膜である場合に、機能性膜を薄くすることができる。また、めっき皮膜120が導電体として用いられる場合に、抵抗率を下げるために、無電解めっき又は電解めっきによりめっき被膜を増厚する場合でも、適宜凹部を深くすることにより横方向への成長を抑制できる。このため、高い精度で所望のパターンを有するめっき皮膜120を設けることができる。
酸化工程で行う酸化処理の具体的な例としては、プラズマ処理、化学薬品を用いた酸化処理、及び紫外線の照射による酸化処理、等が挙げられる。以下では、簡便に行うことのできる紫外線を用いる方法について説明する。具体的には、照射工程と同様、酸素、オゾン、アミン化合物ガス又はアミド化合物ガス等を含む雰囲気下で、紫外線を照射することにより、樹脂製品110はさらに改質される。ここで、紫外線は、めっき皮膜120を形成する部分210を含む領域に対して照射される。特に、一実施形態において、紫外線は、めっき皮膜120を形成する部分210を包含しかつこの部分210より広い領域に対して照射される。すなわち、酸化工程においては、マスクを用いて紫外線の照射部分を制限することは必須ではない。
一実施形態においては、243nm以下の波長の紫外線が照射される。波長が243nm以下であることにより、樹脂製品110の表面の改質がより促進される。このような紫外線は、継続的に紫外線を放射する紫外線ランプ又は紫外線LED等を用いて照射することができる。酸化工程においては照射時間を短時間となるように制限する必要はないため、酸化工程で用いる紫外線のエネルギー密度は、照射工程で用いる紫外線のエネルギー密度よりも低くてよい。照射される紫外線としては、第1の方法で用いられる紫外線と同様のものを用いることができる。
本実施形態の酸化工程においては、めっき皮膜120を形成する部分210には既に紫外線レーザを用いた改質が行われている。したがって、酸化工程における紫外線ランプの照射時間は、紫外線レーザを用いずに樹脂製品110を改質する場合と比べて、短時間でよい。
紫外線を樹脂製品110へと照射する際には、紫外線レーザが照射された部分210に選択的にめっきが析出するように、後述する照射量を参考にして紫外線ランプからの照射量を適宜決定すればよい。照射量は、紫外線ランプの出力、本数、又は照射距離等を変えることにより制御することもできる。もっとも、めっきの析出条件は、めっき液の種類、樹脂製品110の種類、樹脂製品110表面の汚染度、めっき液の濃度、温度、pH、及び経時劣化、紫外線ランプの出力の変動、並びにエキシマレーザのフォーカスずれ等により変化しうる。この場合、後述する数値を参考に、レーザが照射された部分に選択的にめっきが析出するように、紫外線ランプからの照射量を適宜決定すればよい。
(照射量)
照射工程における紫外線レーザの照射量、及び酸化工程における紫外線の照射量は、紫外線レーザが照射された部分210についてはめっきが析出し、紫外線レーザが照射されていない部分についてはめっきが析出しないように、調整される。この析出状態を実現するために、一実施形態において、レーザが照射された部分については、照射工程の後に樹脂製品110表面の酸素原子存在比が3.0%以上となるように、又は3.8%以上となるように、紫外線レーザの照射量が調整される。ここで、樹脂表面の親水性は炭素原子と酸素原子との比率に大きく影響を受けると考えられることから、酸素原子存在比の計算において、水素原子の存在については無視し計算に入れていない。
一実施形態においては、めっきが析出するように、レーザが照射された部分については酸化工程の後に酸素原子存在比が18%以上となるように、又は20.1%以上となるように、紫外線の照射量が調整される。酸素原子存在比に上限はなく、例えば50%以下でありうる。また、めっきが析出しないように、レーザが照射されていない部分については酸化工程の後に酸素原子存在比が15%以下となるように、又は12.6%以下となるように、紫外線の照射量が調整される。酸素原子存在比に下限はなく、例えば5%又は10%以上でありうる。
本明細書において、酸素原子存在比とは、XPS測定によって算出された、全原子に対する酸素原子の存在比(原子%)のことを指す。ただし、XPS測定では水素原子を検出できないため、水素原子の数は計算に含まれていない。また、測定条件や装置毎の検出誤差等によって酸素原子の存在比が多少変わる場合もある。
一実施形態においては、レーザが照射されていない部分にはめっきが析出しないように、酸化工程における紫外線の照射量は、波長185nmにおいて400mJ/cm以下とされる。以下、特に断りがない限り、紫外線の照射量及び照射強度は、波長185nmにおける値を指す。紫外線の照射強度が1.35mW/cmである一実施形態において、レーザが照射されていない部分にはめっきが析出しないように、酸化工程における紫外線の照射時間は5分間以下とされる。
