JP2015519078A - ザイモモナス・モビリス(Zymomonasmobilis)を使用する発酵中の細菌汚染制御のためのバージニアマイシンの使用 - Google Patents

ザイモモナス・モビリス(Zymomonasmobilis)を使用する発酵中の細菌汚染制御のためのバージニアマイシンの使用 Download PDF

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Abstract

バージニアマイシンの添加によって、発酵生産に対する悪影響なしに、生体触媒としてザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を使用する発酵中で、汚染が制御された。バージニアマイシンの有効濃度は、使用される発酵培地のタイプに左右されることが分かった。

Description

本発明は、微生物学および発酵の分野に関する。より具体的には、方法は、生体触媒としてザイモモナス属(Zymomonas)が使用される場合に、発酵の汚染を制御するために開発された。
再生可能資源から生成される燃料エタノールは、世界的な化石燃料不足、エネルギーコスト上昇、および大気二酸化炭素増大に関連している地球温暖化効果の長期解決策の1つである。再生可能資源由来の燃料エタノールは、生体触媒を使用する糖類発酵によって生産される。目下、酵母が、エタノール生産のために最も広く使用されている生体触媒である。発酵性糖類は、最も典型的には、トウモロコシ穀粒、甜菜、およびサトウキビをはじめとする、加工生体材料から得られる。代案の豊富な生体材料糖原料は、セルロース系またはリグノセルロース系バイオマスである。物理的、化学的、および/または酵素的処理を使用して、セルロース系およびリグノセルロース系バイオマスを加工し、発酵性糖類を生産する方法が開発されている。
大規模発酵過程において、特に炭水化物源として生体材料を使用する場合、無菌性を維持することは困難である。大規模発酵工程は、典型的に、加工生体材料、装置、プロセス水またはその他の起源に由来し得る、細菌によって汚染される。典型的に、汚染細菌は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)の種などの乳酸菌(LAB)である。汚染細菌は、糖類を使用して、一次産物生体触媒の有効性を低下させることで、発酵産物の収率を低下させる。汚染細菌は、酢酸および乳酸などの望まれない産物を産生し、それは培養中のストレス状態を増大させて、生体触媒増殖の劣化および/または生体触媒産物生産の低下につながる。
主に乳酸菌である汚染細菌は、典型的に、燃料用または醸造用のエタノールを生産するために、炭水化物源としてマッシュまたは糖蜜を使用する、生体触媒として酵母を利用する発酵で問題となっている。酵母および汚染細菌は、抗菌剤によっては感受性に差があるので、酵母発酵中の細菌を制御するために、いくつかの抗菌剤を使用し得る。酵母発酵でLAB汚染を制御するのに成功裏に使用されている抗菌剤としては、ペニシリン(非特許文献1)、バージニアマイシン(非特許文献2;非特許文献3;特許文献1)、ホップ酸(特許文献2)、FermaSure(商標)、ならびにエリスロマイシン、タイロシン、およびテトラサイクリンが挙げられる。
グルコース利用に加えたキシロースおよびアラビノース利用、そして競合代謝経路の不活性化をはじめとする株の改善を設計することで、エタノールを生産する効果的な生体触媒として、ザイモモナス属(Zymomonas)が開発されている。さらにザイモモナス属(Zymomonas)は、セルロース系バイオマス加水分解物中に存在する阻害物質に対する耐性を増大させることにより、加水分解物発酵培地中における使用のために適応されている。しかしこの生体触媒は細菌であり、優勢な汚染物質もまた細菌であることから、エタノール発酵のための生体触媒としてザイモモナス属(Zymomonas)を使用することには、汚染制御における追加的な難題がある。
テトラサイクリン、カナマイシン、ポリミキシン、およびストレプトマイシンをはじめとする、酵母と共に安全に利用できる多数の抗生物質の濃度は、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZM4株の増殖を阻害する(非特許文献4)。ザイモモナス属(Zymomonas)と共に利用するのに、ペニシリンGのみが安全であることが示された。ベンジルペニシリンが、エタノール生産のためのバッチ式ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)発酵において、細菌汚染を制御するのに成功裏に使用された(非特許文献5)。別のレビューでは、ザイモモナス属(Zymomonas)は、シードルおよびビールの汚染物質であることが報告されており、カナマイシン、ポリミキシン、およびスレプトマイシン(sreptomycin)をはじめとするいくつかの抗生物質の典型的に、使用されるレベルに対して耐性があるザイモモナス属(Zymomonas)株が、発見されている(非特許文献6)。株間の違いは、Z.モビリス(Z.mobilis)CP4株中で、ストレプトマイシン、カナマイシン、およびゲンタマイシンについて発見されたように、プラスミド耐性のコード化に関連していることもある(非特許文献7)。
国際公開第2007145857号明細書 米国特許第20090042276号明細書
Day et al.(1954)Agricultural and Food Chemistry 2:252−258 Hynes et al.(1997)J.of Industrial Microbiology & Biotechnology 18:284−291 Bischoff et al.(2009)Biotechnology and Bioengineering 103:117−122 Agrawan and Basappa,Biotechnology Letters(1996)18:673−678 Grote and Rogers,Journal of Fermentation Technology(1985)63:287−290 Swings and De Ley,Bacteriological Reviews(1977)41:1−46 Walia et al.(1984)Applied and Environmental Microbiology 47:198−200
エタノール生産のために開発されている細菌ザイモモナス属(Zymomonas)生体触媒を利用する発酵において、細菌汚染物質を制御する方法に対する必要性が依然としてある。
本発明は、ザイモモナス属(Zymomonas)が生体触媒である、発酵ブロス組成物と、培地の細菌汚染を制御する方法とを提供する。
したがって本発明は、
a)発酵培地;
b)バージニアマイシン;および
d)増殖するザイモモナス属(Zymomonas)細胞集団
を含んでなる発酵ブロス組成物を提供する。
別の態様では本発明は、
a)発酵培地を提供するステップと;
b)バージニアマイシンを発酵培地に添加するステップと;
c)ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌を発酵培地に添加して、それによって発酵ブロスを生産するステップと;
d)発酵ブロスをザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖に適した条件に維持するステップと
を含んでなり、手順b)およびc)が、順番に実施されても、または同時に実施されてもよく、細菌汚染が制御される、ザイモモナス属(Zymomonas)生体触媒を使用する発酵中で細菌汚染を制御する方法を提供する。
一実施形態では、この方法の発酵ブロス中でエタノールが生産される。
さらに別の態様では本発明は、
a)発酵培地を提供するステップと;
b)バージニアマイシンの存在下で増殖させたザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌を発酵培地に添加して、発酵ブロスを生産するステップと;
c)発酵ブロスをザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖およびザイモモナス属(Zymomonas)細胞によるエタノール生産に適した条件に維持するステップと
を含んでなり、エタノールが生産される、エタノールを生産する方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、バージニアマイシンを含んでなる発酵培地中で、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞を培養するステップを含んでなる、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖を改善する方法を提供する。
キシロース利用のために遺伝子改変された、ザイモモナス(Zymomonas)中のエタノール発酵経路の略図を示す。 2g/Lの酵母エキス抽出物と、異なる濃度のLactrol(登録商標)、Lactoside V(商標)、またはLactoside 247(商標)、および対照を添加した、清澄化MD07#3加水分解物中のZ.モビリス(Z.mobilis)ZW705株の増殖を示すグラフである。 2ppmのLactrol(登録商標)あり(F1068)またはなし(F1067)の規定培地中における、最初に1:100の比率のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株を接種した、培養物中の乳酸(A)濃度のグラフを示す。 2ppmのLactrol(登録商標)あり(F1068)またはなし(F1067)の規定培地中における、最初に1:100の比率のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株を接種した、エタノール(B)濃度のグラフを示す。 2ppmのLactrol(登録商標)あり(F1068)またはなし(F1067)の規定培地中における、最初に1:100の比率のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株を接種した、培養物中のグルコース利用のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させた種培養を接種して、バージニアマイシンを欠く培地(F1069)中で培養した、または2ppmのLactrol(登録商標)を含有する培地(F1070)中で培養した、加水分解物培地中の乳酸(A)濃度のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させた種培養を接種して、バージニアマイシンを欠く培地(F1069)中で培養した、または2ppmのLactrol(登録商標)を含有する培地(F1070)中で培養した、加水分解物培地中のエタノール(B)濃度のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させた種培養を接種して、バージニアマイシンを欠く培地(F1069)中で培養した、または2ppmのLactrol(登録商標)を含有する培地(F1070)中で培養した、加水分解物培地中のグルコース(A)利用のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させた種培養を接種して、バージニアマイシンを欠く培地(F1069)中で培養した、または2ppmのLactrol(登録商標)を含有する培地(F1070)中で培養した、加水分解物培地中のキシロース(B)利用のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させ、バージニアマイシンなしで増殖させた種培養を接種して、異なる濃度のLactrol(登録商標)を含有する加水分解物培地中で培養した、培養物の乳酸(A)濃度のグラフを示す。 最初に1:100の比率のL.プランタルム(L.plantarum):Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株で汚染させ、バージニアマイシンなしで増殖させた種培養を接種して、異なる濃度のLactrol(登録商標)を含有する加水分解物培地中で培養した、培養物のエタノール(B)濃度のグラフを示す。
