JP2016024105A - ソラフェニブを含有する標識剤 - Google Patents

ソラフェニブを含有する標識剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ソラフェニブまたはその誘導体に係るバイオアッセイや組織染色法において、標的分子に対する結合性に優れた標識剤を提供する。【解決手段】分子標的薬であるソラフェニブまたはその誘導体と、標識体とが、2価の連結基を介して結合している構造を有する標識剤であって、前記2価の連結基の一端がソラフェニブまたはその誘導体のピリジン環の炭素原子に結合していることを特徴とする標識剤。前記標識体としては蛍光物質集積ナノ粒子が好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、組織中の特定の生体物質(標的分子)に対する分子標的薬の結合量の測定などに用いることのできる標識剤、詳しくは、ソラフェニブおよびそれに連結した標識体からなる標識剤に関する。
分子標的薬は、特定の疾患の原因を遺伝子やタンパク質を解明し、それらの異常な発現やシグナル伝達などに関与している生体物質に分子レベルで作用することで疾患を治療する医薬品である。近年では、がんや自己免疫疾患などに対して、いくつかの低分子化合物または抗体が分子標的薬として実用化されている。
このような分子標的薬の創薬において、特定の生体物質(標的分子)に対する薬剤の結合量を測定することは、候補薬のスクリーニングなどにつながるため重要である。そのために、放射線同位体、特定の基質と反応して発色する酵素、蛍光体などの標識体を候補薬に連結し、その候補薬を標的分子と結合させ、その標識体に由来するシグナルによって結合量を測定する手法が用いられている。
たとえば特許文献1(国際公開WO2012/133047号パンフレット)には、抗体医薬に用いられている抗体(トラスツズマブ等)を標識化して、当該抗体医薬が標的とする抗原(HER2等)に結合させる免疫組織染色法が記載されており、この抗体を標識化するための標識体として量子ドットや蛍光物質集積ナノ粒子(有機蛍光色素集積シリカナノ粒子等)を用いることができること、この免疫組織染色法が抗体医薬の有効性を判定する方法に応用することができることなども記載されている。免疫染色のための標識体として蛍光物質集積ナノ粒子を用いることは、量子ドットや従来の酵素による発色剤を用いることに比べて、高精度の定量が可能であるため好ましい。
一方、抗体ではなく低分子化合物も従来、様々な疾患に対する分子標的薬として利用されており、治療用の医薬品の有効成分としてのみならず、試料中の標的分子を検出するアッセイに用いられる診断用のコンジュゲートを作製する際などにも利用されている。たとえば、特許文献2(特表2007−521338号公報)には、所定の2価のリンカー分子の末端に、結合剤、標識化合物(有機蛍光色素等)、治療薬(キナーゼ阻害剤等)といった生物薬剤または生物分析の用途における有益な成分が結合した構造を有する化合物が記載されており、前記キナーゼ阻害剤としては、窒素原子を含む芳香環を有する化合物(以下「含窒素芳香環含有化合物」と称する。)、たとえばソラフェニブ(段落[0070]の表中、化合物番号VI参照)が挙げられている。
しかしながら、特許文献2には、窒素原子を含む芳香環(含窒素芳香環)を有する化合物のリンカー分子に結合させる部位として、(i)前記化合物の端部に含窒素芳香環が位置する場合はその含窒素芳香環の窒素原子またはその含窒素芳香環に直接的または間接的に結合している窒素原子を含む官能基(アミノ基、アミド基、カルバモイル基等)の窒素原子を選択することや、(ii)前記化合物の末端にヘテロ原子を含まない芳香環が位置する場合はその芳香環の炭素原子を選択したりする実施形態は開示されているものの、(iii)前記化合物の末端に含窒素芳香環が位置する場合にその含窒素芳香環の炭素原子を選択することやその技術的意義は開示されていない。たとえばソラフェニブについて、特許文献2には、端部の含窒素芳香環(ピリジル基)に結合しているカルバモイル基の窒素原子に、2価のリンカー分子を結合させることが一般記載において示唆されてのみであり、しかも実施例等では、上記のようにソラフェニブに2価のリンカー分子を結合させる実施形態は具体的に開示されていない。
なお、特許文献3(特表2012−533579号公報)には、腎臓へのターゲティングを目的とする発明として、カルボキシル基を担持する化合物とε−リシンモノマー単位から構成される所定のオリゴマーとを含み、さらに活性化合物が共有結合していてもよい接合体が記載されており、前記活性化合物としてはソラフェニブ等のプロテインキナーゼ阻害剤が挙げられている。たとえば、例8(段落[0181]〜[0189])には、前記カルボキシル基を担持する化合物としてのDOTA、ε−ポリリシン、および前記活性化合物としてのソラフェニブ誘導体を含む接合体(DOTA−ε−ポリリシン−ソラフェニブ誘導体)を作製したことが開示されている。この例8の作製方法で得られる接合体において、ε−ポリリシンは、ソラフェニブ誘導体の末端に導入されているヒドロキシエチル基(ピリジル基に結合しているカルバモイル基の窒素原子に結合しているもの)に結合している。