レーザが照射されている部分にめっきが析出するように、紫外線の照射量は以下のように設定することができる。レーザが照射された部分における照射工程の後の酸素原子存在比が6.5%以上、又は7.1%以上である一実施形態において、酸化工程における紫外線の照射量は、65mJ/cm以上、又は81mJ/cm以上とされる。紫外線の照射強度が1.35mW/cmである一実施形態において、酸化工程における紫外線の照射時間は0.8分間以上、又は1分間以上とされる。例えば、レーザ照射工程において80mJ/cm以上150mJ/cm以下、又は100mJ/cm程度のエネルギー密度のレーザを用いる場合に、上記の条件に従う照射量の紫外線を酸化工程において照射することができる。
また、レーザが照射された部分における照射工程の後の酸素原子存在比が3.0%以上、又は3.8%以上である一実施形態において、酸化工程における紫外線の照射量は、200mJ/cm以上、又は243mJ/cm以上とされる。紫外線の照射強度が1.35mW/cmである一実施形態において、酸化工程における紫外線の照射時間は2.5分間以上、又は3分間以上とされる。例えば、照射工程において800mJ/cm以上2000mJ/cm以下、又は1000mJ/cmのエネルギー密度のレーザを用いる場合に、上記の条件に従う照射量の紫外線を酸化工程において照射することができる。
一実施形態において、レーザを照射された部分における照射工程の後の酸素原子存在比が6.5%以上、又は7.1%以上となるように紫外線レーザを照射することにより、続く酸化工程における紫外線の照射時間を短くすることができる。一実施形態においては、80mJ/cm以上150mJ/cm以下、又は100mJ/cmのエネルギー密度のレーザを用いることにより、続く酸化工程における紫外線の照射時間を短くすることができる。
レーザが照射された部分における照射工程の後の酸素原子存在比は、レーザのエネルギー密度を調整することにより制御できる。具体的には、100mJ/cmから2000mJ/cmまでの範囲では、同一積算照射量となるようにパルス照射を行った場合、エネルギー密度が大きいほど酸素原子存在比が小さくなる傾向にある。逆に言うと、同一積算照射量の場合、大きいエネルギー密度で少数回照射した場合よりも、小さいエネルギー密度で多数回照射した場合に、酸素原子存在比が大きくなる傾向がある。また、酸化工程の後の酸素原子存在比は、紫外線の照射量を調整することにより制御できる。具体的には、紫外線の照射量が大きいほど、酸素原子存在比が大きくなる傾向にある。
(付与工程)
付与工程(S330)においては、紫外線が照射された樹脂製品110の表面に無電解めっき触媒を付与する。無電解めっき触媒の種類は特に限定されず、従来から無電解酸化亜鉛めっきのための触媒として知られているものを利用することができる。触媒の例としては、パラジウム、白金又は金等の貴金属触媒が挙げられる。
一実施形態において、付与工程は以下の方法で行うことができる。
1.樹脂製品110をアルカリ溶液に浸漬し、脱脂を行い、親水性を高める。アルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
2.樹脂製品110と触媒イオンとのバインダーを含有する溶液に樹脂製品110を浸漬する。バインダーの例としては、カチオンポリマー等が挙げられる。
3.樹脂製品110を触媒イオン入りの溶液に浸漬する。触媒イオンの例としては、スズとパラジウムからなるスズ−パラジウムコロイド触媒、又は塩酸酸性パラジウム錯体のようなパラジウム錯体等が挙げられる。
4.還元剤を含有する溶液に樹脂製品110を浸漬し、触媒イオンを還元し及び触媒を析出させる。還元剤の例としては、水素ガス、ジメチルアミンボラン及び水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
上述する照射工程において紫外線が照射された部分210は、改質のために親水性が向上している。このために、この部分210にはバインダー及び無電解めっき用の触媒イオンが選択的に吸着され、したがってこの部分210には無電解めっき触媒が選択的に析出する。
付与工程は、例えばJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」等の無電解めっき液セットを用いて行うことができる。
別の実施形態においては、触媒イオンとして、正電荷を有する無電解めっき触媒イオンを用いることができる。この場合、樹脂製品110をバインダー溶液に浸漬することにより、樹脂製品110と触媒イオンとの親和性を高めることは必須ではない。
正電荷を有する無電解めっき触媒イオンの例としては、アミン系の配位子を有する金属錯体、特に塩基性アミノ酸を配位子として有する金属錯体が挙げられる。一例としては、パラジウムの塩基性アミノ酸錯体が挙げられる。パラジウムの塩基性アミノ酸錯体とは、パラジウムイオンと塩基性アミノ酸との錯体である。パラジウムイオンとしては、限定されるわけではないが、2価のパラジウムイオンがよく用いられる。塩基性アミノ酸は、天然アミノ酸であっても人工アミノ酸であってもよい。一実施形態において、アミノ酸はα−アミノ酸である。塩基性アミノ酸としては、側鎖にアミノ基又はグアニジル基等の塩基性置換基を有するアミノ酸が挙げられる。塩基性アミノ酸の例としては、リシン、アルギニン又はオルニチン等が挙げられる。
パラジウムの塩基性アミノ酸錯体の例としては、国際公開第2007/066460号に挙げられているものを用いることができる。パラジウムの塩基性アミノ酸錯体の具体例としては、下式(II)に表されるものが挙げられる。
