1.ドコサヘキサエン酸(DHA)類似体
本発明は、ALSの治療に使用するためのDHA類似体又はその医薬組成物を提供する。具体的には、これらのDHA類似体(例えば、10,17−ジヒドロキシルDHA)は、その異性体を含めて、その天然の供給源から単離又は精製される。あるいは、これらのDHA類似体は、人工的に合成され、任意追加的に更に精製される。
本発明は、式Iの化合物に関し:
式中:
は、シス又はトランス結合を表し;
R1は、−C(O)ORa、−C(O)NRbRc、−C(O)H、−C(NH)NRbRc、−C(S)H、−C(S)ORa、−C(S)NRbRc、又は−CNであり;
R2及びR3は、それぞれ独立してH又は保護基であり;
R4及びR5は、それぞれ独立してH、ハロ、非置換又は置換C1〜C6アルキル、非置換又は置換C3〜C10炭素環、1又は2個の3、4、5又は6員環とN、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子とを含む非置換又は置換複素環であり、
Raは、保護基又は−T1−Q1であり;
Rb及びRcは、それぞれ独立して保護基若しくは−T1−Q1であるか、又はRb及びRcは、それらが結合する窒素原子と共に、1又は2個の5又は6員環とN、O及びSから選択される1〜4個の追加のヘテロ原子とを含む非置換又は置換複素環を形成し;
T1は、結合であるか、又は非置換若しくは置換C1〜C6アルキルリンカーであり;
Q1は、H、ヒドロキシル、ハロゲン、非置換又は置換C1〜C6アルキル、非置換又は置換C1〜C6アルコキシ、非置換又は置換2〜6員ヘテロアルキル、非置換又は置換C3〜C10炭素環、又は1若しくは2個の3、4、5若しくは6員環とN、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子とを含む非置換又は置換複素環である。
本発明の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を包含する。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は式IIの化合物:
製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物又はプロドラッグである。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は式IIIの化合物:
製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物又はプロドラッグである。
例えば、式I、II又はIIIにおいて、R1は−C(O)ORaである。
例えば、RaはHである。
例えば、Raは保護基である。
例えば、式I、II又はIIIにおいて、R4及びR5はそれぞれHである。
例えば、R4及びR5のうちの少なくとも1つは、置換又は非置換の直鎖C1〜C6又は分枝C3〜C6アルキルであり、例えば、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル及びn−ヘキシルが挙げられる。
例えば、式I、II又はIIIにおいて、R2及びR3のそれぞれはHである。
例えば、式I、II又はIIIにおいて、R2及びR3のうちの少なくとも1つは保護基である。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は、10,17S−ジヒドロキシ−ドコサ−4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z−ヘキサエン酸又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグである。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は、10R,17S−ジヒドロキシ−ドコサ−4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z−ヘキサエン酸又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグである。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は単離化合物であり、例えば、細胞環境中に存在する他の化合物又は異性体から実質的に分離されている。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、少なくとも75重量%、85重量%、90、92.5重量%、95重量%、97.5重量%、99重量%、99.5重量%、又は99.9重量%の純度を有する。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物には、最大で25重量%、15重量%、10重量%、7.5重量%、5重量%、1重量%、0.5重量%、又は0.1重量%のその化合物の他の異性体が混入している。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、10,17S−ジヒドロキシ−ドコサ−4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z−ヘキサエン酸又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグである。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、10R,17S−ジヒドロキシ−ドコサ−4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z−ヘキサエン酸又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグである。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、10R,17S−ジヒドロキシ−ドコサ−4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z−ヘキサエン酸又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物若しくはプロドラッグであり、最大で25重量%、15重量%、10重量%、7.5重量%、5重量%、1重量%、0.5重量%、又は0.1重量%の10S,17S−エナンチオマーが混入している。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は、化合物のC−10炭素原子においてR/Sラセミ化合物である。
例えば、ALSの治療に使用される化合物は、化合物のC−17炭素原子においてR/Sラセミ化合物である。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、化合物のC−10炭素原子においてR/Sラセミ化合物である。
例えば、ALSの治療に使用される単離化合物は、化合物のC−17炭素原子においてR/Sラセミ化合物である。
本発明の方法に有用な化合物は、式IVの化合物:
