以下に図面を参照して、本発明にかかる通信装置および周波数管理方法の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
(実施の形態1にかかる通信装置)
図1は、実施の形態1にかかる通信装置の一例を示す図である。第1無線システム110および第2無線システム120は、互いに異なる無線通信システムである。アンテナ121は、第2無線システム120の無線送信に用いられるアンテナである。
図1において斜線を付したエリア130は、第1無線システム110と第2無線システム120とが混在する地域である。たとえば、エリア130は、第1無線システム110における信号受信が可能なエリアのうちの、第2無線システム120において送信される信号による無視できない干渉を受けるエリアである。
図1に示す通信装置140は、実施の形態1にかかる通信装置である。通信装置140は、第1無線システム110に割り当てられた周波数を第2無線システム120が使用可能か否かを判断する。また、通信装置140は、第1無線システム110に割り当てられた周波数の付近の周波数を第2無線システム120が使用可能か否かを判断してもよい。たとえば、通信装置140は、推定部141と、判断部142と、を備える。
推定部141は、エリア130において測定された、第2無線システム120のアンテナ121から送信された信号の受信電力に基づいて、アンテナ121から送信された信号の伝播減衰特性(伝播減衰モデル)を導出する。たとえば、推定部141は、アンテナ121からの送信電力と、測定された受信電力と、受信電力の測定位置とアンテナ121との間の距離と、に基づいて、アンテナ121からの距離に対する、アンテナ121からの信号の電力の伝播減衰特性を導出する。
そして、推定部141は、導出した伝播減衰特性に基づいて、エリア130に含まれる所定位置131における、アンテナ121からの信号の伝播減衰量を推定する。たとえば、推定部141は、伝播減衰特性と、所定位置131とアンテナ121との間の距離と、に基づいて、所定位置131におけるアンテナ121からの信号の伝播減衰量を推定する。推定部141は、推定した伝播減衰量を判断部142へ通知する。所定位置131は、一例としては、第1無線システム110において信号の受信を行う通信装置が設けられる位置である。
判断部142は、推定部141から通知された伝播減衰量に基づいて、第1無線システム110に割り当てられた周波数または該周波数の付近の周波数を第2無線システム120が使用可能か否かの判断を行う。なお、第1無線システム110に割り当てられた周波数は、第1無線システム110が使用中の周波数であってもよいし、第1無線システム110が使用中でない周波数であってもよい。
このように、実施の形態1によれば、第2無線システム120からの信号のエリア130における実測結果から導出した伝播減衰特性に基づいて第2無線システム120の信号の伝播減衰量を推定することができる。これにより、実際に周波数が共用されるエリア130の環境に応じて伝播減衰量を精度よく推定することができる。そして、精度よく推定した伝播減衰量を用いることで、第2無線システム120が共用周波数を使用可能か否かを精度よく判断することができる。これにより、第2無線システム120における周波数の利用効率の向上を図ることができる。
たとえば、第2無線システム120の信号の伝播減衰量の推定精度が低い場合は、第2無線システム120から第1無線システム110への干渉が許容値を超えるか否かの判断を精度よく行うことができない。このため、たとえば、第2無線システム120から第1無線システム110への干渉が許容値を大きく下回る共用周波数のみを使用可能と判断することになる。
これに対して、第2無線システム120の信号の伝播減衰量の推定精度が高い場合は、第2無線システム120から第1無線システム110への干渉が許容値を超えるか否かを精度よく判断することができる。これにより、より多くの共用周波数を使用可能と判断することができる。このため、第2無線システム120における周波数の利用効率の向上を図ることができる。
<判断結果の送信>
また、通信装置140は、推定部141および判断部142に加えて、判断部142による判断結果に関する情報を第2無線システム120へ送信する送信部を備えていてもよい。判断結果に関する情報は、判断結果を示す情報であってもよいし、判断結果に基づく、第2無線システム120が使用可能な周波数を示す情報であってもよい。
これにより、判断部142によって使用可能であると判断された周波数を用いて第2無線システム120が無線通信を行うことができる。判断部142による判断結果に関する情報の送信先は、たとえば、第2無線システム120における無線通信を制御する装置(たとえばマスタ装置)とすることができる。
<受信電力を示す情報の取得>
推定部141は、エリア130において測定された受信電力を示す情報を、たとえば、エリア130において該受信電力を測定した実測装置から、直接的または間接的に受信することによって取得することができる。
<判断部による判断>
判断部142は、たとえば、アンテナ121から送信される信号による所定位置131における第1無線システム110への干渉電力が所定電力を超えない場合は、対象の周波数を第2無線システム120が使用可能であると判断する。また、判断部142は、アンテナ121から送信される信号による所定位置131における干渉電力が所定電力を超える場合は、対象の周波数を第2無線システム120が使用可能でないと判断する。所定電力は、たとえば対象の周波数に応じて設定された電力である。
たとえば、判断部142は、アンテナ121からの信号の送信電力と、推定部141から通知された伝播減衰量と、に基づいて、アンテナ121から送信される信号による所定位置131における第1無線システム110への干渉電力を算出する。そして、判断部142は、算出した干渉電力が所定電力以下であるか否かを判断することにより、対象の周波数を第2無線システム120が使用可能か否かの判断を行う。
または、判断部142は、推定部141から通知された伝播減衰量と、所定電力と、に基づいて、第2無線システム120が対象の周波数を用いる場合に許容される最大の送信電力を算出してもよい。この場合は、判断部142は、算出した最大送信電力がアンテナ121からの信号の予定送信電力以上であるか否かを判断することにより、対象の周波数を第2無線システム120が使用可能か否かの判断を行う。
(実施の形態2)
(実施の形態2にかかる周波数管理装置の接続先)
図2は、実施の形態2にかかる周波数管理装置の接続先の一例を示す図である。図2に示す周波数管理装置210は、実施の形態2にかかる周波数管理装置である。周波数管理装置210は、周波数共用データベース220と、1次システムデータベース230と、2次システムマスタ装置241〜243と、に接続されている。
これらの接続は、有線通信による接続であってもよいし、無線通信による接続であってもよい。また、これらの接続は、直接的な接続であってもよいし、中継装置やネットワークなどを介した間接的な接続であってもよい。
たとえば、周波数管理装置210は、周波数共用データベース220から、1次システムと2次システムとの間で共用可能な周波数帯域に関する周波数共用情報を取得する。周波数共用情報は、たとえば1次システムと2次システムとの間で共用可能な周波数帯域を示す情報を含む。
また、周波数共用情報は、1次システムと2次システムとの間で周波数帯域を共用する場合のルール(共用ルール)を示す情報を含んでいてもよい。共用ルールは、一例としては、1次システムの受信アンテナにおける2次システムからの干渉電力が保護基準T[dBm]以下であるという条件とすることができる。
また、周波数管理装置210は、1次システムデータベース230から、1次システムに関する1次システム情報を取得する。1次システム情報は、たとえば、1次システムにおいて使用される周波数や、1次システムの受信アンテナの位置を示す情報が含まれる。
2次システムマスタ装置241〜243のそれぞれは、1次システムにおいて使用されている周波数を利用して無線通信を行う2次システムのマスタ装置である。2次システムのマスタ装置は、たとえば、2次システムの無線通信を制御する通信装置である。
たとえば、2次システムマスタ装置241は、自システムの送信アンテナの位置を示す位置情報と、自システムにおける無線送信の希望送信電力を示す希望送信電力情報と、を周波数管理装置210へ送信する。
これに対して、周波数管理装置210は、2次システムマスタ装置241が使用可能な周波数を示す使用可能周波数情報を2次システムマスタ装置241へ送信する。2次システムマスタ装置241は、周波数管理装置210から受信した使用可能周波数情報が示す周波数を使用して2次システムの無線通信を行う。2次システムマスタ装置241について説明したが、2次システムマスタ装置242,243についても同様である。
なお、周波数管理装置210の接続先は、図2に示したものに限らない。たとえば、周波数管理装置210に接続された2次システムマスタ装置は、3つの2次システムマスタ装置(2次システムマスタ装置241〜243)に限らず、1つまたは2つの2次システムマスタ装置や、4つ以上の2次システムマスタ装置であってもよい。
また、周波数共用データベース220と1次システムデータベース230とは同一の通信装置により実現されてもよい。また、周波数管理装置210は、周波数共用データベース220や1次システムデータベース230と同一の通信装置により実現されてもよい。
(実施の形態2にかかる周波数管理装置を適用した通信システム)
図3は、実施の形態2にかかる周波数管理装置を適用した通信システムの一例を示す図である。図3に示す通信システム300は、1次システム310と、2次システム320と、が混在する通信システムである。
1次システム310は、送信アンテナ311と、受信アンテナ312と、を含む。送信アンテナ311からは、1次システム310に割り当てられた周波数の信号が無線送信される。受信アンテナ312は、送信アンテナ311から無線送信された信号を受信する。希望信号313は、送信アンテナ311から受信アンテナ312への希望信号である。
