JP2016016466A - 硬質膜の硬質化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に切削工具の刃先等に形成する薄膜であって破損や剥離が起きやすいものであっても、これをさせることなく硬化させて、耐摩耗性を更に高めることが可能な薄膜硬質化方法を提供する。【解決手段】本薄膜硬質化方法は、ショットピーニングによって基材2表面に形成されている硬質膜1を硬質化する方法であって、硬質膜の厚みが0.5〜8.0μmであり、ショットピーニングに用いる小径投射粒子3は平均粒径が1〜50μmであり、小径投射粒子を投射距離50〜130mmから硬質膜に投射することを特徴とする。また、ショットピーニングを行う装置5は、小径投射粒子を収容する粒子収容タンク6と、粒子収容タンクと連通し、ガス圧によって小径投射粒子を薄膜に投射するためのノズル7と、収容されている小径投射粒子の凝集を解す解砕手段と、を備え、解砕手段により凝集が解されている小径投射粒子を、ノズルから薄膜に投射して薄膜を硬質化させる。【選択図】図1

Description

本発明は、ショットピーニングによって、基材表面に形成されている硬質膜を更に硬質化する硬質膜の硬質化方法に関する。更に詳しくは、特に切削工具の刃先等に形成する硬質膜であって破損や剥離が起きやすいものであっても、これをさせることなく硬化させて、耐摩耗性を更に高めることが可能な硬質膜の硬質化方法に関する。
ドリル等の切削工具に用いる刃先は、高速度工具鋼等が用いられる。また、刃先の耐摩耗性を更に高めるために、窒化チタン硬質膜(TiN膜ともいう。)やダイヤモンド状カーボン硬質膜(DLC膜ともいう。)で表面を被覆することも行われている。
例えば特許文献1では、超硬合金からなる基材に、化学蒸着法や物理蒸着法により金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物等の皮膜を形成し、更にショットピーニング処理や気相ラップ処理等の機械的硬化処理を行うことで、形成した皮膜を硬化させることにより、刃先の耐摩耗性を更に高めている。
また、粒径が150μm以下の投射粒子を投射することができるショットピーニング装置が検討されている(特許文献2を参照。)。
特開2012−45661号 特開2010−179433号
しかし、特許文献1に示された皮膜は、表層から順に3μm厚のTiN、5μm厚のAl、3μm厚のTiCNからなる11μmの厚さを備えており、更に10μm以下の薄い硬質膜について検討されていない。また、ショットピーニングに用いる投射粒子として直径50μmの鋼球を用いている。このため、厚さが10μm以下の薄い膜や、DLC膜のような基材との密着性が低く剥離しやすい材質の膜に対して適用すると、膜が破損したり、剥離したりしてしまう恐れがあった。
また、特許文献2に示すショットピーニング装置は、粒径が150μm以下、例えば50μmや10μmの投射粒子を凝集することなく投射することができるが、基材に形成された硬質膜に対する投射は検討されていなかった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、切削工具の刃先等に形成する硬質膜であって、破損や剥離が起きやすいものであっても、これをさせることなく硬化させて、耐摩耗性を更に高めることができる硬質膜の硬質化方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.ショットピーニングによって基材表面に形成されている硬質膜を硬質化する方法であって、前記硬質膜の厚みが0.5〜8.0μmであり、前記ショットピーニングに用いる小径投射粒子は平均粒径が1〜50μmであり、前記小径投射粒子を投射距離50〜130mmから前記硬質膜に投射することを特徴とする硬質膜の硬質化方法。
2.前記硬質膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる前記1.記載の硬質膜の硬質化方法。
