本出願において、近位、遠位、前側、後側、内側、外側、上側および下側という単語は、骨またはこれに結合する補綴物の特定の部分または一部、または天然骨の相対的な配置による基準の方向用語を示すためのそれの標準的な使用によって定義される。例えば、「近位」は胴体に最も近い骨または補綴物の部分を意味し、「遠位」は胴体から最も遠い骨または補綴物の部分を示す。用語の方向的用法の一例として、「前側」は身体の前方側を向く方向を意味し、「後側」は身体の後方側を向く方向を意味し、「内側」は身体の正中線を向く方向を意味し、「外側」は身体の正中線の側面または正中線から遠くなる方向を意味する。また、用語の方向的用法の一例として、「上側」は身体の上部または頭部を向く方向を意味し、そして「下側」は身体の底部または足を向く方向を意味する。このような用語はインプラントの配向および膝関節の正常生体構造の説明で十分に理解される。
さらに、本明細書に開示される発明の装置、方法、態様、コンポーネント、特徴部などは、簡潔性の目的のために身体の一側面について説明される。ところが、人体は、対称線(正中線)を中心に、比較的に対称または鏡面対称を成しているので、本明細書で説明および/または例示される発明の装置、方法、およびその態様、コンポーネント、特徴部などは、本発明の思想および範囲から逸脱しない限り、同一または類似の目的のために身体の他の側面との使用または関連性のために変化、変更、改造、再構成または改変できるということがここで明示的に考慮される。
図面を参照すると、同じ参照番号が、全図面にわたって同一または類似のコンポーネントを示すために使用される。特に、図1および図2を参照すると、例示的実施形態の大腿膝補綴物10が示されている。用語「大腿膝補綴物」、「移植された膝関節」、「インプラント」、「大腿骨−脛骨のインプラント」および「過屈曲インプラント」は、区別なく使用され、損傷した膝関節の置換のための装置を指し示す。図1に最もよく見られるように、大腿膝補綴物10が組み立てられ、前側−内側図として示されている。大腿膝補綴物10は、大腿骨コンポーネント100、脛骨ベアリングコンポーネント200、および脛骨プラットフォーム300を含む。大腿骨コンポーネント100は脛骨ベアリングコンポーネント200の近位側上に着座し、脛骨ベアリングコンポーネント200の遠位側は脛骨プラットフォーム300の近位表面上に着座する。大腿膝補綴物10の分解図は、図2に示されており、外側上方視から本実施形態の大腿骨コンポーネント100、脛骨ベアリングコンポーネント200、および脛骨プラットフォーム300を示す。
大腿骨コンポーネント100は、大腿骨の遠位端部に固定されるように適合される。大腿骨コンポーネント100は、遠位顆104に連結される前顆または節骨(phalange)102を含み、遠位顆104は後顆106に連結される。前顆102は、近位内側面110に隣接する近位外側面108、および膝蓋骨を受容するように外側面108と内側面110との間に位置する膝蓋骨溝112を含む。膝蓋骨溝112は、遠位内側面116に隣接する遠位外側面114を含む遠位顆104内へ連なる。ここで、膝蓋骨溝112は、遠位外側面114と遠位内側面116との間で延びる。後顆106は、内後側顆120に平行な外後側顆118、および外後側顆118と内後側顆120との間の顆間(intercondylar)開口122を含む。遠位外側面114および遠位内側面116の内面それぞれは、患者の大腿骨に対する大腿骨コンポーネント100の付着または固着のためのステムまたはポスト124を含む。
ここで、図1および図2に継続的に関連する図3、図4および図13を参照すると、近位外側面108は、大腿骨の露出した骨切り面を遮蔽するために、近位内側面110よりも近位方向にさらに延びる。近位内側面110は、近位外側面108よりも約30パーセント(30%)短い。ここで、近位内側面110は、約41〜52mmの範囲の近位から遠位までの寸法または遠位顆104の下側面から近位内側面110の上端部までの高さを持つことができ、近位外側面108は、約44〜62mmの範囲の近位から遠位までの寸法または遠位顆104の下側面から近位外側面108の上端部までの高さを持つことができる。また、近位外側面108の内面128は、約29〜39mmの範囲の高さを持つ前顆102の前側平面164を、一方、約20〜29mmの範囲の高さを持つ前顆102の近位内側面110の前側平面164を有することができる。本発明において、近位外側面108は、鋭角の膝関節の屈曲中に膝蓋骨が移動するときに膝蓋骨コンポーネントの安定性を提供するために、近位内側面110よりも厚いことがある。近位外側面108は約7〜12mmの範囲の前側−後側寸法または厚さを持つことができ、近位内側面110は約4〜5mmの範囲の前側−後側寸法または厚さを持つことができる。前側−後側方向に近位内側面110に対する近位外側面108の厚さを約2〜7mmだけ増加させることにより、膝蓋骨溝112は、膝関節が屈曲するときに膝蓋骨の沈下(sinking)を受容するために縦方向に深くなる。この膝蓋骨溝112は膝関節の屈曲を増進させることができる。