製薬学的に許容可能なその塩、エステル、溶媒和物、水和物又はプロドラッグである。式IVにおいて、
及びR1〜R5は上記の定義による。
例えば、式IVの化合物は単離化合物である。
本発明の方法に有用な代表的化合物には、表1に記載の化合物が包含される。
ALSの治療に使用できる化合物としては、米国特許第7,759,395号、同第7,782,152号、及び同第7,709,669号、米国特許出願公開第2009/0156673号、及びPCT国際公開第2010/091226号に記載されているエイコサペンタエン酸(EPA)、DHA、及びこれらの類似体(例えば、ジ−/トリ−ヒドロキシEPA又はDHA)のようなオメガ3多価不飽和脂肪酸も挙げられる。表1の化合物1は、本明細書においてNPD1とも呼ばれる。
本明細書で使用するとき、用語「単離化合物」は、精製されている対象化合物、例えば、レゾルビンが産生される細胞環境中に存在するか又は合成化学品製造プロセスの粗生成物中に存在する他の化合物又は異性体から実質的に分離されている対象化合物を指す。特定の実施形態において、精製された化合物には、25%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は更には1%未満の細胞成分(タンパク質、核酸、炭水化物等)、化学的副生成物、試薬、及び出発物質等が混入している。特定の実施形態において、精製された化合物は、25%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は更には1%未満のその他のレゾルビン及び/又は化合物の他の異性体が混入している。製薬学的賦形剤、その他の活性剤、又はその他の製薬学的に許容可能な添加剤の添加は、この用語が本明細書で使用されるとき、化合物の純度を低下させるとは理解されない。
本明細書で使用するとき、「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5若しくはC6アルキル」又は「C1〜C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5若しくはC6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基及びC3、C4、C5若しくはC6分枝状飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図する。例えば、C1〜C6アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキル基を包含することを意図する。アルキルの例としては、1〜6個の炭素原子を有する部分、例えば、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル又はn−ヘキシルが挙げられる。
特定の実施形態において、直鎖又は分枝状アルキルは6個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖の場合はC1〜C6、分枝鎖の場合はC3〜C6)、別の実施形態において直鎖又は分枝鎖アルキルは4個以下の炭素原子を有する。
「ヘテロアルキル」基は、上記に定義する通り、1個以上の炭化水素主鎖炭素原子に置き換わる酸素、窒素、硫黄又はリン原子を有するアルキル基である。
本明細書で使用するとき、用語「シクロアルキル」、「C3、C4、C5、C6、C7若しくはC8シクロアルキル」又は「C3〜C8シクロアルキル」は、その環構造に3〜8個の炭素原子を有する炭化水素環を包含することを意図する。一実施形態において、シクロアルキル基は環構造に5個又は6個の炭素を有する。
用語「置換アルキル」は、炭化水素主鎖の1個以上の炭素原子上の1個以上の水素原子に置き換わる置換基を有するアルキル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。シクロアルキルは、例えば上記の置換基で、更に置換できる。「アルキルアリール」又は「アラルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。
炭素数が別途明記されない限り、「低級アルキル」は、上に定義する通り、1〜6個、又は別の実施形態においては1〜4個の炭素原子をその主鎖構造に有するアルキル基を包含する。「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、例えば炭素原子2〜6個又は2〜4個の鎖長を有する。
本明細書で使用するとき、「アルキルリンカー」は、C1、C2、C3、C4、C5又はC6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基及びC3、C4、C5又はC6分枝状飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図する。例えば、C1〜C6アルキルリンカーは、C1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキルリンカー基を包含することを意図する。アルキルリンカーの例としては、限定するものではないが、メチル(−CH2−)、エチル(−CH2CH2−)、n−プロピル(−CH2CH2CH2−)、i−プロピル(−CHCH3CH2−)、n−ブチル(−CH2CH2CH2CH2−)、s−ブチル(−CHCH3CH2CH2−)、i−ブチル(−C(CH3)2CH2−)、n−ペンチル(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、s−ペンチル(−CHCH3CH2CH2CH2−)又はn−ヘキシル(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)のような、1〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
「アルケニル」は、鎖長及び可能な置換に関しては上記アルキルに類似するが、少なくとも1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族基を包含する。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分枝状アルケニル基、シクロアルケニル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル又はアルケニル置換シクロアルケニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルケニル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖又は分枝状アルケニル基は、その主鎖に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC2〜C6、分枝鎖の場合はC3〜C6)を有する。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造に5〜8個の炭素原子を有してもよく、一実施形態において、シクロアルケニル基はその環構造に5個又は6個の炭素を有する。用語「C2〜C6」は、2〜6個の炭素原子を含有するアルケニル基を包含する。用語「C3〜C6」は、3〜6個の炭素原子を含有するアルケニル基を包含する。