3.前記小径投射粒子は、その硬度が、550HV以上である前記2.記載の硬質膜の硬質化方法。
4.前記小径投射粒子は、ガラス又はアルミナからなり、前記硬質膜は、TiN、TiC、TiAlN、TiSiC、TiCN、及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる前記3.記載の硬質膜の硬質化方法。
5.前記小径投射粒子は、ガラスビーズであり、前記硬質膜は、TiN、TiC、TiAlN、TiSiC及びTiCNからなる群から選択される1つからなる硬質膜である前記2.又は前記3.記載の硬質膜の硬質化方法。
6.前記小径投射粒子は、アルミナビーズであり、前記硬質膜は、ダイヤモンド状カーボン硬質膜である前記2.又は前記3.記載の硬質膜の硬質化方法。
7.前記ショットピーニングを行う装置は、前記小径投射粒子の凝集を解す解砕手段を具備し、前記解砕手段により凝集が解されている前記小径投射粒子を、前記硬質膜に投射して、前記硬質膜を硬質化させる前記1.乃至前記6.のいずれかに記載の硬質膜の硬質化方法。
本硬質化方法によれば、小径投射粒子の平均粒径と、その投射距離を前記所定の範囲とすることによって、これまで行われていなかった、厚みが8μm以下の硬質膜に対するショットピーニングが可能となる。このような厚さの硬質膜であっても、破損や剥離を起こすことなく更に硬化させて、より高硬度の硬質膜とすることができる。
そして、硬度が必要な硬質膜の表層を硬化させ、且つ柔軟性が必要な基材との接合層はそのままの硬度とすることができるため、硬質膜が形成されている工具の刃先等に用いられる基材の耐摩耗性を更に向上させることができる。
硬質膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる場合は、前記材質の硬質膜に対するショットピーニングが可能であり、硬質膜を更に硬化させて、硬質膜が形成されている基材の耐摩耗性を向上させることができる。
小径投射粒子の硬度が、550HV以上である場合は、硬質膜を適切に硬化させて、硬質膜が形成されている基材の耐摩耗性を向上させることができる。
小径投射粒子が、ガラス又はアルミナからなり、硬質膜は、TiN、TiC、TiAlN、TiSiC、TiCN、及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる場合は、適切な硬度の小径投射粒子を硬質膜に投射して、硬質膜を更に硬化させて、硬質膜が形成されている基材の耐摩耗性を向上させることができる。
小径投射粒子がガラスビーズであり、硬質膜がTiN、TiC、TiAlN、TiSiC及びTiCNからなる群から選択される1つからなる硬質膜である場合は、これらからなる群から選択される1つからなる硬質膜であっても、ショットピーニングが可能となり、硬質膜を硬化させて、硬質膜が形成されている基材の耐摩耗性を更に向上させることができる。
小径投射粒子が、アルミナビーズであり、硬質膜が、ダイヤモンド状カーボン硬質膜である場合は、ダイヤモンド状カーボン硬質膜であっても、ショットピーニングが可能となり、硬質膜を更に硬化させて、硬質膜が形成されている基材の耐摩耗性を更に向上させることができる。
ショットピーニングを行う装置が、前記小径投射粒子の凝集を解す解砕手段を具備し、前記解砕手段により凝集が解されている前記小径投射粒子を、前記硬質膜に投射して、前記硬質膜を硬質化させる場合は、小径投射粒子の凝集を解砕して硬質膜に投射することができ、凝集した小径投射粒子の投射に起因する硬質膜の硬化のむら、破損、剥離等をなくすことができる。
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
