JP2016000390A - 環境放射線応答型触媒及び同触媒を含有する塗料並びに皮膜構造 - Google Patents

環境放射線応答型触媒及び同触媒を含有する塗料並びに皮膜構造 Download PDF

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Abstract

【課題】放射性励起用物質を含まず、暗所においても触媒作用を発揮することのできる環境放射線応答型触媒を提供する。
【解決手段】環境放射線応答型触媒は、環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有するし、前記酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、前記皮膜に環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、環境放射線応答型触媒及び同触媒を含有する塗料並びに皮膜構造に関する。
従来、紫外光や可視光を受けて励起する酸化金属触媒体は、所謂光触媒として知られている。
酸化金属触媒体を含有させた塗料は、例えば建屋の壁面など付着対象物に付着して皮膜を形成させておくことにより、皮膜に紫外光や可視光が照射されると、有機物の分解を行ったり、抗菌作用を生起する。
したがって、皮膜面を比較的長きに亘り衛生的な状態に保つことができる。
ところが、紫外光や可視光が少ないところでは、酸化金属触媒体による効果が十分発揮されない場合がある。
そこで、酸化金属触媒体が放射線によって励起する現象に着目し、酸化金属触媒体を含有させた塗料に放射性鉱物の粉末を添加して、酸化金属触媒体の効果が十分に発揮できるほど可視光や紫外光などの光が強くない条件下(以下、微光下ともいう。)や、光が全くない条件下(以下、遮光下ともいう。)であっても、酸化金属触媒体に光が照射されたときと同様の効果が生起されるようにした触媒塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、以下の説明において、微光下や遮光下を総称して暗所ともいう。
特開2004−256590号公報
しかしながら、上記従来の放射性鉱物の粉末を添加した触媒塗料は、塗料自体や塗料を付着して形成した皮膜面が放射能を有することとなるため、人の身の回りにて使用するのが憚られるという問題があった。
また、触媒塗料の製造においても、粉末状の放射性物質を取り扱うこととなるため、飛散するおそれが高く危険であり、極めて慎重な取り扱いが要求されることとなっていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、触媒を励起させるために添加される物質(以下、励起用物質ともいう。)のうち放射能を有するもの(以下、放射性励起用物質ともいう。)を含まず、暗所においても触媒作用を発揮することのできる触媒を提供する。また、本発明では、前記触媒を含有し、対象物に付着させることにより暗所においても触媒作用を発揮する皮膜を形成することのできる触媒塗料や、同触媒塗料により形成される皮膜構造についても提供する。
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る本発明では、可視光や紫外光に依存することなく環境放射線(人工的に作られた放射性物質による放射線ではなく、宇宙線や大地や建築構造物から放出され、大気中に日常的に存在する放射線で、自然放射線とも言う。)によって触媒効果を生起可能な放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒であって、同環境放射線応答型触媒は、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有し、同酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成した。
また、請求項2に係る本発明では、前記酸化金属触媒体の前記バンドギャップ形成物質担持部位は、同バンドギャップ形成物質の一部を前記酸化金属触媒体の結晶構造中に固溶させていることに特徴を有する。
また、請求項3に係る本発明では、前記バンドギャップ形成物質は、遷移元素であることに特徴を有する。
また、請求項4に係る本発明では、前記バンドギャップ形成物質は、鉄及び/又は銅であることに特徴を有する。
また、請求項5に係る本発明では、媒液中にバインダーと請求項1〜4いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒とを溶解又は分散してなる環境放射線応答型触媒塗料とした。
また、請求項6に係る本発明では、前記バインダーは、プロトン伝導性を有する難分解性樹脂であることに特徴を有する。
また、請求項7に係る本発明では、前記バインダーは、スルホン酸をグラフト重合させたフッ化エチレン系樹脂であることに特徴を有する。
また、請求項8に係る本発明では、付着対象物面と、請求項5〜7いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒塗料を前記付着対象物面に付着して乾燥させることにより形成した皮膜と、を備えた皮膜構造とした。
