しかしながら、上述の特許文献1の技術における案内体は、ブラインドシートが側方の両エッジ範囲に沿って連続して配設されている。そのため、車両用巻上げブラインド装置は、ブラインドシートを巻取る際に両エッジ範囲に沿った案内体も併せて巻き取る必要がある。そのため、車両用巻上げブラインド装置は、係る案内体が嵩張った状態で巻き取られることから、ブラインドシートの柔軟な性質を阻害して厚み方向においてコンパクトに巻き取ることが困難であった。また、案内体は、幅寸法を大きくすることでブラインドシートを安定して案内することが可能となる。ところが、ブラインドシートの側方の両エッジ範囲の領域を案内体が占める結果、日よけの機能以外の面積が大きくなる。そのため、ブラインドシートの面方向においてコンパクトな車両用巻上げブラインド装置とすることができないという懸念があった。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗物用のシート材移動機構において、シート材を張設した状態で面方向に沿って第1の位置と第2の位置の間を移動する際にシート材の柔軟な性質を阻害されるのを抑制し、撓みやすくコンパクトな構成とすることにある。
上記課題を解決するために、本発明の乗物用のシート材移動機構は次の手段をとる。先ず、第1の発明は、乗物用のシート材移動機構であって、柔軟な素材による面状のシート材と、筒状部と該筒状部の周方向の一部が開口されると共に長手方向に沿って連続する溝部を備え、前記シート材の外周において同一間隔を維持して並行に配設されて前記シート材を張設した状態で面方向に沿って第1の位置と第2の位置の間を移動可能に案内する一対の案内構造と、前記一対の案内構造における筒状部の内方に挿入して長手方向に摺動可能であり且つ前記溝部の開口幅より大きい厚みを備え、前記シート材の移動方向に沿って隣接して配設される複数の突状要素を有する。
この第1の発明によれば、一対の案内構造は、筒状部とこの筒状部の周方向の一部が開口されると共に長手方向に沿って連続する溝部を備えている。また、一対の案内構造は、シート材の外周において同一間隔を維持して並行に配設されてシート材を張設した状態で面方向に沿って第1の位置と第2の位置の間を移動可能に案内する。また、一対の案内構造における筒状部の内方に挿入して長手方向に摺動可能であり且つ溝部の開口幅より大きい厚みを備え、シート材の移動方向に沿って隣接して配設される複数の突状要素を有する。これにより、複数の突状要素は、一対の案内構造に案内されるにあたりシート材の移動方向に沿って連続的に配設される構成ではなく、シート材の移動方向に沿って隣接して配設されるため、第1の位置と第2の位置の間を移動可能に案内される際にシート材の柔軟な性質が阻害されることが抑制される。これによりシート部材は撓みやすく、コンパクトな構成とし得る。もって、乗物用のシート材移動機構において、シート材を張設した状態で面方向に沿って第1の位置と第2の位置の間を移動する際にシート材の柔軟な性質を阻害されるのを抑制し、撓みやすくコンパクトな構成することができる。
次に、第2の発明は、第1の発明の乗物用のシート材移動機構であって、前記シート材と前記一対の案内構造の間に、柔軟な素材により帯状に且つ前記溝部の開口幅より薄く構成され、長手方向に沿った一方の端部に前記複数の突状要素が配設されて、前記シート材の移動方向に沿って前記シート材に重ね合わせて連結される帯状部材を有している。
この第2の発明によれば、シート材と複数の突状要素は、帯状部材を介して配設される構成である。そのため、複数の突状要素の配設の自由度を増し得る。また帯状部材は、シート材と一対の案内構造の間に、柔軟な素材により帯状に且つ溝部の開口幅より薄く構成される。そのため、シート材と複数の突状要素の連結は、シート材の厚みに影響されること無く帯状部材を介して複数の突状要素と円滑に連結し得る。また、帯状部材は、柔軟な素材により構成されるため、シート材の柔軟な性質を阻害することを抑制し得る。
次に、第3の発明は、第2の発明の乗物用のシート材移動機構であって、前記複数の突状要素は、前記帯状部材の厚み方向の両側に張り出した形状に構成されている。
この第3の発明によれば、複数の突状要素は、帯状部材の厚み方向の両側に張り出した形状に構成される。これにより、複数の突状要素は、案内構造の筒状部内からの離脱を抑制し得る。
