JP2015521842A6 - 環状ペプチドのinvitro作製 - Google Patents

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Abstract

本発明は、パテラミド生合成酵素等のシアノバクテリア酵素を用いた環状ペプチドのin vitro作製に関する。直鎖ペプチド基質を単離シアノバクテリアマクロシクラーゼ、例えばプロクロロン属由来のPatGを用いて環化する。環化の前に、直鎖ペプチド基質中の残基を単離シアノバクテリアヘテロシクラーゼ、例えばPatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼを用いて複素環化することができる。例えば、本発明の方法は、例えば治療薬の開発に使用されるカラタ等のシクロチド、並びにパテラミド及びテロメスタチン等のシアノバクチンを含む環状ペプチジル分子の作製に有用であり得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状ペプチドをin vitroで作製する方法に関する。
環状ペプチドは、新規の医薬としての使用についてバイオテクノロジー及び製薬産業で長年興味を持たれていた。環状ペプチドは直鎖ペプチドよりもはるかに安定した化合物であり、細胞膜をより効率的に通過することができるため、理想的な薬物分子である(非特許文献1)。環状ペプチドは特に合成的に作製するのが困難である。海洋シアノバクテリアは環状ペプチド天然産物であるシアノバクチン(cyanobactins)を産生することが示されている(非特許文献2;様々な環状ペプチド構造例については図1(a)及び図1(b)を参照されたい)。シアノバクチンは、プレプロペプチドがアミノ酸の複素環化、エピマー化、プレニル化及びゲラニル化を含む複数の翻訳後修飾を受けるリボソーム生合成経路によって産生される(非特許文献3)。
シアノバクチンスーパーファミリーの成員であるパテラミドは、ホヤのリッソクリヌム・パテラ(Lissoclinum patella)の偏性未培養共生細菌であるプロクロロン属によって産生される(非特許文献4、非特許文献5)。これらの化合物は細胞毒性(非特許文献6)及びヒト白血病細胞において多剤耐性を無効にする能力を示す(非特許文献7)。パテラミドは、チアゾールへと更に酸化され得るオキサゾリン及びチアゾリンをもたらす複素環化残基(Ser/Thr、Cys)を含有する環状オクタペプチドである(非特許文献4)。
パテラミドの遺伝子クラスターが同定され、遺伝子patA、D、E、F及びGが産物を生じるのに不可欠であることが報告されている(非特許文献8、非特許文献3)。プレプロペプチドPatEは、37残基のリーダー配列(残基13〜28の単一ヘリックスを含有する(非特許文献9))並びに各々N末端及びC末端プロテアーゼ認識部位が隣接し、最終産物を形成する8残基の1つ、2つ又は3つのカセットからなる(非特許文献4)。
パテラミド合成のいくつかの工程が完全に特性化されている。特定のアミノ酸の複素環化がN末端及びC末端切断の前に生じ、大環状化が産物への最終工程であるはずである。どの段階でエピマー化、チアゾリンのチアゾールへの酸化、並びにプレニル化及び/又はゲラニル化が生じるかは未だ明らかではないが、エピマー化は自発的であることが報告されており、大環状化の後に起こる。酸化が最後であるはずである(非特許文献10)。本願では複素環化、カセット切断及び大環状化の工程に着目する。
複素環化はPatEプレプロペプチドテーラリングの最初の工程であり、3ドメインタンパク質PatDによって触媒される。PatDはPatEの37アミノ酸リーダー配列に対して基質特異性を有し、システイン残基及びトレオニン/セリン残基を複素環化して、それぞれチアゾリン及びオキサゾリンを形成する。このプロセスは1つの複素環につき1つの水分子の喪失をもたらす。トルンカミド経路によるPatDホモログであるTruDはシステイン残基のみを複素環化することが示されている(非特許文献11)。
カセットのN末端切断は、N末端サブチリシン様プロテアーゼドメイン及び未知の機能のC末端ドメイン(DUF)からなる2ドメインタンパク質であるPatAによって触媒される。プロテアーゼドメイン(PatApr)は、P1’位のカセットの最初の残基により切断認識配列「G(L/V)E(A/P)S」に作用する(非特許文献12)。
パテラミド産生の最終工程はC末端切断及び大環状化である。この工程は、N末端オキシダーゼドメイン、サブチリシン様プロテアーゼ/マクロシクラーゼドメイン及びC末端DUFからなる3ドメインタンパク質であるPatGによって触媒される。プロテアーゼ/マクロシクラーゼドメイン(PatGmac)は、カセットのC末端の切断及び切断カセットのパテラミドへの大環状化の両方に関与する(非特許文献12)。PatGmacは配列XAYDG(XがP1位に位置するカセットの最後の残基である)を認識する(非特許文献13)。カセットの最後の残基がPro又は複素環であるはずであると以前に報告されている(非特許文献13)。
この経路の以前のin vivo研究から、最大320μg/Lの収率の環状産物が産生され得ることが示されている(非特許文献14)。
Driggers, E. M. et al. Nat Rev Drug Discov 7, 608-624 (2008) Sivonen et al., 2010, Appl Microbiol Biotechnol, 86, 1213-25 Donia et al, 2006, Nat Chem Biol, 2, 729-35 Schmidt et al., 2005, Proc Natl Acad Sci U S A, 102, 7315-20 Long et al.2005, Chembiochem, 6, 1760-5 Kohda et al., 1989, Biochem Pharmacol, 38, 4497-500 Williams and Jacobs, 1993, Cancer Lett, 71, 97-102 Donia et al., 2008, Nat Chem Biol, 4, 341-3 Houssen, W.E. et al. - Chembiochem 11, 1867-1873 Milne, B. F. et al Org Biomol Chem 4, 631-638 (2006) McIntosh, J. A. et al (2010). Chembiochem 11(10): 1413-1421 Lee et al., 2009, J. Am. Chem. Soc., 131, 2122-2124 McIntosh et al., 2010, J Am Chem Soc, 132, 15499-501 Tianero MD et al. JACS (2012) 418-425
本発明は、パテラミド生合成酵素等のシアノバクテリア酵素を用いて環状ペプチドを作製するin vitro方法の開発及び最適化に関する。これは例えばペプチジル分子の作製、候補治療薬の生合成及びスクリーニング、並びにナノテクノロジー用途に有用であり得る。
本発明の一態様は、環状ペプチドを作製するin vitro方法であって、
(i)直鎖ペプチド基質を準備すること、及び
(ii)上記ペプチド基質を単離シアノバクテリア(cyanobacterial)マクロシクラーゼで処理して環状ペプチドを作製すること、
を含む、方法を提供する。
環状ペプチドは、シクロチド及びシアノバクチン、例えばパテラミド及びテロメスタチンを含む環化ペプチジル化合物である。パテラミドはパテラミドA、B、C及びDを含むプロクロロン属によって産生される環状オクタペプチドである。
シアノバクテリアマクロシクラーゼは、環化シグナルを含有するペプチド基質の環化を触媒するシアノバクテリア酵素である。
好適なシアノバクテリアマクロシクラーゼとしては、プロクロロン由来のPatGマクロシクラーゼ(AAY21156.1 GI:62910843;配列番号1の残基492〜851)及びTruG(gi|167859101|gb|ACA04494.1)、並びにアナベナ属由来のマクロシクラーゼ、例えばADA00395.1 GI:280987232、ACK37889.1 GI:217316956及びAED99446.1 GI:332002633、オスキラトリア属、例えばGI:300866529 ZP_07111219.1、ミクロキスティス属、例えばGI:389832527 CCI23764.1、GI:158934376 CAO82089.1、GI:389788443 CCI15902.1、GI:389678154 CCH92964.1、GI:389802072 CCI18832.1、GI:389882395 CCI37144.1、GI:389826370 CCI23111.1、GI:389731219 CCI04703.1、GI:389716328 CCH99432.1、GI:389831597 CCI25524.1及びGI:159027550 CAO86920.1、ノストック・スポンギアエフォルメ(Nostoc spongiaeforme)種、例えばTenG(GI:167859092 ACA04486.1)、リングビア属、例えばGI:119492374 ZP_01623710.1、ノドゥラリア属、例えばGI:119512474 ZP_01631555.1、アナベナ属、例えばAcyG(GI:280987232 ADA00395.1)、プランクトスリックス属、例えばGI:332002633 AED99446.1、トリコデスミウム属、例えばGI:113475997 YP_722058.1、並びにアルスロスピラ属、例えばZP_06384654.1 GI:284054444、GI:284054071 ZP_06384281.1、GI:291571075 BAI93347.1、GI:284054444 ZP_06384654.1及びGI:376002294 ZP_09780130.1が挙げられる。表4の配列アラインメントに他の好適なシアノバクテリアマクロシクラーゼの配列を提示する。
他の好適なシアノバクテリアマクロシクラーゼが当該技術分野で利用可能である(Lee, S. W. et al (2008). Discovery of a widely distributed toxin biosynthetic gene cluster, PNAS 105(15), 5879-5884)。
シアノバクテリアマクロシクラーゼは、上記の参照シアノバクテリアマクロシクラーゼ配列のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでいても、又はその変異体であってもよい。例えばシアノバクテリアマクロシクラーゼは、配列番号1の残基492〜851若しくは表4に示される他のマクロシクラーゼのアミノ酸配列を含むか、又はその断片若しくは変異体であるアミノ酸配列を含むPatGマクロシクラーゼであり得る。
いくつかの実施の形態では、PatGマクロシクラーゼは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の残基が挿入、欠失又は置換された配列番号1の配列を含み得る。例えば最大15個、最大20個、最大30個、最大40個、最大50個又は最大60個の残基が挿入、欠失又は置換されていてもよい。置換に好適な残基としてはR589、K594、K598及びH746が挙げられる。
位置R589、K594、K598、H746又は配列番号1のPatG配列の他の位置に相当するシアノバクテリアマクロシクラーゼ中の位置は、日常的な配列分析法を用いて容易に決定することができる。この位置のアミノ酸を、日常的な部位特異的突然変異誘発法を用いて異なるアミノ酸残基に置き換えることができる(例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition, Russell et al. (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい)。
参照配列の断片及び変異体は本明細書の他の部分で説明する。いくつかの実施の形態では、上記の参照配列のいずれかの変異体である配列を含むシアノバクテリアマクロシクラーゼは、配列番号1のAsp548、His618及びSer783に相当する位置にAsp残基、His残基及びSer残基を含み得る。
上記の参照配列のいずれかの変異体である配列を含むシアノバクテリアマクロシクラーゼは、表4のアラインメントに示されるマクロシクラーゼ配列において黒色で示される残基を変異体配列の相当位置に含み得る。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアマクロシクラーゼは修飾環化シグナルを認識する修飾認識配列を含み得る。マクロシクラーゼ中の認識配列及びペプチド基質中の環化シグナルは、それらが相補的であり、マクロシクラーゼと基質との結合が起こるように修飾されていてもよい。例えば、マクロシクラーゼ及び環化シグナルの一方がRRR又はKKK等のポジティブ配列であり、他方がDDD又はEEE等のネガティブ配列であってもよい。いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアマクロシクラーゼは環化配列AYDGを認識する認識配列RKKを含み得る。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアマクロシクラーゼは配列番号1のH746及び/又はF747に相当する残基に置換を含み得る。これらの残基は環化シグナルAYDのYと相互作用する。例えば、マクロシクラーゼにおける荷電残基へのF747の置換は、環化シグナルにおける反対の電荷を有する残基のYへの置換を可能にし得る。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアマクロシクラーゼは配列番号1のK598に相当する残基に置換を含み得る。例えば、シアノバクテリアマクロシクラーゼはK598D置換を含んでいてもよく、環化シグナルAYRを認識し得る。
例えばR589、K594、K598及びH746、又は他の置換等(or equivalents)によるシアノバクテリアマクロシクラーゼ配列の修飾は、ネイティブ酵素配列に対して活性及び/又は動態を改善することができる。これは生合成プロセスを適当な時間で実行可能とするのに役立ち得る。
修飾環化配列を認識させるようなシアノバクテリアマクロシクラーゼ配列の修飾は、環化の標的ペプチド配列が非修飾環化配列(例えばXAYD(Xは複素環又はProである))を含有する場合に必要であり得る。
ペプチド基質は標的ペプチド及びC末端環化シグナルを含み得る。
標的ペプチドはマクロシクラーゼによる環化を受け、環状ペプチドを形成する配列である。
好適な標的ペプチドは少なくとも4個、5個、6個、7個又は8個の残基を有し得る。好適な標的ペプチドは最大11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個若しくは30個、又はそれ以上の残基を有し得る。例えば、好適な標的ペプチドは4個〜30個の残基、好ましくは4個〜23個の残基、より好ましくは6個〜23個、6個〜20個又は6個〜11個の残基を有し得る。
標的ペプチド配列は天然物、例えば天然のシアノバクチン配列若しくはその前駆体、若しくは天然のシクロチド配列若しくはその前駆体であってもよく、又は標的ペプチド配列は合成物であってもよい。例えば標的ペプチド配列は、通常はシアノバクチン環化シグナルとは結びつかない異種配列であってもよい。
標的ペプチドは修飾アミノ酸、非修飾アミノ酸、複素環アミノ酸、非複素環アミノ酸、自然発生アミノ酸及び/又は非自然発生アミノ酸を含み得る。
本発明の方法は、下記のような単離シアノバクテリア酵素を用いた標的ペプチド配列への複素環アミノ酸の導入、及び任意に導入された複素環アミノ酸の酸化ももたらす。
標的ペプチド配列は0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又はそれ以上の複素環アミノ酸を含み得る(Shin-ya, K. et al J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 1262-1263)。
標的ペプチド配列中の環化シグナルに対して直接N末端の残基は複素環アミノ酸であるのが好ましい。例えば、チアゾリン(Thn)、チアゾール(Thz)、オキサゾリン(Oxn)、オキサゾール(Oxz)、プロリン及びシュードプロリン(pseudoproline)(ΨPro)から選択されるアミノ酸が挙げられる。