Figure 2016050338
上式(II)において、L及びLはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立にアミノ基又はグアニジル基を表す。炭素数1以上10以下のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基又はn−ブタン−1,4−ジイル基等の直鎖アルキレン基等が挙げられる。上式(II)において、2つのアミノ基はトランス位に配位しているが、2つのアミノ基がシス位に配位していてもよい。また、パラジウムの塩基性アミノ酸錯体は、シス体とトランス体との混合物であってもよい。
(めっき工程)
めっき工程(S340)においては、無電解めっき触媒が付与された樹脂製品110を無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬する。紫外線が照射された部分210には無電解めっき触媒が選択的に析出しているため、図1(C)に示すように、紫外線が照射された部分210に酸化亜鉛めっき皮膜が選択的に析出する。また、この部分210にはナノレベルの凹凸が生じている。この凹凸のために、析出した酸化亜鉛めっき皮膜と樹脂製品110との密着性が向上するため、樹脂製品110からの酸化亜鉛めっき皮膜の剥離が抑えられる。こうして析出した酸化亜鉛めっき皮膜は種々の機能性を有し、例えば導電膜の導電体として働きうる。
本実施形態によれば、酸化亜鉛めっき皮膜の形成後にエッチング等の方法で酸化亜鉛めっき皮膜をパターニングすることは必須ではない。具体的な無電解めっきの方法については特に限定されず、公知の無電解酸化亜鉛めっき液を用いることができる。一実施形態においては、亜鉛塩と還元剤とを含有する水溶液が、無電解酸化亜鉛めっき液として用いられる。亜鉛塩の例としては硝酸亜鉛が挙げられる。また、還元剤の例としてはジメチルアミンボランのようなボラン錯体、又は次亜リン酸塩等が挙げられる。
めっき皮膜120は、無電解めっきのみにより形成されてもよい。一方で、無電解めっきにより形成される無電解めっき皮膜は薄いことが多いため、樹脂製品110に対してさらに電解酸化亜鉛めっきを行ってもよい。電解めっきにより形成された酸化亜鉛めっき皮膜も、種々の機能性を有し、例えば導電膜の導電体として働きうる。電解めっき法によれば、無電解めっき法と比べて厚いめっき皮膜を容易に析出させることができる。
照射工程においてレーザ等のエネルギー密度の高い紫外線を照射する実施形態においては、樹脂製品110に形成された凹部にめっき皮膜120が形成される。このため、図1(C)に示すように、形成されるめっき皮膜120は樹脂製品110の凹部にとどまる傾向があり、樹脂製品110の表面上に広がりにくい。すなわち、一実施形態においては、形成されるめっき皮膜120は樹脂製品110の凹部140に埋め込まれている。また、一実施形態においては、形成されるめっき皮膜120は樹脂製品110の凹部の表面にわたって形成されている。
このように、本実施形態の方法によれば、樹脂製品の平滑な表面上にめっき皮膜を形成する場合と比べ、より高い精度で所望のパターンのめっき皮膜120を形成することができる。また、めっき皮膜120が凹部に形成されるため、めっき皮膜120の樹脂製品110からの剥離を抑えることもできる。
さらに、上述した第2の方法を用いる実施形態においては、照射工程における紫外線の照射時間は極めて短く、かつ照射部位が限定的であるため、紫外線の照射時に樹脂製品110はほとんど熱膨張しない。このために、高い精度で樹脂製品110の改質を行うことができ、高い精度で所望のパターンのめっき皮膜120を形成することができる。このように、この実施形態によれば微細なパターンに従ってめっき皮膜120を形成することが容易である。
(処理工程)
一実施形態においては、酸化亜鉛めっきが析出した樹脂製品110を、インジウム溶液に浸漬する処理工程(S340)が行われる。この処理により、酸化亜鉛めっき皮膜にインジウムがドープされ、酸化亜鉛めっき皮膜の電気的特性が劣化しにくくなる。具体的には、この処理は、例えばMasanobu Izaki et al. Journal of Electrochemical Society,150(2),C73,2003の記載を参考に行うことができる。一例としては、樹脂製品110は硝酸インジウムの水溶液に浸漬される。
以下に、まず、紫外線により樹脂表面を改質する方法の例について説明する。
[XPS測定]
以下において、樹脂表面に導入された酸素原子量は、XPS分析により測定した。測定された酸素原子量は、表面改質の進行度合いを示す。XPS分析装置としては、Thermo Fisher Scientific社製のTheta Probeを用いた。励起X線としては、Alをターゲットとする単色X線(Al Kα 1486.6eV)を用いた。測定にあたっては、帯電を中和する目的で、電子線及びアルゴンイオン照射を行った。表1に分析条件を示す。
Figure 2016050338
[紫外線ランプによる改質]