請求項1に記載の本発明によれば、可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒であって、同環境放射線応答型触媒は、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有し、同酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成したため、放射性励起用物質を含まず、暗所においても触媒作用を発揮することのできる環境放射線応答型触媒を提供することができる。
また、請求項2に記載の本発明によれば、前記酸化金属触媒体の前記バンドギャップ形成物質担持部位は、同バンドギャップ形成物質の一部を前記酸化金属触媒体の結晶構造中に固溶させていることとしたため、触媒効果をより堅実に発揮させることができる。
また、請求項3に記載の本発明によれば、前記バンドギャップ形成物質は、遷移元素であることとたため、オージェ崩壊によって発生する電磁波にて励起可能なバンドギャップを効率的に形成することができる。
また、請求項4に記載の本発明によれば、前記バンドギャップ形成物質は、鉄及び/又は銅であることとしたため、オージェ崩壊によって生じた電磁波により効率良く励起できるバンドギャップを形成することができる。
また、請求項5に記載の本発明によれば、媒液中にバインダーと請求項1〜4いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒とを溶解又は分散してなる環境放射線応答型触媒塗料としたため、放射性励起用物質を含まず、対象物に付着させることにより暗所においても触媒作用を発揮可能な皮膜を形成することのできる環境放射線応答型触媒塗料を提供することができる。
また、請求項6に記載の本発明によれば、前記バインダーは、プロトン伝導性を有する難分解性樹脂であることとしたため、生じた正孔の動きを妨げることなく、樹脂表面において効果的に触媒効果を発揮させることができる。
また、請求項7に記載の本発明によれば、前記バインダーは、スルホン酸をグラフト重合させたフッ化エチレン系樹脂であることとしたため、耐久性に優れた皮膜を形成できる環境放射線応答型触媒塗料とすることができる。
また、請求項8に記載の本発明によれば、暗所に配置された対象物面と、請求項5〜7いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒塗料を前記対象物面に付着して乾燥させることにより形成した皮膜と、を備えた皮膜構造としたため、暗所においても触媒効果を発揮させることができる。
磁気浮上電極電離箱の構成の概要を示した説明図である。
本発明は、可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒であって、同環境放射線応答型触媒は、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有し、同酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成したことを特徴とする環境放射線応答型触媒を提供するものである。
従来より光触媒として知られる様々な酸化金属触媒体は、紫外光や可視光などの光が照射されることにより、その酸化金属触媒体を構成する金属の励起した電子と、それに伴って生じた正孔とにより活性酸素の生成や有機物分解等の所謂光触媒効果が生起されることが知られている。
それゆえ、光のない環境下にあっては上述のような作用は生起されず、有機物の分解や、殺菌などの効果は得られないと考えられていた。
しかしながら、酸化金属触媒体への放射線の影響を加味すると、触媒効果が現れることが近年知られつつある。
そこで先に述べたように、酸化金属触媒体を添加した塗料中に放射性励起用物質を添加して、酸化金属触媒体に放射性励起用物質から放射される放射線を照射し、酸化金属触媒体の触媒効果を発揮させるようにした塗料が提案されているが、塗料自体に放射性励起用物質を含有していることから、その製造や使用において前述のような問題を抱えていた。
一方、本発明者らは、環境放射線レベルでの酸化金属触媒体の触媒効果について長年に亘り研究を続けており、放射性励起用物質を用いることなく酸化金属触媒体に実用的な触媒効果を発揮させる仕組みについて鋭意研究を行い、本発明を完成させた。
具体的には、本発明は、酸化金属触媒体中の金属原子に放射線が当たった際に生じるオージェ崩壊を利用する点で特徴的である。
放射線は紫外線や可視光線等の光に比してエネルギーが高く、酸化金属触媒体を構成する金属原子の電子殻のうち、K殻やL殻などエネルギー順位の低い電子殻の電子を飛び出させることができる。
例えばK殻の電子が放射線によって除かれると、さらにエネルギー順位の高い電子殻(例えば、L殻やM殻。)の電子がK殻に移動する。このとき、差分のエネルギーが電磁波として放出される。
L殻の電子がK殻に移動した場合、さらにエネルギー順位の高い電子殻(例えば、M殻。)の電子がL殻に移動することとなり、このときにも差分のエネルギーが電磁波として放出される。
このように、空席となった電子殻にエネルギー順位の高い電子殻から電子が次々と移動する現象をオージェ崩壊というが、このとき発生する電磁波は、移動前の電子殻やスピン等によってそれぞれ異なるエネルギーを持つ。すなわち、オージェ崩壊と共に、異なるエネルギーを持つ電磁波が種々放出されることとなる。
