JP2016030867A - 意匠糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、毛足の長い毛羽糸や細番手の羊毛糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供する。【解決手段】意匠糸は、3本以上の糸を互いに交差させることにより作製され、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続している組紐から構成される。この組紐を構成する各糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸であり、組紐における各糸のスパイラルの繰り返し単位である山数は、1〜5山/インチ(2.54cm)である。【選択図】図1
Description
本発明は、意匠糸に関するものであり、更に詳しくは、軽量で柔軟かつボリューム感がある意匠糸に関するものである。
従来から多くの意匠糸(「ファンシーヤーン」ともいう)が開発され、多くの織編物に加工されてファッション素材を構成している。これらの意匠糸は、異なる繊維や糸を組み合わせたり、形状や配色に変化を持たせたりした糸の総称であり、織編物に表面変化、風合い効果、装飾効果などを与えることを目的として作製されている。
これらの意匠糸は、主に紡績工程や撚糸工程で作製され、また、長繊維糸に関しては糸表面の単繊維を切断したりする毛羽加工糸なども作製されている。例えば、毛羽糸を製造する方法として、下記特許文献1の起毛糸の加工方法及びその装置や、下記特許文献2のダブルモール糸などが開発されている。
これらの意匠糸は、通常、そのままで経糸、緯糸、編糸として織編物の作製に使用される。しかし、これらの意匠糸を複数本組み合わせることにより、更に複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班を付与したファッション性の高い意匠糸が求められている。例えば、タム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い毛羽糸を複数本組み合わせることにより、より嵩高性があり、軽く、柔らかく、且つ、暖かい意匠糸を作製することが求められている。また、細番手の羊毛糸を複数本組み合わせることにより、カシミヤやアンゴラなどの獣毛糸に近い嵩高性と感触を有する意匠糸を作製することが求められている。
しかし、毛足の長い毛羽糸を複数本組み合わせたファッション性の高い意匠糸や、細番手の羊毛糸を複数本組み合わせたファッション性の高い意匠糸の作製は容易ではなく、これまで工業的には作製されていない。複数本の毛羽糸を組み合わせて意匠糸を作製する方法としては、例えば、リリヤーン編機による方法が考えられる。しかし、タム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長さが3mm以上ある毛羽糸を複数本組み合わせてリリヤーン編機で作製することはできなかった。また、毛番手で48番手より細い羊毛糸は糸強度が弱く、これを複数本組み合わせてリリヤーン編機で作製することはできなかった。
一方、リリヤーン編機の他に複数本の糸を組み合わせた糸を構成する方法として、従来から組紐の技術が利用されてきた。この組紐の技術は、これまで帯締め、アクセサリー、靴紐などの工芸品や小物類、或いは、グランドパッキン、ゴムホースなどを補強する工業用資材の作製に使用されている。しかし、糸強度が弱く、また、長い毛足を多く有する意匠糸を取り扱うことができず、これらファッション性の高い意匠糸を工業的に作製する方法としては利用されていない。
そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、毛足の長い毛羽糸や細番手の羊毛糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者は、鋭意研究の結果、工業用資材の作製に使用されている組機(組紐を作製する機械)の糸張力の調整法を改造することにより、糸強度が弱く、長い毛足を多く有する意匠糸を取り扱うことができることを見出し本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係る意匠糸は、請求項1の記載によると、
3本以上の糸を互いに交差させることにより作製され、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続している組紐から構成され、
当該組紐を構成する各糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸であって、
前記組紐における各糸のスパイラルの繰り返し単位である山数は、1〜5山/インチ(2.54cm)であることを特徴とする。
