図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成図である。プローブ10は超音波を送受する超音波探触子である。例えば、コンベックス走査型やセクタ走査型やリニア走査型、二次元画像(断層画像)用や三次元画像用等の各種の超音波探触子を診断用途等に応じてプローブ10として利用することができる。
送受信部12は、送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマとしての機能を備えている。つまり、送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力することにより送信ビームを形成し、さらに、複数の振動素子から得られる複数の受波信号に対して整相加算処理などを施して受信ビームを形成する。これにより、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)が走査面内において走査され、各受信ビームごとに超音波の受信信号が形成される。超音波の受信信号(RF信号)は、検波処理等の受信信号処理を施される。これにより、各受信ビームごとにその受信ビームに対応したラインデータが得られる。
送受信部12は、例えば、走査面の位置を移動させながら立体的な走査を行う。これにより、各走査面ごとに複数のラインデータからなるフレームデータが得られる。つまり、複数の走査面に対応した複数フレームのフレームデータが得られる。また、送受信部12は、例えば、所望の断面(固定的な断面であることが望ましい)において二次元的な走査を繰り返してもよい。これにより、各時相ごとに複数のラインデータからなるフレームデータが得られる。つまり、複数の時相に対応した複数フレームのフレームデータが得られる。複数フレームのフレームデータは、高密度化ブロック20に送られる。
高密度化ブロック20は、フレームバッファ22と前処理部24と補間処理部26と精細化処理部28で構成され、複数フレームのフレームデータをフレーム方向に高密度化する。高密度化ブロック20における処理の具体例については後に詳述する。
デジタルスキャンコンバータ(DSC)30は、高密度化ブロック20において高密度化されたフレームデータに対して座標変換処理等を施す。デジタルスキャンコンバータ30は、例えば、超音波ビームの走査に対応した走査座標系で得られたフレームデータに対して、各フレームごとに座標変換処理や補間処理等を行って、表示座標系に対応したフレームデータを得る。
画像形成部40は、デジタルスキャンコンバータ30から得られるフレームデータ、つまり、高密度化されて表示座標系に変換された複数フレームのフレームデータに基づいて超音波画像を形成する。例えば、診断対象を含む三次元空間内から立体的に得られる複数フレームのフレームデータに基づいて、診断対象を立体的に映し出した三次元の超音波画像が形成される。また、診断対象から複数時相に亘って得られる複数フレームのフレームデータに基づいて、診断対象を動的に映し出した動画の超音波画像が形成される。画像形成部40において形成された超音波画像は、必要に応じてグラフィックデータ等が合成され、表示部42に表示される。
なお、図1において、高密度化ブロック20は、デジタルスキャンコンバータ30の前段に配置されているが、高密度化ブロック20は、デジタルスキャンコンバータ30の後段に配置されてもよい。その場合には、送受信部12から得られる複数フレームのフレームデータがデジタルスキャンコンバータ30において表示座標系に変換され、表示座標系に変換された複数フレームのフレームデータが、高密度化ブロック20によりフレーム方向に高密度化され、高密度化された表示座標系に対応した複数フレームのフレームデータに基づいて、画像形成部40が超音波画像を形成する。
制御部50は、図1に示す超音波診断装置内を全体的に制御する。図1の超音波診断装置は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、その他のスイッチ類等の操作デバイスを備えていることが望ましい。そして、制御部50による全体的な制御には、操作デバイス等を介してユーザから受け付けた指示も反映される。
図1に示す構成(符号を付された各部)のうち、送受信部12,前処理部24,補間処理部26,精細化処理部28,デジタルスキャンコンバータ30,画像形成部40の各部は、例えば電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、上記各部に対応した機能が、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現されてもよい。