各実験例に用いるショットピーニング装置の例を示す断面図である。 TiN硬質膜の画像であり、左側は本硬質の硬質化方法を行っていない未処理の状態、右側は処理済みの状態である。 TiN硬質膜の硬度計測グラフであって、本硬質膜の硬質化方法を行っていない未処理面、及び処理面において、微小硬度計による硬度の計測を行った結果である。 実験例2のDLC硬質膜の画像であり、左側は本硬質膜の硬質化方法を行っていない未処理の状態、右側は処理済みの状態である。 実験例3のDLC硬質膜の画像であり、左側は本硬質膜の硬質化方法を行っていない未処理の状態、右側は処理済みの状態である。 実験例4のDLC硬質膜の硬度計測グラフであって、本硬質膜の硬質化方法を行っていない未処理の状態、及び処理済みの状態において、微小硬度計による計測を行った結果である。 実験例2の本硬質膜の硬質化方法を行った処理済みの状態のDLC膜における電子顕微鏡画像である。 実験例2の本硬質膜の硬質化方法を行っていない未処理の状態のDLC膜における電子顕微鏡画像である。
以下、図を参照しながら、本発明を詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本硬質膜の硬質化方法は、厚みが8μm以下の硬質膜に対して所定条件のショットピーニングを行うことを特徴とする。
硬質膜が形成される基材は、ドリル、バイト、フライス、エンドミル、ルータ等の切削工具に用いる刃先や、パンチやダイのような金型、各種産業機器の軸受け、摺動面等に適用されるものであって、例えば、高速度工具鋼、工具鋼、超硬合金、サーメット、機械構造用鋼を挙げることができる。これらのうち、高速度工具鋼を好例として挙げることができる。また、高速度工具鋼の具体例としてJIS G4403に挙げられるSKH2、SKH10、SKH51、SKH55、SKH57等を挙げることができる。このように基材の材質が高速度工具鋼である場合は、形成した硬質膜を本硬質化方法により更に硬化させることにより、基材の耐摩耗性を大きく向上させることができる。
基材の形状及び大きさは、基材の用途に応じて適宜選択される。
基材表面に形成される硬質膜は、主に基材の表面部分の硬度を高めて耐摩耗性を高めるために用いられる。硬質膜の材質は特に問わず、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及びダイヤモンド状カーボン(DLC)からなる群から選択される等を挙げることができる。
また、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び金属硼化物の例として、チタン、クロムから選択される金属の、酸化物、窒化物、炭化物、及び硼化物を挙げることができる。更に詳しくは、チタン化合物としてTiN、TiC及びTiAlNを挙げることができる。また、クロム化合物としてCrNを挙げることができる。更にDLCとして、化学蒸着法又は物理蒸着法で生成される低水素含有量のDLCを挙げることができる。
これら材質の硬質膜を基材表面に形成する方法は、特に問わず、通常実施される方法によって行われる。
硬質膜の厚さは、0.5〜8.0μm(好ましくは0.5〜5.0μm、更に好ましくは1.0〜3.0μm)とする。また、具体的な厚さは、使用する硬質膜や基材の用途によって適宜選択される。
また、複数の層からなる硬質膜であってもよい。例えば表層を前記の各種材質とし、下層に、他の材質として基材との密着性を改善しても良い。
本硬質膜の硬質化方法によって行われるショットピーニングは、硬質膜への投射に用いられる投射粒子の算術平均径が50μm以下の小径である小径投射粒子を用いる。この小径投射粒子の平均粒径が1〜50μm(特に好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μm)である。また、小径投射粒子を硬質膜に投射する投射距離は、50〜130mm(更に好ましくは、70〜120mm)が好ましい。この範囲の距離とすることで、小径投射粒子を適切な投射圧力で硬質膜に到達させ、硬質化させることができる。尚、この投射距離は、小径投射粒子を投射するショットピーニング装置のノズル先端から、硬質膜表面までの最短距離をいう。また、小径投射粒子の投射圧力は適宜設定することができ、例えば0.5MPa以下(特に好ましくは0.1〜0.5MPa、更に好ましくは0.2〜0.3MPa)とすることができる。小径投射粒子の投射圧力を前記範囲として、硬質膜へ投射する小径投射粒子の量を従来よりも大幅に減らすことにより、厚さが10μm以下の薄い膜や、DLC硬質膜のような基材との密着性が低く剥離しやすい材質の膜に対して適用しても、硬質膜が破損したり、剥離したりしないように硬質化することができる。