国際公開WO2012/133047号パンフレット 特表2007−521338号公報 特表2012−533579号公報
低分子化合物の分子標的薬には、腎細胞がんや肝細胞がんを対象とするソラフェニブのように、窒素原子を含む芳香環を有する化合物が多い。しかしながら、そのような含窒素芳香環含有化合物に関するバイオアッセイにおいて、従来の作製方法で得られる、含窒素芳香環の窒素原子またはその含窒素芳香環に直接的または間接的に結合している窒素原子を含む官能基の窒素原子を介して標識体が結合されている標識剤を用いた場合、その標識体に由来するシグナルが弱いという問題があった。特に、標識体として蛍光物質集積ナノ粒子を用いた場合、標的分子への結合を表す蛍光強度が弱い、ないし輝点数が少なく、分子標的薬の結合性の評価が困難であった。
本発明は、ソラフェニブまたはその誘導体(本明細書において「ソラフェニブ等」と表記する場合がある。)に係るバイオアッセイや組織染色法において、標的分子に対する結合性に優れた標識剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来と異なり、ソラフェニブ等のピリミジン環の炭素原子を介して標識体が結合されている標識剤を用いた場合、従来よりも標識体に由来するシグナルが強くなる、特に標的分子への結合を表す蛍光強度が強くなる、ないし輝点数が多くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
[項1]
分子標的薬であるソラフェニブまたはその誘導体と、標識体とが、2価の連結基を介して結合している構造を有する標識剤であって、
前記2価の連結基の一端がソラフェニブまたはその誘導体のピリジン環の炭素原子に結合していることを特徴とする標識剤。
[項2]
前記標識体が蛍光物質集積ナノ粒子である、項1に記載の標識剤。
[項3]
項1または2に記載の標識剤を使用することを特徴とするバイオアッセイ。
[項4]
項1または2に記載の標識剤を使用することを特徴とする組織染色法。
本発明の標識剤は、分子標的薬として利用するソラフェニブ等の標的分子に対する結合性が従来の標識剤よりも向上しているため、その分子標的薬(の候補化合物)の効果をより正確に評価したり、患者由来の組織切片(病理標本)中に存在する標的分子をより正確に定量して分子標的薬の効果をより正確に見積もったりすることができるようになる。
―免疫染色剤―
本発明における標識剤は、分子標的薬としてのソラフェニブ等と、標識体とが、2価の連結基を介して結合している構造を有する標識剤であって、前記2価の連結基の一端がソラフェニブ等のピリジン環に結合しているものである。
(分子標的薬)
本発明では、分子標的薬としてソラフェニブ(下記式参照)またはその誘導体を用いる。なお、ソラフェニブ誘導体には、ソラフェニブに対して官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換えなど、母体構造を大幅に変えない程度の(特に2価の連結基の一端がピリジン環の炭素原子に結合することを妨げないように)改変がなされた化合物であって、ソラフェニブと同程度またはそれよりも優れた分子標的薬としての作用を有する様々な化合物が包含される。
Figure 2016024105
(標識体)
本発明に用いられる標識体は、当該技術分野において用いられる各種の標識体の中から選択することができ、本発明の作用効果が奏される限り特に限定されるものではない。代表的な標識体としては、放射線同位体、特定の基質と反応して発色する酵素、蛍光体などが挙げられるが、シグナルとして蛍光強度または輝点数を測定することができるため定量性に優れ、標的分子に対する分子標的薬の結合性を正確に評価することのできる蛍光体が好ましい。
蛍光体は、当該技術分野において用いられている公知の各種の蛍光体の中から選択することができ、特に限定されるものではない。代表的な蛍光体としては、無機半導体ナノ粒子(「量子ドット」とも呼ばれる)、有機蛍光色素、およびこれらの蛍光物質のナノサイズの集積体が挙げられるが、標的分子を1分子ずつ輝点として表すのに十分な強度の蛍光を発することができ、比較的安価な低感度型カメラでも検出することが可能である蛍光物質集積ナノ粒子、特に蛍光色素内包樹脂粒子が好ましい。
なお、本明細書における「蛍光体」は、所定の波長の電磁波(X線、紫外線または可視光線)が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、その励起状態から基底状態に戻る際に余剰のエネルギーを電磁波として放出する、つまり「蛍光」を発する物質であって、「プローブ」と結合させることのできるものを指す。また、「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
・無機半導体ナノ粒子
無機半導体ナノ粒子としては、II−VI族化合物、III−V族化合物、またはIV族元素を含有するもの、たとえば、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geなどが挙げられる。また、これらの無機半導体ナノ粒子をコアとし、その外側にシェルが形成されたもの、たとえば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnSなどのコア/シェル型無機半導体ナノ粒子を用いることもできる。