膝蓋骨溝112は、概ね膝蓋骨インプラントと整合する約6°の角度αを持つことができる。また、角度αは、解剖学的膝蓋骨溝を模倣するために、遠位大腿骨の中心角度に対して外側に6°指向できる。前顆間区132で前節骨102の内側−外側寸法または幅は約38〜54mmの範囲でありうる。前顆間区132の幅は、前十字靭帯および後十字靭帯が大腿骨の内面に付着する位置に相当する位置にある大腿骨コンポーネント100の外面上で測定される。ここで、図13を参照すると、前節骨102の近位外側面108は、また、前顆間幅が測定される地点から前節骨102の近位外側面108の上端部までの約29〜39mmの範囲でありうる近位−遠位寸法または高さを含むことができる。また、前節骨102の近位内側面110は、前顆間幅が測定される地点から近位内側面110の上端部までの約20〜29mmの範囲の近位−遠位寸法または高さを含むことができる。図4に示すように、前節骨102は、また、基準線134から取られる約29〜41mmの範囲である内側−外側寸法または幅を含むことができる。
図3および図4に示すように、2つの遠位顆104の遠位外側顆114および遠位内側顆116は、脛骨ベアリングコンポーネント200に接触する大腿骨コンポーネント100のためのそれぞれの第1ベアリング表面および第2ベアリング表面である。遠位外側顆114および遠位内側顆116は、膝蓋骨溝112の遠位部分および顆間部分126によって連結される。図13に示すように、遠位顆104は、前節骨102の外面から2つの後顆118、120までの約52〜84mmの範囲の前側−後側外部長さを持つことができる。また、遠位顆104は、概ね約35〜55mmの範囲である前節骨102の内面から2つの後顆118、120の内面まで測定される前側−後側内部長さを持つことができる。遠位顆104は約9mmの近位−遠位厚さを持つことができる。
図3および図4に示すように、経上顆軸線(transepicondylar axis)136に沿った2つの後顆106の内側−外側寸法または幅は、約58〜76mmの範囲でありうる。外後側顆118は、顆間開口122を形成する内後側顆120から離隔でき、約16〜24mmの範囲の内側−外側寸法または幅を持つことができる。外後側顆118および内後側顆120は、図13に示すように、約36〜42mmの範囲である線142に沿って後顆106の先端部140から遠位顆104の外面までの近位−遠位寸法または高さを持つことができる。外後側顆118および内後側顆120は、線142に沿った中間点146で線142に対して垂直に測定される前側−後側厚さを持つことができ、この厚さは約10〜17mmの範囲でありうる。図13および図14に示すように、中間点146は、外後側顆118または内後側顆120の先端部140から遠位顆104の湾曲した外面上のその直線の延長部まで引いた線を二等分することにより定義される。本発明の大腿膝補綴物10は、後顆106の中間点146の厚さを増加させることにより屈曲が増加する。
図1、図2および図13に示すように、前側−後側ボックス(box)は、前顆、遠位顆、および後顆に対向する大腿骨コンポーネント100の内面上に形成される。前側−後側ボックスは、5つの平面、すなわち前側表面164、前側−遠位表面166、遠位表面168、後側−遠位表面170、および後側表面144を含む。前側平面164は、前顆102に対向することにより、約7mm〜12mmの近位外側面108の厚さおよび約4mm〜5mmの近位内側面110の厚さを形成する。前側平面164は、約29mm〜39mmの範囲の近位外側面108上の高さ、および約20mm〜29mmの範囲の近位内側面110上の高さを持つ。遠位平面168は、遠位顆104に対向することにより、約9mmの遠位顆の厚さを形成する。前側−遠位平面166は、前顆102および遠位顆104に対向し、前側平面164の遠位端部と遠位平面168の前側端部を連結する。後側平面144は、後顆106に対向することにより、約10mm〜17mmの範囲の外後側顆118および内後側顆120の厚さを形成する。後側平面144は、約14〜20mmの範囲の外後側顆118および内後側顆120の近位−遠位寸法または高さを持つ。後側−遠位平面170は、遠位顆104および後顆106の両者ともに対向し、遠位平面168の後側端部と後側平面144の遠位端部を連結する。前側平面164と後側平面144の間の長さは約35mm〜55mmの範囲である。また、遠位平面168は、約15°の角度θで前側平面164と後側平面144を連結する垂直線から遠位で角度をなすことができる。
