以下、本発明による車両用シートの実施の形態を図を参照して説明する。
(第1実施の形態)
本発明に係る車両用シートの第1実施の形態を図を参照して説明する。図1は車両用シートの概要を示す縦断面図、図2は後方から見た車両用シートの一部破断概略斜視図、図3はエアバッグの制御回路を示すブロック図、図4は衝撃発生時における車両用シートの作動説明図、図5は作動説明図であり、(a)は図1のa−a線断面図、(b)は図4のb−b線断面図である。なお、各図において矢印Fは車体前方方向を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示す。
図1に示すように、車室内のフロア1には、車両用シートである前席シート10及び後席シート60が前後に並設される。前席シート10はフロア1上に支持されて着座者Pfの尻部を支えるシートクッション11と、着座者Pfの腰部から胸部に亘る上体Pbを背後から支えるシートバック20と、ヘッドレスト45を有する。
図1及び図2に示すように、前席シート10においては、シートバック20の骨格を形成するシートバックフレーム21の内方に、架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が収縮状態で配置され、これら全体が袋状の表皮41で被覆される。
シートバックフレーム21は、車幅方向に延在する上方フレーム22及び上方フレーム22の両端から湾曲乃至折曲して下方に延在する一対の側方フレーム23からなるコ字状乃至U字状のパイプフレームと、各側方フレーム23の側端部に配置固定された左右一対のサイドブラケット24と、車幅方向に延在して左右の各側方フレーム23の上端近傍に架設されるパイプ状の上方クロスメンバ25と、左右のサイドブラケット24の下端近傍間に架設される下方クロスメンバ26によって略矩形枠状に形成される。
この対向する側方フレーム23の内方間及びサイドブラケット24の内方間に金属ワイヤよりなるSばね等の架設弾性支持部材27が複数、本実施の形態では3本の架設弾性支持部材27が架け渡される。架設弾性支持部材27の前面に、着座者Pfの上体Pbを弾性的に支持するウレタンフォーム材等からなるシートパッド28が配設され、架設弾性支持部材27の後方に矩形平面状に折り畳まれた収縮状態のエアバッグ30が配置される。
これらシートバックフレーム21、シートパッド28、エアバッグ30等の全体を伸縮可能な布帛(織物、編物、不織布)や皮革(天然皮革、合成皮革)でシートパッド28の前面を覆う前面部42及びエアバッグ30を覆う背面部43を有する袋状に形成された表皮41で被覆することでシートバック20が形成される。エアバッグ30は、例えば、表皮41等に図示しない係止手段によって膨張展開可能に保持され、エアバッグ30に図示しないガス導入部が設けられ、サイドブラケット24に取り付けられたインフレータ29と連結する。
シートバック20のシートバックフレーム21を構成する各サイドブラケット24の基端は、シートクッション11の後端に配置されたリクライニング装置15の回動アーム16に取付ボルト17等によって取り付けられ、シートバックフレーム21がリクライニング装置15の回動アーム16に一体的に連結される。なお、リクライニング装置15は、既存の公知のものが使用でき、かつ本発明と直接関係するものではないにで、詳細な説明を省略する。
また、図1及び図2に示すように、シートバックフレーム21の上方フレーム22に、左右一対の筒状のステーブラケット47が一体的に形成される。このステーブラケット47にヘッドレスト45に装着されたステー46を挿入係止することによって、シートバック20の上端にヘッドレスト45が装着される。
一方、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30は、図1及び図5(a)に図1のa−a線断面図を示すように、架設弾性支持部材27側において架設弾性支持部材27と対向する略矩形状の前面側表皮32の周縁と、前面側表皮32と対向して表皮41の背面部43側に配置される背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有し、前面側表皮32と背面側表皮32の幅方向中央部間に前後方向の膨張展開量を規制する帯状或いはテープ状の複数のテザー34が架け渡される。
このエアバッグ30はインフレータ29から膨張ガスが供給されると、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で膨張展開すると共に、図4及び図5(b)に図4のb−b線断面を示すように幅方向中央部においてはテザー34によって前後方向の膨張展開量Loが規制され、シートバック20の車体外方側、即ち車室側壁2側となる外側部30aでは上下方向に亘って後方に迫り出すように膨出して大きな前後方向の膨張展開量La及び衝撃吸収ストロークが確保され、車体内方側となる車室幅方向中央側の内側部30bでは上下方向に亘って後方に迫り出すように膨出して大きな前後方向の膨張展開量Lbが確保できる。これらエアバッグ30の外側部30a及び内側部30bの膨張展開に伴って表皮41の背面部43における外方領域43a及び内方領域43bが大きく膨出する。
すなわち、エアバッグ30の膨張展開形状は、シートバック20の中央側よりシートバック20の側方側となる外側部30a及び内側部30bで前後方向の膨張展開量が大きくなるように設定される。なお、エアバッグ30は、膨張展開後に内部の気体を外部に放出する図示しないオリフィスを有する。
このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び伸張して膨出する表皮41の背面部43によって被覆されて展開挙動が制御されて安定した膨張展開が保持されるとともに、十分な膨張展開量が得られ、かつ車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保できる。
図3は、車両用エアバッグの制御回路を示し、制御回路はエアバッグ30の膨張展開を制御する制御部50を備え、制御部50は車両への後突及び衝撃荷重を予知する後突予知手段である後突検知センサ51からの衝突発生情報と、ROM53に格納されたプログラムに従ってインフレータ29を作動制御する。
ここで、制御部50は内蔵タイマを有し、後突予知時点からタイマースタートして計時を行う。また、後突検知センサ51は、例えばミリ波センサ等の距離センサを含んで構成され、自車と後突の可能性のある他車との間の相対距離や相対速度を計測して後突を予知する。更に、後突検知センサ51は、予知された後突の際の衝撃荷重を予知する。
以上のように構成された車両用シートを備えた車両において、後突検知センサ51により所定以上の衝撃荷重を伴う後突を予知した際に、制御部50からインフレータ29に駆動信号が出力されて、インフレータ29から膨張ガスが噴出する。これにより、エアバッグ30は図1及び図5(a)に示すように収納状態から図4及び図5(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で膨張展開する。このエアバッグ30の膨張展開により、後突による前席着座者Pfの上体Pbの後方移動(図5(b)に矢印Pfaで模式的に示す)は、表皮41の前面部42、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて規制される。
