JP2016045919A - 人流動推定システム、方法、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】乗降施設のような対象空間の出入口で計測した人数の情報から、対象空間における人の移動状況を高い精度で推定する技術に関する。【解決手段】人流動推定システムは、観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する計測部と、前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する推定部と、前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する評価部と、を有している。【選択図】図2
Description
本発明は空間内の人の流動を推定する技術に関する。
大都市圏の鉄道駅や空港において通勤時や繁忙期の旅客の混雑が問題となっている。特に鉄道では、駅が混雑していると旅客の乗降に時間がかかって列車の運行が遅れたり、あるいは旅客が混雑したホームから線路に転落したりすることが懸念される。
鉄道駅や空港など乗降施設における旅客の混雑を効率的に解決していくためには、施設内での旅客の移動の状況を詳細に把握するのが好ましい。ここで把握すべき旅客の移動状況として、例えば鉄道駅においては、時間帯毎の改札から入場する旅客数および改札から出場する旅客数だけでなく、列車から列車へ乗り換える旅客数を含めた全ての駅利用者数、路線毎の旅客数、乗り換えのためにホーム間を移動する旅客数、列車毎の乗降する旅客数などが挙げられる。
旅客の移動を把握する手段として、レーザセンサを用いて通行人の移動を追跡し、行動解析を行う装置が特許文献1に示されている。
また、特定の空間における旅客数を算出する手段として、その空間の出入口を通過する人数をカメラにより計測し、空間内に存在する旅客の人数を計測する手段を備えた人数計測システムが特許文献2に開示されている。
しかし、特許文献1の装置で把握できる旅客の移動は、レーザセンサのレーザ照射範囲までであり、駅構内全域を把握するには、階段などの高低差や柱や通路などの遮蔽物によってレーザが遮断され、届かないような場所がないように、多数のレーザセンサを設置する必要がある。しかし、レーザセンサを多数設置するにはコストがかさみ実現が難しい。
また、特許文献2のシステムでは推定したい空間全域をくまなくカメラで観測する必要はないが、対象空間内にいる旅客数を計測できるのみであり、乗り換えでホーム間を移動する旅客数など、その内訳は計測できない。
本発明の目的は、乗降施設のような対象空間の出入口で計測した人数の情報から、対象空間における人の移動状況を高い精度で推定する技術に関する。
本発明の一態様による人流動推定システムは、観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する計測部と、前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する推定部と、前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する評価部と、を有している。
本発明によれば、出入口での計測に基づき流動推定演算手法を用いて対象空間での人の流動を推定するとともに、同じ流動推定演算手法で流動推定情報と比較用推定人数を推定し、比較用推定人数を他の手法で取得した比較対象人数と比較し、比較結果で流動推定情報の推定精度を評価するので、高い精度で流動推定情報を取得することができる。
本発明の一実施例について図面を用いて説明する。
<概要>
<概要>
まず、本発明における旅客流動推定の一例について概要を説明する。
一般に、任意の空間を対象空間として設定したとき、対象空間の出入口(境界)を通過して対象空間内に流入した人は、対象空間内を移動し、いずれかの出入口(境界)を通過して対象空間外に流出する。前記対象空間内に流入するすべての旅客は基本的に対象空間内を移動し、いずれかの出口から流出することは自明であるが、どの出入口から流出するかを推定する手段を本発明では実現する。
本発明では、旅客流動を推定したい任意の対象空間に対して、出入口の流入人数と流出人数を計測し、対象空間内の移動を推定する。対象空間内の移動を推するにあたっては、まず前記流出データを用いず、流入データをもとに移動を推定する。そして、その推定の結果と、推定の演算に入力に含んでいない流出データとを比較することで、推定精度を評価し、この評価結果を改善するように、パラメータを更新しながら推定演算を繰り返すことで、推定精度を向上させる。
図1は、本実施例における旅客流動推定装置1000の構成の一例を示したブロック図である。
旅客流動推定装置1000は、流入人数情報1101、流出人数情報1102、空間情報1103、運行情報1104、分岐情報1106、および評価結果情報1107を少なくとも記録する記録部1100と、推定部1201および評価部1203を少なくとも有する演算部1200と、対象空間の出入口を通る人を観測する観測システムと接続する人数計測部1300と、出力部1001とを有している。
観測システムは、カメラシステム1310と自動改札機システム1320のいずれか一方または両方である。前記記録部1100、演算部1200、人数計測部1300および出力部1001はそれぞれ相互に接続している。記録部1100、演算部1200、および人数計測部1300は、それぞれネットワークを介して設置される別個の装置に実装されてもよい。
図2は、旅客流動推定装置における処理とデータの流れの概要を示した図である。以下、図2を用いて、処理とデータの流れの概要を説明する。
まず、人数計測部1300が対象空間の出入口の通過人数を流入人数と流出人数に分けて計測し、流入人数情報1101と流出人数情報1102を出力する。
次に推定部1201は、計測した流入人数情報1101、空間情報1103、運行情報1104、分岐情報1106のデータを入力として、所定の流動推定演算手法により、対象空間内の人の移動を推定する。また、推定部1201は、比較評価のために、同じ流動推定演算手法で算出した推定結果から出入口の流出人数(流出推定人数)を算出し、評価部1203に出力する。
評価部1203は、人数計測部1300で計測した流出人数情報1102に示された流出人数と、推定部1201で推定した流出人数を入力とし、推定部1201で推定した流出人数の精度を評価する。ここで、評価部1203は、評価結果が予め設定しておいた一定の条件を満たしていれば、推定部1201から出力された推定結果を、評価結果と対応させて評価結果情報1207として出力し、評価結果がその条件を満たしていなければ、評価結果に応じて、推定部1201の入力パラメータのひとつである分岐情報1106を更新し、処理を推定部1201に戻し、再度対象空間内の移動を推定し直すという処理を繰り返させる(矢印1400)。
上記評価に用いる一定の条件の例としては、流出人数同士を比較した評価の結果、推定部1201で推定した流出人数情報の精度が任意の精度以上であること、推定演算の繰り返し回数が一定回数以下であること、推定演算に要した計算時間が予め設定しておいた時間以下であること、などが挙げられる。また、これらのうち複数の条件を組み合わせて評価に用いてもよい。
最後に、出力部1001が評価結果情報1207を出力部1001から出力する。
以上で、図2を用いた処理とデータの流れの概要についての説明を終える。
<構成>
