JP2016044993A - ヒストン化学修飾判定による癌診断方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】過酸化銀を含む銀酸化物のマイナス電荷に帯電するメソ結晶領域を有するバイオチップを用意し、該バイオチップのメソ結晶領域に血清又は生体試料液を滴下し、試料中の正電荷を有するメチル化DNAが巻き付いたヒストンを選択的に吸着し、吸着したヒストン試料に対しマッピング測定方式でレーザー照射してそこからのラマン散乱光を検知し、試料のGバンドおよびDバンドのピーク数を検出するとともに、アセチル化に基づくアミド結合のピークを検出することを特徴とする癌疾病を判断する。
【選択図】図20
Description
詳しくは、金属錯体の水溶液中の濃度は主として形成する量子結晶のサイズを考慮して決定すべきであり、分散剤を使用するときはその濃度をも考慮するのがよく、通常、100ppmから5000ppmの範囲で使用できるが、配位子の機能にも依存してナノクラスタというべきナノサイズを調製するには500から2000ppmの濃度が好ましい。量子結晶を形成する金属錯体は担持金属の電極電位Eと相関する式(I)で示される錯体安定度定数(logβ)以上を有するように選択される。
式(I):E゜= (RT/|Z|F)ln(βi)
(ここでE゜は、標準電極電位、Rは、気体定数、Tは、絶対温度、Zは、イオン価、Fは、ファラデー定数を表す。)
ここで、金属錯体が、Au、Ag、PtまたはPdから選ばれるプラズモン金属の錯体である場合は、ラマン光に対して局在表面プラズモン共鳴増強効果を有する。特に、金属錯体が銀錯体であるときは、安定度定数(生成定数)(log βi)が8以上の銀錯化剤とハロゲン化銀との反応により形成されるのがよく、ハロゲン化銀としては塩化銀が好ましく、錯化剤としてはチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、チオ尿素、ヨウ化カリ、チオサリチル酸塩、チオシアヌル酸塩から選ばれる1種であるのが好ましい。銀錯体は平均直径が5〜20nmであるナノクラスタからなる量子ドットを有し、量子結晶のサイズが100〜200nmとなる。
Na2S2O3+4NaClO+H2O →Na2SO4+H2SO4+4NaCl
Ag+ + NaCl → AgCl + Na+
Ag+ + 3NaOCl → 2AgCl + NaClO3 + 2Na+
Ag+ + OH- → AgOH
2Ag++ 2OH → Ag2O +H2O (米国特許第4478943号参照)
式(I):E゜ = (RT/|Z|F)ln(βi)
(ここでE゜は、標準電極電位、Rは、気体定数、Tは、絶対温度、Zは、イオン価、Fは、ファラデー定数を表す。)
本発明において、金属錯体が、Au、Ag、PtまたはPdから選ばれるプラズモン金属の錯体である場合は、ラマン光に対して表面プラズモン共鳴増強効果を有する。
(実施例1)
図4に示すように、チオ硫酸銀1000ppm水溶液を調製し、その1滴をりん青銅板上に滴下し、約3分間放置し、溶液を吹き飛ばすと、右横のSEM像を示す量子結晶が作成されていた。
図5は実施例1で製造したナノ粒子凝集体(量子結晶)の各種SEM像を示す写真であり、図6はナノ粒子の拡大SEM像を示す。100nm前後の薄い六角柱状結晶であって、表面に数nmオーダの凹凸が発現している。金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できなかった。
図7はりん青銅坂上に滴下後の放置時間と量子結晶形状の関係を示す写真である。まず、六角形の量子結晶が生成し、形状を維持しつつ成長するのが認められる。
図8は量子結晶のEDSスペクトル(元素分析)の結果を示すグラフである。りん青銅板上に形成された結晶は銀及び錯体配位子由来の元素を検出したが、銅板上にチオ硫酸銀1000ppm水溶液を調製し、その1滴を滴下し、約3分間放置し、溶液を吹き飛ばした場合は、銀のみを検出したに過ぎなかった。