従来の酸化金属触媒体を含有させた塗料では、このオージェ崩壊に伴って発生する電磁波の利用については着目されておらず、生じた電磁波の多くはそのまま皮膜中を素通りしてやがて減衰・消滅する。電磁波のうち僅かな一部のみが、酸化金属触媒体の数少ない何らかのバンドギャップとたまたま呼応して励起し、放射線による触媒効果を呈することとなる。
従って、放射性励起用物質と酸化金属触媒体を含有する従来の塗料は、非常に大きなエネルギーを持つ放射線を使用しながらも、オージェ崩壊によって生じた電磁波のうちごく僅かしか触媒効果の発揮に利用されていない状態であった。換言すれば、十分な触媒効果を発揮させるためには、多量の放射性励起用物質を塗料中に含有させる必要があった。
そこで、本発明では、このオージェ崩壊によって生じた電磁波をより効率的に利用しつつ触媒効果を発揮させるべく、オージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質を酸化金属触媒体に担持させることとしている。
これにより、オージェ崩壊によって発生する様々なエネルギーの電磁波に呼応するバンドギャップを形成することができ、暗所下においても、弱い放射線量、すなわち、放射性励起用物質が不要で自然放射線によって触媒効果を発揮可能な触媒とすることができるのである。
このバンドギャップ形成物質は、酸化金属触媒体に含まれる金属原子のオージェ崩壊に伴って発生する電磁波に呼応して励起できるバンドギャップを形成可能であれば特に限定されるものではない。このようなバンドギャップ形成物質の一例としては、例えば、遷移金属元素とすることができ、中でも鉄及び/又は銅とすることができる。
また、バンドギャップ形成物質を鉄及び/又は銅とした場合には、電子を捕捉して同電子の遷移に伴って生じた正孔との再結合を遅延させることにより、酸化金属触媒体に正孔が存在する活性化状態をより維持することが可能となる。
特に銅は、再結合防止成分として機能して二価の銅イオン(Cu2+)から一価の銅イオン(Cu+)と変化することにより、一価の銅イオン自体の抗菌性も発揮されることとなり、触媒効果に由来する抗菌性と相俟って、極めて効果的な抗菌活性を生起させることができる。
具体的には、正孔は、励起した電子の準位が低下することにより、再び電子と結合して消滅する。
十分な放射線が照射されている酸化金属触媒体では、この正孔と励起電子の生成と消滅が頻繁に起こっており、所定の割合で正孔と励起電子が存在しているため、触媒効果が発揮されることとなる。
しかしながら放射線量が弱いと、十分な触媒効果を生起できるだけの電子の励起が行われない。
そこで、バンドギャップ形成物質を鉄及び/又は銅とした場合、このバンドギャップ形成物質を再結合阻害成分としても機能させることができ、高エネルギー準位に遷移した酸化金属触媒体の金属原子の電子が取りうる準位にトラップ準位を形成し、このトラップ準位にて電子を捕捉して同電子の遷移に伴って生じた正孔との再結合を阻止又は遅延させることができる。
したがって、単位時間における正孔の存在量を大きく増加させることができ、暗所下で環境放射線程度の弱い放射線しか存在しない環境下であっても、実用的な触媒効果を発揮させることができる。
また、酸化金属触媒体へのバンドギャップ形成物質の担持は、酸化金属触媒体の表面に析出させることによる担持や、焼付担持でも良く、乾燥担持あっても良く、更には両者を併用して行っても良い。特に、酸化金属触媒体を酸化チタンとし、バンドギャップ形成物質を鉄及び銅とした場合、鉄は酸化チタンに焼付担持し、銅は例えば塩化銅(CuCl2)や硫酸銅(CuSO4)などの銅化合物を、環境放射線応答型触媒塗料中に、鉄を担持させた酸化チタンに対して3〜13重量%添加し、添加した銅の一部を酸化金属触媒体表面にて析出担持させることで、効率的な触媒効果を生起可能とすることができる。
付言すれば、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒は、酸化チタンからなる触媒本体と、同触媒本体の表面に鉄を担持させて形成した鉄担持部と、前記触媒本体又は前記鉄担持部の表面に銅を担持させて形成した銅担持部と、を備える触媒であって、前記触媒本体の表面に存在する酸化チタン結晶中に、前記鉄と前記銅とを固溶させてなるオージェ崩壊惹起部が形成されているものと考えることもできる。
このような環境放射線応答型触媒は、例えば、鉄が担持されている酸化チタン粒子を、同酸化チタン粒子の重量の3〜13重量%にあたる塩化銅を溶解させた塩化銅水溶液中に添加して攪拌し、鉄が担持されている酸化チタン粒子の表面にて銅を析出させた後に乾燥させることで得ることができる。
また本発明は、媒液中にバインダーと、上述の環境放射線応答型触媒とを溶解又は分散してなる環境放射線応答型触媒塗料を提供するものである。