次に、第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかの乗物用のシート材移動機構であって、前記複数の突状要素は、線ファスナにおけるファスナエレメントによって構成されている。
この第4の発明によれば、複数の突状要素は、線ファスナにおけるファスナエレメントによって構成されることで案内構造をコンパクトな構成とし得る。ここで、乗物内にシート材移動機構を構成する位置によっては、スペースの制限がある場合も想定されるが、コンパクトな案内構造とすることで設計自由度が増し得る。また、コンパクトにすることでより一層、軽量化を図り得る。
次に、第5の発明は、第1の発明から請求項4のいずれかの乗物用のシート材移動機構であって、前記シート材を巻取り可能とする巻取装置を有する。
この第5の発明によれば、シート材を巻取り可能とする巻取装置を有することで、シート材をコンパクトに巻き取る構成となり得る。
次に、第6の発明は、第1の発明から請求項5のいずれかの乗物用のシート材移動機構であって、乗物における乗物構成部材と、該乗物構成部材の室内側に配設されると共に、前記一対の案内構造が組みつけられるトリム部材を有する。
この第6の発明によれば、乗物用のシート材移動機構は、乗物のトリム部材に組付けることで好適に構成することができる。
次に、第7の発明は、第1の発明の乗物用のシート材移動機構であって、前記トリム部材は、前記乗物構成部材の室内側に面して組みつけられるとともに厚み方向に貫通する開口部を有し、前記一対の案内構造は、前記開口部の周囲に沿って配設される補強部材と一体的に構成されている。
この第7の発明によれば、トリム部材は、乗物構成部材の室内側に面して組みつけられるとともに厚み方向に貫通する開口部を有している。また一対の案内構造は開口部の周囲に沿って配設される補強部材と一体的に構成される。これにより、乗物において補強部材によるトリム材の補強としての機能と、シート材の案内構造としての機能と、二つの機能を好適に有し得る。
本発明は上記各発明の手段をとることにより、乗物用のシート材移動機構において、シート材を張設した状態で面方向に沿って第1の位置と第2の位置の間を移動する際にシート材の柔軟な性質を阻害されるのを抑制し、撓みやすくコンパクトな構成することができる。
以下に、本発明を実施するための実施形態1について、図1〜図6を用いて説明する。なお、本発明の実施形態として車両天井構造を例示して説明する。なお、各図に示す上下、左右の方向性は、車両を中心とする上下、左右の方向で統一して図示する。図1に図示されるように、実施形態における車両天井構造は、車両10(乗物)におけるルーフパネル12(乗物構成部材)と、ルーフパネル12の車室内側に配設される車両用天井材20(トリム部材)とを有する。そして、開閉機構30(シート材移動機構)は、ルーフパネル12に対向する車両用天井材20の面に沿って組みつけられる。
ルーフパネル12(乗物構成部材)は、図1に図示されるように車両10の屋根として鋼板製で構成される。ルーフパネル12には、サンルーフ用の開口部14が形成される。なお、開口部14はサンルーフ用の態様に限られず、係る開口部14に透明なガラス等をはめ込んだガラスルーフの態様もある。ルーフパネル12の車内側は、内装材として車両用天井材20が装着される。
車両用天井材20(トリム部材)は、ルーフパネル12の車室内側に面して組みつけられる。車両用天井材20は、図1、2に図示されるように基材24と表皮材26とが積層されて熱融着、接着剤などによって一体化される。基材24は、車両用天井材20の形状保持、剛性確保、車室内の吸音、断熱等を担う部位である。
基材24は、ウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームなどの芯材の両面に熱硬化性接着剤を塗布又は含浸したガラス繊維などの繊維補強材を積層するとともに、その裏面に非通気性フィルム、熱可塑性合成繊維不織布等からなる裏材が積層される態様が例示される。芯材は、形状保持と剛性確保のために設けられており、車室内の吸音、断熱を有する態様も採り得る。芯材は、段ボール系,ウレタン系,発泡オレフィン系など種々適用できる。繊維補強材は、ガラス繊維、バサルト繊維、ジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等等が種々適用できる。