・有機蛍光色素
有機蛍光色素としては、ローダミン系色素分子、スクアリリウム系色素分子、シアニン系色素分子、芳香環系色素分子、オキサジン系色素分子、カルボピロニン系色素分子、ピロメセン系色素分子などを例示することができる。あるいは、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、Cy(登録商標、GEヘルスケア社製)系色素分子、DY系色素分子(登録商標、DYOMICS社製)、HiLyte(登録商標、アナスペック社製)系色素分子、DyLight(登録商標、サーモサイエンティフィック社製)系色素分子、ATTO(登録商標、ATTO−TEC社製)系色素分子、MFP(登録商標、Mobitec社製)系色素分子などを用いることができる。なお、このような色素分子の総称は、化合物中の主要な構造(骨格)または登録商標に基づき命名されており、それぞれに属する蛍光色素の範囲は当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく適切に把握できるものである。
・蛍光物質集積ナノ粒子
蛍光物質の集積体の代表例として、有機物または無機物でできた粒子を母体とし、複数の蛍光物質がその中に内包されているおよび/またはその表面に吸着している構造を有する、ナノサイズの粒子である「蛍光物質集積ナノ粒子」が挙げられる。この場合、母体(たとえば樹脂)と蛍光物質(たとえば有機蛍光色素)は、互いに反対の電荷を有する置換基ないし部位を有しており、静電的相互作用が働くものであることが好適である。
蛍光物質集積ナノ粒子に内包させる蛍光物質としては、上述したような無機半導体ナノ粒子、蛍光色素分子のほか、たとえば、Y23、Zn2SiO4等を母体とし、Mn2+,Eu3+等を賦活剤とする「長残光蛍光体」を挙げることができる。
蛍光物質集積ナノ粒子を形作る母体のうち、有機物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂など、一般的に熱硬化性樹脂に分類される樹脂;スチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)など、一般的に熱可塑性樹脂に分類される樹脂;ポリ乳酸等のその他の樹脂;多糖を例示することができ、無機物としてはシリカ(ガラス)を例示することができる。
蛍光物質集積ナノ粒子は、公知の方法(たとえば特開2013−57937号公報参照)に従って作製することができる。より具体的には、たとえば、シリカを母体とし、その中に蛍光物質が内包されている蛍光物質内包シリカ粒子は、無機半導体ナノ粒子、有機蛍光色素などの蛍光物質と、テトラエトキシシランのようなシリカ前駆体とが溶解している溶液を、エタノールおよびアンモニアが溶解している溶液に滴下し、シリカ前駆体を加水分解することにより作製することができる。一方、樹脂を母体とし、蛍光物質を樹脂粒子の表面に吸着させるか、樹脂粒子中に内包させるかした蛍光物質内包樹脂粒子は、それらの樹脂の溶液ないし微粒子の分散液を先に用意しておき、そこに無機半導体ナノ粒子、有機蛍光色素などの蛍光物質を添加して撹拌することにより作製することができる。
あるいは、樹脂原料の溶液に蛍光色素を添加した後、重合反応を進行させることにより、蛍光物質内包樹脂粒子を作製することもできる。たとえば、母体となる樹脂としてメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合、その樹脂の原料(モノマーまたはオリゴマーないしプレポリマー、たとえばメラミンとホルムアルデヒドの縮合物であるメチロールメラミン)と、有機蛍光色素と、好ましくはさらに界面活性剤および重合反応促進剤(酸など)とを含有する反応混合物を加熱し、乳化重合法によって重合反応を進行させることにより、有機蛍光色素内包樹脂粒子を作製することができる。また、母体となる樹脂としてスチレン系共重合体のような熱可塑性樹脂を用いる場合、その樹脂の原料と、有機蛍光色素と(樹脂の原料モノマーとして、あらかじめ有機蛍光色素を共有結合などで結合させたモノマーを用いるようにしてもよい)、重合開始剤(過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなど)を含有する反応混合物を加熱し、ラジカル重合法またはイオン重合法によって重合反応を進行させることにより、有機蛍光色素内包樹脂粒子を作製することができる。
蛍光物質集積ナノ粒子(特に上記のような製造方法によって得られる蛍光色素内包樹脂粒子)の平均粒径は、病理標本の免疫染色に適した粒径であれば特に限定されないが、輝点としての検出のしやすさなどを考慮すると、通常は10〜500nm、好ましくは50〜200nmである。また、粒径のばらつきを示す変動係数は、通常は20%以下であり、好ましくは5〜15%である。このような条件を満たす蛍光物質集積ナノ粒子は、製造条件を調整することにより製造することができる。たとえば、乳化重合法により蛍光物質集積ナノ粒子を作製する場合は、添加する界面活性剤の量によって粒径を調節することができ、一般的に、蛍光物質集積ナノ粒子の母体原料の量に対する界面活性剤の量が相対的に多ければ粒径は小さくなり、その量が相対的に少なければ粒径は大きくなる傾向にある。