本発明は、エタノール生産などのための生体触媒として、ザイモモナス属(Zymomonas)を利用する発酵中で、汚染細菌を制御するための抗菌剤の使用に関する。バージニアマイシンが、汚染細菌を効果的に制御する一方で、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞にとって安全であるという発見は、ザイモモナス属(Zymomonas)が生体触媒である発酵中で、それを利用できるようにする。特に、セルロース系バイオマス加水分解物を含有する発酵培地中の汚染細菌の効果的な制御には、典型的に、酵母によるエタノール生産発酵で使用されるレベルよりも高い、高レベルのバージニアマイシンが必要であることが分かった。エタノール生産を低下させることなく、高レベルをザイモモナス属(Zymomonas)発酵中で使用し得る。燃料添加剤として使用するための、セルロース系バイオマス加水分解物などの再生可能資源からのエタノールの効率的な生産は、化石燃料不足に対処して、エネルギーコストと地球温暖化への影響を低下させる。
以下の定義と略語を特許請求の範囲と明細書の説明で使用する。
本明細書の用法では、「comprises(含んでなる)」、「comprising(含んでなる)」、「includes(含む)」、「including(含む)」、「has(有する)」、「having(有する)」、「contains(含有する)」、または「containing(含有する)」という用語、またはそれらのあらゆるその他のバリエーションは、非排他的包含をカバーすることが意図される。例えば要素の一覧を構成する組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されない、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有のその他の要素を含んでもよい。さらに特に断りのない限り、「or」は排他的orでなく包括的orを指す。例えば条件AまたはBは、以下のいずれかによって満たされる:Aが真で(または存在し)Bが偽であり(または存在せず)、Aが偽で(または存在せず)Bが真であり(または存在する)、AおよびBの双方が真である(または存在する)。
さらに本発明の構成要件または構成要素に先立つ不定冠詞「a」および「an」は、構成要件または構成要素の事例数(すなわち発生率)に関して、非制限的であることが意図される。したがって「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むものと解釈すべきであり、構成要件または構成要素の単数語形は、数が単数であることを明らかに意味する場合を除いて、複数もまた含む。
「発明」または「本発明」という用語は、本明細書の用法では非限定的用語であり、特定の発明の任意の単一実施形態を指すことは意図されず、本明細書および特許請求の範囲に記載される全ての可能な実施形態を包含する。
本明細書の用法では、使用される本発明の成分または反応物質の量を修飾する「約」という用語は、例えば濃縮物または溶液を実際に作成するのに使用される、典型的な測定および液体取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意による誤りを通じて;組成物を作成しまたは方法を実施するのに用いられる成分の製造、起源または純度の違いを通じて、生じ得る数量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の最初の混合物から生じる組成物の異なる平衡条件のために、異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されるか否かを問わず、特許請求の範囲には量の同等物が含まれる。一実施形態では、「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味する。
「エタノール産生菌」という用語は、炭水化物源の代謝を通じて、エタノールを産生する生物を指す。
「発酵性糖」という用語は、発酵過程において、微生物が炭素源として使用し得るオリゴ糖類および単糖類を指す。
「同時糖化発酵(SSF)」という用語は、バイオマスが糖化され、糖化から生じる発酵性糖類が生体触媒によって使用され、全て同時に、典型的に、同一反応容器内で、生成物が生じる過程を指す。
「セルロース系」という用語は、セルロースと、ヘミセルロースおよびリグニンをはじめとする追加的な成分とを含んでなる、組成物を指す。
「リグノセルロース系」という用語は、リグニンとセルロースの双方を含んでなる組成物を指す。リグノセルロース系物質はまた、ヘミセルロースを含んでなってもよい。
「糖化」という用語は、多糖類からの発酵性糖類の生成を指す。
「生体材料」という用語は、生体触媒による発酵で使用されてもよい炭水化物源である、あらゆる生物由来材料を指す。生体材料としては、セルロース系バイオマス、ならびに穀物、マッシュ、糖蜜、および(甜菜やサトウキビなどからの)粗汁などの炭水化物源として使用される、その他の植物材料と植物由来材料が挙げられる。
「前処理バイオマス」という用語は、糖化に先だって処理を受けたバイオマスを意味する。
「セルロース系バイオマス」という用語は、セルロースを含んでなり、任意選択的に、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類および/または単糖類をさらに含んでなる材料をはじめとする、あらゆるセルロース系またはリグノセルロース系材料を指す。セルロース系バイオマスはまた、タンパク質および/または脂質などの追加的な成分を含んでなってもよい。セルロース系バイオマスは、単一起源に由来してもよく、または2つ以上の起源に由来する混合物を含んでなり得る;例えば、セルロース系バイオマスは、トウモロコシ穂軸とトウモロコシ茎葉の混合物、または草と葉の混合物を含んでなることもあり得る。セルロース系バイオマスとしては、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、製紙業汚泥、庭ごみ、木材および林業廃棄物が挙げられるが、これに限定されるものではない。セルロース系バイオマスの例としては、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ苞葉などの作物残渣、トウモロコシ茎葉、草本、小麦、麦藁、大麦藁、乾草、稲藁、スイッチグラス、パームの葉、空のパーム果房、古紙、サトウキビバガス、ソルガムまたは大豆セルロース系植物材料、穀物製粉から得られるセルロース成分、樹木、枝、根、葉、木片、おがくず、灌木および低木、野菜、果物、花卉、および家畜糞尿が挙げられるが、これに限定されるものではない。
「セルロース系バイオマス加水分解物」という用語は、セルロース系またはリグノセルロース系バイオマスの糖化から生じる生成物を指す。バイオマスはまた、糖化に先だって前処理されてもよい。セルロース系バイオマス加水分解物は、バイオマス固形物を含有する生成物である。
「清澄化セルロース系バイオマス加水分解物」または「清澄セルロース系バイオマス加水分解物」という用語は、処理されて固形分が除去されたセルロース系バイオマス加水分解物を指し、それはセルロース系バイオマス加水分解物とは見なされない。さらに、セルロース系バイオマスに由来する糖類を含有する、あらゆる調製物。
「糖化酵素」という用語は、バイオマス成分の発酵性糖類への変換を触媒し得る酵素を指す。典型的に、酵素は、バイオマスが前処理された場合に、より効果的である。
「実質的汚染」という用語は、抗菌剤なしで発酵ブロスを約40時間培養すると、乳酸の凡その規定培地よりも多く生成する、発酵ブロス中の乳酸菌汚染のレベルを指す。
「乳酸菌」という用語は、炭水化物発酵の主な代謝最終産物として乳酸を産生する細菌を指す。乳酸菌(LAB)はグラム陽性細菌乳酸桿菌目(Lactobacillales)に属し、例えば、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、および腸球菌属(Enterococcus)が挙げられる。
「発酵培地」という用語は、生体触媒として使用される微生物の増殖を支持する、栄養素などの成分を含んでなる組成物を指す。発酵培地は、小規模培養および大規模生産発酵をはじめとする、任意の規模で使用してもよい。
「発酵ブロス」という用語は、その中で発酵が起きているまたは起きた、発酵培地および生体触媒細胞を含んでなる組成物を指す。発酵ブロス中における生体触媒の培養期間次第で、このブロスはまた、エタノールなどの生体触媒によって生成される生成物も含んでもよい。
「種培養」という用語は、発酵ブロスを生成するより多量の発酵培地に接種するのに使用される、生体触媒細胞の培養である。典型的に、種培養は、発酵ブロスの最終容積の約0.01%〜20%v/vである。
「汚染」という用語は、意図的に添加されたのではない微生物の存在を指す。典型的に、所望の生体触媒が、発酵ブロスを生成する増殖培地に導入される。発酵ブロス中に存在する、導入された生体触媒以外の微生物は、汚染と見なされる。
本方法は、エタノール生産のための発酵などのザイモモナス属(Zymomonas)細菌が生体触媒である、培養中の望まれない細菌の制御を提供する。望まれない汚染細菌は、典型的に、大規模工程中に、特に加工生体材料を含有する培地中に、存在する。培地で使用される加工生体材料としては、トウモロコシまたは小麦マッシュ、甜菜またはサトウキビ糖蜜、およびセルロース系またはリグノセルロース系バイオマス加水分解物などの炭水化物源が挙げられる。汚染細菌は、生体材料、加工装置、接種培養物、プロセス水、空気、またはその他の起源から、発酵過程に取り込まれることもある。生産発酵における汚染の制御は、典型的に、生体触媒が増殖して、汚染細菌存在下で得られるよりも高いレベルで生成物を産生できるようにして、より効率的で経済的な発酵過程を提供する。
ザイモモナス属(Zymomonas)発酵のための抗菌剤