3本以上の糸を互いに交差させることにより作製され、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続している組紐から構成され、
当該組紐を構成する各糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸であって、
前記組紐における各糸のスパイラルの繰り返し単位である山数は、1〜5山/インチ(2.54cm)であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の意匠糸であって、
前記毛羽糸は、長さ3mm以上の毛足を有するタム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い糸であることを特徴とする。
前記毛羽糸は、長さ3mm以上の毛足を有するタム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い糸であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1に記載の意匠糸であって、
前記毛羽糸は、糸の太さが毛番手48番手〜120番手の単糸又は双糸からなる羊毛糸又はアクリル糸であることを特徴とする。
前記毛羽糸は、糸の太さが毛番手48番手〜120番手の単糸又は双糸からなる羊毛糸又はアクリル糸であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1〜3のいずれか1つに記載の意匠糸であって、
前記組紐としての編組後の重量は、0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であって、その太さは、2mm〜8mmの範囲内であることを特徴とする。
前記組紐としての編組後の重量は、0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であって、その太さは、2mm〜8mmの範囲内であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項1〜4のいずれか1つに記載の意匠糸であって、
前記組紐を構成する各糸の太さ、色、素材などの特性のうち少なくとも1つ以上の特性が異なる複数の糸で構成されていることを特徴とする。
前記組紐を構成する各糸の太さ、色、素材などの特性のうち少なくとも1つ以上の特性が異なる複数の糸で構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項1〜5のいずれか1つに記載の意匠糸であって、
動力編機で製編可能な編糸、或いは、動力織機で製織可能な織糸として使用されることを特徴とする。
動力編機で製編可能な編糸、或いは、動力織機で製織可能な織糸として使用されることを特徴とする。
上記請求項1の構成によれば、本発明に係る意匠糸は、3本以上の糸を互いに交差させることにより作製される組紐から構成されている。この組紐においては、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続している。
また、当該組紐を構成する各糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸である。更に、この組紐における各糸のスパイラルの繰り返し単位である山数は、1〜5山/インチ(2.54cm)である。
このことにより、上記請求項1の構成においては、これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、毛足の長い毛羽を有する毛羽糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供することができる。
また、上記請求項2の構成によれば、毛羽糸は、長さ3mm以上の毛足を有するタム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い糸であってもよい。このことにより、請求項2の構成においては、請求項1の構成と同様の作用効果をより一層達成することができる。
また、上記請求項3の構成によれば、毛羽糸は、糸の太さが毛番手48番手〜120番手の単糸又は双糸からなる羊毛糸又はアクリル糸であってもよい。このことにより、上記請求項3の構成においては、これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、細番手の羊毛糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供することができる。