「ヘテロアルケニル」は、本明細書に定義するように、1個以上の炭化水素主鎖炭素に置き換わる酸素、窒素、硫黄又はリン原子を有するアルケニル基を包含する。
用語「置換アルケニル」は、1個以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1個以上の水素原子に置き換わる置換基を有するアルケニル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
「アルキニル」は、鎖長及び可能な置換に関しては上記アルキルに類似するが、少なくとも1つの三重結合を含有する不飽和脂肪族基を包含する。例えば、「アルキニル」は直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分枝状アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルキニル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖又は分枝状アルキニル基は、その主鎖に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC2〜C6、分枝鎖の場合はC3〜C6)を有する。用語「C2〜C6」は、2〜6個の炭素原子を含有するアルキニル基を包含する。用語「C3〜C6」は、3〜6個の炭素原子を含有するアルキニル基を包含する。
「ヘテロアルキニル」は、本明細書に定義するように、1個以上の炭化水素主鎖炭素に置き換わる酸素、窒素、硫黄又はリン原子を有するアルキニル基を包含する。
用語「置換アルキニル」は、1個以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1個以上の水素原子に置き換わる置換基を有するアルキニル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
「アリール」は、芳香族性を有する基を包含し、これは少なくとも1つの芳香環を有する「共役」、すなわち多環系を包含する。例としては、フェニル、ベンジル等が挙げられる。
「ヘテロアリール」基は、上に定義する通り、環構造に1〜4個のヘテロ原子を有するアリール基であり、「アリール複素環」又は「ヘテロ芳香族」と呼ばれることもある。本明細書で使用するとき、用語「ヘテロアリール」は、炭素原子と、独立して窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1個以上のヘテロ原子、例えば1個又は1〜2個又は1〜3個又は1〜4個又は1〜5個又は1〜6個のヘテロ原子とからなる、安定な5、6、若しくは7員単環式又は7、8、9、10、11若しくは12員二環式の芳香族複素環を包含することを意図する。窒素原子は、置換でも非置換でも(すなわち、NでもNRでも(RはH又は定義されたその他の置換基))よい。窒素及び硫黄ヘテロ原子は、任意追加的に酸化されていてもよい(すなわち、N→O及びS(O)p、式中p=1又は2)。芳香族複素環のS及びO原子の総数は1以下であることに注意する。
ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン等が挙げられる。
更に、用語「アリール」及び「ヘテロアリール」は、多環式アリール及びヘテロアリール基、例えば三環式、二環式(例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン(naphthridine)、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジン)を包含する。
多環式芳香環の場合、全ての環が芳香族(例えば、キノリン)であってもよいが、芳香族である必要があるのは環のうちの1つだけである(例えば、2,3−ジヒドロインドール)。第2の環は、縮合又は架橋していてもよい。
アリール又はヘテロアリール芳香環は、1つ以上の環位置で上記のような置換基で置換することもでき、このような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分である。アリール基は、芳香族でない脂環式環又は複素環と縮合又は架橋して、多環系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成することもできる。
本明細書で使用するとき、「炭素環」又は「炭素環式環」は、指定された数の炭素を有する任意の安定な単環式、二環式又は三環式環を包含することを意図し、そのいずれも飽和、不飽和、又は芳香族であってもよい。例えば、C3〜C14炭素環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を有する単環式、二環式又は三環式環を包含することを意図する。炭素環の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル及びテトラヒドロナフチルが挙げられる。炭素環の定義には架橋環、例えば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン及び[2.2.2]ビシクロオクタン等も包含される。架橋環は、1個以上の炭素原子が2個の非隣接炭素原子と結合したときに生じる。一実施形態において、架橋環は1個又は2個の炭素原子である。架橋は常に単環式環を三環式環に変換することに注意する。環が架橋されたときに、その環に関して列挙された置換基も架橋上に存在してもよい。縮合環(例えば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)及びスピロ環も包含される。
本明細書で使用するとき、「複素環」は、少なくとも1個の環ヘテロ原子(例えば、N、O又はS)を含有する任意の環構造(飽和又は部分不飽和又は芳香族)を包含する。複素環の例としては、限定するものではないが、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン及びテトラヒドロフランが挙げられる。
複素環基の例としては、限定するものではないが、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾル5(4H)−オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル(phenoxathinyl)、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル(pyrazolinyl)、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル及びキサンテニルが挙げられる。