一方、後席着座者Prは、後突の衝撃による車体変形や、後突により後方移動してシートバックを押圧した後のリバーンド等で前方に直線状で移動(模式的に矢印Praで示す)して、例えば膝Pnが前席シート10のシートバック20の背面に当接することがある。このとき膝Pnはシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で膨張展開したエアバッグ30によって表皮41を介在して弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝部Pnによる衝撃力が回避されて前席シート10の着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnのシートバック20の背面への当接による衝撃力及び胸部等の上体による衝撃力が膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
特に、オフセット後突等により車両がヨーイング挙動して前席シート10の着座者Pfが車体外側方となる車体側壁2側に向かう斜め後方移動(矢印Pfbで模式的に示す)し、かつ後席着座者Prが車体側壁2側に向かう斜め前方移動(矢印Prbで模式的に示す)する状況が発生した際には、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの斜め後方移動は、表皮41の前面部42、シートパッド28及び架設弾性支持部材27を介して膨張展開したエアバッグ30、特に膨張展開量Laが確保された外側部30aによって弾性的に受け止められて規制される。
一方、後席シート60の着座者Prの膝Pnは、シートバック20の架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43の側部領域43aとの間で後方に膨出して展開した外側部30aによって弾性的に受け止められ前方及び側壁2側への移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席着座者Prの膝部Pnによる衝撃力が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力及び胸部等の上体による衝撃力が膨張展開した膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保されたエアバッグ30の外側部30aよって弾性的に受け止められ、かつ車体側壁2への当接が防止される。
また、オフセット後突等により車両がヨーイング挙動して前席シート10の着座者Pfが車体内側方となる車幅方向中央側に向かう斜め後方移動(矢印Pfcで模式的に示す)し、かつ後席着座者Prが車体内方側に向かう斜め前方移動(矢印Prcで模式的に示す)する状況が発生した際には、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮41の前面部42、シートパッド28及び架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30、特に膨張展開量Lbが確保された内側部30bによって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席着座者Prの膝Pnは、シートバック20の架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43の側部領域43bとの間で後方に膨出して展開した内側部30bによって弾性的に受け止められ前方及び車体内方側への移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝部Pnによる衝撃力が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力及び胸部等の上体による衝撃力がエアバッグ30の内側部30bよって弾性的に受け止められて保護される。
したがって、これによれば、エアバッグ30の外側部30a及び内側部30bの前後方向の膨張展開量を大きくすることで、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバック30での着座者Pfの直接の保護及びシートバック20後方からの衝撃の的確な軽減が可能となる。
また、上記実施の形態では、エアバッグ30の中央部の膨張展開量Loに対し外側部30a及び内側部30bの前後方向の膨張展開量La、Lbを大きく設定したが、エアバッグ30の中央部の膨張展開量Loに対し外方部30aのみ側の膨張展開量を大きくすることもできる。
この一例を図6を参照して説明する。図6(a)はシートバックの横断面図、(b)は作動説明図であり、図6(a)及び(b)に図5(a)及び(b)と対応する部分に同一符号を付すること該部の詳細な説明は省略する。
図6(a)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30が、前面側表皮32の周縁と、背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有し、前面側表皮32と背面側表皮32の幅方向内方から中央部間に亘って複数のテザー34が架け渡される。
このエアバッグ30は、インフレータ29から膨張ガスが供給されると、図6(b)に示すように、テザー34によって前後方向の膨張展開量Loが規制され、シートバック20の車室側壁2側となる外側部30aでは上下方向に亘って後方に迫り出すように膨出して大きな前後方向の膨張展開量Laが確保される。すなわち、エアバッグ30の膨張展開形状は、シートバック20の中央側よりシートバック20の側方側となる外側部30aが大きくなるように設定される。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図6(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席着座者Pfの上体Pbの後方移動は、エアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席シート60の着座者Prは、膝Pnが膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束されて、膝Pnによる衝撃力が回避されて前席シート10着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnや胸部等の上体による衝撃力が膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
オフセット後突等により車両がヨーイング挙動して前席シート10の着座者Pfが車体外側方となる車体側壁2側に向かう斜め後方移動し、かつ後席シート着座者Prが車体側壁2側に向かう斜め前方移動する状況が発生した際には、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動がシートパッド28及び架設弾性支持部材27等を介してエアバッグ30、特に膨張展開量が確保された外側部30aによって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席着座者Prの膝Pnは、後方に膨出して展開した外側部30aによって弾性的に受け止められて前方及び車体側壁2側への移動が拘束されて、前席シート10着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnや胸部等が膨張展開したエアバッグ30の外方側部30aよって弾性的に受け止められ、かつ車体側壁2との当接が防止されて保護される。
また、エアバッグ30の中央部の膨張展開量Loに対し内方側部30b側のみの前後方向の膨張展開量Lbを大きく設定することもできる。この例を図7を参照して説明する。図7(a)はシートバックの横断面図、同図(b)は作動説明図であり、図7(a)及び(b)に図6(a)及び(b)と対応する部分に同一符号を付すること該部の詳細な説明は省略する。