ショットピーニングに用いる小径投射粒子の材質は算術平均粒径が50μm未満とすることが可能な材質であれば良く、無機粒子、鉄系粒子等から適宜選択される。より具体的な例として、ガラス、アルミナ、ジルコニア、非晶質カーボン、鉄、超硬合金(例えば、WC−Co)、サーメット(例えば、TiC−Ni)、ダイヤモンド、非晶質炭素、炭化ケイ素、炭化硼素、窒化硼素等が適宜選択される。また、小径投射粒子の硬度は550〜2500HVが好ましい。小径投射粒子の形状は、通常球状であるがこれに限られない。
硬質膜へ投射する小径投射粒子のより具体的な投射量は、小径投射粒子、及び硬質膜に応じて適宜変更される。例えば、前記硬質膜がチタン系硬質膜(特にTiN)である場合は、小径投射粒子をガラスビーズとして前記小径投射粒子の前記硬質膜への面積辺り且つ秒辺りの投射量が0.01〜0.1g/cm/sec(特に好ましくは0.01〜0.05g/cm/sec、更に好ましくは0.02〜0.05g/cm/sec)とすることを挙げることができる。
また、前記硬質膜がDLC膜である場合は、小径投射粒子をアルミナビーズとして前記小径投射粒子の前記硬質膜への投射量が0.02〜0.05g/cm/sec(特に好ましくは0.02〜0.04g/cm/sec)とすることを挙げることができる。
本ショットピーニングに用いる小径投射粒子は、平均粒径が50μm以下と従来と比べて著しく小径であるため、凝集が生じやすい。このため、使用するショットピーニング装置は、凝集している小径投射粒子を投射直前に解砕することができる解砕手段を備えていていればよく、例えば小径投射粒子を、ボールミル等を用いて解砕することを挙げることができる。また、凝集した小径投射粒子を水など液体に懸濁させた状態で容器の内面に衝突させることにより解砕してもよい。更に、小径投射粒子の投射圧力を0.5MPa以下に制御するとより好ましい。
このようなショットピーニングを行う装置の例として、図1に示すショットピーニング装置5に示すように、小径投射粒子3を収容する粒子収容タンク6と、粒子収容タンク6と連通し、粒子収容タンク6に供給されるガス64の圧力によって小径投射粒子3を基材2上の硬質膜1に投射するためのノズル7と、粒子収容タンクに収容されている小径投射粒子3の凝集を解す解砕手段(4、61、62、65)と、を備えたものを挙げることができる。
解砕手段は、半球面形状である粒子収容タンク6の底面部61と、粒子収容タンク6に対して気密的に連通し、その下方端63が粒子収容タンク6の底面部61に近接するように配設されるガス導入管62と、粒子収容タンク6に設けられ、ガス圧によりノズル7に供給される小径投射粒子3を通過させる連通孔が設けられているフィルタ65と、粒子収容タンク6に収容されて連通孔より大きな粒径を有する混入粒子4と、を具備する。
このような解砕手段を備えることによって、小径投射粒子3を加圧して硬質膜1に投射するためのガス64が、ガス導入管62の下方端63から粒子収容タンク6の底面部61側へ噴出することによって、粒子収容タンク6内の小径投射粒子3が混入粒子4とともに矢印8に示すように、半球面状の底面部61に沿って移動し、撹拌させる。これにより凝集している小径投射粒子が混入粒子4と衝突して凝集を解すことができる。
そして凝集が解砕された小径投射粒子3は、ガス64と共にフィルタ65を通過することによって混入粒子4が併在しない状態となり、その後、中心側ノズル72から硬質膜1に投射されて、硬質膜1を更に硬質化させる。