用語「置換された」は、本明細書で使用するとき、指定された原子上の任意の1個以上の水素原子が、指示された基から選択されたもので置換されることを意味するが、但し、指定された原子の通常の価数を超えないこと及び置換が安定な化合物を生じることを条件とする。置換基がケト又はオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素原子が置換される。ケト置換基は芳香族部分上には存在しない。環二重結合は、本明細書で使用するとき、2つの隣接する環原子の間に形成される二重結合(例えば、C=C、C=N又はN=N)である。「安定な化合物」及び「安定な構造」は、単離の結果、反応混合物から有用な程度の純度が得られ、有効な治療薬に処方される程度に十分にロバストである化合物を示すことが意味される。
置換基への結合が環内の2個の原子をつなぐ結合と交差することが示されている場合、そのような置換基は環内のいずれの原子に結合してもよい。置換基が、そのような置換基が所定の式の化合物の残りの部分に結合する際に介する原子を示すことなく記載されている場合、そのような置換基はそのような式におけるいずれの原子を介して結合してもよい。置換基及び/又は変数の組み合わせは許容されるが、そのような組み合わせが安定な化合物を生じる場合に限られる。
任意の変数(例えば、R1)が化合物の任意の構成要素又は式において1回を超えて存在する場合、各存在における定義は、あらゆる他の存在時におけるその定義と無関係である。したがって、例えば、基が0〜2個のR1部分で置換されていることが示されている場合、その基は任意追加的に、最大で2個のR1部分で置換されていてよく、各存在におけるR1は、独立してR1の定義から選択される。ここでも、置換基及び/又は変数の組み合わせは、許容されるが、そのような組み合わせが安定な化合物を生じる場合に限られる。
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、−OH又は−O−を有する基を包含する。
本明細書で使用するとき、用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。用語「過ハロゲン化」は、一般的に、すべての水素原子がハロゲン原子によって置換されている部分を指す。用語「ハロアルキル」又は「ハロアルコキシル」は、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル又はアルコキシルを指す。
用語「カルボニル」又は「カルボキシ」は、二重結合で酸素原子と結合する炭素を含有する化合物及び部分を包含する。カルボニルを含有する部分の例としては、限定するものではないが、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等が挙げられる。
「アシル」は、アシルラジカル(−C(O)−)又はカルボニル基を含有する部分を包含する。「置換アシル」は、1個以上の水素原子が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分によって置換されたアシル基を包含する。
「アロイル」は、カルボニル基に結合するアリール又はヘテロ芳香族部分を有する部分を包含する。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシ等が挙げられる。
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」及び「チオアルコキシアルキル」は、上記の通り、酸素、窒素、又は硫黄原子が1個以上の炭化水素主鎖炭素原子を置換しているアルキル基を包含する。
用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」は、酸素原子と共有結合する置換及び非置換のアルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含する。アルコキシ基又はアルコキシルラジカルの例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ及びペントキシが挙げられる。置換アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分のような基によって置換され得る。ハロゲン置換アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ及びトリクロロメトキシが挙げられる。
用語「エーテル」又は「アルコキシ」は、2個の炭素原子又はヘテロ原子に結合した酸素を含有する化合物及び部分を包含する。例えば、この用語は「アルコキシアルキル」を包含し、これはアルキル基に共有結合する酸素原子に共有結合するアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を指す。
用語「エステル」は、カルボニル基の炭素に結合した酸素原子に結合した炭素又はヘテロ原子を含む、化合物及び部分を包含する。用語「エステル」は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のアルコキシカルボキシ基を包含する。
用語「チオアルキル」は、硫黄原子と結合したアルキル基を含有する化合物又は部分を包含する。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを包含する)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを包含する)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分のような基によって置換され得る。
用語「チオカルボニル」又は「チオカルボキシ」は、二重結合で硫黄原子と結合する炭素を含有する化合物及び部分を包含する。
用語「チオエーテル」は、2個の炭素原子又はヘテロ原子に結合する硫黄原子を含有する部分を包含する。チオエーテルの例としては、限定するものではないが、アルクチオアルキル(alkthioalkyl)、アルクチオアルケニル(alkthioalkenyl)、及びアルクチオアルキニル(alkthioalkynyl)が挙げられる。用語「アルクチオアルキル」は、アルキル基に結合した硫黄原子に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を有する部分を包含する。同様に、用語「アルクチオアルケニル」は、アルキル、アルケニル又はアルキニル基が、アルケニル基に共有結合した硫黄原子に結合する部分を指し;「アルクチオアルキニル」は、アルキル、アルケニル又はアルキニル基が、アルキニル基に共有結合した硫黄原子に結合する部分を指す。