ザイモモナス属(Zymomonas)それ自体は細菌であるので、ザイモモナス属(Zymomonas)発酵で使用される抗菌剤は、ザイモモナス属(Zymomonas)細菌に影響を及ぼすことなく、汚染細菌を選択的に標的にしなくてはならない。生体材料由来炭水化物源を使用する大規模発酵中の優勢な汚染細菌は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)株などの乳酸菌(LAB)である。LABはグラム陽性である一方で、ザイモモナス属(Zymomonas)はグラム陰性である。したがって難題は、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖およびエタノール産生に対する悪影響なしに、発酵培地中でLABを制御する抗菌剤を同定することである。LABに加えて、その他の汚染細菌が、この種の抗菌剤によって制御されてもよい。
本方法は、ザイモモナス属(Zymomonas)発酵中における選択的抗菌剤として、バージニアマイシンを使用する。本明細書において、バージニアマイシンは、ザイモモナス属(Zymomonas)培養物の汚染制御における利用で、安全であることが分かった。バージニアマイシンは、ストレプトミセス・バージニアエ(Streptomyces virginiae)によって産生され、Lactrol(登録商標)(Phibro;Ridgefield Park,NJ)およびLactoside V(商標)(Lallemand Ethanol Technology;Milwaukee,WI)などの異なる製剤として市販される。Lactrol(登録商標)は、酵母が生体触媒であるエタノール発酵において、0.25百万分率(ppm)〜2.0ppmでの使用が推奨され、0.5ppmが最も一般的に使用される。製造会社の使用説明書は、用量が、発酵中に6.0ppmを超えるべきではないとしている。Lactrol(登録商標)の仕様書は、製剤が100%活性であるとして、2ppmのLactrol(登録商標)が2ppmのバージニアマイシンに相当するとしている。Lactoside V(商標)は、酵母が生体触媒であるエタノール発酵中において、0.1ppm〜3.0ppmでの使用が推奨される。さらにLactoside 247(商標)(Lallemand Ethanol Technology;Milwaukee,WI)は、ペニシリンGと組み合わされたバージニアマイシンを含有する。製造会社の使用説明書は、酵母が生体触媒であるエタノール発酵中における、1〜2ppmでの使用を推奨し、重度の感染では潜在的により高い比率が必要である。
一態様では、本方法では、バージニアマイシンとザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌とが、発酵ブロスを生成する発酵培地に添加され、それはザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖に適した条件に維持される。バージニアマイシンおよび種菌は、培地に、順番に添加しても、または同時に添加してもよい。本発酵ブロス組成物は、下述するように、発酵培地、バージニアマイシン、およびザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖集団を含んでなる。ひとたび発酵培地に、冷凍庫原液からの細胞、冷凍庫原液から復活させた細胞、または種培養中の細胞などのザイモモナス属(Zymomonas)細胞が接種されると、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞が増殖して、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖集団を形成する。
発酵培地は、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖および生産を支持する、任意のタイプであってもよい。当業者は、以下の情報を考慮して、記載されるタイプの培地のいずれでも調製する方法を理解するであろう。一実施形態では、発酵培地は規定培地である。この培地は、グルコースなどの炭水化物源と、アミノ酸源と、酵母エキスなどのその他の栄養素と、微量成分、窒素、KHPOなどのリン、およびMgSOを含んでもよいその他の成分とをはじめとする、典型的な購入された成分を含有する。規定培地は、実験室規模培養ならびに大規模発酵種菌として使用される種培養を培養するのに使用されることが多い。
別の実施形態では、発酵培地は、マッシュ、粗汁、または糖蜜などの非セルロース系材料から得られる糖類を含有する。これらの糖類は、穀類(トウモロコシ、小麦、大麦、およびライ麦など)、および甜菜およびサトウキビなどの糖料作物などの生体材料から調製される。発酵のために使用される加水分解マッシュは、糊化温度を超える温度に加熱して、アルファアミラーゼで処理して液化し、グルコアミラーゼなどの酵素を使用して糖化することで、典型的に、穀類から製造される。発酵培地中では、甜菜およびサトウキビからの糖蜜または粗汁を糖原料として使用してもよい。糖原料は主にデンプンまたは糖汁であるので、この種の糖原料は、非セルロース系生体材料糖原料(リグノセルロース系をはじめとするセルロース系)である。この種の糖原料は、典型的に、種培養で、および生体触媒として酵母を使用するエタノール生産で、およびその他の非セルロース系大規模発酵中で使用される。
非セルロース系起源からの糖を有する合成培地および培地には、(リグノセルロース系をはじめとする)セルロース系バイオマス加水分解物が欠如している。さらに、セルロース系バイオマスから得られて、高度に精製され固形物などのその他のセルロース成分が除去された、糖原料を含有する培地は、セルロース系バイオマス加水分解物が欠如した培地と見なされる。この種の培地は、清澄化セルロース系バイオマス加水分解物を含有する。
さらに別の実施形態では、発酵培地は、(リグノセルロース系をはじめとする)セルロース系生体材料から調製された、セルロース系バイオマス加水分解物を含有する。セルロース系バイオマス加水分解物は、バイオマス固形物を含有する。セルロース系バイオマス加水分解物は、(リグノセルロース系をはじめとする)セルロース系バイオマスの糖化によって生成される。典型的に、バイオマスは、糖化に先だって前処理される。バイオマスは、当業者に知られているあらゆる方法によって処理され、加水分解物中に発酵性糖類を生じてもよい。典型的に、バイオマスは、物理的および/または化学的処理を使用して前処理され、酵素的に糖化される。物理的および化学的処理としては、粉砕、製粉、切断、アンモニアまたはNaOHなどの塩基処理、および/または酸処理が挙げられる。特に有用なのは、アンモニアを含んでなる水溶液に、バイオマスを接触させて、バイオマス−水性アンモニア混合物を生成する低アンモニア前処理であり、参照によって本明細書に援用する同一譲受人米国特許第7,932,063号明細書で開示されるように、アンモニア濃度は、バイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリpHを維持するのに十分であるが、バイオマス乾燥重量に対して約12重量%未満であり、バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−水性アンモニア混合物重量に対して少なくとも約15重量%固形分である。
酵素的糖化は、典型的に、酵素組成物または配合物を利用して、セルロースおよび/またはヘミセルロースを分解し、例えば、グルコース、キシロース、およびアラビノースなどの糖類を含有する加水分解物を生成する。糖化酵素は、Lynd,L.R.,et al.(Microbiol.Mol.Biol.Rev.,66:506−577,2002)で概説される。少なくとも1つの酵素が使用され、典型的に、1つまたは複数のグリコシダーゼを含む糖化酵素配合物が使用される。グリコシダーゼは、二糖類、オリゴ糖類、および多糖類のエーテル結合を加水分解し、一般群「ヒドロラーゼ」(EC3.)の酵素分類EC 3.2.1.x(Enzyme Nomenclature 1992,Academic Press,San Diego,CAと、付録1(1993)、付録2(1994)、付録3(1995)、付録4(1997)、および付録5[それぞれEur.J.Biochem.,223:1−5,1994;Eur.J.Biochem.,232:1−6,1995;Eur.J.Biochem.,237:1−5,1996;Eur.J.Biochem.,250:1−6,1997;およびEur.J.Biochem.,264:610−650 1999])にある。本方法で有用なグリコシダーゼは、それらが加水分解するバイオマス構成要素によって分類し得る。本方法で有用なグリコシダーゼとしては、セルロース加水分解グリコシダーゼ(例えば、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ)、ヘミセルロース加水分解グリコシダーゼ(例えば、キシラナーゼ、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノキシラナーゼ、マンナーゼ、ガラクターゼ、ペクチナーゼ、グルクロニダーゼ)、およびデンプン加水分解グリコシダーゼ(例えば、アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ)が挙げられる。さらに、ペプチダーゼ(EC3.4.x.y)、リパーゼ(EC3.1.1.xおよび3.1.4.x)、リグニナーゼ(EC1.11.1.x)、またはフェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)などのその他の活性を糖化酵素共同体に添加して、バイオマスのその他の成分からの多糖類の放出を促進することが有用なこともある。多糖類加水分解酵素を産生する微生物が、異なる基質特異性を有するいくつかの酵素または一群の酵素によって触媒される、セルロース分解能力などの活性を往々にして示すことは、当該技術分野で公知である。したがって微生物からの「セルラーゼ」は、一群の酵素を含んでなってもよく、その1つまたは複数またはその全てが、セルロース分解活性に貢献してもよい。セルラーゼなどの商業的または非商業的酵素製剤は、酵素を得るのに利用される精製スキーム次第で、多数の酵素を含んでなってもよい。糖化で有用な多数のグリコシルヒドロラーゼ酵素およびその組成物が、国際公開第2011/038019号パンフレットで開示される。
糖化酵素は、商業的に入手されてもよい。このような酵素としては、例えばSpezyme(登録商標)CPセルラーゼ、Multifec(登録商標)キシラナーゼ、Accelerase(登録商標)1500、およびAccellerase(登録商標)DUET(Danisco U.S.Inc.,Genencor International,Rochester,NY)、およびNovosyme−188(Novozymes,2880 Bagsvaerd,Denmark)が挙げられる。さらに糖化酵素は、未精製であってもよく、細胞抽出物またはホールセル調製物として提供されてもよい。酵素は、1つまたは複数の糖化酵素を発現するように改変された組換え微生物を使用して生成されてもよい。例えば、前処理セルロース系バイオマス糖化のために本明細書で使用されるH3Aタンパク質調製物は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichodermareesei)遺伝子改変株によって産生される酵素の未精製調製物であり、セルラーゼおよびヘミセルラーゼの組み合わせを含み、参照によって本明細書に援用する、国際公開第2011/038019号パンフレットに記載される。