<構成>
以下、図1を用いて旅客流動推定装置1000の構成について説明する。
旅客流動推定装置1000では、人数計測部1300はカメラシステム1310に接続されたカメラ1311、1313、1315と、自動改札機システム1320に接続された自動改札機1321とにより、対象空間1301の出入口1312、1314、1316、1322から前記出入口の流入人数情報1101および流出人数情報1102を計測し、演算部1200が有する推定部1201にて旅客の移動を推定し、前記推定の結果を評価部1203で評価し、推定結果を記録部1100へ保存し、出力部1001は記録部1100に保存された推定結果の情報を出力する。
なお、評価部1203での評価結果で、予め定めた条件を満たさない場合、演算処理に入力されるパラメータを更新して前記条件を満たすまで推定部1201での旅客の移動の推定を繰り返してもよい。前記推定の繰り返しにあたり、推定結果を変化させることを目的として、分岐情報1106に記録されるパラメータ情報を更新する。各部での処理やデータの詳細は後述する。
以上で、図1を用いた旅客流動推定装置1000の構成についての説明を終える。
<データの説明>
<データの説明>
本実施例で用いる各種データについて説明する。
図3は、対象空間を示したレイアウト情報のデータの一例を示した図である。レイアウト情報は、記録部1100の空間情報1103にあらかじめ記録されている。
本実施例では、対象空間を含む空間を格子状に分割した格子空間8000としてレイアウト情報を表現する。格子空間8000は通路8011、壁8012、階段8013、改札8014、および出入口8015の単位空間を組み合わせて構成している。そのうち、壁8012以外は通行可能である。格子空間8000中では、位置8021は通路8011、位置8022が壁8012、位置8023が階段8013、位置8024が改札8014、位置8025から8027が対象空間への出入口8015の単位空間となっている。
本実施例のデータの例では、位置8025とその周囲に隣接する位置の出入口8015をまとめて出入口A、位置8026とその周囲に隣接する位置の出入口8015をまとめて出入口B、位置8027とその周囲に隣接する位置の出入口8015をまとめて出入口C、位置8028とその周囲に隣接する位置の出入口8015をまとめて出入口Dとしている。推定部1201はこれらの出入口からの流出人数を演算により推定し、人数計測部1300はこの出入口に対応する現実の空間において流入人数及び流出人数を計測する。
図4は、出入口と、その出入口における対象空間の接続先との対応を示した出入口接続先対応表のデータの一例を示した図である。出入口接続先対応表は記録部1100の空間情報1103にあらかじめ記録されている。出入口接続先対応表には、出入口9000、その接続先9001、出入口から接続先までの平均移動時間9003が記録されている。出入口とその接続先までの平均移動時間は、例えば、接続先がホームの場合、列車を降車した後、対象空間の出入口に対応する計測位置に到達するまでに要する平均移動時間とする。
例えば、レコード9011は、出入口Aが1番線ホームに接続し、出入口Aから1番線ホームまでの平均移動時間は20秒であることを示している。レコード9012は、出入口Cが2番線ホームに接続し、出入口Cから2番線ホームまでの平均移動時間は25秒であることを示す。本実施例ではテーブルとしてデータを定義したが、同様の情報を算出できるデータと処理によって代替してもよい。
図5は、出入口間の移動に要する所要時間を示す出入口間所要時間対応表のデータの一例を示した図である。出入口間所要時間対応表は記録部1100の空間情報1103にあらかじめ記録されている。
縦方向10001には対象空間に流入する出入口、横方向10002は対象空間から流出する出入口の項目が示されている。対象空間に流入する出入口である移動開始地点と、対象空間から流出する出入口である移動終了地点との組み合わせに対する、計測位置間の平均移動時間を示す。例えば、10010は出入口Dから流入し、出入口Bから流出するまでの移動平均時間が50秒であることを示す。出入口間の平均移動時間は、図3に示したレイアウト情報からの算出により決定してもよい。
図6、図7は人数計測部1300で計測されるデータを示している。図6は対象空間の出入口へ流入する流入人数情報1101のデータの一例を示す図である。図7は対象空間の出入口から流出する流出人数情報1102のデータの一例を示す図である。
流入人数情報1101のデータは、計測期間3001と、各出入口の計測位置3002〜3005とによって構成される。流出人数情報1102のデータは、計測期間4001と、各出入口の計測位置4002〜4005とによって構成される。データの項目自体は流入人数情報1101と「流出人数情報1102は同じである。出入口を通過する人の進行方向が対象空間に対して流入方向であれば流入人数として計測し、流出方向であれば流出人数として計測する。
図8は、公共交通の運行計画または運行実績を示す運行情報のデータの一例を示す図である。運行情報は記録部1100の運行情報1104にあらかじめ記録されている。運行情報は、列車を一意に特定できる列車ID5001、列車が到着する番線5002、列車の停車駅を示す列車種別5003、駅に到着する列車の到着時刻5004、および駅を出発する列車の出発時刻5005により構成される。
図9は、降車人数比情報のデータの一例を示した図である。降車人数比情報は、運行情報に示された各列車に対応する列車ID6001と、降車人数比6002により構成される。降車人数比情報は、記録部1100の分岐情報1106にあらかじめ記録されている。
降車人数比は、各列車から同一のホームに降車する旅客の人数の比を示す。降車人数比は、複数の列車が連続して到着し、同一のホームに旅客が降車した場合に利用される。例えば、ID=4とID=5の列車が同時に到着した場合、ID=4の列車からの降車人数とID=5の列車からの降車人数の比は3:2となることを示している。
図10は、イベントにより発生する時刻以降に集中して旅客が流入する特性を有する出入口における流入人数を表すイベントODデータの一例を示した図である。イベントODデータは、例えば、ホームに接続する階段を対象空間の出入口とする場合など、列車の発着といったイベントに起因して対象空間へまとまって流入する旅客の人数を表すデータである。イベントODデータは、推定部1201の推定結果のひとつとして出力され、評価結果情報にも記録される。イベントODデータは、流入する出入口14001、流入が開始される時刻(流入時刻)14002、移動先出口別出現人数14003、14004、14005、14006により構成される。流入時刻14002は、例えば列車の到着時刻である。
図11は、時間的な偏りが少なく、比較的定常的に旅客が流入する出入口における旅客の流入人数を表す定常ODデータの一例を示した図である。定常ODデータは、改札口や通路からの流入旅客など平均的に対象空間へ流入する旅客を表すデータである。定常ODデータは、推定部1201の推定結果のひとつとして出力され、評価結果情報1107にも記録される。流入する出入口13001、流入する期間(流入期間)13002、移動先出口別出現人数13003、13004、13005、13006により構成される。