フレームバッファ22は、例えば、半導体メモリやハードディスク等の記憶デバイスで実現することができ、表示部42の好適な具体例は、液晶ディスプレイ等である。制御部50は、例えば、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現することができる。
図1の超音波診断装置の全体構成は以上のとおりである。次に、当該超音波診断装置における高密度化処理について説明する。なお、図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
図2は、高密度化ブロック20における処理の具体例1を説明するための図である。図2には、高密度化ブロック20を構成するフレームバッファ22と前処理部24と補間処理部26と精細化処理部28が示されている。また、図2には、高密度化ブロック20内の各処理段階におけるフレームデータの具体例が図示されている。
図2におけるフレームデータは、診断領域内において超音波を立体的に送受して得られる三次元データ(ボリュームデータ)である。つまり、送受信部12が走査面の位置を移動させながら立体的な走査を行い、これにより、1つのボリュームを構成する複数フレームのフレームデータが入力フレームデータFnとして、フレームバッファ22に記憶される。
図2において、複数フレームのフレームデータは、サンプル方向とライン方向とフレーム方向によって表現される座標系において処理される。サンプル方向は、超音波が送受される深さ方向に対応しており、1ライン分のラインデータの配列方向である。ライン方向は、複数ラインの配列方向であり、フレーム方向は、複数フレームの配列方向である。
例えば、サンプル方向に沿うように超音波ビームが形成され、その超音波ビームがライン方向に移動するように電子的に走査されることにより、1フレームを構成する複数のラインデータ、つまり1フレーム分のフレームデータが得られる。さらに、例えば、電子的または機械的な走査によりフレーム方向にフレームを移動させつつフレームデータが収集され、1つのボリュームを構成する複数フレームのフレームデータが得られる。
図2において、フレームバッファ22に記憶される1ボリューム分の入力フレームデータFnは、フレームF1,F2,・・・,FNのN枚(Nは自然数)のフレームで構成されている。
前処理部24は、補間処理部26における補間処理と精細化処理部28における精細化処理に先だって、補間処理や精細化処理を好適に行うための前処理を行う。前処理は、フレーム方向に配列された複数フレームと交わる各処理面PSにおいて行われる。図2において、各処理面PSは、サンプル方向とフレーム方向に広がる平面であり、ライン方向に例えば等間隔に複数の処理面PSが配列される。前処理部24は、各処理面PSごとに、フレームデータに基づいて得られる画像内において構造物の繋がりを検出し、構造物の繋がりを強化する前処理を実行する。
図3は、前処理部24における前処理の具体例を説明するための図である。図3には、各処理面PS内のフレームデータに対する前処理の具体例(例えば「preAIP処理」と称する)が示されている。
図3において、前処理前の各処理面PSは、入力フレームデータFn(フレームF1,F2,・・・,FN)の各フレームに属するフレームデータで構成される。各処理面PS内におけるフレームデータは、例えば、当該処理面PSの位置に対応した1ライン分のラインデータである。
図3には、1枚の処理面PSのみを代表的に図示しているが、処理面PSは、ライン方向に複数枚に亘って配列される(図2参照)。例えば、ライン方向に並ぶ複数ライン(複数の超音波ビームライン)の各々に対応するように複数の処理面PSが配列され、各処理面PSごとに前処理が実行される。
前処理部24は、各処理面PS内において、入力フレームデータFnに対して前処理を実行する。例えば、図3に示すように、対象データ(処理対象となるフレームデータ)を中心として、方向1〜方向4の4方向において、各方向ごとに5個のフレームデータに関する分散値(輝度の分散値)が算出される。そして、分散値が最小となる方向が特定され、特定された方向における5個のフレームデータの平均値(輝度の平均値)が対象データの処理後のデータとされる。なお、方向の総数は4方向以外(例えば2方向,8方向など)も可能であり、各方向のデータ総数も5個以外(例えば3個,7個,9個など)とされてもよい。また、平均値に代えて重みづけ加算処理等により得られた値が利用されてもよい。