すなわち本発明は、対象物に付着させることにより可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な皮膜を形成する放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒塗料であって、同環境放射線応答型触媒塗料は、バインダーと、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体と、を含有すると共に、前記酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、前記皮膜に環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成したことを特徴とする環境放射線応答型触媒塗料を提供するものでもある。
ここで、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料を付着させる(皮膜を形成する)対象物は、特に限定されるものではない。しかしながら、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料は、可視光や紫外光が少ない場所においても触媒効果を生起できるものであり、例えば、建屋内等において顕著な効果を発揮する。
具体的には、鋼板や木質パネル、セメント系パネルなどの建材や、ガラスや陶器などの窯業系素材を付着対象物とすることもできる。
特に、屋内にて使用される住宅設備機器を付着対象物として環境放射線応答型触媒塗料を付着させることで、光の届きにくい部屋や、夜間であっても、付着対象物にて触媒効果を生起させることができる。
また、媒液とは、バインダーを溶解又は分散させたり、環境放射線応答型触媒を分散させるための溶媒や分散媒として機能する液体を示すものである。すなわち、塗料を調製する際に一般的に用いられる溶媒等がこれに該当する。
なお、本明細書において環境放射線は、後述する放射性励起用物質より放射される放射線を除く放射線であり、例えば、宇宙線や大地や建築構造物から放出され日常的に大気中に存在する放射線であり、ミュー中間子やラドン、トロンおよびその娘核が原因で発生する放射線がそれにあたる。
また、本明細書において放射性励起用物質は、酸化金属触媒体を励起させるために意図的に添加される物質(励起用物質)のうち放射能を有するものである。このような放射性励起用物質としては、例えば、人工的に合成された放射性同位体や自然界に所定の割合で存在する各元素の放射性同位体、放射性元素を人為的に濃縮して励起用物質として添加したものや、放射性鉱物を粉砕など適宜加工して励起用物質として添加したものを挙げることができる。付言すれば、放射性励起用物質は、暗所下においてバンドギャップ形成物質無しに実用的な触媒効果を生起させる放射線量を放射する物質であるとも言える。なお、バインダーや酸化金属触媒体、溶剤、バンドギャップ形成物質など、その他塗料を構成する添加物等には、僅かながらも自然界に由来して放射性同位体や放射性元素が含まれる場合があるが、これらについては、もし仮に塗料の製造上や皮膜形成過程において結果的に濃縮が行われたとしても、本明細書における放射性励起用物質として解釈してはならない。
本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料に使用するバインダーは特に限定されるものではなく、一般の光触媒塗料に使用されている公知のバインダー等を使用することができる。
しかしながら、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料における好適なバインダーとしては、例えば、プロトン伝導性を有する難分解性樹脂を挙げることができる。
このようなプロトン伝導性を有する難分解性樹脂としては、例えば、スルホン酸基を有するもの、より具体的には、次に列挙するスルホン化ポリマーを挙げることができる。すなわち、SPEEK:スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、SPEK:スルホン化ポリエーテルケトン、SPES、SP3O:ポリ(2,6−ジフェニル−4−フェニレンオキサイド)、SPPBP:スルホン化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)、SPPO:スルホン化ポリフェニレンオキサイド又はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)、SPPQ:ポリ(フェニルキノザリン)、SPS:スルホン化ポリスチレン、SPSF:スルホン化ポリスルホン、SPSU:スルホン化ポリスルホンウデル(sulfonatedpolysulfone Udel)、パーフルオロスルホン酸ポリマー(Nafion(登録商標)等)を用いることができる。
また付言すれば、アクリルスルホン酸ナトリウム(SAS)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMS)、pスチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、アクリル酸(AA)、アリルアミン、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルホスホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、アクリルアミドのスルホン酸またはホスホン酸誘導体、エチレンイミン、メタクリル酸など、構造中にビニル基およびスルホン酸、ホスホン酸などの強酸基、カルボキシル基などの弱酸基、1級、2級、3級、4級アミンのような強塩基、弱塩基を有するモノマーおよびそのエステルなどの誘導体等のモノマーを1種又は2種以上用いて形成したグラフト重合体を用いることができる。