なお、蛍光物質集積ナノ粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影して蛍光物質集積ナノ粒子の断面積を計測し、その断面形状を円と仮定したときに、その断面積に相当する円の直径として算出することができる。複数の蛍光物質集積ナノ粒子からなる集団の平均粒径および変動係数は、十分な数(たとえば1000個)の蛍光物質集積ナノ粒子について上記のようにして粒径を算出した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径、により算出される。
・反応性部位(官能基)
標識体は、2価の連結基と結合することのできる反応性の部位を自ずと備えているか、そうでなければそのような部位を標識体の作製後に導入しておく必要がある。
たとえば、標識体として樹脂を母体とする蛍光物質集積ナノ粒子のような有機系の蛍光体を用いる場合、その粒子を構成する樹脂自体が当初から反応性の部位を有しているか、そうでなければ粒子の形成後に表面修飾により反応性の部位を導入しておく必要がある。具体的には、メラミン樹脂であればアミノ基等の官能基を利用することができるし、アクリル樹脂、スチレン樹脂等であれば、側鎖に官能基(たとえばエポキシ基)を有するモノマーを共重合させることにより、その官能基自体またはその官能基から変換された官能基(たとえばアンモニア水を反応させることにより生成するアミノ基)を利用することができるし、さらにはそれらの官能基との反応を利用して別の官能基を導入することもできる。
また、標識体としてシリカを母体とする蛍光物質集積ナノ粒子や無機半導体ナノ粒子のような無機系の蛍光体を用いる場合、それらをシランカップリング剤で表面修飾することにより所望の官能基を導入することができる。たとえば、シランカップリング剤としてアミノプロピルトリメトキシシランを用いて、上述したような無機系の蛍光体と反応させれば、その表面にアミノ基を導入することができる。
上述したような標識体が有するアミノ基は、2価の連結基の基となる化合物が有する所定の官能基、たとえばNHS基と反応し、共有結合を形成することができる。しかしながら、標識体が有する、2価の連結基と結合することのできる反応性の部位はアミノ基に限定されるものではなく、たとえばカルボキシル基、チオール基、あるいはNHS基、マレイミド基など、所定の官能基との反応性を有する公知の様々な部位(官能基)を利用することができる。
(2価の連結基)
本発明に用いられる、分子標的薬と標識体とを連結するための2価の連結基は、当該技術分野において用いられる各種の2価の連結基の中から選択することができ、本発明の作用効果が奏される限り特に限定されるものではない。
本発明では、2価の連結基における、分子標的薬と結合させる側の一端(上述したNHSに由来する基とは異なる一端)は、ソラフェニブ等のピリジン環の炭素原子に結合している。そのような2価の連結基を形成するための手法は特に限定されるものではなく、公知の反応様式を応用することができる。たとえば、ピリジン環の炭素原子と反応して共有結合を形成する官能基を有する化合物(第1試薬)をソラフェニブ等に反応させて、つづいて得られた反応物(中間体)に、第1試薬が有する前記官能基とは別の官能基との反応性を有する官能基と、前述したNHSに由来する基のような標識体結合用官能基とを有する化合物(第2試薬)を反応させる様式が挙げられる。
ソラフェニブ等のピリジン環の炭素原子に2価の連結基を結合させるための反応には、たとえば、J. Am. Chem. Soc., 2013, 135 (35), pp 12994−12997に記載されている反応を応用することができる。その反応では、ジフルオロアルキルアジド基を有するスルフィン酸のナトリウム塩を反応試薬として用い、そのスルフィン酸基が含窒素芳香環の炭素原子と反応して共有結合を形成する。また、アジド基はアルキン(炭素−炭素三重結合)と反応して環付加するので、炭素−炭素三重結合を有する標識体、または2価の連結基の一部(前記反応試薬に由来するところ以外の部分)を構成するための炭素−炭素三重結合を有する別の反応試薬を結合させることができる。
2価の連結基における、標識体と結合させる側の一端には、予め標識体が有する官能基との反応性を有する官能基(標識体結合用官能基)を導入しておくことが好適である。そのような標識体結合用官能基としては、たとえば、有機化学や生化学においてカルボン酸の活性化試薬として用いられているN−ヒドロキシスクシンイミドに由来する基(NHS基)が挙げられる。N−ヒドロキシスクシンイミドはカルボン酸と脱水縮合することで不安定なエステル結合(活性エステル)を形成し、この活性エステルはアミンと反応してアミド結合を形成する。したがって、標識体結合用官能基としてNHS基を利用することにより、2価の連結基の一端にアミノ基を有する標識体を結合させることができる。
