JP2016045071A - 電気的特性測定装置、血液状態解析システム、電気的特性測定方法、及び該方法をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラム - Google Patents

電気的特性測定装置、血液状態解析システム、電気的特性測定方法、及び該方法をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラム Download PDF

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【課題】血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて種々の測定・評価を行う場合において、該血液試料を分注する時間に関わらず、いつでも精度の高い電気的特性測定が可能な技術を提供すること。【解決手段】少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する装置であって、前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部11を備える電気的特性測定装置1を提供する。該電気的特性測定装置1には、前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の温度を制御する温度制御部13を備えていてもよい。【選択図】図1

Description

本技術は、電気的特性測定装置に関する。より詳しくは、血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する装置、血液状態解析システム、電気的特性測定方法、及び該方法をコンピューターに実現させるためのプログラムに関する。
臨床的に行われる血液状態の解析方法としては、例えば、血液凝固検査がある。一般的な血液凝固検査としては、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に代表される血液凝固検査が知られている。これらの方法では、血液試料を遠心分離して得られる血漿中に含まれ、凝固反応に関与するタンパク質を分析する方法である。この分野は技術的に確立しており、医療現場におけるニーズはほぼ充足されていると見られてきた。
しかし、迅速性が要求される周術期(急性期)治療等において、患者の包括的な凝固病態を的確かつ簡便に検査したいというニーズに答えるには、前記の方法は不十分である。具体的には、例えば、人工心肺装置による体外循環を伴う心臓手術、重度外傷治療、肝臓移植手術等の大規模手術では、外科的出血だけでなく、凝固異常に起因する出血が持続することがある。それにも拘わらず、従来の凝固検査では、生体内の凝固反応において重要な役割を果たす血小板・赤血球等の細胞成分が遠心分離により除去されるため、検査結果が実際の臨床的病態と齟齬することも多い。
また、患者の凝固病態は周術期を通じて大幅に変動し、しばしば出血傾向から血栓傾向に転じることがあるが、PTやAPTTは出血傾向の検査であり、血栓傾向の高感度な検査法は未だ確立されていない。
急性期の包括的凝固検査として、血液凝固過程に伴う粘弾性変化を力学的に測定するトロンボエラストメトリーが、TEG(登録商標)やROTEM(登録商標)として欧米企業により製品化されている。しかし、これらは、(1)測定が自動化されておらず、検査結果が測定者の手技に依存する、(2)振動の影響を受けやすい、(3)品質管理(QC)手順が煩雑で、QC用試薬が高価である、(4)出力信号(トロンボエラストグラム)の解釈に熟練を要する等の理由が、十分な普及を阻む第一の原因であると考えられる。そのため、包括的凝固検査を行えば輸血不要である患者に対しても、現状ではしばしば予防的・経験的に血液製剤が使用され、感染症等のリスクが増大するだけでなく、血液製剤の浪費と医療費の増大をもたらしている。
近年、血液の凝固の程度を簡便かつ正確に評価する技術が、開発されつつある。例えば、特許文献1には、血液の誘電率から血液凝固に関する情報を取得する技術が開示されており、「一対の電極と、上記一対の電極に対して交番電圧を所定の時間間隔で印加する印加手段と、上記一対の電極間に配される血液の誘電率を測定する測定手段と、血液に働いている抗凝固剤作用が解かれた以後から上記時間間隔で測定される血液の誘電率を用いて、血液凝固系の働きの程度を解析する解析手段と、を有する血液凝固系解析装置」が記載されている。
一般的に、物質の誘電率や導電率などの電気的特性は温度の関数であり、測定温度に依存する。例えば、血液の誘電率の温度変化に関しては、非特許文献1に広い温度及び周波数域に亘って報告されている。しかし、非特許文献1では、広い温度に亘った報告であり、体温付近の詳しい情報を得るには十分ではない。また、非特許文献1では、EDTA添加によって抗凝固処理された血液について検討されているため、凝固した血液、または、凝固反応途中の血液検体の誘電率の温度依存性については、不明である。
更に、酵素反応速度は温度の関数であり、血液凝固反応に係る酵素もその例外ではない。しかし、血液凝固反応は多種類の酵素による複合的なカスケード反応であり、温度変化によって凝固開始時間や、凝固完了時間、クロット強度などにどのような変化があるのか、その詳細は不明である。特に、特許文献1のような誘電率による血液凝固測定においては、前述の通り、血液の誘電率自体が温度と共に変化する可能性があることに加え、血液凝固反応も温度によって変化するので、測定結果が総合的にどのような変化を受けるのか不明である。
特開2010−181400号公報
Biochimica et Biophysica Acta(BBA) - General Subjects, Volume 1810, Issue 8, August 2011, Pages 727-740
前述のように、血液状態を評価する技術において、温度の影響は非常に深刻である。例えば、前述したROTEM(登録商標)などでは、測定前の血液試料を37℃にコントロールされた保温部に置いて、プレヒーティングを行う方法が採用されている。そして、ROTEM(登録商標)において血液を所望の温度にコントロールするためには、10分程度の時間を要する。