本明細書で使用するとき、「アミン」又は「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素又はヘテロ原子に共有結合する部分を包含する。「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1個のアルキル基に結合した化合物の基を包含する。アルキルアミノ基の例としては、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノ等が挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個の追加のアルキル基と結合した基を包含する。ジアルキルアミノ基の例としては、限定するものではないが、ジメチルアミノ及びジエチルアミノが挙げられる。「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」は、それぞれ、窒素が少なくとも1個又は2個のアリール基と結合した基を包含する。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」又は「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1個のアルキル基及び少なくとも1個のアリール基に結合したアミノ基を指す。「アルカミノアルキル」は、同じくアルキル基に結合した窒素原子に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を指す。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基と結合した基を包含する。アシルアミノの例としては、限定するものではないが、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイド基が挙げられる。
用語「アミド」又は「アミノカルボキシ」は、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含有する化合物又は部分を包含する。この用語は、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合したアミノ基に結合したアルキル、アルケニル又はアルキニル基を包含する「アルカミノカルボニル」基を包含する。この用語は、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合したアミノ基に結合したアリール又はヘテロアリール部分を包含する「アリールアミノカルボキシ」基も包含する。用語「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」及び「アリールアミノカルボキシ」は、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール部分がそれぞれ、カルボニル基の炭素に結合した窒素原子に結合した部分を包含する。アミドは、直鎖アルキル、分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又は複素環のような置換基で置換され得る。アミド基上の置換基は、更に置換されてもよい。
用語「アミジン(amandine)」又は「アミジニル」は、−C(=NR)NR’R”、N(R’R”)−CR(=N)−、又はCR’(=NR)NR”−(式中、R、R’、及びR”はそれぞれ独立してH、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、アリール、又はヘテロアリール等であることができる)の一般構造を有する化合物又は部分を包含する。アミジニルの一例は、−C(=NH)NH2である。アミジンは、直鎖アルキル、分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又は複素環のような置換基で置換され得る。アミド基上の置換基は、更に置換されてもよい。
窒素を含有する本発明の化合物を、酸化剤(例えば、3−クロロ過安息香酸(m−CPBA)及び/又は過酸化水素)での処置によってN−酸化物に変換して、本発明の他の化合物を得ることができる。したがって、表示及び特許請求されている全ての窒素含有化合物は、原子価及び構造によって許容される場合に、表示されている化合物及びそのN−酸化物誘導体(これはN→O又はN+−O−と称される)の両方を包含するとみなされる。更に、他の場合において、本発明の化合物内の窒素は、N−ヒドロキシ又はN−アルコキシ化合物に変換できる。例えば、N−ヒドロキシ化合物は、m−CPBAのような酸化剤による親アミンの酸化によって調製できる。表示及び特許請求されている全ての窒素含有化合物は、原子価及び構造によって許容される場合に、表示されている化合物並びにそのN−ヒドロキシ(すなわち、N−OH)誘導体及びN−アルコキシ(すなわち、N−OR(式中、Rは置換若しくは非置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、3〜14員炭素環又は3〜14員複素環))誘導体の両方を含むともみなされる。
本明細書において、化合物の構造式は、いくつかの場合において便宜上特定の異性体を表すが、本発明は幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体等の全ての異性体を包含する。更に、その式によって表される化合物に結晶多形が存在してもよい。任意の結晶形態、結晶形態混合物、又はその無水物若しくは水和物が本発明の範囲に包含されることに注意する。更に、インビボでの本発明の化合物の分解によって生成されるいわゆる代謝産物質は、本発明の範囲に包含される。
「異性」は、同一の分子式を有するが、その原子の結合の順序又は空間内での原子の配置が異なる化合物を意味する。空間内での原子の配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ねることができない鏡像体である立体異性体は「エナンチオマー」、又は時には光学異性体と呼ばれる。反対のキラリティーを有する個々のエナンチオマー形態を等量含有する混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
4個の同一ではない置換基と結合している炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。
「キラル異性体」は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。1個を超えるキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとしてか、又はジアステレオマーの混合物(「ジアステレオマー混合物」と呼ばれる)としてかのいずれかで存在してもよい。1個のキラル中心が存在する場合、立体異性体を、そのキラル中心の絶対配置(R又はS)によって特徴づけてもよい。絶対配置は、キラル中心に結合している置換基の空間における配置を指す。検討中のキラル中心に結合している置換基は、Cahn、Ingold及びPrelogのSequence Rule(Cahn et al.,Angew.Chem.Inter.Edit.1966,5,385;errata 511;Cahn et al.,Angew.Chem.1966,78,413;Cahn and Ingold,J.Chem.Soc.1951(London),612;Cahn et al.,Experientia 1956,12,81;Cahn,J.Chem.Educ.1964,41,116)に従って順位付けされる。
「幾何異性体」は、二重結合のまわりの回転障害により存在する、ジアステレオマーを意味する。これらの立体配置は、接頭辞シス及びトランス又はZ及びE(これは、Cahn−Ingold−Prelogの規則に従って、基が分子中の二重結合の同じ側にあるか逆側にあるかを示す)によってその名称が区別される。