もちろん、2価の連結基の一端における標識体との連結のために利用することのできる結合様式は、上述したようなNHS基とアミノ基との反応による共有結合に限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される限り、多種多様な結合様式を利用することができる。たとえば、2価の連結基の一端にビオチンを導入する一方、標識体の表面をアビジン(ストレプトアビジン)で修飾しておき、ビオチン・アビジン反応によりそれらを結合させることで、分子標的薬と標識体とを(2価の連結基も介して)間接的に結合させるようにしてもよい。
−バイオアッセイ−
本発明のバイオアッセイは、本発明の標識剤を使用して行われるものであり、その実施形態は特に限定されるものではない。たとえば、培養細胞に本発明の標識剤を添加し、そこで発現している標的分子に標識剤を結合させて、その標識体が発するシグナルを定量的に取得するというバイオアッセイが挙げられる。異なる分子標的薬の候補(たとえばソラフェニブ誘導体)を用いた標識剤同士のデータを比較することで標的分子への結合力を評価し、分子標的薬の改良に役立てるといった利用が可能である。あるいは、血液(血清)等の検体に本発明の標識剤を添加し、分子標的薬が対象とする特定の分子またはそれを発現している細胞と結合させて、それらの分子または細胞について定性的または定量的な分析を行うという利用も可能である。
このようなバイオアッセイは、次に述べる本発明の組織染色法に含まれる「染色工程」および「シグナル取得工程」や、必要に応じてさらに含まれていてもよい「形態観察用染色工程」に準じて、組織切片の代わりに培養細胞や検体を対象とすることにあわせて適宜改変しながら行うことができる。また、バイオアッセイの目的によって、デジタルカメラによる撮影像を取得する必要がなければ、たとえば光電子倍増管(フォトマル、PMT)によって蛍光強度を測定するといったように改変することも可能である。
−組織染色法−
本発明の組織染色法は、本発明の標識剤を使用して行われるものであり、その実施形態は特に限定されるものではないが、たとえば以下のような工程を含む:
(1)パラフィンに包埋された組織切片を染色に適した状態にする工程(前処理工程);
(2)標的分子を標識剤で染色する工程(染色工程);
(3)染色された組織切片を観察に適した状態にする工程(後処理工程);
(4)任意工程として、明視野において細胞等の形態を観察できるよう染色する工程(形態観察用染色工程);
(5)染色された組織切片から標識体が発するシグナルを取得する工程(シグナル取得工程)。
これらの工程は、具体的には、たとえば次のような手順で行われる。
(前処理工程)
組織切片は通常、ホルマリンで固定された後、パラフィンに包埋された状態で保存されていることが多い。そのような組織切片を染色する場合、染色を可能にするため、組織切片の脱パラフィン・親水化処理のための前処理工程が行われる。この前処理工程には必要に応じて、タンパク質を分子標的薬との反応に適した状態にするための賦活化処理を含んでいてもよい。
脱パラフィン・親水化処理は、たとえば、組織切片をキシレンに浸漬してパラフィンを除去し、次いでエタノールに浸漬してキシレンを除去し、さらに水に浸漬してエタノールを除去するようにして行えばよい。これら3つの操作は、通常、室温で行えばよい。また、それぞれの浸漬時間は3〜30分程度でよく、必要に応じて浸漬途中でそれぞれの処理液を新しいものに交換してもよい。
賦活化処理は一般的に、組織切片を賦活化液に浸漬し、加熱するようにして行われる。賦活化液としては、たとえば、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mM EDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mトリス塩酸緩衝液などを用いることができる。加熱機器としては、たとえば、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターパスなどを用いることができる。加熱の温度および時間は、たとえば、50〜130℃、5〜30分とすることができる。
(染色工程)
染色工程は、標的分子に標識剤を結合させる染色処理のための工程である。染色処理は、たとえば、前処理工程を終えた組織切片を、標識剤を含む溶液(染色液)に浸漬するようにして行えばよい。染色液に組織切片を浸漬する際の温度、時間、その他の条件は、従来の染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
なお、染色工程では必要に応じて、上述したような標的分子を染色する処理とともに、標的分子と標識剤に用いられている分子標的薬との結合性以外の、参照用の情報を取得するなどの目的のために、他の生体物質(参照生体物質)を染色する処理を行ってもよい。その場合、標的分子を染色するための標識剤と、参照生体物質を染色するための標識剤とを含む溶液に、前処理工程を終えた組織切片を浸漬することで、2種類の染色処理を一括して行うことができる。
(後処理工程)