中でもバインダーとして更に好適には、スルホン酸をグラフト重合させたフッ化エチレン系樹脂、特に、スルホン酸をグラフト重合させた四フッ化エチレン系樹脂、所謂ナフィオン(登録商標)を採用することができる。バインダーとしてナフィオンを使用することにより、触媒効果によって侵されにくく、しかも、その効果を効率良く享受することのできる皮膜面を形成することができる。
また、酸化金属触媒体に使用する酸化金属は、自然放射線によって励起可能なものであればよく、例えば、酸化チタン(TiO2)や酸化タングステン(WO3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化銅(Cu2OやCuO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化錫(SnO2)、チタン酸カルシウム(CaTiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。勿論、これらの酸化金属を用いて異種金属をドーピングしたり異種金属を担持させて不純物準位を作る事により、バンドギャップレベルを狭窄したり、界面電荷移動を容易としたものを酸化金属触媒体として使用することもできる。
本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料における、バインダーと、環境放射線応答型触媒との割合は、同環境放射線応答型触媒塗料中の不揮発成分、すなわち、溶媒を除いた成分の全重量を100重量部とした際に、バインダーを20〜40重量部、環境放射線応答型触媒を60〜80重量部とするのが好ましい。
また、酸化金属触媒体に担持させるバンドギャップ形成物質の量は、鉄については、全酸化金属触媒原子に対するバンドギャップ形成物質原子のモル比で0.05〜0.15%(10000個の酸化金属触媒原子に対して5〜15個のバンドギャップ形成物質原子)となる量とすることで、良好な触媒効果を生起させることができる。
また、酸化金属触媒体に銅をバンドギャップ形成物質として担持させるにあたっては、担持させる酸化金属触媒体の重量の3〜13重量%に相当する量の銅化合物を所定の溶媒に0.257〜1.114%(w/v)の濃度で溶解させた溶液中に、酸化金属触媒体を浸漬し同酸化金属触媒体の表面に銅を析出させることで、良好な触媒効果を生起させることができる。
このように、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料は、放射性励起用物質を含まず、対象物に付着させることにより暗所においても触媒効果を生起可能な皮膜を形成することのできる塗料を提供することができる。
また、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料を用い、暗所に配置された付着対象物の対象物面に付着(塗布)した上で乾燥させて皮膜を形成させることにより、暗所においても触媒効果を発揮できる皮膜構造を提供することができる。
すなわち、本実施形態に係る皮膜構造は、付着対象物の対象物面と、上述の環境放射線応答型触媒塗料を前記対象物面に付着して乾燥させることにより形成した皮膜と、を備えた皮膜構造であると言える。
また本明細書では、対象物に付着させることにより可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な皮膜を形成する放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒塗料であって、バインダーと、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体と、を含有すると共に、前記酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、前記皮膜に環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成した環境放射線応答型触媒塗料にて形成した塗膜の、暗所且つ環境放射線存在下において触媒効果を発揮させるための使用についても提供する。
以下、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒、及び同触媒を含有させた塗料等について、更に具体的に説明する。
〔1.本実施形態に係る環境放射線応答型触媒及び塗料の調製〕
まず、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒及び塗料の調製について説明する。ここでは、環境放射線応答型触媒を液体中(媒液中)で調製することにより、環境放射線応答型触媒の調製と同時に同触媒を含有する塗料の調製も行った。また、後の実験に供すべく、組成を違えた4種類の環境放射線応答型触媒塗料の調製を行った。
(1−1.環境放射線応答型触媒塗料Aの調製)