更に、本発明で論じられている構造及び他の化合物は、その全てのアトロプ異性体を包含する。「アトロプ異性体」は、2つの異性体の原子が空間中で異なる配置をとる立体異性体の一種である。アトロプ異性体は、中心結合のまわりの大きな基の回転障害によって、回転が制限されることに由来し、存在する。このようなアトロプ異性体は典型的には混合物として存在するが、最近のクロマトグラフィー技術の発展の結果、特定の場合には2つのアトロプ異性体の混合物を単離することが可能となった。
「互変異性体」は、平衡状態で存在し、1つの異性形態から別の異性形態に容易に変換される2つ以上の構造異性体の1つである。この変換は、隣接する共役二重結合の交換を伴う水素原子のホルマール移動を生じる。互変異性体は、互変異性の組の混合物として溶液中に存在する。固体形態では、通常、1つの互変異性体が優勢となる。互変異性体化が起こり得る溶液では、互変異性体の化学平衡に到達すると考えられる。互変異性体の正確な割合は、温度、溶媒及びpH等のいくつかの要因に依存する。互変異性化によって相互変換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
可能である互変異性の種々のタイプのうち、2つが一般的に観察される。ケト−エノール互変異性において、電子と水素原子との同時シフトが起こる。環鎖互変異性は、糖鎖分子中のアルデヒド基(−CHO)が同一分子内のヒドロキシ基(−OH)のうちの1つと反応して、グルコースによって表される環式(環状)形態を生じた結果として起こる。
一般的な互変異性体の対は、ケトン−エノール、アミド−ニトリル、ラクタム−ラクチム、複素環式環におけるアミド−イミド酸互変異性(例えば、核酸塩基におけるグアニン、チミン及びシトシン)、アミン−エナミン及びエナミン−エナミンである。
本発明の化合物は、異なる互変異性体として表されてもよいことは理解されるべきである。化合物が互変異性形態を有する場合、全ての互変異性形態が本発明の範囲に包含されることが意図され、その化合物の名称はいかなる互変異性形態も除外しないことも理解されるべきである。
用語「結晶多形」、「多形」又は「結晶形態」は、化合物(又はその塩若しくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置で結晶化できる結晶構造であって、その配置が全て同一の元素組成を有するものを意味する。異なる結晶形態は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度硬度、結晶形状、光学及び電気的特性、安定性並びに溶解度を有する。再結晶化溶媒、結晶化速度、貯蔵温度、及び他の要因により、1つの結晶形態が大半を占める場合がある。化合物の結晶多形は、異なる条件下での結晶化によって調製できる。
更に、本発明の化合物、例えば、この化合物の塩は、水和若しくは脱水された(無水物)形態か又は他の溶媒分子との溶媒和物としてかのいずれかで存在し得る。水和物の非限定的な例としては、一水和物、二水和物等が挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物等が挙げられる。
「溶媒和物」は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。いくつかの化合物は、結晶性固体状態において固定モル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、その結果溶媒和物を形成する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1個以上の水分子を、水がその分子状態をH2Oとして保つ物質の1個の分子とが組み合わされることによって形成される。
本明細書で使用するとき、用語「類似体」は、別の化合物と構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる化合物を指す(異なる元素の原子による若しくは特定の官能基の存在下における1個の原子の置換、又は別の官能基による1つの官能基の置換等)。したがって、類似体は、機能及び外観に関しては参照化合物と類似しているか又は同等であるが、構造又は起源に関してはそうではない化合物である。
本明細書で定義する場合、用語「誘導体」は、共通のコア構造を有し、本明細書中に記載の様々な基によって置換された化合物を意味する。例えば、式Iによって表される化合物は全て、10,17−ジヒドロキシルDHA誘導体であり、式Iを共通のコアとして有する。
用語「バイオ同配体」は、原子又は原子団を、別の大まかに類似した原子又は原子団と交換することによって生じる化合物を意味する。バイオ同配的置換の目的は、親化合物と類似した生物学的特性を有する新たな化合物を作ることである。バイオ同配的置換は、物理化学又はトポロジーに基づいてもよい。カルボン酸のバイオ同配体の例としては、限定するものではないが、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホナート及びホスホナートが挙げられる。例えば、Patani and LaVoie,Chem.Rev.96,3147〜3176,1996を参照されたい。
本発明は、本発明の化合物に存在する原子の全ての同位体を包含することを意図する。同位体は、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を包含する。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体はトリチウム及びジュウテリウムを包含し、炭素の同位体はC−13及びC−14を包含する。
「保護基」は、本明細書で使用するとき、特定の官能性部分(例えば、O、S、又はN)が一時的にブロックされ、その結果、反応が、多官能性化合物の別の反応性部位において選択的に実施され得ることを意味する。好ましい実施形態において、保護基は、良好な収率で選択的に反応して、計画した反応に安定な保護された基質を与える;保護基は、他の官能基を攻撃しない容易に利用可能な、好ましくは非毒性の試薬によって、良好な収率で選択的に除去されなければならない;保護基は、容易に分離できる誘導体を(より好ましくは、新たな立体中心を生成することなく)形成し;保護基は、更なる反応部位を避けるため、最小限の追加の官能性を有する。本明細書に詳述されているように、酸素、硫黄、窒素及び炭素保護基が使用されてもよい。例えば、特定の実施形態において、特定の例示的酸素保護基を使用してもよい。こうした酸素(又はヒドロキシル)保護基としては、限定するものではないが、メチルエーテル、置換メチルエーテル(例えば、MOM(メトキシメチルエーテル)、MTM(メチルチオメチルエーテル)、BOM(ベンジルオキシメチルエーテル)、及びPMBM(p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル))、置換エチルエーテル、置換ベンジルエーテル、シリルエーテル(例えば、TMS(トリメチルシリルエーテル)、TES(トリエチルシリルエーテル)、TIPS(トリイソプロピルシリルエーテル)、TBDMS(t−ブチルジメチルシリルエーテル)、トリベンジルシリルエーテル、及びTBDPS(t−ブチルジフェニルシリルエーテル))、エステル(例えば、ギ酸エステル、酢酸エステル、安息香酸エステル(Bz)、トリフルオロ酢酸エステル及びジクロロ酢酸エステル)、カーボネート、環状アセタール及びケタール、並びにグリコールエーテル、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコール誘導体並びにアリルエーテルが挙げられる。