前記混入粒子4は、その材質や形状を任意に選択することができる。材質の例としてガラス、アルミナ、ジルコニア、鋼鉄、超硬合金、サーメット等を挙げることができる。また、混入粒子4の形状は、通常球状であるがこれに限られない。
混入粒子4の大きさは、凝集している小径投射粒子を解すことができ、且つフィルタ65によってトラップされて、ガス64によってノズル7に送られることがない大きさである。このため、フィルタ65の連通孔より大きな粒径とする必要がある。
底面部61とガス導入管62の下方端63との距離は、下方端63から噴出するガス64が底面部61の表面上の小径投射粒子3や混入粒子4が撹拌することができる程度に近接している必要がある。
ガス導入管62から供給されるガス64の種類は特に問わず、例えば圧縮空気を挙げることができる。
フィルタ65は、粒子収容タンク6内に噴出して、小径投射粒子3や混入粒子4を巻き込んでノズル7に向かうガス64から、混入粒子4をトラップして小径投射粒子3のみをノズル7側に通過させるためのフィルタである。
このようなショットピーニング装置5は、ガス導入管62から導入されるガス64が、半球面状の粒子収容タンク6の底面部61を通過することで、粒子収容タンク6内の小径投射粒子3及び混入粒子4を撹拌させる。これによって小径投射粒子3が凝集していても混入粒子4によって解されて再び微小な単体となるため、小径投射粒子が凝集したまま硬質膜1に投射されて、硬質膜1が破損したり、剥離したりすることを防ぐことができる。
このような硬質膜の硬質化方法を評価するために、前述した図1に示すショットピーニング装置5を用い、投射条件を様々に変えて基材上の硬質膜に対して投射を行った実験例1〜4を作成し、これら実験例1〜4の硬質膜の評価を行った。
(1)実験例1(TiN膜)
実験例1においては、高速度工具鋼であるSKH51からなる平板である基材上に膜厚4μmのTiN膜を形成した試験片を作製後、以下の表1に示す条件とした本硬質膜の硬質化方法による硬質膜の硬質化を行った。始めに、基材上にTiN膜を物理蒸着法によって膜厚が4μmとなるように形成した。
その後、このTiN膜から100mm離れた位置にショットピーニング装置5のノズル7を設けた。そして、粒子収容タンク6に小径投射粒子3となる算術平均粒径が30μmのガラスビーズ(不二製作所株式会社製、硬度;600HV)と、平均粒径が5mmのガラスビーズである混入粒子4(不二製作所株式会社製、硬度;1700〜2000HV)を共に収容し、ガス導入管62からガス64である圧縮空気を導入して撹拌を行うことにより、小径投射粒子3の凝集を混入粒子4によって解砕した後、次いで、外周側ノズル73にガス74である圧縮空気を供給し、中心側ノズル72から小径投射粒子31を投射した。
外周側ノズル73に供給する圧縮空気の圧力である投射圧力は0.3MPaとした。更に、ガス導入管62を介して粒子収容タンク6に供給する圧縮空気の圧力である流量制御圧力は0.2MPaとした。また、投射時間は60秒とし、面積及び秒当たりの投射流量は0.06g/cm/secとなった。
尚、試験は、試験片表面の半分(図2における左半分)には、マスキングテープを貼付して投射から保護して未処理面とし、残りの半分の面には、露出したまま投射を行い処理面とした。そして、投射後、未処理面上のマスキングテープを除去して比較を行った。
上記条件で投射を行ったあとの試験片を光学顕微鏡で観察した。この結果を図2に示す。図2に示すように未処理面と処理面とを比較しても、有意な差がみられず、破損や剥離とみられる痕跡はみられなかった。
次いで、硬質膜の硬度を微小硬度計で測定し、その結果を図3に示す。微小硬度計(型番;DUH201S、島津製作所株式会社製)による測定は、圧子を計測点に徐々に力を加えて押しつけて、その後徐々に力を緩め、その間の押し込み深さを計測してグラフを作成し、力を緩めるときの曲線(除荷曲線)の勾配から硬度を求める。また、硬度の計測は、未処理面と処理面についてそれぞれ5点ずつおこない、得られた結果における除荷時のくぼみ深さから圧痕対角線を推定して表1に示す処理面硬度(ビッカース硬さ)を求めた。