また、繊維系の基材24として、上述した繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を有する繊維マットも適用できる。かかる繊維系の基材24は、クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれの製法を選択しても形成できる。乾式法(クロスレイヤー)を用いた場合の基材24は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂の繊維体を所定繊維長にカットした上で開繊機でよく混ぜ合わせ(混綿)カード機で積層し所定目付けの繊維ウェブとする。その上で繊維ウェブをニードルパンチして繊維補強材と熱可塑性合成樹脂の繊維体の繊維同士を交絡させて繊維マットにする。乾式法(エアレイ)を用いた場合の基材24は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂の繊維体を所定繊維長にカットした上でエアレイと呼ばれる空気流でよく混ぜ合わせ(混綿)たものを積層し所定目付けの繊維ウェブとする。その上で、繊維ウェブをニードルパンチして繊維補強材と熱可塑性合成樹脂の繊維体の繊維同士を交絡させて繊維マットにする。なお、上記乾式法における熱可塑性合成樹脂は、熱可塑性合成繊維が選択される。湿式法を用いた場合の基材24は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を水中に分散し網状のネット等ですき上げてフリースを形成し、加熱機で乾燥して繊維マットとする。なお、湿式法における熱可塑性合成樹脂は、熱可塑性合成樹脂の粉末体を用いる。上述した熱可塑性合成樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維、粉末体等が適用できる。そのうえで、所定温度まで加熱された熱盤プレスの間に投入され加熱及び加圧されて圧縮成形される。このとき、表皮材26、裏材などが合わせて積層されてもよい。次いで、冷間プレスにおいて熱融着結合した基材24、表皮材26、裏材などの積層体を冷却、圧縮及び成形して所定の形状の繊維成形体の車両用天井材20とする。
表皮材26は、車両用天井材20の意匠面を担う部位である。表皮材26は、表面層、ウレタンフォームシート等が積層されている。表面層は、ファブリック,クロス,ニット等の布帛、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシートは、車両用天井材20に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、表皮材26は、ウレタンフォームシートが積層されない態様もある。なお、車両用天井材20の構成については、上記各種材料を種々適用し得る。
車両用天井材20は、車両10のルーフパネル12に対応して面形状及び外形形状が形成されている。車両用天井材20は、軽量化の要求に対応するため低目付に設定されている。すなわち、車両用天井材20は、単体及び車両用天井材20に各種車両用装備品が取り付いた仮組み状態で持上げると剛性不足に伴って自重で撓み、折れが生じてしまうが、ルーフパネル12への組付け状態では剛性を有する必要最小限の目付が設定されている。
図1、2に示すように、車両10のルーフパネル12には、車両用天井材20を介してサンバイザー、アシストグリップ等の各種の車両用装備品が装着される。これに伴い、車両用天井材20は、車両用装備品の各配設部位に対応して貫通形成された孔部(不図示)が複数形成されている。ルーフパネル12は、車両用天井材20の孔部に対応して後述する各取付孔(不図示)が形成されている。車両用装備品は、車両用天井材20の孔部に挿通され、ルーフパネル12の各取付孔に対してボルトとナット、ねじ、クリップ等の固定手段によって取付けられる。これに伴い、車両用天井材20がルーフパネル12に取り付けられる。また車両用天井材20の略中央部には、厚み方向に貫通することによりサンルーフ用の開口部22が構成されている。このサンルーフ用の開口部22の周囲は、車両用天井材20の面積が少なく断面二次モーメントの低い部位となっている。
上述のように、車両用天井材20には、図1、2に図示されるようにルーフパネル12に対向する車両用天井材20の開口部22の周囲が断面二次モーメントの低い部位となっていることから、係る開口部22に沿って補強部材50が配設される。補強部材50は、合成樹脂によって平板状且つ帯状の部材である。補強部材50は、車両用天井材20におけるサンルーフ用の開口部22の周囲に対し、長手方向の複数個所がホットメルト接着剤等により接着されて固定されている。