しかし、血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて種々の測定・評価を行う場合、時間に伴って血球の沈降(以下「血沈」ともいう)が生じるため、血液試料から分注された測定用のサンプルは、分注する時間によって内容成分が変化してしまう。そのため、血球成分と血漿成分を含む血液試料の場合、プレヒーティングを行う間に血沈が起こり、この血沈が測定結果に影響を及ぼすといった問題があった。
そこで、本技術では、血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて種々の測定・評価を行う場合において、該血液試料を分注する時間に関わらず、いつでも精度の高い電気的特性測定が可能な技術を提供することを主目的とする。
即ち、本技術では、まず、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する装置であって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置を提供する。
本技術に係る電気的特性測定装置の前記撹拌部では、ピペッティングによる撹拌を行うこともできる。
本技術に係る電気的特性測定装置には、前記血液試料から測定用のサンプルを分注する分注機構を備えることも可能である。
この場合、前記分注機構を、前記撹拌部としても機能するように設計することもできる。
本技術に係る電気的特性測定装置には、前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の温度を制御する温度制御部を備えることも可能である。
本技術に係る電気的特性測定装置では、前記温度制御部における温度制御が行われている状態で、前記撹拌部における撹拌を行うこともできる。
本技術に係る電気的特性測定装置には、前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備えることも可能である。
また、本技術に係る電気的特性測定装置には、前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備えることも可能である。
本技術では次に、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の状態を解析するシステムであって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置と、
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備える血液状態解析装置と、
を有する血液状態解析システムを提供する。
本技術に係る血液状態解析システムには、前記電気的特性測定装置での測定結果及び/又は前記血液状態解析装置での解析結果を記憶するサーバーを備えることもできる。
この場合、前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置及び/又は前記血液状態解析装置と接続することもできる。
本技術では、更に、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する方法であって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌工程を行う電気的特性測定方法を提供する。
本技術では、加えて、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性の測定に用いるプログラムであって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌機能をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラムを提供する。
本技術によれば、血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて種々の測定、評価、解析を行う場合において、該血液試料を分注する時間に関わらず、いつでも精度の高い電気的特性測定が可能である。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
本技術に係る電気的特性測定装置1の概念を模式的に示す模式概念図である。 撹拌部11を用いて、ピペッティングによる撹拌を行う場合の撹拌方法の一例を示す概念図である。 本技術に係る血液状態解析システム10の概念を模式的に示す模式概念図である。 本技術に係る電気的特性測定方法のフローチャートである。 実施例1において、誘電率測定の結果を示す図面代用グラフである。 実施例2において、温度変化の測定結果を示す図面代用グラフである。 実施例3において、誘電率測定の結果を示す図面代用グラフである。 実施例5において、誘電率測定の結果を示す図面代用グラフである。
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.電気的特性測定装置1
(1)撹拌部11
(2)分注機構12
(3)温度制御部13
(4)測定部14
(5)血液状態解析部15
(6)記憶部16
(7)血液試料
2.血液状態解析システム10
(1)電気的特性測定装置1
(2)血液状態解析装置101
(3)サーバー102
(4)表示部103
(5)ユーザーインターフェース104
3.電気的特性測定方法
(1)撹拌工程I
(2)分注工程II
(3)温度制御工程III
(4)測定工程IV
(5)血液状態解析工程V
(6)記憶工程VI
4.電気的特性測定用プログラム
1.電気的特性測定装置1
図1は、本技術に係る電気的特性測定装置1(以下、「装置1」ともいう)の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る電気的特性測定装置1は、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料(以下、単に「血液試料」ともいう)を用いて、該血液試料の状態を解析する装置であって、撹拌部11を少なくとも備える。また、必要に応じて、分注機構12、温度制御部13、測定部14、血液状態解析部15、記憶部16などを備えることもできる。以下、各部について詳細に説明する。