他の実施の形態では、標的ペプチド配列中の環化シグナルに対して直接N末端の残基はN−メチル化アミノ酸、又は標的ペプチド配列を十分に大環状化に向けるNH2基及びCOOH基を有する部分であり得る。
好適な標的ペプチド配列としてはITACITFC、ITACISFC、ICACITFC、IAACITFC、ITACITYC、ITACITAC、ITA(SeCys)ITF(SeCys)、IMACIMAC、IDACIDFC、ITVCITVC、ITAAITFC、VPAPIPFP、VTVCVTVC、VGAGIGFP、ACIMAC、IACIMAC、IITACIMAC、ATACITFC及びGVAGIGFPが挙げられる。他の好適な標的ペプチド配列、例えばシアノバクチン又は他の環状及び大環状ペプチドは当該技術分野で既知であり(例えば、Houssen, W. E. & Jaspars, M. Chembiochem 11, 1803-1815 (2010)、非特許文献2を参照されたい)、及び/又は本明細書の他の部分で説明する。
他の好適な標的ペプチド配列としては、GLPVCGETCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRN(カラタB1)等のシクロチド配列が挙げられる。
いくつかの実施の形態では、標的ペプチド配列中の1つ又は複数の残基は、更なる化学修飾を可能にすることができる反応性官能基を含み得る。好適な残基はNH2、COOH、OH及びSH等の側鎖連結基を有する側鎖を含有し得る。
環化シグナルは、好ましくは標的ペプチドに隣接してペプチド基質のC末端に位置する。環化シグナルはシアノバクテリアマクロシクラーゼの認識部位である。ペプチド基質中の環化シグナルの配列は、使用するシアノバクテリアマクロシクラーゼに応じて異なり得る。典型的には、環化シグナルが小残基−嵩高い残基−酸性残基の配列を含む。好適な環化シグナルとしては、AYD、AYE、SYD、AFD及びFAGが挙げられる。
一部の好ましい実施の形態では、シアノバクテリアマクロシクラーゼがPatGマクロシクラーゼであり、環化シグナルがAYDである。
いくつかの実施の形態では、環化シグナルは異種である、すなわち天然には標的ペプチド配列とは結びつかないものであってもよい。
環化シグナルは天然の環化シグナル又は合成若しくは修飾環化シグナルであり得る。修飾環化シグナルは、上記のように修飾シアノバクテリアマクロシクラーゼによって認識されることができる。
直鎖ペプチド基質は、ペプチドの環化に好適な条件下でシアノバクテリアマクロシクラーゼにより処理することができる。好適な条件は当業者に明らかである。一部の好ましい実施の形態では、条件は500mM NaCl及び/又はpH9を含み得る。例えば、直鎖ペプチド基質は500mM NaCl及び5%DMSO中、pH8でシアノバクテリアマクロシクラーゼにより処理することができる。
マクロシクラーゼが耐えられる最高の温度が、概して反応速度の増大をもたらすため好ましい。規定の一連の条件下で反応に最適な温度は実験により決定することができる。
いくつかの実施の形態では、直鎖ペプチド基質が例えば固体支持体に固定化され、シアノバクテリアマクロシクラーゼが溶液中で遊離していてもよい。これは例えば環状ペプチドの精製を容易にするうえで有用であり得る。
他の実施の形態では、直鎖ペプチド基質が溶液中で遊離し、シアノバクテリアマクロシクラーゼが例えばビーズ等の固体支持体に固定化されていてもよい。これは例えばマクロシクラーゼの再利用を容易にするうえで有用であり得る。
いくつかの実施の形態では、直鎖ペプチド基質を例えば下記のような化学合成又は組み換え手段によって作製し、シアノバクテリアマクロシクラーゼで直接処理することができる。これは例えば複素環を含有しない環状ペプチドを作製するうえで有用であり得る。
他の実施の形態では、直鎖ペプチド基質はプロペプチドから作製することができる。例えば、
(i)直鎖プロペプチドを準備すること、及び
(ii)上記直鎖プロペプチドを単離プロテアーゼで処理して直鎖ペプチド基質を作製すること、
を含む方法によって、直鎖ペプチド基質を準備することができる。
直鎖プロペプチドがプロテアーゼ認識部位によってプロ配列、例えばN末端リーダー配列に連結した直鎖ペプチド基質を含み得る。
いくつかの実施の形態では、プロテアーゼ認識部位がG(L/V)E(A/P)Sであり、プロテアーゼがPatAプロテアーゼ等のシアノバクテリアプロテアーゼであり得る。他の好適なプロテアーゼ認識部位としては、GLEAS、GVEPS、GVEPP、GVDAS、GVGAS、GAGAS、GAEAS、QVQAQ、QVEAQ、QVQAL、QVTAQ、QVTAH、QVTPH、GPGPS及びRVTVQが挙げられる。
シアノバクテリアプロテアーゼは、ペプチド鎖をプロテアーゼ認識部位で切断するシアノバクテリア由来の酵素である。
好適なシアノバクテリアプロテアーゼとしては、プロクロロン属由来のPatAプロテアーゼ(AAY21150.1 GI:62910837)、TruAプロテアーゼ(ACA04487.1 GI:167859094)、並びにリングビア属由来のプロテアーゼ、例えばZP_01623699.1 GI:119492363、ミクロキスティス属、例えばCAO86912.1 GI:159027542及びCAO82081.1 GI:158934368、ノストック・スポンギアエフォルメ種、例えばTenA(ACA04480.1 GI:167859086)、アナベナ属、例えばAcyA(ACK37888.2 GI:280987221)、オスキラトリア属、例えばZP_07111214.1 GI:300866524、トリコデスミウム属、例えばYP_722055.1 GI:113475994、ノドゥラリア属、例えばZP_01631559.1 GI:119512478、シアノセイス属、例えばYP_003900371.1 GI:307591572及びYP_002481258.1 GI:220905947、並びにアルスロスピラ属、例えばBAI93369.1 GI:291571097が挙げられる。他の好適なシアノバクテリアプロテアーゼは表5に示す。
シアノバクテリアプロテアーゼは上記の参照シアノバクテリアプロテアーゼ配列のいずれか1つのアミノ配列を含んでいても、又はその変異体であってもよい。例えば、シアノバクテリアプロテアーゼは配列番号2のアミノ配列を含む、又はその変異体であるPatAプロテアーゼであり得る。参照配列の変異体は本明細書の他の部分で説明する。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアプロテアーゼは修飾及び/又は異種プロテアーゼ認識部位を認識する修飾配列を含み得る。ペプチド基質中のプロテアーゼ配列及びプロテアーゼ認識部位は、それらが相補的であり、結合が起こるように修飾されていてもよい。
より好ましい実施の形態では、プロテアーゼ認識部位が異種プロテアーゼ認識部位を更に含み、プロテアーゼが異種プロテアーゼであってもよい。
例えば、異種プロテアーゼ認識部位がK残基又はR残基であり、プロテアーゼがトリプシンであってもよく、異種プロテアーゼ部位がYであり、プロテアーゼがキモトリプシンであってもよく、異種プロテアーゼ部位がLVPRGSであり、プロテアーゼがトロンビンであってもよく、異種プロテアーゼ部位がI(E/D)GRであり、プロテアーゼが因子Xaであってもよく、又は異種プロテアーゼ部位がENLYFQ(G/S)若しくはENLYFQであり、プロテアーゼがタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼであってもよい。他の好適な部位特異的プロテアーゼは当該技術分野で既知であり、残基選好性を有する任意の部位特異的エンドプロテアーゼを使用することができる。例えば、GluCはEの後で切断するため、異種プロテアーゼ認識部位中のK又はRをEで置き換えることでGluCによる切断が可能となる。
TEVプロテアーゼ、トリプシン及びキモトリプシン等の異種部位特異的プロテアーゼは当該技術分野で既知であり、商業的供給源から入手可能である。
シアノバクテリアプロテアーゼ認識部位は、シアノバクテリアヘテロシクラーゼの認識部位であってもよい。異種プロテアーゼ認識部位が存在する場合、下記のように標的ペプチド配列への複素環の導入を可能にするために、シアノバクテリアプロテアーゼ認識部位が保持されていてもよい。例えば、直鎖プロペプチドは配列GLEASK(ペプチド配列)又はGLEASENLYFQ(ペプチド配列)を含み得る。
複素環が標的ペプチド配列に導入されない実施の形態では、プロペプチドはシアノバクテリアプロテアーゼ認識部位を欠いていてもよい。
いくつかの実施の形態では、直鎖プロペプチドは、プロテアーゼ認識部位によって連結した1つ、2つ、3つ又はそれ以上のペプチド基質を含む。プロテアーゼでの直鎖プロペプチドの処理により1つ、2つ、3つ又はそれ以上の直鎖ペプチド基質がプロペプチドから放出される。直鎖プロペプチドにおける2つ、3つ又はそれ以上のペプチド基質の放出は同じであっても又は異なっていてもよい。
いくつかの実施の形態では、プロペプチドが固定化され、プロテアーゼが溶液中で遊離していてもよい。例えばこれは例えば環化前のペプチド基質の精製を容易にするうえで有用であり得る。
他の実施の形態では、プロペプチドが溶液中で遊離し、プロテアーゼが固定化されていてもよい。これは例えばプロテアーゼの再利用を容易にするうえで有用であり得る。
環化及び任意にタンパク質分解の前に、直鎖ペプチド基質又はプロペプチドを処理して、標的ペプチド配列中のアミノ酸残基を複素環化してもよい。例えば、
(i)1つ又は複数の複素環化可能なアミノ酸を含むプレプロペプチドを準備すること、及び
(ii)上記プレプロペプチドをシアノバクテリアヘテロシクラーゼで処理して複素環化可能なアミノ酸を複素環残基に変換し、それにより直鎖ペプチド基質又はプロペプチドを作製すること、
を含む方法によって、直鎖ペプチド基質又は直鎖プロペプチドを準備することができる。
複素環化可能なアミノ酸としては、システイン、セレノシステイン、テルロシステイン、トレオニン、セリン、2,3−ジアミノプロパン酸、並びにα位及びβ位に付加的なR基を有するその合成誘導体が挙げられる。
シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、直鎖プレプロペプチド中のシステイン残基をチアゾリンに、トレオニン/セリン残基をオキサゾリンに、セレノシステインをセレナゾリンに、テルロシステインをテルラゾリンに、及び/又はアミノアラニンをイミダゾリンに変換することができる。
複素環アミノ酸としては、プロリンが挙げられる。
シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、複素環化可能な残基を複素環に変換するシアノバクテリア由来の酵素である。シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、本明細書に記載のようにN末端リーダー配列及び/又はシアノバクテリアプロテアーゼ認識部位を認識することができる。
好適なシアノバクテリアヘテロシクラーゼとしては、プロクロロン属由来のPatDヘテロシクラーゼ(配列番号3;AAY21153.1 GI:6291084)又はTruDプロテアーゼ(配列番号4;ACA04490.1 GI:167859097)、及びノストック・スポンギアエフォルメ種由来のヘテロシクラーゼ、例えばTenD(ACA04483.1 GI:16785908)が挙げられる。他の好適なヘテロシクラーゼは表6に示される。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、複素環化される直鎖プレプロペプチド中の残基に応じて選択することができる。例えば、PatDを使用して直鎖プレプロペプチド中のCys残基、Thr残基及びSer残基を複素環化することができ、TruDを使用して直鎖プレプロペプチド中のCys残基を複素環化することができるが、Thr残基又はSer残基は複素環化されない。
シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、上記の参照シアノバクテリアヘテロシクラーゼ配列のいずれか1つのアミノ配列を含んでいてもよく、又はその変異体であってもよい。例えば、シアノバクテリアヘテロシクラーゼは、配列番号3若しくは配列番号4のアミノ配列又はその変異体を含むPatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼであり得る。参照アミノ酸配列の変異体は本明細書の他の部分で説明する。
いくつかの実施の形態では、プレプロペプチドはリーダー配列を含み得る。リーダー配列はN末端にあっても又はC末端にあってもよく、ヘテロシクラーゼによって認識される。N末端リーダー配列は、上記のように複素環化の後にプロテアーゼから除去することができる。
リーダー配列の選択は、用いられるヘテロシクラーゼによって決まる。好適なN末端リーダー配列としては、PatDヘテロシクラーゼ及びTruDヘテロシクラーゼによって認識されるPatE1−34又はPatE26−34が挙げられる。
リーダー配列は異種であってもよい。
他の実施の形態では、リーダー配列は存在しなくてもよい。
いくつかの実施の形態では、シアノバクテリアヘテロシクラーゼは認識ドメインを結合対の第1の成員で置き換えることによって修飾され得る。プレプロペプチド上のリーダー配列は、結合対の他の成員に置き換えることができる。好適な結合対は当該技術分野で既知であり、グルタチオン/グルタチオン結合タンパク質及びビオチン/ストレプトアビジンが挙げられる。例えば、プレプロペプチドがN末端グルタチオンを含み、シアノバクテリアヘテロシクラーゼがグルタチオン結合タンパク質ドメインを含んでいてもよい。
複素環化のためのプレプロペプチドは、ヘテロシクラーゼによって認識される本明細書に記載のシアノバクテリアプロテアーゼ認識部位を更に含み得る。
シアノバクテリアヘテロシクラーゼを作製する方法を下記により詳細に説明する。
プレプロペプチドは、その1つ又は複数の複素環化可能な残基を複素環化するのに好適な条件下でシアノバクテリアヘテロシクラーゼにより処理することができる。例えば、プレプロペプチドは常温の水溶液中、Mg2+及びATPの存在下でPatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼにより処理することができる。ヘテロシクラーゼが耐えられる最高の温度が、概して反応速度の増大をもたらすため好ましい。規定の一連の条件下で反応に最適な温度は実験により決定することができる。
いくつかの実施の形態では、プレプロペプチドが固体支持体に固定化され、シアノバクテリアヘテロシクラーゼが溶液中で遊離していてもよい。他の実施の形態では、直鎖プレプロペプチドが溶液中で遊離し、シアノバクテリアヘテロシクラーゼが固体支持体に固定化されていてもよい。
プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のチアゾリン、オキサゾリン、セレナゾリン、テルラゾリン及びイミダゾリン等の複素環残基を酸化に供して、標的ペプチド配列中の1つ又は複数の複素環残基を酸化してもよい。
直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のチアゾリン(Thn)残基は、チアゾール(Thz)へと酸化することができ、直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のオキサゾリン残基(Oxn)は、オキサゾール(Oxz)へと酸化することができ、直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のセレナゾリン(Sen)は、セレナゾール(Sez)へと酸化することができ、直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のテルラゾリン(Ten)は、テルラゾール(Tez)へと酸化することができ、直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質又は環状ペプチド中のイミダゾリン(Imn)は、イミダゾール(Imz)へと酸化することができる。
細菌オキシダーゼ、シアノバクテリアオキシダーゼ若しくは他の酵素オキシダーゼ、又は化学酸化剤を用いることができる。
いくつかの実施の形態では、プレプロペプチドを複素環化後にシアノバクテリアオキシダーゼ若しくは他の酵素オキシダーゼ又は化学酸化剤で処理することができる。標的ペプチド配列中の1つ又は複数の複素環残基を酸化するために処理を複素環化の直後に行ってもよく、又は酸化を異なる段階で行ってもよい。例えば、大環状化後に環状ペプチドをオキシダーゼ又は化学酸化剤で処理してもよい。