図12は、各列車からの降車旅客の移動先となる各出入口への分岐の割合を示した降車旅客分岐情報のデータの一例を示した図である。降車旅客分岐情報は記録部1100の分岐情報1106に記録され、推定部1201では入力の一つとしてイベントODデータの推定に用いられる。降車旅客分岐情報は運行情報に対応する列車ID11001と、該当列車の降車旅客が移動先(流出する出入口)の割合を移動先毎に設定した降車旅客分岐率11002〜11005により構成される。例えば、データ11011は、列車IDが6の列車(運行情報よりホームaに7:34:53到着、7:35:27出発する列車(図8参照))から降車し、出入口Cへ向かう人数が34%であることを示す。降車旅客分岐情報は演算部1200での処理の中で更新されるデータである。降車旅客分岐情報の初期値を任意に設定して分岐情報1106に記録しておく。初期値の設定は例えば均等な割合を設定するなどでよい。
図13は、時間的な偏りが少ない出入口から流入する旅客の他の各出入口への分岐率を示した流入分岐情報の一例を示した図である。流入分岐情報は記録部1100の分岐情報1106に記録され、推定部1201では入力の一つとして定常ODデータの推定に用いられる。流入分岐情報は、対象期間12001、流入位置12002、流出位置毎に設定した出入口から流入後の移動先の割合12003〜12005により構成される。例えば、データ12011は、7:35から7:36の間に出入口Dからの流入する旅客のうち、出入口Bへ移動する割合は35%であることを示す。
図14は、推定部1201で推定され出力される流出人数情報の一例を示した図である。流出人数情報は、対象期間15001毎に各出入口15002、15003、15004、15005を通過すると推定部1201が推定した流出人数(比較用推定人数)を示す情報である。そのデータの形式は、人数計測部1300で計測する流出人数情報と同様である。評価部1203では、この推定した流出人数情報と、人数計測部1300で計測した流出人数情報とを比較して、推定精度の評価を行う。
図15は、定常ODデータの初期値の一例を示す図である。図16は、イベントODデータの初期値の一例を示す図である。図17は、流出人数情報の初期値の一例を示す図である。
本実施例で用いるデータについての説明は以上である。
<演算処理>
<演算処理>
演算部1200での処理について説明する。以下の説明ではステップをSと省略する。
図18は、推定部1201の全体処理の概要を説明するための図である。まず、図18を用いて推定部の概要について説明する。
推定部1201は、OD推定部1211と移動推定部1212を有し、2段階で移動を推定する構成とする。OD推定部1211は、流入人数情報1101、空間情報1103、運行情報1104、および分岐情報1106を入力とし、OD情報1221を推定し、移動推定部1212へ出力する。
移動推定部1212は、OD情報1221と、分岐情報1106を入力とし、旅客の移動を推定し、その推定結果(移動推定結果)を出力する。移動推定結果には少なくとも流出人数情報を含んでおり、更に、入力としたOD情報1221を含んでもよい。
以上で、図18を用いた推定部1201の概要の説明を終える。
以下では、まずOD推定部1211の処理について説明する。
図19は、OD推定部1211が実行するOD推定処理のフローチャートである。以下、図19を用いてOD推定部の処理について説明する。
S3101では、OD推定部1211は、すべての出入口に対してそれぞれS3105に到達するまでの処理を繰り返し実行する。以下、処理の対象とする出入口をeとする。
S3102では、出入口eの接続先がホームであるか否か判定する。出入口eの接続先がホームであるかどうかの判断は、図4で説明した出入口接続先対応表を参照することで行う。
OD推定部1211は、出入口eの接続先がホームであるときS3103へ進み、出入口eの接続先がホームではないときS3104へ進む。
S3103では、OD推定部1211は、流入人数情報のうち、出入口eに対応する流入人数を入力とし、イベントOD情報の推定を行う。イベントOD情報の推定については後述する。
S3104では、OD推定部1211は、流入人数情報のうち、出入口eに対応する流入人数を入力とし、定常OD情報の推定を行う。定常OD情報の推定は、前記流入人数と、分岐情報1106の流入分岐情報から算出する。定常OD情報の推定については後述する。
S3103あるいはS3104の処理の後、OD推定部1211は、S3105へ進み、すべての出入口に対して上記処理を行うまで、S3101に戻り処理を繰り返す。すべての出入口に対して処理を完了すると、OD推定部1211は、S3105へ進み、各出入口に対して推定したOD情報を出力し、OD推定処理は終了する。
図19を用いたOD推定処理についての説明は以上である。
図17は、定常OD情報の推定処理を示すフローチャートである。図20を用いて定常OD情報の推定処理について以下で説明する。
S2701のループで、OD推定部1211は、流入人数情報を時系列に走査し、処理する。以下、処理の対象とする期間をtとする。
S2702では、OD推定部1211は、流入人数情報の期間tに出入口eから流入人数を取得し、nとする。
S2703のループで、OD推定部1211は、流出先の出入口に対して走査し、処理する。以下、処理の対象とする流出先の出入口e’とする。
S2704では、OD推定部1211は、流入分岐情報の流入位置が出入口eかつ、期間がtであるレコードの出入口e’の流出割合を取得しrとする。
S2705では、OD推定部1211は、推定する定常OD情報において期間tにおいて出入口eから出入口e’への移動人数をr×nとして設定する。
S2706では、OD推定部1211は、すべての流出先e’の出入口に対して処理が完了するまで、S2703へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS2707へ進む。
S2707では、OD推定部1211は、流入人数情報に定義されているすべての期間tに対して処理を行うまで、S2701へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS2708へ進む。
S2708では、OD推定部1211は、算出した定常OD情報を出力する。
以上で、図20を用いた定常OD情報の推定処理の説明を終える。
図21は、ホームaの列車発着と、ホームaと接続する出入口Aでの計測結果との関係の一例を示した図である。イベントOD情報の推定では、ある期間に計測された流入人数がどの列車から降車してきた人であるかを推定し、推定した列車に対して計測した流入人数を列車に割り当てる列車割当の処理が必要である。
以下、図21を用いてイベントOD推定における列車割当の処理について説明する。図中のグラフの横軸21001は流入人数の計測時刻、縦軸21002は計測された流入人数を示している。21021から21026は、計測期間毎の流入人数を示している。例えば、21021は7:30から7:31の期間に計測された流入人数に対応する。
太線21011から21013は列車の発着を表す線であり、この線では縦軸21002は列車の位置を示しており、この線と横軸21001との交差点のうち、時刻の早い左側の交点は駅への到着時刻を示し、時刻の遅い右側の交点は出発時刻を表す。
流入人数として計測されるタイミングは、列車の到着時刻以後であるため、流入人数の計測期間以前に到着した列車のうち、到着時刻が計測期間から一定時間以内であるという条件を満たす列車に流入人数を割り当てる。