1次システム310には、一例としては、テレビ放送システムを適用することができる。この場合は、送信アンテナ311は、たとえば放送局の送信所のアンテナである。また、受信アンテナ312は、たとえばテレビ受像機に接続されるアンテナである。テレビ受像機は、テレビ受信機能を有する携帯電話などであってもよい。ただし、1次システム310は、これらに限らず各種の無線通信システムを適用することができる。
2次システム320は、2次システムマスタ装置321と、送信アンテナ322と、受信アンテナ323と、を含む。2次システムマスタ装置321は、2次システム320における無線通信を制御するマスタ装置である。2次システムマスタ装置321は、たとえば図2に示した2次システムマスタ装置241〜243のいずれかである。
たとえば、2次システムマスタ装置321は、1次システム310に割り当てられた周波数の少なくとも一部を使用して、送信アンテナ322から信号を無線送信する。送信アンテナ322は、たとえば2次システムマスタ装置321に設けられたアンテナである。
受信アンテナ323は、2次システム320の受信アンテナである。たとえば、受信アンテナ323は、送信アンテナ322から無線送信された信号を受信する。希望信号324は、送信アンテナ322から受信アンテナ323への希望信号である。干渉信号325は、送信アンテナ322からの信号の無線送信による、2次システム320から1次システム310への干渉信号である。
2次システム320には、一例としては、たとえば空港などの限定されたエリアにおける放送型の通信や、無線LAN(Local Area Network:構内通信網)や、災害対応ロボットの制御用の通信などを適用することができる。ただし、2次システム320は、これらに限らず各種の無線通信システムを適用することができる。
図2に示した周波数管理装置210は、たとえば、2次システムマスタ装置321に接続され、2次システム320における信号の無線送信に用いる周波数を管理する。この場合は、たとえば、周波数管理装置210は、1次システムデータベース230(図2参照)から、1次システム310に関する1次システム情報を取得する。
図1に示した第1無線システム110および第2無線システム120は、たとえばそれぞれ1次システム310および2次システム320に適用することができる。この場合に、図1に示したアンテナ121は、たとえば送信アンテナ322により実現することができる。また、図1に示した通信装置140は、たとえば周波数管理装置210により実現することができる。
(周波数管理装置および2次システムマスタ装置の動作)
図4は、周波数管理装置および2次システムマスタ装置の動作の一例を示すシーケンス図である。周波数管理装置210および2次システムマスタ装置321は、2次システム320における無線通信に関して、たとえば図4に示す各ステップを実行する。
まず、2次システムマスタ装置321が、2次システム320において使用可能な周波数を要求する制御信号である周波数使用要求を周波数管理装置210へ送信する(ステップS401)。ステップS401によって送信される周波数使用要求には、たとえば2次システム320の送信アンテナ322の位置を示す位置情報が含まれる。また、周波数使用要求には、たとえば2次システム320における無線送信における希望送信電力を示す希望送信電力情報が含まれていてもよい。
つぎに、周波数管理装置210が、2次システム320に使用を許可する周波数を判定する使用許可判定処理を行う(ステップS402)。使用許可判定処理は、たとえばステップS401によって送信された周波数使用要求に含まれる位置情報や希望送信電力情報を用いて行われる。また、使用許可判定処理は、周波数管理装置210が周波数共用データベース220から取得した周波数共用情報や、周波数管理装置210が1次システムデータベース230から取得した1次システム情報も用いて行われる。
つぎに、周波数管理装置210が、ステップS402によって判定した、2次システム320に使用を許可する周波数を示す使用可能周波数情報を2次システムマスタ装置321へ送信する(ステップS403)。なお、周波数管理装置210は、ステップS401によって送信された周波数使用要求に希望送信電力情報が含まれていない場合は、周波数ごとの最大被許容送信電力も使用可能周波数情報によって2次システムマスタ装置321へ通知するようにしてもよい。
これにより、2次システム320は、ステップS403によって送信された使用可能周波数情報が示す周波数によって無線通信が可能になる。また、2次システムマスタ装置321は、2次システム320における周波数の使用状況を報告する周波数使用状況報告情報を周波数管理装置210へ送信する(ステップS404)。
つぎに、周波数管理装置210が、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける、送信アンテナ322からの信号の受信電力の実測結果の送信を要求する制御信号である実測結果要求を送信する(ステップS405)。このとき、周波数管理装置210は、実測結果を送信すれば、より柔軟に周波数を選択できる可能性があることを実測結果要求によって2次システムマスタ装置321へ通知してもよい。
つぎに、2次システムマスタ装置321が、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける、送信アンテナ322からの信号の受信電力の実測結果を周波数管理装置210へ送信する(ステップS406)。
たとえば、2次システムマスタ装置321は、2次システム320における後述の実測装置による実測結果を収集し、収集した実測結果を送信する。この場合の実測結果の収集は、ステップS406において行われてもよいし、ステップS406より前に行われていてもよい。また、2次システムマスタ装置321は、2次システム320における後述の実測装置から、2次システムマスタ装置321を経由せずに、ネットワークなどを介して周波数管理装置210へ実測結果を送信させるように実測装置を制御してもよい。
つぎに、周波数管理装置210は、2次システム320における伝播減衰の推定を行う(ステップS407)。伝播減衰の推定は、たとえば送信アンテナ322からの距離と、送信アンテナ322からの信号の受信電力と、の関係を示す関数(伝播減衰曲線)の推定である。伝播減衰の推定については後述する。
つぎに、周波数管理装置210は、ステップS407による伝播減衰の推定結果に基づいて、2次システム320に使用を許可する周波数を判定する使用許可判定処理を行う(ステップS408)。ステップS408による使用許可判定処理は、たとえばステップS402による使用許可判定処理と同様であるが、さらにステップS407による伝播減衰の推定結果も用いて行われる。
つぎに、周波数管理装置210が、ステップS408によって判定した、2次システム320に使用を許可する周波数を示す使用可能周波数情報を2次システムマスタ装置321へ送信する(ステップS409)。
これにより、2次システム320は、ステップS409によって送信された使用可能周波数情報が示す周波数によって無線通信が可能になる。また、2次システムマスタ装置321は、2次システム320における周波数の使用状況を報告する周波数使用状況報告情報を周波数管理装置210へ送信する(ステップS410)。
ただし、周波数管理装置210および2次システムマスタ装置321の動作は、図4に示した動作に限らない。たとえば、ステップS401において、2次システムマスタ装置321は、周波数使用要求とともに上述した実測結果を送信するようにしてもよい。この場合は、ステップS402〜S406を省いてもよい。また、ステップS404やステップS410による周波数使用状況報告情報の送信は行わないようにしてもよい。
(周波数管理装置)
図5Aは、周波数管理装置の一例を示す図である。図5Bは、図5Aに示した周波数管理装置における信号の流れの一例を示す図である。図5A,図5Bに示すように、周波数管理装置210は、共用情報取得部501と、実測結果取得部502と、伝播減衰曲線導出部503と、最大被許容送信電力算出部504と、を備える。また、周波数管理装置210は、周波数2次利用情報データベース505と、2次システムマスタ装置通信部506と、2次利用可能周波数情報管理部507と、を備える。
共用情報取得部501は、周波数共用データベース220(図2参照)から、1次システム310と2次システム320との間で共用可能な周波数帯域に関する周波数共用情報を取得する。また、共用情報取得部501は、1次システムデータベース230(図2参照)から、1次システム310に関する1次システム情報を取得する。そして、共用情報取得部501は、取得した周波数共用情報および1次システム情報を最大被許容送信電力算出部504へ出力する。
実測結果取得部502は、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける実測結果であって、送信アンテナ322からの信号の受信電力の実測結果を取得する。たとえば、実測結果取得部502は、2次システム320の実測装置から実測結果を取得する。または、実測結果取得部502は、2次システム320の2次システムマスタ装置321から実測結果を取得する。そして、実測結果取得部502は、取得した実測結果を伝播減衰曲線導出部503へ出力する。
伝播減衰曲線導出部503は、実測結果取得部502から出力された実測結果に基づいて、送信アンテナ322からの距離に対する、送信アンテナ322からの信号の受信電力の特性を推定する。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、伝播減衰曲線を算出する。伝播減衰曲線は、たとえば送信アンテナ322からの距離と、送信アンテナ322からの信号の受信電力と、の関係を示す関数である。伝播減衰曲線導出部503による伝播減衰曲線の算出については後述する。伝播減衰曲線導出部503は、算出した伝播減衰曲線を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。
最大被許容送信電力算出部504は、共用情報取得部501から出力された周波数共用情報および1次システム情報と、伝播減衰曲線導出部503から出力された伝播減衰曲線と、に基づいて最大被許容送信電力を算出する。最大被許容送信電力は、1次システム310に割り当てられた周波数を2次システム320が使用する場合に許容される2次システム320の最大の送信電力である。