特定のその他の例示的な実施形態において、窒素保護基が使用される。窒素保護基、並びに保護及び脱保護方法は当該技術分野において既知である。窒素保護基としては、限定するものではないが、カルバメート(メチル、エチル及び置換エチルカルバメート(例えば、Troc))、アミド、環状イミド誘導体、N−アルキル及びN−アリールアミン、イミン誘導体、及びエナミン誘導体、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「TES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)等が挙げられる。特定のその他の例示的な保護基は本明細書に詳述されているが、本発明は、これらの保護基に限定することを意図するものでなく、その他の種々の等価の保護基を上記の基準を用いて容易に識別し、本発明に使用できることが理解されるであろう。更に、様々な保護基が「Protective Groups in Organic Synthesis」Third Ed.、Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds、John Wiley & Sons、New York:1999に記載されており、その全内容を参照により本明細書に援用する。
2.10,17−ジヒドロキシルDHA化合物の合成
本開示は、式I〜IVの化合物の合成方法を提供する。
説明全体を通して、組成物が特定の成分を有する、包含する、又は、含むと記載されている場合、その組成物が列挙された成分から本質的になるか、又は列挙された成分からなることも想到される。同様に、方法又はプロセスが特定の処理工程を有する、包含する、又は含むと記載されている場合、そのプロセスは、列挙された処理工程から本質的になるか、又は列挙された処理工程からなる。更に、工程の順序又は特定の作用を実施する順序は、本発明が操作可能である限り、重要ではない。更に、2つ以上の工程又は作用を同時に実施することができる。
本発明の合成プロセスは、多種多様な官能基を許容することができ、したがって、種々の置換された出発物質を使用できる。プロセスは一般的に、全プロセスの終了時又は終了近くに所望の最終化合物を提供する。ただし、特定の場合には、この化合物を製薬学的に許容可能なその塩、エステル又はプロドラッグに更に変換することが望ましいことがある。
本発明の化合物は、市販の出発物質、文献で既知の化合物を用いて、又は容易に調製できる中間体から、当業者に既知の若しくは本明細書の教示を考慮して当業者に明らかな、標準的な合成方法及び手順を用いることによって、様々なやり方で調製できる。有機分子調製並びに官能基変換及び操作のための標準的な合成方法及び手順は、関連する科学文献から又は当該分野の標準的な教科書から得ることができる。いすれか1つ又は数点の情報源に限定するものではないが、参照により本明細書に援用するSmith,M.B.,March,J.,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th edition,John Wiley & Sons:New York,2001;及びGreene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley & Sons:New York,1999のような古典的な教科書が有用であり、当業者に既知の有機合成の基準教科書と認識されている。以下の合成方法の説明は、本発明の化合物を調製する一般的な手順を例証することを意図しており、限定することを意図するものではない。
本発明の化合物は、当業者に周知の様々な方法によって都合よく調製できる。式I〜IVの本発明の化合物は、以下のスキームに従って、市販の出発物質又は文献の手順を用いて調製できる出発物質から、調製されてもよい。これらの手順は、本発明の代表的な化合物の調製を示す。
スキーム1
1つの一般的手順を下に例証する。
上記のスキーム1は、化合物2及び関連する異性体の全合成の方略を示す。化合物2のC−10及びC−17の立体化学は、それぞれA及びIから誘導されるアルキニル求核基と反応する鏡像異性的に純粋なグリシドール誘導体B及びHから誘導された。4−5、7−8、15−16及び19−20位のアルケンの(Z)配置は、アセチレン前駆体の選択的水素化から得られ、カップリング処理を用いて構築された。11−12及び13−14位の(E)配置は、中間体Fの合成中に固定された。化合物2のその他の立体異性体を同様に合成できる。
規定された前駆体からの立体制御された工程のそれぞれは、共役トリエン領域の幾何異性体の調製を可能にし、この共役トリエンの領域はNMRによって確認された(米国特許出願公開第2009/0156673号)。
3.治療方法
本発明は、そのような治療を必要とする対象者に、治療に有効な量の本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を投与することによって、それを必要とする対象者のALSを治療する方法を提供する。本発明は更に、本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラック、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の、ALSの治療に有用な薬剤の調製への使用を提供する。
本発明は、そのような治療を必要とする対象者に、治療に有効な量の本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を投与することによって、治療を必要とする対象者のALSの少なくとも1つの症状を緩和又は寛解する方法を提供する。ALSの症状としては、筋肉の単収縮、痙攣又は硬直;腕又は脚(an arm of a leg)に影響する筋力低下;筋萎縮;不明瞭な発語及び鼻声;息切れ;並びに咀嚼、嚥下又は呼吸の困難が挙げられる。本発明は更に、本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラック、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の、ALSの少なくとも1つの症状の寛解に有用な薬剤の調製への使用を提供する。
本発明は、そのような治療を必要とする対象者に、治療に有効な量の本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を投与することによって、治療を必要とする対象者のALSの少なくとも1つの臨床的徴候を緩和又は寛解する方法を提供する。本発明は更に、本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラック、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の、ALSの少なくとも1つの臨床的徴候の寛解に有用な薬剤の調製への使用を提供する。