量子結晶は1000ppmチオ硫酸銀錯体水溶液の場合、りん青銅板上に滴下して3分間放置すると、100nm前後の六角柱状に形成され、各六角柱状の量子結晶は数nmオーダの凹凸を持つことがSEM像から確認された(図4、図5及び図6)が、金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できず、EDS元素分析で銀及び錯体配位子由来の元素を検出されたため、全体は銀錯体のナノ結晶であって、その表面に現れる凹凸は錯体中の銀がクラスタとして量子ドットを形成して広がっていると推測される。本発明の銀錯体量子結晶がりん青銅板上に形成される一方、銅基板上には銀のみのナノ粒子が析出する現象を見ると、チオ硫酸銀錯体の平衡電位が0.33で銅の電極電位(0.34)と同等であるため、銅基板上には銀(0.80)のみが析出し、りん青銅の場合は0.22と電極電位がわずかに卑であるため、銀錯体の結晶が析出したものと思われる。したがって、量子結晶を作成するためには1)錯体水溶液が500〜2000ppmという希薄な領域であること、2)金属錯体水溶液の平衡電位に対し担持金属の電極電位がわずかに卑であること、3)電極電位差で金属錯体が凝集させることが重要であると思われる。また、1000ppmチオ尿素銀錯体水溶液を使用した場合も同様であった。
実施例1で調整したりん青銅板上のチオ硫酸銀量子結晶基板にpH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を滴下し、3分後水溶液を吹き飛ばし、その直後、胃癌患者12例から得られた血清を純粋で10倍希釈して調整した試料、大腸がん患者12例から得られた血清を純粋で10倍希釈して調整した試料および良性疾患患者12例から得られた血清を純粋で10倍調整した試料のそれぞれを633nmのレーザー光を照射してラマンスペクトルを測定した。胃がんおよび大腸がんの進行度とピーク上昇値およびピーク積分値との間には相関関係が認められるということができる。また、胃がんの場合、ラマンスペクトルはレーザー照射後1分後に、大腸がんの場合はレーザー照射後2〜3分後にラマンスペクトルにピークが発現した。また、Dは胃癌、大腸がん、良性疾患試料のラマン散乱ピーク上昇値の比較を示すグラフである。良性疾患患者に対し、胃癌試料および大腸がん試料のピークは有意に高いことが認められる。胃癌試料と大腸がん試料とはピーク上昇値では差を見つけるのが困難であるということができるが、ピーク発現時間およびピーク積分値を考慮すると、両者のがん同定は可能であるということができる。
上記過酸化銀を含む銀酸化物のメソ結晶基板を用い、図15に示す通り、試料マッピング法による試料中の炭素由来の結晶化量の測定方法を上記と同じラマン分光条件で行った。
良性疾患患者12例から選ばれた3例の血清を純水で10倍希釈して調整した試料の1mm四方を縦横10×10回マッピングして得られるラマンスペクトルに現れるGバンドおよびDバンドのピーク出現回数を図16に示す。
他方、大腸がん患者12例から選ばれた3例の血清を純水で10倍希釈して調整した試料の1mm四方を縦横10×10回マッピングして得られるラマンスペクトルに現れるGバンドおよびDバンドのピーク出現回数を図17に示す。さらに、胃癌患者12例から選ばれた3例の血清を純水で10倍希釈して調整した試料の1mm四方を縦横10×10回マッピングして得られるラマンスペクトルに現れるGバンドおよびDバンドのピーク出現回数を図18に示す。上記ピークは強度300を超えたものとした。ピーク出現回数は病理検査の癌進行度と相関性を示した。
上記過酸化銀を含む銀酸化物のメソ結晶基板を用い、図15に示す通り、試料マッピング法による試料中の炭素由来の結晶化量の測定方法を上記と同じラマン分光条件で行うと、各マッピングのラマン分光において、非共鳴ラマンのヒストン炭素結晶波形を示す場合(図19左図)と、共鳴ラマンのヒストン炭素および不純物結晶波形を示す場合がある。この両者の比較により共鳴ラマン効果によりDバンド付近の指紋領域といわれる領域の波形によりヒストンの各種化学修飾の判定が可能であることがわかる。胃癌G16のマッピング中にヒストンのGバンドおよびDバンド以外に指紋領域に種々のピークが検出される。特に、950cm−1付近にピークが認められる場合の共鳴ラマンスペクトルは、術前の腫瘍マーカーでは陰性であったが、術後の病理診断では、転移が認められル結果と一致した。これは950cm−1付近で示されるアミド結合のピークの存在はヒストンのアセチル化を示し、転移の兆候が検出されていることを示す。