(1)撹拌部11
撹拌部11では、血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の撹拌が自動的に行われる。
血球成分と血漿成分を含む血液試料を用いて種々の測定、評価、解析などを行う場合、時間に伴って血球の血沈が生じるため、血液試料から分注された測定用のサンプルは、分注する時間によって内容成分が変化してしまう。そこで、本技術に係る電気的特性測定装置1では、血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、撹拌部11によって、血液試料の撹拌が自動的に行うことで、分注する時間に関わらず、同一の血液試料であれば、内容成分を一定に保つことが可能である。
撹拌部11における具体的な撹拌方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の撹拌方法を自由に選択して用いることができる。例えば、ピペッティングによる撹拌、撹拌棒または撹拌子などを用いた撹拌、血液試料の入った容器を上下逆転させることによる撹拌などを挙げることができる。この中でも本技術では特に、ピペッティングによる撹拌を行うことが好ましい。ピペッティングによる撹拌は、血液試料が飛び散ることが少なく安全性が高く、撹拌時に血液試料中の血小板等の活性化に影響が少ないからである。
以下、撹拌方法の具体的な一例を、図面を参照しながら説明する。図2は、撹拌部11を用いて、ピペッティングによる撹拌を行う場合の撹拌方法の一例を示す概念図である。
<ステップ1>
ステップ1では、血液試料Sを収容した採血管等の容器Tの所定の位置から血液試料Sを吸引する。吸引位置は特に限定されず、血液試料Sの種類、状態などに応じて、自由に設定することができる。例えば、図2Aに示す例は、容器Tの底部において吸引を行う例であり、図2Bに示す例は、血液試料Sの液面において吸引を行う例である。また、血液試料Sの種類、状態などに応じて、予めパラメータを設定しておき、吸引位置の自動制御を行うことも可能である。
<ステップ2>
ステップ2では、ステップ1で吸引した血液試料Sを、容器Tの所定の位置から吐出する。吐出位置も特に限定されず、血液試料Sの種類、状態などに応じて、自由に設定することができる。例えば、図2Aに示す例は、血液試料Sの液面において吐出する例であり、図2Bに示す例は、容器Tの底部において吐出する例である。また、血液試料Sの種類、状態などに応じて、予めパラメータを設定しておき、吐出位置の自動制御を行うことも可能である。
ステップ1およびステップ2を1セットとして、必要回数、ピペッティングを繰り返すことにより、血液試料Sの撹拌を行うことができる。また、それぞれ条件を変えたステップ1及びステップ2を、自由に組み合わせて行うこともできる。更に、血液試料Sの種類、状態、量などに応じて、予めパラメータを設定しておき、撹拌可能な条件、回数、撹拌時間などを自動制御することも可能である。加えて、吸引又は吐出の際に、ピペットを動かしながら吸引又は吐出を行うことで、より撹拌効果を高めることができる。
本技術に係る電気的特性測定装置1の撹拌部11としてピペットを用いる場合、ピペットの先端のチップを、導電性のある材料で形成することが好ましい。導電性のある材料で形成することにより、インピーダンス測定等による液面検知を行うことができ、採血量が異なる様々な検体にも容易に適用可能となる。
より具体的なピペッティングによる撹拌方法の一例としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)血液試料S量の5%から25%を、容器T底部から0〜5mmの高さ位置で吸引し、液面下0〜5mmの間で吐出する。
(2)血液試料S量の5%から25%を、液面下5〜15mmの間で吸引し、容器T底部から0〜10mmの間で吐出する。
これら(1)及び(2)の方法は、それぞれ単独で行ってもよいが、自由に組み合わせて行うこともできる。
(2)分注機構12
分注機構12は、血液試料から測定用のサンプルの分注を自動的に行う機構である。本技術に係る電気的特性測定装置1において、この分注機構12は必須の部位ではないが、各工程をオートマチックに行うためには、備えることが好ましい。
分注機構12が行う具体的な分注方法は、血液試料から測定用のサンプルの分注が可能であれば特に限定されず、公知の方法を用いて分注を行うことができる。例えば、ピペッターとその先端に装着するチップを分注機構12として用いて、血液試料から測定用のサンプルの分注を自動的に行うことができる。この場合、測定誤差などを防止するためにも、チップは使い捨てにすることが好ましい。また、ポンプなどを分注機構12として用いて、血液試料から測定用のサンプルの分注を自動的に行うこともできる。更に、常設のノズルなどを分注機構12として用いて、血液試料から測定用のサンプルの分注を自動的に行うこともできる。この場合、ノズルには、測定誤差などを防止するためにも、洗浄機能を付与することが好ましい。
本技術に係る電気的特性測定装置1では、分注機構12が撹拌部11としても機能するように設計することも可能である。例えば、ピペッターとその先端に装着するチップを分注機構12として用いる場合、このピペッター及びチップを用いて分注前に血液試料の撹拌をすることも可能である。この場合、ピペッター及びチップが、撹拌部11及び分注機構12の両方として機能することになり、装置の小型化やコスト削減などに貢献することができる。
(3)温度制御部13
温度制御部13では、血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、血液試料の温度の自動的な制御が行われる。本技術に係る電気的特性測定装置1において、この温度制御部13は必須の部位ではないが、解析の精度を高めるためには備えることが好ましい。
例えば、血液試料の誘電率等の電気的特性は、後述する実施例に示す通り、初期温度によって大きく異なる。そのため、温度によって測定結果の誤差が生じると、目的の解析が正確に行えない可能性がある。そこで、温度制御部13を備えることで、測定の初期温度を一定に保ち、温度変動による測定誤差を防止することができる。