たとえば、最大被許容送信電力算出部504は、周波数共用情報が示す1次システム310の保護基準(たとえば上述した保護基準T)と、1次システム情報が示す1次システム310の受信アンテナ312の位置と、に基づいて最大被許容送信電力を算出する。
また、最大被許容送信電力算出部504は、2次システム320の送信アンテナ322(送信点)の周波数ごとの最大被許容送信電力を算出する。そして、最大被許容送信電力算出部504は、算出した最大被許容送信電力を周波数2次利用情報データベース505へ出力する。最大被許容送信電力算出部504による最大被許容送信電力の算出については後述する。
周波数2次利用情報データベース505は、2次システムの送信位置(たとえば2次システム320の送信アンテナ322の位置)ごとに、最大被許容送信電力算出部504から出力された周波数ごとの最大被許容送信電力を格納する。また、周波数2次利用情報データベース505は、最大被許容送信電力算出部504によって新たに最大被許容送信電力が算出されるごとに、格納する最大被許容送信電力を更新することで、常に最新の最大被許容送信電力を格納する。
2次システムマスタ装置通信部506は、2次システムマスタ装置321との間で通信を行う。たとえば、2次システムマスタ装置通信部506は、2次システムマスタ装置321から送信された周波数使用要求を受信し、受信した周波数使用要求を2次利用可能周波数情報管理部507へ出力する。また、2次システムマスタ装置通信部506は、2次利用可能周波数情報管理部507から出力された使用可能周波数情報を2次システムマスタ装置321へ送信する。
2次利用可能周波数情報管理部507は、2次システム320からの要求に基づく情報提供を行う。たとえば、2次利用可能周波数情報管理部507は、2次システムマスタ装置321からの周波数使用要求が2次システムマスタ装置通信部506から出力されると、2次システム320に使用を許可する周波数を判定する。
たとえば、2次利用可能周波数情報管理部507は、周波数使用要求に含まれる位置情報に該当する周波数ごとの最大被許容送信電力を周波数2次利用情報データベース505から取得する。そして、2次利用可能周波数情報管理部507は、取得した周波数ごとの最大被許容送信電力のうちの、周波数使用要求に含まれる希望送信電力情報が示す希望送信電力以上の最大被許容送信電力に対応する周波数を、使用を許可する周波数として判定する。
2次利用可能周波数情報管理部507は、2次システム320に使用を許可する周波数の判定結果を示す、2次システムマスタ装置321への使用可能周波数情報を2次システムマスタ装置通信部506へ出力する。
図1に示した推定部141は、たとえば伝播減衰曲線導出部503および最大被許容送信電力算出部504により実現することができる。図1に示した判断部142は、たとえば最大被許容送信電力算出部504、周波数2次利用情報データベース505および2次利用可能周波数情報管理部507により実現することができる。また、使用許可判定処理の結果を2次システム320へ送信する送信部は、たとえば2次システムマスタ装置通信部506により実現することができる。
(最大被許容送信電力の算出)
最大被許容送信電力算出部504による最大被許容送信電力の算出について説明する。2次システム320から1次システム310への干渉電力Uは、たとえば下記(1)式によって表すことができる。
U=Ps+G2+G1−L(^h,^k) …(1)
上記(1)式において、Psは、2次システム320の送信アンテナ322からの送信電力[dBm]である。G1は、1次システム310の受信アンテナ312の指向性によるアンテナゲインである。G2は、2次システム320の送信アンテナ322の指向性によるアンテナゲインである。
L(h,k)は、2次システム320の送信アンテナ322から1次システム310の受信アンテナ312までの伝播減衰[dB]である。^hは、1次システム310の受信アンテナ312の位置である。^kは、2次システム320の送信アンテナ322の位置である。伝播減衰L(h,k)は、伝播減衰曲線導出部503から最大被許容送信電力算出部504へ通知される伝播減衰曲線に基づいて算出することができる。
最大被許容送信電力算出部504は、2次システム320の最大被許容送信電力Ps,mxを、たとえば下記(2)式によって算出することができる。下記(2)式は、干渉電力Uを保護基準Tに置き換えて上記(1)式を変形することによって導出される。保護基準Tは、たとえば周波数共用情報に含まれる共用ルールに含まれる。
Ps,mx=L(^h,^k)−G1−G2+T …(2)
<1次システム310の受信アンテナ312が複数存在する場合>
1次システム310の受信アンテナ312(所定位置)が複数存在する場合は、最大被許容送信電力算出部504は、たとえば、複数の受信アンテナ312のうちの伝播減衰量L(^h,^k)が最も小さい受信アンテナ312を特定する。
そして、最大被許容送信電力算出部504は、特定した受信アンテナ312について上記(2)式の演算を行うことで、最大被許容送信電力Ps,mxを算出する。これにより、2次システム320からの干渉が最大となる受信アンテナ312を基準として最大被許容送信電力Ps,mxを算出し、2次システム320から1次システム310への最大の干渉を抑えることができる。
<1次システム310の受信アンテナ312の位置を把握できない場合>
また、1次システム310の受信アンテナ312の位置を把握できない場合は、最大被許容送信電力算出部504は、たとえば、1次システム310のサービスエリア全体を複数のエリア(たとえば格子状のエリア)に分割する。また、最大被許容送信電力算出部504は、分割した各分割エリアのそれぞれに受信アンテナ312があると仮定した場合の伝播減衰量L(^h,^k)を取得し、伝播減衰量L(^h,^k)が最も小さい分割エリアを特定する。
そして、最大被許容送信電力算出部504は、特定した分割エリアに受信アンテナ312がある場合について上記(2)式の演算を行うことで、最大被許容送信電力Ps,mxを算出する。これにより、受信アンテナ312の位置を把握できなくても、2次システム320からの干渉が最大となる場合を基準として最大被許容送信電力Ps,mxを算出し、2次システム320から1次システム310への干渉を抑えることができる。
<1次システム310において使用される周波数が複数存在する場合>
1次システム310において使用される周波数が複数存在する場合は、最大被許容送信電力算出部504は、たとえば、1次システム310において使用される周波数ごとに最大被許容送信電力Ps,mxを算出する。1次システム310において使用される周波数が複数存在する場合とは、たとえば、1次システム310において送信アンテナ311が複数存在し、複数の送信アンテナ311においてそれぞれ異なる周波数が使用されている場合である。
<2次システム320の希望送信電力が決まっている場合>
たとえば、2次システムマスタ装置321から周波数管理装置210へ送信された周波数使用要求に希望送信電力情報が含まれている場合は、2次システム320の希望送信電力が決まっている。この場合は、最大被許容送信電力算出部504は、最大被許容送信電力Ps,mxが希望送信電力より大きい周波数を、2次システム320において使用可能な周波数として決定する。
<送信信号の周波数の付近の周波数を考慮した最大被許容送信電力の算出>
2次システム320からの信号の無線送信は、無線送信に使用される周波数fiにおいて1次システム310への干渉電力を発生させるだけでなく、周波数fiの付近の周波数fi±jにおいても漏えい電力を発生させる。
これに対して、最大被許容送信電力算出部504は、周波数fi±jにおける漏えい電力を考慮して最大被許容送信電力を算出してもよい。たとえば、最大被許容送信電力算出部504は、上記(2)式を拡張した下記(3)式によって2次システム320の最大被許容送信電力Ps,mxを算出してもよい。
Ps,mx=minj{L(^hi+j,^k)−G1−G2+Ti+j+Vi+j}…(3)
上記(3)式において、周波数fi+jも周波数fiと同様に共用周波数であり、周波数fiにおける送信電力に対する周波数fi+jへの漏えい電力の比がVi+jであるとする。また、Vi=0である。
また、^hi+jは、周波数fi+jを使用する1次システムの受信アンテナの位置である。Ti+jは、周波数fi+jを使用する1次システムについての保護基準Tである。周波数fi+jを使用する1次システムは、1次システム310であってもよいし、1次システム310とは異なる1次システムであってもよい。
(周波数管理装置のハードウェア構成)
図5Cは、周波数管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図5A,図5Bに示した周波数管理装置210は、たとえば図5Cに示す情報処理装置530により実現することができる。情報処理装置530は、プロセッサ531と、主記憶装置532と、補助記憶装置533と、ネットワークインタフェース534と、を備える。プロセッサ531、主記憶装置532、補助記憶装置533およびネットワークインタフェース534は、バス539によって接続される。
プロセッサ531は、情報処理装置530の全体の制御を司る。プロセッサ531は、たとえばCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)により実現することができる。
主記憶装置532は、たとえばプロセッサ531のワークエリアとして使用される。主記憶装置532は、たとえばRAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)により実現することができる。
補助記憶装置533は、たとえば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発メモリである。補助記憶装置533には、情報処理装置530を動作させる各種のプログラムが記憶される。補助記憶装置533に記憶されたプログラムは、主記憶装置532にロードされてプロセッサ531によって実行される。