さらに糖化のための酵素としては、例えば、GH3、GH39、GH43、GH55、GH10、およびGH11ファミリーメンバーなどのグリコシルヒドロラーゼが挙げられる。GHは、2つ以上の炭水化物間の、または炭水化物と非炭水化物部分間のグリコシド結合を加水分解する、一群の酵素である。GHファミリーは、配列類似性に基づいて分類されており、分類は、Carbohydrate−Active enzyme(CAZy)database(Cantarel et al.(2009)Nucleic Acids Res.37(Database issue)D233−238)中で利用できる。これらの酵素のいくつかは、様々な基質に作用でき、糖化酵素としての効力を実証した。グリコシドヒドロラーゼファミリー3(「GH3」酵素は、例えば、β−グルコシダーゼ(EC:3.2.1.21);β−キシロシダーゼ(EC:3.2.1.37);N−アセチルβ−グルコサミニダーゼ(EC:3.2.1.52);グルカン−1,3−グルコシダーゼ(EC:3.2.1.58);セロデキストリナーゼ(EC:3.2.1.74);エキソ−1,3−1,4−グルカナーゼ(EC:3.2.1);および/またはβ−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)活性をはじめとする、いくつかの既知の活性を有する。グリコシドヒドロラーゼファミリー39(「GH39」)酵素はまた、例えば、α−L−イズロニダーゼ(EC:3.2.1.76)および/またはβ−キシロシダーゼ(EC:3.2.1.37)活性をはじめとする、いくつかの既知の活性を有する。グリコシドヒドロラーゼファミリー43(「GH43」)酵素は、例えば、L−α−アラビノフラノシダーゼ(EC 3.2.1.55);β−キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37);エンドアラビナナーゼ(EC 3.2.1.99);および/またはガラクタン1,3−β−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.145)活性をはじめとする、いくつかの既知の活性を有する。グリコシドヒドロラーゼファミリー51(「GH51」)酵素は、例えば、L−α−アラビノフラノシダーゼ(EC 3.2.1.55)および/またはエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)活性を有することが知られている。グリコシドヒドロラーゼファミリー10(「GH10」)は、Schmidt
et al.,1999,Biochemistry 38:2403−2412、およびLo Leggio et al.,2001,FEBS Lett 509 303−308)で詳細に記載され、グリコシドヒドロラーゼファミリー11(「H11」)は、Hakouvainen et al.,1996,Biochemistry 35:9617−24に記載されている。
下述するように、バイオマス加水分解物を含有する発酵培地は、1つまたは複数の追加的な糖類および/またはその他の添加成分がある、特定百分率の加水分解物を含有してもよく、または培地は、ソルビトールなどの微量添加がある、90%以上の加水分解物を含有してもよい。様々な実施形態では、セルロース系バイオマス加水分解物は、発酵ブロスの最終容積の少なくとも約50%、60%、79%、80%、90%または95%である。典型的に、発酵ブロスの最終容積の約10%は、種菌である。
バイオマス加水分解物の固形分含量は、用いられる前処理および糖化方法次第で、典型的に、約10%〜40%である。より典型的に、は、固形分は約25%であり、90%のセルロース系バイオマス加水分解物を含有する培地は、約23%の固形分を有する。
発酵ブロスで使用されるバージニアマイシンの濃度
ザイモモナス属(Zymomonas)発酵ブロス中の汚染を制御するのに必要なバージニアマイシンの濃度は、発酵培地がセルロース系バイオマス加水分解物を含有するかどうかに応じて、変動することが本明細書で分かった。(上述の)セルロース系バイオマス加水分解物を欠く培地を含有する発酵ブロスでは、約2ppmの濃度のバージニアマイシンが、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞のグルコース利用およびエタノールの産生に影響を及ぼすことなく、汚染細菌を制御することが、本明細書で分かった。セルロース系バイオマス加水分解物を欠く本発酵ブロス中のバージニアマイシンの濃度は、それらの間のあらゆる整数または分数を含めて、少なくとも約0.25ppm、0.5ppm、0.75ppm、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、10ppm、または20ppmであってもよい。典型的な実施形態は、約0.25ppm〜20ppmの濃度でバージニアマイシンを使用する。より典型的な実施形態は、約1.0ppm〜10ppmの濃度でバージニアマイシンを使用する。汚染を制御するのに必要なバージニアマイシンの量は、汚染の量、培地のタイプ、接種に続くザイモモナス属(Zymomonas)細胞の濃度、および発酵条件などの要因に左右され、当業者によって特定状況のために判定され得る。
汚染細菌の制御は、発酵ブロス中の乳酸レベルを測定することで評価してもよく、約40時間の発酵後の約5g/L未満の乳酸の存在は、汚染が制御されていることを意味する。汚染は、発酵ブロス中で約5g/L未満の乳酸、または4g/Lまたは3g/Lまたは2g/Lまたは1g/L未満の乳酸に制御されてもよい。発酵ブロス中の乳酸の量は、典型的に、当業者に知られているように、HPLCによってアッセイされる。
セルロース系バイオマス加水分解物を欠いて、2.5ppmまたは5ppmのバージニアマイシンを含有する培地中では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖は、OD600による測定で、バージニアマイシン不在下の細胞増殖よりもさらに良いことが本明細書で分かった。一実施形態では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖は、バージニアマイシンを含んでなる培地中で、細胞を培養することで改善される。増殖の改善は、競合を通じた汚染レベルの低下、および/またはエタノール産生の増大に貢献してもよい。増殖を改善するために使用されるバージニアマイシンの濃度は、使用される培地タイプ、接種に続くザイモモナス属(Zymomonas)細胞の濃度、および発酵条件などの要因に左右される。当業者は、特定培地および発酵条件を使用した場合に、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖を刺激する、バージニアマイシンの濃度を容易に評価し得る。例えば、本明細書の実施例1に記載される条件下にある、清澄化セルロース系バイオマス加水分解物培地中では、2.5ppm〜5ppmのバージニアマイシン濃度が、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖を改善する。その他の発酵では、約1ppm〜約50ppm以上の濃度範囲のバージニアマイシンの存在が、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖を改善してもよい。
種培養中に存在する汚染が(上述したように)バージニアマイシンを使用して制御され、種培養がより大規模の発酵に接種するのに使用された場合、種菌とは別にバージニアマイシンまたはその他の抗微生物剤を発酵培地に添加することなく、汚染は大規模発酵中で制御されたままであることが、本明細書で分かった。したがって一実施形態では、発酵培地に接種するのに使用される種培養へのバージニアマイシンの包含によって、発酵中で汚染が制御される。発酵培地は、セルロース系バイオマス加水分解物を含有してもよく、またはセルロース系バイオマス加水分解物を欠いてもよい。セルロース系バイオマス加水分解物を欠く培地中で培養された種培養中では、バージニアマイシンの濃度は、上述のように、それらの間のあらゆる整数または分数を含めて、少なくとも約0.25ppm、0.5ppm、0.75ppm、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、10ppm、または20ppmであってもよい。典型的な実施形態は、約0.25ppm〜20ppmの濃度でバージニアマイシンを使用する。より典型的な実施形態は、約1ppm〜約5ppmの濃度でバージニアマイシンを使用する。
しかし種培養中で汚染が制御されない場合、汚染は、汚染された種培養を接種された大規模発酵の要因である。一実施形態では、汚染された種培養を接種された発酵中の汚染は、セルロース系バイオマス加水分解物を欠く培地を使用する場合に、上述したように制御される。
セルロース系バイオマス加水分解物を含有する培地を含有する発酵ブロス中では、少なくとも約10ppmの濃度のバージニアマイシンを使用して、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞による典型的なエタノール生産を保ちながら、汚染細菌を制御し得ることが本明細書で分かった(本明細書で使用されるザイモモナス属(Zymomonas)株では約70〜80g/L)。セルロース系バイオマス加水分解物を含有する本発酵ブロスの様々な実施形態では、発酵ブロス中のバージニアマイシン濃度は、それらの間のあらゆる整数または分数を含めて、少なくとも約10ppm、20ppm、30pm、40ppm、50ppm、100ppm、150ppm、200ppm、または250ppmである。セルロース系バイオマス加水分解物と10ppm〜250ppmの濃度のバージニアマイシンとを含有する培地を含んでなる、汚染された種培養を接種された発酵ブロス中で、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞によって良好なエタノール生産が達成されることが、本明細書で分かった。セルロース系バイオマス加水分解物含有培地中の比較的高い固形分の存在が、セルロース系バイオマス加水分解物を欠く培地中で効果的なレベルと比較して、汚染を制御するのに必要なより高レベルのバージニアマイシンに対する要求に寄与することもある。加水分解物中の様々なバイオマス分解産物の存在もまた、寄与することもある。バージニアマイシンの高いレベルは、バージニアマイシン製品の製造会社によって、酵母エタノール生産での使用のために推奨されるレベルを上回る。
