JP2016003515A - 建造物の断熱方法 - Google Patents

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伸彦 若野
健三 稲富
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健三 稲富
修一 相原
Shuichi Aihara
修一 相原
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【課題】 建物を断熱することは、その冷暖房費が直接軽減できるため、経済的に大きな問題である。断熱方法としては、建屋の外側又は内側に断熱材を貼ることが一般的である。しかし、この表面に保温材を貼付する方式はどうしても手間と費用がかかる。そこで、比較的簡単に施工でき、安価で、断熱効率のよい断熱方法を提供する。
【解決手段】 建造物の内表面に、ビヒクルと金属粉末と溶剤を混合したものであって、該金属粉末の混合量は、該ビヒクル100容積部に対して金属粉末が10〜65容積部であり、該金属粉末は、アルミニウム粉末、銀粉末、クロム粉末、ニッケル粉末の中から選ばれる1又は複数のものである塗料を塗布する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建造物の断熱方法に関するものである。
建物を断熱することは、その冷暖房費が直接軽減できるため、経済的に大きな問題である。断熱方法としては、建屋の外側又は内側に断熱材を貼ることが一般的である。例えば、岩綿や発泡ポリスチレン等の断熱部材を貼ったり充填したりする等である。これは、室内側の表面の温度を下げる方法である。
即ち、熱を放射する物体(上記例では建屋の壁)の表面温度を下げて、放熱量を下げるものである。なぜならば、放熱量は、周囲との温度差が大きくなれば大きくなる(表面と環境それぞれの絶対温度の4乗の差に比例)ためである。しかし、この表面に保温材を貼付する方式はどうしても手間と費用がかかる。
そこで、比較的簡単に施工でき、安価で、断熱効率のよい断熱方法を提供する。
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明建造物の断熱方法を完成したものであり、その特徴とするところは、建造物の内表面に、ビヒクルと金属粉末と溶剤を混合したものであって、該金属粉末の混合量は、該ビヒクル100容積部に対して金属粉末が10〜65容積部であり、該金属粉末は、アルミニウム粉末、銀粉末、クロム粉末、ニッケル粉末の中から選ばれる1又は複数のものである塗料を塗布する点にある。
ここでいう建造物とは、一般にいう恒久的な建物だけでなく、テントハウス、プラスチック製倉庫、プレハブ小屋その他どのようなものでも、内部の温度を上げたくない、又は下げたくないようなものであればよい。
建造物の内表面とは、温度を下げようとする部屋の表面である。例えば、一般の家では、外壁や中間部分ではなく、室内に直接熱を放射する壁面その他の部分である。壁、天井、床その他温度を下げようとする空間に接する表面である。また、屋根の裏面等前記部屋に接しておらず屋根裏空間に接している面でもよい。即ち、中間に空間(隙間や他の部屋その他)がある場合には、その空間に接している面でもよいという意味である。
本発明で用いる塗料は、ビヒクルと金属粉末と溶剤を混合したものであって、当該金属粉末の混合量は、当該ビヒクル100容積部に対して金属粉末が10〜65容積部であり、該金属粉末は、アルミニウム粉末、銀粉末、クロム粉末、ニッケル粉末の中から選ばれるものである。
ここでビヒクルは、特に限定するものではないが、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フタル酸エステル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が使用できる。なかでもアクリル系が好適である。また、高温にも耐えるアルコキシシロキサンのようなものも使用可能である。
溶剤は、塗料の粘度調整のため加えるもので、硬化後には原則として残らないものである。溶剤は自由にきめればよい。
ここでいう金属粉末とは、アルミニウム粉末、銀粉末、クロム粉末、ニッケル粉末の中から選ばれる1又は複数のものである。これらに限定している理由は、シュテファン・ボルツマンの放射熱の公式のε(放射率)が非常に小さいもので、かつビヒクルに混合した場合でも、その効果を十分有しているものである。これは発明者が種々の実験で見出したものである。
ビヒクルと金属粉末の混合比率は、前者100容積部に対して、金属粉末が10〜65容積部(粉末のみの換算で)、好ましくは30〜50容積部である。容積で規定しているのは、表面の性質を問題としているため、重量ではなく、その体積で決まるためである。
