図1に本発明にかかるX線管装置101の一実施形態のブロック構成図を示す。X線管装置101は、筐体9の内部に、X線管1と、X線管1の陽極を回転駆動する磁界を発生するために、X線管1の周囲に配置されたコイル11とを備えている。筐体9には、X線管1から放射されたX線を透過させるための放射窓12が備えられている。筐体9とX線管1との間の空間には、電気絶縁性を保つための液体が満たされている。
X線管1は、陰極2と、陰極2と対向して配置された陽極3と、陰極2と陽極3を真空気密に収容する外囲器4と、陽極を回転自在に案内する軸受機構とを備えている。外囲器4内の空間は10−5Pa前後の真空に維持されている。
陰極2は、陽極3に向けて電子線を発生する部分であり、熱電子を放出するフィラメント(不図示)と、熱電子を電子線に収束する集束電極2aと、集束電極2aを支持する支持体2bとを含む。フィラメントは、集束電極2a内に収容されている。
陽極3は、陰極2からの電子線が衝突してX線を発生する円盤状のターゲット5と、ターゲット5に固定された円筒状のロータ6と、ロータ6の内部に配置され、ロータ6に固定された回転軸7とを備えている。そして、回転軸7とロータ6との空間に配置された円筒状の固定部10に対して、陽極3は軸受機構により回転自在に支持されている。陽極3のターゲット5は、陰極2からの電子線が照射された点からX線を放射する。
ターゲット5は、円盤の上面が傾斜しており、この傾斜した部分は、タングステンやタングステン合金などの高融点金属で構成されている。ターゲット5の傾斜した部分に陰極2からの電子線が照射されることにより、X線が放射される。
ロータ6は、非磁性の金属(例えば、Cu)により構成されている。固定部10は、非磁性金属(例えば、CuやMo)で構成された本体の外周表面を、磁性体部材(Fe等)で覆った構成である。コイル11から陽極3の回転軸7に向かう磁界が発生すると、ロータ6には誘導電流が流れ、ロータ6が回転する。ロータ6の回転に伴い、ターゲット5が回転するため、陰極2からの電子線のターゲット5上の照射位置を移動させることができる。また、回転軸7は、高速度鋼により形成されている。
図2には、図1のX線管装置101の軸受機構の断面図を示す。軸受機構は、外囲器4に固定された固定部10に対し、陽極3の回転軸7を回転自在に案内する。軸受機構は、回転軸7の両端に配置された軸受部8、8により構成される。これらの軸受部8,8は、回転軸の軸方向に間隔をあけて配置され、その間に間座15、16が配置されている。軸受機構は、アンギュラタイプの軸受部8、8を背面組み合わせで配置されている。軸受部8、8の外輪81と固定される固定部10の端部は、外囲器4に接続され、陽極電位が給電される。軸受部8は、陽極3に接続された回転部材としての回転軸7と、固定部材としての外輪81と、転動体としての複数の転動球82とを含んで構成される総玉軸受部であり、いずれも高速度鋼(例えばSKH40)から成る。間座15、16は、例えばステンレス鋼等により形成されている。軸方向の長さが短い間座16の端面を加工することで、軸受部8、8の間隔が調整可能となる。
軸受機構として、背面組み合わせのアンギュラタイプの軸受部を採用したが、これに限定されるものではなく、例えばアンギュラタイプの正面組み合わせとしたり、二つの深溝玉軸受で構成したり、また深溝玉軸受とスラスト軸受の組み合わせとしたりすることも可能である。
回転軸7の外周には、その外周面を直接加工することにより、回転部材側軌道面8cが設けられている。外輪81の内周側は固定部材側軌道面8aが設けられている。軌道面8a、8cの間には転動球82が配置されている。なお、回転部材側軌道面8cを回転軸7の外周に直接加工するようにしたが、通常の軸受の構成のように、内輪を別途設け、この内輪に回転部材側軌道面8cを設けることも可能である。また軸受部8は、ここでは総玉軸受部としたが、リテーナを用いる構成であっても問題ない。