ネットワークインタフェース534は、たとえば、無線や有線によって情報処理装置530の外部(たとえば周波数共用データベース220、1次システムデータベース230、2次システムマスタ装置321など)との間で通信を行う通信インタフェースである。ネットワークインタフェース534は、プロセッサ531によって制御される。
図5A,図5Bに示した共用情報取得部501および実測結果取得部502は、たとえばネットワークインタフェース534により実現することができる。図5A,図5Bに示した伝播減衰曲線導出部503、最大被許容送信電力算出部504および2次利用可能周波数情報管理部507は、たとえばプロセッサ531により実現することができる。図5A,図5Bに示した周波数2次利用情報データベース505は、たとえば主記憶装置532や補助記憶装置533により実現することができる。
(2次システムマスタ装置の構成)
図6Aは、2次システムマスタ装置の構成の一例を示す図である。図6Bは、図6Aに示した2次システムマスタ装置の構成における信号の流れの一例を示す図である。図6A,図6Bに示すように、2次システムマスタ装置321は、たとえば、2次システム通信部601と、周波数管理装置通信部602と、制御部603と、位置情報取得部604と、を備える。
2次システム通信部601は、2次システム320の無線通信を行う。図3に示した送信アンテナ322は、たとえば2次システム通信部601に含まれる。たとえば、2次システム通信部601は、制御部603からの制御により、図3に示した受信アンテナ323へ信号を無線送信する。また、2次システム通信部601は、2次システム320の他の通信装置から無線送信された信号を受信し、受信した信号を制御部603へ出力する。
周波数管理装置通信部602は、周波数管理装置210との間で通信を行う。たとえば、周波数管理装置通信部602は、制御部603から出力された周波数使用要求を周波数管理装置210へ送信する。また、周波数管理装置通信部602は、使用可能周波数情報を周波数管理装置210から受信する。そして、周波数管理装置通信部602は、受信した使用可能周波数情報を制御部603へ出力する。
制御部603は、2次システム通信部601および周波数管理装置通信部602の制御を行う。たとえば、制御部603は、2次システム通信部601による2次システム320の通信を行う場合に、周波数管理装置210への周波数使用要求を周波数管理装置通信部602へ出力する。このとき、制御部603は、位置情報取得部604から出力された位置情報を周波数使用要求に含めてもよい。
また、制御部603は、周波数使用要求に対する周波数管理装置210からの使用可能周波数情報が周波数管理装置通信部602から出力されると、使用可能周波数情報が示す周波数によって無線送信を行うように2次システム通信部601を制御する。
位置情報取得部604は、2次システムマスタ装置321(送信アンテナ322)の位置を示す位置情報を取得し、取得した位置情報を制御部603へ出力する。たとえば、位置情報取得部604は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いて位置情報を取得することができる。
(2次システムマスタ装置のハードウェア構成)
図6Cは、2次システムマスタ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図6A,図6Bに示した2次システムマスタ装置321は、たとえば図6Cに示す情報処理装置630により実現することができる。情報処理装置630は、プロセッサ631と、主記憶装置632と、補助記憶装置633と、ネットワークインタフェース634と、位置測定装置635と、無線機636と、を備える。プロセッサ631、主記憶装置632、補助記憶装置633、ネットワークインタフェース634、位置測定装置635および無線機636は、バス639によって接続される。
プロセッサ631は、情報処理装置630の全体の制御を司る。プロセッサ631は、たとえばCPUにより実現することができる。主記憶装置632は、たとえばプロセッサ631のワークエリアとして使用される。主記憶装置632は、たとえばRAMにより実現することができる。
補助記憶装置633は、たとえば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発メモリである。補助記憶装置633には、情報処理装置630を動作させる各種のプログラムが記憶される。補助記憶装置633に記憶されたプログラムは、主記憶装置632にロードされてプロセッサ631によって実行される。
ネットワークインタフェース634は、たとえば、無線や有線によって情報処理装置630の外部(たとえば周波数管理装置210)との間で通信を行う通信インタフェースである。ネットワークインタフェース634は、プロセッサ631によって制御される。
位置測定装置635は、周波数管理装置210の位置を測定する。位置測定装置635には、たとえばGPSを利用する位置測定装置を用いることができる。ただし、位置測定装置635には、GPSに限らず、無線LANを利用した位置測定装置など、各種の位置測定装置を用いることができる。
無線機636は、無線により情報処理装置630の外部との間で通信を行う通信インタフェースである。情報処理装置630の外部は、たとえば、受信アンテナ323や、2次システム320における2次システムマスタ装置321と異なる通信装置の送信アンテナである。図3に示した送信アンテナ322は、たとえば無線機636に含まれる。無線機636は、プロセッサ631によって制御される。
図6A,図6Bに示した2次システム通信部601は、たとえば無線機636により実現することができる。図6A,図6Bに示した周波数管理装置通信部602は、たとえばネットワークインタフェース634により実現することができる。図6A,図6Bに示した制御部603は、たとえばプロセッサ531により実現することができる。図6A,図6Bに示した位置情報取得部604は、たとえば位置測定装置635により実現することができる。
(実測装置による実測)
上述したように、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける実測装置により、2次システム320の送信アンテナ322からの信号の受信電力が測定される。たとえば、実測装置は、受信アンテナ312と送信アンテナ322との間の位置の付近において受信電力を測定する。
実測装置は、たとえば、受信アンテナ312と送信アンテナ322との間の位置の付近において受信電力を測定する専用の実測装置である。または、実測装置は、たとえば1次システム310や2次システム320に含まれる通信装置であってもよい。
実測装置が受信電力を測定する送信アンテナ322からの信号には、1次システム310への干渉が発生しない信号を用いることができる。たとえば、実測装置が受信電力を測定する送信アンテナ322からの信号には、たとえば測定専用の周波数の信号を用いることができる。
また、2次システム320において第1周波数による無線通信が行われており、周波数管理装置210へ周波数使用要求を送信することによって新たな第2周波数を要求する場合について説明する。この場合は、実測装置が受信電力を測定する送信アンテナ322からの信号には、たとえば第1周波数の信号を用いることができる。なお、第1周波数は、2次システム320の専用周波数であってもよいし、1次システム310と2次システム320との共用周波数であってもよい。
また、1次システム310が動作していない時間帯(たとえば夜間)においては、実測装置が受信電力を測定する送信アンテナ322からの信号には、1次システム310が動作する場合に使用する周波数を含む任意の周波数の信号を用いることができる。
また、2次システム320の送信アンテナ322からの信号の受信電力の測定は、たとえば、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける複数の位置において行われる。複数の位置における測定は、たとえば、複数の位置に設けられた複数の実測装置による測定であってもよいし、実測装置を複数の位置に移動させながら行う測定であってもよい。
(実測装置による実測結果および伝播減衰曲線)
図7Aおよび図7Bは、実測装置による実測結果および伝播減衰曲線の例を示す図である。図7A,図7Bにおいて、横軸は、送信アンテナ322からの距離(対数)を示す。縦軸は、送信アンテナ322の送信電力がPnである場合の、送信アンテナ322から無線送信された信号の受信電力[dBm]を示す。
実測装置701,702…は、1次システム310と2次システム320との混在エリアに設けられ、送信アンテナ322から無線送信された信号を受信し、受信電力を測定する。そして、実測装置701,702…は、測定した受信電力と、自装置の位置(たとえば位置座標)と、を上述した実測結果として周波数管理装置210へ送信する。また、実測装置701,702…による実測結果は、2次システムマスタ装置321を介して周波数管理装置210へ送信されるようにしてもよい。
実測点群710は、実測装置701,702…による実測結果である。周波数管理装置210の伝播減衰曲線導出部503は、実測装置701,702…から収集した実測結果に基づいて実測点群710を算出する。測定限界740は、実測装置701,702…が測定可能な最小の受信電力を示している。
また、実測点群710は、実測装置701,702…から収集した実測結果に基づく実測点群の中から選別された実測点群であってもよい。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、実測装置701,702…から収集した実測結果に基づく実測点群を、送信アンテナ322からの距離に応じてグループ分けし、各グループから受信電力が上位10%の実測点群を選別した実測点群を実測点群710とする。
これにより、送信アンテナ322からの距離ごとに受信電力が大きい実測点を選別することができる。このように選別した実測点群710を用いることで、伝播減衰量を少なく見積もり、その結果、2次システム320から1次システム310への干渉を大きく見積もることができる。これにより、たとえば建物などの影響や僅かな実測位置の変化により実測結果に大きな誤差が生じても、2次システム320から1次システム310への干渉を抑える使用許可判定処理が可能になる。