算出した硬度は、未処理面では1000HVであり、処理面では2400HVであって、2.4倍硬質となったことが確認された。
このようにして硬質化した硬質膜は、より硬質となっており、低摩擦であり、化学安定性に優れることから、基材をより保護することができ、耐摩耗性を更に高めることができる。
(2)実験例2(DLC膜)
実験例2においては、単結晶Siからなる基材上にDLC膜を形成した試験片を作製し、実験例1と同様の評価を行った。単結晶Si基材上に形成したDLC膜は、その膜厚が2μmとなるように化学物理蒸着法により形成した。平均粒径が5μmのアルミナビーズ(昭和電工株式会社製、硬度HV;1700〜2000)を小径投射粒子3として、実験例1と同じショットピーニング装置及び混入粒子4を用い、投射圧力が0.3MPaであり、流量制御圧力が0.2MPaであり、投射距離が100mmとする条件で投射した。このときの面積及び秒当たりの投射流量は0.02g/cm/secであった。このとき、実験例1と同様に処理面と、未処理面を設けた。以下、実験例3、4においても同様とした。
実験例2においては、実験例1と同様に光学顕微鏡で未処理面と処理面とを比較しても、有意な差が見られず、硬質膜に破損や剥離がみられなかった。また、図4に示すように、微小硬度計による測定を行って、表1に示す未処理面硬度及び処理面硬度を算出したところ、未処理面の硬度HVが1500であり、処理面の硬度HVが6000であって、4倍硬質となったことが確認された。
(3)実験例3、4(DLC膜)
実験例3においては、実験例2と同じアルミナビーズを小径投射粒子3として、投射圧力が0.1MPaであり、流量制御圧力が0.3MPaであり、投射距離が150mmとする条件で投射した。このときの面積及び秒当たりの投射流量は0.03g/cm/secであった。
実験例4においては、実験例2と同じアルミナビーズを、投射圧力0.3MPaであり、流量制御圧力0.3MPaであり、投射距離150mmとする条件で投射した。このときの面積及び秒当たりの投射流量は0.03g/cm/secであった。
実施例3、4においては、図5に示す実験例3の顕微鏡画像のように、実験例1と同様に光学顕微鏡で未処理面と処理面とを比較したところ、処理面において未処理面と同じ部位(図5において暗い箇所)が硬質膜として一部分に残存する一方、基材2(図5において明るい箇所)が多くみられ、硬質膜の剥離が生じたことが判る。
(4)処理面及び未処理面の対比
更に、実験例2において、試験片の処理面及び未処理面を切断し、その断面を透過型電子顕微鏡により観察した。それぞれ観察した顕微鏡画像を図7及び図8に示す。
図8に示すように、未処理面のDLC膜は、DLCからなる層と担持体であるPtからなる層との間にDLCとは異なるとみられる層Aが形成されている。この層Aは黒鉛からなる層とみられる。
一方、図7に示すように、処理面のDLC膜は、DLCからなる層と担持体であるPtからなる層と境界が図8と比べて明瞭であり、図8に示す未処理面にあった層Aは形成されていないとみられる。即ち、投射によって層Aが除去されたと考えることができる。
即ち、DLC膜において本硬質膜の硬質化方法を適用すると、黒鉛と思われる層Aを除去することができ、その層Aの除去に伴ってより硬質なDLC層が露出するため、表面が硬質になると考えられる。そして、基材をより保護することができ、基材の耐摩耗性を更に高めることができる。
一方、実験例1のTiN膜の硬化は、通常の塑性変形による加工硬化と考えられる。このため、TiN膜とDLC膜とでは、硬質化の機構がそれぞれ異なるといえる。
(5)参考例1
次いで、実施例2と同様に単結晶Siからなる基材上に膜厚2μmのDLC膜を形成した試験片を作製し、実験例1と同じ平均粒径が30μmのガラスビーズを小径投射粒子3として、投射圧力が0.1MPaであり、流量制御圧力が0.2MPaであり、投射距離が150mmとする条件で投射した。このときの面積及び秒当たりの投射流量は0.05g/cm/secであった。