温度制御部13における具体的な温度制御方法は特に限定されず、公知の温度制御技術を自由に採用することができる。例えば、水等の液体式恒温槽、温風等の気体式恒温槽などを用いる方法、血液試料を収容する採血管等の容器の設置部自体に加温機能を持たせる方法等が挙げられる。この中でも、本技術においては、設置部に加温機能を持たせることで温度制御する方法が好ましい。この方法であれば、採血管等の容器を設置部に設置しただけで、温度制御が可能であり、装置の小型化や工程の簡便化を図ることができる。
温度制御部13における具体的な温度は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することができるが、後述する測定部14での測定時の温度と同等の温度に制御することが好ましい。測定時の温度と同等の温度に制御すれば、測定中の血液試料の温度変化を最小限に抑えることができ、その結果、温度変化による測定誤差を防止することができる。
本技術に係る電気的特性測定装置1では、温度制御部13における温度制御が行われている状態で、前記撹拌部11における撹拌が行われるように設計することが好ましい。後述する実施例で示す通り、血液試料を温度制御する場合、目的の温度に達するまでには、5〜20分程度の時間を要する場合がある。そして、個体差や病的な差はあるものの、血液試料が目的の温度に達する間に、血沈が生じる可能性が高い。そのため、血液試料の温度制御を行いながら、撹拌を行うことで、血沈の防止をしつつ、温度制御を行うことができる。
(4)測定部14
測定部14では、血液試料の電気的特性が測定される。本技術に係る電気的特性測定装置1において、測定可能な電気的特性としては、例えば、誘電率、インピーダンス、アドミッタンス、キャパシタンス、コンダクタンス、導電率、位相角などを挙げることができる。これらの電気的特性は、下記表1に示す数式によって、互いに変換可能である。そのため、例えば、血液試料の誘電率測定の結果を用いてヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を評価した評価結果は、同一の血液試料のインピーダンス測定の結果を用いた場合の評価結果と同一になる。これらの電気量や物性値の多くは複素数を用いて記述することができ、それによって変換式を簡略化することができる。
Figure 2016045071
測定部14において、電気的測定を行う周波数帯域は、測定する血液試料の状態、測定目的などに応じて、適宜選択することができる。例えば、測定する電気的特性がインピーダンスである場合、血液の状態変化に応じて、下記の表2に示す周波数帯域において変化がみられる。
Figure 2016045071
例えば、血液の凝固(凝血)を予測または検知を目的とする場合、周波数1kHz〜50MHzにおいてインピーダンスを測定することが好ましく、周波数3MHz〜15MHzにおいてインピーダンスを測定することがより好ましい。このように、血液試料の状態や測定目的に応じて、予め、パラメータを設定しておくことで、前記表2に示すような好ましい周波数帯域を自動的に選択可能とすることができる。
測定部14には、一又は複数の血液試料保持部を備えることができる。電気的特性測定装置1において、この血液試料保持部は必須ではなく、例えば、公知のカートリッジタイプの測定用容器などを設置可能な形態に、測定部14を設計することもできる。
測定部14に血液試料保持部を備える場合、該血液試料保持部の形態は、測定対象の血液試料を測定部14内に保持することができれば特に限定されず、自由な形態に設計することができる。例えば、基板上に設けた一又は複数のセルを血液試料保持部として機能させたり、一又は複数の容器を血液試料保持部として機能させたりすることができる。
一又は複数の容器を血液試料保持部として用いる場合、その形態も特に限定されず、測定対象の血液試料を保持可能であれば、円筒体、断面が多角(三角、四角あるいはそれ以上)の多角筒体、円錐体、断面が多角(三角、四角あるいはそれ以上)の多角錐体、あるいはこれらを1種又は2種以上組み合わせた形態など、血液試料の状態や測定方法などに応じて自由に設計することができる。
また、容器を構成する素材についても特に限定されず、測定対象の血液試料の状態や測定目的などに影響のない範囲で、自由に選択することができる。本技術では特に、加工成形のし易さなどの観点から、樹脂を用いて容器を構成することが好ましい。本技術において、用いることができる樹脂の種類も特に限定されず、血液試料の保持に適用可能な樹脂を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性かつ絶縁性のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。本技術では、この中でも特に、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、及びポリサルホンから選ばれる一種以上の樹脂で血液試料保持部を形成することが好ましい。これらの樹脂は、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するからである。
血液試料保持部は、血液試料を保持した状態で密封可能な構成であることが好ましい。ただし、血液試料の電気的特性を測定するのに要する時間停滞可能であって、測定に影響がなければ、気密な構成でなくてもよいものとする。
血液試料保持部への血液試料の具体的な導入及び密閉方法は特に限定されず、血液試料保持部の形態に応じて自由な方法で導入することができる。例えば、血液試料保持部に蓋部を設け、ピペットなどを用いて血液試料を導入した後に蓋部を閉じて密閉する方法や、血液試料保持部の外表面から注射針を穿入し、血液試料を注入した後、注射針の貫通部分を、グリスなどで塞ぐことで、密閉する方法などが挙げられる。
測定部14には、一又は複数の印加部を備えることができる。電気的特性測定装置1において、この印加部は必須ではなく、例えば、血液試料保持部に外部から電極を挿入できるように設計することで、外部の印加装置を用いることも可能である。