到着時刻が計測期間から一定時間以内である列車が複数ある場合、図9に示した、運行情報1104の降車人数比情報を用いて各列車から降車した旅客の割合を算出し、その割合に従って各列車に流入人数を割り当てる。なお、配分しようとする流入人数に対して、それ以前に計測された流入人数の配分結果を考慮することとする。
例えば、7:35の流入人数21025は、列車21012(列車IDが4)および列車21013(列車IDが6)のどちらから降車してきたかの推定が必要である。列車21012から降車した旅客の人数と、列車21013から降車した旅客の人数の比率は、図9に示された3:5である。
列車21012から降車した旅客のうち23人は7:34に計測されている。列車21013から降車した旅客のうち2人は7:36に計測されている。列車21012から降車し7:35に計測された旅客の人数をxとすると、以下の関係式が成り立つ。
(23+x):(80−x+2)=3:5
この式を解くと、x≒16人となり、7:35の流入人数のうち、列車21012に配分される人数は16人、列車21012に配分される人数は64人と求めることができる。
以上で、図21を用いたイベントOD推定の列車割当の説明を終える。
図22は、上述した列車割当を含むイベントOD推定処理のフローチャートである。以下、図22を用いてイベントOD推定の処理について説明する。
S2201のループで、OD推定部1211は、流入人数情報を時系列に走査し処理する。以下、処理の対象とする期間をtとする。
S2202では、OD推定部1211は、割当対象となる列車を取得し、割当対象となる列車の集合Cを取得する。割当対象となる列車は、計測期間以前に到着した列車のうち、あらかじめ設定しておいた時間範囲内に到着する列車であり、その情報は運行情報1104を探索して取得することができる。ただし、この取得方法で対象となる列車が一件も取得できない場合、計測期間以前に到着した列車のうち、到着時刻が計測期間にもっとも近い列車を取得することとする。
S2203のループで、OD推定部1211は、割当対象の列車集合Cに対して走査し処理する。以下、処理の対象とする列車を列車cとする。
S2204では、OD推定部1211は、流入人数情報から期間tの流入人数を取得し、前記の列車割当により列車cからの流入人数nを推定する。
S2205のループで、OD推定部1211は、流出先の各出入口に対して走査し処理する。以下、処理の対象とする流出先の出入口e’とする。
S2206では、OD推定部1211は、降車旅客分岐情報の列車cの列車IDに対応するレコードの出入口e’の流出割合を取得し、rとする。
S2207では、OD推定部1211は、推定するイベントOD情報において、列車cの降車旅客のうち、出入口e’への移動人数をr×nとして設定する。
S2208では、OD推定部1211は、すべての流出先の出入口に対して処理が完了するまで、S2205へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS2209へ進む。
S2209では、OD推定部1211は、割当対象列車集合Cのすべての列車に対して、処理を行うまで、S2203へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS2210へ進む。
S2210では、流入人数情報に定義されているすべての期間に対して処理を行うまで、S2201へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS2211へ進む。
S2211では、OD推定部1211は、算出したイベントOD情報を出力する。
以上で、図22を用いたイベントOD情報の推定処理の説明を終える。
OD推定部1211の処理についての説明も以上である。
次に、移動推定部1212の処理の一例について説明する。
移動推定部1212では、図3で説明したレイアウト情報により表現される格子空間を対象空間に見立て、計算上の時刻を小刻みにΔtずつ進めていき、時刻毎に対象空間内を移動する人を推定する。前記Δtは本実施例では数ミリ秒程度として設定するが、要求される計算時間や精度によって変更してもよい。
このような推定手法はエージェントベースシミュレーションとして知られる公知の技術であり、現実世界で対象空間内を移動する歩行者をシミュレーション上の格子空間上で表したものを以下では歩行者エージェントとする。歩行者エージェントは、少なくとも格子空間上の位置、移動先の目的地および一意に特定できるIDを有し、それぞれ前記移動先の出入口に向かって移動することとする。格子空間内を移動する人は、レイアウト情報内に定義された出入口からの流入として格子空間に出現し、移動先の出入口まで移動し、移動先の出入口に到達すると流出として格子空間から消失する。
図23は、移動推定部1212の処理のフローチャートである。図23を用いて移動推定部1212の処理の流れについて以下で説明する。
S2501では、移動推定部1212は、計算上の時刻tを移動推定の開始時刻に初期化する。移動推定の開始時刻は、入力とするODデータのもっとも早い流入時刻以前に設定すればよい。
S2502では、移動推定部1212は、歩行者エージェントの流入および流出の処理を行う。流入は、各出入口に対応したイベントOD情報および定常OD情報に基づき決定する。
流入処理は、出入口毎に行う。出入口がホームに接続した出入口か、ホームに接続していない出入口かによって流入処理は異なる。以下、それぞれについて説明する。
対象とする出入口がホームに接続しない出入口の場合、移動推定部1212は、定常OD情報に基づいて流入処理を行う。定常OD情報の対象となる期間内に、移動先別出現人数に設定されている人数に従い、前記移動先に向かう歩行者エージェントを確率的に時間的な偏りない人数分だけ流入として出現させる。
対象とする出入口がホームに接続する出入口の場合、移動推定部1212は、イベントOD情報に基づいて流入処理を行う。イベントOD情報の流入時刻以降、各出入口に移動先別出現人数に従い、歩行者エージェントを流入として出現させる。イベントOD情報により出現する歩行者エージェントは、流入時刻の直後に集中して出現することになる。
流入処理において、移動推定部1212は、出現した歩行者エージェントを、空間内に存在する歩行者エージェント集合Aに追加する。
流入処理についての説明は以上とし、次に流出処理の説明に移る。
流出処理は、出入口としてレイアウト情報に設定されている格子空間上に存在する歩行者エージェントのうち、前記歩行者エージェントの目的地と、歩行者エージェントが存在している格子空間に設定させている出入口とが一致する場合に、流出として歩行者エージェントを消失させるという処理である。流出として消失させる歩行者エージェントは空間内に存在する歩行者エージェント集合Aからも削除する。
S2503のループで、移動推定部1212は、格子空間内に存在するすべての歩行者エージェントに対して走査し処理する。以下、処理の対象とする歩行者エージェントをaとする。
S2504では、移動推定部1212は、歩行者エージェントaの移動処理を行う。歩行者エージェントaの移動処理では、一定時間間隔以上、格子空間内で移動していない歩行者エージェントのみを移動させる。歩行者エージェントの移動方向は、格子空間上設定されている各出入口への移動方向に従い、歩行者エージェントの移動先の出入口に対応した移動方向に隣接する格子空間へと移動させる。