2L容量のステンレス容器に、0.3LのナフィオンDE2020(米国デュポン社製)を分注し、容器中に酸化金属触媒体として60gの硫黄ドープ型酸化チタン(東邦チタニウム製)と、2gの水酸化バリウムと、0.3gのジエチルポリシロキサン、酸化チタンに対して6.5〜7.5重量%、好ましくは約7重量%となる3.9〜4.5g好ましくは4.2gのCuCl2を添加し、更に溶剤としてイソプロパノールを0.2L、水0.2Lを加え、顔料分散用ガラスビーズと混合攪拌機にて20℃、120分間撹拌を行った。その後、ガラスビーズを除去して得られた混合液を、環境放射線応答型触媒塗料Aとした。なお、硫黄ドープ型酸化チタンには、全チタン原子に対する鉄の原子のモル比で0.05〜0.15%(10000個のチタン原子に対して5〜15個の鉄原子)となる量の鉄が予め焼付担持されている。
(1−2.環境放射線応答型触媒塗料Bの調製)
環境放射線応答型触媒塗料Bは、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aとほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2を酸化チタンに対して2.5〜3.5重量%、好ましくは3重量%となる1.5〜2.1g好ましくは1.8gとした点で異なっている。
(1−3.環境放射線応答型触媒塗料Cの調製)
環境放射線応答型触媒塗料Cは、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aとほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2を酸化チタンに対して10.5〜9.5重量%、好ましくは10重量%となる6.3〜5.7g好ましくは6.0gとした点で異なっている。
(1−4.環境放射線応答型触媒塗料Dの調製)
環境放射線応答型触媒塗料Dは、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aとほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2を添加しない点で異なっている。
〔2.比較用塗料の調製〕
次に、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料と比較を行うための比較用塗料の調製について説明する。後に説明する実験に供すべく、比較用の塗料の調製を行った。
(2−1.比較用塗料Z1の調製)
比較用塗料Z1は、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aとほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2を添加しない点や、鉄を担持していない酸化チタンを用いている点で異なっている。
具体的には、2L容量のステンレス容器に、0.3LのナフィオンDE2020(米国デュポン社製)を分注し、容器中に60gの硫黄ドープ型光触媒酸化チタン中の酸化チタン含量に相当する量の酸化チタンと、2gの水酸化バリウムと、ジエチルポリシロキサン0.3gを添加し、更に溶剤としてイソプロパノールを0.2L、水0.2Lを加え、顔料分散用ガラスビーズと混合攪拌機にて20℃、120分間撹拌を行った。その後、ガラスビーズを除去して得られた混合液を、比較用光触媒塗料Z1とした。
(2−2.比較用塗料Z2)
比較用塗料Z2は、さらなる比較用塗料として準備されたものであり、市販の光触媒塗料(TOTO株式会社製)を使用することとした。
〔3.電荷測定試験〕
次に、前述の環境放射線応答型触媒塗料A〜D、及び、比較用塗料Z1〜Z2を用いて皮膜面を形成した試験片を作成し、暗所且つ環境放射線条件下における皮膜面での電荷量を測定する試験を行った。
前述のように、触媒効果は酸化金属触媒体に含まれる金属原子にて生成した励起電子と正孔の振る舞いによって生起されるものであるが、正孔を直接的に観測するのは極めて困難である。そこで、電荷量を測定することにより、間接的に励起された活性状態を推定することとした。
(3−1.試験片の作成)
アルミ製プレート(50mm×100mm)の表面に、前述の環境放射線応答型触媒塗料A〜D、又は、比較用塗料Z1〜Z2をそれぞれ塗布し、皮膜を形成させることで試験片の作成を行った。
(3−2.測定方法)
本試験では、財団法人光線研究所福岡支部の協力を得て、磁気浮上電極電離箱を用いて電荷量の測定を行うことにより、対生成する正孔の生成量を推定した。なお、磁気浮上電極電離箱は川口俊郎氏等が開発した装置(特許3061798号)であり、本装置に係る出願として、例えば光触媒活性測定装置及び光触媒活性測定方法(特許第4571170号)がある。
図1に本測定試験にて使用した磁気浮上電極電離箱の構成の概要を示す。図1に示すように、磁気浮上電極電離箱は、磁気浮上装置、浮上電極を持つ電離箱、ファラデーケージ、エレクトロメータ及びコンピュータ等で構成されている。電離箱はアクリル製の円筒型で、内部には導電性の塗料が塗布されている。浮上電極に正電荷を帯電すると、電離箱内壁には電磁誘導の原理で負電極となり、電離箱内で発生した負の電荷が浮上電極で収集される。原理及び測定方法の詳細な説明は特許3061798号及び特許第4571170号に詳しい。本試験では図1に示すように、2つの磁気浮上電極電離箱(P)、(Q)を用いて試験を行った。