図7Aに示す例では、送信アンテナ322と実測装置701,702…との間の距離と、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の距離と、の差が小さい。このため、送信アンテナ322から送信され受信アンテナ312によって受信される信号に近い実測点群710が得られている。
図7Bに示す例では、実測装置701,702…が送信アンテナ322と受信アンテナ312の中間点の付近に位置しており、送信アンテナ322から送信され、該中間点の付近へ到達する信号についての実測点群710が得られている。一方、図7Bに示す例では、実測装置701,702…が受信アンテナ312の付近に位置していないことにより、または実測装置701,702…の測定限界740により、受信アンテナ312によって受信される信号についての実測点群710は得られていない。
たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、実測装置701の位置に基づいて、実測装置701と送信アンテナ322との間の距離を算出する。そして、算出した距離と、実測装置701における受信電力と、をプロットすることにより、実測点群710のうちの実測装置701についての実測点を得ることができる。
また、伝播減衰曲線導出部503は、実測点群710に基づいて、伝播減衰曲線720を算出する。なお、図7A,図7Bにおいては横軸の距離が対数表示となっているため、伝播減衰曲線720が直線形状となっている。伝播減衰曲線720は、たとえば下記(4)式によって表すことができる。
y=a*log(x)+b …(4)
上記(4)式において、yは、送信アンテナ322から無線送信された信号の受信電力(縦軸)を示す。xは、送信アンテナ322からの距離(対数)を示す。伝播減衰曲線導出部503は、たとえば実測点群710に基づく最小二乗近似により上記(4)式の係数aおよび係数bを算出することで、伝播減衰曲線720を得ることができる。
yは、送信アンテナ322の送信電力がPnである場合の受信電力であるため、距離がdの場合の伝播減衰Ldは、下記(5)式によって算出することができる。
Ld=Pn−G2−(a*log(d)+b)−G1 …(5)
最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された伝播減衰曲線720の係数a,bおよび上記(5)式によって受信アンテナ312についての伝播減衰Ldを算出する。
図7Aに示した例においては、伝播減衰曲線720から算出された伝播減衰Ldを、たとえば上記(2)式のL(^h,^k)に代入することによって最大被許容送信電力Ps,mxを算出することができる。または、伝播減衰曲線720から算出された伝播減衰Ldを、たとえば上記(3)式のL(^hi+j,^k)に代入することによって最大被許容送信電力Ps,mxを算出することができる。
たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322と実測装置701,702…との間の距離d1と、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の距離d2と、の差d1−d2を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した差d1−d2が所定値以上(図7Aの場合)であれば、伝播減衰曲線720を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。
図7Bに示した例においては、伝播減衰曲線導出部503は、残りの部分区間について補間を行う。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、算出した差d1−d2が所定値未満(図7Bの場合)であれば、伝播減衰曲線720と、残りの部分区間について補間した伝播減衰曲線と、を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。また、伝播減衰曲線導出部503は、実測結果が得られた部分区間と残りの部分区間の伝播環境を比較することにより、補間に適した曲線を選択する。以下、図7Bに示した例における伝播減衰曲線の補間および最大被許容送信電力Ps,mxの算出について説明する。
(基準測定ポイント)
図8は、基準測定ポイントの一例を示す図である。図8において、図7Bと同様の部分については説明を省略する。図7Bに示したように、送信アンテナ322と受信アンテナ312の中間点の付近へ到達する信号についての実測点群710が得られている場合について説明する。
図8に示す基準測定ポイント801は、実測点群710のうちの、送信アンテナ322との間の距離が最も大きい実測点に対応する位置である。この場合は、実測点群710は、送信アンテナ322と基準測定ポイント801の間の部分区間Aにおける信号の実測点である。部分区間Bは、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間のうちの部分区間Aを除いた残余の区間である。
伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322から送信される信号について、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいか否かを判断し、判断結果に基づいて部分区間Bにおける伝播減衰曲線を決定する。つぎに、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいか否かの判断について説明する。
(基準建物占有率の算出)
図9は、基準建物占有率の算出の一例を示す図である。図9に示す基準点901は、送信アンテナ322の位置、基準測定ポイント801または受信アンテナ312の位置に対応する基準点である。周辺エリア902は、基準点901を基準とする所定エリアである。たとえば、周辺エリア902は、基準点901を中心とする所定半径(一例としては500〜1000[m]のいずれか)の円形エリアである。
建物占有領域903は、周辺エリア902に含まれる建物の領域を示している。また、建物占有領域903は、たとえば周辺エリア902に含まれる建物における、送信アンテナ322または受信アンテナ312と同じ高さでの横断面であってもよい。すなわち、周辺エリア902に含まれる建物のうちの送信アンテナ322または受信アンテナ312より低い建物は、送信アンテナ322から受信アンテナ312への信号を遮らないため、建物占有領域903から除外してもよい。
伝播減衰曲線導出部503は、たとえば、送信アンテナ322の位置を基準点901とした場合の周辺エリア902および建物占有領域903を示す周辺建物情報を3次元地図データなどから取得する。3次元地図データは、たとえば周波数管理装置210のメモリに予め記憶されている。または、3次元地図データは、周波数管理装置210の外部のデータベースに記憶されていてもよい。
そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した周辺建物情報に基づいて、周辺エリア902における建物占有領域903の占める面積の割合(基準建物占有率pS)を算出する。基準建物占有率が大きいほど、伝播減衰が激しい環境であると判断することができる。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、建物占有領域903の各面積の合計を、周辺エリア902の面積(π*所定半径の2乗)で除算することで基準建物占有率pSを算出することができる。
また、伝播減衰曲線導出部503は、基準測定ポイント801を基準点901とした場合の周辺建物情報を取得する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した周辺建物情報に基づいて、基準測定ポイント801を基準点901とした場合の周辺エリア902における建物占有領域903の占める面積の割合(基準建物占有率pM)を算出する。
また、伝播減衰曲線導出部503は、受信アンテナ312の位置を基準点901とした場合の周辺建物情報を取得する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した周辺建物情報に基づいて、受信アンテナ312の位置を基準点901とした場合の周辺エリア902における建物占有領域903の占める面積の割合(基準建物占有率pP)を算出する。
また、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準建物占有率pS,pMのうちの高い方を、部分区間Aにおける基準建物占有率pAとして算出する。また、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準建物占有率pS,pPのうちの高い方を、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間における基準建物占有率pOとして算出する。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aにおける基準建物占有率pAと、全区間における基準建物占有率pOと、を比較することにより、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいか否かを判断する。
基準建物占有率を用いる場合について説明するが、建物に限らず、地形なども含めた信号の遮蔽物による占有率を用いてもよい。
(基準建物占有率に基づく伝播減衰量の算出処理)
図10は、基準建物占有率に基づく伝播減衰量の算出処理の一例を示すフローチャートである。伝播減衰曲線導出部503および最大被許容送信電力算出部504は、たとえば図10に示す各ステップを実行する。