ここで金属粉末を10以上にしているのは、10以下では後述する放射率が大きく(0.4以上)なり効果が少なく、65以上では放射率がほとんど変わらなくなり、粉が多くなり作業性(混合性、塗布性等)が悪くなるためである。
金属粉末は、そのサイズとしては、0.5〜50μm程度のものである。粒度がある程度分散するため、中心サイズ(平均サイズ)がこの範囲ならよい。
この金属粉末が、ビヒクル100容積部に対して10容積部以上(好ましくは30以上)というように非常に多いことがこの塗料の特徴である。物体を保温する場合、通常は表面温度を下げようとするため、塗料で保温する場合、断熱塗料を塗布することとなる。断熱塗料は、熱の伝導が小さいことが前提であるため、塗料に金属を入れることはない。よって、保温のために塗布される塗料で、金属粉末入りのものはないのである。
現在、市販されている金属粉末入りの塗料は、当然断熱目的ではなく、他の目的のものである。例えば、表面保護、美観その他である。このようなものには、この塗料のように多量に金属粉末を入れるものはない。
発明者の調査では、ビヒクル100容積部に対して5容積部以下のものしかなかった。
目的がまったく異なるため当然である。
さらに、本発明塗料には、沈降防止剤を加えてもよい。これは、金属粉末が沈降して下方に偏ることを防止するためである。これを加えないと、混合容器の底部に金属粉末が偏ることが多い。
沈降防止剤としては、どのようなものでもよい市販のものでよい。
塗布厚みは、5〜100μmが好適である。従来の断熱塗料のように、厚く塗布する必要はなく、費用がかかるだけでなく、100μm以上塗布するとかえって逆効果になる。5μm以下では効果が小さい。好ましくは7〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
塗布する方法は、自由であり、刷毛やローラー等で通常の方法で塗布すればよい。スプレー方式でも可能である。
この塗料は、金属粉末が多量に含まれているため、熱伝導が大きく、これを塗布しても被塗布物の表面温度は下がらない。理由は明らかではないが、発明者の実験では、表面温度が上がったケースもあった。
次にこの塗料が放射熱を軽減する理由について説明する。
通常は、室内温度を下げるには、室内の表面温度を下げ(断熱し)、室内への放熱量を下げる。これは、放熱量は、シュテファン・ボルツマンの式から、物体の表面の絶対温度の4乗と、大気の(ここでは室内温度)絶対温度それぞれの4乗との差に比例するためである。
E=k(T14−T24
T1 は、物体の表面温度、T2 は大気温(ここでは室内温度)
kは、種々の係数。
例えば、大気温が27℃(300K)の場合、完全黒体の表面温度が127℃(400K)と、107℃(380K)とでは次のような差がある。
E1=σε×(4004−3004)=k×1.75×1010
E2=σε×(3804−3004)=k×1.28×1010
E1:表面温度が127℃の放熱量(W/m2
E2:表面温度が107℃の放熱量(W/m2
σ:定数(5.6697×10-8)
ε:放射率(表面の色や性質で決まる定数)
上記の例では、1.28/1.75=0.73
よって、σとεが同じであれば、表面温度が20℃下がれば、E1に比べ放熱量はE2の73%になる。
このように表面温度に依存するため、表面温度を下げようとするのである。
放射率(ε)とは、ある物体から外部に放出されるエネルギーと完全黒体でのそれとの割合である。ここでいう完全黒体は放射率1.0と規定されていて赤外線を受けたとき、まったく反射せず、すべてを吸収するものをいう。このようなものは、赤外線を放出するときにも完全に放出するので、その比をとるのである。これは、熱を放射する物体の表面の色や性質で決まる数値であり、1以下の定数である。即ち、このεを小さくできれば、放射熱量はそれに比例して下がるのである。
例えば、通常の塗料や油は0.98程度である。
本発明では、この放射率を下げることによって、放射熱量を小さくするものであって、表面温度を下げるものではない(下がっても構わない)。
従来、このように断熱せず(断熱を考慮せず)に放射熱量を下げるという考え方はまったくなかったため、この塗料のような塗料は存在しなかった。
次にこの塗料に使用する金属粉のεの値について説明する。
例えば、アルミニウム粉末では0.16、磨いた面のアルミ板では0.06であった。しかし、ビヒクルに混合し、その表面のεは、ほぼ0.4〜0.6程度である。
また、一般の断熱塗料では、前記したとおり、0.95以上である。また、その色がグレー系であっても、0.8〜0.9である。
εは、色や表面状態で決まるため、塗布した塗料表面が汚れると値が変化する。前記した通り、油は0.98であるため、油で汚れると、どんどん1に近づくことになる。即ち、放射熱量がどんどん大きくなる。