図3に図2のA部の部分拡大図を示す。固定部材側軌道面8aおよび回転部材側軌道面8cの、転動球82が転動する領域には、固体潤滑剤20aの層が配置されている。また、転動球82の表面全体も固体潤滑材膜20でおおわれている。固定部材側軌道面8aおよび回転部材側軌道面8cの少なくとも一方(図3では、両方)には、固体潤滑剤20aが配置された領域に凹部(ここでは溝)21が設けられている。溝21の少なくとも一部には、固体潤滑剤20aが充填されている。このように、溝21を設けることにより、余剰な固体潤滑剤20aを溝21に蓄積することができるため、余剰な固体潤滑剤20aが、転動球82に押し出されて塊となって、転動球82の外周に再付着したり、軸受機構から脱落して外囲器内を浮遊したりするのを防ぐことができる。
高温高真空化で動作する軸受機構では、固体潤滑剤20aおよび固体潤滑膜20の材質として鉛(Pb、融点327.5℃)や銀(Ag、融点961.93℃)、錫、これらの合金、二硫化モリブデン等を用いることができる。
図3から図10を用いて、軌道面に設けた凹部のパターンについて複数種類説明する。なお凹部パターンの説明をわかりやすくするため、図3から図10では固体潤滑膜20や溝21のサイズを、軸受機構を構成する他の部材に比して大きく描いている。
転動球82には、鉛(Pb)や銀(Ag)、またこれらを含んだ合金等による固体潤滑剤で形成された固体潤滑膜20が、イオンプレーティング等の成膜方法により成膜されている。固体潤滑膜20の固体潤滑剤は、外輪81の固定部材側軌道面8a、および回転軸7の回転部材側軌道面8cに転着することで層厚0.1μm以下の層として配置される(20a)。
なおX線管装置101は、これを備えるX線撮影装置の動作によりその姿勢が変化し、回転案内を行う軸受機構に対する荷重のかかり方が変化する。また陽極3のターゲット5の温度上昇に従い、固定部材と回転部材の位置関係が変化する。これらの変化により、転動球82と固定部材、または転動球82と回転部材との位置関係も変化するため、「固体部材側転動面8aおよび回転部材側転動面8cの、転動体が転動する領域」よりも転動体から転着された「固体潤滑剤が配置された領域」を、広く設ける。
図3に、図2のA部の部分拡大図を示す。図3の凹部のパターンは、転動球82が転動する領域内に、軌道面に沿った複数の溝21が周全体に形成され、それらの溝21が、その軸受機構の軸方向に連接して形成されている。そしてこれらの溝21は、転動球82の転動軌跡に沿って設けられている。固体潤滑剤を蓄積するために、溝21の深さは0.5〜1μmである。ここで「転動軌跡に沿って」とは、溝21の長手方向が、転動軌跡と必ずしも平行でなくてもよい。またこれらの軌道面は、転動体が転動可能なように面粗さが一様に加工された面全体を指し、溝21が形成されていない軌道面の表面粗さ(Ra)は0.01〜0.09μmである。この軌道面は、実際に転動体が転動する領域よりも、その軸受機構の軸方向に広い領域となる。
このように溝21を設けることにより、転動球82の周囲の固体潤滑剤膜20や軌道面8a、8cの固体潤滑剤20aが余剰である場合には、溝21に蓄積することができる。また、転動球82の周囲の固体潤滑剤膜20が過少になった場合には、溝21内の固体潤滑剤を転動球82の周囲に再付着させる作用も期待できる。
図4に図2のA部の部分拡大図を示す。図3とは凹部のパターンが異なる。また図5には、外輪81を半径方向内側から見たときの、図4の凹部の正面図を示す。図3の凹部のパターンと同じく、転動球82が転動する領域内に、軌道面に沿った複数の溝21が形成されている。図3の凹部のパターンとの相違点は、これらの溝21がその軸受機構の軸方向に、一定の間隔を持って形成されている点である。固体潤滑剤を蓄積するために、溝21の深さは0.5〜1μmで、幅は0.5〜1μmであり、溝21の数は、固体潤滑膜20の層厚によって変更されるが、例えば1mmあたり2本とする。ただし溝21の幅や、間隔はこれに限定されるものではなく、固体潤滑剤の種類や、使用される温度等により選択される。
図6に図2のA部の部分拡大図を示す。また図7には、図5と同様外輪81を半径方向内側から見たときの、図6の凹部の正面図を示す。図3、図4の凹部との違いは、固体潤滑剤20aが配置された領域の端部に凹部(溝21)を設けた点である。すなわち、転動球82が転動する領域内の、軸方向端部に溝21が配置されている点である。溝21の深さや幅は図3の凹部等と同じである。