まず、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの基準建物占有率pAを算出する(ステップS1001)。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、2次システム320の送信アンテナ322の周辺の基準建物占有率pSと、基準測定ポイント801の周辺の基準建物占有率pMと、を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準建物占有率pS,pMのうちの最大値を部分区間Aの基準建物占有率pAとして算出する。
また、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間の基準建物占有率pOを算出する(ステップS1002)。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、2次システム320の送信アンテナ322の周辺の基準建物占有率pSと、1次システム310の受信アンテナ312の周辺の基準建物占有率pPと、を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準建物占有率pS,pPのうちの最大値を、全区間の基準建物占有率pOとして算出する。なお、伝播減衰曲線導出部503は、基準建物占有率pSについてはステップS1002において算出せず、ステップS1001において算出したものを用いてもよい。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、ステップS1001によって算出した基準建物占有率pAが、ステップS1002によって算出した基準建物占有率pOより高いか否かを判断する(ステップS1003)。
ステップS1003において、基準建物占有率pAが基準建物占有率pOより高い場合(ステップS1003:Yes)は、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しくないと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの伝播減衰曲線と、部分区間Aの伝播減衰曲線より傾きの大きさ(係数aの絶対値)が小さい部分区間Bの伝播減衰曲線と、を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。部分区間Aの伝播減衰曲線より傾きの大きさが小さい伝播減衰曲線には、たとえば所定の2乗伝播減衰曲線を用いることができる。
これに対して、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された部分区間Aの伝播減衰曲線により、部分区間Aの伝播減衰量LAを算出する(ステップS1004)。また、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された部分区間Bの伝播減衰曲線により、部分区間Bの伝播減衰量LBを算出する(ステップS1005)。
つぎに、最大被許容送信電力算出部504は、ステップS1004,S1005によって算出した伝播減衰量LA,LBの和により、全区間の伝播減衰量L(^h,^k)を算出し(ステップS1006)、一連の処理を終了する。
ステップS1003において、基準建物占有率pAが基準建物占有率pOより高くない場合(ステップS1003:No)は、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの伝播減衰曲線を部分区間Bまで延長した伝播減衰曲線を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。これに対して、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された伝播減衰曲線により、全区間の伝播減衰量L(^h,^k)を算出し(ステップS1007)、一連の処理を終了する。
なお、基準建物占有率に基づく伝播減衰量の算出処理は、図10に示した算出処理に限らない。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、基準建物占有率pS,pM,pPを算出し、算出した基準建物占有率pS,pM,pPのうちの最大の基準建物占有率が、基準建物占有率pMであるか否かによってステップS1003の判断を行ってもよい。
(基準見通し率の算出)
図11は、基準見通し率の算出の一例を示す図である。図11に示す基準点1101,1102は、送信アンテナ322の位置、基準測定ポイント801または受信アンテナ312の位置に対応する位置である。
建物占有領域1103は、基準点1101の周辺の建物の領域を示している。また、建物占有領域1103は、たとえば基準点1101,1102の間のエリアに含まれる建物における送信アンテナ322または受信アンテナ312と同じ高さでの横断面であってもよい。すなわち、送信アンテナ322または受信アンテナ312より低い建物は、送信アンテナ322から受信アンテナ312への信号を遮らないため、建物占有領域1103から除外してもよい。
伝播減衰曲線導出部503は、たとえば、送信アンテナ322の位置を基準点1101、基準測定ポイント801を基準点1102とした場合の建物占有領域1103を示す建物情報を、3次元地図データなどから取得する。3次元地図データは、たとえば周波数管理装置210のメモリに予め記憶されている。または、3次元地図データは、周波数管理装置210の外部のデータベースに記憶されていてもよい。
そして、伝播減衰曲線導出部503は、基準点1101,1102を結ぶ線分を、所定の角度範囲θにおいて所定角度(一例としては0.1度)ずつ、基準点1101を中心として回転させた複数の線分1104を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した複数の線分1104のうちの建物占有領域1103が示す建物の占有領域を通過しない線分の割合を、送信アンテナ322から基準測定ポイント801への基準見通し率q_smとして算出する。基準見通し率が小さいほど伝播減衰が激しい環境であると判断することができる。
また、伝播減衰曲線導出部503は、基準測定ポイント801を基準点1101、送信アンテナ322の位置を基準点1102とした場合の建物占有領域1103を示す建物情報を取得する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した建物情報に基づいて、基準測定ポイント801を基準点1101、送信アンテナ322の位置を基準点1102とした場合の上述した線分の割合を算出する。これにより、基準測定ポイント801から送信アンテナ322への基準見通し率q_msとして算出することができる。
また、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322の位置を基準点1101、受信アンテナ312の位置を基準点1102とした場合の建物占有領域1103を示す建物情報を取得する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した建物情報に基づいて、送信アンテナ322の位置を基準点1101、受信アンテナ312の位置を基準点1102とした場合の上述した線分の割合を算出する。これにより、送信アンテナ322から受信アンテナ312への基準見通し率q_spとして算出することができる。
また、伝播減衰曲線導出部503は、受信アンテナ312の位置を基準点1101、送信アンテナ322の位置を基準点1102とした場合の建物占有領域1103を示す建物情報を取得する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、取得した建物情報に基づいて、受信アンテナ312の位置を基準点1101、送信アンテナ322の位置を基準点1102とした場合の上述した線分の割合を算出する。これにより、受信アンテナ312から送信アンテナ322への基準見通し率q_psとして算出することができる。
そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準見通し率q_sm,q_msのうちの低い方を、部分区間Aにおける基準見通し率qAとして算出する。また、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準見通し率q_sp,q_psのうちの低い方を、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間における基準見通し率qOとして算出する。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aにおける基準見通し率qAと、全区間における基準見通し率qOと、を比較することにより、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいか否かを判断する。
(基準見通し率に基づく伝播減衰量の算出処理)
図12は、基準見通し率に基づく伝播減衰量の算出処理の一例を示すフローチャートである。伝播減衰曲線導出部503および最大被許容送信電力算出部504は、たとえば図12に示す各ステップを実行する。
まず、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの基準見通し率qAを算出する(ステップS1201)。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322から基準測定ポイント801への基準見通し率q_smと、基準測定ポイント801から送信アンテナ322への基準見通し率q_msと、を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準見通し率q_sm,q_msのうちの最小値を、部分区間Aの基準見通し率qAとして算出する。
また、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間の基準見通し率qOを算出する(ステップS1202)。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322から受信アンテナ312への基準見通し率q_spと、受信アンテナ312から送信アンテナ322への基準見通し率q_psと、を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準見通し率q_sp,q_psのうちの最小値を、全区間の基準見通し率qOとして算出する。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、ステップS1201によって算出した基準見通し率qAが、ステップS1202によって算出した基準見通し率qOより低いか否かを判断する(ステップS1203)。