図7(a)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30が、前面側表皮32の周縁と、背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有し、前面側表皮32と背面側表皮32の幅方向外方から中央部の間に複数のテザー34が架け渡される。
このエアバッグ30は、インフレータ29から膨張ガスが供給されると、図7(b)に示すように、テザー34によって前後方向の膨張展開量Loが規制され、シートバック20の内方側となる内側部30bでは上下方向に亘って後方に迫り出すように膨出して大きな前後方向の膨張展開量Lbが確保される。すなわち、エアバッグ30の膨張展開形状は、シートバック20の中央側よりシートバック20の内側方側となる内側部30aが大きくなるように設定される。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図7(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、エアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席着座者Prの膝Pnが膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束されて、膝Pnによる衝撃力が回避されて前席シート10の着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnや胸部等の上体による衝撃力が膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
オフセット後突等により車両がヨーイング挙動して前席シート10の着座者Pfが車体内方に向かう斜め後方移動し、かつ後席シート着座者Prが車体内方に向かう斜め前方移動する状況が発生した際には、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動がシートパッド28及び架設弾性支持部材27等を介してエアバッグ30、特に膨張展開量が確保された内側部30bによって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席シート60の着座者Prの膝Pnは、後方に膨出して展開した内側部30bによって弾性的に受け止められて移動が拘束されて、膝部Pnによる衝撃力が回避されて前席シート10着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pn及び胸部等の上体が膨張展開したエアバッグ30の内側部30bよって弾性的に受け止められて保護される。
これらエアバッグ30の外側部30a或いは内側部30bのいずれか一方のみを大きく後方に膨張展開することで、上記エアバッグ30の外側部30a及び内側部30bを共に大きく膨張展開する場合に比べ、エアバッグ30の小型化及び膨張展開量が抑制され、インフレータ29の出力を抑制することができる。
(第2実施の形態)
本発明に係る車両用シートの第2実施の形態を図を参照して説明する。図8の(a)は車両用シートの概要を示す縦断面、(b)は作動説明図であり、図9の(a)は図8(a)のc−c線断面図、(b)は図8(b)のd−d線断面図である。なお、図8及び図9において図1乃至図7と対応する部位に同一符号を付すことで該部の詳細な説明を省略する。
前席シート10におけるシートバック20は、第1実施の形態と同様に、シートバックフレーム21の内方に架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が収納状態で配置され、これら全体が伸縮性を有する袋状の表皮41で被覆される。
エアバッグ30は、図8(a)及び(b)に示すように、架設弾性部材27側において架設弾性支持部材27を対向する略矩形の前面側表皮32の周縁と、表皮41の背面部43側に配置される背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有する。図9(a)及び(b)に示すように前面側表皮32と背面側表皮33の下部間に前後方向の膨張展開量を規制する帯状或いはテープ状の複数のテザー34がシート幅方向に等間隔で架け渡される。
このエアバッグ30はインフレータ29から膨張ガスが供給されると、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で膨張展開し、図8(b)及び図9(b)に示すようにシートバック20の下部範囲となる後席着座者Prの膝Pnの高さ位置と対応する下方側部30dにおいては複数のテザー34によって膨張展開量Ldが規制され、シートバック20の上方となる後席シート60の着座者Prの胸部高さ位置と対応する上方側部30hでは後方に迫り出すように大きく膨出して前後方向の膨張展開量Lhが確保できる。このエアバッグ30の上方側部30hの膨張展開に伴って表皮41の背面部43における上部領域が大きく膨出、あるは破断する。すなわち、エアバッグ30の膨張展開形状は、シートバック20の上方側と下方側で前後方向の展開量が異なり、下方側に対し上方側で大きく膨張展開する。
また、図9(b)に示すようにエアバッグ30の下方側部30dでは各テザー34によって局部的に前後方向の膨張展開量が規制されて背面側表皮33に凹凸面30eが形成される。このエアバッグ30の背面に形成される凹凸面30eはシートバック20の背面に衝撃力を付与する衝撃付与部となる後席シート60に着座する着座者Pfの膝pnを拘束保持する。
このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び伸張して膨出する表皮41の背面部43によって被覆されて膨張展開挙動が制御されて安定した膨張展開が保持されると共に、十分か膨張展開量が得られ、かつ車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保できる。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図8(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮41の前面部42、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて規制される。
一方、後席シート60の着座者Prは後突の衝撃により前方に移動する。このとき膝Pnは膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dの凹凸面30eに嵌り込み拘束されると共に弾性的に受け止められて前方移動が規制され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは、後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力から回避されて前席シート着座者Pfが保護される。
同様に、前進移動する後部着座者Prの膝Pnは膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dによって弾性的に受け止められて保護される。このとき図8(b)に仮想線Pnで示すようにエアバック30の下方側部30dに形成された凹凸面30eに嵌り込み、エアバッグ30の下方側部30dと膝Pnの相対移動が規制されて良好にエアバッグ30により弾性的に受け止められる。
一方、前倒移動する後側シート60の着座者Prの上体、特に胸部等は、図8(b)に仮想線で示すように大きく膨張展開して突出するエアバッグ30の上方側部30hによって弾性的に受け止められて保護される。