シアノバクテリアオキシダーゼは、1つ又は複数の複素環アミノ酸残基を酸化するシアノバクテリアに由来する酵素である。
シアノバクテリアオキシダーゼは、本明細書に記載の全ての複素環残基又はその組合せ、例えばオキサゾリン及びチアゾリン、又はチアゾリンのみを酸化することができる。
好適なシアノバクテリアオキシダーゼとしては、プロクロロン属に由来するPatGオキシダーゼ(配列番号1の残基1〜491)が挙げられる。
シアノバクテリアオキシダーゼは上記の参照シアノバクテリアオキシダーゼ配列のいずれか1つのアミノ配列を含んでいてもよく、又はその変異体であってもよい。例えば、シアノバクテリアオキシダーゼは、配列番号1の残基1〜491のアミノ配列又はその断片、対立遺伝子若しくは変異体を含むPatGオキシダーゼであり得る。
いくつかの実施の形態では、細菌オキシダーゼを用いて1つ又は複数の複素環アミノ酸残基を酸化することができる。好適な細菌オキシダーゼは当該技術分野で既知であり、チアゾール/オキサゾール修飾ミクロシンクラスターに由来するBcerBオキシダーゼが挙げられる(Melby et al J. Am. Chem. Soc, 2012, 134, 5309)。
参照配列の断片又は変異体である配列を下記に説明する。
いくつかの実施の形態では、プレプロペプチドをフラビンモノヌクレオチド(FMN)の存在下でシアノバクテリアオキシダーゼにより処理してもよい。
いくつかの実施の形態では、直鎖プレプロペプチドが固体支持体に固定化され、シアノバクテリアオキシダーゼが溶液中で遊離していてもよく、又は直鎖プレプロペプチドが溶液中で遊離し、シアノバクテリアオキシダーゼが固体支持体に固定化されていてもよい。
代替的には、複素環化の後、プレプロペプチド、プロペプチド、ペプチド基質又は環状ペプチドをMnO等の化学酸化剤で処理することができる。この酸化剤による処理は複素環化の直後、又は異なる段階で、例えば大環状化の後に行うことができる。好適な酸化条件は日常的な実験によって決定することができる。例えば、MnOを用いて環状ペプチドをジクロロメタン中、28℃で3日間酸化し、複素環を酸化することができる。
任意に、本発明の方法は、チアゾリンに隣接する標的ペプチド配列中の1つ又は複数のアミノ酸がD−エピマーに変換されるようにプレプロペプチド、プロペプチド又はペプチド基質をエピメラーゼで処理することを更に含み得る。
代替的には、チアゾリン残基に隣接する標的ペプチド配列中のアミノ酸のエピマー化は自発的であり、エピメラーゼによる処理を必要としないものであってもよい(非特許文献10)。
直鎖プレプロペプチド、プロペプチド、ペプチド基質及び/又は環状ペプチドは直接的又は間接的にタグに連結し得る。タグは検出及び精製に有用であり得る。好適なタグを下記に説明する。
いくつかの実施の形態では、直鎖ペプチド又は環状ペプチド、例えば大環状ペプチドを上記の酵素工程の1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上を含む方法によって作製することができる。例えば、本明細書に記載の環状ペプチドを作製する方法は、
プレプロペプチドを準備すること、
上記プレプロペプチドをシアノバクテリアヘテロシクラーゼで処理すること、
上記プロペプチドをプロテアーゼで処理して直鎖ペプチド基質を作製すること、及び
上記ペプチドをシアノバクテリアマクロシクラーゼで処理して環状ペプチドを作製すること、
を含み得る。
プロペプチド、ペプチド基質又は環状ペプチドをシアノバクテリアオキシダーゼ又は化学酸化剤で処理して、標的ペプチド配列中の複素環を酸化することができる。
上記の方法は1mg/Lを超える環状ペプチドの作製を可能にし得る。例えば、シアノバクテリアマクロシクラーゼによる環化後の反応溶液中の環状ペプチドの力価は500mg/L超又は1g/Lを超え得る。いくつかの実施の形態では、上記の方法を用いて本明細書に記載の環状ペプチドのいずれか1つを作製することができる。
上記の方法を用いた環状ペプチドの作製の後、環状ペプチドを更に処理してもよい。
環状ペプチドを二量体形態で作製し、還元して二量体ペプチドを単量体に変換することができる。好適な還元剤及び条件は当該技術分野で既知であり、TCEP、DTT及びβ−メルカプトエタノールが挙げられる。
環状ペプチドをプレニル化及び/又はゲラニル化することができる。例えば、環状ペプチドをシアノバクテリアプレニラーゼで処理してもよい。
シアノバクテリアプレニラーゼは、ファルネシル又はゲラニル−ゲラニルイソプレノイドを本明細書に記載の環状ペプチド又はプレプロペプチド、プロペプチド若しくはペプチド前駆体に転移させる。
好適なシアノバクテリアプレニラーゼとしては、プロクロロン属由来のPatFプレニラーゼ(GI:62910842 AAY21155.1、配列番号5)、GI:167859100 ACA04493.1(TruF2)及びGI:167859099 ACA04492.1(TruF1)、ミクロキスティス属由来のGI:159027547 CAO86917.1、GI:158934373 CAO82086.1、GI:389788445 CCI15906.1、GI:389678155 CCH92965.1(TenF)、GI:166362791 YP_001655064.1、GI:389831610 CCI25499.1、GI:389826377 CCI23120.1、GI:389826383 CCI23131.1、GI:389832530 CCI23767.1、GI:389716343 CCH99420.1、GI:389882386 CCI37135.1、GI:389720299 CCH95988.1、GI:389732896 CCI03253.1、GI:389734240 CCI02071.1、GI:389801748 CCI19127.1及びGI:389802082 CCI18842.1、ノストック・スポンギアエフォルメ種由来のGI:167859091 ACA04485.1(TenF)、リングビア属由来のGI:119492371 ZP_01623707.1、アナベナ属由来のGI:280987227 ADA00390.1(AcyF)、アルスロスピラ属由来のGI:376002283 ZP_09780119.1、GI:284054206 ZP_06384416.1、プランクトスリックス属由来のGI:332002616 AED99429.1、オスキラトリア属由来のGI:300866527 ZP_07111217.1、並びにシアノセイス属由来のGI:220905949 YP_002481260.1が挙げられる。
シアノバクテリアプレニラーゼは上記の参照シアノバクテリアプレニラーゼ配列のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はその変異体であってもよい。例えば、シアノバクテリアプレニラーゼは、配列番号5のアミノ酸配列又はその断片、対立遺伝子若しくは変異体を含むPatFプレニラーゼであり得る。
環状ペプチドを更なる化学修飾に供してもよい。好適な修飾としては、異種部分、例えばOH、NH2、COOH、SH等の天然側基、又はカップリング反応及びクリックケミストリーに好適な非天然側基を含有する部分による誘導体化が挙げられる。
クリックケミストリーは、トリアゾール環を形成する、一方がアジド基を含有し、他方が末端アセチレン基を含有する2つの成分間のCu(I)触媒カップリングを含む。アジド基及びアルキン基が他のカップリング手順の条件に対して不活性であり、ペプチド中に見られる他の官能基がクリックケミストリー条件に対して不活性であるため、クリックケミストリーは穏和な条件下での環状ペプチドへの殆どのリンカーの付着の制御を可能にする。例えば、環状ペプチドの非環化システイン残基は、チオール特異的反応性基を一方の端に含有し(例えばヨードアセトアミド、マレイミド又はフェニルチオスルホネート)、アジド又はアセチレンを他方の端に含有する二官能性試薬と反応し得る。クリックケミストリーを用いて標識基を末端アジド又はアセチレンに付着させることができる。例えば、アセチレン基又はアジド基をリンカーの一方の端に有し、キレート(金属同位元素)又は脱離基(ハロゲン標識)を他方の端に有する第2のリンカー(Baskin, J. (2007) PNAS 104(43)16793-97)を用いることができる。
環状ペプチドを検出可能な標識で標識してもよい。
検出可能な標識は分子イメージング法によってin vivoで検出可能な任意の分子、原子、イオン又は基であり得る。好適な検出可能な標識としては、金属、放射性同位元素及び放射線不透過剤(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素及びリン含有化合物)、放射線透過剤、造影剤並びに蛍光色素が挙げられ得る。
検出可能な標識の選択は、用いられる分子イメージング法によって決まる。用いることのできる分子イメージング法としては、X線撮影法、蛍光透視法、蛍光イメージング、高分解能超音波イメージング、バイオルミネセンスイメージング、核磁気共鳴画像法(MRI)及び核イメージング、例えばポジトロン断層法(PET)及び単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)等のシンチグラフィー法が挙げられる。
in vivo蛍光イメージング法は、使用される特定の検出可能な蛍光標識に適切な発光スペクトル及び吸光度スペクトルを用いた画像の作成を含む。画像は従来の技法によって可視化することができ、従来の技法に含まれる蛍光イメージング法としては、蛍光反射イメージング(FRI)、蛍光分子トモグラフィー(FMT)、ハイパースペクトル3D蛍光イメージング(Guido Zavattini et al. Phys. Med. Biol. 51:2029, 2006)及び拡散光スペクトロスコピー(Luker & Luker. J Nucl Med. 49(1):1, 2008)を挙げることができる。
好適な蛍光検出可能な標識としては、フルオレセイン、フィコエリトリン、ユーロピウム、TruRed、アロフィコシアニン(APC)、PerCP、リッサミン、ローダミン、BX−ローダミン、TRITC、BODIPY−FL、FluorX、レッド613、R−フィコエリトリン(PE)、NBD、ルシファーイエロー、カスケードブルー、メトキシクマリン、アミノクマリン、テキサスレッド、ヒドロキシクマリン、Alexa Fluor 色素(Molecular Probes)、例えばAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660及びAlexa Fluor 700、スルホネートシアニン色素(AP Biotech)、例えばCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7、IRD41 IRD700(Li-Cor, Inc.)、NIR−1(Dejindom、Japan)、La Jolla Blue(Diatron)、DyLight 405、488、549、633、649、680及び800反応性色素(Pierce/Thermo Fisher Scientific Inc)又はLI−COR 色素、例えば、IRDye (LI-COR Biosciences)が挙げられる。
他の好適な蛍光検出可能な標識としては、テルビウム及びユーロピウム等のランタニドイオンが挙げられる。ランタニドイオンは、本明細書の他の部分で説明されるようにキレートを用いてシナプトタグミンポリペプチドに付着させることができる。
他の好適な蛍光検出可能な標識としては、量子ドット(例えばQdot、Invitrogen)が挙げられる。タンパク質を量子ドットで標識する技法は当該技術分野で既知である(Michalet, X. et al. Science 307:538, 2005、Alivisatos, P. Nat Biotechnol 22:47-52, 2004)。
核磁気共鳴画像ベースの技法では、独自の化学環境における水プロトンの相対緩和速度に基づいて画像を作成する。好適なMRI法はGadian, D. 'NMR and its applications to living systems'. (Oxford Univ. Press, 1995, 2ndedition)により詳細に記載されている。核磁気共鳴画像法としては、従来の核磁気共鳴画像法(MRI)、磁化移動画像法(MTI)、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)、拡散強調画像法(DWI)及び機能的MR画像法(fMRI)を挙げることができる(Rovaris et al. (2001) JNeurol Sci 186 Suppl 1 : S3-9、Pomper & Port (2000) Magn Reson Imaging Clin N Am 8: 691-713、Kean & Smith, (1986) Magnetic Resonance Imaging: Principles and Applications, Williams and Wilkins, Baltimore, Md)。
核磁気共鳴画像法(MRI)標識としての使用に好適な標識としては、常磁性又は超常磁性イオン、酸化鉄粒子及び水溶性造影剤を挙げることができる。超常磁性及び常磁性イオンとしては、鉄、銅、マンガン、クロム、エルビウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、ホルミウム及びガドリニウム等の遷移元素、ランタニド元素及びアクチニド元素を挙げることができる。好ましい検出可能な常磁性標識としては、ガドリニウムが挙げられる。
環状ペプチドを、例えば抗体介在性薬物療法における使用のために抗体又は抗体の断片若しくは誘導体等の抗体分子に付着させることができる。環状ペプチドと抗体とのコンジュゲーションに好適な技法は当該技術分野で既知である。
本明細書に記載のように作製された環状ペプチドは、治療薬、ナノテクノロジー用途及び光学/電子又は収縮性材料に有用であり得る。
単離酵素又は他のタンパク質はそれが天然に生じる、又はそれが組換えにより作製された環境とは異なる物理的環境に存在する。例えば、単離ペプチドはそれが天然に生じる複雑な細胞環境に対して実質的に単離され得る。純度の絶対レベルは重要ではなく、当業者はタンパク質を供する用途に応じて適切な純度レベルを容易に決定することができる。
異種要素はその天然環境で対象の特徴部とは結びつかない又は連結しない要素である。すなわち異種要素との結びつきは人工的なものであり、要素は人間の介入によってのみ対象の特徴部と結びつく又は連結する。
1つ又は複数の異種アミノ酸、例えば異種ペプチド又は異種ポリペプチド配列は、直鎖ペプチド基質、プロペプチド、プレプロペプチド、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ又は本明細書で述べる他のタンパク質と結合又は融合することができる。例えば、プレプロペプチドは1つ又は複数の異種アミノ酸に連結又は融合した上記のようなプレプロペプチドを含み得る。1つ又は複数の異種アミノ酸は、シアノバクテリア以外の供給源に由来する配列を含み得る。
いくつかの実施の形態では、直鎖ペプチド基質、プロペプチド、プレプロペプチド、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ又は本明細書で述べる他のタンパク質は、精製タグを有する融合タンパク質として発現させることができる。融合タンパク質は酵素配列と精製タグとの間にプロテアーゼ認識部位を含むのが好ましい。発現の後、融合タンパク質を、精製タグに結合する固定化された作用物質を用いた親和性クロマトグラフィーによって単離することができる。
精製タグは、特定の結合対の一成員を形成する異種アミノ酸配列である。精製タグを含有するポリペプチドは、ポリペプチドへの特定の結合対の他の成員の結合によって検出、単離及び/又は精製することができる。一部の好ましい実施の形態では、タグ配列は抗体分子が結合するエピトープを形成し得る。