表2に、低圧水銀ランプを紫外線源として用い、紫外線を樹脂に照射した場合における、無電解めっきの析出状況と、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定による表面改質状況の分析結果を示す。具体的には、低圧水銀ランプからの紫外線をシクロオレフィンポリマー材(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm)に所定時間照射した後に、XPS測定を行った。低圧水銀ランプとしては、後述する実験1と同様のものを用いた。低圧水銀ランプの出力は、波長185nmにおいて1.35mW/cmであった。さらに、照射後の樹脂に対して、後述する実験1のめっき工程と同様に無電解めっきを行った。
表2の「無電解めっき析出状況」においては、○はめっきが析出したこと、×はめっきが析出しなかったこと、△はめっきが部分的に析出したことを示している。また、「酸素原子存在比」はXPS測定によって測定された全原子(水素原子を除く)に占める酸素原子の比率(原子%)を示す。さらに、「C−O結合の酸素原子%」は、XPS測定によって測定された全原子に占める、C−O結合を構成する酸素原子の比率(原子%)を示す。さらに、「C=O結合の酸素原子%」は、XPS測定によって測定された全原子に占める、C=O結合を構成する酸素原子の比率(原子%)を示す。この場合、「酸素原子存在比」=「C−O結合の酸素原子%」+「C=O結合の酸素原子%」である。
Figure 2016050338
表2に示すように、積算照射量が324mJ/cm以下の場合には無電解めっきが析出せず、積算照射量が972mJ/cm以上の場合には、無電解めっきが析出することが分かった。また、XPS測定結果から、樹脂表面の酸素原子存在比が13.6%以下の場合には無電解めっきは析出せず、23.2%以上の場合には無電解めっきが析出することが分かった。また、10分間程度の照射時間が必要であることが分かった。
[レーザによる改質]
表3に、ArFエキシマレーザを樹脂に照射した場合の、無電解めっきの析出状況と、XPS測定による表面改質状況の分析結果を示す。具体的には、ArFエキシマレーザ(主波長193nm)をシクロオレフィンポリマー材(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm)に所定のパルス数照射した後に、XPS測定を行った。この際の1パルスあたりのエネルギー密度は1000mJ/cmであった。ArFエキシマレーザとしては、後述する実験1と同様のものを用いた。表3に示す各項目は、表2に示す各項目と同様のものである。さらに、照射後の樹脂に対して、後述する実験1のめっき工程と同様に無電解めっきを行った。
Figure 2016050338
表3に示すように、パルス数を変えても酸素原子存在比は4%前後でほぼ一定であり、パルス数と表面改質量とは比例しないことが分かった。また、いずれの条件でも無電解めっきは析出しなかった。これは、レーザによって改質された表面がアブレーションされ、すなわち改質部分が除去されるためであると考えられた。
表4に、ArFエキシマレーザの1パルスあたりのエネルギー密度を100mJ/cmとした場合における、無電解めっきの析出状況と、XPS測定による表面改質状況の分析結果を示す。それ以外の条件は、表3の場合と同様である。
Figure 2016050338
表4に示すように、パルス数を変えても酸素原子存在比は8%前後でほぼ一定であり、パルス数と表面改質量とは比例しないことが分かった。また、いずれの条件でも無電解めっきは析出しなかった。しかしながら、1パルスあたりのエネルギー密度が1000mJ/cmのときと比較すると、積算照射量が同一の場合、酸素存在量は増加していた。これは、レーザのエネルギー密度が弱いと、改質された表面がアブレーションにより除去されにくくなるためであると考えられた。
[レーザ照射による凹部形成]
ArFエキシマレーザ(主波長193nm)を、シクロオレフィンポリマー材(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm)に照射した。この際の1パルスあたりのエネルギー密度は、100mJ/cm又は1000mJ/cmであった。ArFエキシマレーザとしては、後述する実験1と同様のものを用いた。その後、触針段差計(KLAテンコール社製,アルファステップ)を用いて、レーザが照射された部分に形成された凹部の深さを測定した。測定は、レーザの入射範囲のうち、中央部付近(2回目測定)及び双方の端部付近(1,3回目測定)について行った。測定結果を表5に示す。
Figure 2016050338
表5に示すように、レーザのエネルギー密度がより大きい場合に、より深い凹部が形成されることが分かった。また、レーザのエネルギー密度が1000mJ/cmである場合には、積算照射量と深さとはほぼ比例していたのに対し、レーザのエネルギー密度が100mJ/cmである場合には、積算照射量を増やしても深さはあまり変わらなかった。これは、材料表面が改質されると物性が変化し、特にエネルギー密度が低い場合にはアブレーション効率が落ちるためであると考えられる。