また、上記実施の形態では、シートバック20の下方側となるエアバッグ30の下方側部30dの前後方向の膨張展開量に対しシートバック20の上方側となる上方側部30hの前後方向の膨張展開量を大きく設定したが、上方側部30fの前後方向の膨張展開量に対し下方側部30dの前後方向の膨張展開量を大きく設定することもできる。
この一例を図10を参照して説明する。図10の(a)はシートバックの横断面図、(b)は作動説明図である。なお、図10に図8と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
前席シート10のシートバック20は、シートバックフレーム21の内方に複数の架設弾性支持部材27が張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が配置され、これら全体が伸縮性を有する袋状の表皮41で被覆される。
架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30は、図10(a)及び(b)に示すように、前面側表皮32の周縁と、背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有する。また、前面側表皮32と背面側表皮33の上部間に前後方向の膨張展開量を規制する複数のテザー34が架け渡される。
このエアバッグ30はインフレータ29から膨張ガスが供給されると、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で膨張展開し、図10(b)に示すようにシートバック20の上部範囲となる上方側部30hでは複数のテザー34によって膨張展開量Lhが規制され、シートバック20の下部範囲となる後席シート60の着座者Prの膝Pnの高さ位置と対応する下方側部30dにおいては後方に迫り出すように膨出して前後方向の膨張展開量Ldが大きく設定される。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図10(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮41の前面部42、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
一方、後席シート60の着座者Prの膝Pnは大きく膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dによって弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは、膝Pnによる衝撃力から回避されて前席シート着座者Pfが保護される。また、前方移動する後部シート60の着座者Prの膝Pnは膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dによって弾性的に受け止められて保護される。
したがって、これによればエアバッグ30の上方側部30hに対し下方側部30dにおける前後方向の膨張展開量を大きく設定、または下方側部30dに対し上方側部30hの前後方向の膨張展開量を大きく設定することで、構成の複雑化を伴うことなく衝突時におけるエアバック30での着座者Pfの直接の保護及びシートバック20後方からの衝撃の的確な軽減が可能となる。なお、このエアバッグ30においても上記同様にエアバッグ30の背面に後席シート60に着座する着座者Pfの膝Pnを拘束保持する凹凸面を形成することもできる。
(第3実施の形態)
本発明に係る車両用シートの第3実施の形態を図を参照して説明する。図11は車両用シートの概要を示す縦断面であり、図12(a)は図11におけるe−e線断面図、(b)は作動説明図である。なお、図11及び図12において図1乃至図7を対応する部位に同一符号を付すことで該部の詳細な説明を省略する。
前席シート10のシートバック20は、シートバックフレーム21の内方に架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が収納状態で配置され、これら全体が伸縮性を有する袋状の表皮41で被覆される。
架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30は、図12(a)及び(b)に示すように、架設弾性部材27側において架設弾性支持部材27を対向する前面側表皮32の周縁と、前面側表皮32と対向背面部43側に配置される略矩形状の背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有する。
図12(b)に膨張展開状態を示すように、エアバッグ袋体31の前面側表皮32は前後方向の膨張展開量Lfが比較的大きくなるように展開する一方、背面側表皮33は前後方向の膨張展開量Lrが前面側表皮32の膨張展開量Lfに対し極めて小さく展開するように設定される。換言するとエアバッグ30は、シートバック20の後方側となる背面部43側における前後方向の膨張展開量に対し前方側となる架設弾性部材27側における前後方向展開量が大きく設定される。
このように設定されたエアバッグ30が架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で急激に膨張展開すると、膨張展開量が前面側表皮側と背面側表面側において均等に設定されたエアバックが膨張展開した場合に比較して架設弾性部材27側に大きな押圧力が付与される一方、背面部43には比較的小さな押圧力が付与される。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図12(b)に示すように、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。このエアバッグ30の膨張展開により架設弾性支持部材27側が比較的大きな押圧力によって前方に押圧されて前席シート10の着座者Pfが比較的強固に受け止められ、着座者Pfの後方移動が規制される。
一方、後席着座者Prの膝Pnは膨張展開したエアバッグ30によって比較的緩やかに受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力から回避される。同様に、前進移動する後部シート60の着座者Prの膝Pnは膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dによって弾性的に受け止められて保護される。
また、エアバッグ30の膨張展開形状をシートバック20の前方側より後方側で前後方向展開量を大きく設定することもできる。この一例を図13を参照して説明する。なお、図13(a)及び(b)は上記図12(a)及び(b)に相当する部位の断面図であり、図13において図12と対応する部位に同一符号を付すことで該部の詳細な説明を省略する。
シートバック20内において架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間に配置されるエアバッグ30は、図13(a)及び(b)に示すように、架設弾性部材27側において架設弾性支持部材27を対向する矩形の前面側表皮32の周縁と、前面側表皮32と対向して表皮41の背面部43側に配置される背面側表皮33の周縁とを縫い合わせたエアバッグ袋体31を有する。
図13(b)に膨張展開状態を示すように、エアバッグ袋体31の前面側表皮32は前後方向の膨張展開量Lfが比較的小さなるように展開する一方、背面側表皮33は前後方向の膨張展開量Lrが前面側表皮32の膨張展開量Lfに対し極めて大きく展開するように設定される。換言するとエアバッグ30は、シートバック20の前方側となる架設弾性部材27側における前後方向の膨張展開量に対し、背面部43側における前後方向展開量が大きく設定される。