前処理部24は、複数の処理面PSについて、各処理面PSごとに、前処理前の複数のフレームデータ(望ましくは全てのフレームデータ)の各々を対象データとして前処理を実行し、前処理後のフレームデータFn´を得る。これにより、例えば図3に示すように、各処理面PS内における前処理後のフレームデータFn´(フレームF1´,F2´,・・・,FN´)が得られる。
一般に、組織等の構造物の表面では、表面の接線方向における輝度の分散が最少となる傾向にある。そのため、前処理により、輝度の分散が最小となる方向を特定して、その方向における平均値を得ることにより、ノイズ等を抑制しつつ構造物の繋がりを維持または強調した画像を得ることが可能になる。なお、前処理の前に、入力フレームデータFnに対して平滑化フィルタ処理等を施し、前処理に悪影響を及ぼすノイズ等を予め除去しておくことが望ましい。
図2に戻り、補間処理部26は、前処理部24において前処理を施された複数フレームのフレームデータをフレーム方向に補間処理する。補間処理部26は、前処理後のフレームデータFn´(フレームF1´,F2´,・・・,FN´)に対して、補間処理により得られる補間データをフレーム間に挿入することによりフレーム数を増加させ、補間処理後のフレームデータFmを得る。補間処理後のフレームデータFmは、フレームF1,F2,・・・,FMのM枚(MはNより大きい自然数)のフレームで構成されている。
図4は、補間処理部26における補間処理の具体例を説明するための図である。図4には、フレームデータに対する補間処理が、各処理面PS(図2,図3参照)に対応した断面内において図示されている。
図4において、補間処理前のフレームデータFn´(フレームF1´,F2´,・・・,FN´)は、前処理後のフレームデータFn´(図3)である。補間処理部26は、補間処理前のフレームデータFn´に対して、例えば線形補間処理により得られる補間データをフレーム間に挿入することにより、補間処理後のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)を得る。例えば、補間処理前におけるフレームF1´のフレームデータとフレームF2´のフレームデータの間に、補間データとして、それら2つのフレームデータの中間値(輝度の中間値)が挿入される。
補間処理部26は、補間処理前の全てのフレームF1´,F2´,・・・,FN´について、2つのフレームのフレームデータ間に補間データを挿入し、補間処理後のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)を得る。
なお、補間データは、2つのフレームデータの中間値に限定されない。例えば、補間データが挿入される位置の近傍における2つ以上のフレームデータを参照して、補間データのデータ値が決定されてもよい。また、補間データは、その近傍のフレームデータを参照して得られることが望ましいものの、近傍のフレームデータを参照せずに例えば一定値(例えば一定輝度)の補間データがフレーム間に挿入されてもよい。さらに、フレーム間に2枚以上のフレームデータ(補間データ)が挿入されてもよい。
図2に戻り、精細化処理部28は、補間処理部26において補間処理された複数フレームのフレームデータを精細化処理する。精細化処理は、フレーム方向に配列された複数フレームと交わる各処理面PSにおいて行われる。図2において、各処理面PSは、サンプル方向とフレーム方向に広がる平面であり、ライン方向に例えば等間隔に複数の処理面PSが配列される。精細化処理部28は、各処理面PSにおいて補間処理後のフレームデータを精細化処理する。
図5は、精細化処理部28における精細化処理の具体例を説明するための図である。図5には、各処理面PS内のフレームデータに対する精細化処理の具体例が示されている。
図5において、精細化処理前のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)は、補間処理後のフレームデータFm(図4)である。精細化処理部28は、各処理面PS内において、精細化処理前のフレームデータFmを、例えばIBP処理により高精細化することにより、精細化処理後のフレームデータFm´(フレームF1´,F2´,・・・,FM´)を得る。精細化処理部28は、複数の処理面PSにおいて、望ましくは全ての処理面PSにおいて、各処理面PSごとに例えばIBP処理によりフレームデータを高精細化する。