発酵で使用されるあらゆるタイプの培地において、特定の汚染制御の結果は、使用されるザイモモナス属(Zymomonas)株の増殖および産生特性、存在する汚染微生物、最初の汚染レベル、存在する場合は(汚染する加水分解物副産物の固形分百分率および毒性およびザイモモナス属(Zymomonas)細胞をはじめとする)培地中のセルロース系バイオマス加水分解物のタイプと量、および混合を含めた培養条件をはじめとする要因に左右される。当業者は、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の生産性を保ちながら、特定の発酵条件を使用して、特定のザイモモナス属(Zymomonas)発酵ブロスの汚染を制御するのに効果的である、本明細書で開示される量に対するバージニアマイシンの濃度を容易に判定し得る。
ザイモモナス属(Zymomonas)細胞種菌
本方法では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌は、増殖培養を開始するのに効果的なあらゆるザイモモナス属(Zymomonas)細胞源であってもよい。典型的に、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は冷凍保存株として貯蔵され、細胞は、規定培地中の小規模培養で培養して復活させる。小規模培養は、発酵ブロスまたは培養物を生成するための発酵培地に添加される種菌として使用される。小規模培養はまた、種培養に接種するのに使用してもよい。ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、種培養中で培養され、それは次に種菌として、より大規模な発酵に添加される。種菌として使用される種培養は、汚染を制御するのに必要なバージニアマイシンを含まない無菌規定培地を含有してもよい。代案としては、種菌として使用される種培養は、規定培地を含有してもよく、または加工装置などによって汚染されることもあるマッシュまたは糖蜜から調製された培地などのセルロース系バイオマス加水分解物を欠くその他の培地を含有してもよく、上述したようにバージニアマイシンが添加されて、汚染が制御される。さらに種菌として使用される種培養は、セルロース系バイオマス加水分解物と、上述したように汚染を制御するバージニアマイシンとを含有してもよい。
ザイモモナス属(Zymomonas)細胞
あらゆるザイモモナス属(Zymomonas)細胞株が、本組成物および方法で使用されてもよく、使用される培地タイプや所望の発酵過程の結果をはじめとする要因に基づいて、選択される。所望の生産工程の効果的生体触媒である、あらゆるザイモモナス属(Zymomonas)株を使用してもよい。例えばザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、グルコース、フルクトースおよび/またはスクロースを発酵基質として利用して、エタノールを自然に産生するが、キシロースは代謝しない。一実施形態では、本方法および組成物で使用されるザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、キシロース利用のために改変されており、それはキシロースを含有するセルロース系バイオマス加水分解物を使用する場合に、特に所望される。
Z.モビリス(Z.mobilis)などのエタノール産生ザイモモナス属(Zymomonas)株が、キシロースを発酵してエタノールにするために改変されている。米国特許第5,514,583号明細書、米国特許第5,712,133号明細書、米国特許第6,566,107号明細書、国際公開第95/28476号パンフレット、Feldmann et al.((1992)Appl Microbiol Biotechnol 38 354−361)、およびZhang et al.((1995)Science 267:240−243)に記載されるようにして、キシロース代謝に関与する酵素発現のために、典型的に、4つの遺伝子をZ.モビリス(Z.mobilis)に導入して、キシロース利用代謝経路(図1)を作成する。これらとしては、キシロースのキシルロースへの変換を触媒するキシロースイソメラーゼをコードする遺伝子、およびキシルロースをリン酸化してキシルロース−5−リン酸を形成するキシルロキナーゼとをコードする遺伝子が挙げられる。ペントースリン酸経路の2つの酵素であるトランスケトラーゼとトランスアルドラーゼもさらに発現され、これらはキシルロース−5−リン酸を中間体に変換し、それはペントース代謝を解糖エントナー・ドウドロフ(Entner−Douderoff)経路に連結して、キシロースのエタノールへの代謝を可能にする(図1を参照されたい)。これらの酵素をコードするDNA配列は、腸内細菌、およびある種の酵母や真菌などのキシロースを代謝できる多数の微生物のいずれかから得られてもよい。コード領域の起源としては、キサントモナス属(Xanthomonas)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エシェリキア属(Escherichia)、ロドバクター(Rhodobacter)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、アセトバクター属(Acetobacter)、グルコノバクター(Gluconobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、シュードモナス属(Pseudomonads)、およびザイモモナス属(Zymomonas)が挙げられる。大腸菌(E.coli)のコード領域が、典型的に、使用される。
コードDNA配列は、Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPプロモーター)、およびZ.モビリス(Z.mobilis)エノラーゼ(ENOプロモーター)プロモーターなどの、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞中で発現されるプロモーターと、作動可能に連結する。参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,989,206号明細書で開示される、発現が増大した変異GAPプロモーターもまた、ザイモモナス属(Zymomonas)中での発現に有用である。コード領域は、プロモーターから個別に発現されてもよく、または2つ以上のコード領域がオペロン中で連結して、同一プロモーターから発現されてもよい。結果として生じるキメラ遺伝子は、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞に導入してプラスミド上に保ってもよく、または例えば、相同的組換え、部位特異的組み込み、またはランダム組み込みを使用して、ゲノムに組み込んでもよい。キシロース利用代謝経路を発現するように改変された株の例としては、CP4(pZB5)(米国特許第5514583号明細書)、ATCC31821/pZB5(米国特許第6566107号明細書)、8b(米国特許20030162271第号明細書;Mohagheghi et al.,(2004)Biotechnol.Lett.25;321−325)、およびZW658(ATTCC#PTA−7858)が挙げられる。キシロース利用代謝経路の発現のために改変されたザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、唯一の糖としてキシロースを含有する培地中で増殖できるようになる前に、一般に、キシロー含有培地中における適応期間を要する。
追加的な実施形態では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、成長速度および/または細胞量を増大させ、キシロース利用を増大させ、および/またはアラビノースなどのその他の糖類の使用を可能にし、酢酸などの化合物に対する阻害耐性を増大させ、またはエタノール生産を増大させる修飾などの、株を改善する1つまたは複数の追加的な遺伝子修飾を有する。
一実施形態では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,843,760号明細書に記載されるアラビノース利用のために、さらに改変されてもよい。アラビノース利用を可能にするために、キシロース利用経路の遺伝子に加えて発現される遺伝子としては、1)L−アラビノースをL−リブロースに変換するL−アラビノースイソメラーゼ、2)L−リブロースをL−リブロース−5−リン酸に変換するL−リブロキナーゼ、および3)−リブロース−5−リン酸をD−キシルロースに変換するL−リブロース−5−リン酸−4−エピメラーゼ(米国特許第5,843,760号明細書)が挙げられる。参照によって本明細書に援用する、米国特許第2011/0143408号明細書で開示されるように、アラビノース利用の改善は、araE遺伝子からのコード領域の発現などによって、アラビノースプロトン共輸送体をさらに発現することで達成されてもよい。
別の実施形態では、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,897,396号明細書に記載されるように、組み込み宿主因子のサブユニットをコードする内在性himA遺伝子を遺伝子改変してその発現を低下させ、それは酢酸含有培地中の増殖を改善する。酢酸はバイオマス加水分解物中に存在し、したがってバイオマス加水分解物を含有する培地を使用する場合、この成分に対する耐性を増大させることが所望される。
別の実施形態では、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,119号明細書に記載されるように、グルコースフルクトース酸化還元酵素(GFOR)活性を低下させる遺伝子修飾を施す。GFORならびにhimA遺伝子の発現低下は、アルドース還元酵素活性の低下について上で記載されるものなどのあらゆる方法によってもよい。
別の実施形態では、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人同時係属米国特許出願公開第13/161734号明細書で開示されるように、リボース−5−リン酸イソメラーゼ(RPI)活性を増大させる遺伝子修飾が施される。RPIの発現増大は、天然プロモーターよりも高活性のプロモーターなどによって、内在性RPIをコードする遺伝子の発現を増大させることで、またはザイモモナス属(Zymomonas)中のリボース−5−リン酸イソメラーゼ活性によって、任意選択のタンパク質またはポリペプチドをコードする異種遺伝子を発現させることで、達成されてもよい。米国特許出願第13/161734号明細書に記載されるように、RPI−AおよびRPI−Bと称される2つのリボース−5−リン酸イソメラーゼ酵素群があり、そのどちらが発現されてもよい。
別の実施形態では、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,989,206号明細書および米国特許第7,998,722号明細書で開示される、高活性の変異プロモーターを使用して、キシロース利用代謝経路の一部として発現されるキシロースイソメラーゼが発現される。その中で開示される変異プロモーターは、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターである。