図6の凹部の場合、余剰の固体潤滑剤が溝21に蓄積されると共に、軌道面が転動体82から応力を受ける軸方向中央領域には凹部がなく、その領域では応力が均一に作用するので、その応力が均一に作用する箇所から固体潤滑層20が剥離する可能性が少なくなる。
図8のパターンは、図3の凹部と図6の凹部の両方を併せ持つものである。溝21の深さや幅は図3の凹部等と同じである。
図9には、他のパターンの凹部の正面図を示す。図9の凹部(溝21)は、溝21の長さが転動球82の半径と同程度の長さであり、複数の溝21が、転動体の転動軌跡に沿うように配置されている。複数の溝21の長手方向は転動体の転動軌跡(回転軸7の中心軸)に対して所定の角度で傾斜している。軌道面上に設けられた溝21は、転動球82が転動する領域から、転動しない領域に亘って設けられ、複数の溝21は一定の間隔で設けられる。また、溝21は、転動球82が図9の矢印の方向へ転動すると、固体潤滑剤を溝21に沿って転動体が転動しない領域に移動させることが可能となる。溝21の深さや幅は図3の凹部等と同様である。
図10では、さらに別のパターンの凹部の正面図を示す。図10の凹部は、軌道面上に螺旋状に形成された溝21からなる。すなわち溝21は、回転軸7の中心軸に対して所定角度(図10では一例として80数度)傾いている。このため、回転軸7の回転に伴い、転動球82が軌道面8a、8cに対して回転することにより、溝21が転動球82に接触する位置が、軸方向へ移動する軌跡を描く。これにより、転動球82の周囲の固体潤滑剤膜20が過剰である場合には、転動球82の外周面全体から溝21に効率よく蓄積することができる。また、転動球82の周囲の固体潤滑剤20が過少になった場合には、溝21に蓄積された固体潤滑剤20を転動球82の外周面全体に再付着させる作用も期待できる。溝21は、一定の間隔を持って複数配置される。溝21の深さや幅は図3の凹部等と同様である。
これをさらに説明すると、溝21が図5で示すように、回転部材の回転軸に対し垂直である場合は、転動球82の表面上の溝21の軌跡は、回転軸上ではいつも同じになるため、転動球82の表面には溝21に対向した筋状の形状が現れる場合がある。図9および図10で示すように、溝21が回転部材の回転軸に対し、90°以外の所定の角度を持っていることで、転動球82の表面の異なる位置に、溝21の軌跡が描かれることとなり、転動球82の固体潤滑剤膜20に余剰がある場合には、転動球82の外周面から偏りなく溝21に蓄積できる。また、転動球82の自転軸が回転部材の回転軸に対して傾くので、この点でも転動球82の固体潤滑剤が偏りなく溝21に蓄積できる。
上記のように軌道面に設けた溝21を説明したが、凹部の形状は溝に限られるものではなく、例えば軌道面に数μmの深さの穴を設けることも考えられる。また、図9の凹部で、溝21を一定の間隔で、軸受機構の軸方向に2セット設けたが、1セットである場合も考えられる。
上述してきた実施形態では、固定部材側軌道面8aおよび回転部材側軌道面8cのいずれにも凹部を設けた場合について説明したが、いずれか一方の軌道面に凹部を設けることもできる。この場合、軸受機構の回転軸の半径方向の外側に向いた面、即ち本実施形態では、回転部材側軌道面8cにのみ凹部を設けることも可能である。
回転軸7の半径方向の外側に向いた面(回転部材側軌道面8c)にのみ凹部(溝21)を設けることで、凹部の加工をより容易に行うことができる。
また、本実施形態にかかるX線管装置は、回転部材の軸方向の異なる位置に2組の軸受部8、8が配置されているが、この2組の軸受部のうち、陽極3に近い側の軸受部8の転動球82の固体潤滑膜20を、遠い側の軸受部8の固体潤滑膜20よりも厚くしてもよい。その理由は、陽極3と接続された回転軸7を保持する軸受部8、8のうち、ターゲット5の熱が伝導されやすい位置にある軸受の固体潤滑膜20の層厚を厚くするためである。ターゲット5の熱が伝導されやすい側の固体潤滑膜20は、固体潤滑剤の摩耗が多く、また、潤滑剤が蒸発しやすいため、層厚を厚くすることで、固体潤滑剤を長期間維持でき、X線管装置101からの回転騒音発生を防ぐことができる。