印加部は、測定を開始すべき命令を受けた時点又は電気的特性測定装置1の電源が投入された時点を開始時点として、設定される測定間隔ごとに、血液試料に対して、所定の電圧を印加する。
印加部の一部として用いる電極の数や電極を構成する素材は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、自由な数の電極を自由な素材を用いて構成することができる。例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス、白金、金、銅、黒鉛などが挙げられる。本技術では、この中でも特に、チタンを含む電気伝導性素材で電極を形成することが好ましい。チタンは、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するためである。
測定部14では、複数の測定を行うことも可能である。複数の測定を行う方法としては、例えば、測定部14を複数備えることにより複数の測定を同時に行う方法、一つの測定部14を走査させることにより複数の測定を行う方法、血液試料保持部を移動させることにより複数の測定を行う方法、測定部14を複数備え、スイッチングにより実際に測定を行う測定部14を一又は複数選択する方法などを挙げることができる。
測定部14には、温度制御機能を備えることが好ましい。後述する実施例で示す通り、血液試料の誘電率等の電気的特性は、温度変化によって大きく異なるため、測定部14に温度制御機能を備えることで、温度変化による測定誤差を防止することができる。
(5)血液状態解析部15
血液状態解析部15では、血液試料の電気的特性に基づいて、血液状態の解析が行われる。この血液状態解析部15は、本技術に係る電気的特性測定装置1では必須ではなく、本技術に係る電気的特性測定装置1で得られた測定結果に基づいて、外部の解析装置等を用いて血液試料の状態を解析することも可能である。
本技術に係る電気的特性測定装置1の血液状態解析部15において解析することが可能な血液の状態としては、状態変化により血液の電気的特性の変化が見られる現象であれば、特に限定されず、様々な状態変化を解析及び評価することができる。例えば、血液の凝固(凝血)、フィブリン形成、フィブリン塊形成、血餅形成、血小板凝集、赤血球の連銭形成、血液の凝集、赤血球の沈降(赤沈)、血餅収縮、線溶などの溶血、フィブリノリジスなどを挙げることができる。
(6)記憶部16
本技術に係る電気的特性測定装置1には、血液状態解析部15で解析された各解析結果、測定部14で測定された測定結果などを記憶する記憶部16を備えることができる。本技術に係る電気的特性測定装置1において、記憶部16は必須ではなく、外部の記憶装置を接続して、各結果を記憶することも可能である。
本技術に係る電気的特性測定装置1において、記憶部16は、各部ごとに、それぞれ別々に設けても良いし、一つの記憶部16に、各部で得られる各種結果を記憶させるように設計することも可能である。
(7)血液試料
本技術に係る電気的特性測定装置1において、測定対象とすることが可能な血液試料は、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料であれば特に限定されず、自由に選択することができる。血液試料の具体例としては、全血又はこれの希釈液、各種試薬や抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤及び抗血小板剤等の薬剤を添加した血液試料などを挙げることができる。
2.血液状態解析システム10
図3は、本技術に係る血液状態解析システム10の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る血液状態解析システム10は、大別して、電気的特性測定装置1と、血液状態解析装置101と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、サーバー102、表示部103、ユーザーインターフェース104などを備えることもできる。以下、各部について詳細に説明する。
(1)電気的特性測定装置1
電気的特性測定装置1は、少なくとも撹拌部11を少なくとも備える。また、必要に応じて、分注機構12、温度制御部13、測定部14などを備えることもできる。なお、電気的特性測定装置1に備える各部は、前述した電気的特性測定装置1の詳細と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
(2)血液状態解析装置101
血液状態解析装置101は、前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部15を備える。なお、血液状態解析部15は、前述した電気的特性測定装置1の血液状態解析部15と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
(3)サーバー102
サーバー102には、電気的特性測定装置1での測定結果及び/又は血液状態解析装置101での解析結果を記憶する記憶部16を備える。記憶部16の詳細は、前述した電気的特性測定装置1における記憶部16と同一である。
(4)表示部103
表示部103では、電気的特性測定装置1での測定結果及び/又は血液状態解析装置101での解析結果などが表示される。表示部103は、表示するデータや結果毎に、複数設けることも可能であるが、一つの表示部103に、全てのデータや結果を表示することも可能である。
(5)ユーザーインターフェース104
ユーザーインターフェース104は、ユーザーが操作するための部位である。ユーザーは、ユーザーインターフェース104を通じて、本技術に係る血液状態解析システム10の各部にアクセスすることができる。
以上説明した本技術に係る血液状態解析システム10では、電気的特性測定装置1、血液状態解析装置101、サーバー102、表示部103及びユーザーインターフェース104がそれぞれネットワークを介して接続されていてもよい。
3.電気的特性測定方法