様々な好適な精製タグが当該技術分野で既知であり、例えばMRGS(H)、DYKDDDDK(FLAG)、T7−、S−(KETAAAKFERQHMDS)、poly−Arg(R5−6)、poly−His(H2−10)、poly−Cys(C)poly−Phe(F11)poly−Asp(D5−16)、Strept−tag II(WSHPQFEK)、c−myc(EQKLISEEDL)、インフルエンザ−HAタグ((Murray, P. J. et al (1995) Anal Biochem 229, 170-9)、Glu−Glu−Pheタグ(Stammers, D. K. et al (1991) FEBS Lett 283, 298-302)、SUMO(Marblestone et al Protein Sci. 2006 January; 15(1): 182-189)、Cherryタグ(Eurogentec)、Tag.100(Qiagen;哺乳動物MAPキナーゼ2に由来する12aaタグ)、Cruzタグ09(MKAEFRRQESDR、Santa Cruz Biotechnology Inc.)及びCruzタグ22(MRDALDRLDRLA、Santa Cruz Biotechnology Inc.)が挙げられる。既知のタグ配列はTerpe (2003) Appl. Microbiol. Biotechnol. 60 523-533に概説されている。精製後の除去を容易にするためにタグ配列をプロテアーゼ認識部位、例えばTEVプロテアーゼ部位を介して標的タンパク質に連結することができる。
一部の好ましい実施の形態では、精製タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼである。発現の後に、直鎖ペプチド基質、プロペプチド、プレプロペプチド、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ又は本明細書で述べる他のタンパク質及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼを含む融合タンパク質を、固定化グルタチオンを用いた親和性クロマトグラフィーによって単離することができる(逆の場合も同じである)。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質の精製は当該技術分野で既知である。
他の好ましい実施の形態では、精製タグは低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タグ又はHis−SUMOタグである。発現の後、直鎖ペプチド基質、プロペプチド、プレプロペプチド、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ又は本明細書で述べる他のタンパク質及びSUMO又はHis−SUMOタグを含む融合タンパク質を、固定化グルタチオンを用いた親和性クロマトグラフィーによって単離することができる(逆の場合も同じである)。SUMOタグ付き融合タンパク質の精製は当該技術分野で既知である。
単離の後、融合タンパク質をタンパク質分解によって切断し、直鎖ペプチド基質、プロペプチド、プレプロペプチド、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ又は本明細書で述べる他のタンパク質を作製することができる。
本明細書に記載の直鎖ペプチド基質、プロペプチド及びプレプロペプチドは、化学合成によって完全に又は部分的に生成することができる。例えば、ペプチド及びポリペプチドは液相合成法又は固相合成法を用いて、溶液中で、又は固相化学、液相化学及び溶液化学の任意の組合せによって、例えば初めにそれぞれのペプチド部分を完成させ、続いて必要に応じて及び適切な場合に、存在する任意の保護基を除去した後、それぞれの炭酸若しくはスルホン酸又はその反応性誘導体の反応により残基Xを導入することによって合成することができる。
ペプチド及びポリペプチドの化学合成は当該技術分野で既知である(J.M. Stewart and J.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984)、M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984)、J. H. Jones, The Chemical Synthesis of Peptides. Oxford University Press, Oxford 1991、Applied Biosystems 430A Users Manual, ABI Inc., Foster City, California、G. A. Grant, (Ed.) Synthetic Peptides, A User’s Guide. W. H. Freeman & Co., New York 1992, E. Atherton and R.C. Sheppard, Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach. IRL Press 1989、及びG.B. Fields, (Ed.) Solid-Phase Peptide Synthesis (Methods in Enzymology Vol. 289). Academic Press, New York and London 1997)。
本明細書に記載の直鎖ペプチド基質、プロペプチド及びプレプロペプチドは、完全に又は部分的に組み換え法によって生成することができる。例えば、本明細書に記載の直鎖ペプチド基質、プロペプチド及びプレプロペプチドをコードする核酸を宿主細胞において発現させ、発現ポリペプチドを細胞培養物から単離及び/又は精製することができる。
マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ及び上述の他の酵素は完全に又は部分的に組み換え法によって生成することができる。例えば、酵素をコードする核酸を宿主細胞において発現させ、発現ポリペプチドを細胞培養物から単離及び/又は精製することができる。酵素を大腸菌(E. coli)における発現にコドンを最適化した核酸から発現させるのが好ましい。
上記の核酸配列及び構築物は発現ベクターに含まれ得る。プロモーター配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含有する好適なベクターを選択又は構築することができる。ベクターが宿主細胞における核酸の発現を誘導するのに適切な調節配列を含有するのが好ましい。発現系において異種核酸コード配列の発現を誘導するのに好適な調節配列は当該技術分野で既知であり、構成的プロモーター、例えばCMV又はSV40等のウイルスプロモーター、及びTet−on制御プロモーター等の誘導プロモーターが挙げられる。ベクターは、大腸菌及び/又は真核細胞等の細菌宿主におけるその選択及び複製及び発現を可能にする複製起点及び選択可能なマーカー等の配列を含んでいてもよい。
ベクターは必要に応じてプラスミド、ウイルスベクター、例えばファージ又はファージミドであってもよい。更なる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition, Russell et al., 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。細胞培養における組み換えポリペプチドの発現並びにその後の単離及び精製に関する多くの技法及びプロトコルが当該技術分野で既知である(例えば、Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds. John Wiley & Sons, 1992; Recombinant Gene Expression Protocols Ed RS Tuan (Mar 1997) Humana Press Incを参照されたい)。
いくつかの実施の形態では、マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ及び上述の他の酵素を、上記のように精製タグを有する融合タンパク質として発現させることができる。
マクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ、プロテアーゼ及び上述の他の酵素、並びに直鎖ペプチド基質、プロペプチド及びプレプロペプチドを固体支持体に固定化させてもよい。
固体支持体は、ペプチド又はタンパク質を固定化することができる表面を提示する不溶性の非ゼラチン質である。好適な支持体の例としては、スライドガラス、マイクロウェル、膜又はビーズが挙げられる。支持体は例えばプレート、試験管、ビーズ、ボール、フィルター、織物、ポリマー又は膜を含む微粒子形態又は固体形態であり得る。ペプチド又はタンパク質を例えば不活性ポリマー、96ウェルプレート、他のデバイス、装置又は材料に固定することができる。固体支持体表面へのペプチド及びタンパク質の固定化は当該技術分野で既知である。
上記のように、シアノバクテリアマクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ及びプロテアーゼは参照アミノ酸配列の変異体又は断片であるアミノ酸配列を含み得る。
参照アミノ酸配列の変異体は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
シアノバクテリアマクロシクラーゼ、オキシダーゼ、ヘテロシクラーゼ及びプロテアーゼに好適な参照アミノ酸配列は上記に提示している。
アミノ酸配列同一性は概して、アルゴリズムGAP(GCG Wisconsin Package、Accelrys、San Diego CA)を参照して規定される。GAPは、マッチの数を最大限に高め、ギャップの数を最小限に抑えるNeedleman & Wunschアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))を用いて2つの完全配列をアラインメントするものである。概して、ギャップ生成ペナルティ=12及びギャップ伸長ペナルティ=4のデフォルトパラメーターが用いられる。GAPの使用が好ましいが、他のアルゴリズム、例えばBLAST又はTBLASTN(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 405-410の方法を用いる)、FASTA(Pearson and Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448の方法を用いる)、又はSmith−Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman (1981) J. Mol Biol. 147: 195-197)を、概してデフォルトパラメーターを用いて使用することができる。
特定のアミノ酸配列の変異体は1個のアミノ酸、2個、3個、4個、5個〜10個、10個〜20個又は20個〜30個のアミノ酸の挿入、付加、置換又は欠失により所与の配列とは異なっていてもよい。いくつかの実施の形態では、変異体配列は1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の残基が挿入、欠失又は置換された参照配列を含み得る。例えば、最大15個、最大20個、最大30個、最大40個、最大50個又は最大60個の残基が挿入、欠失又は置換され得る。
断片は完全長未満のアミノ酸配列を含有するが、完全長タンパク質配列の活性を保持する切断タンパク質である。断片は完全長配列に由来する少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも200個のアミノ酸又は少なくとも300個の連続アミノ酸を含み得る。
本明細書に記載の方法は、生物活性又は他の活性についての環状ペプチドのスクリーニングに有用であり得る。
直鎖ペプチド基質、直鎖プレプロペプチド及び/又は直鎖プロペプチドはビーズに固定化することができる。いくつかの実施の形態では、環化シグナルを含まない参照直鎖ペプチド基質、直鎖プレプロペプチド及び/又は直鎖プロペプチドが同じビーズに固定化されていてもよい。
ビーズは、直鎖ペプチドが環化し、環状ペプチドがビーズから放出され得るが、環化シグナルを欠く参照ペプチド基質が付着したままであるように本明細書に記載のシアノバクテリアマクロシクラーゼで処理することができる。
次いで、放出された環状ペプチドを単離し、生物活性についてスクリーニングすることができる。
環状ペプチドが生物活性を示すことが判明した場合、環状ペプチドが放出されたビーズを特定し、参照ペプチド基質をシークエンシングするか又は他の方法で分析し、生物活性のある環状ペプチドの特性化を行うことができる。
本明細書に記載の方法は、環状ペプチドのライブラリーの作成及びスクリーニングにも有用であり得る。環状ペプチドライブラリーをスクリーニングする方法は、
(i)ビーズに付着した多様な標的ペプチドの集団を準備することであって、各々のビーズに標的ペプチドの第1及び第2のコピーが付着し、該第2のコピーではなく第1のコピーが環化シグナルを介してビーズに付着すること、
(ii)上記ビーズをPatGmacマクロシクラーゼで処理して標的ペプチドの第1のコピーを環状ペプチドに変換し、環状ペプチドをビーズから放出させること、
(iii)環状ペプチドの活性についてスクリーニングすること、
(iv)活性のある環状ペプチドを特定すること、
(v)環状ペプチドが放出されたビーズを特定すること、及び
(vi)ビーズに付着した標的ペプチドの第2のコピーをシークエンシングすること、
を含み得る。
環状ペプチドが放出されたビーズを特定することができるように、多様な標的ペプチドの集団を空間的に、例えば1つ又は複数のマルチウェルプレート内に配列することができる。例えば、マルチウェルプレートの個々のウェルの各々が標的ペプチドの均質集団を含有し得る。
スクリーニングされる環状ペプチドは、1個、2個、3個又はそれ以上の複素環アミノ酸残基を含有し得る。例えば、上記のスクリーニング方法の工程(i)は、
上記標的ペプチドをシアノバクテリアヘテロシクラーゼで処理して標的ペプチド中の複素環化可能な残基を環状残基へと変換すること、及び
任意に、標的ペプチドをシアノバクテリアオキシダーゼで更に処理してその環状残基を酸化すること、
を更に含み得る。
本発明の他の態様は、環状ペプチドの作製に使用される本明細書に記載のペプチド基質、及び環状ペプチドライブラリーの作成に使用される多様なペプチド基質の集団を提供する。
ペプチド基質は、N末端プロテアーゼ認識部位及びC末端環化シグナルを有する標的ペプチド配列を含み得る。
プロテアーゼ認識部位及び/又は環化シグナルは標的配列に対して異種であってもよい。プロテアーゼ認識部位がトリプシン認識部位又はキモトリプシン認識部位であるのが好ましい。
ペプチド基質はN末端リーダー配列又はN末端結合部分を更に含み得る。
いくつかの実施の形態では、ペプチド基質は直接的又は間接的にN末端タグ及び/又はC末端タグに連結し得る。
いくつかの実施の形態では、ペプチド基質をビーズ等の固体支持体に固定化してもよい。上記のように、標的ペプチド配列の参照コピーを環化シグナルなしに固体支持体に固定化してもよい。
集団は集団内の標的ペプチド配列が多様な上記のペプチド基質を含み得る。例えば、標的ペプチド配列中の1つ、2つ、3つ、4つ若しくはそれ以上、又は全ての位置が多様性を示し得る。すなわち、集団の異なる成員が或る位置で異なる残基を示し得る。
集団内の環化シグナルに隣接するペプチド中の残基が、上記のようにPro、複素環、N−Me残基又は正確な配座特性を有する他の人工残基であるのが好ましい。
好適な直鎖ペプチド基質は上記により詳細に説明されている。
本発明の他の態様は、環状ペプチド及びその集団の作製に使用される材料、試薬及びキット及び試薬、並びにかかる環状ペプチドの例えばスクリーニング法における使用を提供する。
材料は、上記の単離プレプロペプチド、プロペプチド、ペプチド基質、並びに組み換えマクロシクラーゼ、プロテアーゼ、オキシダーゼ及びヘテロシクラーゼのそれぞれ又は組合せであり得る。試薬を固体支持体に固定化してもよい。
キットは上記のようなペプチド基質又は基質のライブラリーを含み得る。例えば、キットは、
個々のウェルの各々がビーズに付着した標的ペプチドの均質集団を含有し、
各々のビーズに該標的ペプチドの第1及び第2のコピーが付着し、該第2のコピーではなく第1のコピーが環化シグナルを介してビーズに付着し、
異なるウェルで標的ペプチドの配列が異なる、
マルチウェルプレートを含み得る。
キットは上記の方法に使用される単離酵素調製物を更に含み得る。
本発明の他の態様及び実施の形態により、「含む(comprising)」という用語を「からなる(consisting of)」という用語に置き換えた上記の態様及び実施の形態、及び「含む(comprising)」という用語を「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に置き換えた上記の態様及び実施の形態が提供される。
本発明の様々な更なる態様及び実施の形態が本開示を鑑みて当業者に明らかである。