このように、レーザ照射により、樹脂表面に凹部が形成されることが確認された。また、レーザのエネルギー密度及び照射量を制御することにより、凹部の深さを制御することができることが分かった。
[実験1]
(基板処理)
実験1においては、無電解めっき用基板として、樹脂材料であるシクロオレフィンポリマー材(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm(カタログ値))を用いた。
まず、表面改質を行う前に、基板表面の洗浄を目的として以下の処理を行った。
1.50℃の純水で3分間超音波洗浄
2.50℃のアルカリ洗浄液(水酸化ナトリウム3.7%含有)に3分間浸漬
3.50℃の純水で3分間超音波洗浄
4.乾燥
(照射工程)
次に、基板の所望部分に対して紫外線レーザを照射する照射工程を行った。実験1で用いた紫外線レーザの詳細について以下に示す。
紫外線レーザ:ArFエキシマレーザ(主波長193nm)
紫外線レーザ照射機:コヒレント社製LPXpro305
照射条件:周波数50Hz,パルス幅25ns,200パルス
1パルス当たりの照射面エネルギー密度:100mJ/cm
こうして紫外線レーザが照射された基板について、XPS測定により酸素原子存在比を測定したところ、8.8%であった。ここで、測定装置XPSは水素原子の測定が不可能である。よって、実験1におけるシクロオレフィンポリマー材表面の原子の存在比は、炭素原子及び酸素原子のみに基づいて計算された。
また、シクロオレフィンポリマー材にArFエキシマレーザを200パルス照射した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて基板表面の形状を確認したところ、レーザ照射部には凹部が形成されており、その深さは約0.2μmであった。また、レーザのパルス数を増減させることにより、深さを調整することができた。
(酸化工程)
次に、レーザ照射後の基板の所望部分に対して紫外線ランプを照射する酸化工程を行った。実験1で用いた紫外線ランプ(低圧水銀ランプ)の詳細について以下に示す。
低圧水銀ランプ:サムコ社製UV−300(主波長185nm,254nm)
照射距離3.5cmにおける照度:5.40mW/cm(254nm)
1.35mW/cm(185nm)
具体的には、シクロオレフィンポリマー材にArFエキシマレーザを200パルス照射した後の基板に対して、さらに上記の紫外線ランプを用いて、1.35mW/cm(185nm)の紫外線を、紫外線ランプから3.5cm離して1分間照射した。この場合、積算露光量は1.35mW/cm×60秒=81mJ/cmとなる。
こうして紫外線を照射した基板についての表面改質状況を、XPS測定により分析した。基板上のレーザが照射された部分についての、紫外線ランプによる照射を行った後の酸素原子存在比は、20.1%であった。また、基板上のレーザが照射されていない部分についての、紫外線ランプによる照射を行った後の酸素原子存在比は、12.6%であった。このように実験1においては、基板上のレーザが照射されていない部分の酸素原子存在比が、15%以下に抑えられていた。このため、後述するように、レーザが照射された部分について選択的にめっきを析出させることができた。
(めっき工程)
次に、酸化工程において紫外線を照射した基板に対し、無電解めっきを行うめっき工程を行った。無電解めっき液としては、JCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」を使用した。めっき工程における具体的な処理を表6に示す。
Figure 2016050338
表6に示す工程に従って無電解めっきを行ったところ、レーザを照射した部位に対してのみ無電解めっきによる金属皮膜が形成された。
[実験2]
照射工程においてレーザの照射回数を変えたことを除いては、実験1と同様に、照射工程、酸化工程、及びめっき工程を行い、レーザを照射した部位に金属皮膜が形成されるか否かを観察した。結果を表7に示す。表7において、○はめっきが析出したことを、×はめっきが析出しなかったことを示す。
Figure 2016050338
表7に示すように、酸化工程において81mJ/cmの紫外線を照射する場合、照射工程においてレーザ照射部分の酸素原子存在比を6.5%以上とすることにより、レーザ照射部分にめっきが析出することが分かった。具体的には、エネルギー密度100mJ/cmのArFエキシマレーザを照射する実験2において、パルス数が20回以上である場合について、酸素原子存在比が6.5%以上となった。パルス数を増やしても酸素原子存在比が減ることはないと考えられるため、パルス数の上限は特にないと考えられるが、パルス数が200回以下である場合については、酸素原子存在比が6.5%以上となることが確認された。
[実験3]
照射工程においてレーザの照射回数を変えたこと、及び酸化工程において紫外線を3分間照射したことを除いては、実験1と同様に、照射工程、酸化工程、及びめっき工程を行い、レーザを照射した部位に金属皮膜が形成されるか否かを観察した。結果を表8に示す。表8において、○はめっきが析出したことを、×はめっきが析出しなかったことを示す。
Figure 2016050338