本実施形態にかかるX線管装置101の製造方法について説明する。X線管装置の各部品は、公知の方法によって製造することができる。X線管装置101の組立前に軸受機構の軌道面8a、8cの少なくとも一方に上述してきた凹部(溝21等)を形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術により、軌道面8a,8cの溝21を形成すべき領域のみ露出させるマスクを形成し、軌道面8a,8cをウエットまたはドライエッチングすることにより、上述してきた種々の形状の溝21を形成することができる。また、レーザー加工技術を用いて溝21を形成することができる。X線管装置101の組立前に転動球82の外周に固体潤滑膜20をイオンプレーティングやスパッタリング等の成膜方法により成膜する。この転動球82を用いてX線管装置101を組み立てる。その後X線管装置101の試運転を行うと、転動球82の固体潤滑膜20を構成する固体潤滑剤の一部が、固定部材側軌道面8aや回転部材側軌道面8cの、転動球82が転動する領域に転着し、配置される。
X線管装置101の試運転は、このX線管装置101を備えたX線撮影装置の動作に準じて行われる。即ち通常の使用方法にX線管装置の使用姿勢を合わせたり、軸受機構における温度上昇を考慮したりして試運転は行われる。
製造されたX線管装置101は、後述するX線撮影装置に組み込まれる。X線管装置101のコイル11により発生した磁界で陽極3が回転し、陰極2から陽極3に電子線が照射され、X線が発生する。この際軸受機構は、固体潤滑剤の作用により滑らかに陽極3を回転させる。
固定部材側軌道面8aおよび回転部材側軌道面8cの少なくとも一方の、固体潤滑剤が配置された領域に凹部が設けられ、この凹部(溝21)の少なくとも一部には、固体潤滑剤が充填されている。この凹部を設けることで、転動体の転動する領域から押し出された余剰な固体潤滑剤が、この凹部に充填される。これにより余剰な固体潤滑剤が、塊となって転動球82に再度付着して、固体潤滑剤20の層厚の一様性を損ない、高周波振動を生じさせて回転騒音を増大させることを防止できる。また、X線管装置101の稼働中に余剰な固体潤滑剤が脱落して、放電現象に悪影響を与えるのを防止できる。さらに固体潤滑剤の粘度によっては、凹部(溝21)から転動体(転動球82)に固体潤滑剤が徐々に供給され、軸受機構の寿命を延ばすことができる。
なお、固体潤滑膜20を転動球82に成膜した場合について説明したが、転動球82だけでなく、軌道面8a、8cに直接固体潤滑剤を成膜することも可能である。
図11を用いて、上述してきたX線管装置101を用いたX線CT装置130の一例について説明する。図11は、X線CT装置130の全体構成のブロック図である。X線CT装置130は、スキャンガントリ部100と、操作卓120とを備える。
スキャンガントリ部100は、X線管装置101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。
X線管装置101は、固体潤滑の軸受機構を備えた回転陽極型の装置であり、寝台105上に載置された被検体にX線を照射する。回転円盤102は、寝台105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤102の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。
データ収集装置107はX線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台105の上下前後左右動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管装置101に入力される電力を制御する装置である。