図24は、格子空間上に設定される歩行者エージントの移動方向の一例を示す図である。図24を用いて移動方向について説明する。矢印23002、23003はその向きによって、格子空間上に設定されるエージェントの移動方向を示している。図24の例では、出入口Bを移動先とする歩行者エージェントの移動方向を示したものである。矢印23002は下方向に直線的に進めば出入口Bに到着できるので矢印は下方向に設定される。矢印23003は、その位置からでは壁を回り込まなければ出口Bに到着できないため、回り込む方向に矢印が設定されている。この矢印の向きの設定は任意の方法で行ってよい。例えば、人手により予め決定しておくことや、公知の技術であるDijkstraのアルゴリズムを用いて出入口まで移動可能な格子空間のみを移動した場合の最短距離経路をレイアウト情報から自動的に算出し、その最短経路を示すような矢印を設定させてもよい。
図24を用いた格子空間上に設定される移動方向についての説明を終える。
図25は、移動する歩行者エージェント間の相互作用について説明するための図である。
空間図24001は、時刻tの時点での歩行者エージェントの格子空間上の位置を示している。空間図24002は時刻t+Δtの時点での歩行者エージェントの格子空間上の位置を示している。
24010、24020、24030、24040の丸は歩行者エージェントを示している。空間図24001と空間図24002を比べると、歩行者エージェント24010、24030、24040は時刻tから時刻t+Δtの間では移動しておらず、歩行者エージェント24020のみが移動していることが分かる。
本実施例の移動推定処理では、1つの格子空間には1人歩行者エージェントのみが存在できることとし、歩行者エージェントは進もうとする方向に他の歩行者エージェントが既に存在する場合、移動させずに待機させる。
例えば、時刻t時点で、歩行者エージェント24030および歩行者エージェント24040が位置する格子空間上の単位空間の矢印は、歩行者エージェント24020が位置する単位空間を向いている。そのため、時刻t時点の歩行者エージェント24030および24040は、移動させることができない。ただし、時刻t+Δt時点では歩行者エージェント24020が移動しているため、歩行者エージェント24030および24040は移動可能となる。ただし、どちらかの歩行者エージェントが単位空間24101へ移動すると他方の歩行者エージェントは移動できなくなり、単位空間24101に歩行者エージェントが存在しなくなるまで待つことになる。
以上で図25を用いた歩行者エージェント間の相互作用についての説明を終え、図23の移動推定部の処理のフローチャートの説明に戻る。
S2505では、格子空間内に存在するすべての歩行者エージェントに対して、時刻t時点で移動処理を終えるまでS2503へ戻り繰返し処理し、処理が完了するとS2506へ進む。
S2506では、時刻tをΔt進める。
S2507では、時刻tが終了時刻以前であれば、S2502へ戻り処理を繰り返し、時刻tが終了時刻となると、移動推定部の処理を終了させる。
S2506において、推定した歩行者エージェントの位置は、逐次記録しておき、終了時にまとめてデータや動画として出力してもよい。また記録せずにS2506の処理と同時に画面を持つ端末に出力し表示してもよい。
以上で、図23を用いた移動推定部1212の処理の流れについての説明を終える。
図23で説明した移動推定部の処理は一例であり、例えば、他にも出入口間の平均移動時間に乱数を加えた時間で出入口間を移動するとして移動を推定するなど他の方法も考えられる。
移動推定部1212の処理についての説明も以上である。
次に、評価部1203の処理について説明する。
評価部1203は、図2で示した通り、計測部1300で計測された流出人数情報1102と推定部1201から出力される推定結果とを入力とし、OD情報の推定精度を評価し、評価結果に基づき、評価結果情報1207へ出力するか、あるいは、あらかじめ定めた繰り返し条件に従い、分岐情報を更新して再度推定処理をやり直すかを判断する。
降車旅客分岐率情報と流入分岐率情報の初期値は、一例として均等な割合が設定されているとすると、OD推定部1211で算出される定常OD情報およびイベントOD情報は図15および図16にそれぞれ示されるように各移動先に均等に旅客が出現するというデータとなる。その分岐情報の初期値によって算出された定常OD情報およびイベントOD情報に基づいて算出される流出人数情報が例えば図17に示されているものであるとする。
図26は、評価部1203での評価の一例について説明するための図である。以下、図26を用いて、評価部1203での評価の処理について説明する。
評価部1203では、人数計測部1300で計測した流出人数の計測期間ごとに評価を行う。図26は、一例として、7:30から7:31の期間における流出人数の推定処理の評価結果を示している。縦軸26002は7:30−7:31の流出人数を示している。凡例にも示すように、図26には、各出入口での流出人数の計測結果26011と推定結果26012を比較したグラフが示されている。
計測結果26011は人数計測部1300で計測した流出人数を示し、推定結果26012は推定部1201で推定した流出人数を示す。図26には、計測された図7の流出人数情報と、推定された図17の流出人数情報とが対比されている。
各出入口についての推定結果の精度を誤差率(流出人数に対する誤差の割合)で評価すると、出入口Aは誤差率+13%であり、出入口Bは誤差率が±0%であり、出入口Cは誤差率が+28%であり、出入口Dは誤差率が−18%である。図26の説明は以上である。
評価部1203は、この評価結果と、推定部1201から出力された推定結果とを、評価結果情報として出力する。推定結果として、移動推定部1212に入力された定常OD情報及びイベントOD情報などをそのまま出力してもよい。
また、評価部1203は、あらかじめ定めておいた繰り返し条件に従い、分岐情報1106を更新し、推定部1201での推定処理を再度実行するかを判断する。
前記繰り返し条件の例として、計算時間が一定時間内であること、計算回数が一定回数内であること、各出入口の推定結果の誤差率の絶対値が一定割合以上となるものを含むこと、などの条件のひとつあるいは複数の組み合わせが挙げられる。設定した条件が満たされた場合、評価部1203は、分岐情報1106を更新し、推定部1021に推定処理を再度実行させる。
例えば、各出入口の評価結果の誤差率の絶対値が20%以上であるものを含む場合に推定を繰り返すという条件が設定されていた場合、評価部1203での評価の結果として図26の評価結果が得られたら、評価部1203は、分岐情報1106を更新し、推定部1201に推定処理を再度実行させることになる。
次に、分岐情報1106の更新について説明する。
評価部1203は、図26に示した出入口毎の評価結果の誤差率に応じて、分岐情報1106に記録されている降車旅客分岐率情報(図12)と流入分岐情報(図13)を更新する。
図27は、評価部1203における分岐情報更新処理を示すフローチャートである。以下、図27を用いて分岐情報更新処理について説明する。
S2801では、評価部1203は、評価結果のうち、流出人数の誤差(計測結果と推定結果の差分)が最大となっている出入口eおよび期間t1-t2を算出し、またその時の誤差率をrとする。
S2802のループで、評価部1203は、すべての出入口を走査し処理する。以下、処理対象の出入口をe’とする。