表8に示すように、酸化工程において243mJ/cmの紫外線を照射する場合、照射工程においてレーザ照射部分の酸素原子存在比を3.0%以上とすることにより、レーザ照射部分にめっきが析出することが分かった。
[実施例1]
樹脂製品110としては、シクロオレフィンポリマー材の絶縁樹脂シート(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm(カタログ値))を用いた。
まず、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分210に対して、大気中で、フォトマスク410を介して紫外線を照射した。本実施例で用いたフォトマスク410の形状を図4に示す。紫外線の照射条件は以下の通りであった。
低圧水銀ランプ:サムコ社製UV−300(主波長185nm,254nm)
照射距離:3.5cm
ランプ直下の照度:5.40mW/cm(254nm)
照射時間:10分間
次に、紫外線を照射した樹脂製品110に対してアルカリ処理を行った。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアルカリ処理液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬した。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄した。
次に、アルカリ処理後の樹脂製品110に対してコンディショナ処理(バインダー付与処理)を行った。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるコンディショナ液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬した。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で5分間攪拌洗浄した。
次に、コンディショナ処理後の樹脂製品110に対して触媒イオン付与処理を行った。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアクチベーター液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬した。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄した。
次に、触媒イオン付与処理後の樹脂製品110に対して還元処理を行った。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアクセレレーター液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬した。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄した。
次に、還元処理後の樹脂製品110を、無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬した。具体的には、60℃に加熱した無電解酸化亜鉛めっき液に、樹脂製品110を60分間浸漬した。その後、樹脂製品110を常温の純水中で3往復させることにより洗浄した。酸化亜鉛めっき液は、300mLの純水中に、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)8.9g(0.1mol/L)とジメチルアミンボラン(DMAB)0.534g(0.03mol/L)とを溶解させ、pH4.8の水溶液となるように硝酸で調整することにより作製された。この処理により、樹脂製品110のうち紫外線を照射した部分210にめっき皮膜を形成することができた。
次に、めっき皮膜が形成された樹脂製品110を、インジウム溶液に浸漬した。具体的には、常温のインジウム溶液に、樹脂製品110を1分間浸漬した。その後、樹脂製品110を常温の純水中で3往復させることにより洗浄した。インジウム溶液(0.01mol/L)は、300mLの純水中に硝酸インジウム三水和物(In(NO・3HO)(1.1g)を溶解させることにより作製された。こうして、透明なめっき皮膜120が形成されためっき皮膜付樹脂製品100を作製した。こうして得られためっき皮膜付樹脂製品100は、例えば導電膜のような、種々の機能性を有する機能性膜として用いることができる。
顕微鏡で観察したところ、樹脂製品110上のうち紫外線を照射した部分にはめっき皮膜120が形成されていることが確認された。また、めっき皮膜付樹脂製品100上のうち紫外線を照射した部分について分光透過率を測定したところ、酸化亜鉛に特有な380nmにおける光吸収端が確認された。このように、樹脂製品110上には酸化亜鉛を含むめっき皮膜120が形成されていることが確認された。
また、各工程後の樹脂製品110の表面粗さを、以下のように測定した。測定には、原子間力顕微鏡(AFM)(ブルカー・エイエックスエス社製,NanoScopeV/Dimension Icon,測定モード:タッピングモード,測定範囲:10μm×10μm,測定点数512×512、走査速度:1.0Hz)を用いた。そして、得られた測定データを用いて断面解析を行うことにより、表面粗さRaを算出した。樹脂製品110のうち紫外線を照射した部分210の表面粗さRaを以下に示す。