図1、図2および図5〜図9に示すように、脛骨ベアリングコンポーネント200は、近位側202および遠位側204を含む。脛骨ベアリングコンポーネント200は、例えば、UHMWPEのような生体適合性ベアリング材料から構成できる。脛骨ベアリングコンポーネント200は、大腿骨コンポーネント100が、本質的に可動性および回転性を持つ脛骨ベアリングコンポーネント200に関節接合されることを可能にする形状を有する。近位側202は、内側陥没部208に平行な外側陥没部206、および外側陥没部206と内側陥没部208との間の中心隆起部210を含む。外側陥没部206および内側陥没部208は、遠位顆104の凸状のベアリング外面および大腿骨コンポーネント100の後顆106を受容するための形状の深い陥凹面である。外側陥没部206および内側陥没部208の対応する凹形状は大腿骨コンポーネント100と脛骨ベアリングコンポーネント200との接触面積を最大化する。また、遠位顆104および後顆106と脛骨ベアリングコンポーネント200との間に大きな接触面積を維持することにより、インプラント10の可動式ベアリング設計は、伸展および屈曲状態で脛骨ベアリングコンポーネント200の自然な回転を提供することができる。中心隆起部210は、移植された補綴物10の内側揺動(rocking)および外側揺動を防止し、かつ増加した接触面積を提供するために、脛骨ベアリングコンポーネント200の更なる安定化を提供する。中心隆起部210の前面は前方溝212を含み、中心隆起部210の後面は後方溝214を含む。前方溝212は、激しい屈曲状態で膝蓋骨の任意の過度な接触を防止するための形状を有する。後方溝214は、維持された後十字靭帯(PCL)を受容するための形状を有する。脛骨ベアリングコンポーネント200の遠位側204は、概ね平面であり、概ね平面から遠位方向に延びるステム216を含む。
図1、図2および図10〜図12に示すように、脛骨プラットフォームまたはトレー(tray)300は近位側302および遠位側304を含む。近位側302は、脛骨ベアリングコンポーネント200の回転を許容する概ね平面を持つ。また、近位側302は、内側−外側方向に概ね中心に位置する開口306を含む。開口306は、ステム216が開口306内に挿入されたとき、脛骨プラットフォーム300と脛骨ベアリングコンポーネント200のステム216とが関節接合されることを可能にする。遠位側304は、概ね平面を有し、脛骨に固定するためのステム308を含む。ステム308は、脛骨プラットフォーム300の概ね中心に位置し、少なくとも一つのピンまたはリブ312を含むことができる。図示された実施形態において、少なくとも一つのピンまたはリブ312は4つのピンを含む。ところが、ピン312は2〜6つが好ましく、4つがさらに好ましい。少なくとも一つのピン312は、これが脛骨内に固定された後、脛骨プラットフォーム300の回転を防止することができる。また、ステム308は、膝関節の体重支持活動中に脛骨における任意の過度な揺動を防止および受容することもできる。脛骨プラットフォーム300の後面は後方溝310を含む。後方溝310は、脛骨ベアリングコンポーネント200の後方溝214とほぼ同一であり、維持されるPCLを受容するように類似の形状を有する。
大腿骨コンポーネント100、特に後顆106は、移植された膝関節のスピン−アウト(spin−out)を抑制し、例えば、約160度までの十分な屈曲を増進させるように構成される。脛骨コンポーネント200のスピン−アウトは、後顆106の増加した厚さを用いて大腿骨を上昇させることにより、屈曲状態で側副靭帯を緊縮(tightening)させることにより防止される。また、後顆106は、脛骨ベアリングコンポーネント200上に大腿骨コンポーネント100を加圧し、その結果、脛骨コンポーネント200に対して大腿骨コンポーネント100を安定化させる。本発明の大腿膝補綴物10は、より広い後方ギャップを形成することにより十分な屈曲を増進させ、これは、大腿骨コンポーネント100を自由にロールバックさせることができ、最適の膝蓋骨張力を生成し、移植された膝関節補綴物の十分な屈曲を許容する。