すなわち、第1の電離箱(P)に、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料A〜D、比較用塗料Z1〜Z2のいずれかを塗布した試験片をセットする一方、第2の電離箱(Q)に皮膜(塗膜)を形成していないアルミ製プレートを参照用としてセットし、第1及び第2の電離箱(PとQ)を環境放射線のもとに一定時間置いて電離箱内の浮上電極で、電離箱内で発生した電荷を収集する。その後第1の電離箱(P)の測定値から第2電離箱(Q)の測定値の差分を取ることによって、第1の電離箱(P)にセットした試験片からの正味の電荷の生成量を測定した。なお、電離箱内は暗所(遮光下)であり、自然放射線は透過する状態である。
また、本試験では、磁気浮上電極電離箱による電荷生成量の測定と共に、抗菌活性についても測定を行った。抗菌活性値は、下記の抗菌活性値計算式により算出した。
抗菌活性値R=[log(B/A)−log(C/A)]=[log(B/A)]
なお、式中において、Aはブランクの接種直後の生菌数であり、Bはブランク培養後の生菌数であり、Cはテストピースの培養後の生菌数である。抗菌活性値は暗黒状態下(遮光下)でJISの抗菌活性検査法で行った値で、0は抗菌作用がゼロの場合であり、数値が大きくなるほど抗菌活性(殺菌力)が高いことを示している。
これら試験結果を表1に示す。表1における担持物質の欄は、試料に該物質を表記の重量%をもって担持させている。また、マイナス電荷発生量は平均的環境放射線量(季節や気候によって異なるが福岡地方では0.04〜0.1μSv/h)に対して0.08μSv/hの放射線を試料に照射したときに試料から発生するマイナスの電荷で、触媒における活性イオン電荷に対応する。
表1からも分かるように、バンドギャップ形成物質を添加した本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料を塗布した試験片A〜Dは、自然放射線によりマイナス電荷の発生が認められた。一方、比較用塗料Z1、Z2を塗布した試験片では、マイナス電荷の有意な発生は認められなかった。
このことから、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料は、放射性励起用物質を含まず、対象物に付着させることにより暗所においても環境放射線によって触媒効果を生起可能な皮膜を形成することのできる塗料であることが示された。
(他社製触媒を用いた際の抗菌効果の検証)
前述の環境放射線応答型触媒塗料A〜Dはいずれも、東邦チタニウム製硫黄ドープ型酸化チタンを用いた塗料であったが、ここでは、ダイセル製ルチル型可視光応答型触媒を用いた場合の抗菌効果について検証を行った。その結果を表2に示す。なお、表2において、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aのうち東邦チタニウム製硫黄ドープ型酸化チタンをダイセル製ルチル型可視光応答型触媒に置き換えた塗料を環境放射線応答型触媒塗料A2とし、環境放射線応答型触媒塗料Bや環境放射線応答型触媒塗料C、環境放射線応答型触媒塗料Dについても同様に、B2〜D2として示す。また、環境放射線応答型触媒塗料E2は、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aとほぼ同様の組成を有しているが、ダイセル製ルチル型可視光応答型触媒を用い、CuCl2を酸化チタンに対して4.5〜5.5重量%、好ましくは約5重量%となる2.7〜3.3g好ましくは3.0gとした点で異なっており、環境放射線応答型触媒塗料F2は、ダイセル製ルチル型可視光応答型触媒を用い、CuCl2を酸化チタンに対して12.5〜13.5重量%、好ましくは約13重量%となる7.5〜8.1g好ましくは7.8gとした点で異なっている。
表2からも分かるように、東邦チタニウム製硫黄ドープ型酸化チタンをダイセル製ルチル型可視光応答型触媒に置き換えた場合であっても、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料は、抗菌効果を発揮可能であることが示された。特に、銅が担持されている環境放射線応答型触媒塗料A2〜C2、E2において、より良好な抗菌効果が観察された。また、これらの中でも、ダイセル製ルチル型可視光応答型触媒を用いた場合、CuCl2を酸化チタンに対して12.5〜13.5重量%添加した環境放射線応答型触媒塗料F2において、抗菌活性値が6.2と最も良好な抗菌活性が観察された。また、表1や表2の結果から、銅の添加量は、原料となる触媒の種類にもよるが、3〜13重量%が良いことが示された。
(環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起さない金属原子を含んだ塗料における抗菌効果の検証)