別の実施形態では、キシロース利用代謝経路の一部として発現されるキシロースイソメラーゼは、同一譲受人同時係属米国特許公開第2011−0318801号明細書で開示されるように、EC 5.3.1.5によって同定される酵素クラスに含まれる、I群キシロースイソメラーゼである。その中では、ザイモモナス属(Zymomonas)中において、2群キシロースイソメラーゼよりも活性が高い、アクチノプラネス・ミズリエンシス(Actinoplanes missouriensis)から単離されたコード領域から発現されるものなどのI群キシロースイソメラーゼが開示されている。その中で、I群キシロースイソメラーゼは、(PHYLIP(Phylogeny Inference パッケージ バージョン 3.5c;Felsenstein(1989)Cladistics 5:164−166)中で実装されるPHYLIP近隣結合アルゴリズム、GroupSim解析(Capra and Singh(2008)Bioinformatics 24 1473−1480)、およびプロファイル隠れマルコフモデル(HMMERソフトウェアパッケージのhmmsearchアルゴリズム;Janelia Farm Research Campus,Ashburn,VAを使用する)を使用して、分子系統バイオインフォマティクス解析によって、定義される。
別の実施形態では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2011−0014670−A1号明細書で開示されるように、エタノールおよび酢酸アンモニウムを含有するストレス培養中での増殖に適応されている。酢酸耐性が改善されたこれらのザイモモナス属(Zymomonas)株は、酢酸を含有するセルロース系バイオマス加水分解物を含有する発酵培地を使用する場合に、特に有用である。
上記参考文献で開示される株は、本方法で使用されてもよい株の例を提供し、ATCC31821/pZB5、ZW658(ATCC#PTA−7858)、ZW800、ZW801−4、ZW801−4::ΔhimA、AcR#3、およびZW705が挙げられる。
ザイモモナス属(Zymomonas)発酵
本方法では、接種された培地、または発酵ブロスは、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖に適した条件下で培養される。一実施形態では、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞は、発酵で使用される条件下において、エタノール生産の効果的生体触媒であるザイモモナス属(Zymomonas)株細胞であり、発酵ブロス中にエタノールが生成される。増殖が阻害される程度に発酵培地中の糖類濃度が高い場合、培地は、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人の米国特許第7,629,156号明細書で開示されるように、ソルビトール、マンニトール、またはその混合物を含む。典型的に、ソルビトールまたはマンニトールが、約5mMの最終濃度で培地中に存在する。
典型的に、約30℃〜約37℃の温度と、約4.5〜約7.5のpHの条件が使用される。典型的に、(嫌気的、微好気的、または微好気性発酵などの条件を含んでもよい)培養物は、空気、酸素、またはその他の気体の補給なしで、少なくとも約20時間培養され、そして約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70時間以上培養されてもよい。典型的に、種培養が約20時間培養されるのに対し、発酵生産培養物は、約40時間以上培養される。起泡を最小化するために、消泡剤(シリコーンベース、有機ベースなどの任意の種類)を必要に応じて培地に添加してもよい。
商業的生産発酵培養物では、多様な培養手順を応用してもよい。例えば大規模生産は、バッチおよび連続培養手順の双方を使用してもよい。古典的バッチ培養法は、培地組成が培養開始時に設定されて、培養工程において人為的変更を受けない閉鎖系である。したがって所望の生物を培養工程開始時に培地に接種し、系に何も添加せずに、増殖または代謝活性を生じさせる。しかし典型的に、「バッチ」培養は、炭素源添加に関してバッチであり、pHおよび酸素濃度などの要素を制御する試みが頻繁になされる。バッチ系では、系の代謝産物組成とバイオマス組成は、培養を停止させる時点まで常に変化する。バッチ培養内では、細胞は、静的な遅滞期から高い対数増殖期へ、そして最後に、増殖速度が減退または停止する静止期へと減速する。処置を施さない場合、静止期にある細胞はやがて死滅する。対数期にある細胞は、往々にしてエタノール生産の大半に関与する。
標準バッチ系の変法が、流加系である。流加培養工程もまた、本方法および組成物に適し、培養の進行と共に基質が徐々に添加されることを除いては、典型的なバッチ系を構成する。流加バッチ系の実際の基質濃度の測定は困難であるので、pH、およびCOのような排ガスの分圧などの測定可能要素の変化に基づいて推定する。バッチおよび流加培養法は、一般的で当該技術分野で周知であり、例は、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Crueger,Crueger,and Brock,Second Edition(1989)Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA、またはDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36,227,(1992)にある。
本方法および組成物はまた、連続培養工程で使用してもよい。連続培養は、バイオリアクターに培養液が継続的に添加される開放系であり、同時に等量の馴化培地が、加工のために取り出される。連続培養は、概して、細胞が主に対数増殖期にある、一定の高い液相密度に細胞を維持する。代案としては、固定化細胞を用いて連続培養を実施してもよく、その中では炭素および栄養素が継続的に添加されて、有価生成物、副産物または老廃物が、細胞集団から継続的に取り出される。細胞固定化は、当業者に知られているように、天然および/または合成材料から構成される幅広い固体支持体を使用して、実施してもよい。
生産工程では、生産発酵培養は、典型的に、システムの掃除が必要になるまで相次いで実施される。
本方法および組成物はまた、同時糖化発酵(SSF)工程で使用してもよい。例えば参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2011−0318803号明細書で開示される方法を使用してもよい。このSSF工程では、高濃度のエタノール生産のための同時糖化発酵反応において、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞が、低いインペラ撹拌、および糖化発酵混合物中の高濃度の不溶性固形分の条件下で、培養される。さらに、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の追加前に部分的糖化が実施され、次にさらなる糖化および発酵が同時に起きる、ハイブリッド糖化および発酵(HSF)工程を使用してもよい。
以下の実施例で、本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証としてのみ提供されるものと理解すべきである。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特性を見極めることができ、その精神と範囲を逸脱することなく、本発明に様々な変更と修正を加えて、それを様々な用途と条件に適応させ得る。
略語の意味は、次の通りである。「hr」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「L」はリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「g/L」は1リットルあたりグラムを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「pmol」はピコモルを意味し、「OD600」は600nmで評価された光学濃度を意味し、「EFT」は経過発酵時間を意味し、「ppm」は百万分率を意味する。
一般方法
ZW705株の説明
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZW705株は、ZW804−1株から作成した。ZW801−4は、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人の米国特許第7,741,119号明細書に記載される、Z.モビリス(Z.mobilis)の組換えキシロース利用株である。ZW801−4株はZW800株に由来して、それはZW658株に由来し、これらは全て米国特許第7,741,119号明細書に記載される。ZW658は、逐次遺伝子転位事象によって、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼ、およびトランスケトラーゼをコードする、4つのキシロース利用遺伝子を含有する2つのオペロン、PgapxylABおよびPgaptaltktをZW1(ATCC31821)をゲノムに組み込み、続いてキシロース含有選択培地上で適応させて構築した(米国特許第7,629,156号明細書)。ZW658は、ATCCPTA−7858として寄託した。ZW658中で、宿主媒介二重交差相同的組換えを使用して、グルコースフルクトース酸化還元酵素をコードする遺伝子を挿入的に不活性化し、スペクチノマイシン耐性を選択可能なマーカーとして、ZW800を作り出した(米国特許第7,741,119号明細書)。Creリコンビナーゼを使用した部位特異的組換えによって、loxP部位と境を接するスペクチノマイシン耐性マーカーを除去し、ZW801−4を作成した。
参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2011−0014670号明細書に記載されるようにして、Z.モビリス(Z.mobilis)ZW801−4株の培養物を酢酸アンモニウムを含有する培地のストレス条件下での増殖に適応させ、ZW705を作成した。250mlの撹拌されるpHおよび温度制御発酵槽(Sixfors;Bottmingen,Switzerland)内で、ZW801−4の連続培養を実施した。発酵のための基礎培地は、5g/Lの酵母エキス、15mMのリン酸アンモニウム、1g/Lの硫酸マグネシウム、10mMのソルビトール、50g/Lのキシロース、および50g/Lのグルコースであった。高濃度の酢酸およびアンモニアの存在下における増殖への適応は、97日間にわたり、比希釈率によって測定される確立成長速度を維持しながら、上記連続培養培地に添加する酢酸アンモニウムの濃度を少しずつ増大させてもたらされた。酢酸アンモニウムは、160mMの濃度に増大された。アンモニウムイオン濃度のさらなる増大は、139日間の連続培養の終わりまでに、リン酸アンモニウムを210mMの最終総アンモニウムイオン濃度に添加することで達成される。ZW705株は、単一コロニーへの播種と1個の選択コロニーの増幅によって、適応集団から単離された。