図4は、本技術に係る電気的特性測定方法のフローチャートである。本技術に係る電気的特性測定方法は、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する方法であって、少なくとも撹拌工程Iを行う。また、必要に応じて、分注工程II、温度制御工程III、測定工程IV、血液状態解析工程V、記憶工程VIなどを行うこともできる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)撹拌工程I
撹拌工程Iでは、血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の撹拌を行う。撹拌工程Iで行う撹拌方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の撹拌部11で実行される攪拌方法と同一である。
(2)分注工程II
分注工程IIでは、血液試料から測定用のサンプルの分注を行う。分注工程IIで行う分注方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の分注機構12で実行される分注方法と同一である。
(3)温度制御工程III
温度制御工程IIIでは、血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、血液試料の温度の制御を行う。本技術に係る電気的特性測定方法において、この温度制御工程IIIは必須の工程ではないが、解析の精度を高めるためには行うことが好ましい。温度制御工程IIIで行う温度制御方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の温度制御部13で実行される温度制御方法と同一である。
(4)測定工程IV
測定工程IVでは、血液試料の電気的特性を測定する。測定工程IVで行う測定方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の測定部14で実行される測定方法と同一である。
(5)血液状態解析工程V
血液状態解析工程Vでは、血液試料の電気的特性に基づいて、血液状態の解析を行う。この血液状態解析工程Vは、本技術に係る電気的特性測定方法では必須の工程ではなく、本技術に係る電気的特性測定方法で得られた測定結果に基づいて、別の装置や方法を用いて血液状態の解析を行うことも可能である。血液状態解析工程Vで行う解析方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の血液状態解析部15で実行される解析方法と同一である。
(6)記憶工程VI
記憶工程VIでは、血液状態解析工程Vで解析された各解析結果、測定工程IVで測定された測定結果などを記憶する。本技術に係る電気的特性測定方法において、記憶工程VIは必須ではなく、各結果を記憶せずに、その都度、アウトプットすることも可能である。記憶工程VIで行う記憶方法の詳細は、前述した電気的特性測定装置1の記憶部16で実行される記憶方法と同一である。
4.電気的特性測定用プログラム
本技術に係る電気的特性測定用プログラムは、少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性の測定に用いるプログラムであって、前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌機能をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラムである。また、必要に応じて、分注機能、温度制御機能、測定機能、血液状態解析機能、記憶機能などをコンピューターに実現させることも可能である。
言い換えると、本技術に係る電気的特性測定用プログラムは、前述した本技術に係る電気的特性測定方法をコンピューターに実現させるためのプログラムである。よって、各機能の詳細は、前述した電気的特性測定方法の各工程と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
実施例1では、血液試料の電気的特性の温度依存性について検証した。本実施例では、電気的特性の一例として、誘電率を用いた。
[実験方法]
クエン酸を抗凝固剤として用いた真空採血管に健常者の血液検体を採取し、カルシウム添加による抗凝固状態の解除を行わずにそのまま実験に用いた。即ち、転倒混和の後採血管を開栓し、密封型の電極カートリッジに注入し、注入口の小穴をグリスで封じた。本電極カートリッジを、アダプタを介して同軸ケーブルによりインピーダンスアナライザに接続することで、誘電測定を可能にした。同時に、カートリッジとアダプタの全て、及び、ケーブルの一部は恒温槽(温風及び冷風式)に入れて温度コントロールができるようにした。また、測定中に起こる血沈を防止するため、カートリッジとアダプタを、180度回転、と180度逆回転を1分おきに繰り返止した。なお、180度回転させた場合には同軸ケーブルにねじれが生じるが、誘電測定に影響を及ぼさないことを予め確認した。
まず、恒温槽の設定温度を37℃にして十分安定するまで誘電測定(周波数域10MHz)を継続し、その後、設定温度を32度に再設定した。誘電測定(周波数域10MHz)を継続して行い、温度変化に伴って血液の誘電率がどのように変化するかを調べた。
[結果]
誘電率測定の結果を図5に示す。なお、図5のグラフでは、10MHzにおける血液の規格化された誘電率を示している。時刻0は、恒温槽の設定温度を37℃から32℃に下げた時刻であり、誘電率の規格化もこの時刻で行った。即ち、時刻0における誘電率でそれぞれの時刻における誘電率を除した値を、図5のグラフに示している。
図5に示す通り、血液試料の温度が低下するに従って、誘電率の低下が確認できた。即ち、血液試料の電気的特性は、温度変化に大きく影響されることが分かった。
実施例2では、温度制御の方法の違いによる、血液試料の温度変化パターンを検証した。温度制御の方法としては、水式恒温槽、温風式恒温槽、ROTEM(登録商標)のプレヒーティング部を用いて検証した。
[実験方法]