また、上記請求項4の構成によれば、本発明に係る意匠糸は、組紐としての編組後の重量が0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であって、その太さが2mm〜8mmの範囲内であることがよい。このことにより、請求項4の構成においては、請求項1〜3のいずれか1つの構成と同様の作用効果をより一層達成することができる。
また、上記請求項5の構成によれば、本発明に係る意匠糸は、組紐を構成する各糸の太さ、色、素材などの特性のうち少なくとも1つ以上の特性が異なる複数の糸で構成されていてもよい。このことにより、請求項5の構成においては、請求項1〜4のいずれか1つの構成と同様の作用効果をより一層達成することができる。
また、上記請求項6の構成によれば、本発明に係る意匠糸は、動力編機で製編可能な編糸、或いは、動力織機で製織可能な織糸として使用されることがよい。このような編糸或いは織糸は、糸強力が強く動力編機或いは動力織機による工業生産が可能であることを意味する。このことにより、請求項6の構成においては、請求項1〜5のいずれか1つの構成と同様の作用効果をより一層達成することができると共に、より工業的利用を図ることができる。
よって、上記各構成によれば、これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、毛足の長い毛羽糸や細番手の羊毛糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供することができる。
本発明においては、複数本の糸を組み合わせてファッション性の高い意匠糸を構成する。ここで、糸とは、繊維が長く線状になったものをいい、短繊維糸(紡績糸)、長繊維糸(フィラメント糸)、或いは、スリットヤーン、ラメ糸などであってもよい。また、糸の太さ(番手)、糸を構成する繊維の種類、撚りの有無、単糸又は双糸などの複合糸については、特に制限するものではない。但し、本発明に係る意匠糸の用途が衣料、特にファッション素材を主とすることから、一般に衣料用に使用される糸及び繊維を使用することが好ましい。また、糸の撚りについては無撚り糸を使用するようにしてもよいが、甘撚りの糸を使用することが好ましい。また、甘撚りの糸を使用する場合には、単糸よりも双糸を使用することが好ましい。
繊維の種類としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、綿、麻などの天然セルロース系繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジックまたはテンセルなどの再生セルロース系繊維、羊毛、絹などのタンパク繊維などが使用される。これらの繊維は、単独または混紡、混繊など、二種類以上の繊維が任意の割合で混用されていてもよい。
本発明においては、意匠糸を構成するために複数本の糸を使用する。これら複数本の糸は、異なる種類の繊維から構成されるものであってもよく、全ての糸が同じ繊維から構成されるものであってもよい。また、これらの糸は、異なる色彩の糸であってもよく、全ての糸が同じ色彩の糸であってもよい。各糸を構成する繊維の種類又は色彩が異なることにより、よりファッション性の高い意匠糸を構成することができる。
また、本発明においては、意匠糸を構成する糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸を使用する。複数の毛羽を有する毛羽糸を組み合わせてファッション性の高い意匠糸を構成するためには、本発明における組紐による作製が必須となるからである。
また、本発明においては、複数の毛羽を有する毛羽糸としては、例えば、羊毛又はアクリル繊維からなる紡毛糸、合成繊維の長繊維を加工した毛羽加工糸、ループのある糸を後加工でループカットしたタム糸、2本の撚糸の間に巻き付けや他の糸をカットしたモール糸、生地を裁断したラッセルモールなどがある。本発明においては、これらの毛羽糸の中でも、長さ3mm以上の毛足を有するタム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い糸を使用することが好ましい。これら毛足の長い毛羽糸を使用することにより、よりファッション性の高い意匠糸を構成することができる。
また、毛羽糸を何本組み合わせるかは、特に制限するものではない。例えば、8本の糸から構成される意匠糸を作製する際に、毛羽糸と無毛羽糸とを組み合わせて使用するようにしてもよく、或いは、8本の糸全てに毛羽糸を使用するようにしてもよい。毛羽糸を使用することにより、よりファッション性の高い意匠糸を構成することができる。
一方、本発明においては、意匠糸を構成する糸として、糸強度の弱い細番手の紡毛糸などを使用することができる。このような糸強度の弱い紡毛糸を複数本組み合わせてファッション性の高い意匠糸を構成するためには、本発明における組紐による作製が必須となるからである。