なお、補強部材50は、車両用天井材20の剛性不足を補うものであれば種々の断面形状を適用できる。また、車両用天井材に対する補強部材50の固定は、ホットメルト接着剤に限定されず種々の固定手段を適用でき得る。ここで、補強部材50の長手方向の長さ(車両前後方向)は、開口部22の幅方向における縁部に沿って左右一対に配設される(開口部22の周囲に沿って配設される)ことに鑑み、開口部22の一辺より長いことが望ましい。また、ルーフパネル12と車両用天井材20の間の隙間よりも薄く構成されることが必要となる。また、補強部材50の短手方向(車両幅方向)の長さは、開口部22及び車体構造物に干渉しない範囲であれば種々適用可能である。補強部材50の材質については、適宜の合成樹脂、アルミニウム合金等の軽量材料によって構成されている。なお本実施形態において補強部材50は、合成樹脂が選択されている。補強部材50の合成樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂など公知の熱可塑性部材が適用できる。また、強度の向上を図るために、上記合成樹脂に繊維補強材を混ぜてもよい。繊維補強材として、例えばガラス繊維、バサルト繊維等の無機繊維、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択できる。
開閉機構30(シート材移動機構)は、図1から図3に示すように、開口部22を覆うシート材32を備えている。また、開閉機構30は、シート材を巻取り可能とする巻取装置34を有している。開閉機構30は、係るシート材32が車両用天井材20の開口部22を覆うことで車室内への光の進入を抑制する閉鎖位置30Aと、開口部22から移動することで車室内への光の進入を許容する開放位置30Bとの間を往復移動可能とする機構である。係る開閉機構30は、ルーフパネル12と、車両用天井材20の間に配置構成されている。開閉機構30は、シート材32と、巻取装置34と、レール部材40、40(一対の案内構造)が主体的に構成される。なお、閉鎖位置30Aが本発明の「シート材を張設した状態で面方向に沿った第1の位置」に相当する。また、開放位置30Bが本発明の「シート材を張設した状態で面方向に沿った第2の位置」に相当する。
シート材32は、車両用天井材20の開口部22を覆う部材である。シート材32は、柔軟な素材により面状に形成される部材であり、ファブリック,クロス,ニット等の布帛、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々の材質を適用できる。またウレタンフォームシート等を積層する態様であってもよい。
図3から図6に示すように、シート材32の幅方向両端の近傍には、柔軟な素材により帯状に構成されると共に、後述するレール部材40の溝部44の開口幅44aより薄く構成される帯状部材33が配設される。帯状部材33は、シート材32の幅方向両端の近傍において、シート材32の移動方向に沿ってシート材32に重ね合わせて連結される。帯状部材33は、柔軟な素材により帯状に且つ溝部44の開口幅44aより薄く構成されている。帯状部材33は、ファブリック,クロス,ニット等の布帛、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々の材質を適用できる。帯状部材33の長手方向に沿った一方の端部には、線ファスナにおけるファスナエレメント62(突状要素)が複数配設されている。こうして帯状部材33は、シート材32とレール部材40、40(一対の案内構造)の間に配設される。
上述のように複数の突状要素は、線ファスナにおけるファスナエレメント62(務歯ともいう)が適用されている。線ファスナは、二つの面状部材のそれぞれの端縁に線状に連なったファスナエレメント62と言われる複数の歯が構成されており、係る互いのファスナエレメント62がスライダー(不図示)と言われる連結手段によって噛み合わされることで両方の面状部材を連結する仕組みとなっている。本実施形態では、線ファスナのファスナエレメント62は、面状部材を連結するために用いるのではなく、後述するレール部材40内を摺動させる摺動部材として適用するものである。ここで、線ファスナは、金属ファスナ、コイルファスナ、プラスチックファスナ等種々適用できる。