操作卓120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から創出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRTや液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータおよび画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはハードディクスドライブなどである。システム制御装置124は、これらの装置およびガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管装置101に入力される電力を制御することにより、X線管装置101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
X線管装置101からのX線照射と、X線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。X線管装置101は回転円盤102が回転することで、様々な姿勢に変化し、撮影も長時間行われるが、軸受機構の軌道面に凹部(溝21)を設けることで、転動体の転動する領域から押し出された余剰な固体潤滑剤がこの凹部(溝21)に充填され、転動球82に再度付着して、固体潤滑剤20の層厚の一様性を損なう現象を防止でき、軸受機構からの回転騒音の発生を抑えることができる。これにより本実施形態にかかるX線CT装置130の使用時に、被検体に不安を与えることを防止できる。
図12を用いて、上述のX線管装置101を用いたX線撮影装置230を説明する。図12のように、本発明の第二の実施形態にかかるX線撮影装置230は、被検体にX線を照射するX線発生部201と、被検体を透過したX線の照射を受けるカセッテを保持するためのカセッテトレイ216と、カセッテトレイ216が挿入される開口を備えた支持枠205と、支持枠205とX線発生部201との間に被検体を配置する寝台208と、X線発生部201からのX線が照射される領域を設定する機構部を備えるX線絞り装置202と、X線絞り装置202の動作等を制御する制御部214とを有する。ここでX線発生部201の内部には、回転陽極型のX線管装置101が内蔵されている。
また、X線撮影装置230は、上記構成に加えて、X線発生部201を支持する支柱203と、支柱203と支持枠205とが搭載された連結部206と、連結部206を支持するスタンド部200を備えている。連結部206には、支柱203を寝台208の短手方向(y方向)に移動させる支柱移動機構部204が備えられている。支持枠205内には、寝台208を長手方向(x方向)に移動させる移動機構が内蔵されている。スタンド部200には、連結部206を床面に対し鉛直となる方向(z方向)に移動させるとともに、y軸を中心に回転させる連結部移動機構207が備えられている。これにより、寝台208およびX線発生部201をz方向に移動させるとともに、寝台208およびX線発生部201を、y方向を軸として回転移動させることができ、寝台208上の被検体の姿勢を立位、臥位、逆傾斜等にすることができる。
X線撮影装置230は、X線発生部201に電力供給を行う高電圧発生部209と、支持枠205内のX線発生部201に対向する位置に配置され、被検体を透過したX線を検出するX線検出器210と、X線画像処理部211と、表示装置212と、外部記憶部213と、操作部215とを備えている。
X線画像処理部211は、X線検出器210から出力されたX線信号、もしくは、カセッテ2がIPやFPDである場合にはカセッテ2から読みだしたX線信号に対して、画像処理(ガンマ変換、諧調変換処理、画像の拡大・縮小等)の画像処理を行ってX線画像を生成する。外部記憶部213は、X線画像処理部211から出力されたX線画像を記憶する。表示装置212は、X線画像処理部211から出力されたX線画像、または外部記憶部213に記憶されたX線画像を表示する。制御部214は、X線絞り装置202の動作のみならず、X線撮影装置の構成要素の種々の動作を制御する。操作部215は、操作者からの指令を受け付ける。
寝台208およびX線発生部201が連結部移動機構207により動作されることで、X線管装置101は様々な姿勢に変化する。X線管装置101の軸受機構の軌道面に凹部を設けることで、軸受機構からの回転騒音の発生を抑えることができ、本実施形態にかかるX線撮影装置230の使用時に、被検体に不安を与えることを防止できる。