前述の環境放射線応答型触媒塗料Z1は、鉄を担持していない酸化チタンを用いた塗料であったが、ここでは、鉄を担持しておらず、環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起さないアルミナを用いた場合の抗菌効果について検証を行った。その結果を表3に示す。表4において、前述の比較塗料塗料Z1のうち鉄を担持していない酸化チタンをアルミナに置き換えた塗料を塗料Z3として示す。また、塗料Z4は、前述の塗料Z3とほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2をアルミナに対して2.5〜3.5重量%、好ましくは3重量%となる1.5〜2.1g好ましくは1.8gとした点で異なっており、塗料Z5は、前述の塗料Z3とほぼ同様の組成を有しているが、CuCl2をアルミナに対して6.5〜7.5重量%、好ましくは約7重量%となる3.9〜4.5g好ましくは4.2gとした点で異なっている。
表3からも分かるように、オージェ崩壊に由来する触媒効果によらず、添加した銅のみでの抗菌効果は極めて低いことが示された。換言すれば、オージェ崩壊を効果的に利用することにより、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒塗料は触媒効果を発揮していることが示唆された。
(環境放射線応答型触媒塗料Aの抗菌活性値の経時変化)
次に、前述の環境放射線応答型触媒塗料Aの抗菌活性値の経時変化について検証を行った。その結果を表4に示す。
表4からも分かるように、3時間程度の時間で、抗菌活性値がピークに達することが示された。すなわち、3時間程度の時間があれば、遮光下であっても、その塗膜表面において5.4程度の抗菌活性を示すことが可能であることが示された。
また、上述してきた表1〜表4の結果からも分かるように、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒は、遮光下で、環境放射線(0.1〜0.04μSv/h)の2倍以下の放射線線量のもとで、前述の磁気浮上電極電離箱による電荷生成量の測定を行った際に有意の差(計測装置の標準偏差・・およそ1.5×10-16C/s)以上のマイナスイオン電荷発生量が認められるものと言える。
上述してきたように、本実施形態に係る環境放射線応答型触媒は、可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒であって、同環境放射線応答型触媒は、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有し、同酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成したことにより、放射性励起用物質を含まず、暗所においても触媒作用を発揮することのできる環境放射線応答型触媒を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
P 第1の磁気浮上電極電離箱
Q 第2の磁気浮上電極電離箱

Claims (8)

  1. 可視光や紫外光に依存することなく環境放射線によって触媒効果を生起可能な放射性励起用物質不含の環境放射線応答型触媒であって、
    同環境放射線応答型触媒は、前記環境放射線の照射によりオージェ崩壊を引き起こす金属原子を含んだ酸化金属触媒体を含有し、同酸化金属触媒体には、前記金属原子のオージェ崩壊に伴って発生した電磁波により励起可能なバンドギャップを形成するバンドギャップ形成物質が担持されており、
    環境放射線が照射され続けることにより、前記金属原子のオージェ崩壊によって発生した電磁波で前記バンドギャップ形成物質により形成されたバンドギャップを励起して、前記酸化金属触媒体に正孔と励起電子とが存在する活性化状態を維持すべく構成したことを特徴とする環境放射線応答型触媒。
  2. 前記酸化金属触媒体の前記バンドギャップ形成物質担持部位は、同バンドギャップ形成物質の一部を前記酸化金属触媒体の結晶構造中に固溶させていることを特徴とする請求項1に記載の環境放射線応答型触媒。
  3. 前記バンドギャップ形成物質は、遷移元素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境放射線応答型触媒。
  4. 前記バンドギャップ形成物質は、鉄及び/又は銅であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境放射線応答型触媒。
  5. 媒液中にバインダーと請求項1〜4いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒とを溶解又は分散してなる環境放射線応答型触媒塗料。
  6. 前記バインダーは、プロトン伝導性を有する難分解性樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の環境放射線応答型触媒塗料。
  7. 前記バインダーは、スルホン酸をグラフト重合させたフッ化エチレン系樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の環境放射線応答型触媒塗料。
  8. 付着対象物面と、請求項5〜7いずれか1項に記載の環境放射線応答型触媒塗料を前記付着対象物面に付着して乾燥させることにより形成した皮膜と、を備えた皮膜構造。
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