金属ファスナは、金属製のファスナエレメントを帯状部材33に一体に固定したものである。コイルファスナは、ポリアミド系樹脂、ポリエステル等の単線をコイル状に成形したファスナエレメント62を帯状部材33に縫い付けて一体に固定したものである。プラスチックファスナは、プラスチックなどの剛性樹脂のファスナエレメントを帯状部材33に射出成形して一体に固定したものである。本実施形態では、線ファスナとしてコイルファスナ60を例示している。コイルファスナ60(線ファスナ)のファスナエレメント62は、帯状部材33の長手方向に沿った一方の端部に縫い付けられて一体に固定されており、単線が帯状部材33の厚み方向の両側に張り出す部位として厚み62aを有する。このファスナエレメント62の単線が帯状部材33の厚み方向の両側に張り出す部位は、帯状部材33の長手方向に沿って所定間隔を隔てて隣接して複数配設される。帯状部材33は、シート材32の移動方向に沿ってシート材32に重ね合わせて連結される。そのため、コイルファスナ60のファスナエレメント62は、シート材32の移動方向に沿って間隔を有して隣接して配設される構成となる。コイルファスナ60のファスナエレメント62(単線が帯状部材33の厚み方向の両側に張り出す部位)は、後述するレール部材40(案内構造)における筒状部42の内方に挿入して長手方向に摺動可能であり且つ溝部44の開口幅44aより大きい厚み62aを備えている。なお、ファスナエレメント62は、帯状部材33と一体に固定されると位置が移動しない状態となる。なおファスナエレメント62が帯状部材33に一体に固定される態様は、縫い付け、溶着、かしめ等種々の固定方法をとり得る。
レール部材40は、シート材32の外周において同一間隔を維持して並行に配設されてシート材32を張設した状態で面方向に沿って閉鎖位置30A(第1の位置)と開放位置30B(第2の位置)の間を移動可能に案内する部材である。レール部材40(案内構造)は、合成樹脂、アルミニウム合金等の軽量材料によって構成されている。なお本実施形態においてレール部材40は、合成樹脂が選択されている。ここで、レール部材40の合成樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、などの熱可塑性部材が適用できる。なお、可撓性を有することが望ましい。レール部材40は、長手方向に直交する断面で見て筒状部42と筒状部42の周方向の一部が開口されると共に長手方向に沿って連続する溝部44を備えている。また、溝部44と反対側には径方向外方に直線状に延出すると共に、レール部材の長手方向に連続して連なる平板状の連結部46を有する。連結部46は、補強部材と連結する部位である。レール部材40、40は、開口部22の幅方向における縁部に沿って左右一対に配設される。(開口部22の周囲に沿って配設される)そして、レール部材40、40の連結部46が補強部材50、50と溶着(例えば超音波溶着、熱溶着等)によって一体的に構成されている。なお、連結部46の延出方向は、上述の態様に限定されず種々の方向に延出できる。また、長手方向に連続して連なる構成に限られず、間隔を隔てて複数箇所に構成されるものでもよい。本実施形態における補強部材50、50とレール部材40、40の「一体的」な構成は、補強部材50、50とレール部材40、40がそれぞれ別体に構成され、これらを連結して一体にする態様、予め一体に成形される態様のいずれも含み得る。
巻取装置34は、開口部22の周囲の一辺に配設される。本実施形態では、巻取装置34は、開口部22の周囲の内、車両後方側の一辺に配設される態様を例示する。巻取装置34は、シート材32を引き出して展開した状態と、シート材32を巻き取って収納した状態と、に切替可能な装置である。なお、開閉機構30において、シート材32を引き出して展開した状態が閉鎖位置30A(第1の位置)であり、シート材32を巻き取って収納した状態が開放位置30B(第2の位置)となる。巻取装置34は、ロール部材35と、支持部材36と、弾性部材(不図示)と、操作部材38と、を主体的に有する。