紫外線照射前 Ra=0.47nm
紫外線照射後 Ra=0.26nm
アルカリ処理及び水洗後 Ra=0.87nm
コンディショナ処理及び水洗後 Ra=2.42nm
上記の通り、改質前の樹脂製品110の表面粗さはRaは0.47nmであった。紫外線照射により樹脂製品110の平坦度は向上し、表面粗さRaは0.26nmとなった。これは、樹脂製品110表面の凸部が改質により酸化分解されたためであると推定される。その後、アルカリ処理により表面粗さRaは増加し、コンディショナ処理により表面粗さRaはさらに増加した。紫外線照射により樹脂製品110の表面が脆化しており、アルカリ溶液、及び界面活性剤を含むコンディショナ液によって、脆化部分が洗浄され脱落されたためであると推定される。この後の触媒イオン付与処理及び還元処理においては、改質部の表面粗さRaはほとんど変化しなかった。また、樹脂製品110のうち紫外線を照射していない部分の表面粗さは、処理により変化しなかった。この結果から、めっき皮膜120との界面における樹脂製品110の表面粗さは、コンディショナ処理後の樹脂製品110の表面粗さを用いて評価することが妥当であると考えられた。
[実施例2]
樹脂製品110としては、シクロオレフィンポリマー材の絶縁樹脂シート(日本ゼオン株式会社製,ゼオノアフィルムZF−16,膜厚100μm,表面粗さ1.01nm(カタログ値))を用いる。まず、実験1と同様に樹脂製品110に対する基板処理を行う。
次に、樹脂製品110上のめっき皮膜120を形成する部分210に対して、大気中で、フォトマスク410を介して紫外線レーザを照射する。紫外線レーザは、ラインビーム状に成形され、マスク上をスキャンする。紫外線レーザの照射条件は以下の通りである。
紫外線レーザ:ArFエキシマレーザ(主波長193nm)
紫外線レーザ照射機:コヒレント社製LPXpro305
照射条件:周波数50Hz,パルス幅25ns,40パルス
1パルス当たりの照射面エネルギー密度:100mJ/cm
次に、レーザ照射後の樹脂製品110の所望部分に対して紫外線ランプを照射する酸化工程を行う。紫外線ランプ(低圧水銀ランプ)による酸化条件は以下の通りである。
低圧水銀ランプ:サムコ社製UV−300(主波長185nm,254nm)
照射距離:3.5cm
ランプ直下の照度:5.40mW/cm(254nm)
照射時間:2分30秒間
次に、紫外線を照射した樹脂製品110に対してアルカリ処理を行う。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアルカリ処理液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬する。その後、樹脂フィルム110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄する。
次に、アルカリ処理後の樹脂製品110に対してコンディショナ処理(バインダー付与処理)を行う。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるコンディショナ液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬する。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で5分間攪拌洗浄する。コンディショナ処理後の樹脂製品110の表面粗さはRa=5nm以下でありうる。
次に、コンディショナ処理後の樹脂製品110に対して触媒イオン付与処理を行う。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアクチベーター液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬する。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄する。
次に、触媒イオン付与処理後の樹脂製品110に対して還元処理を行う。具体的には、表6で示したJCU社製Cu−Niめっき液セット「AISL」で使用されるアクセレレーター液を用い、50℃に加熱して樹脂製品110を2分間浸漬する。その後、樹脂製品110を50℃の純水中で1分間攪拌洗浄する。
次に、還元処理後の樹脂製品110を、無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬する。具体的には、60℃に加熱した無電解酸化亜鉛めっき液に、樹脂製品110を60分間浸漬する。その後、樹脂製品110を常温の純水中で3往復させることにより洗浄する。酸化亜鉛めっき液は、300mLの純水中に、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)8.9g(0.1mol/L)とジメチルアミンボラン(DMAB)0.534g(0.03mol/L)とを溶解させ、pH4.8の水溶液となるように硝酸で調整することにより作製する。この処理により、樹脂製品110のうち紫外線を照射した部分210にめっき皮膜を形成する。