S2803では、評価部1203は、出入口e’から流入し、出入口eへ流出するとき、出入口eでの流出時刻が期間t1-t2となりそうな、出入口e’での流入期間t3-t4を算出する。時刻t3は、時刻t1−(出入口e’から出入口eの平均移動時間×(1+余裕率))として設定し、時刻t4は、時刻t2−(出入口e’から出入口eの平均移動時間×(1+余裕率))として設定する。計測期間に対してのズレがある場合、時刻t3は切り捨て、時刻t4は切り上げて対応させる。出入口間の平均移動時間は、空間情報1103に記録された出入口間所要時間対応表から取得し、余裕率は予め適当な値を設定しておく。
S2804では、評価部1203は、降車旅客列車分岐率において、出入口e’に接続するホームに期間t3-t4に到着する列車の分岐確率のうち、出入口eへ向かう旅客についての値を1/(1+r)倍する。
S2805では、評価部1203は、流入分岐情報に対して、流入出入口がe’であり、かつ期間t3-t4の出入口eへの分岐率を1/(1+r)倍する。
S2806では、評価部1203は、すべての出入口に対して処理を終えるまでS3302へ戻って繰返し処理し、処理が完了するとS3307へ進む。
S2807では、評価部1203は、流入分岐率および降車旅客分岐率の出入口毎の分岐率の比を維持したまま、分岐率の合計が100%となるように調整し、その後、分岐率更新処理を終了する。分岐率の合計を100%に維持する処理は、それぞれの分岐率を合計した値で、各分岐率を割ればよい。
以上で、図27を用いた分岐情報更新処理の説明を終了する。分岐情報更新処理は、ここに例示した方式に限らない。他の例として、評価結果を用いずに、乱数を用いて、流入分岐率および降車旅客分岐率の出入口毎の分岐率を設定する方式で実現してもよい。
評価部1203の処理についての説明は以上である。また、演算部1200での処理についての説明も以上である。
出力部1001は、評価結果情報1107に記録された情報を、本旅客流動推定装置と接続する他装置あるいは他システムに対して、データとして出力する。
評価結果情報1107のデータは各種データを表示する端末に出力してもよい。例えば、評価結果情報1107を表形式および/またはグラフ形式で表示する端末に出力し、表示させてもよい。また、評価結果情報1107を、移動推定部1212の推定処理の課程として、図25に示したような対象空間内の歩行者の移動の様子を動画で表示する端末(移動状況表示端末)に出力し、表示させてもよい。また、鉄道駅の混雑状況を駅員や旅客に情報提供するため対象空間内の群集密度を表示する端末(群集密度表示端末)に評価結果情報1107を出力し、表示させてもよい。
上述した移動状況表示端末の一実現例として、移動推定部1212における推定処理において、逐次更新する前記歩行者エージェントの位置情報を元に動画を作成し、評価部1203を経由して、評価結果情報1107として出力部1001から端末に出力し、画面表示させてもよい。
また、上述した群集密度表示端末の一実現例として、移動推定部1212における推定処理において、逐次更新する歩行者エージェントの位置情報を元に、格子空間における単位面積あたりの滞在人数(平均滞在人数)について一定時間の平均値を算出し、評価部1203を経て、評価結果情報1107として出力部1001から出力することにしてもよい。端末では、その平均滞在人数に応じて、格子空間の各単位空間を異なる色や塗りつぶしパターンで表示することにより、群集密度の大小を視覚的に画面表示してもよい。
図28は、群集密度表示端末の画面の一例を示す図である。以下、図28を用いて群集密度表示端末の画面について説明する。凡例に示す例7001、7002のように、算出した群集密度に応じて格子空間を表示する色や塗りつぶしパターンなどの表現を変化させて、レイアウト情報が示す対象空間中の群集密度の分布を表示させている。単位空間7011の群集密度は0.5人/m2以上1.5人/m2未満(例7001)であり、単位空間7012の群集密度は1.5人/m2以上(例7002)である。この表示によって、対象空間中の旅客によって混雑しやすい場所を確認することができる。
<作用、効果>
<作用、効果>
本実施例の旅客流動推定装置により、対象空間の出入口での流入人数および流出人数を計測することで、対象空間内の旅客の移動を直接追跡するのではなく、推定することができる。
これによって、従来把握することが困難であった時間帯毎の乗り換えのためのホーム間の旅客の移動状況として、各ホーム間の移動の割合がOD情報として推定でき、このOD情報を用いることで、現状の駅の各空間の状況を定量的に把握することができ、より旅客にとって利便性のある運行計画や、旅客にとって快適な空間の設計や改修を精度よく評価することができる。
以上の説明では、計測される旅客の流動人数のうち、計測した流入人数情報を入力のひとつとして流出人数情報を推定し、推定した流出人数情報と、計測した流出人数情報とを比較することにより推定精度を評価したが、本発明がこれに限定されることはない。他の例として、流入と流出を逆にして、計測した流出人数情報を入力のひとつとして流出人数情報を推定し、推定した流入人数情報と、計測した流入人数情報とを比較することにしてもよい。流出人数情報から流入情報を推定する場合、移動推定処理において、繰り返し処理の時間進行を逆にすればよい。
また、計測した流入人数情報を入力のひとつとして格子空間の群集密度を推定し、また計測した流出人数情報を入力のひとつとして格子空間の群集密度を逆推定し、流入人数情報から推定した格子空間の群集密度と、流出人数情報から推定した格子空間の群集密度を比較することにより、推定精度を評価してもよい。
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、これらの実施例だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、これらの実施例を組み合わせて使用したり、一部の構成を変更したりしてもよい。
本実施例では、鉄道駅における旅客の流動を推定するシステムを例示したが、本発明がこれに限定されることはない。本発明は乗物の乗降場所における乗客の流動を推定するシステムに広く適用可能である。他の例として、航空旅客機が発着する空港における旅客の流動を推定するシステムに適用することもできる。
また、本実施例では、図27に示したように、降車旅客分岐率と流入分岐率の両方を更新する例を示したが、本発明がこの例に限定されることはない。他の例として、降車旅客分岐率または流入分岐率のいずれか一方のみを更新することにしてもよい。また、降車旅客分岐率と流入分岐率の更新演算にそれぞれ別個の式を用いてもよい。
<付記>
<付記>
上記の実施例は以下の付記のように整理して表現することも可能である。ただし、本発明が以下の付記に限定されるものでないことは言うまでもない。
(付記1)
(付記1)
観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する計測部と、
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する推定部と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する評価部と、
を有する人流動推定システム。
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する推定部と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する評価部と、
を有する人流動推定システム。