染色工程を終えた組織切片は、観察に適したものとなるよう、固定化・脱水、透徹、封入などの処理を行うことが好ましい。固定化・脱水処理は、組織切片を固定処理液(ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤)に浸漬すればよい。透徹は、固定化・脱水処理を終えた組織切片を透徹液(キシレン等)に浸漬すればよい。封入処理は、透徹処理を終えた組織切片を封入液に浸漬すればよい。これらの処理を行う上での条件、たとえば組織切片を所定の処理液に浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。後処理工程を終えた組織切片にカバーガラスを載せれば、形態観察やシグナル取得に適した形態の標本となる。
(任意工程:形態観察用染色工程)
本発明の標識剤を用いた組織染色法には、必要に応じて、明視野において細胞、組織、臓器等の形態を観察することができるようにするための、形態観察用染色工程を含めることができる。形態観察用染色工程は、常法に従って行うことができる。組織切片の形態観察に関しては、細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色されるエオジンを用いた染色および/または細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色されるヘマトキシリンを用いた染色が標準的に行われており、これら2つの染色を同時に行う方法はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)としてよく知られている。形態観察染色工程を含める場合は、前述した染色工程の後に行うようにしてもよいし、その前に行うようにしてもよい。
(シグナル取得工程)
観察・撮影工程は、上述したような染色工程(および必要に応じて行われる形態観察用染色工程)を経た組織切片から、標識体が発するシグナルを取得する工程である。たとえば、本発明における標識体として好ましい蛍光体を用いた場合、その蛍光体に対応した励起光を照射しながら、染色された組織切片を所望の倍率の蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡が備えるデジタルカメラを用いて、蛍光強度または輝点数を取得することのできる染色像を撮影すればよい。特に、蛍光体として好ましい蛍光物質集積ナノ粒子を用いた場合、標的分子に結合した分子標的薬を標識する蛍光物質集積ナノ粒子を輝点として観測しやすく、蛍光強度を測定するのみならず、輝点数を計測することができる。
なお、染色工程において前述したような参照生体物質を染色する処理を行った場合には、シグナル取得工程においてその標的分子を染色した標識剤に含まれる標識体が発するシグナルを取得する処理を行ってもよい。また、任意工程として前述したような形態観察用染色工程を行った場合には、シグナル取得工程の前または後に、明視野において形態観察用に染色された組織切片を観察し、染色像を撮影する処理を行ってもよい。
取得した撮影像は、組織染色の目的に応じて、標識体が発するシグナルを定量するために用いることができる。たとえば、本発明における標識体として好ましい蛍光体を用いた場合、画像処理に基づき、その蛍光体が発する蛍光の強度を測定する、および/または蛍光の輝点数を計測することができる。
画像処理に用いることができるソフトウェアとしては、たとえば「ImageJ」(オープンソース)が挙げられる。このような画像処理ソフトウェアを利用することにより、染色像から、所定の波長(色)の輝点を抽出してその輝度の総和を算出したり、所定の輝度以上の輝点の数を計測したりする処理を、半自動的に、迅速に行うことができる。
取得したシグナルの定量データは、たとえば異なる分子標的薬の候補を用いた標識剤同士のデータを比較することで標的分子への結合力を評価し、分子標的薬の改良に役立てるといった利用が可能である。また、分子標的薬が対象とする疾患の患者に由来する組織切片(病理標本)のデータから、そこに含まれる標的分子を定量し、標的分子の発現量が多ければ分子標的薬の有効性が高いと推定するといったように、分子標的薬の効果を見積もり、病理診断のために有用な情報を取得するために利用することも可能である。
[標識剤A]ソラフェニブのピリジン環の6位の炭素原子に2価連結基を介して量子ドット:Qdot(登録商標)655を結合させた、ソラフェニブ含有標識剤
(合成工程A−1)ソラフェニブ(1)のピリジン環の炭素原子に2価連結基を結合させたソラフェニブ誘導体(5a)を下記のルートで合成した。得られた誘導体は位置異性体(3a)(3b)(3c)の混合物であり、液体クロマトグラフィーを用いて各化合物を分取し、位置異性体(3a)を用いてソラフェニブ誘導体(5a)を得た。なお、合成工程A−1のルートはJ. Am. Chem. Soc., 2013, 135 (35), pp 12994−12997に記載された手法に基づいている。
Figure 2016024105
Figure 2016024105
(合成工程A−2)ソラフェニブ誘導体(5a)を、末端にアミノ基を有するPEGで修飾された量子ドット(Qdot 655 ITK amino (PEG) quantum dots)と反応させることにより、ソラフェニブのピリジン環の6位の炭素原子に結合した二価連結基を介してQdotが連結されている標識剤Aを得た。
[標識剤B]ソラフェニブのピリジン環の5位の炭素原子に2価連結基を介して量子ドット:Qdot(登録商標)655を結合させた、ソラフェニブ含有標識剤