このように設定されたエアバッグ30が架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間で急激に膨張展開すると、膨張展開量が前面側表皮側と背面側表面側において均等に設定されたエアバックが膨張展開した場合に比較して背面部43側に大きな押圧力が付与される一方、架設弾性支持部材27側に比較的小さな押圧力が付与される。
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突を予知した際に、図13(b)に示すように架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との間でエアバッグ30が膨張展開する。このエアバッグ30の膨張展開により架設弾性支持部材27側が比較的小さな押圧力によって前方に押圧されて前席シート10の着座者Pfが比較的緩やか受け止められ、着座者Pfの後方移動が規制される。
一方、後席着座者Prは後突の衝撃により前方に移動すると、このとき膝Pnは膨張展開したエアバッグ30によって比較的大きな押圧によって比較的強固に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力から回避されて前席シート着座者Pfが保護される。同様に、前方移動する後部シート60の着座者Prの膝Pnは膨張展開したエアバッグ30の下方側部30dによって弾性的に受け止められて保護される。
従って、上記説明した実施の形態によると、シートバック内に配置されたエアバッグの膨張展開量を前後方向で異なるように設定する簡単な構成で、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止め、且つ後方からの衝撃から着座者を保護することができ、衝突時におけるエアバックでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減を可能となる。
なお、上記各実施の形態では衝突予知手段による衝突予知に基づいてエアバッグ30の膨張展開を制御する場合を例に説明したが、衝突を検知する衝突検知手段により衝突検知に基づいて上記エアバッグ30の膨張展開を制御することもできる。
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態について図14〜16を参照して説明する。図14は本実施の形態に係る車両用シートの概略断面図、図15は本実施の形態に係る車両用シートの、後方から見た一部破断概略斜視図、図16は本実施の形態に係る車両用シートの、衝撃発生時における作動説明図である。尚、本実施の形態において第1実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施の形態と第1実施の形態と比較すると、エアバッグの構成において異なる。
本実施の形態においてエアバッグ30は、テザー34が架け渡された構成を有さず、架設弾性支持部材27の後方に矩形平面状に折り畳まれた状態で表皮41の背面部43に係止されている。エアバッグ30が、架設弾性支持部材27及び表皮41の背面部43に挟まれた配置をとることにより、後述するように、エアバッグ30が膨張展開する際の反力を受けてこのエアバッグ30の膨張展開方向を方向づける反力受け部材は、本実施の形態においてはサイドブラケット24間に架け渡された架設弾性支持部材27となる。
従って、図14及び図15に示すように、略矩形平面状に収縮したエアバッグ30は、架設弾性支持部材27と表皮41の背面部43との隙間でシートバック20に内蔵されており、シートバック20は、膨張展開するエアバッグ30の前方を、架設弾性支持部材27、シートパッド28及び表皮41等の可撓材で被覆する一方、エアバッグ30の後方を、可撓性材料の表皮41で被覆する。
以上の構成による車両用シート65の作用を、車両の後突を例に以下に説明する。
本実施の形態に係る車両用シート65を有する車両に後方から他の車両が衝突すると、後突検知センサ51により所定以上の衝撃荷重を伴う後突を予知した際に、制御部50からインフレータ29に駆動信号が出力されて、インフレータ29から膨張ガスが噴出する。これにより、図16に示すように、架設弾性支持部材27とシートバック20背面間の領域でエアバッグ30が瞬時に膨張展開する。
この際、エアバッグ30の前方は架設弾性支持部材27、シートパッド28及び表皮41等の可撓材に被覆されているので、エアバッグ30の膨張展開により、これらの可橈材は図16の車体前方方向にやや変形する挙動を示し、エアバッグ30の後方を被覆する可撓性材料の表皮41の背面部43は、車体後方に大きく突き出して変形する挙動を示す。
本実施の形態における車両用シート65の特徴的なことは、このエアバッグ30前後の可橈材乃至可橈性材料の上記変形挙動により、エアバッグ30の車体前後方向の展開量Eが確保され、シートバック20による車体前後方向の衝撃吸収ストロークが大きく確保できることにある。
すなわち、同図に示すように、後突の衝撃によって車両用シート65(前席シート)着座者Pfの上体の後方移動は、シートバック20前面の表皮41、シートパッド28、架設弾性支持部材27及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、車両用シート65(前席シート)着座者Pfの上体は、後突によりその着座するシートのシートバック20に押し当てられる衝撃から保護される。
一方で、後席シート着座者Prは後突の衝撃で後席シート65に押付けられ、その後のリバーンドで前方へと移動する。このリバーンドにより前方へ移動する後席シート着座者Prの膝は、シートバック20背面の表皮41及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、車両用シート65(前席シート)着座者Pfの上体は、後席シート着座者Prの膝が突き当たる衝撃から保護される。
このとき、エアバッグ30は、車両用シート65の着座者Pf上体の直後に位置するシートバック20内でそのシートバック20の内部形状にある程度拘束されて安定的に膨張展開するので、着座者Pf上体の後方移動を的確に受け止め、且つ後席シート着座者Prの膝の前方移動による衝撃を的確に吸収することができ、着座者Pfの適正な保護を図ることができる。
また、係る着座者Pfの保護は、シートバック20内部で膨張展開するエアバッグ30と、その前後方向の可撓性材料(すなわち、表皮41、シートパッド28、架設弾性支持部材27等)の配置によりなされているので、構成が大幅に簡素化されている。
そのうえ、架設弾性支持部材27を反力受け部材としてエアバッグ30を積極的にシートバック背面方向に膨張展開させることができるので、シートバック後方から入力される着座者Prの前方移動による衝撃をより効果的に吸収することができる。
尚、上記実施の形態においては、車両用シート65に衝突が生じた際の作用を、車両の後突を例に説明したが、衝突は後突に限られない。例えば、前突の場合であっても、順序は前後するが、車両用シート65は、同様にエアバッグ30の膨張展開により、まず、後席シート着座者Prの膝の前方移動による衝撃を弾性的に受け止め、その後に車両用シート65着座者の上体の後方移動を弾性的に受け止めることが可能である。
(第5実施の形態)