これによれば、出入口での計測に基づき流動推定演算手法を用いて対象空間での人の流動を推定するとともに、同じ流動推定演算手法で比較用推定人数を推定し、比較用推定人数を他の手法で取得した比較対象人数と比較し、比較結果で流動推定情報の推定精度を評価するので、高い精度で流動推定情報を取得することができる。
(付記2)
(付記2)
前記計測部は、前記出入口で前記対象空間に流入する人の数である流入人数と、前記出入口で前記対象空間から流出する人の数である流出人数とを計測し、
前記推定部は、前記流入人数と前記流出人数のいずれか一方に基づき他方を推定することにより得られた結果を前記比較用推定人数とし、
前記評価部は、前記比較用推定人数と計測された前記他方とを比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
付記1に記載の人流動推定システム。
前記推定部は、前記流入人数と前記流出人数のいずれか一方に基づき他方を推定することにより得られた結果を前記比較用推定人数とし、
前記評価部は、前記比較用推定人数と計測された前記他方とを比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
付記1に記載の人流動推定システム。
これによれば、出入口で計測された一方の計測値から流動推定演算手法で他方の計測値に相当する推定値を推定し、その他方の計測値と推定値を比較するので、計測値に基づいて推定精度を正確に評価することができる。
(付記3)
(付記3)
前記対象空間は、旅客が乗物に乗降する乗降施設内の空間であり、
前記出入口には、乗物の乗降場所に接続される第1出入口と、前記乗降施設の出入口である第2出入口とが含まれ、
前記人流動推定システムは、前記乗物の到着および出発に関する運行情報を保持する記憶部を更に有し、
前記推定部は、前記対象空間に流入する出入口と前記対象空間から流出する出入口との対に対応づけた、前記対象空間に流入して前記対象空間を移動して前記対象空間から流出する人の数を示すOD情報を算出するとき、前記第1出入口からの流入に関する第1OD情報は前記乗物の到着に対応付けて算出し、前記第2出入口からの流入に関する第2OD情報は前記時間単位で算出する、
付記2に記載の人流動推定システム。
前記出入口には、乗物の乗降場所に接続される第1出入口と、前記乗降施設の出入口である第2出入口とが含まれ、
前記人流動推定システムは、前記乗物の到着および出発に関する運行情報を保持する記憶部を更に有し、
前記推定部は、前記対象空間に流入する出入口と前記対象空間から流出する出入口との対に対応づけた、前記対象空間に流入して前記対象空間を移動して前記対象空間から流出する人の数を示すOD情報を算出するとき、前記第1出入口からの流入に関する第1OD情報は前記乗物の到着に対応付けて算出し、前記第2出入口からの流入に関する第2OD情報は前記時間単位で算出する、
付記2に記載の人流動推定システム。
これによれば、乗物の到着時に対象空間にまとまって人が流入する特性を有する第1出入口については、乗物の到着に対応付けてOD情報を算出するので、実際の人の流れに、より忠実な推定情報を得ることができる。
(付記4)
(付記4)
前記記憶部は、到着した乗物から前記第1出入口を通って前記対象空間に流入する人が他の各出入口に向かう第1分岐率の情報と、前記第2出入口から前記対象空間に流入する人が他の各出入口に向かう第2分岐率の情報とを更新可能に更に保持し、
前記推定部は、前記第1分岐率および前記第2分岐率に基づいて、前記第1OD情報と、前記第2OD情報と、前記第1OD情報および前記第2OD情報に基づき出入口間の移動時間を考慮して算出された、各出入口から流出する人の数である流出推定人数と、を推定し、
前記評価部は、前記流出推定人数を前記比較用推定人数として前記流出人数と比較することにより、前記第1OD情報および前記第2OD情報の推定精度を評価し、評価結果に基づいて前記第1分岐率と前記第2分岐率の少なくとも一方を更新するか否か判定する、
付記3に記載の人流動推定システム。
前記推定部は、前記第1分岐率および前記第2分岐率に基づいて、前記第1OD情報と、前記第2OD情報と、前記第1OD情報および前記第2OD情報に基づき出入口間の移動時間を考慮して算出された、各出入口から流出する人の数である流出推定人数と、を推定し、
前記評価部は、前記流出推定人数を前記比較用推定人数として前記流出人数と比較することにより、前記第1OD情報および前記第2OD情報の推定精度を評価し、評価結果に基づいて前記第1分岐率と前記第2分岐率の少なくとも一方を更新するか否か判定する、
付記3に記載の人流動推定システム。
これによれば、誤差が含まれ易い分岐率を更新しながらOD情報の精度を上げていくことができるので、段階的に実際の状況に近づけるように推定精度を収束させることができる。
(付記5)
(付記5)
前記評価部は、前記評価結果において前記流出推定人数と前記流出人数の差分が最も大きい出入口の第1分岐率および第2分岐率を更新する、
付記4に記載の人流動推定システム。
付記4に記載の人流動推定システム。
これによれば、誤差が最大の出入口の分岐率を更新して推定精度を上げていくので、短時間でOD情報の精度を向上させることができる。
(付記6)
(付記6)
前記計測部は、前記出入口で前記対象空間に流入する人の数である流入人数と、前記出入口で前記対象空間から流出する人の数である流出人数とを計測し、
前記推定部は、前記流入人数に基づき前記対象空間を格子状の単位空間に分割した格子空間における人の群集密度である第1群集密度を推定し、前記流出人数に基づき格子空間における人の群集密度である第2群集密度を推定し、
前記評価部は、前記第1群衆密度と前記第2群集密度を比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
付記1に記載の人流動推定システム。
前記推定部は、前記流入人数に基づき前記対象空間を格子状の単位空間に分割した格子空間における人の群集密度である第1群集密度を推定し、前記流出人数に基づき格子空間における人の群集密度である第2群集密度を推定し、
前記評価部は、前記第1群衆密度と前記第2群集密度を比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
付記1に記載の人流動推定システム。
これによれば、流入人数と流出人数の両方から求めた群集密度を比較して推定精度を評価するので、流入人数からの推定の精度と、流出人数からの推定の精度を同時に評価することができる。
(付記7)
(付記7)
前記推定部は、前記対象空間を格子状の単位空間に分割した格子空間を表わす空間情報と前記第1OD情報および前記第2OD情報とに基づき前記格子空間の単位空間に人を疑似するエージェントを出現させ、単位空間の間を移動させることにより、前記出入口間の移動時間を算出する、付記4に記載の人流動推定システム。
これによれば、推定部は、格子空間上のエージェントにより移動時間を算出するので、容易に移動時間を算出し、流出推定人数の算出に用いることができる。
(付記8)
(付記8)
観測の対象となる対象空間の出入口を通る人を観測する観測システムを更に有し、
前記計測部は、前記観測システムの観測結果に基づいて、前記出入口を通過する人の数である流動人数を計測する、
付記1に記載の人流動推定システム。
(付記9)
前記計測部は、前記観測システムの観測結果に基づいて、前記出入口を通過する人の数である流動人数を計測する、
付記1に記載の人流動推定システム。
(付記9)