液体クロマトグラフィーを用いて分取した位置異性体(3b)を用いてソラフェニブ誘導体(5b)を得たこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ソラフェニブのピリジン環の5位の炭素原子に結合した二価連結基を介してQdotが連結されている標識剤Bを得た。
Figure 2016024105
[標識剤C]ソラフェニブのピリジン環の3位の炭素原子に2価連結基を介して量子ドット:Qdot(登録商標)655を結合させた、ソラフェニブ含有標識剤
液体クロマトグラフィーを用いて分取した位置異性体(3c)を用いてソラフェニブ誘導体(5c)を得たこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ソラフェニブのピリジン環の3位の炭素原子に結合した二価連結基を介してQdotが連結されている標識剤Cを得た。
Figure 2016024105
[標識剤D]ソラフェニブのピリジン環のアミド基の窒素原子に2価連結基を介して量子ドット:Qdot(登録商標)655を結合させた、ソラフェニブ含有標識剤
(合成工程D−1)ソラフェニブのアミド基(カルバモイル基)の窒素原子に2価連結基を結合させたソラフェニブ誘導体(6)を、特許文献3(特表2012−533579号公報)の段落[0181]〜[0189]に記載された手法を参考にして合成した。特許文献3の記載では、ピリジン環に2−ヒドロキシエチルカルボキサミド基が導入されたソラフェニブ誘導体を利用して所望の物質(ε−ポリリシン)を結合させている。
Figure 2016024105
(合成工程D−2)ソラフェニブ誘導体(6)を、末端にアミノ基を有するPEGで修飾された量子ドット(Qdot 655 ITK amino (PEG) quantum dots)と反応させることにより、ソラフェニブのアミド基の窒素原子に結合した二価連結基を介してQdotが連結されている標識剤Dを得た。
[実施例1]
肝細胞がん組織切片のスポットがアレイ上に配列したスライド(USBiomax, Inc., T031a)について、脱パラフィンおよび親水化処理を行った後、標識剤Aを組織上に添加した。2時間放置後、未反応の標識剤を洗浄により除去し、そのスライドの蛍光像を共焦点型蛍光顕微鏡を用いて撮影し、蛍光強度を計測した。
なお、この工程における励起光の照射および蛍光の発光の観察には蛍光顕微鏡「BX−53」(オリンパス株式会社)を用い、免疫染色像(400倍)の撮影には、当該蛍光顕微鏡に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いた。蛍光体として用いたQdot 655に対応させて、照射する励起光の波長は、励起光用光学フィルター(株式会社オプトライン「QD655−C」)を用いて415〜455nmに設定し、観察する蛍光の波長は、蛍光用光学フィルターを用いて648〜663nmに設定した。蛍光顕微鏡による観察および画像撮影時の励起光の強度は、視野中心部付近の照射エネルギーが30W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないような範囲で調節し、400秒に設定した。
また、蛍光強度の計測は、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いて撮影画像を処理することで行った。蛍光体が発する蛍光の輝度が所定の値以上の領域を抽出し、その領域を構成する蛍光の強度の総和を求めた。
[実施例2]
標識剤Aの代わりに標識剤Bを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[実施例3]
標識剤Aの代わりに標識剤Cを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[比較例1]
標識剤Aの代わりに標識剤Dを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[実施例4]
腎細胞がん組織切片のスポットがアレイ上に配列したスライド(USBiomax, Inc., T071)について、脱パラフィンおよび親水化処理を行った後、標識剤Aを組織上に添加した。2時間放置後、未反応の標識剤を洗浄により除去し、そのスライドの蛍光像を共焦点型蛍光顕微鏡を用いて撮影し、蛍光強度を計測した。
[実施例5]
標識剤Aの代わりに標識剤Bを用いた他は実施例4と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[実施例6]
標識剤Aの代わりに標識剤Cを用いた他は実施例4と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[比較例2]
標識剤Aの代わりに標識剤Dを用いた他は実施例4と同様の操作を行い、蛍光強度を計測した。
[結果]