ロール部材35は、略開口部22の一辺の長さの軸状部材として構成され、シート材32の引き出し方向の一端に固定されるとともに、軸心周りに回転することでシート材32を巻き取る部材である。支持部材36は、ロール部材35の両端において配設され、ロール部材35を軸心周りに回転可能に支持する部材である。不図示の弾性部材は、支持部材36とロール部材35の間に介装され、ロール部材35に対し巻き取る方向(開放位置30B)に弾性付勢力を及ぼす部材である。操作部材38は、シート材32の引き出し方向の他端(シート材32の引き出し方向先端に相当)に沿って固定されると共に、後述するレール部材40、40間に架け渡されることでシート材32を張った状態に維持する。
このように、実施形態に係る開閉機構30(シート材移動機構)によれば、レール部材40、40(一対の案内構造)は、合成樹脂による筒状部42とこの筒状部42の周方向の一部が開口されると共に長手方向に沿って連続する溝部44を備えている。また、レール部材40、40は、シート材32の外周において同一間隔を維持して並行に配設されてシート材32を張設した状態で面方向に沿って閉鎖位置30Aと開放位置30Bの間を移動可能に案内する。また、レール部材40、40における筒状部42の内方に挿入して長手方向に摺動可能であり且つ溝部44の開口幅44aより大きい厚み62aを備え、シート材32の移動方向に沿って間隔を有して隣接して配設される複数のファスナエレメント62を有する。これにより、複数のファスナエレメント62は、レール部材40、40に案内されるにあたりシート材32の移動方向に沿って連続的に配設される構成ではない。そのため、閉鎖位置30Aと開放位置30Bの間を移動可能に案内される際にシート材32の柔軟な性質が阻害されることが抑制される。これによりシート部材は撓みやすく、コンパクトな構成とし得る。また、レール部材40、40が金属製である場合、全体の重量が増加するという付随的な懸念も有していた。しかし、レール部材40は、合成樹脂で構成されることで軽量化にし得る。また、合成樹脂であれば、レール部材40の形状の自由度が増し得る。もって、開閉機構30(シート材移動機構)において、シート材32を張設した状態で面方向に沿って閉鎖位置30Aと開放位置30Bの間を移動する際にシート材32の柔軟な性質を阻害されるのを抑制し、撓みやすくコンパクトな構成することができる。
また、シート材32と複数のファスナエレメント62は、帯状部材33を介して配設される構成である。そのため、複数のファスナエレメント62の配設の自由度を増し得る。また帯状部材33は、シート材32とレール部材40、40の間に、柔軟な素材により帯状に且つ溝部44の開口幅44aより薄く構成される。そのため、シート材32と複数のファスナエレメント62の連結は、シート材32の厚みに影響されること無く帯状部材33を介して複数のファスナエレメント62と円滑に連結し得る。また、帯状部材33は、柔軟な素材により構成されるため、シート材32の柔軟な性質を阻害することを抑制し得る。
また、複数のファスナエレメント62は、帯状部材33の厚み方向の両側に張り出した形状に構成される。これにより、複数のファスナエレメント62は、レール部材40の筒状部42内からの離脱を抑制し得る。
複数のファスナエレメント62は、コイルファスナ60(線ファスナ)におけるファスナエレメント62によって構成されることでレール部材40、40(一対の案内構造)をコンパクトな構成とし得る。ここで、車両10(乗物)内に開閉機構30(シート材移動機構)を構成する位置によっては、スペースの制限がある場合も想定されるが、コンパクトなレール部材40、40(一対の案内構造)とすることで設計自由度が増し得る。また、コンパクトにすることでより一層、軽量化を図り得る。
また、シート材32を巻取り可能とする巻取装置34を有することで、シート材32をコンパクトに巻き取る構成となり得る。
また、開閉機構30(シート材移動機構)を車両10(乗物)の車両用天井材20(トリム部材)に組付けることで好適に構成することができる。
また、車両用天井材20(トリム部材)は、ルーフパネル12(乗物構成部材)の室内側に面して組みつけられるとともに厚み方向に貫通する開口部22を有している。またレール部材40、40は開口部22の周囲に沿って配設される補強部材50、50と一体的に構成される。これにより、車両10(乗物)において補強部材50、50による車両用天井材20の補強としての機能と、シート材32の案内構造としての機能と、二つの機能を好適に有し得る。