計測手段が、観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測し、
推定手段が、前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得し、
評価手段が、前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
人流動推定方法。
(付記10)
推定手段が、前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得し、
評価手段が、前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
人流動推定方法。
(付記10)
観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する手順と、
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する手順と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する手順と、
をコンピュータに実行させるための人流動推定プログラム。
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する手順と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する手順と、
をコンピュータに実行させるための人流動推定プログラム。
1000…旅客流動推定装置、1001…出力部、1021…推定部、1100…記録部、11001…列車ID、11002…降車旅客分岐率、1101…流入人数情報、1102…流出人数情報、1103…空間情報、1104…運行情報、1106…分岐情報、1107…評価結果情報、1200…演算部、1201…推定部、1203…評価部、1211…OD推定部、1212…移動推定部、1300…計測部、1300…人数計測部、1301…対象空間、1310…カメラシステム、1311…カメラ、1312…出入口、1320…自動改札機システム、1321…自動改札機、8000…格子空間、8011…通路、8012…壁、8013…階段、8014…改札、8015…出入口
Claims (10)
- 観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する計測部と、
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する推定部と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する評価部と、
を有する人流動推定システム。 - 前記計測部は、前記出入口で前記対象空間に流入する人の数である流入人数と、前記出入口で前記対象空間から流出する人の数である流出人数とを計測し、
前記推定部は、前記流入人数と前記流出人数のいずれか一方に基づき他方を推定することにより得られた結果を前記比較用推定人数とし、
前記評価部は、前記比較用推定人数と計測された前記他方とを比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
請求項1に記載の人流動推定システム。 - 前記対象空間は、旅客が乗物に乗降する乗降施設内の空間であり、
前記出入口には、乗物の乗降場所に接続される第1出入口と、前記乗降施設の出入口である第2出入口とが含まれ、
前記人流動推定システムは、前記乗物の到着および出発に関する運行情報を保持する記憶部を更に有し、
前記推定部は、前記対象空間に流入する出入口と前記対象空間から流出する出入口との対に対応づけた、前記対象空間に流入して前記対象空間を移動して前記対象空間から流出する人の数を示すOD情報を算出するとき、前記第1出入口からの流入に関する第1OD情報は前記乗物の到着に対応付けて算出し、前記第2出入口からの流入に関する第2OD情報は前記時間単位で算出する、
請求項2に記載の人流動推定システム。 - 前記記憶部は、到着した乗物から前記第1出入口を通って前記対象空間に流入する人が他の各出入口に向かう第1分岐率の情報と、前記第2出入口から前記対象空間に流入する人が他の各出入口に向かう第2分岐率の情報とを更新可能に更に保持し、
前記推定部は、前記第1分岐率および前記第2分岐率に基づいて、前記第1OD情報と、前記第2OD情報と、前記第1OD情報および前記第2OD情報に基づき出入口間の移動時間を考慮して算出された、各出入口から流出する人の数である流出推定人数と、を推定し、
前記評価部は、前記流出推定人数を前記比較用推定人数として前記流出人数と比較することにより、前記第1OD情報および前記第2OD情報の推定精度を評価し、評価結果に基づいて前記第1分岐率と前記第2分岐率の少なくとも一方を更新するか否か判定する、
請求項3に記載の人流動推定システム。 - 前記評価部は、前記評価結果において前記流出推定人数と前記流出人数の差分が最も大きい出入口の第1分岐率および第2分岐率を更新する、
請求項4に記載の人流動推定システム。 - 前記計測部は、前記出入口で前記対象空間に流入する人の数である流入人数と、前記出入口で前記対象空間から流出する人の数である流出人数とを計測し、
前記推定部は、前記流入人数に基づき前記対象空間を格子状の単位空間に分割した格子空間における人の群集密度である第1群集密度を推定し、前記流出人数に基づき格子空間における人の群集密度である第2群集密度を推定し、
前記評価部は、前記第1群衆密度と前記第2群集密度を比較することにより、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
請求項1に記載の人流動推定システム。 - 前記推定部は、前記対象空間を格子状の単位空間に分割した格子空間を表わす空間情報と前記第1OD情報および前記第2OD情報とに基づき前記格子空間の単位空間に人を疑似するエージェントを出現させ、単位空間の間を移動させることにより、前記出入口間の移動時間を算出する、請求項4に記載の人流動推定システム。
- 観測の対象となる対象空間の出入口を通る人を観測する観測システムを更に有し、
前記計測部は、前記観測システムの観測結果に基づいて、前記出入口を通過する人の数である流動人数を計測する、
請求項1に記載の人流動推定システム。 - 計測手段が、観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測し、
推定手段が、前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得し、
評価手段が、前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する、
人流動推定方法。 - 観測の対象となる対象空間の出入口を通過する人の数である流動人数を計測する手順と、
前記流動人数に基づき、所定の流動推定演算手法により、所定の旅客状態の人の数を推定した比較用推定人数と、前記対象空間での人の流動を推定した流動推定情報とを取得する手順と、
前記旅客状態の人の数を他の方法で取得した比較対象人数と前記比較用推定人数を比較し、比較結果に基づいて、前記流動推定情報の推定精度を評価する手順と、
をコンピュータに実行させるための人流動推定プログラム。
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