本明細書で言及される全ての文献及びデータベースエントリは、その全体が全ての目的で引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
本明細書に使用される「及び/又は」は、一方を含む又は含まない2つの規定の特徴又は構成要素の具体的な開示とみなすものとする。例えば、「A及び/又はB」は、各々が本明細書に個別に提示されるかのように(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBの各々の具体的な開示とみなすものとする。
文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、上述の特徴の説明及び定義は本発明の任意の特定の態様又は実施の形態に限定されず、記載される本発明の全ての態様及び実施の形態に等しく適用される。このため、本発明で使用される上述の特徴は全ての組合せ及び順列で開示される。
ここで、本発明の或る特定の態様及び実施形態を、本明細書に記載の図面及び表を例とし、参照して説明する。
LC−MSによって決定される種々の緩衝剤及び温度でのPatGmac及びVGAGIGFPAYDGの相対反応速度を示す図である。 LC−MSによって決定される直鎖生成物及び大環状化生成物のPatGmac野生型及びPatGmac K598DでプロセシングしたVGAGIGFPAYRGのイオンカウントを示す図である。 ペプチド基質VGAGIGFPAYRGの大環状化のLC−MSを示す図である。 パテラミド大環状化を示す図である。図4(a)は、N末端リーダー配列に続く2つの8残基カセットと、C末端マクロシクラーゼ認識シグナルAYDGとからなるPatEプレプロペプチドを示す。PatGの大環状化ドメインはプレプロペプチド1つ当たり2つの環状ペプチドの形成を触媒する(破線)。図4(b)は、PatGmacがP1位に複素環又はプロリン(Zで表される)、及びP1’位〜P4’位にAYDGモチーフをそれぞれ必要とすることを示す。付加的なEがP5’に見られることが多いが、その必要はない。図4(c)は、この研究に使用される試験基質が、質量が716.375Daの直鎖ペプチド(曲線)又は質量が18Da軽い大員環(八角形)のいずれかをもたらし得ることを示す。 大環状化PatGmac野生型による大環状化反応のLC−MSを示す図であり、直鎖生成物を八角形及び曲線のそれぞれで示す。観測質量と算出質量との誤差を[M+H]種及び[M+Na]種の下に示す。 図5に従うPatGmacΔmによる大環状化反応のLC−MSを示す図である。 図5に従うPatGmac K594Dによる大環状化反応のLC−MSを示す図である。 PatGmacと基質との間の安定なアシル−酵素中間体(AEI)の存在を示すPatGmacによる大環状化反応のLC−MSを示す図である。 大環状化反応のMS分析において決定されるシクロ[VGAGIGFP]の断片化パターンを示す図である。 PatGmacΔ1(i)、PatGmac K598D(ii)及びPatGmac三重突然変異体R589D K594D K598D(iii)による大環状化反応のLC−MSを示す図である。直鎖生成物のみが観察される(曲線)。観測質量と算出質量との誤差を[M+H]種の下に示す。 改変PatEプレプロペプチド(PatE2)を示す図である。 PatE2のin vitro複素環化に関するデータを示す図である。PatD反応については、3つの複素環しか有しない種が独自の特性を有する可能性があり、HPLCによって4つの複素環を有する種から分離することができることに留意されたい。 PatE2とTruDとのインキュベーション後の水の喪失を示す図である。図13Aは複素環化前の改変リシン残基を有するPatEを示し、図13bは複素環化後のPatE2を示す。 複素環化反応の完了後に作成されるS200ゲル濾過トレースを示す図である。 トリプシンによるN末端切断及びTruDによる複素環化後のPatE2のLC−MSを示す図である。 ペプチド基質ITACITFCから作製されるパテラミド(シクロ(I(MxOxn)A(Thn)I(MeOxn)F(Thn))のLCT−ESI MSデータを示す図である。データから最終生成物が4つの複素環を有し、大環状化する(期待質量781Da)ことが確認される。776Daの種は酸化生成物である。 提唱される大環状化の機構を示す図である。(a)AYDGが活性部位に結合したままのアシル−酵素中間体のモデル。(b)アシル−酵素中間体は基質と平衡状態にある。PatGmacにおいては基質のアミノ末端が活性部位に入り、AYDGに置き換わり、大環状化をもたらす。AYDGの結合を破壊する突然変異は、水によって加水分解されるため直鎖生成物を生じる。入り込んだアミノ末端を脱プロトン化するHisの役割は推測である。 PatG大環状化を含む2つのin vitroシステムを示す図である。(1)全ての酵素にタグ付けすることにより、それらを各工程の終了時に単純に除去する。(2)C末端タグ付けPatEを使用することによりPatA切断ペプチドをビーズに担持し、PatGmacを可溶性酵素として添加する。どちらのアプローチも利点及び欠点を有する。第1のアプローチは貴重な酵素を回収し、過剰に使用することを可能にするが、生成物の精製が必要となる。第2のアプローチは、終了時に溶液中に大員環及びPatGしか存在しないことから精製を単純化し、更にはビーズ上の基質の化学修飾がはるかに容易である。欠点はコスト効率のよいマクロシクラーゼ酵素の回収が不可能であり得ること、及び結合工程中間プロセス(モニタリングの必要がある)の導入である。 シクロ−(ITF(Thn)ITA(Thn))を生じるヘテロシクラーゼTruD及びマクロシクラーゼPatGで処理したPatEペプチド中のカセットITFCITACの考え得るMS断片化経路を示す図である。分子イオン及び断片の正確な質量は、提唱される構造及び表3に示されるMSデータと一致する。 PatEペプチド中のカセットITVCITVCをヘテロシクラーゼPatD及びマクロシクラーゼPatGで処理する場合に生じる精製生成物(シクロ−I(MxOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn))のH NMRを示す図である。このH NMRと天然に得られる物質のH NMRとの比較及び2D NMRスペクトルの分析によって構造を確認した(表8)。 同様にPatEペプチド中のカセットITACITFCをヘテロシクラーゼTruD及びマクロシクラーゼPatGで処理する場合に生じる精製生成物(シクロ−(ITA(Thn)ITF(Thn)))のH NMRを示す図である。2D NMRデータの分析によって構造を検証した(表7)。 パテラミドA(1)及びパテラミドC(2)の生合成経路を示す図である。71アミノ酸構造遺伝子産物(PatEプレプロペプチド)をリボソーム合成する。テーラリング酵素は、PatEプレプロペプチドのN末端リーダー配列(PatE1−34、イタリック体)及び開始/停止環化シグナルを認識する。下流の配列(PatE42−71)中の4つのシステイン残基、3つのトレオニン残基及び1つのセリン残基(ボールド体)は、チアゾール及びオキサゾリン複素環へと翻訳後修飾される。切断及び大環状化によりパテラミドA(1)及びパテラミドC(2)が形成される。 PatEペプチド中のカセットITVCITVCをヘテロシクラーゼTruD、トリプシン及びマクロシクラーゼPatGmacで処理する場合に生じる大環状化生成物(シクロ−(ITV(Thn)ITV(Thn))のLC−MSを示す図である。 PatEペプチド中のカセットITACITFCをヘテロシクラーゼTruD、トリプシン及びマクロシクラーゼPatGmacで処理する場合に生じる大環状化生成物(シクロ−(ITA(Thn)ITF(Thn))のLC−MSを示す図である。 シクロ−I(MxOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn)の酸化を示す図である。 ペプチド基質ITVCITVCから生じたシクロ−I(MxOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn)(還元型)及びシクロ−I(MxOxz)V(Thz)I(MeOxz)V(Thz)(酸化型)、並びにリッソクリヌム・パテラから単離されたアシジアシクラミド及び100%MeOHの遠紫外線CDスペクトルを示す図である。シクロ−I(MxOxz)V(Thz)I(MeOxz)V(Thz)のスペクトルがアシジアシクラミドのスペクトルと一致することが示される。 環状ペプチド二量体(21)のその単量体型(6)への還元を示す図である。 TruD又はPatDを用いたペプチドITASITFXAYDG(Xが2,3−ジアミノプロパン酸である)中の2,3−ジアミノプロパン酸の複素環化のMALDI MSデータを示す図である。
表1はPatGmacのデータ収集及び精緻化の統計(分子置換)を示す。
表2は直鎖切断及び大環状化ペプチド基質の相対イオンカウントを示す。
表3は、ヘテロシクラーゼTruD及びマクロシクラーゼPatGで処理したPatEペプチド中のカセットITFCITACのMSデータを示す。この表に示される分子イオン及び断片の正確な質量は提唱される構造と一致し(図19及び図20を参照されたい)、図18に示される断片化経路に概説されるように説明することができる。
表4はPatGmacとそのホモログとの配列アラインメントを示す。二次構造要素は赤色で示される。活性部位残基は黄色の星形で示され、ジスルフィド結合に関与するシステインは緑色の三角形で示され(一致する方向はジスルフィド対を表す)、S3部位及びS4部位を遮断する残基は青色の菱形で示され、基質と塩架橋を形成するリシンは紫色の円形で示され、基質結合に関与するHis残基及びPhe残基は赤紫色の四角形で表される。
表5は公開データベース上のシアノバクテリアプロテアーゼを示す。
表6は公開データベース上のシアノバクテリアヘテロシクラーゼを示す。
表7は、in vitro生合成によって得られるシクロ−I(MxOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn)のCDCl中、600/150MHzでのH/13C NMRデータを示す。
表8は、リッソクリヌム・パテラに由来し、ペプチド基質ITACITFCを用いたin vitro生合成によって得られるシクロ−ITA(Thn)ITF(Thn)のCDCl中、600/150MHzでのH/13C NMRデータを示す。
実験
材料及び方法
1. タンパク質のクローニング、発現及び精製
1.1 ヘテロシクラーゼ
コドンを最適化した完全長PatD及びTruDを、N末端His−タグを有するpJexpress 411プラスミド(DNA2.0 Inc.,USA)にクローニングしたが、TruDは付加的なタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位を含有する。どちらの酵素も自己誘導培地(微量元素を含有するテリフィックブロスベース)上、20℃で48時間成長させた大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)細胞で発現させる。細胞を4000×g、4℃で15分間の遠心分離によって採取する。ペレットを500mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、20mMイミダゾール及び3mM BMEに再懸濁し、細胞の湿重量1g当たり0.4mgのDNアーゼ(Sigma)及びコンプリートプロテアーゼ阻害剤錠(EDTA無含有、Roche)を添加する。細胞を細胞破壊器に30kPSIで通すか又は超音波処理を行うことによって溶解し、溶解物を40000×g、4℃で45分間の遠心分離に続く0.4μm膜フィルターでの濾過によって清澄化する。清澄化溶解物を溶解緩衝剤で予洗したNi−セファロースFFカラム(GE Healthcare)にアプライし、タンパク質を250mMイミダゾールで溶出する。TruDのHis−タグを、10mgのTruDにつき1mgのTEVプロテアーゼを添加することによって除去し、室温で2時間インキュベートし、第2のNi−セファロースFFカラムに通すことによって切断タンパク質を単離する(注記:His−タグが除去されない場合、TruDは依然として有効に機能する)。次いで、両方の酵素を、予め平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE Healthcare)にロードし、150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEPで流した。ピーク画分をプールし、in vitro反応に使用するためにタンパク質を100μMまで濃縮した。
1.2 マクロシクラーゼ
PatGmac(PatG残基492〜851)をゲノムDNA(プロクロロン属)からpHISTEVベクター(Liu, H. & Naismith, J. H 2009)にクローニングし、自己誘導培地(微量元素を含有するテリフィックブロスベース;Studier, F.W., 2005)上、20℃で48時間成長させた大腸菌BL21(DE3)で発現させた。
細胞を4000×g、20℃で15分間の遠心分離によって採取し、溶解緩衝剤(500mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、20mMイミダゾール及び3mM β−メルカプトエタノール(BME))に再懸濁し、EDTA無含有コンプリートプロテアーゼ阻害剤錠(Roche)及び細胞の湿重量1g当たり0.4mgのDNアーゼ(Sigma)を添加した。細胞を細胞破壊器に30kPSIで通すか(Constant Systems Ltd)、又は超音波処理を行うことによって溶解し、溶解物を40000×g、4℃で45分間の遠心分離に続く0.4μm膜フィルターでの濾過によって清澄化した。清澄化溶解物を溶解緩衝剤で予洗したNi−NTA(Qiagen)カラム又はNi−セファロースFFカラム(GE Healthcare)にアプライし、タンパク質を250mMイミダゾールで溶出した。
いくつかの方法では、タンパク質を続いて100mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、20mMイミダゾール、3mM βME中で脱塩カラム(Desalt 16/10、GE Healthcare)に通した。タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼを1:10の質量対質量比でタンパク質に添加し、タンパク質を20℃で1時間消化し、His−タグを除去した。消化したタンパク質を第2のNi−カラムに通し、通過画分を100mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、3mM BME中で平衡化したmonoQカラム(GE Healthcare)にロードした。タンパク質を、350mM NaClで溶出する直線NaCl勾配によりmonoQカラムから溶出した。最後に、タンパク質を150mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、3mM βME中でのサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75、GE Healthcare)に供し、60mg/mLまで濃縮した。
他の方法では、タンパク質を続いて150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEP中でSuperdex 75(GE Healthcare)に通し、1mMまで濃縮した。
全てのPatGmac点突然変異体はPhusion 部位特異的突然変異誘発キット(Finnzymes)を用いて製造業者のプロトコルに従って作製し、lid欠失突然変異体はフュージョンPCRにより作製した。全ての突然変異体タンパク質を上記のように発現させ、精製した。
1.3 前駆体ペプチド