次に、本発明の車両用シートの第5実施の形態を、図17を参照して説明する。第4実施の形態においては、反力受け部材を架設弾性支持部材27とし、エアバッグ30を架設弾性支持部材27の後方に配置することで、エアバッグ30の膨張展開方向をシートバックの後方とする場合について説明したが、本実施の形態では、反力受け部材の構成を一部変更し、且つエアバッグ30の膨張展開方向を変更させた構成について説明する。尚、本実施の形態において第4実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
図17は、本実施の形態に係る車両用シート70の、後方から見た一部破断概略斜視図である。同図に示すように、本実施の形態に係る車両用シート70においては、反力受け部材及びエアバッグの構成以外のシートバック20の全体構成については第4実施の形態と変更が無いので、その詳細の説明を省略する。
架設弾性支持部材72は、本実施の形態においては、上方クロスメンバ25、側方フレーム23、サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26に囲まれてなる略矩形の領域Rの上部において各サイドブラケット24間に架け渡されて張設された金属ワイヤよりなる2本のSバネである。
そして、上記略矩形の領域Rの下部において、各サイドブラケット24間に平板状のランバーサポート74が、このランバーサポート74の側部74aに設けられたU字フック74bと各サイドブラケット24に設けられた図示しないU字フックとに掛止される引張スプリング76によって架設支持されている。
この引張スプリング76に架設支持されたランバーサポート74により、シートパッド28を介して着座者Pfの腰椎が前方に押出され、自然な運転姿勢がサポートされる。すなわち、着座者Pfの背骨の緩やかな逆S字カーブが維持され、長時間の運転における腰の負担が軽減されている。
エアバッグ78は、後面視で上記略矩形の領域Rに対応する矩形平面状に折り畳まれて配置されており、本実施の形態においては、架設弾性支持部材72及びランバーサポート74の前方においてシートパッド28に係止されている。
したがって、本実施の形態においては、反力受け部材は架設弾性支持部材72及びランバーサポート74であり、エアバッグ78は、これら反力受け部材とシートパッド28との間に配置されることとなる。
この構成によれば、衝突(例えば、後突)により、エアバッグ78がシートバック20内部で膨張展開した場合に、エアバッグ78は、その後方に配置された架設弾性支持部材72及びランバーサポート74による大きな反力を得て積極的に前方へと膨張展開し、前席着座者Pfの上体がシートバック20に押し当てられる衝撃をより効果的に受け止め、吸収することが可能となっている。
(第6実施の形態)
更に、本発明の車両用シートの第6実施の形態を、図18〜20を参照して説明する。図18は、本発明の第3実施の形態に係る車両用シートの、後方から見た一部破断概略斜視図であり、図19は、同図のXIX−XIX線断面図であり、図20は、車両用シートの、衝突発生時における作動を説明するシートバックの概略横断面図である。本実施の形態においては、反力受け部材は、架設弾性支持部材27に加え、下記の緊張体82及びフローティング体84を用いている点において第4及び第5実施の形態と異なる。
本実施の形態においては、図18及び19に示すように、サイドブラケット24間に、架設弾性支持部材27の後方で、天然繊維又は化学繊維からなるロープにより構成される緊張体82が、フローティング体84を、上方クロスメンバ25、側方フレーム23、サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26に囲まれてなる略矩形の領域R内に常態において所定の弛みを有しつつフローティング支持している。
フローティング体84は、平面視隅切り角状(隅切り角とは、方形の四隅を切り落とした形状をいう。)に構成された布体又は網体であって、車体後方側の面がシートバック20背面に固定されており、車体前方側の面にエアバッグ30を支持している。このフローティング体84の、緊張体82によるフローティング支持について、以下に述べる。
車両の車幅方向内方側のサイドブラケット24aの内側に、2本の緊張体82aの一端が高さ方向に所定間隔を有してそれぞれ固定されており、これらがエアバッグ30の前方を通過しつつ車幅方向外方側のサイドブラケット24bに向けて伸長し、エアバッグ30の側端部でエアバッグ30の後方へと折り返し、他端がフローティング体84の車幅方向外方側の角部84aにそれぞれ固定されている。
また、車両の車幅方向外方側のサイドブラケット24bの内側に、上記2本の緊張体82aと対応する2本の緊張体82bの一端がそれぞれ固定されており、エアバッグ30の前方を通過しつつ緊張体82aと交差して車幅方向内方側のサイドブラケット24aに向けて伸長し、エアバッグ30の側端部でエアバッグ30の後方へと折り返し、他端がフローティング体84の車幅方向内方側の角部84bにそれぞれ固定されている。
緊張体82aと緊張体82bの交差部位には、図19に示すように、双方の緊張体82a及び82bを挿通させる環状のワンウェイクラッチ86が取り付けられており、緊張体82a及び82bがサイドブラケット24との結合端部側からフローティング体84との結合端部側へと繰り出される動きは自由であるが、逆方向へと(すなわち、フローティング体84からサイドブラケット24a及び24b方向)へと戻される動きがワンウェイクラッチ86内部に設けられた図示しない逆止爪により防止される。
したがって、エアバッグ30は、常態において所定の弛みを有した緊張体82a及び82bを介して両サイドブラケット24a及び24b間にフローティング支持されたフローティング体84とによって包囲された状態で(いわば、抱きかかえられた状態で)、上記略矩形の領域R内で支持されている。
この構成によれば、エアバッグ30は架設弾性支持部材27とシートバック20背面との間に位置するため、衝突に伴うインフレータ29の作用によるエアバッグ30の膨張展開の際、図20に示すように、架設弾性支持部材27は反力受け部材として作用し、エアバッグ30はシートバック20背面方向へと膨張展開する挙動を示す。
一方で、膨張展開によるエアバッグ30の体積の増大に伴って緊張体82a及び82bの弛みが解消し、緊張体82a及び82b並びにフローティング体84が緊張状態となる。すると、エアバッグ30は緊張状態となった緊張体82a及び82b並びにフローティング体84からの反力を受けるので、シートバック20背面方向へと膨張展開する挙動が抑止され、その膨張展開位置が両サイドブラケット24間に保持されるようにコントロールされることとなる。
尚、本実施の形態においては、反力受け部材は、架設弾性支持部材27に加え、緊張体82及びフローティング体84を用いているが、本実施の形態からフローティング体84を用いないこととした変形例を、以下、図21及び22を参照して説明する。
図21は、本変形例に係る車両用シート80を図18におけるXIX−XIX断面と対応する断面で表わした概略断面図であり、図22は、本変形例に係る車両用シート80の、衝突発生時における作動を説明するシートバックの概略横断面図である。尚、図21に示すように、本変形例に係る車両用シート80においては、反力受け部材及びエアバッグの構成以外のシートバック20の全体構成については第6実施の形態と変更が無いので、その詳細の説明を省略する。
本変形例においては、図21に示すように、サイドブラケット24間に、架設弾性支持部材27の後方で、緊張体90が、上方クロスメンバ25、側方フレーム23、サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26に囲まれてなる略矩形の領域R(領域Rについては、図17参照乞う)内に常態において所定の弛みを有しつつエアバッグ92を直接フローティング支持している。緊張体90によるエアバッグ92のフローティング支持について、以下に述べる。