近年、羊毛糸において極細糸の製造が可能となり、例えば、毛番手48番手〜120番手という細い羊毛糸が製造されている。これらの羊毛糸を使用して軽さと薄さを求めた服地が開発されたが、極細糸であるため織編物に強度がなく、また、擦れに弱くファッション素材としては定着していない。
一般に、羊毛の紡毛糸は綿糸などに比べ伸度が大きく切断強度が弱い。例えば、綿糸30番手単糸の伸度は6%程度で、切断強度は294g程度ある。これに対して、目視にて同程度の太さのある羊毛糸48番手単糸の伸度は10%あり、切断強度は90g程度しかない。このように、羊毛糸は、綿糸に比べて強度が1/3以下と小さい。
そこで、本発明は、このように細く柔軟な羊毛の極細糸を使用して、これを複数本組み合わせた意匠糸を作製することができる。このようにして組み合わせた意匠糸は、カシミヤ糸やアンゴラ糸に匹敵する嵩高性と感触を有している。
また、このようにして作製した意匠糸は、組紐の構成を有するので撚り方向が偏らず、織編物にしたときに撚り戻りによる斜行が生じない。また、複数本の糸が互いに交差しながら組み込まれているので、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを有するファッション性の高い意匠糸を構成することができる。
次に、意匠糸を構成する組紐について説明する。一般に、組紐とは、数本ないし数十本の糸を一定の方式で交差させて組んだ紐のことであり、広義には組物に含まれるが、組物の中で幅の狭いものをいう(「新・繊維総合辞典」繊研新聞社発行)。これに対して、組物とは、3本以上の繊維束を互いに交差させ、これを布地の長手方向に対して左上から右下へ、右上から左下へ傾斜して走らせ、布地の端部で折り返して切断されることなく連続して作られ、平形のものを平打組物、丸形のものを丸打組物、角柱状のものを角打組物という(「新・繊維総合辞典」繊研新聞社発行)。
そこで、本発明においては、上記定義の組物のうち幅の狭い組紐を採用し、3本以上の糸を互いに交差させることにより作製され、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続しているものと定義する。また、本発明においては、組紐として平打組紐、丸打組紐、角打組紐のいずれを採用してもよいが、丸打組紐を採用することが好ましい。丸打組紐は、その断面がほぼ円形であり織編物に使用するときに均一な布帛を作製することができる。
ここで、丸打組紐を例にして本実施形態に係る意匠糸の製造方法について説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限られるものではない。図1は、本実施形態に係る丸打組紐から構成された意匠糸の構造を示す模式図である。図1においては、表面に毛羽Fを有する8本の糸Y1〜Y8を互いに交差させることにより作製される意匠糸FYを示している。この意匠糸FYの長手方向(図示上下方向)に対し各糸Y1〜Y8が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続して組紐を形成する。
また、図2は、図1に係る丸打組紐の組機の軌道を示す模式図である。図2において、軌道Rの数は2であり、各糸を保持している8本のスピンドルS1〜S8が4本ずつ異なった軌道を異なった方向に移動する。この丸打組紐においては、軌道の中央部に位置するマンドレルM(使用しなくてもよい)に各糸Y1〜Y8が左巻きと右巻きに互いに交差して垂直方向に引き上げられながら組紐を形成する。
ここで、スピンドルが具備するボビン(糸巻き)から各糸Y1〜Y8が引き出される際の糸張力(テンション)の調整について説明する。本発明においては、従来の組機で使用されている高張力の糸を使用するものではなく、より意匠性の高い低張力の糸を使用する。従って、スピンドルから引き出す糸の張力を調整するための重錘をより軽量なものとする必要がある。更に、より低張力の糸を使用する場合には、重錘に変えて張力変化を緩和することのできるスプリングを使用するようにする。また、ボビンから糸の引き出しをする際にボビンが上下して張力の急激な変化が生じることに対処するため、従来のボビンに変えて、より小型より軽量のボビンを採用し、更に糸巻量を少なくして対処することができる。
また、本発明においては、組紐として構成された意匠糸において、山数が1〜5山/インチ(2.54cm)であることが好ましく、また、1〜3山/インチ(2.54cm)であることがより好ましい。この山数とは、組紐を構成する各糸のスパイラルの繰り返し単位のことである。別な言い方をすれば、山数とは、組紐の一方の側面において同一の糸が現れる部分(「山」という)の単位長さ(インチ)当たりの出現数のことをいう。この山数が1〜5山/インチ(2.54cm)であることにより、組紐としての意匠糸の構造が安定して織編物用の経糸、緯糸、編糸として工業的に使用できると共に、嵩高性や触感に優れた意匠糸を作製することができる。