ステップS1203において、基準見通し率qAが基準見通し率qOより低い場合(ステップS1203:Yes)は、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しくないと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503および最大被許容送信電力算出部504は、ステップS1204へ移行する。図12に示すステップS1204〜S1206は、図10に示したステップS1004〜S1006と同様である。
ステップS1203において、基準見通し率qAが基準見通し率qOより低くない場合(ステップS1203:No)は、部分区間Aの伝播減衰より部分区間Bの伝播減衰が激しいと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503および最大被許容送信電力算出部504は、ステップS1207へ移行する。図12に示すステップS1207は、図10に示したステップS1007と同様である。
なお、基準見通し率に基づく伝播減衰量の算出処理は、図12に示した算出処理に限らない。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準見通し率q_sm,q_ms,q_sp,q_psのうちの最小の基準見通し率が、基準見通し率q_sm,q_msのいずれかであるか否かによってステップS1203の判断を行ってもよい。
(部分区間Bにおける伝播減衰曲線の例)
図13は、部分区間Bにおける伝播減衰曲線の第1の例を示す図である。伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aより部分区間Bの伝播減衰が激しいと判断した場合は、図13に示すように、部分区間Aの実測点群710によって得られた伝播減衰曲線720を部分区間Bまで延長する。すなわち、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの実測点群710によって得られた伝播減衰曲線720を、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間に適用する。
最大被許容送信電力算出部504は、全区間に適用した伝播減衰曲線720を用いて、2次システム320の送信アンテナ322から1次システム310の受信アンテナ312までの干渉信号325の伝播減衰量を算出する。
図14は、部分区間Bにおける伝播減衰曲線の第2の例を示す図である。一方、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aより部分区間Bの伝播減衰が激しくないと判断した場合は、部分区間Aの実測点群710によって得られた伝播減衰曲線720を用いて部分区間Aの伝播減衰量を算出する。また、図14に示すように、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Bについては、伝播減衰曲線720より伝播減衰の小さい伝播減衰曲線1401を用いて伝播減衰量を算出する。
伝播減衰曲線1401には、たとえば、自由空間伝播減衰(2乗減衰)や、建物を考慮せずに地形だけを考慮した伝播減衰などを用いることができる。最大被許容送信電力算出部504は、部分区間A,Bについて算出した各伝播減衰量を加算することで、2次システム320の送信アンテナ322から1次システム310の受信アンテナ312までの干渉信号325の伝播減衰量を算出する。
このように、伝播減衰曲線導出部503は、エリア130の三次元地図情報に基づいて、送信アンテナ322から受信アンテナ312(所定位置)への信号の伝播環境と、送信アンテナ322から基準測定ポイント801への信号の伝播環境と、の比較を行う。
そして、伝播減衰曲線導出部503は、送信アンテナ322と受信アンテナ312との間の全区間のうちの比較の結果に応じた区間(部分区間Aまたは全区間)における伝播減衰量を伝播減衰曲線720に基づいて推定する。これにより、伝播減衰量を精度よく推定することができる。
また、部分区間Aにおける伝播減衰量を伝播減衰曲線720に基づいて推定する場合は、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Bにおける伝播減衰量を、伝播減衰曲線720より少ない減衰量を示す伝播減衰特性に基づき推定する。これにより、伝播減衰量を実際より多く見積もってしまい、2次システム320から1次システム310への干渉が許容値を超える周波数について2次システム320が使用可能であると判断してしまうことを回避することができる。
(部分区間Bにおける伝播減衰量の算出の変形例)
図15は、部分区間Bにおける伝播減衰量の算出の変形例を示す図である。伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Bを複数の小区間B1〜B5に分割し、部分区間Aに続く小区間から順番に部分区間Aと比較し、部分区間Aより伝播減衰が小さい小区間が出現する直前の小区間まで部分区間Aの伝播減衰曲線720を適用してもよい。これにより、より誤差の少ない伝播減衰の見積もりが可能になる。
図15に示す例では、小区間B1,B2は部分区間Aより伝播減衰が大きく、小区間B3〜B5は部分区間Aより伝播減衰が小さいとする。この場合は、伝播減衰曲線導出部503は、小区間B1,B2における伝播減衰曲線1501,1502には、部分区間Aの伝播減衰曲線720を適用する。
また、伝播減衰曲線導出部503は、小区間B3〜B5における伝播減衰曲線1503〜1505には、部分区間Aの伝播減衰曲線720より少ない減衰量を示す伝播減衰曲線(たとえば自由空間伝播減衰曲線など)を適用する。
このように、部分区間Bを複数の小区間B1〜BNに分割し、部分区間Aに続く小区間から順番に部分区間Aと比較し、部分区間Aより伝播減衰が小さい小区間が出現する直前の小区間まで部分区間Aの伝播減衰曲線720を適用してもよい。これにより、より誤差の少ない伝播減衰の見積もりが可能になる。
(部分区間Bを分割した各小区間)
図16は、部分区間Bを分割した各小区間の一例を示す図である。伝播減衰曲線導出部503は、たとえば、図16に示すように、部分区間Bを所定距離(一例としては100〜1000[m]のいずれか)によってN個(N≧2)の小区間B1〜BNに分割したとする。また、部分区間Aの始点を位置Sとし、小区間B1の始点を位置P0とし、小区間B1〜BNの終点をPnとする。この場合の伝播減衰量の算出処理について、図17において説明する。
(部分区間Bの分割による伝播減衰量の算出処理)
図17は、部分区間Bの分割による伝播減衰量の算出処理の一例を示すフローチャートである。図17においては、基準建物占有率を用いる場合について説明するが、基準見通し率を用いる場合についても同様である。まず、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Bを所定距離によってN個の小区間B1〜BNに分割する(ステップS1701)。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの基準建物占有率pAを算出する(ステップS1702)。ステップS1702は、たとえばステップS1001と同様である。つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、nを初期化(n=1)する(ステップS1703)。nは、N個の小区間B1〜BNのインデックスである。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、区間[S,Pn]の基準建物占有率pOnを算出する(ステップS1704)。たとえば、伝播減衰曲線導出部503は、2次システム320の送信アンテナ322の周辺の基準建物占有率pSと、位置Pnの周辺の基準建物占有率pPnと、を算出する。そして、伝播減衰曲線導出部503は、算出した基準建物占有率pS,pPnのうちの最大値を、区間[S,Pn]の基準建物占有率pOnとして算出する。なお、伝播減衰曲線導出部503は、基準建物占有率pSについてはステップS1704において算出せず、ステップS1702において算出した基準建物占有率pSを用いてもよい。
つぎに、伝播減衰曲線導出部503は、ステップS1702によって算出した基準建物占有率pAが、ステップS1704によって算出した基準建物占有率pOnより高いか否かを判断する(ステップS1705)。
ステップS1705において、基準建物占有率pAが基準建物占有率pOnより高い場合(ステップS1705:Yes)は、部分区間Aの伝播減衰より小区間Bnの伝播減衰が激しくないと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの伝播減衰曲線と、部分区間Aの伝播減衰曲線より傾きの大きさが小さい小区間Bnの伝播減衰曲線と、を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。
これに対して、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された部分区間Aの伝播減衰曲線により区間[S,Pn−1]の伝播減衰量L(S,Pn−1)を算出する(ステップS1706)。また、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された小区間Bnの伝播減衰曲線により区間[Pn−1,PN]の伝播減衰量L(Pn−1,PN)を算出する(ステップS1707)。
つぎに、最大被許容送信電力算出部504は、ステップS1706,S1707によって算出した伝播減衰量L(S,Pn−1),L(Pn−1,PN)の和により、全区間の伝播減衰量L(^h,^k)を算出し(ステップS1708)、一連の処理を終了する。