穂軸組成物
国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Lagoratory)(Golden,CO)Technical Report NREL/TP−510−42618(2008年4月改訂)で詳述されるように、ASTM E1758−01「Standard method for the determination of carbohydrates by HPLC(HPLCによる炭水化物測定標準法)」を使用して、出発トウモロコシ穂軸中のセルロースおよびキシランの量を測定した。組成物は、乾燥重量を基準にして、34.8%セルロース、29.2%キシラン、12.8%リグニンと判定された。
糖化酵素
Spezyme(登録商標)CPセルラーゼおよびMultifect(登録商標)−CX12Lは、Danisco U.S.Inc.,Genencor International,Rochester,NYから得られた。Novozyme−188は、Novozymes(2880 Bagsvaerd,Denmark)から得られた。
H3Aタンパク質
H3Aタンパク質は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の遺伝子改変H3A株から作成された。株H3Aは、米国特許第7,666,648号明細書に記載されるようにして調製した。簡単に述べると、RL−P37(Sheir−Neiss,G et al.Appl.Microbiol.Biotechnol.1984,20:46−53)に由来して、高いセルラーゼ産生について選択されたトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)変異株を、電気穿孔を使用して、β−グルコシダーゼ発現カセットおよびエンドキシラナーゼ発現カセットで同時形質転換した。1つの形質転換体は、#229株と称される。電気穿孔を使用して、β−キシロシダーゼFv3A発現カセット、β−キシロシダーゼFv43D発現カセット、およびFv51Aα−アラビノフラノシダーゼ発現カセットにより、#229株を同時形質転換した。H3A株は、この変換段階から単離された。
H3A株の発酵中に生成される細胞外タンパク質を遠心分離によって細胞集団から分離し、Millipore分子量カットオフ10kDのメンブレンを通過させて膜限外濾過によって濃縮し、pHを4.8に調節した。総タンパク質は、較正物質としてウシ血清アルブミンを使用して、WeichselbaumおよびGornallによる修正ビウレット法を使用して測定した(Weichselbaum,1960,Amer.J.Clin.Path.1640;Gornall et al.,1949 J.Biol.Chem 177:752)。本明細書でH3Aタンパク質とも称されるこのH3A細胞外タンパク質調製物は、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ組み合わせ調製物として使用され、SSF中に複合糖質加水分解をもたらした。
穂軸加水分解物FRF13
前処理
トウモロコシ穂軸加水分解物は、最初に、米国特許第7,932,063号明細書に記載される低アンモニア法を使用して、粉砕トウモロコシ穂軸の希釈アンモニア前処理によって調製した。容器本体周囲に蒸気を通過させるためのジャケットを含む、水平Littleford Day 130L反応器(Littleford Day,Inc.,Florence,KY)を前処理のために使用して、SSL34と命名される前処理穂軸を生成した。容器に、種トウモロコシ処理からの穂軸を、湿潤穂軸ベースで46容量%の反応器充填に達するまで装填した(51ポンド)。穂軸は、1.0mmの篩付き大型微粉砕機(型番号1SH,シリアル番号10019;Pulverizing Machinery Co.,Summit,NJ)を使用して、1mm未満のサイズにした。必要に応じて、粉砕前に、穂軸にドライアイスを添加して、機器が加熱するのを防止した。微粉砕機の主要駆動部分は、最大ローター速度9,600RPMの5h.p.のモーターである。それは、6個の回転ハンマー、およびシェルを有し、対向する衝撃縁で被覆される。
穂軸は、0.385g/cmの湿潤蒿密度と、7.4重量%の水分を有した。容器上部近くへの28.9重量%の水酸化アンモニウム溶液(9.8ポンド)および水(17.9ポンド)の装入に先だって、0.1気圧に達するまで容器を真空にして、乾燥重量バイオマスに対して6重量%のNHと、容器内部の60重量%固形分を得た。SSL35およびSSL36と命名される第2および第3の前処理バッチを同一様式で実施して、引き続く糖化のために十分な材料を生成した。全てのバッチ中で、反応器撹拌器を70rpmに設定し、容器のジャケットに蒸気を通過させた。容器が80℃の内部温度に達したら、容器の上部近くに蒸気を装入して、容器内部温度を145℃に上昇させた。この温度を20分間保った。この保持時間で15分目に、ジャケットを通過する蒸気を停止させた。前処理の終了時、ベントコンデンサを通じて、大気圧に達するまで反応器を減圧させた。引き続いて、15分間真空(およそ1気圧未満)にして温度を60℃未満に低下させ、容器の底弁開放に先だって、前処理穂軸から追加的なアンモニアおよび水を除去し、前処理バイオマスを回収した。前処理穂軸バッチSSL34、SSL35、およびSSL36の最終固形分重量%は、それぞれ67.4%、66.2%、および68.0%であった。
糖化
上述のH3Aタンパク質での糖化によって、SSL34、SSL35、およびSSL36調製品からの前処理トウモロコシ穂軸の混合物を使用して、200L発酵槽内で、加水分解物(FRF13)を生成した。水の残留分(120.0kg)を発酵槽に添加し、ジャケットを121℃に加熱して20分間滅菌した。水を47℃に冷却し、タンク上部のポートを通じて前処理穂軸混合物を添加し;この時点で20.0kgを添加した。1NのHSOでpHを5.3に調節し、酵素製剤を添加した。酵素の投入量は4.53kgであり、それは反応器に添加された全穂軸中の1gのグルカン+キシランあたり14mgのタンパク質に相当した。続く12時間にわたり、3時間毎に4回、15.0kgの穂軸を反応器に添加して、各添加後に、1NのHSOでpHを5.3に調節した。この操作の標的固形物装填量は、25重量%であった。発酵槽は、およそ72時間にわたり47℃およびpH5.3に制御した。この期間の終了時に、20リットルを抜き取ってこれらの実験で使用し、容器の残留内容物を発酵させた。加水分解物サンプルを分析し、残りは使用時まで冷蔵した。サンプル分析の結果は、表1に示される。
Figure 2015519078
穂軸加水分解物MD07#3
前処理
トウモロコシ穂軸のバッチをハンマーミル(Glen MillsInc.,Clifton,NH)で処理し、3/8インチ(0.95cm)または3/16インチ(0.48cm)の篩を通過させて、145℃に維持される170LのJaygo反応器(Jaygo Manufacturing,Inc.,Mahwah,NJ)内で、乾燥重量バイオマスに対して6%、8%、または10%のアンモニアで20分間処理した。水性アンモニア注入前に反応器を約0.1バールに排気し、20分後、反応器を二段階で約0.1バールにフラッシュした。前処理穂軸混合物の最終固形分濃度は、約60%であった。
糖化
MD07#3加水分解物は、再循環ループを装着した1000L発酵槽内で生成された。水残留分(542.3kg)を発酵槽に添加して、121℃で20分間滅菌した。水を47℃に冷却し、タンク上部に位置する供給装置を通じて前処理穂軸混合物を添加し;この時点で112.1kgを添加した。9.8重量%のHSOでpHを5.3に調節し、第1の酵素投入量を添加した。使用される酵素質量および対応する投入量については、表2を参照されたい。次の9時間にわたり、追加的な317.6kgの前処理トウモロコシ穂軸を添加し、添加全体を通じて、9.8重量%のHSOでpHを5.3に調節した。この操作の標的固形物装填量は、25重量%であった。最初の酵素添加の12時間後に、第2の投入量を添加した(表2を参照されたい)。およそ96時間にわたり発酵槽を47℃およびpH5.3に調節し、再循環ループを通じてスラリーを循環させた。最初の酵素添加の3時間後に開始して、再循環ループ内のロータステータ粉砕機を断続的に使用して、スラリー中の前処理穂軸の粒度を低下させた。粉砕機は、毎回30〜110分間程度で、9回使用した。96時間の操作終了時、いくつかの加水分解物を抜き取り、これらの実験で使用した。加水分解物サンプルを分析して、残りは使用時まで冷蔵した。サンプル分析の結果は、表3にある。
Figure 2015519078
Figure 2015519078
遠心分離と濾過によって、MD07#3加水分解物を清澄化MD07#3から生成し、最終段階は、0.2μmフィルターを通じた濾過であった。
バージニアマイシン供給元
Lactrol(登録商標)は、Phibro(Ridgefield Park,NJ)から購入され、100%バージニアマイシンである。
Lactoside V(商標)およびLactoside 247(商標)は、Lallemand Ethanol Technology(Milwaukee,WI)から購入された。
培地
MRS=10g/Lのペプトン、8g/Lの肉エキス、4g/Lの酵母エキス、20g/Lのグルコース、5g/Lの酢酸ナトリウム三水和物、1g/Lのツイーン80、2g/LのKHPO、2g/Lのクエン酸三アンモニウム、0.2g/LのMgSO 7HO、0.05g/LのMnSO 4HO、pH6.2。
HPLC分析
発酵サンプルを設定間隔で収集し、Waters HPLC system(Alliance system,Waters Corp.,Milford,MA)、またはAgilent 1100 Series LCのいずれかを使用して、条件=0.6mL/分の0.01N H2SO4、注入容積=5μL、オートサンプラー温度=10℃、カラム温度=55℃、稼働時間=25分間、屈折率による検出(40℃保持)で、EtOHと、残留糖類と、酢酸、乳酸、およびグリセロールなどのその他の代謝産物とについて分析した。HPLCカラムは、BioRad(Aminex HPX−87H,BioRad Inc.,Hercules,CA)から購入された。分析物を屈折率検出によって定量化し、既知の標準物質と比較した。
実施例1
Z.モビリス(Z.mobilis)のバージニアマイシン耐性
Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株(一般方法に記載される)種菌は、33℃で8時間にわたり、MRM3G6培地(10g/LのBBL酵母エキス、2g/LのKHPO、1g/LのMgSO 7HO、60g/Lのグルコース、pH5.5)中で、2mLのOD約10の冷凍保存株を復活させて調製した。この培養を使用して、2g/Lの酵母エキスおよび様々なバージニアマイシン製剤が添加された、清澄化MD07#3加水分解物(一般方法を参照されたい)を含有する試験管に、20%(最終容積)の接種率で接種して、約0.5の初期ODを得た。バージニアマイシン含有剤Lactrol(登録商標)、Lactoside V(商標)またはLactoside 247(商標)の原液は、エタノール中1000ppmで調製した。これらの薬剤を2.5ppm、5ppm、10ppm、または20ppmで培地に添加した。Lactrol(登録商標)の仕様書は、製剤が100%活性であるとして、2.5ppmのLactrol(登録商標)が、2.5ppmのバージニアマイシンに相当するとしている。バージニアマイシン含有原液および純粋エタノールの添加を通じて、各試験管内の初期エタノール濃度は、1.94容積%(10.3mL中の200μL)になる。試験管を33℃に保って32時間振盪し、OD600で測定して増殖をモニターした。図2に示されるように、ZW705は、10ppmのLactrol(登録商標)培地以外では、バージニアマイシンを欠く対照培養よりも、バージニアマイシン含有剤の存在下でより良い増殖を示した。
実施例2
Z.モビリス(Z.mobilis)種培地中の汚染制御に対するバージニアマイシンの効果
Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705株(一般方法に記載される)種菌は、33℃で約8時間にわたり、MRM3G6培地(10g/LのBBL酵母エキス、2g/LのKHPO、1g/LのMgSO 7HO、60g/Lのグルコース、pH5.5)中で、2mLのOD約10の冷凍保存株を復活させて調製し、その時点でODは約2であった。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC8014株の種菌は、個々のコロニーをMRS培地に接種して33℃で8時間増殖させて調製し、その時点でODは約0.4であった。
種培地(10g/LのAmberex695酵母エキス、2g/LのKHPO、5g/LのMgSO 7HO、10mMのソルビトール、150g/Lのグルコース、pH5.5)を調製して、高圧蒸気滅菌(121℃、30分間)によって滅菌した。500mLの培地サンプルに、Z.モビリス(Z.mobilis)ZW705(0.05のOD)およびL.プランタルム(L.plantarum)ATCC8014(0.0005のOD)の混合物を接種して、1:100の汚染レベルを生成し、33℃およびpH5.5で発酵させた(pH調節が必要であれば、4NのNHOHを添加した)。第2のサンプルでは、2ppmのLactrol(登録商標)を添加した。Lactrol(登録商標)は100%活性成分であるので、これは2ppmのバージニアマイシンに相当する。HPLC(Aminex 87Hカラム、0.01NのHSO、0.6mL/分)によって、培地に生成した乳酸およびエタノールの量を異なる時点でアッセイし、結果は図3A(乳酸)および3B(エタノール)に示される。
あらゆる抗菌剤(サンプルF1067)不在下では、19.3時間の発酵後に、2.4g/Lの乳酸および60.3g/Lのエタノールが形成した。2ppmのLactrol(登録商標)添加培地(サンプルF1068)の平行培養では、19.3時間の発酵後に0.3g/Lの乳酸が生成し、乳酸濃度の低下によって証明されるように、L.プランタルム(L.plantarum)の増殖低下に対する、2ppmのLactrol(登録商標)投入の有効性が例証された。Lactrol(登録商標)存在下のエタノール生成量は、対照培養中の生成量と同等のままであった。
グルコースはまた、上述したようにHPLCによっても測定され、結果は、グルコース消費量が、Lactrol(登録商標)ありまたはなしの培養物で、同様であったことを示した(図4)。
実施例3
バージニアマイシン処理Z.モビリス(Z.mobilis)種培養を加水分解物培地種菌として使用する効果
実施例1のEFT=19.3時間におけるF1067培養物(Lactrol(登録商標)なし)のサンプルを種培養として使用して、450mLの穂軸加水分解物培地(FRF13;一般方法を参照されたい)(pH5.8に調節、+10mMソルビトール)に、10容積%(最終容積)で接種し、それを33℃(EFT=21時間で30℃に低下させた)およびpH5.8(4NのNaOHで調節)で発酵させた。48時間の発酵後(サンプルF1069)、27.6g/Lの乳酸(図5A)および32.6g/Lのエタノール(図5B)が形成した。平行実験では、(実施例1からの)19.3時間目のF1068培養物(2ppmのLactrol(登録商標)添加)のサンプルを種培養として使用し、同じ10容積%で同一培地に接種した。48時間の発酵後(サンプルF1070)、73.5g/Lのエタノールが形成し(図5B)、検出可能な乳酸生成はなかった(図5A)。結果は、汚染種培養で使用された低用量のLactrol(登録商標)が、加水分解物発酵の汚染防止に十分であったことを示した。
双方の加水分解物発酵中で、上述したようにHPLCによって、キシロースおよびグルコースもまたアッセイし、結果は図6に示される。どちらの発酵も、完全なグルコース消費を示したが、Lactrol(登録商標)を含有する種培養が接種された発酵は、グルコースをより迅速に消費した。Lactrol(登録商標)含有種培養を接種された発酵では、ほぼ完全なキシロース消費があった一方で、Lactrol(登録商標)を欠く種培養が接種された発酵では、50%を上回るキシロースが消費されなかった(図6)。
実施例4
汚染Z.モビリス(Z.mobilis)加水分解物の発酵に対するバージニアマイシンの効果
加水分解物発酵中の乳酸形成防止に必要なLactrol(登録商標)投入量を判定するために、(実施例1からの)EFT=19.3時間における意図的に汚染した種培養F1067の一部を種培養として使用して、0ppm(サンプルF1069)または2ppm(サンプルF1071)のLactrol(登録商標)のいずれかを含有する穂軸加水分解物培地(FRF13;一般方法を参照されたい)(pH5.8に調節、+10mMソルビトール)に、10容積%(最終容積)で接種し、次にそれを33℃(EFT=21時間で30℃に低下させた)およびpH5.8(4NのNaOHで調節)で発酵させた。
より高濃度のLactrol(登録商標)について調査するために、F1067と同様の種培養を生成し、10、50、または250ppmのLactrol(登録商標)(それぞれサンプルF1081〜1083)の存在下で、上述したのと同様にして、穂軸加水分解物発酵のための種菌として使用した。図7Aの結果は、45時間後、0および2ppmのLactrol(登録商標)を含有する培地中に大量(>20g/L)の乳酸が生じたことを示す。10ppmのLactrol(登録商標)の含有は、乳酸形成を45時間で約5g/Lに低下させた。50および250ppmのLactrol(登録商標)の含有は、乳酸濃度を<1g/Lに保ち、加水分解物発酵中に汚染微生物を制御するための、より高濃度のバージニアマイシンに対する必要性が例証された。
図7Bに示されるように、エタノール生産は、0ppmまたは2ppmを含有する発酵よりも、10ppm、50ppm、または250ppmのLactrol(登録商標)を含有する発酵中でより高かった。

Claims (18)

  1. a)発酵培地;
    b)バージニアマイシン;および
    d)増殖するザイモモナス属(Zymomonas)細胞集団
    を含んでなる発酵ブロス組成物。
  2. 乳酸の濃度が約5g/L未満である、請求項1に記載の発酵ブロス。
  3. 前記発酵培地がセルロース系バイオマス加水分解物を欠く、請求項1に記載の発酵ブロス。
  4. バージニアマイシンの濃度が少なくとも約0.25ppmである、請求項3に記載の発酵ブロス。
  5. 前記発酵培地がセルロース系バイオマス加水分解物を含んでなる、請求項1に記載の発酵ブロス。
  6. バージニアマイシンの濃度が少なくとも約10ppmである、請求項5に記載の発酵ブロス。
  7. バージニアマイシンの濃度が少なくとも約20ppmである、請求項6に記載の発酵ブロス。
  8. a)発酵培地を提供するステップと;
    b)バージニアマイシンを前記発酵培地に添加するステップと;
    c)ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌を前記発酵培地に添加して、それによって発酵ブロスを生産するステップと;
    d)前記発酵ブロスを前記ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖に適した条件に維持するステップと
    を含んでなり、手順b)およびc)が、順番に実施されても、または同時に実施されてもよく、細菌汚染が制御される、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞生体触媒を使用する発酵中で、細菌汚染を制御する方法。
  9. 前記ザイモモナス属(Zymomonas)細胞が、前記発酵ブロス中でエタノールを産生する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記発酵培地がセルロース系バイオマス加水分解物を欠く、請求項8または9に記載の方法。
  11. バージニアマイシンが少なくとも約0.25ppmの濃度で添加される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記発酵培地がセルロース系バイオマス加水分解物を含んでなる、請求項8または9に記載の方法。
  13. バージニアマイシンが少なくとも約10ppmの濃度で添加される、請求項12に記載の方法。
  14. a)発酵培地を提供するステップと;
    b)バージニアマイシンの存在下で増殖させたザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌を前記発酵培地に添加して、発酵ブロスを産生するステップと;
    c)前記発酵ブロスを前記ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖および前記ザイモモナス属(Zymomonas)細胞によるエタノール生産に適した条件に維持するステップと
    を含んでなり、バージニアマイシンが(b)の種菌と別に前記発酵培地に添加されず、エタノールが生産される、エタノールを生産する方法。
  15. 前記発酵培地が、セルロース系バイオマス加水分解物を含んでなり、またはセルロース系バイオマス加水分解物を欠く、請求項14に記載の方法。
  16. (b)のザイモモナス属(Zymomonas)細胞の種菌が、セルロース系バイオマス加水分解物を欠く培地中で培養され、バージニアマイシンの濃度が少なくとも約0.25ppmである、請求項14に記載の方法。
  17. バージニアマイシンの濃度が約1ppm〜約10ppmである、請求項16に記載の方法。
  18. バージニアマイシンを含んでなる発酵培地中で、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞を培養するステップを含んでなる、ザイモモナス属(Zymomonas)細胞の増殖を改善する方法。
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