本発明の大腿膝補綴物10は、適切なロールバックを増進および安定化させることにより、過度な摩耗および後方安定性を減少させるように激しい屈曲でより広いベアリング接触面積を生成することにより、より深い着座および自然に配向される膝蓋腱を可能にすることにより、そして経上顆136と前顆間132との間に適切な幅を生成することにより、過屈曲のための能力を保障する。これらのすべての因子は、過屈曲(すなわち、160度)を達成するための移植された膝関節補綴物の能力に寄与する。大腿膝補綴物10は、鋭角の屈曲(すなわち、160度)状態で後顆106を上昇させる。図16に示すように、膝関節の後方コンパートメントの上昇は、ラウンド加工された端部140を有する短縮された近位−遠位高さ142および円160の前側−後側直径の増加した厚さを含む大腿骨コンポーネント100を用いて達成される。外後側顆118および内後側顆120の追加的厚さは、外後側顆118と内後側顆120との中間点146で最大である。この中間点146における追加厚さは、後方屈曲ギャップの任意の不安定性を受容するように意図されない。外後側顆118および内後側顆120と前顆102の近位外側面108の厚さを増加させることにより、大腿骨コンポーネント100の全前側−後側長さは、膝関節の過屈曲(すなわち、160度)を増加させるとともに許容する。
また、後顆106の円160の増大した前側−後側直径によって、移植された膝関節10の後ろ空間は屈曲中に大きく増大することにより、脛骨ベアリングコンポーネント200の後方リム218と外後側および内後側顆118、120との間の膝関節の後方で衝突することなく、移植された膝関節10の脛骨ベアリングコンポーネント200は約160度の十分なまたは鋭角の屈曲で屈曲できる。正常な膝関節において、例えば、うずくまるか跪くために膝関節を十分に屈曲させるとき、正常脛骨の後ろ部分は、これがロールバックされるときに大腿骨の後顆の下方にスライドすることにより、膝関節の十分な屈曲を許容する。この大腿骨コンポーネント100の設計の実施形態は、最大160度までの正常膝関節屈曲の生体力学を正確に模倣する。また、後顆106の増加した前側−後側直径160は、膝蓋骨の適切な整列および引張を許容する。
図13〜図15を参照すると、大腿骨コンポーネント100の側面図が示されている。体内で、アジア人の後顆は典型的に14〜20mmの長さを有し、白色人種の後顆は20mm超過の長さを有する。後顆106の後側平面144は、大腿骨インプラント100の外後側顆118および内後側顆120の延長部を受容するために約14〜20mmの範囲の高さを持つ。外後側顆118および内後側顆120の前後側曲率は、膝関節が屈曲するときにより小さな単一の回転軸線を有する後側曲率半径148の周りで回転するように構成される。後顆106のベアリング面の後側半径148は約14〜20mmの範囲である。
異なる角度で区域の分離を示す大腿骨コンポーネント100の外側面図は、図14および図15に示されている。大腿骨コンポーネント100は、3つの主要な関節区域に設計された。後側関節区域154は、後顆106のベアリング表面のための最小曲率の弧(arc)を形成する。短縮された且つ厚くなった顆の曲率の弧は、大腿骨コンポーネント100の最大160度までの屈曲を可能にする。後側区域154は、約14〜20mmの後側半径148を有する。遠位関節区域156は、最大の曲率半径を有し、遠位顆104のベアリング表面として示されている。後側区域154は、接触応力を減少させ且つ安定性を増加させるために、凸状の大きな接触面積として構成される。遠位区域156は、約32〜42mmの遠位半径150を有する。最前側関節区域158は、前顆102の外側を利用する、そして23〜29mmの前側半径152を有する中間サイズの円を形成する緩やかな曲線である。前側半径152によって形成される前側区域158は、膝関節の前部分に運動の中心を備える緩やかな曲線を持つ。遠位半径150によって形成される遠位区域156は、やや後方の中心(いわゆる、瞬間中心)を有し、膝関節の屈曲の開始時に後方運動量を維持する。後側半径148により形成される後側区域154によって移植された膝関節は、約160度に十分近接して屈曲することができる。本発明は、次の様々な利点を含む。(1)脛骨ベアリングコンポーネント200の後側端部によって鋭角の屈曲(160度)で遠位大腿骨の後側コンポーネントの衝突可能性が除去され、(2)脛骨ベアリングコンポーネント200が正常膝関節の屈曲と同様にスムーズにロールバックすることができ、(3)膝関節を取り囲んでいる軟組織が自然かつスムーズな最大屈曲のために過度な応力なしに十分な屈曲を受容するように脛骨ベアリングコンポーネント200が正常に回転することができ、(4)膝蓋腱がインプラント10内に深く着座できるので、より大きな屈曲が可能である。