各々が2つのタンデムパテラミドコアペプチドの代わりに1つのコアペプチドのみをコードするPatEの変異体を、プロセシング生成物の分析をより容易にするためにC末端His−タグとともにpBMS233にクローニングした。より効率的なN末端切断を可能にするために、場合によってはトリプシン(K/R)又はTEV(ENLYFQ)による切断を可能にする付加的な残基をコアペプチドの直前に付加した。タンパク質を自己誘導培地(微量元素を含有するテリフィックブロスベース)上、37℃で一晩成長させたBL21(DE3)細胞で発現させた。細胞を4000×g、20℃で15分間の遠心分離によって採取し、8M尿素、500mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、20mMイミダゾール及び3mM BMEに再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解させ、溶解物を40000×g、20℃で45分間の遠心分離に続く5μm、0.8μm及び0.4μmのそれぞれの膜フィルターでの濾過によって清澄化した。清澄化溶解物を、溶解緩衝剤で予洗したNi−セファロースFFカラム(GE Healthcare)にアプライし、タンパク質を250mMイミダゾールで溶出した。DDTを溶出したPatEに10mMの最終濃度で添加し、溶液を室温で3時間インキュベートした。PatEを更に精製し、150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEP中でのサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75、GE Healthcare)によってタンパク質凝集体から分離し、1mMまで濃縮した。
2. 複素環化反応
複素環化反応は100μM PatE、5μM TruD/PatD、5mM ATP(pH7)、5mM MgCl、150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEPを含むものであった。TruDを使用する場合は24時間、PatDについては48時間にわたって反応物を200rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。場合によってはPatEは或る程度の沈殿を示した。これらの場合、上記のような8M尿素中での変性に続くNi親和性クロマトグラフィー及びサイズ排除によってペプチドを沈殿物から回収した。反応をMALDIによってモニタリングした。
プロセシングしたPatEを、150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEP中でのSuperdex 75(GE Healthcare)で精製し、濃縮した。
3. 大環状化反応
基質枯渇後に最終生成物比を比較する大環状化反応については、100μMのペプチド(VGAGIGFPAYDG)を50μMの酵素とともに150mM NaCl、10mM HEPES(pH8)、1mM TCEP中、37℃で120時間インキュベートした。サンプルをESI又はMALDI MS(LCT、Micromass又は4800 MALDI TOF/TOF Analyser、ABSciex)によって分析した。
他の大環状化反応については、100μMのペプチド(例えばVGAGIGFPAYDG、VGAGIGFPAYRG又はGVAGIGFPAYRG)を20μMの酵素とともに様々な緩衝剤中、37℃で24時間インキュベートした(図1〜図3を参照されたい)。
100μMのペプチド(PatE)を含む他の大環状化反応については、5%DMSO、350mM NaCl、20μM PatGmac、150mM NaCl及び20mM Bicine(pH8.0)を200rpmで振盪しながら37℃で4日間インキュベートし、MSによってモニタリングした。
4. 生成物のLC−MS分析
Phenomenex Sunfire C18カラム(4.6mm×150mm)を用いてLC−MSを行った。溶媒Aは0.1%ギ酸を含有するHOとし、溶媒Bは0.1%ギ酸を含有するMeOHとした。勾配:0分〜2分 10%のB;2分〜22分 10%のBから100%のBへ;22分〜27分 100%のB;27分〜30分 100%のBから10%のBへ。高分解能質量スペクトルデータを、Thermo InstrumentsのHPLCシステム(Accela PDA検出器、Accela PDAオートサンプラ及びAccela Pump)に接続したThermo InstrumentsのMSシステム(LTQ XL/LTQ Orbitrap Discovery)で得た。以下の条件を使用した:キャピラリー電圧45V、キャピラリー温度320℃、補助ガス流量10〜20任意単位、シースガス流量40〜50任意単位、スプレー電圧4.5kV、質量範囲100amu〜2000amu(最高分解能30000)。
5. 結晶化、データ収集及び結晶学的分析
PatGmacの結晶を19%PEG6000、0.07M酢酸カルシウム、0.1M Tris(pH9.0)中で得た。結晶を30%グリセロール中で凍結防止処理し(cryoprotected)、液体窒素中でフラッシュ冷却した。これらの結晶はセル寸法a=132.1Å、b=67.6Å、c=97.3Å、β=115.0度の空間群C2に属していた。
ペプチドを含むPatGmacの結晶を、1.2Mクエン酸ナトリウム、0.1Mカコジル酸ナトリウム(pH7.0)中でPatGmacとペプチドとの混合物(VPAPIPFPAYDG、1:4のモル比)から得た。活性部位の1つでペプチドの電子密度が存在するが、マップの品質は不十分であった。これはペプチドの占有率が低いことに起因すると推論されるため、複合体結晶をデータ収集前に7.5mMのペプチドに一晩浸漬した。これらの結晶はa=135.6Å、b=67.3Å、c=137.9Å、β=116.8度の空間群C2に属していた。両方の構造の回折データを、各々100Kでの単結晶についてSaturn 944 CCD検出器を備える株式会社リガクの007HFM回転陽極X線発生装置で自家収集し、xia2でプロセシングした(Winter、G., 2009)。
PatGmacの構造は、AkP(PDBエントリ1DBI)の構造を検索モデルとして用いたPHASERによる分子置換(Storoni, L. C., McCoy, A. J. & Read, R. J., 2004、McCoy, A. J., Grosse-Kunstleve, R. W., Storoni, L. C. & Read, R. J., 2005)、その後のPhenixによる自動再構成(Adams, P. D. et al., 2004)によって解明した。ペプチドを含むPatGmacの構造は、PatGmac構造を検索モデルとして用いた分子置換によって解明した。手動再構成はCOOT(Emsley, P. & Cowtan, K. Coot, 2004)を用いて行い、精緻化はCCP4プログラム群(Acta Crystallographica Section D 50, 760-763 (1994))で実行されるREFMAC5(Murshudov, G. N., Vagin, A. A. & Dodson, E. J., 1997)を用いて行った。データ収集及び精緻化の統計を表1にまとめる。分子グラフィックス図はPymolプログラム(DeLano Scientific, LLC)によって生成した。
6. ペプチド基質の合成
Fmocアミノ酸誘導体2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)及びFmoc−Gly−NovaSyn TGT樹脂はNovabiochem (Merck Biosciences,UK)から購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びピペリジンはSigma-Aldrich(UK)から入手し、更に精製することなく使用した。
VGAGIGFPAYDG、VPAPIPFPAYDG及びGVAGIGFPAYRGを含むペプチドを、標準的なFmocベース戦略(Cammish, L. E. & Kates, S. A., 2000)を用いて手動合成した。アミノ酸を各サイクルでのFmoc保護基の除去後に順次カップリングした。Fmoc脱保護工程をDMF中20%のピペリジン(v/v)を用いて12分間行い、カップリング反応をDMF中で5:5:10:1というアミノ酸:HBTU:DIEA:樹脂のモル比を用いて行った。Kaiser試験を用いて反応をモニタリングした。
ペプチドを支持体から切断し、95%TFA、2.5%トリイソプロピルシラン(TIPS)及び2.5%HOからなる混合物での処理によって脱保護した(ペプチド樹脂1g当たり20mLの混合物、室温で3時間)。次いで、樹脂を濾過し、TFAで洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮した。ペプチドを冷ジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離によって回収した。ペプチド配列をMSMS分析によって検証した。
ペプチドVGAGIGFPAYRGはPeptide Protein Research Ltdから購入した。
7. タンパク質分解的切断
作製するPatE配列に応じて、トリプシン及びTEVプロテアーゼを含む種々のプロテアーゼを使用した。1mgの精製プロセシングPatEにつき4μgのトリプシンを使用した。対応するTEVプロテアーゼの数値は各10mgのPatEにつき1mgである。反応物を200rpmで振盪しながら37℃で最大4時間インキュベートした。反応生成物を150mM NaCl、20mM Bicine(pH8.0)中でSuperdex 30(GE Healthcare)を用いて精製した。精製生成物をPhenomenex Strata C18−E、55μm、70Å、2g/12mL Giga SPEチューブカートリッジを用いて濃縮した。サンプルをロードした後、緩衝塩を取り除く脱イオン水による洗浄工程を行い、続いて5×カラム容量のメタノール及び5×カラム容量のアセトニトリルを用いた溶出工程を行った。カラムをアセトニトリル中5×容量の0.1%TFAで同様に洗浄した。水又は酸性化アセトニトリルによる洗浄を全てのペプチドについてMSにより別個に試験した。ペプチドが有機溶媒により完全に溶出することが見出された。
8. パテラミドの精製
大環状化反応物をPhenomenex Strata C18−E、55μm、70Å、2g/12mL Giga SPEチューブカートリッジで上記の手順に従って濃縮した。続いて生成物の最終精製をC4 ACEカラム10×250mm、5μmでの水中のアセトニトリル勾配を用いたHPLCを用いて行った。水は脱イオン化標準としたが、メタノール及びアセトニトリルはどちらもLCMS標準とする。全てのガラス製品を1.0モル硝酸に浸漬し(12時間)、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥又は炉乾燥した。波長210nm、220nm、230nm、240nm及び254nmのDADを用いて精製プロセスをモニタリングした。NMR及びMSを用いて精製生成物の構造を確認した。得られた2つの化合物のNMRデータを表にした(表7及び表8)。精製化合物を、ジクロロメタン中のMnOを用いて28℃で3日間化学的に酸化した。
結果
実施例1:PatGマクロシクラーゼドメインの全体構造
PatGのマクロシクラーゼドメイン(PatGmac、残基492〜851)を大腸菌BL21(DE3)細胞において過剰発現し、確立されたプロトコル(Liu, H. & Naismith, J. H., 2009)を用いて精製した。ゲル濾過による保持プロファイルからドメインが単量体であることが示された。
上記タンパク質は、非対称単位の2つの生物学的単量体を有する空間群C2に属する結晶を形成した。サブチリシン桿菌Ak.1プロテアーゼ(AkP)(PDBエントリ1DBI)を検索モデルとして用いた分子置換によって、構造を2.19Åの分解能で決定した。表1にデータ収集及び精緻化の統計を示す。精緻化モデル(PDBエントリ4AKS)はA鎖中に残基514〜653、659〜685、694〜717、728〜745、754〜822及び835〜851、B鎖中に515〜650、660〜688及び692〜850を含む。欠損残基はループ及びN末端に存在し、不規則であると推定される。
PatGmacは寸法がおよそ53Å×42Å×48Åの球状である。このタンパク質は全てのサブチリシン様プロテアーゼに共通したフォールドである各面に2つのαヘリックスを有する七本鎖パラレルβシートを含有する。しかしながら、結合部位が配列変化によって破壊されるため、サブチリシン様プロテアーゼの保存金属イオンはPatGmacに存在しない。
PatGmacはβ鎖β1のC末端に位置するAsp548、α4の中央のHis618及びα7のN末端のSer783からなる触媒三残基を含有する。Asp548のカルボキシル基はHis618(2.9Å)の側鎖に水素結合し、これがSer783(2.7Å)の側鎖に水素結合する。PatGmacはβ2からループとして伸びる挿入を有し、ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフを形成し、His618を有するヘリックスであるα4のN末端伸長を生じる。この挿入は他のマクロシクラーゼに見られるが、長さ又は配列は保存されない。
実施例2:サブチリシン様プロテアーゼAkP及びPatGmacの比較
AkP及びPatGmacのアミノ酸配列は28%同一であり、ペアワイズの重ね合わせにより145個の構造的に同等の残基で1.23ÅのCα rmsdが得られる。最も顕著な違いは、PatGmacが活性部位の上に位置するα2とα4との間(A574〜K610)にヘリックス−ターン−ヘリックス挿入を含有することである。これを大環状化挿入と称する。これらの残基のうち8個が、典型的なサブチリシン構造と比較してα4の2つのターンN末端伸長を形成する。これにより、このヘリックスの末端ではなく中央に触媒Hisが生じる。他の29個の残基がヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフを形成する。
PatG及びそのホモログにおいて高度に保存される4つのシステイン(表4)は、2つのジスルフィド結合:Cys685/724及びCys823/834を生じる。PatGmac中のCys685/724ジスルフィド結合はサブチリシンに見られるものとは異なる。AkPのCys137はPatGmacのCys685に相当し、Cys139とループ内ジスルフィド結合を形成し、活性部位を強固にすることが提唱される11原子環を生成する。
対照的に、PatGmac Cys685/724は2つのループを架橋し、その一方がα4と活性部位に隣接するα6とを接続する。結果として、Phe684及びArg686がMet660の側鎖に固まり、S4及びS3基質結合ポケットを完全に埋める。Cys823/834は、α8とドメインのC末端にあり、活性部位から離れたα9とを接続するループの末端を連結する。
実施例3:PatGmac基質複合体
VPAPIPFPAYDGペプチドを、8残基カセット及びC末端4残基大環状化シグネチャーであるP8−P4’に相当する残基に適合させるために選択した。プロリン残基を天然基質の複素環を模倣するために選択し、ペプチドは実際にPatGmacによって(ゆっくりとではあるが)大環状化することができる。
PatGmacH618A(不活性突然変異体)の複合体の構造を、PatGmacネイティブを検索モデルとして用いた分子置換によって2.63Åで決定した(表1)。1つのプロモーターの活性部位における結合ペプチドの電子密度差はPIPFPAYDG(P5−P4’)で明白であり、基質模倣体の3個のN末端残基(VPA)が無秩序であることが示された。精緻化モデル(PDBエントリ4AKT)はA鎖中に残基514〜686、694〜719、727〜747、754〜823及び833〜851、B鎖中に515〜651、657〜688及び692〜851を含有する。
基質の残基P5及びP4(Pro及びIle)はタンパク質と接触しないが、P3(Pro)はTyr210と弱いファンデルワールス相互作用を有する。P2(Phe)も限られたファンデルワールス接触を生じ、側鎖は浅いポケットに位置する。P1のProは、タンパク質とは別の方向を向いた基質をもたらすシスペプチド立体配座を取り、側鎖はHis618Ala及びVal622とファンデルワールス接触を生じる。P1−P1’ペプチドのカルボニルは4.3Å離れ、Ser783のヒドロキシルによる求核攻撃に対して正確に配向する。Met784の側鎖はカルボニルのこの面に位置し、完全に保存されたAsn717の側鎖は四面体中間体を安定させる正確な位置で反対面の方向を向く。P1’Ala Cα及び側鎖は、Met784及びタンパク質骨格との接触を含む僅かな疎水性相互作用しか生じない。これはより嵩高い残基に十分なほど大きく見えるキャビティに位置する。P2’(Tyr)残基はタンパク質と下記の広範な接触を生じる:高度に保存されたPhe747とのπ−スタッキング相互作用、His746(ホモログにおいてはHis又はLysとして保存される)との水素結合、及びTyr主鎖酸素とThr780の窒素との間の水素結合。P3’(Asp)の側鎖はArg589、Lys594及びLys598によって生じる大きな陽性パッチに向かって配向する。これはLys598及び場合によってはLys594と塩架橋を生じるが、Lys594の側鎖は秩序だっていない。P4’Gly残基はタンパク質と接触しないが、末端カルボキシル基はLys594に近い。ペプチドの結合は、主鎖がCα位で2Å移動し、基質との衝突を回避するためPhe684でのPatGmacの変化を伴う。Met660、Phe684及びArg686の側鎖は伸張立体配座を取る基質の結合を阻止する。