実施例1,2,3および比較例1の結果、ならびに実施例4,5,6および比較例2の結果を、下記表に示す。本発明の結合様式に基づく標識剤(標識剤A,B,C)を用いて染色した場合、従来の結合様式に基づく標識剤(標識剤D)を用いた場合よりも、染色された肝細胞がん組織切片および腎細胞がん組織切片の蛍光強度が強いことが分かる。この結果から、従来の標識剤に用いられているソラフェニブは蛍光体として連結されたQdotによって標的分子(VEGFR等)に対する結合が妨害されやすいのに対し、本発明の標識剤に用いられているソラフェニブは蛍光体として連結されたQdotの妨害を受けにくく、標的分子(VEGFR等)に対して強く結合することができるものと推定される。
Figure 2016024105
Figure 2016024105
[標識剤E]ソラフェニブのピリジン環の6位の炭素原子に2価連結基を介してテキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を結合させた、ソラフェニブ含有標識剤
(作製工程1)テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子の作製
テキサスレッド色素分子「Sulforhodamine 101」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持ながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に混合物として含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿したテキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子をエタノールおよび水で洗浄して、テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を得た。
(作製工程2)末端アミノ基PEG修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子の作製
両末端にアミノ基を有する数平均分子量10000のポリエチレングリコール(日油(株)、SUNBRIGHT DE-100PA、X-(OCH2CH2)n-O-X, X: -CH2CH2CH2NH2)とテキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を、70℃で1時間加熱して反応させ、末端アミノ基PEG修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を得た。
(作製工程3)標識剤Eの作製
標識剤Aの合成工程A−1で得たソラフェニブ誘導体(5a)と、末端アミノ基PEG修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子を混合して反応させることにより、ソラフェニブのピリジン環の6位の炭素原子に結合した二価連結基を介してテキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子が連結されている標識剤Eを得た。
[実施例8]
標識剤Aの代わりに標識剤Bを用いた他は実施例1と同様の操作を行い、肝細胞がん組織切片を染色して観察試料スライドとした。蛍光顕微鏡を用いてそのスライドの蛍光像を撮影し、蛍光強度(x)を計測した。一方で、標識剤(テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子)の溶液を水で希釈し、この希釈液をスライドガラスに載せて蛍光観察して、蛍光強度の変わらない最低強度の輝点を標識剤1分子(テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子1粒子)とみなし、1視野に標識剤1分子のみ存在させたときの蛍光強度(y)を計測した。そのようにして求めた標識剤1分子あたりの蛍光強度(y)で、蛍光強度(x)を割ることで、観察試料スライドの蛍光像に含まれる蛍光粒子数を算出した。
[参考例1]
実施例1で計測された蛍光強度から、実施例8と同様、別途求めた標識剤1粒子あたりの蛍光強度をもとに、蛍光粒子数を算出することを試みた。しかしながら、標識剤の蛍光強度が低いためか、粒子1つを蛍光顕微鏡で観察するのは困難であり、標識剤1分子あたりの蛍光強度を求めることができず、蛍光粒子数の算出が行えなかった。
[結果]
実施例8および参考例1の結果を下記表に示す。蛍光体として蛍光物質集積ナノ粒子(テキサスレッド集積メラミン樹脂ナノ粒子)を用いた場合は蛍光粒子数も算出することができ、より定量的な評価が可能であるため、そのような蛍光体は本発明において好ましいものといえる。
Figure 2016024105

Claims (4)

  1. 分子標的薬であるソラフェニブまたはその誘導体と、標識体とが、2価の連結基を介して結合している構造を有する標識剤であって、
    前記2価の連結基の一端がソラフェニブまたはその誘導体のピリジン環の炭素原子に結合していることを特徴とする標識剤。
  2. 前記標識体が蛍光物質集積ナノ粒子である、請求項1に記載の標識剤。
  3. 請求項1または2に記載の標識剤を使用することを特徴とするバイオアッセイ。
  4. 請求項1または2に記載の標識剤を使用することを特徴とする組織染色法。
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