上記条件で投射を行ったあとの試験片を光学顕微鏡で実験例1と同様に観察し、処理面に破損や剥離とみられる痕跡がないかを確認した。その結果、実験例1と同様に未処理面と処理面とを比較しても、有意な差が見られず、硬質膜に破損や剥離がみられなかった。
一方、微小硬度計による測定結果は、未処理面及び処理面の硬度が共に約1500HVであって有意な差がみられず、硬化していないことが分かった。
(6)参考例2
実験例1と同様の平均粒径が30μmのガラスビーズを小径投射粒子3として、投射圧力が0.3MPaであり、流量制御圧力が0.2MPaであり、投射距離が100mmとする条件で、実験例2と同様の試験片に投射した。このときの面積及び秒当たりの投射流量は0.02g/cm/secであった。
この試験片においては、図4に例示するように、実験例1と同様に光学顕微鏡で未処理面と処理面とを比較しても、有意な差が見られず、硬質膜に破損や剥離がみられなかった。
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。例えば、本実施例においては、基材として、高速度工具鋼であるSKH51を用いているがこれに限られず、工具鋼、超硬合金、機械構造用鋼等からなる基材であってもよい。また、実験例1のTiN膜に対してガラスビーズの投射を行っているが、これに限られず、アルミナビーズ等の投射を行って硬化をさせることができる。また、実験例2等においてもジルコニアビーズ等の投射を行って硬化をさせることができる。
本硬質膜の硬質化方法は、切削工具用刃先に形成された硬質膜や、金型に形成された硬質膜等に対して適用することができる。また、自動車等の摺動部品に形成された硬質膜に対して適用することができる。更に、各種産業機器の軸受け、摺動面等に形成された硬質膜に対して適用することができる。
1;硬質膜、3、31;小径投射粒子、4;混入粒子、5;ショットピーニング装置、6;粒子収容タンク、61;底面部、62;ガス導入管、63;下方端、64、74;ガス、65;フィルタ、7;ノズル、71;パイプ、72;中心側ノズル、73;外周側ノズル。

Claims (7)

  1. ショットピーニングによって基材表面に形成されている硬質膜を硬質化する方法であって、
    前記硬質膜の厚みが0.5〜8.0μmであり、
    前記ショットピーニングに用いる小径投射粒子は平均粒径が1〜50μmであり、
    前記小径投射粒子を投射距離50〜130mmから前記硬質膜に投射することを特徴とする硬質膜の硬質化方法。
  2. 前記硬質膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる請求項1記載の硬質膜の硬質化方法。
  3. 前記小径投射粒子は、その硬度が、550HV以上である請求項2記載の硬質膜の硬質化方法。
  4. 前記小径投射粒子は、ガラス又はアルミナからなり、
    前記硬質膜は、TiN、TiC、TiAlN、TiSiC、TiCN、及びダイヤモンド状カーボンからなる群から選択される1つからなる請求項3記載の硬質膜の硬質化方法。
  5. 前記小径投射粒子は、ガラスビーズであり、
    前記硬質膜は、TiN、TiC、TiAlN、TiSiC及びTiCNからなる群から選択される1つからなる硬質膜である請求項2又は3記載の硬質膜の硬質化方法。
  6. 前記小径投射粒子は、アルミナビーズであり、
    前記硬質膜は、ダイヤモンド状カーボン硬質膜である請求項2又は3記載の硬質膜の硬質化方法。
  7. 前記ショットピーニングを行う装置は、前記小径投射粒子の凝集を解す解砕手段を具備し、前記解砕手段により凝集が解されている前記小径投射粒子を、前記硬質膜に投射して、前記硬質膜を硬質化させる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬質膜の硬質化方法。
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