また、本発明においては、組紐として構成された意匠糸においては、上述のように、山数が1〜5山/インチ(2.54cm)、好ましくは、1〜3山/インチ(2.54cm)であることがよい。このことに加えて、編組後の重量が0.3g/m〜1.5g/mの範囲内、好ましくは、0.3g/m〜1.0g/mの範囲内であって、且つ、その太さ(直径)が2mm〜8mmの範囲内、好ましくは、3mm〜8mmであることがよい。このように、山数の少ない緩やかな編組において、更に軽く且つ太い意匠糸を構成することにより、空隙率が高く嵩高性や触感に優れた意匠糸を作製することができる。
以下、本実施形態を各実施例により説明する。
本実施例1においては、意匠糸を構成する糸として、異色にバラ毛染めした羊毛を紡績した紡毛糸を使用した。使用した羊毛糸は、極細糸であって毛番手48番手の双糸(2/48)を8本使用した。意匠糸を作製する組機として、軌道の数が2の丸打組機を使用した(図2参照)。得られた意匠糸FY1の山数は、2山/インチ(2.54cm)であって、その重さは0.4g/m、その太さ(直径)は2mmであった。
この意匠糸FY1は、各糸の異色感による複雑な外観と共に、嵩高性、柔軟な触感、自然な糸班を有するファッション性の高い意匠糸であった。この意匠糸を使用して動力織機で織物を作製したところ、カシミヤ風の風合いとボリューム感を有する高級織物となった。このことより、本実施例1に係る意匠糸FY1は、工業的に織編物用の経糸、緯糸、編糸として十分に使用に耐える強度を有していた。
本実施例2においては、意匠糸を構成する糸として、異なる色彩を有する羊毛繊維からなるタム糸を使用した。このタム糸の毛足は5mmであり、毛番手13番手の単糸(1/13)を8本使用した。意匠糸を作製する組機として、上記実施例1と同様に、軌道の数が2の丸打組機を使用した(図2参照)。得られた意匠糸FY2の山数は、2山/インチ(2.54cm)であって、その重さは1.0g/m、その太さ(直径)は6mmであった。
この意匠糸FY2は、各糸の異色感と長い毛足による複雑な外観と共に、嵩高性、柔軟な触感、自然な糸班を有するファッション性の高い意匠糸であった。この意匠糸を使用して動力織機で織物を作製したところ、柔軟な風合いとボリューム感を有するファッション性の高い織物となった。このことより、本実施例2に係る意匠糸FY2は、工業的に織編物用の経糸、緯糸、編糸として十分に使用に耐える強度を有していた。
本実施例3においては、意匠糸を構成する糸として、異なる色彩を有する綿糸を使用した。この綿糸は、表面に多くの毛羽を有する甘撚りの綿番手20番手の双糸(20/2)を8本使用した。意匠糸を作製する組機として、上記実施例1と同様に、軌道の数が2の丸打組機を使用した(図2参照)。得られた意匠糸FY3の山数は、2山/インチ(2.54cm)であって、その重さは0.5g/m、その太さ(直径)は2mmであった。
この意匠糸FY3は、各糸の異色感と綿糸特有の細かい毛羽による複雑な外観と共に、嵩高性、柔軟な触感、自然な糸班を有するファッション性の高い意匠糸であった。この意匠糸を使用して動力織機で織物を作製したところ、柔軟な風合いとボリューム感を有するファッション性の高い織物となった。このことより、本実施例3に係る意匠糸FY3は、工業的に織編物用の経糸、緯糸、編糸として十分に使用に耐える強度を有していた。
よって、上記各実施例においては、これまで工業的な意匠糸の作製に利用されていない組紐の技術を利用して、毛足の長い毛羽糸や細番手の羊毛糸などを複数本組み合わせて、複雑な意匠性や嵩高性、触感、外観、自然な糸班などを付与したファッション性の高い意匠糸を提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施例に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施例においては、意匠糸を構成する組紐を丸打組紐として説明したが、これに限るものではなく、平打組紐或いは角打組紐であってもよい。
(2)上記各実施例においては、軌道2の組機を使用したが、これに限るものではなく、軌道の数と組機の種類は任意に選定すればよい。
(3)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、羊毛の紡毛糸(2/48)、アクリル繊維のタム糸(1/13)、及び、甘撚りの綿糸(20/2)を使用したが、これに限るものではなく、他の糸種、他の繊維、或いは、異なる番手の糸を使用するようにしてもよい。
(4)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、8本の糸を使用したが、これに限るものではなく、3本以上の糸であれば何本の糸から構成するようにしてもよい。