採血管に、血液の代わりに純水を規定量(2mL)入れ、熱電対を通したゴムキャップで栓をした。熱電対の先端が液中に十分入るように長さを調節し、同時に、採血管の壁面には接しないようにセッティングした。温度計測を室温(約23℃)から開始し、そのまま37℃に設定された恒温槽(水式、及び、温風式)、および、ROTEM(登録商標)の採血管プレヒーティング部にて加温し、その過程の温度測定を行った。さらに、採血管を再度室温に取り出し、温度変化を記録した。
[結果]
結果を図6に示す。図6に示す通り、37℃温水に採血管を浸した場合には、温度上昇のカーブが最も急であり、5分以内に36℃に達した。一方、温風による場合は36℃に達するまで10分程度かかった。ROTEM(登録商標)の場合には、温度上昇カーブは緩やかで、しかも十分に時間が経過した後も35℃程度までしか上昇しなかった。加温後に室温環境に戻すと、温度は低下し、2分間の間に3℃弱減少することが分かった。
実施例2の結果から、電気的特性測定装置において温度制御を行う際には、血液試料への熱伝達を最適化することが重要であり、その条件下において加温時間は5分以上10分以下程度であることが想定された。また、温度制御後、電気的特性測定装置による測定を行う場合には、2分以内に分注作業を終えることが好ましく、採血管の温度制御を継続したまま(室温環境には戻さずに)、自動分注機構によって血液の分注を行うことがより好ましいことが分かった。これは、装置内の採血管置場に温度制御部を備えることにより実現可能である。
実施例3では、血液試料の初期温度の違いにより、電気的特性に影響があるかを検証した。本実施例では、電気的特性の一例として、誘電率を用いた。
[実験方法]
採血管3本に、血液の代わりにPBS(Phosphate buffered saline)を入れ、恒温槽3台の設定温度を37℃、25℃、及び20℃とし、採血管がその温度となるように加温または減温した。各採血管の温度が十分に制御された状態で、各採血管を37℃に温度制御された測定部に置き、誘電率を測定した。
[結果]
結果を図7に示す。図7に示す通り、測定開始直後から数分間の測定結果は、検体の初期温度によって大きくことなることが分かった。即ち、血液試料の電気的特性を測定する際、試料の初期温度の設定が非常に重要であることが分かった。
実施例4では、血液試料の撹拌により、血沈が十分に防止可能であるかを検証した。本実施例では、撹拌方法の一例として、ピペッティングによる撹拌を用いた。
[実験方法]
まず、想定される最も悪い条件を考え、十分に血沈してしまった血液を自動ピペッティングによりどれだけ撹拌できるかについて次のように検証を行った。クエン酸を抗凝固剤として用いた真空採血管(採血量1.8mL)に採血した血液をそのまま2時間以上静置し、血沈によって十分に血漿成分と血球成分が分かれた状態にした。次に、採血管を静かに開栓し、電気的特性測定装置の所定の検体設置場所に置いた。なお、温度制御は行わず、採血管の温度は室温(23℃)とした。この状態で、表3に示す条件で撹拌を行った。ここで、血液をピペットで吸引する位置(高さ)と吐出する位置(高さ)について、底部付近から吸って血液の液面付近(上部)で吐出する動作と、逆に液面付近(上部)から吸って底部付近で吐出する動作、両方を組み合わせて行うことでより良く撹拌できるように工夫した。撹拌後、血液液面付近と採血管底部からそれぞれ血液をサンプリングし、それを血球カウンターで計測することでヘマトクリット値を測定した。
Figure 2016045071
[結果]
結果を表4に示す。表4に示す通り、採血管底部でのヘマトクリット値は血液液面付近のヘマトクリット値よりも5.6%高く、完全に均質になるまで撹拌できたとは言えないが、血沈によって血漿成分と血球成分が十分に分かれた状態からの撹拌であることを考えるとむしろ良く撹拌できたと考えられた。
Figure 2016045071
実施例5では、撹拌によって、血液試料中の血小板等の活性化による電気的特性への影響を検証した。本実施例では、電気的特性の一例として、誘電率を用いた。また、撹拌方法の一例として、ピペッティングによる撹拌を用いた。
[実験方法]
転倒混和等によって十分撹拌された状態である採血管を、電気的特性測定装置の採血管設置部に置いた。温度制御は行わず、採血管の温度は室温(23℃)とした。血液検体に予め血沈促進剤(Hetasep)を0.05mL/mLの濃度で加え、血沈促進状態で実験を行った。尚、この処理により赤血球沈降速度(ESR)は、およそ20mm/時となった。自動ピペッティングによる撹拌を、実施例4の表3とほぼ同じ条件で行った(表3のAを1回実行後、Bを実行。ただし、それぞれの繰り返し数は10回)。そして撹拌開始後5分後に、採血管の上部、及び、下部よりサンプリングした。さらに、撹拌動作を再度実行し、最初の撹拌開始から10分後にも同様にサンプリングを行った。これらのサンプル血液のヘマトクリット値を血球カウンターによって計測し、撹拌開始前の値と比較した。また、撹拌を行う前及び撹拌後に、誘電測定(周波数域10MHz)を行った。
[結果]
ヘマトクリット値の測定結果を、表5に示す。表5に示す通り、ピペッティングによる撹拌を行うことで、血沈促進剤によって血沈亢進状態にしたにもかかわらず、ヘマトクリット値は殆ど変化せず(誤差範囲内)、撹拌により十分に血沈が防止できたことが示された。
Figure 2016045071
誘電測定の結果を図8にそれぞれ示す。図8に示す通り、撹拌前及び撹拌後において、血液試料の誘電率は、ほとんど同じ変化を示した。即ち、本実施例の撹拌方法では、血液試料中の血小板等の活性化による電気的特性への影響がほとんどないことが証明された。
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)
少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する装置であって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置。
(2)
前記撹拌部では、ピペッティングによる撹拌が行われる(1)記載の電気的特性測定装置。
(3)
前記血液試料から測定用のサンプルを分注する分注機構を備える(1)又は(2)に記載の電気的特性測定装置。
(4)
前記分注機構は、前記撹拌部としても機能する(3)記載の電気的特性測定装置。
(5)