図16は膝関節の後顆106のプロファイルの輪郭を描写する円160を示す。本発明の最後側顆118の外面162を形成する円160は約14〜20mmの半径を有する。円160は大腿骨コンポーネント100のための運動の範囲を示す。同様に、後顆106の厚さは、約10〜17mmの範囲である中間点146でさらに厚い。円160は、(1)膝関節の屈曲を増進させるためのより小さな単一軸線、(2)自然かつ正常的に容易に膝関節を屈曲させることができるように屈曲を加速させるためのより小さな単一軸線を示し、(3)大腿骨コンポーネント(前後側「AP」整列)の高さを増加させることにより、前方伸筋(extensor)メカニズムのベクトルの和を増加させ、よって、膝関節の伸展力(extension power)の強度を増加させる。健全な膝関節において、ベクトルは、膝蓋骨靱帯、膝蓋骨および四頭筋構造によって形成される。ベクトルの和は、膝関節の伸展力の実際強度である。膝蓋骨靭帯および膝蓋骨のベクトルの部分が一定であるから、椅子からの立ち上がりや階段のぼりなどの活動に関する膝関節の伸展力の変化は四頭筋構造の強度に依存する。典型的に、四頭筋構造は長期間にわたる痛みおよび活動停止によって弱化される。ベクトルを延長させ、大腿骨コンポーネント100の全前後側長さを増加させることにより、手術後の筋肉機能が増進する。しかも、本発明において、鋭角の屈曲の際に、後顆106は、脛骨ベアリングコンポーネント200と干渉しないから、脛骨ベアリングコンポーネント200のロールバックを可能にする。
様々な屈曲角度の大腿膝補綴物10の外側面図である図17〜図22を参照すると、大腿骨コンポーネント100は、約0〜160度の範囲の角度で脛骨ベアリングコンポーネント200および脛骨プラットフォーム300と関連して示されている。図17〜図22は、移植された膝関節10の屈曲挙動の方法を説明している。図17を参照すると、大腿膝補綴物10は約0度の屈曲で示されている。約60度の角度βで、脛骨ベアリングコンポーネント200は、図18に示すようにロールバックし、伸展状態で十分な接触および広い接触面積を維持する。このような広い面積の接触の構成は、大腿骨コンポーネント100と脛骨ベアリングコンポーネント200との間の接触応力を減少させる。減少した接触応力により耐摩耗性ベアリング材料の寿命が増加する。減少した接触応力を有する、増加した接触面積の概念は、体内試験と体外試験でその寿命を立証した。図19は約90度の角度γで屈曲した移植膝関節10を示し、図20は約130度の角度δで屈曲した移植膝関節10を示す。図21を参照すると、大腿膝補綴物10が、約120度の角度ε、約130度の角度δおよび約140度の角度ζを含む広範囲な屈曲の角度で示されている。
最後に、移植膝関節10は、図22において約160度の屈曲の角度ηで示されている。ロールバックは、略160度までの移植膝関節10の増進した最大屈曲および脛骨ベアリングコンポーネント200のベアリング材料の摩耗減少のために重要である。インプラント10は、移植膝関節が屈曲するときに回転する。脛骨ベアリングコンポーネント200の内側部分は、外側部分が後方向に後退するときの回転の軸線である。このような回転の和は、大腿骨−脛骨の接触領域だけでなく、脛骨トレー300の平らな部分で発生する。組み合わせられた回転は、脛骨プラットフォーム300における脛骨ベアリングコンポーネント200の移動および膝関節の軟組織構造の作用を可能にする可動式ベアリングの設計により発生する。もちろん、軟組織構造(靭帯)は、手術の際にバランスを保つ必要がある。
図4に示すように、経上顆(trans−epicondylar)幅136と前顆間(intercondylar)幅132との比も重要である。実際の前顆間幅132は、大腿骨の骨の切断が施行された後に形成される。大腿骨コンポーネント100の経上顆幅136と前顆間幅132との比は100/70〜100/72の範囲である。周辺の軟組織は、100/70〜100/72の比を有する最大160度までの最大鋭角の屈曲を可能にする。
本発明は好適な実施形態を参照して説明された。本明細書で説明された構造上および作動上の実施形態は、同じ一般特徴部、特性および一般システムの作動を提供するための複数の可能な配列の例示であることを理解するであろう。読者は、前述した詳細な説明を読んで理解することにより改造および変更を行うであろう。本発明は、このようなあらゆる改造および変更も含むものと解釈されるべきである。