図6は、精細化処理の具体例であるIBP処理を説明するための図である。精細化処理部28は、複数の処理面PS(図2,図5参照)において、望ましくは全ての処理面PSにおいて、各処理面PSごとにIBP(Iterative Back Projection)処理を行ってフレームデータを高精細化する。
まず、S1(ステップ1)において、各処理面PSにおける補間処理後のフレームデータFmが対象画像とされる。また、S2(ステップ2)において、対象画像が仮の高精細画像とされる。
次に、S3(ステップ3)において、高精細画像から推定劣化画像が形成される。例えば、高精細画像に対して、BlurKernel等の劣化処理用カーネルを作用させて、推定劣化画像が形成される。BlurKernelは、例えば1次元又は2次元のガウシアン(Gaussin)関数で構成され、高精細画像を構成する複数のフレームデータ、望ましくは全てのフレームデータに対して、ガウシアン関数を作用させることにより、高精細画像よりも劣化した(ボケた)推定劣化画像が形成される。
そして、S4(ステップ4)において、対象画像と推定劣化画像が比較され、対象画像と推定劣化画像の差分(差分画像)が導出される。さらに、導出された差分(差分画像)に対して、S5(ステップ5)において、BPK(Back Projection Kernel)を作用させ、必要に応じて係数αを乗算することにより、更新成分が生成され、高精細画像と更新成分が合成(例えば加算)されて高精細画像が更新される。
S3からS5の処理は、終了条件が満たされるまで繰り返される。終了条件としては、例えば、対象画像と推定劣化画像との差分(誤差)が十分に小さいと判断された場合、定められた回数(例えば5回)の繰り返しが終了した場合、などが好適である。
こうして、S6(ステップ6)において、各処理面PSごとに終了条件を満たして高精細画像の更新が終了すると、終了時点における更新結果が各処理面PSの高精細画像とされる。
図6を利用して説明したIBP処理では、画像内における構造物のエッジが強調されるとともに、画像内におけるばらつきも強調されてしまう。そのため、画像内におけるばらつきを抑えつつ、構造物のエッジを強調するために、S5において、差分画像に対してBPK(Back Projection Kernel)を作用させている。BPKとしては、例えば、ガウシアンフィルタ、バイラテラルフィルタ、シグモイド関数等が好適である。
ガウシアンフィルタは、例えば数1式のガウス関数に従った重み付け平滑化フィルタである。フィルタの中央に近いほど大きな重みが付けられ、単純な平均化フィルタに比べ、より滑らかで自然な平滑化効果が期待できる。対象画像と推定劣化画像との差分画像に対してガウシアンフィルタを施すことにより、ばらつきに関する加算量が抑えられ、ばらつきの強調が抑制される。
なお、数1式におけるσは分散であり、ガウス関数の幅に相当する。σの値が大きいほど平滑化効果は大きくなるが平滑化に伴うボケも顕著になるため、σの値は適宜に設定されることが望ましい。
バイラテラルフィルタは、例えば数2式の関数に従った重み付けフィルタである。バイラテラルフィルタは、エッジを鈍らせずにノイズを平滑化するために、注目画素からの距離に応じた重み付けに加えて、注目画素の画素値とその周辺画素の画素値の差に応じて、ガウス分布に従った重み付けによる平均化を行う。ガウシアンフィルタは画像に依存しないフィルタであるのに対し、バイラテラルフィルタは、画像の画素値(輝度値)分布に適応したフィルタである。対象画像と推定劣化画像との差分画像に対してバイラテラルフィルタを施すことにより、構造物のエッジ強調成分等を維持しつつ、ばらつきに関する加算量を選択的に抑えることが可能になる。
なお、数2式におけるσ1とσ2は、それぞれ、空間方向と画素値方向の重みを表し、Kは正規化ファクタである。バイラテラルフィルタは、画素値の勾配も考慮しており、周辺画素の画素値と注目画素の画素値との差が大きい場合に、フィルタの重み係数が0(ゼロ)に近づく。そのため、注目画素に近い画素値を持つ周辺画素のみを利用して平滑化処理が行われ、エッジのボケをできる限り抑えることが可能になる。
シグモイド関数は、例えば数3式により表現される。また、数4式には、シグモイド関数を応用した関数が示されている。対象画像と推定劣化画像との差分画像に対して、数3式または数4式の関数を作用させて、更新画像(高精細画像)への加算量を制御するようにしてもよい。例えば、加算量が大きい場合に加算量が抑制され、加算量が小さい場合に加算量が増加される。