上記量子結晶基板に5%次亜塩素酸ソーダ水溶液を滴下して2分間処理して除去すると図12に示す結晶構造が見られ、針状の結晶とラクビーボール状の塊と大きい塊が見られたので、それぞれの組成をEDSスペクトル(元素分析)で分析すると、以下の反応式から針状の結晶はともに塩化銀と酸化銀の複合結晶からなるものと考えられるが、図12の結果は塩素は確認できず、銀と酸素が支配的であることがわかる。
Na2S2O3+4NaClO+H2O →Na2SO4+H2SO4+4NaCl (1)
Ag+ + NaCl → AgCl + Na+ (2)
Ag+ + 3NaOCl → 2AgCl + NaClO3 + 2Na+ (3)
Ag+ + OH- → AgOH (4)
2Ag++ 2OH → Ag2O +H2O (5)
したがって、本発明に係るメソ結晶の形成には銀イオンとチオ硫酸イオンが塩素イオンの存在下にアルカリ酸化反応により生ずるものと思われるが、通常の水溶液中では酸化銀が形成されるに過ぎないが、以下のXPS測定から過酸化銀が支配的に形成されていると推測される。
XPS測定:
上記量子結晶基板に次亜塩素酸ナトリウム水溶液25μlを2分間滴下し、再結晶基板を作り、エッチングせずそのまま(使用機種: アルバック・ファイ(株)/PHI5000 Versa Probe II(走査型X線光電子分光分析装置))でAgとOとをXPS測定した。また、比較対象のため、酸化銀の粉と塩化銀の粉のAgを測定した。他方、再結晶基板をアルゴンガスクラスターイオン銃で5分間エッチングしてAgとOをXPS測定した。図13及び図14のXPS測定結果を図12に基づくEDSの結果から推測すると、529eV付近のピークは過酸化銀(AgO)に由来するOピークで、530eV付近のピークは酸化銀(Ag2O)に由来するOピークであると認められる。エッチングした場合に、酸素量は減少するが、529eV付近のピークの過酸化銀(AgO)に由来するOピークが、530eV付近のピークは酸化銀(Ag2O)に由来するOピークよりも大きいことは基板近傍に過酸化銀が形成されているのを物語るものといえる。これは、メソ結晶形成時の触媒作用と基板の電極電位が影響しているものと推測される。
なお、EDS測定は上記再結晶基板を使用機種: 日本電子株式会社/JSM-7001F(電界放出形分析走査電子顕微鏡)を用いて行った。
また、チオ硫酸銀の量子結晶を次亜塩素酸水溶液、0.01規定苛性ソーダ水溶液、0.01規定塩酸水溶液、0.1モル炭酸ナトリウム水溶液で処理しても同様の結果は得られなかった。よって、この針状結晶の形成には銀イオンとチオ硫酸イオンの存在下に上記反応により生ずるものと思われる。酸化銀は水溶液中で負電荷を帯び、光により還元されて金属銀を析出させる。過酸化銀はその傾向が顕著なので、正電荷の癌関連物質を吸着し、しかも吸着した癌関連物質と銀粒子との間の表面プラズモン増強効果が得られるものと思われる。
Claims (3)
- 過酸化銀を含む銀酸化物からなり、マイナス電荷に帯電するメソ結晶領域を有するバイオチップを用意し、該バイオチップのメソ結晶領域に血清又は生体試料液を滴下し、試料中のメチル化DNAが巻き付いた正電荷を有するヒストンを選択的に吸着し、吸着したヒストン試料に対しマッピング測定方式でレーザー照射してそこからの各ラマン散乱光を検知し、試料の炭素GバンドおよびDバンドのピークの出現回数を検出し、試料のメチル化数としてピーク数により癌のステージを判定することを特徴とする血中のヒストン化学修飾状況に基づく癌判定方法。
- ラマン散乱光からアミド結合のピークを検出し、試料のアセチル化に基づくアミド基由来のピークとして、癌の転移の有無を判定する請求項1記載の判定方法。
- ラマン散乱光からDバンドの波形よりいわゆる指紋領域のヒストンテールの化学修飾状態を推定する請求項1の癌判定方法。
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