次に、めっき皮膜が形成された樹脂製品110を、インジウム溶液に浸漬する。具体的には、常温のインジウム溶液に、樹脂製品110を1分間浸漬する。その後、樹脂フィルム110を常温の純水中で3往復させることにより洗浄する。インジウム溶液(0.01mol/L)は、300mLの純水中に硝酸インジウム三水和物(In(NO・3HO)(1.1g)を溶解させることにより作製する。
こうして、透明なめっき皮膜120が形成され、例えば導電膜として使用可能な、種々の機能性を有するめっき皮膜付樹脂製品100を作製できる。
100 めっき皮膜付樹脂製品、110 樹脂製品、120 めっき皮膜、140 改質部、210 めっき皮膜120を形成する部分、S310 照射工程、S320 酸化工程、S330 付与工程、S340 めっき工程、S350 処理工程

Claims (10)

  1. 樹脂製品の表面に紫外線を照射して前記表面を改質する照射工程と、
    前記紫外線が照射された樹脂製品の表面に無電解めっき触媒を付与する付与工程と、
    前記無電解めっき触媒が付与された前記樹脂製品を無電解酸化亜鉛めっき液に浸漬するめっき工程と、
    を含むことを特徴とする、めっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  2. 前記照射工程においては、前記樹脂製品の表面の一部分に紫外線が照射されることを特徴とする、請求項1に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  3. 前記付与工程の前に、前記樹脂製品の表面の前記一部分を包含し当該一部分よりも広い領域に対して酸化処理を行う酸化工程をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  4. 前記酸化処理は、前記樹脂製品に対して紫外線を照射する処理であり、
    前記照射工程で前記樹脂製品に照射される紫外線の主波長についてのエネルギー密度は、前記酸化工程で照射される紫外線の主波長についてのエネルギー密度よりも大きい
    ことを特徴とする、請求項3に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  5. 前記照射工程では243nm以下の波長の紫外線レーザが照射され、
    前記酸化処理で照射される紫外線の波長は243nm以下であり、
    前記照射工程及び前記酸化処理は、酸素又はオゾンを含む雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項3又は4に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  6. 前記無電解酸化亜鉛めっき液は、亜鉛塩と還元剤とを含有する水溶液であることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  7. 酸化亜鉛めっきが析出した前記樹脂製品を、インジウム溶液に浸漬する処理工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  8. 前記樹脂製品がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、又はビニル樹脂を含むことを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載のめっき皮膜付樹脂製品の製造方法。
  9. 透明樹脂フィルムと、前記透明樹脂フィルムの上に所定のパターンを有するように形成された導電体と、を備える導電膜であって、
    前記導電体は酸化亜鉛を含み、
    前記透明樹脂フィルムに形成された凹部に、前記導電体の一部又は全部が入り込んでいることを特徴とする、導電膜。
  10. 樹脂製品と、前記樹脂製品の上に所定のパターンを有するように形成されためっき皮膜と、を備えるめっき皮膜付樹脂製品であって、
    前記めっき皮膜は酸化亜鉛を含み、
    前記樹脂製品に形成された凹部に、前記めっき皮膜の一部又は全部が入り込んでいることを特徴とする、めっき皮膜付樹脂製品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017216305A (ja) * 2016-05-30 2017-12-07 株式会社東芝 半導体装置、半導体装置の製造方法、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機
JP2017226907A (ja) * 2016-06-24 2017-12-28 学校法人関東学院 金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法
JP2018123109A (ja) * 2017-02-03 2018-08-09 株式会社豊田中央研究所 抗菌性部材及びその製造方法

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