図7は、シグモイド曲線の具体例を示す図であり、図7には、数4式の関数に対応した曲線が図示されている。数4式におけるaはゲインと呼ばれ、a(ゲイン)の大きさに応じて、図7における曲線のゼロクロス付近における勾配を制御することができる。また、数4式において、Kの大きさに応じてS(u)の最大値と最小値が制御される。
なお、シグモイド関数を利用せずに、閾値により更新画像(高精細画像)への加算量を制御するようにしてもよい。例えば、加算量が閾値未満の場合には加算を行い、加算量が閾値以上の場合には加算を行わないようにしてもよい。
図2に戻り、精細化処理部28は、複数の処理面PSにおいて、望ましくは全ての処理面PSにおいて、各処理面PSごとにIBP処理(図6参照)により高精細画像を得る。そして、各処理面PSにおいて高精細画像を構成するフレームデータFm´(図5)が複数の処理面PSに亘って集められ、精細化処理後のフレームデータFm´とされる。
精細化処理後のフレームデータFm´は、入力フレームデータFnよりも、フレーム数が多く、フレーム方向に高密度化されている。また精細化処理後のフレームデータFm´は、補間処理後のフレームデータFmよりも、精細化処理により高精細化されている。つまり、図2の具体例1により、フレーム方向において高密度且つ高精細なフレームデータを得ることが可能になり、画像形成部40において、高密度且つ高精細な三次元超音波画像、例えばボリュームレンダリング画像等を形成することが可能になる。
図8は、高密度化ブロック20における処理の具体例2を説明するための図である。図8の具体例2は、断層画像(例えばBモード画像)の動画に対して好適である。例えば、送受信部12が、所望の断面において二次元的な走査を繰り返すことにより、図8のフレームデータ、つまり、複数の時相に対応した複数フレームのフレームデータが得られる。送受信部12は、複数の時相に亘って各時相ごとに各フレームデータを次々に出力する。
図8においても、図2の場合と同様に、複数フレームのフレームデータは、サンプル方向とライン方向とフレーム方向によって表現される座標系において処理される。サンプル方向は、超音波が送受される深さ方向に対応しており、1ライン分のラインデータの配列方向である。ライン方向は、複数ラインの配列方向であり、フレーム方向は、複数フレームの配列方向である。なお、図8において、フレーム方向は、時相の方向つまり時間軸に対応している。
図8において、フレームバッファ22には、例えば連続する5フレーム分のフレームデータが入力フレームデータFnとして記憶される。なお、4フレーム以下または6フレーム以上の複数フレームがフレームバッファ22に記憶されてもよい。
前処理部24は、フレームバッファ22から得られる入力フレームデータFnに対し、前処理(図3参照)を行う。これにより、各処理面PS内における前処理後のフレームデータFn´が得られる。
補間処理部26は、前処理後のフレームデータFn´に対して、補間処理(図4参照)を行う。これにより、補間処理後のフレームデータFmが得られる。
精細化処理部28は、補間処理後のフレームデータFmに対して、精細化処理(図5,図6参照)を行う。これにより、精細化処理後のフレームデータFm´が得られる。
フレームバッファ22には、連続する5フレーム分のフレームデータが次々に入力フレームデータFnとして記憶され、フレームバッファ22に次々に記憶される入力フレームデータFnが、前処理部24と補間処理部26と精細化処理部28において処理される。
精細化処理後のフレームデータFm´は、入力フレームデータFnよりも、フレーム数が多く、フレーム方向につまり時間軸方向に高密度化されている。また、精細化処理後のフレームデータFm´は、補間処理後のフレームデータFmよりも、精細化処理により高精細化されている。つまり、図8の具体例2により、フレーム方向において高密度且つ高精細なフレームデータを得ることが可能になり、画像形成部40において、例えば高フレームレートで高精細なBモード画像を形成することが可能になる。
図9は、高密度化ブロック20における処理の具体例3を説明するための図である。図9には、高密度化ブロック20を構成するフレームバッファ22と補間処理部26と前処理部24と精細化処理部28が示されている。図2,図8の具体例1,2と異なり、図9の具体例3においては、補間処理部26が補間処理を行った後に前処理部24が前処理を行う。