エアバッグ92は、上記略矩形の領域Rに対応する矩形平面状に折り畳まれて配置されており、本変形例では緊張体90によってサイドブラケット24a及び24b間にフローティング支持されているが、フローティング支持された状態でエアバッグ92の車体後方側の面がシートバック20背面に係止されていても良い。
上記第6実施の形態同様に、車両の車幅方向内方側のサイドブラケット24aの内側に、2本の緊張体90aの一端が高さ方向に所定間隔を有してそれぞれ固定されており、図21に示すように、これらがエアバッグ92の前方を通過しつつ車幅方向外方側のサイドブラケット24bに向けて伸長し、両サイドブラケット24a及び24bの略中央位置でエアバッグ92の車体前方側の面からエアバッグ内部に挿入され、他端が車幅方向外方側の側端部92aに固定されている。この場合において、緊張体90aは、例えば、内部の気体を外部に放出する図示しないオリフィスを介してエアバッグ92の内部に挿入される。
また、車両の車幅方向外方側のサイドブラケット24bの内側に、上記2本の緊張体90aと対応する2本の緊張体90bの一端がそれぞれ固定されており、エアバッグ92の前方を通過しつつ緊張体90aと交差してサイドブラケット24aに向けて伸長し、両サイドブラケット24a及び24bの略中央位置でエアバッグ92の車体前方側の面からエアバッグ92内部に挿入され、他端が車幅方向内方側の側端部92bに固定されている。
エアバッグ92の前方における緊張体90aと90bの交差部位には、双方の緊張体90a及び90bを挿通させた環状のワンウェイクラッチ94が取り付けられており、緊張体90a及び90bがそれらの一端側から他端側へと繰り出される動きは自由であるが、逆方向へ戻される動きが防止される。
この構成によれば、エアバッグ92は架設弾性支持部材27とシートバック20背面との間に位置するため、エアバッグ92が膨張展開する際、図22に示すように、架設弾性支持部材27は反力受け部材として作用し、エアバッグ92はシートバック20背面方向へと膨張展開する挙動を示す。
一方で、エアバッグ92がシートバック20の幅方向へと膨張展開する力を利用して緊張体90a及び90bが引っ張られ、緊張体90a及び90bが緊張状態となる。すると、エアバッグ92は緊張状態となった緊張体90a及び90bからの反力を受けるので、シートバック20背面方向へと膨張展開する挙動が抑止され、その膨張展開位置が両サイドブラケット24間に保持されるようにコントロールされることとなる。
すなわち、緊張体90によるエアバッグ92のフローティング支持構造の工夫により、さらに簡単な構成でエアバッグ92の膨張展開位置をコントロールすることが可能となっている。
更に、第5実施の形態のランバーサポートの変形例を、図23〜25を用いて以下に説明する。図23(A)は、本発明の第5実施の形態の変形例に係る車両用シート70の下部を後方から見た一部破断概略斜視図であり、同図(B)は、同図(A)のXXIIIB−XXIIIB線断面図であり、図24(A)は、車体前方から荷重を受けた際のランバーサポートの作用を示す概略横断面図であり、同図(B)は同図(A)の要部拡大図であり、図25(A)は本変形例に係る車両用シート70の衝突発生時における作動を説明するシートバックの概略横断面図であり、同図(B)は同図(A)の要部拡大図である。
尚、図23(A)及び(B)に示すように、本変形例に係る車両用シート70においては、反力受け部材及びエアバッグの構成以外のシートバック20の全体構成については第5実施の形態と変更が無いので、その詳細の説明を省略する。
架設弾性支持部材72は、第5実施の形態同様(図17参照乞う)、上方クロスメンバ25、側方フレーム23、サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26に囲まれてなる略矩形の領域Rの上部において各サイドブラケット24間に架け渡されて張設された金属ワイヤよりなる2本のSバネである。
ランバーサポート100は、本変形例においては、図23(A)及び(B)に示すように、後面視略矩形の一定の可撓性を有する樹脂板100aの後方側の面に高さ方向に伸長する短冊状の板材100b(樹脂板100aよりも可撓性の小さいもの)を連続して並べて貼り合わせてなる板状体であって、側部100cに設けられたU字フック100dと各サイドブラケット24に設けられたU字フック24cとに掛止される引張スプリング76によって架設支持されている。
隣接する板材100bは本変形例においては隙間なく並べているが、この隣接する板材100b同士の間隔を調整することで、後述するように車体前方側に凸となる方向へのランバーサポート100の変形量をどの程度に抑制するかを設定することができる。
エアバッグ102は、本変形例においては、架設弾性支持部材72及びランバーサポート100の後方に後面視で上記略矩形の領域Rに対応する矩形平面状に折り畳まれた収縮状態で配置されている。
この構成によれば、図24(A)に示すように、車両の運転時において、前席シート10の着座者Pfがシートバック20にもたれかかる荷重F1に対しては、ランバーサポート100は、その荷重F1を受けて変形するシートパッド28の形状に追従して車体後方に凸となるようにやや撓み変形する。この変形は、図24(B)に示すように、一定の可撓性を有する樹脂板100aの撓み変形及び樹脂板100aの撓み変形に応じて隣接する板材100b間に間隙104が生じることにより可能となる。
そして、エアバッグ102が膨張展開するときには、エアバッグ102は架設弾性支持部材72及びランバーサポート100とシートバック20背面との間に位置するため、図25(A)に示すように、架設弾性支持部材72及びランバーサポート100は反力受け部材として作用し、エアバッグ102はシートバック16背面方向へと膨張展開する挙動を示す。
この際、図25(B)に示すように、ランバーサポート100はエアバッグ102から車体前方に作用する力を受けるが、隣接する板材100b同士が干渉し合うためにランバーサポート100が車体前方方向に凸となるように変形することは無い。
すなわち、ランバーサポート100は、常態においては車体前方からの荷重F1を受けて車体後方へと撓み変形することでシートパッド20の使用感を向上させ、エアバッグ102の膨張展開時にはエアバッグ102を車体後方へと大きく膨張展開させる強力な反力受け部材として作用する。
(第7実施の形態)
次に、本発明の第7実施の形態について図26〜28を参照して説明する。図26は本発明の実施の形態に係る車両用シート110の概略断面図、図27は本実施の形態に係る車両用シート110の、後方から見た一部破断概略斜視図、図28は本実施の形態に係る車両用シート110の、衝撃発生時における作動説明図である。
本実施の形態では、第4実施の形態と比較して、エアバッグ30の前方に架設弾性支持部材を介して浮動体を柔軟に支持している点において構成が異なる。以下に説明する。
図26に示すように、架設弾性支持部材112は、本実施の形態では、浮動体114の側部114aに設けられたU字フック114bと各サイドブラケット24に設けられた図示しないU字フックとに掛止されて架設される金属ワイヤよりなる引張スプリングであって、浮動体114の中心位置から各サイドブラケット24に3本ずつ、放射状に架け渡されて張設されている。尚、架設弾性支持部材112は、引張スプリングに限らず、Sバネ等を用いることも可能である。
浮動体114は、図示のように、平面視略矩形の平板状に成形されている。本実施の形態では、硬化させた合成樹脂を用いているが、柔軟な布製や網製の浮動体であってもよい。このような柔軟な浮動体であっても、この浮動体とシートバックフレーム21との間に放射状に架設された複数の架設弾性支持部材112によって柔軟な浮動体を平面状に展開させた状態を維持したまま保持させることが可能である。