アシル−酵素中間体が形成される活性部位は、大環状化挿入及びAYDGペプチドによって溶媒から遮られている。
大環状化中、アシル−酵素中間体は基質と平衡状態にある。PatGmacにおいては基質のアミノ末端が活性部位に入り、AYDGに置き換わり、大環状化をもたらす。AYDGの結合を破壊する突然変異は、水によって加水分解されるため直鎖生成物を生じる。入り込んだアミノ末端を脱プロトン化するHisの役割は推測である。
実施例4:大環状化の生化学的特性化
ペプチドVGAGIGFPAYDGを生化学的アッセイにおいてPatGmacの基質として使用した(図4c)。この基質ペプチドを使用した大環状化生成物と直鎖生成物との比率を、液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化質量分析(LC−ESI MS)により得られるイオンカウントによって決定した。ネイティブタンパク質については、大環状化生成物(シクロ[VGAGIGFP])のみが検出された(表2、図5〜図10)。
PatGmacは緩徐型酵素である。これまでに報告されたターンオーバー率は1日当たり約1である(Lee, J., McIntosh, J., Hathaway, B. J. & Schmidt, E. W., 2009、McIntosh, J. A. et al., 2010)。150mMから500mMへの塩化ナトリウム濃度の増大は、ターンオーバー率の1桁を超える改善をもたらした。8から9へのpHの増大はターンオーバー率を更に3倍にした。DMSOの添加はターンオーバー率の僅かな増大をもたらしたが、最適pHをシフトし、500mM NaCl及び5%DMSO(pH8)を含有する緩衝剤は50倍超大きな反応速度をもたらした(図1)。これらの条件下で、HPLCによってシクロ[VGAGIGFP]から分離することができる約7%の線形化VGAGIGFP副生成物が観察された。
部位特異的突然変異体K594D及びK598D、並びに2つの欠失突然変異体578−608(ヘリックス−ループ−ヘリックス挿入モチーフ、PatGmacΔ1)及び578−614(ヘリックス−ループ−ヘリックス挿入及びα4のN末端伸長、PatGmacΔ2)は、ネイティブタンパク質とほぼ等しい速度で基質を消費した(図5〜図8及び図10)。K594Dについては、生成物のおよそ3分の1が大環状化し、3分の2が直鎖ペプチドであった。K598D及び両方の欠失は直鎖VGAGIGFPのみをもたらした(図5〜図8及び図10)。三重突然変異体R589D/K594D/K598Dは相当遅く、直鎖基質のみを生じた。全ての突然変異体を通常通り精製し、CD分光法に従ってフォールディングした。
基質VGAGIGFPAYRGは修飾認識配列(AspからArgへ)を有する。予想されるように、PatGmac野生型(並びにK594D及びR589D/K594D/K598D)は基質と極めて遅く反応し、等量の大環状化生成物及び直鎖生成物をもたらした。PatGmac K598Dは、VGAGIGFPAYDGと野生型PatGmacよりも1桁超速い速度でシクロ[VGAGIGFP]を生じ、僅か8%が直鎖生成物であった(図2及び図3)。基質のN末端の正確な性質が速度に影響を与え、VGAGIGFPAYRGはGVAGIGFPAYRGよりも1桁速くプロセシングされた。
部位特異的突然変異体S783A及びH618A(どちらも触媒三残基)は検出可能な反応を生じなかった。質量分析から、ターンオーバーにおいてアシル−酵素中間体(VGAGIGFP−PatGmac)が明らかに特定された(図8)。
大環状化を更に調査するために、天然産物パテラミドDに対応する単一カセット(ITACITFC)に隣接する37残基のN末端リーダー配列並びにN末端及びC末端切断認識部位からなるPatEプレプロペプチド(PatE2)を改変した。加えて、精製プロセスの助けとなるC末端His−タグを付加した(図11)。
前駆体ペプチドPatE2、PatD及びTruD(ヘテロシクラーゼ)、PatApr(サブチリシン様プロテアーゼドメイン)及びPatGmac(サブチリシン様プロテアーゼ/マクロシクラーゼドメイン)を大腸菌にクローニングし、発現させ、生化学反応に使用するために精製した(上記の材料及び方法を参照されたい)。
実施例5:PatE2の精製及びリフォールディング
PatE2をpBMSベクターにクローニングし、自己誘導培地中、30℃で24時間成長させた大腸菌BL21(DE3)において発現させ、タンパク質を封入体に移した。細胞を4000×g、20℃で15分間の遠心分離によって採取し、尿素溶解緩衝剤(8M尿素、500mM NaCl、20mM Tris(pH8.0)、20mMイミダゾール及び3mM β−メルカプトエタノール(βME))に再懸濁し、超音波処理によって15ミクロンで溶解させた(SoniPrep 150、MSE)。溶解物を40000×g、20℃での遠心分離に続いて0.45μmフィルターに通すことによって清澄化した。清澄化溶解物を溶解緩衝剤で平衡化したHis選択カラム(GE Healthcare)にアプライし、タンパク質を250mMイミダゾールで溶出させた。次いで、タンパク質にリフォールディングを誘導する10mMジチオトレイトール(DTT)を添加し、150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEP中でのサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 75、GE Healthcare)に供した。タンパク質は単一の単量体ピークとして溶出し、最終収量は培養物1L当たり250mg〜300mgであった。
実施例6:PatE2のin vitro複素環化
本発明の単一カセットPatEの複素環化を評価するために、いくつかのin vitro反応を行った。150mM NaCl、10mM HEPES(pH7.4)、1mM TCEP、5mM ATP、5mM MgCl中、37℃で30分間の100μM PatE2と5μM PatDとのインキュベーションは、予想される4つの水の喪失に対応する72amuの喪失をもたらし、カセット内のトレオニン残基及びシステイン残基の両方が複素環化されることが示される(図12)。
代替的には、同じ条件下での100μM PatE2と5μM TruDとのインキュベーションは、予想される2つの水の喪失に対応する36amuの喪失をもたらし、システイン残基のみが複素環化されることが確認された(図13)。
使用した全ての酵素の中でも、2つのヘテロシクラーゼの発現及び精製が圧倒的に困難である(培養物1L当たり40mgの純粋タンパク質)。したがって、それらをより少量で使用し、再利用することができるか否か調査しようとした。複素環化反応物を37℃で一晩インキュベートする場合、酵素の量を1:20から1:200(酵素:基質)まで低減することができるが、反応時間は顕著に長くなる。
最終反応物をSuperdex S200ゲル濾過カラム(GE Healthcare)に通すと、酵素、基質及びATP/ADPの3つのピークが得られる(図14)。酵素ピークをプールし、濃縮し、別の反応に使用したところ、依然として完全に機能的であり、長い反応時間を短縮しなくとも酵素の再利用が可能であることが明らかに示される。
実施例7:N末端切断
カセットのN末端切断はPatAのサブチリシン様プロテアーゼドメインによって媒介される。プロテアーゼドメインは認識部位「GLEAS」に作用し、Sとカセットの第1の残基との間で切断する。この反応のin vitroでのターンオーバーは緩徐なプロセスであることが見出された。実際に、100μM PatE2(事前のヘテロシクラーゼ処理を行う又は行わない)と20μM PatAprとの37℃で200時間のインキュベーションが完全な切断に必要とされる。反応物を150mM NaCl、20mM Bicine(pH8.1)で予め平衡化したSuperdex S30カラム(GE Healthcare)に投入することによって、カセット部分をPatApr及び切断リーダー配列から精製する。PatAprは大腸菌において高度に発現され、収量は培養物1リットル当たり250mg超の精製タンパク質である。
PatAprの緩徐な性質のために、PatE2プレプロペプチドをPatA認識配列「GLEAS」とカセット残基との間にリシン残基(PatE2K)を含有し、トリプシン切断が可能となるように再改変した(図11)(例えばX−GLEASK[カセット]−X)。この付加がヘテロシクラーゼ活性に影響を及ぼすか否かを試験するために、100μMのPatE2Kを0.5μMのPatD及びTruDの両方と37℃で一晩別々にインキュベートした。予想される4つ及び2つの水の喪失がそれぞれMSによって見出された。複素環化ペプチドを先に記載のように精製し、1000倍トリプシンを用いて37℃で2時間切断した。完全な切断がMSによって確認され(図15)、得られる断片を上記のように精製し、PatGmacによる大環状化に供した。ペプチド基質の大環状化をMSによって確認した。
同様に、PatE2プレプロペプチドを、TEVプロテアーゼシグナル(ENLYFQ)をPatA認識配列「GLEAS」とカセット残基との間に含有し、TEV切断が可能となるように再改変した(例えばX−GLEASENLYFQ[カセット]−Xm_)。この付加がヘテロシクラーゼ活性に影響を及ぼすか否かを試験するために、100μMのPatE2TEVを0.5μMのPatDと37℃で一晩別々にインキュベートした。予想される4つ及び2つの水の喪失がそれぞれMSによって見出された。複素環化ペプチドを先に記載のように精製し、1000倍TEVを用いて37℃で2時間切断した。完全な切断がMSによって確認され、得られる断片を上記のように精製し、PatGmacによる大環状化に供した。ペプチド基質の大環状化をMSによって確認した。
実施例8:C末端切断及び大環状化
パテラミド作製の最終段階はC末端切断及び大環状化である。この工程はPatGmacドメインによって触媒される。本発明の単一カセットを大環状化するために、100μMの(PatD又はTruDで)複素環化された及びN末端切断したPatE2/PatE2Kを20μMのPatGmacとともに20mM Bicine(pH8.1)、500mM NaCl、5%DMSO中、37℃で24時間インキュベートし、反応を完了した。反応の完全性をLCT−ESI MSによって確認した(図16)。イオンカウント分析によりサンプルが100%大環状化され、直鎖生成物又は非切断基質が存在しなかったことが示される。PatGmacは大腸菌でも高度に発現され、培養物1リットル当たり200mg〜250mgの精製タンパク質が得られた。最終大員環をC18ペプチドカラムでのHPLCによって精製した。PatD及びTruD複素環化大員環をHRMSに供し、それらの構造を断片化によって確認した(図19〜図21;表3を参照されたい)。NMR分析を図20及び図21に示されるようにTruD及びPatD複素環化大員環について行った)(表7及び表8)。
実施例9:パテラミドの精製
コア配列カセットであるITVCITVC(TruD)、ITACITFC(TruD、PatD)、ITACITYC(TruD、PatD)、IMACIMAC(TruD)、IDACIDFC(TruD)、VTVCVTVC(TruD、PatD)、ITA(SeCys)ITF(SeCys)(TruD)、ACIMAC(TruD)、IACIMAC(TruD)、IITACIMAC(TruD)、ICACITFC(TruD)、IAACITFC(TruD)、ITACITAC(TruD)、ATACITFC(TruD)、ITAAITFC(TruD)及びITACISFC(TruD)を有するPatE基質を、示されたように、PatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼのいずれかにより処理した後、上記のように、トリプシンによるタンパク質分解及びPatGmacによる大環状化に供した。続けて、環状生成物であるシクロ(ITV(Thn)ITV(Thn))、シクロ(ITA(Thn)ITF(Thn))、シクロ(I(MeOxn)A(Thn)I(MeOxn)F(Thn))、シクロ(ITA(Thn)ITY(Thn))、シクロ(I(MeOxn)A(Thn)I(MeOxn)Y(Thn))、シクロ−(IMA(Thn)IMA(Thn))、シクロ−(IDA(Thn)IDF(Thn))、シクロ−(VTV(Thn)VTV(Thn)、シクロ−(V(MeOxn)V(Thn)V(MeOxn)V(Thn))、シクロ−(ITA(Sen)ITF(Sen))、シクロ−(A(Thn)IMA(Thn))、シクロ−(IA(Thn)IMA(Thn))、シクロ−(IITA(Thn)IMA(Thn))、シクロ−(I(Thn)A(Thn)ITF(Thn))、シクロ−(IAA(Thn)ITF(Thn))、シクロ−(ITA(Thn)ITA(Thn))、シクロ−(ATA(Thn)ITF(Thn))、シクロ−(ITAAITF(Thn))及びシクロ−(ITA(Thn)ISF(Thn))を精製し、NMR及びMSにより分析した。
複素環を含有する大環状構造の作製をこれら全てのペプチド基質について確認した。
基質ペプチドITVCITVCから作製されたシクロ−(I(MeOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn))(Cmpd 32)、及び基質ペプチドITACITFCから作製されたシクロ−(ITA(Thn)ITF(Thn))(Cmpd33)のNMRデータを表にした(表7及び表8)。さらに、in vitroシクロ−(I(MeOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn))のNMRスペクトルは、リッソクリヌム・パテラによって産生される天然テトラヒドロアシジアシクラミドのNMRスペクトルと一致することが見出された。大環状化後に複素環を酸化する能力を、チアゾリンからチアゾールへの変換を評価することによって決定した。基質ペプチドITVCITVCから作製された還元型シクロ−(I(MeOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn))を、ジクロロメタン中のMnOを用いた28℃で3日間の酸化に供した。得られる混合物をシリカゲル及びセライトカラムクロマトグラフィー、続いてHPLCクロマトグラフィーに供し、酸化生成物を得た(図25)。シクロ−(I(MeOxn)V(Thn)I(MeOxn)V(Thn))(還元型)、シクロ−I(MeOxz)V(Thz)I(MeOxz)V(Thz))(酸化型)及びリッソクリヌム・パテラから単離されたアシジアシクラミドの遠紫外線CDスペクトルを、光路長0.02cmの石英キュベットにおいて約1mg/mLの想定濃度を用いて室温で記録した。酸化型シクロ−I(MeOxz)V(Thz)I(MeOxz)V(Thz))のCDスペクトルは、アシジアシクラミドのCDスペクトルに一致することが見出された(図26)。
実施例10:SUMO(低分子ユビキチン様修飾因子)タグの使用
ペプチド基質を、SUMOタグ(Marblestone et al Protein Sci. 2006 January; 15(1): 182-189)及びこれまでに可溶性発現が示されてこなかったカセット配列を用いて改変した。SUMOタグは、標的タンパク質の可溶性発現レベルの増大に使用することができる全体サイズ13.6kDa(MBP=42kDa、GST=30kDa)の(Hisタグに連結した)小さな可溶性タグである。SDS−PAGE分析から、ペプチド基質が可溶型で発現され、SUMOタグをTEVプロテアーゼによって基質から除去することができることが示された。
実施例11:還元型リーダー配列の使用
PatEのリーダー配列が複素環化に不可欠であることが以前に報告されている。15N−PatEとTruDとの相互作用を調べた(PatEに対してTruDが2倍モル過剰となるまで滴定する)。