ステップS1705において、基準建物占有率pAが基準建物占有率pOnより高くない場合(ステップS1705:No)は、部分区間Aの伝播減衰より小区間Bnの伝播減衰が激しいと判断することができる。この場合は、伝播減衰曲線導出部503は、インデックスnが最大値Nであるか否かを判断する(ステップS1709)。
ステップS1709において、インデックスnが最大値Nでない場合(ステップS1709:No)は、伝播減衰曲線導出部503は、インデックスnをインクリメント(n=n+1)し(ステップS1710)、ステップS1704へ戻る。インデックスnが最大値Nである場合(ステップS1709:Yes)は、伝播減衰曲線導出部503は、部分区間Aの伝播減衰曲線を部分区間Bまで延長した伝播減衰曲線を最大被許容送信電力算出部504へ通知する。これに対して、最大被許容送信電力算出部504は、伝播減衰曲線導出部503から通知された伝播減衰曲線により、全区間の伝播減衰量L(^h,^k)を算出し(ステップS1711)、一連の処理を終了する。
このように、部分区間Bを複数の小区間B1〜BNに分割し、部分区間Aに続く小区間から順番に部分区間Aと比較し、部分区間Aより伝播減衰が小さい小区間が出現する直前の小区間まで部分区間Aの伝播減衰曲線720を適用してもよい。これにより、より誤差の少ない伝播減衰の見積もりが可能になる。
このように、実施の形態2によれば、1次システム310と2次システム320との混在エリアにおける、2次システム320の信号の実測結果から導出した伝播減衰曲線720に基づいて2次システム320の信号の伝播減衰量を推定することができる。これにより、実際に周波数が共用されるエリアの環境に応じて伝播減衰量を精度よく推定することができる。また、精度よく推定した伝播減衰量を用いることで、2次システム320から1次システム310への干渉に応じて、2次システム320が共用周波数を使用可能か否かを精度よく判断することができる。これにより、2次システム320における周波数の利用効率の向上を図ることができる。
なお、伝播減衰曲線を用いて推定した伝播減衰量L(^h,^k)に基づいて最大被許容送信電力Ps,mxを求め、最大被許容送信電力Ps,mxに基づいて使用許可判定処理を行う場合について説明したが、使用許可判定処理はこのような手順に限らない。たとえば、伝播減衰曲線を用いて推定した伝播減衰量L(^h,^k)および上記(1)式により2次システム320から1次システム310への干渉電力Uを算出し、算出した干渉電力Uと保護基準Tとを比較することで使用許可判定処理を行うこともできる。
以上説明したように、通信装置および周波数管理方法によれば、周波数の利用効率の向上を図ることができる。
たとえば、近年、無線トラフィックの増加に伴い、セルラーシステム向けの帯域や免許不要帯域のいずれについても割り当て帯域の増加が求められている。しかし、一般的に利用しやすいとされている6[GHz]以下の周波数帯域のほとんどがすでに何らかの用途に割り当てられている。このため、場所や時間によって既存の1次システムが使用していない周波数をWS(White Space:ホワイトスペース)周波数として2次利用することが検討されている。
たとえば、米国ではTVWS(TeleVision White Space)を免許不要帯域として開放し、2012年から一部地域で実用サービスが始まっている。たとえばISM(Industry−Science−Medical)バンドと異なり、TVWSの周波数は2次利用であるため、TVWSにおいては同一の周波数を利用する1次システムのTV放送などを妨げないことが求められる。
そこで、米国ではTVWSにおける2次利用ルールとして、場所や時間に応じて使用してもよいWS周波数をデータベース化するデータベース・アクセス方式が取り入れられている。データベース・アクセス方式においては、WS周波数の2次利用を行う無線システムは、自身の位置情報を用いてデータベースに照会し、使用してもよいWS周波数情報を入手する。
近年、無線トラフィックが増え続けており、ますます多くのWS周波数の2次利用が認められていくと考えられる。これらのWS周波数の2次利用は、たとえばTVWSの実用化によって得られた経験に基づいて進められていくことになる。
1次システムと2次システムによって周波数を共用する場合に、2次システムによる周波数使用が1次システムに対して悪い影響を与えないことが求められる。悪い影響を与えないための基準として、たとえば2次システムから1次システムへの干渉電力の上限の閾値が規定される。2次システムから1次システムへの干渉電力は、たとえば所定の伝播モデルを使って計算される。
ここで、電波は、様々な障害物によって反射、回折、散乱などをするため、地形や建物などによって伝播減衰が大きく変化する。このため、周波数を共用する場合は、2次システムの送信信号電力から伝播減衰を引いた干渉電力を正確に見積もることを要する。しかしながら、定義のし易さや計算し易さのために、既存の伝播モデルを一様に適用して伝播減衰を求める場合がある。
たとえば、TVWSシステムの場合は、米国ではR−6602 curvesモデルが採用されている。また、英国ではextended hataモデルが採用されている。また、日本では、システム種別ごとにTVWS利用の制度化が行われている。そして、制度化が完了したエリア放送の場合は、干渉電力は、地形データをもとに、全国の1[km]メッシュの世帯代表点(関東では約23000点)での電界強度を計算することによって行われる電界強度シミュレーションに基づいて求められる。
これらの伝播モデルは、それぞれ複数の地点において測定した結果の統計から算出した中央値に基づいて決められたものである。そのため、これらの伝播モデルを実際の個々の伝播環境に当てはめると大きな誤差が出る可能性がある。このため、これらの伝播モデルを用いて1次システムと2次システムによって周波数を共用すると、2次システムから1次システムへ悪い影響を与えたり、2次システムの送信電力や使用可能周波数が大きく制限されてしまったりする。
これに対して、上述した各実施の形態によれば、1次システムと2次システムによる周波数共用が実際に行われるそれぞれのエリアにおいて、伝播減衰に関する実測データから推定された伝播減衰モデル(たとえば伝播減衰曲線)が用いられる。これにより、2次システムからの信号の伝播減衰を正確に見積もることができる。
また、2次システムと1次システムの間の伝播環境と、実測データが得られた伝播環境とを比較して、伝播減衰モデルの適用方法を最適化し、伝播減衰の見積もり精度をさらに向上させることができる。そして、精度よく見積もった伝播減衰を用いて、2次システムの最大被許容送信電力あるいは使用可能周波数を判定することができる。これにより、2次システムにおける周波数の利用効率の向上を図ることができる。
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)第1無線システムおよび第2無線システムが混在するエリアにおいて測定された、前記第2無線システムのアンテナから送信された信号の受信電力に基づいて、前記信号の伝播減衰特性を導出し、導出した前記伝播減衰特性に基づいて、前記エリアに含まれる所定位置における前記信号の伝播減衰量を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された伝播減衰量に基づいて、前記第1無線システムに割り当てられた周波数または前記周波数の付近の周波数を前記第2無線システムが使用可能か否かの判断を行う判断部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
(付記2)前記判断部による判断結果に関する情報を前記第2無線システムへ送信する送信部を備えることを特徴とする付記1に記載の通信装置。
(付記3)前記推定部は、前記アンテナからの前記信号の送信電力と、前記受信電力と、前記アンテナと前記受信電力が測定された位置との間の距離と、に基づいて前記アンテナからの距離に対する前記信号の伝播減衰特性を導出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
(付記4)前記推定部は、前記エリアにおいて前記信号を遮る遮蔽物を示す情報に基づいて、前記アンテナから前記所定位置への信号の伝播環境と、前記アンテナから前記受信電力の測定位置への信号の伝播環境と、の比較を行い、前記アンテナと前記所定位置との間の区間のうちの前記比較の結果に応じた区間における前記信号の伝播減衰量を前記伝播減衰特性に基づいて推定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の通信装置。
(付記5)前記推定部は、前記アンテナと前記所定位置との間の区間のうちの、前記比較の結果に応じた区間と異なる区間における前記信号の伝播減衰量を、前記伝播減衰特性より少ない減衰量を示す伝播減衰特性に基づいて推定することを特徴とする付記4に記載の通信装置。
(付記6)前記アンテナから前記所定位置への信号の伝播環境は、前記アンテナの位置と前記所定位置とのそれぞれの周辺エリアにおける前記遮蔽物の占有率を含み、
前記アンテナから前記測定位置への信号の伝播環境は、前記アンテナの位置と前記測定位置とのそれぞれの周辺エリアにおける前記遮蔽物の占有率を含む、
ことを特徴とする付記4または5に記載の通信装置。
(付記7)前記アンテナから前記所定位置への信号の伝播環境は、前記アンテナの位置と前記所定位置との間の見通し度を含み、
前記アンテナから前記測定位置への信号の伝播環境は、前記アンテナの位置と前記測定位置との間の見通し度を含む、
ことを特徴とする付記4または5に記載の通信装置。
(付記8)第1無線システムおよび第2無線システムが混在するエリアにおいて測定された、前記第2無線システムのアンテナから送信された信号の受信電力に基づいて、前記信号の伝播減衰特性を導出し、
導出した前記伝播減衰特性に基づいて、前記エリアに含まれる所定位置における前記信号の伝播減衰量を推定し、
推定した前記伝播減衰量に基づいて、前記第1無線システムに割り当てられた周波数または前記周波数の付近の周波数を前記第2無線システムが使用可能か否かの判断を行う、
ことを特徴とする周波数管理方法。