尚、本実施の形態においては、架設弾性支持部材112と平板状の浮動体114とによってランバーサポートが構成されており、この浮動体114が後述するシートパッド28を介して着座者Pfの上体を前方に押圧支持することで、自然な運転姿勢がサポートされる。更に、平板状の浮動体の高さ位置を適切な位置に調節することで、着座者Pfの背骨の緩やかな逆S字カーブが維持され、長時間の運転における腰の負担の軽減も可能となる。
浮動体114の前面には、着座者Pfの上体を弾性的に支持するウレタンフォーム材等からなるシートパッド28が配設されており、浮動体114の後方には、矩形平面状に折り畳まれた収縮状態のエアバッグ30が配置されている。
以上により、着座者Pfの上体、特に胸部乃至腰部を背後から弾性的に支持可能とするシートバック16が形成される。
当該シートバック16内において、エアバッグ30は、例えば、その後方側の面が表皮41等に図示しない係止手段によって膨張展開可能に保持されており、前方側の面は浮動体114の後面114cに膨張展開可能に係止されている。エアバッグ30は、後述するように、このエアバッグ30を膨張展開させるガスの発生源である円筒状のインフレータ29を内包しており、このインフレータ29のガス噴射のもとで瞬時に平面的に膨張展開するように構成される。
従って、図26及び図27に示すように、略矩形平面状に収縮したエアバッグ30は、浮動体114と表皮41との隙間でシートバック20内に内蔵されており、シートバック20は、膨張展開するエアバッグ30の前方を、架設弾性支持部材112に柔軟支持された浮動体114、シートパッド28及び表皮41等の可撓材で被覆する一方、エアバッグ30の後方を可撓性材料の表皮41で被覆する。
以上の構成からなる本実施の形態に係る車両用シート110を有する車両に後方から他の車両が衝突すると、後突検知センサ51により所定以上の衝撃荷重を伴う後突を予知した際に、制御部50からインフレータ29に駆動信号が出力されて、インフレータ29から膨張ガスが噴出する。れにより、図28に示すように、浮動体114とシートバック20背面間の領域でエアバッグ30が瞬時に膨張展開する。
この際、エアバッグ30の前方は架設弾性支持部材112、浮動体114、シートパッド28及び表皮41等の可撓材に被覆されているので、エアバッグ30の膨張展開により、これらの可橈材は図28の車体前方方向にやや変形する挙動を示し、エアバッグ30の後方を被覆する可撓性材料の表皮41は、車体後方に大きく突き出して変形する挙動を示す。
そして、本実施の形態における車両用シート110によれば、第4実施の形態同様、このエアバッグ30前後の可橈材乃至可橈性材料の上記変形挙動により、エアバッグ30の車体前後方向の展開量Eが確保され、シートバック20による車体前後方向の衝撃吸収ストロークが大きく確保できる。
すなわち、同図に示すように、後突の衝撃によって車両用シート110(前席シート)着座者Pfの上体の後方移動は、シートバック20前面の表皮材41、シートパッド28、架設弾性支持部材112に柔軟支持された浮動体114及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、車両用シート110(前席シート)着座者Pfの上体は、後突によりその着座するシートのシートバック20に押し当てられる衝撃から保護される。
一方で、後席シート着座者Prは後突の衝撃で後席シートに押付けられ、その後のリバウンドで前方へと移動する。このリバウンドにより前方へ移動する後席シート着座者Prの膝は、シートバック20背面の表皮41及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、車両用シート110(前席シート)着座者Pfの上体は、後席シート着座者Prの膝が突き当たる衝撃から保護される。
このとき、エアバッグ30は、車両用シート110の着座者Pf上体の直後に位置するシートバック20内でそのシートバック20の内部形状にある程度拘束されて安定的に膨張展開するので、着座者Pf上体の後方移動を的確に受け止め、且つ後席シート着座者Prの膝の前方移動による衝撃を的確に吸収することができ、着座者Pfの適正な保護を図ることができる。
また、係る着座者Pfの保護は、シートバック20内部で膨張展開するエアバッグ30と、その前後方向の可撓性材料(すなわち、表皮41、シートパッド28、架設弾性支持部材112に柔軟支持された浮動体114等)の配置によりなされているので、構成が大幅に簡素化されている。
そのうえ、シートバックフレーム21の枠内の浮動体114にエアバッグ30の前方側の面中央を介在してインフレータ29が取り付けられているので、膨張展開後の形状におけるエアバッグ30の幅方向及び高さ方向略中央にインフレータ29を配置させることが可能となり、当該中央位置からエアバッグ30へとガスを放射状に分散して流入させることができ、より全体にも均衡を保持した状態で迅速且つ安定的にエアバッグ30を膨張展開させることができる。
同時に、当該配置によりインフレータ29を、衝突による衝撃から確りと保護することができ、後席着座者Prの膝部の入力方向に対して正面からエアバッグ30内にガスを流入させることができるので、より的確な前席着座者Pfの保護が可能となる。
さらに、浮動体114の放射状架設構造により、エアバッグ30の膨張展開時の反力が浮動体114によって的確に受け止められ(すなわち、この反力を受けた浮動体114のシートバック高さ方向及び幅方向への揺動が強く抑制され)、後方へのエアバッグ30のより安定的な膨張展開が可能となっている。
また、浮動体114は、シートバック20の延在方向、すなわち、幅方向と略平行に延在する平板状部材であるから、エアバッグ30とシートパッド28との間にコンパクトに配置可能であり、したがって、浮動体114後方のエアバッグ膨張展開スペースが大きく確保されている。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第4実施の形態とは異なり、反力受け部材を、上方クロスメンバ25や下方クロスメンバ26等の、他のシートバックフレーム21の既設の構成部材としてもよい。
具体的には、例えば、上方クロスメンバ25にエアバッグ30を取り付け、且つ、上方クロスメンバ25とシートバック20背面との間にエアバッグ30を配置しても良い。これによれば、上方クロスメンバ25側からインフレータの作用によりガスを導入してエアバッグ30を膨張展開させる際、上方クロスメンバ25による反力を得て、エアバッグ30をシートバック20内で車体後方且つ下方方向へと膨張展開させることができる。この構成によれば、シートバック20背面に対して後方且つ下方方向から入力される衝撃を効果的に吸収することができる。
以上のように、反力受け部材とエアバッグを適切に配置することで衝撃の入力方向に対向するようにエアバッグを膨張展開させることができ、それらの衝撃をより効果的に吸収することが可能となる。
また、例えば、第7実施の形態においては浮動体114を介して両サイドブラケット40間に架設弾性支持部材112を架け渡しているが、浮動体114を介して上方クロスメンバ25と下方クロスメンバ26の間に架け渡す構成としても良い。
さらに、上記実施の形態においては、車両用シート(前席シート)と後席シートが並設される車両となっているが、後席シートは必須の構成要素ではない。例えば、車両用シートの後部は荷台となっていても良い。この場合においても、エアバッグ30の膨張展開により、車両の衝突によって荷台上の搭載物が前方に移動し、この搭載物がシートバック20背面に衝突する衝撃から車両用シートの着座者を保護することができる。