(5)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、全て同じ糸を使用したが、これに限るものではなく、2種類、3種類、或いはそれ以上の種類の糸を組み合わせて意匠糸を構成するようにしてもよい。この場合、組み合わせる糸として、スリットヤーンやラメ糸と組み合わせるようにしてもよい。
(6)上記各実施例においては、作製した意匠糸を使用して力織機で織物を作製したが、これに限るものではなく、この意匠糸を使用して工業的な編機による編物を作製するようにしてもよい。
(7)上記各実施例においては、作製した意匠糸を使用して力織機で織物を作製したが、これに限るものではなく、手工芸用の糸として使用するようにしてもよい。この場合には、手編みのショールなど高級感のある布帛を作製することができる。
(1)上記各実施例においては、意匠糸を構成する組紐を丸打組紐として説明したが、これに限るものではなく、平打組紐或いは角打組紐であってもよい。
(2)上記各実施例においては、軌道2の組機を使用したが、これに限るものではなく、軌道の数と組機の種類は任意に選定すればよい。
(3)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、羊毛の紡毛糸(2/48)、アクリル繊維のタム糸(1/13)、及び、甘撚りの綿糸(20/2)を使用したが、これに限るものではなく、他の糸種、他の繊維、或いは、異なる番手の糸を使用するようにしてもよい。
(4)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、8本の糸を使用したが、これに限るものではなく、3本以上の糸であれば何本の糸から構成するようにしてもよい。
(5)上記各実施例においては、意匠糸を構成する各糸として、全て同じ糸を使用したが、これに限るものではなく、2種類、3種類、或いはそれ以上の種類の糸を組み合わせて意匠糸を構成するようにしてもよい。この場合、組み合わせる糸として、スリットヤーンやラメ糸と組み合わせるようにしてもよい。
(6)上記各実施例においては、作製した意匠糸を使用して力織機で織物を作製したが、これに限るものではなく、この意匠糸を使用して工業的な編機による編物を作製するようにしてもよい。
(7)上記各実施例においては、作製した意匠糸を使用して力織機で織物を作製したが、これに限るものではなく、手工芸用の糸として使用するようにしてもよい。この場合には、手編みのショールなど高級感のある布帛を作製することができる。
FY…意匠糸、
Y1〜Y8…糸、
F…毛羽、
R…軌道、
S1〜S8…スピンドル、
M…マンドレル。
Y1〜Y8…糸、
F…毛羽、
R…軌道、
S1〜S8…スピンドル、
M…マンドレル。
Claims (6)
- 3本以上の糸を互いに交差させることにより作製され、その長手方向に対し各糸が傾斜して配向し、端部で切断されることなく連続している組紐から構成され、
当該組紐を構成する各糸のうち少なくとも1本以上の糸は、その表面から延出する複数の毛羽を有する毛羽糸であって、
前記組紐における各糸のスパイラルの繰り返し単位である山数は、1〜5山/インチ(2.54cm)であることを特徴とする意匠糸。 - 前記毛羽糸は、長さ3mm以上の毛足を有するタム糸、モール糸、ラッセルモールなどの毛足の長い糸であることを特徴とする請求項1に記載の意匠糸。
- 前記毛羽糸は、糸の太さが毛番手48番手〜120番手の単糸又は双糸からなる羊毛糸又はアクリル糸であることを特徴とする請求項1に記載の意匠糸。
- 前記組紐としての編組後の重量は、0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であって、その太さは、2mm〜8mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の意匠糸。
- 前記組紐を構成する各糸の太さ、色、素材などの特性のうち少なくとも1つ以上の特性が異なる複数の糸で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の意匠糸。
- 動力編機で製編可能な編糸、或いは、動力織機で製織可能な織糸として使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の意匠糸。
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2014
- 2014-07-29 JP JP2014153403A patent/JP2016030867A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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