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の温度を制御する温度制御部を備える(1)から(4)のいずれかに記載の電気的特性測定装置。
(6)
前記温度制御部における温度制御が行われている状態で、前記撹拌部における撹拌が行われる(5)記載の電気的特性測定装置。
(7)
前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える(1)から(6)のいずれかに記載の電気的特性測定装置。
(8)
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備える(1)から(7)のいずれかに記載の電気的特性測定装置。
(9)
少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の状態を解析するシステムであって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置と、
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備える血液状態解析装置と、
を有する血液状態解析システム。
(10)
前記電気的特性測定装置での測定結果および/または前記血液状態解析装置での解析結果を記憶するサーバーを備える(9)記載の血液状態解析システム。
(11)
前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置および/または前記血液状態解析装置と接続されている(10)記載の血液状態解析システム。
(12)
少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する方法であって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌工程を行う電気的特性測定方法。
(13)
少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性の測定に用いるプログラムであって、
前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌機能をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラム。
1 電気的特性測定装置
11 撹拌部
12 分注機構
13 温度制御部
14 測定部
15 血液状態解析部
16 記憶部
10 血液状態解析システム
101 血液状態解析装置
102 サーバー
103 表示部
104 ユーザーインターフェース
I 撹拌工程
II 分注工程
III 温度制御工程
IV 測定工程
V 血液状態解析工程
VI 記憶工程

Claims (13)

  1. 少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する装置であって、
    前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置。
  2. 前記撹拌部では、ピペッティングによる撹拌が行われる請求項1記載の電気的特性測定装置。
  3. 前記血液試料から測定用のサンプルを分注する分注機構を備える請求項1記載の電気的特性測定装置。
  4. 前記分注機構は、前記撹拌部としても機能する請求項3記載の電気的特性測定装置。
  5. 前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料の温度を制御する温度制御部を備える請求項1記載の電気的特性測定装置。
  6. 前記温度制御部における温度制御が行われている状態で、前記撹拌部における撹拌が行われる請求項5記載の電気的特性測定装置。
  7. 前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える請求項1記載の電気的特性測定装置。
  8. 前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備える請求項1記載の電気的特性測定装置。
  9. 少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の状態を解析するシステムであって、
    前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌部を備える電気的特性測定装置と、
    前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液の状態を解析する血液状態解析部を備える血液状態解析装置と、
    を有する血液状態解析システム。
  10. 前記電気的特性測定装置での測定結果および/または前記血液状態解析装置での解析結果を記憶するサーバーを備える請求項9記載の血液状態解析システム。
  11. 前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置および/または前記血液状態解析装置と接続されている請求項10記載の血液状態解析システム。
  12. 少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性を測定する方法であって、
    前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌工程を行う電気的特性測定方法。
  13. 少なくとも血球成分と血漿成分とを含む血液試料を用いて、該血液試料の電気的特性の測定に用いるプログラムであって、
    前記血液試料から測定用のサンプルが分注される前に、前記血液試料を撹拌する撹拌機能をコンピューターに実現させるための電気的特性測定用プログラム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018136167A (ja) * 2017-02-21 2018-08-30 ソニー株式会社 電気的測定用カートリッジ、電気的測定装置及び電気的測定方法

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