また、図9には、高密度化ブロック20内の各処理段階におけるフレームデータの具体例が図示されている。図9におけるフレームデータは、診断領域内において超音波を立体的に送受して得られる三次元データ(ボリュームデータ)を構成する複数フレームのフレームデータ(図2参照)であってもよいし、所望の断面において二次元的な走査を繰り返すことにより得られる複数の時相に対応した複数フレームのフレームデータ(図8参照)であってもよい。
図9において、フレームバッファ22に記憶される入力フレームデータFnは、フレームF1,F2,・・・,FNのN枚(Nは自然数)のフレームで構成されている。補間処理部26は、フレームバッファ22から得られる入力フレームデータFnをフレーム方向に補間処理する。補間処理部26は、入力フレームデータFn(フレームF1,F2,・・・,FN)に対して、補間処理により得られる補間データをフレーム間に挿入することによりフレーム数を増加させ、補間処理後のフレームデータFmを得る。補間処理後のフレームデータFmは、フレームF1,F2,・・・,FMのM枚(MはNより大きい自然数)のフレームで構成されている。
図10は、補間処理部26における補間処理の具体例を説明するための図である。図10には、フレームデータに対する補間処理が、各処理面PS(図9参照)に対応した断面内において図示されている。各処理面PSは、サンプル方向とフレーム方向に広がる平面であり、ライン方向に例えば等間隔に複数の処理面PSが配列される。
図10において、補間処理前のフレームデータFnは、入力フレームデータFn(フレームF1,F2,・・・,FN)である。補間処理部26は、補間処理前のフレームデータFnに対して、例えば線形補間処理により得られる補間データをフレーム間に挿入することにより、補間処理後のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)を得る。例えば、補間処理前におけるフレームF1のフレームデータとフレームF2のフレームデータの間に、補間データとして、それら2つのフレームデータの中間値(輝度の中間値)が挿入される。
補間処理部26は、補間処理前の全てのフレームF1,F2,・・・,FNについて、2つのフレームのフレームデータ間に補間データを挿入し、補間処理後のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)を得る。
なお、補間データは、2つのフレームデータの中間値に限定されない。例えば、補間データが挿入される位置の近傍における2つ以上のフレームデータを参照して、補間データのデータ値が決定されてもよい。また、補間データは、その近傍のフレームデータを参照して得られることが望ましいものの、近傍のフレームデータを参照せずに例えば一定値(例えば一定輝度)の補間データがフレーム間に挿入されてもよい。さらに、フレーム間に2枚以上のフレームデータ(補間データ)が挿入されてもよい。
図9に戻り、前処理部24は、補間処理部26において補間処理された複数フレームのフレームデータに対して前処理を行う。前処理部24は、精細化処理部28における精細化処理に先だって、精細化処理を好適に行うための前処理を行う。前処理は、フレーム方向に配列された複数フレームと交わる各処理面PSにおいて行われる。図9において、各処理面PSは、サンプル方向とフレーム方向に広がる平面であり、ライン方向に例えば等間隔に複数の処理面PSが配列される。前処理部24は、各処理面PSごとに、補間処理後のフレームデータに基づいて得られる画像内において構造物の繋がりを検出し、構造物の繋がりを強化する前処理を実行する。
図11は、前処理部24における前処理の具体例を説明するための図である。図11には、各処理面PS内の補間処理後のフレームデータに対する前処理の具体例(例えば「preAIP処理」と称する)が示されている。
図11において、前処理前の各処理面PSは、補間処理後のフレームデータFm(フレームF1,F2,・・・,FM)の各フレームに属するフレームデータで構成される。各処理面PS内におけるフレームデータは、例えば、当該処理面PSの位置に対応した1ライン分のラインデータ(補間処理により得られたラインデータを含む)である。
図11には、1枚の処理面PSのみを代表的に図示しているが、処理面PSは、ライン方向に複数枚に亘って配列される(図9参照)。例えば、ライン方向に並ぶ複数ライン(複数の超音波ビームライン)の各々に対応するように複数の処理面PSが配列され、各処理面PSごとに前処理が実行される。