具体的な軽減例としては、大気温が27℃(300K)の場合において、ある物体の表面温度が150℃(423K)の時の放射率1で算出した放熱量をE3とし、市販の非接触型放射温度計(放射率0.95設定)で計測した放射温度106℃(379K)で算出した放熱量をE4とすると、E4/E3≒0.5となる。
E3=1.0×σ×(423−300)=1356(W/m
E4=0.95×σ×(379−300)=675(W/m
このような油等の汚れは、通常の塗料に付着すると、非常に取れにくく、グラインダーのようなもので研磨しなければならないほどである。しかし、本発明では内表面に塗布しているためこの汚れの問題はほとんどない。また、ビヒクルとしてアルコキシシロキサンを使用したものでは、表面がガラスのようになり、通常の塗料と異なり、汚れが非常に簡単に落ちる。例えば、乾いたダスターでふき取るだけでほとんど除去できる。
本発明では、建造物の内表面に塗布しているが、その他の部分にも同様の塗料を塗布してもいいことは言うまでもない。また、内表面を全面する必要はない。
本発明建造物の断熱方法には次のような利点がある。
(1) 内部に塗布するだけで簡単に断熱ができる。
(2) 室内に冷房装置を用いる場合、おおきな電力軽減になる。
本発明の実験に用いる例の断面図である。
以下実施例に従って本発明をより詳細に説明する。
まず、実施例用の塗料として塗料1を調製した。成分は次の通りである。
1 ビヒクル:ポリシロキサンを主成分とするもの
2 金属粉:アルミニウム粉(粒度として中心サイズが約15μm(径)でほぼ正規分布しているものであり、ターペンやキシレンと混合されて扱いやすくなったものを使用した。ターペン等は揮発性であり、塗布後揮発して消滅するものである。)
3 その他:溶剤(キシレン)
ビヒクル100容積部(実質)に、アルミニウム粉末を14.9容積部、溶剤を20容積部混合した。これを攪拌して塗料1とした。
図1に示すような一辺40cmの木製合板2で作成した試作加熱箱1を用いて実験した。天板3は、鋼板製である。側面及び底面においては、内面側にアルミラミネートシートを被覆した。加熱ランプ4によって天板部から熱を照射し、各項目を測定した。
加熱ランプ4は、270Wの仕様のものを2個使用し、ランプ照射距離は7cmとした。これは、真夏日(気温30℃)の日射量を想定したものである。
各試験体は、天板の鋼板の裏面(箱の内側)に塗布又は貼付した。ただし、遮熱断熱塗料Aは鋼板の表面(箱の外側)に塗布した。
これを23℃の恒温恒湿室内で、上方の電球を点灯し、ランプ点灯開始から1時間で定常状態となった。
放射熱量の評価については、定常状態を確認した上で、天板及び底面を除く側面全域を対象とした。その時の条件として、加熱箱の側面放射率は、実測値からε=0.06と規定した。また、側面の総面積は0.64m2(0.4×0.4×4)とした。温度及びWBGT(湿球黒球温度指数)の評価については、定常状態を確認した上で、ランプ照射開始から3時間〜4時間の1時間の平均値を記載した。温度測定には、MC3000(株式会社CHINO製)を使用し、WBGTの測定には、FUSO−87595SD(株式会社FUSO製)を用いた。
そして、比較例1(ブランク)としては、上記の供試体をまったく使用しないもの、比較例2としては、中空バルーンを混合した遮熱断熱塗料(CLと表現、これは表面側に塗布した)、比較例3は発泡ウレタンを吹き付けたものを使用した。
CLは、塗布厚み1mmで、発泡ウレタンは10mm厚みで吹き付けた。
測定結果を表1に示す。天板表面平均温度は、天板の外側の表面温度である。WBGTと平均空間温度は、試作加熱箱1の中心で下方から20cmの位置Aである。
実施例1では、天板表面温度は未被覆よりも上がっている。しかし、実際に内部を空調する場合には、その空間温度が重要であり、人間が作業する場合にはWBGTが重要になる。特に、空調の電気費用が大きな経費になるため、これを低減するのが第一の目的である。
Figure 2016003515
表1から、未被覆で39℃が、比較例2や比較例3の従来の断熱工法で、31.7〜32.0℃であるが、実施例1では30.6℃である。この差が大きく電気代に相当影響するものである。
さらに、発泡ウレタン施工やCL塗布は、厚みが大きく費用も大きく、本発明では安価で簡単である。ローラー等で塗布するだけである。
1 試作加熱箱
2 木製合板
3 天板
4 加熱ランプ

Claims (1)

  1. 建造物の内表面に、ビヒクルと金属粉末と溶剤を混合したものであって、該金属粉末の混合量は、該ビヒクル100容積部に対して金属粉末が10〜65容積部であり、該金属粉末は、アルミニウム粉末、銀粉末、クロム粉末、ニッケル粉末の中から選ばれる1又は複数のものである塗料を、塗布することを特徴とする建造物の断熱方法。

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