また、開閉機構30は、シート材32が閉鎖位置30Aと開放位置30Bの間を往復移動可能に案内されるレール部材40(案内構造)を有している。このレール部材40は、車両用天井材20における開口部22の周囲に沿って配設されている。これにより、シート材32が好適に閉鎖位置30Aと開放位置30Bの間を往復移動可能に案内される構成となり得る。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の乗物用のシート材移動機構は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、乗物用のシート材移動機構として、車両天井構造における開閉機構を例示して説明したがこれに限定されない。例えば、車両におけるトランクルームにおけるカバー、車室空間を仕切る仕切り装置等、各種に適用可能である。また、乗物は、車両に限定されず、船舶、航空機等の各種の乗物に適用し得る。
また、シート材は、帯状部材が無い構成であってもよい。例えば、シート材に直接、突状要素を構成してもよい。また、突状要素の配設位置は、シート材の移動方向に沿った方向であればよく、必ずしもシート材の端縁に限られない。
また、突状要素として、線ファスナのファスナエレメントを例示したがこれに限定されない。突状要素は、一対の案内構造における筒状部の内方に挿入して長手方向に摺動可能であり且つ溝部の開口幅より大きい厚みを備え、シート材の移動方向に沿って隣接して配設される物であればよい。そのため、シート材又は帯状部材に対し長手方向に隣接する突状の部位が配設されるものでもよい。また各突状要素は、シート材の移動方向に沿って間隔を有して隣接して配設されるものであってもよい。また、各突状要素の間隔は、一定間隔でなくてもよい。また、突状要素は、シート材の移動方向に沿って連続して隣接することで山と谷が交互に配設される態様であってもよい。
また、乗物用のシート材移動機構は、直線状のレール部材の構成を示したがこれに限定されない。例えば、レール部材は、適用する箇所に応じて湾曲して並行することでシート材が曲面状になる態様であってもよい。
開閉機構は、シート材が閉鎖位置と開放位置の間を往復移動可能に案内されるレール部材(案内構造)を有しており、補強部材と溶着(例えば超音波溶着、熱溶着等)により一体的に構成される態様について示した。なお、補強部材とレール部材の一体的な構成は、これに限られない。すなわち、本実施形態において「補強部材とレール部材の一体的な構成」は、補強部材と案内構造がそれぞれ別体に構成されこれらを連結して一体にする態様、予め一体に成形される態様のいずれも含み得る。そのため、補強部材と案内構造が別体で構成される場合、それぞれ、同一の素材であっても、別の素材でも種々適用できる。補強部材と案内構造の連結は、溶着以外に種々の連結手段が適用できる。例えば、接着剤で連結しても良いし、クリップ、締結部材などの固定手段を用いてもよい。また、補強部材と案内構造が予め一体に成形される態様は、同一の素材(合成樹脂、アルミニウム合金等)によって押出成形することによって一体に構成される態様であってもよい。また、補強部材とレール部材を一体的に構成する際に、開口部の周囲に面する部材はいずれであってもよい。
また、レール部材は、合成樹脂、アルミニウム合金等の軽量材料などを適用可能であるが、車両全体の重量が増加するということに鑑み合成樹脂で構成されることで、より一層開閉機構を軽量化にし得る。また、合成樹脂によるレール部材であれば、より一層形状の自由度が増し得る。
また、レール部材が車両用天井材の補強部材としての剛性も担う構成であれば、レール部材を単体で開口部の周囲に沿って配設されることで補強部材を別途設けることが不要となり更なる軽量化を図ることができる。
また、開閉機構は、車室内側に開閉機構が露出しない形態として、ルーフパネルと車両用天井材の間に配設される構成について示した。しかしながらこれに限定されず、開閉機構は、車両用天井材の車室内側に配設される構成であってもよい。係る態様において補強部材は、ルーフパネルと車両用天井材の間に配設される構成であってもよいし、車室内側に配設される構成であってもよい。上述のように、レール部材が補強部材としての機能を担う場合は、補強部材がない構成であってもよい。
また、開閉機構は、巻取装置を構成する態様について示したがこれに限定されない。開閉機構は、巻取装置が構成されない態様であってもよい。また、巻取装置を構成する態様の場合、本実施形態における手動の構成に限定されない。電力、油圧などの駆動源によってシート材を自動に巻き取る自動巻取り機構を備える巻取装置であってもよい。