前処理部24は、各処理面PS内において、補間処理後のフレームデータFmに対して前処理を実行する。例えば、図11に示すように、対象データ(処理対象となるフレームデータ)を中心として、方向1〜方向4の4方向において、各方向ごとに5個のフレームデータに関する分散値(輝度の分散値)が算出される。そして、分散値が最小となる方向が特定され、特定された方向における5個のフレームデータの平均値(輝度の平均値)が対象データの処理後のデータとされる。なお、方向の総数は4方向以外(例えば2方向,8方向など)も可能であり、各方向のデータ総数も5個以外(例えば3個,7個,9個など)とされてもよい。また、平均値に代えて重みづけ加算処理等により得られた値が利用されてもよい。
前処理部24は、複数の処理面PSについて、各処理面PSごとに、前処理前の複数のフレームデータ(望ましくは全てのフレームデータ)の各々を対象データとして前処理を実行し、前処理後のフレームデータFm´を得る。これにより、例えば図11に示すように各処理面PS内における前処理後のフレームデータFm´(フレームF1´,F2´,・・・,FM´)が得られる。
一般に、組織等の構造物の表面では、表面の接線方向における輝度の分散が最少となる傾向にある。そのため、前処理により、輝度の分散が最小となる方向を特定して、その方向における平均値を得ることにより、ノイズ等を抑制しつつ構造物の繋がりを維持または強調した画像を得ることが可能になる。なお、前処理の前に、補間処理後のフレームデータFmに対して平滑化フィルタ処理等を施し、前処理に悪影響を及ぼすノイズ等を予め除去しておくことが望ましい。
図9に戻り、精細化処理部28は、補間処理部26において補間処理されて前処理部24において前処理された複数フレームのフレームデータを精細化処理する。精細化処理はフレーム方向に配列された複数フレームと交わる各処理面PSにおいて行われる。図9において、各処理面PSは、サンプル方向とフレーム方向に広がる平面であり、ライン方向に例えば等間隔に複数の処理面PSが配列される。精細化処理部28は、各処理面PSにおいて補間処理後のフレームデータを精細化処理する。
図12は、精細化処理部28における精細化処理の具体例を説明するための図である。図12には、各処理面PS内のフレームデータに対する精細化処理の具体例が示されている。
図12において、精細化処理前のフレームデータFm´(フレームF1´,F2´,・・・,FM´)は、補間処理部26において補間処理されて前処理部24において前処理されたフレームデータFm´(図11)である。精細化処理部28は、各処理面PS内において、精細化処理前のフレームデータFm´を、例えばIBP処理(図6参照)により高精細化することにより、精細化処理後のフレームデータFm´´(フレームF1´´,F2´´,・・・,FM´´)を得る。精細化処理部28は、複数の処理面PSにおいて望ましくは全ての処理面PSにおいて、各処理面PSごとに、例えば図6を利用して詳述したIBP処理により、フレームデータを高精細化する。
図9に戻り、精細化処理部28は、複数の処理面PSにおいて、望ましくは全ての処理面PSにおいて、各処理面PSごとにIBP処理(図6参照)により高精細画像を得る。そして、各処理面PSにおいて高精細画像を構成するフレームデータFm´´(図12)が、複数の処理面PSに亘って集められ、精細化処理後のフレームデータFm´´とされる。
精細化処理後のフレームデータFm´´は、入力フレームデータFnよりも、フレーム数が多く、フレーム方向に高密度化されている。また、精細化処理後のフレームデータFm´´は、補間処理後のフレームデータFmよりも、精細化処理により高精細化されている。つまり、図9の具体例3により、フレーム方向において高密度且つ高精細なフレームデータを得ることが可能になる。これにより、画像形成部40において、高密度且つ高精細な三次元超音波画像、例えばボリュームレンダリング画像等を形成することが可能になる。また、画像形成部40において、例えば高フレームレートで高精細なBモード画像を形成することが可能になる。
また、図9の具体例3のように、補間処理後に前処理を行うことにより、補間処理後においてフレーム数が増加したフレームデータに繋がりを持たせることが可能になり、例えば、補間処理前に前処理を行う場合に比べて、画像形成部40において得られる超音波画像の画質が向上する。
以上、本発明の実施において好適な超音波診断装置について説明したが、例えば、図1に示した前処理部24と補間処理部26と精細化処理部28のうちの少なくとも一つをコンピュータにより実現し、そのコンピュータを超音波画像処理装置として機能させてもよい。
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。