残基1〜15は変化を受けないため、TruDの結合に関与しないようである。残りの残基シグナルは不可視となる程度にまで広がり、結合が残基16以降で生じることが示された。PatEのリーダー領域において最も高度に保存される配列は残基26〜34にわたる。PatEの最初の25残基が欠失した合成ペプチド(Δ25PatE)は、TruDによってネイティブPatEとして効率的にプロセシングされる。Δ37PatE(コアペプチド前に5残基プロテアーゼシグネチャーのみを有する)、Δ42PatE(最初の残基がコアペプチドである)及び8残基コアペプチド自体という3つの付加的なペプチドを試験した。コアペプチド単独では反応は見られず、驚くべきことにΔ37PatE及びΔ42PatEペプチドの両方がネイティブの1桁以内の速度でプロセシングされるが、コアペプチドの残基の1つ(末端システイン)しか反応しない。
保存されるリーダー領域内の個々の残基の標的化により、S30は重要でないが(S30Fは野生型活性を有する)、L29及びE31が重要であることが明らかとなった。L29R及びE31Rはどちらもより遅くプロセシングされ、1つ及び2つの複素環の混合物を生じた。突然変異G38I、L39N及びA41I(GLEASプロテアーゼシグネチャー内)は複素環化に影響を有しないが、S42Qははるかに遅い速度でプロセシングされ、興味深いことに0及び2つの複素環の混合物を生じ、一方でS42Cは野生型のようにプロセシングされた。突然変異A52Dははるかに遅く、S42Qの速度でプロセシングされ、同様に0及び2つの複素環の混合物を生じた。対照的に、同様にC末端にすぐ接する大環状化配列「AYDG」内の突然変異Y53A及びD54Rはどちらもプロセシングされた。
コアペプチド配列ITACITFP(C51P)及びITACITFA(C51A)を有する2つのPatE突然変異体を分析した。C51Pの内部システインは37℃で60分以内(ネイティブと同様)に複素環化された(質量分析で判断される)。一方で、C末端に五員環を有しないC51A突然変異体PatEははるかに遅く反応し、約50%の生成物形成のために37℃で16時間必要であった。
実施例12:Cys含有環状ペプチドからの二量体形成
新規のシクロ[VGICAGFP]大環状ペプチド(6;図27)のMALDI質量スペクトルは1509Daにピークを示し、それが2つの環状ペプチドがシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結した(図27)二量体形態であることが示された(21;図27)。VGICAGFP環状単量体の質量は744Daであり、チオールを介した二量化は2×744(環状単量体)−2(ジスルフィド結合形成で喪失する2つの水素)=1486Daの質量をもたらし、ナトリウム化(sodiated)イオンは1486+23=1509Daでピークを生じる。
システイン残基でのペプチドの修飾は初めにジスルフィド結合を還元せずには行うことができなかった。樹脂に固定化したいくつかの異なる還元剤、すなわちTCEP、DTT、β−メルカプトエタノール及びTCEPを用いて還元を試みた。TCEP及びDTTによる還元は最も効果的であることが示され、t=1時間での二量体の完全な還元が達成され、この場合1509Daのピークが完全に消失し、745Da及び767Daのピーク(それぞれ単量体環状ペプチドのプロトン化形態及びナトリウム化形態に対応する)が現れた。樹脂に固定化したTCEP及びβ−メルカプトエタノールは部分的な還元をもたらした。
実施例13:改変PatGmacを用いたシクロチドの形成
シクロチド、例えばカラタB1は環状ペプチド骨格と、CCK(環状システインノット)モチーフを形成し、80を超える既知のシクロチドを非常に安定したものにする強く結び付けられたジスルフィドネットワークとを組み合わせた独自のトポロジーを有する植物タンパク質ファミリー(28〜40アミノ酸)である。シクロチドは熱的アンフォールディング、化学的変性剤及びタンパク分解に抵抗性を示す。広範な用途のためのこれらの化合物の作製に幅広い関心が持たれている。
カラタB1の直鎖ペプチド配列を大環状化する改変PatGmacの能力を試験し、MALDIを用いて反応をモニタリングし、合成生成物のMSと精製ネイティブカラタB1のMSとを比較した。反応基質は酸化型及び還元型の直鎖ペプチド配列であり、そのC末端にPatGの認識シグナル(AYDG)を含有する。PatGmacは還元型前駆体及び酸化型前駆体の両方を環化することが見出された。還元型前駆体は酵素との反応後に追跡可能な出発物質を生じず、酸化型はあまり効率的でない。
実施例14:PatD又はTruDを用いたイミダゾリンの形成
最小ペプチドITASITFXAYDG(Xは非天然アミノ酸2,3−ジアミノプロパン酸のgである)を、上記のようにTruD又はPatDとともにインキュベートした。反応をMALDI MSによって分析し、両方の反応で複素環形成(イミダゾリンの形成)と一致する18Daの喪失が示されたが、酵素TruDはこの反応でより効率的であった(図28)。

Claims (50)

  1. 環状ペプチドを作製する方法であって、
    (iii)直鎖ペプチド基質を準備すること、及び
    (iv)前記ペプチド基質を単離シアノバクテリアマクロシクラーゼで処理して環状ペプチドを作製すること、
    を含む、方法。
  2. 前記直鎖ペプチド基質が標的ペプチド及びC末端環化シグナルと含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記標的ペプチドが少なくとも6個の残基からなる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記環化シグナルに隣接する前記標的ペプチド中の残基がプロリン、シュードプロリン、複素環残基又はN−Me残基である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記環化シグナルがAYDを含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼが、PatG(配列番号1)の残基492〜851のアミノ配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼがPatGのAsp548、His618及びSer783に相当する位置にAsp残基、His残基及びSer残基を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼがPatG(配列番号1)の残基492〜851のアミノ配列を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼがPatG(配列番号1)のR589、K594、K598及びH746に相当する1つ又は複数の残基に置換を含み、前記直鎖ペプチド基質が修飾環化シグナルを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼがPatGのK598に相当する残基にK598D置換を含み、前記直鎖ペプチド基質が環化シグナルAYRを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記直鎖ペプチド基質及び前記シアノバクテリアマクロシクラーゼの一方が固体支持体に固定化されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記直鎖ペプチド基質を500mM NaCl及び/又はpH9において前記シアノバクテリアマクロシクラーゼで処理する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. (iii)プロペプチドを準備すること、及び
    (iv)前記プロペプチドを単離プロテアーゼで処理して直鎖ペプチド基質を作製すること、
    を含む方法によって、前記直鎖ペプチド基質を準備する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 直鎖プロペプチドがプロテアーゼ認識部位によってプロ配列に連結したペプチド基質を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 直鎖プロペプチドがプロテアーゼ認識部位によって連結した1つ、2つ、3つ又はそれ以上のペプチド基質を含む、請求項13に記載の方法。
  16. 前記プロテアーゼ認識部位がG(L/V)E(A/P)Sであり、前記プロテアーゼがシアノバクテリアプロテアーゼである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記プロテアーゼ認識部位が異種プロテアーゼ認識部位であり、前記プロテアーゼが異種プロテアーゼである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記異種プロテアーゼ認識部位がK残基であり、前記異種プロテアーゼがトリプシンであるか、前記異種プロテアーゼ部位がYであり、前記プロテアーゼがキモトリプシンであるか、又は前記異種プロテアーゼ部位がENLYFQ(G/S)であり、前記プロテアーゼがタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記プロペプチド及び前記プロテアーゼの一方が固体支持体に固定化されている、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. (iii)1つ又は複数の複素環化可能なアミノ酸を含むプレプロペプチドを準備すること、及び
    (iv)前記プレプロペプチドをPatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼで処理して前記複素環化可能なアミノ酸を複素環残基に変換し、それにより直鎖ペプチド基質又はプロペプチドを作製すること、
    を含む方法によって、前記直鎖ペプチド基質又は前記プロペプチドを準備する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記PatDヘテロシクラーゼ又はTruDヘテロシクラーゼが前記プレプロペプチド中のシステイン残基をチアゾリンに変換する、請求項20に記載の方法。
  22. 前記PatDヘテロシクラーゼが前記プレプロペプチド中のトレオニン残基又はセリン残基をオキサゾリンに変換する、請求項20又は21に記載の方法。
  23. 前記PatDヘテロシクラーゼが前記プレプロペプチド中のセレノシステインをセレナゾリンに変換する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記PatDヘテロシクラーゼが前記プレプロペプチド中のアミノアラニンをイミダゾリンに変換する、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記プレプロペプチドがN末端リーダー配列を含む、請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記プレプロペプチドがPatE1−34リーダー配列又はPatE26−34リーダー配列を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記プレプロペプチドを水溶液中、常温でPatDヘテロシクラーゼにより処理する、請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記PatDヘテロシクラーゼが、PatD(配列番号3)又はTruD(配列番号4)に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20〜27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記PatDヘテロシクラーゼがPatD(配列番号3)又はTruD(配列番号4)のアミノ配列を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記直鎖ペプチド基質、プロペプチド又は環状ペプチドを処理して前記複素環残基を酸化することを含む、請求項20〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記複素環残基を化学酸化剤で酸化する、請求項30に記載の方法。
  32. 前記複素環残基をオキシダーゼ酵素での処理により酸化する、請求項30に記載の方法。
  33. 前記複素環残基をシアノバクテリアオキシダーゼでの処理により酸化する、請求項32に記載の方法。
  34. 前記シアノバクテリアオキシダーゼが、PatG(配列番号1)の残基1〜491に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ配列を含む、請求項33に記載の方法。
  35. 前記PatGオキシダーゼがPatG(配列番号1)の残基1〜491のアミノ配列を含む、請求項34に記載の方法。
  36. シアノバクテリアヘテロシクラーゼ及び/又は前記シアノバクテリアオキシダーゼが固体支持体に固定化されている、請求項20〜35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 前記プレプロペプチド、前記プロペプチド及び/又は前記直鎖ペプチド基質が固体支持体に固定化されている、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 前記プレプロペプチド、プロペプチド及び/又は直鎖ペプチド基質が直接的又は間接的にタグに連結している、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 前記環状ペプチドをシアノバクテリアプレニラーゼで処理して、プレニル化又はゲラニル化環状ペプチドを作製する、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
  40. プレプロペプチド、プロペプチド、直鎖ペプチド基質及び/又は環状ペプチドを更なる化学修飾に供する、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
  41. 前記環状ペプチドが検出可能な標識で標識されている、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
  42. 前記直鎖ペプチド基質、プレプロペプチド及び/又はプロペプチドがビーズに固定化されている、請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法。
  43. 前記直鎖ペプチド基質、プレプロペプチド及び/又はプロペプチドの参照コピーが前記ビーズに付加的に固定化され、該参照コピーが環化シグナルを欠いている、請求項42に記載の方法。
  44. 前記シアノバクテリアマクロシクラーゼによる処理の後に前記環状ペプチドが前記ビーズから放出され、前記参照コピーが該ビーズに固定化されたままである、請求項43に記載の方法。
  45. 生物活性を同定するために、前記環状ペプチドを単離すること、及びスクリーニングすることを含む、請求項44に記載の方法。
  46. 前記環状ペプチドを放出したビーズを特定すること、及び該ビーズに固定化された参照コピーをシークエンシングすることを含む、請求項45に記載の方法。
  47. 環状ペプチドライブラリーをスクリーニングする方法であって、
    (i)ビーズに付着した多様な標的ペプチドの集団を準備することであって、各々のビーズに該標的ペプチドの第1及び第2のコピーが付着し、該第2のコピーではなく該第1のコピーが環化シグナルを介して該ビーズに付着すること、
    (ii)前記ビーズをシアノバクテリアマクロシクラーゼで処理して前記標的ペプチドの第1のコピーを環状ペプチドに変換し、該環状ペプチドを前記ビーズから放出させること、
    (iii)前記環状ペプチドの活性についてスクリーニングすること、
    (iv)活性のある環状ペプチドを特定すること、
    (v)前記環状ペプチドが放出されたビーズを特定すること、及び
    (vi)前記ビーズに付着した前記標的ペプチドの第2のコピーをシークエンシングすること、
    を含む、方法。
  48. 前記環状ペプチドが放出されたビーズを特定することができるように、前記標的ペプチドの集団が空間的に配列している、請求項47に記載の方法。
  49. 前記方法の工程(i)が、前記標的ペプチドをシアノバクテリアヘテロシクラーゼで処理して前記標的ペプチド中の1つ又は複数の複素環化可能な残基を複素環残基に変換することを更に含む、請求項47又は48に記載の方法。
  50. 前記方法の工程(i)が、前記標的ペプチド又は前記環状ペプチドをシアノバクテリアオキシダーゼ又は細菌オキシダーゼで処理してその複素環残基を酸化することを更に含む、請求項49に記載の方法。
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