本発明は、そのような治療を必要とする対象者に、治療に有効な量の本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を投与することによって、ALSに罹患した又はALSと診断された対象者の生存期間を延長する又は生存率を増大させるための方法を提供する。本発明は更に、本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の、ALSに罹患した又はALSと診断された対象者の生存期間の延長又は生存率の増大に有用な薬剤の調製への使用を提供する。
本発明は、そのような治療を必要とする対象者に治療に有効な量の本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を投与することによって、ALSの危険のある対象者においてALSを予防する又は発症を遅延させるための方法を提供する。本発明は更に、本明細書に記載の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の、ALSに罹患した又はALSと診断された対象者の生存期間の延長又は生存率の増大に有用な薬剤の調製への使用を提供する。
本発明は、式I、II、III、若しくはIVの化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、水和物、溶媒和物、プロドラック、代謝産物、類似体若しくは誘導体に細胞を接触させることによって細胞死を低減又は阻害するための方法も提供する。本発明は、式I、II、III、若しくはIVの化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル、水和物、溶媒和物、プロドラック、代謝産物、類似体若しくは誘導体に細胞を接触させることによって細胞の生存又は細胞生存率を向上させるための方法も提供する。この細胞は、運動ニューロン又は星状膠細胞である。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、シャルコー病及びルーゲーリック病の名称でも知られ、運動ニューロン及び皮質脊髄路の変性の結果生じる致死性の疾患である。ALSの発生率は現在2.5/100,000であり、なお増え続けている。有病率は6〜10/100,000であり、先進国では90,000名が発症しており、その大部分はまだ若い成人(50〜60歳)である。この疾患は、進行性麻痺を伴い、この麻痺により運動及び呼吸機能の全体的な喪失がもたらされ、その後、最初の症状が現れてから2〜8年(平均3年)で死亡する。ALSの主な特徴は、脊髄運動ニューロンの脱落であり、この脱落により、このニューロンの制御下にある筋肉に麻痺につながる筋力低下及び衰弱が引き起こされる。したがって、その重要な特性の1つは、進行性の筋力低下である。
ALSの初期症状としては、特に腕及び脚の筋肉並びに発話、嚥下及び呼吸と関連する筋肉の衰弱が進行することが挙げられる。衰弱及び筋萎縮の症状は、通常は1つの肢において左右非対称に遠位で始まり、次いで神経軸索に沿って広がり、近接している一群の運動ニューロンを巻き込んでいく。症状は、延髄又は四肢筋肉のいずれかにおいて始まり得る。ALSの確定診断には、下位及び上位の両方の運動ニューロンの関与に関する臨床的徴候が必要とされる。ALSの診断は、主に体部の4領域における臨床的及び/又は電気生理学的所見に関して改訂されたEl Escorial criteriaに基づく(Brooks et al.,Amyotroph.Lateral Scler.Other Motor Neuron Disord.,1:293〜299,2000)。呼吸は、通常は四肢発症型の患者が後期に影響を受けるが、時として、延髄発症型の患者で初期の徴候となり得る。この進行性の致死性疾患の最も典型的な特徴は、膀胱を制御するニューロン及び動眼ニューロンを除く、皮質、延髄及び脊髄運動ニューロンの変性である。これは、筋力低下、線維束性収縮、筋萎縮、発話及び嚥下障害、進行性麻痺、並びに呼吸不全による死亡を招く。
ALSの臨床的徴候は、当該技術分野において既知である。用語「臨床的徴候」は、本明細書で使用するとき、客観的に測定又は定量化することができる何らかの医学的事実又はALSの特徴の客観的指標を指す。臨床的徴候は、診察中に医師によって確認されてもよく、又は患者由来の試料のインビトロ検査を行い臨床科学者によって検出されてもよい。ALSの臨床的徴候は、ALSの症状でもあり、このALSの症状は客観的に測定することができる。ALSのその他の臨床的徴候としては、ALSの病理に関与することが知られている特定のバイオマーカーの発現又はレベルの変化が挙げられる。バイオマーカーmRNAの存在、非存在、若しくは調節又はタンパク質発現は、核酸増幅法及び免疫学的測定法などの当該技術分野で既知の方法を用いて、生体試料から測定することができる。患者由来の生体試料は、血液又は脳脊髄液試料であってもよい。異常な細胞又は組織活性を特徴とする臨床的徴候は、MRI(磁気共鳴画像法)、EMG(筋電図検査)、及びPET(陽電子放出断層撮影)などの当該技術分野で既知のバイオイメージング法を用いて捉えることができる。例えば、ミクログリア活性の変化は、PET及び既知のリガンドによる捕捉などの、生体イメージングによって測定できる。炎症促進性のミクログリア細胞(M1)はALSで上方調節され、増大したM1活性とALS疾患の重篤度との間には相関関係が確立されることが当該技術分野において周知である。したがって、M1活性の低下が測定された場合、それはALSの臨床的徴候の緩和を示す。
この疾患は、1869年にフランスの神経生物学者で医師のJean−Martin Charcotによって初めて報告され、同氏はALSの症状をこの疾患によって特に影響を受ける神経群、すなわち脊髄から始まる運動ニューロンと関連づけた。この疾患の名前は、異なる組織区画が重篤な影響を受けることを反映する。具体的には、「筋萎縮性」は、筋線維の萎縮及び筋量の減少を指し、「側索」は脊髄の両側に下向きに走る神経路を指し、ここでALSの影響を受ける多数のニューロンが発見され、「硬化症」は神経変性後に残留する瘢痕組織を指す。
ALSの決定的特徴は、死亡並びに脳の運動皮質、脳幹、及び脊髄における上位及び下位の両方の運動ニューロンの脱落である。破壊の前に、運動ニューロンは、その細胞体及び軸索にタンパク性封入体を生じる。これは、部分的には、タンパク質分解の異常に起因する可能性がある。この封入体はしばしばユビキチンを含有し、一般的には、ALS関連タンパク質である、SOD1、TAR DNA結合タンパク質(TDP−43、又はTARDBP)、又はFUSのうちの1つを組み込む。疾患進行の病因における星状膠細胞の役割は十分に解明されておらず、多数の研究が星状膠細胞に関する有益な作用を主張しているが、その一方でその他の研究は有害な作用を示唆している。
ALSには、家族型(5〜10%)及び散発型(90〜95%)の両方がある。散発型のALSの生理病理学的な原因は依然として不明である。いくつかの仮説が提案されている。運動ニューロンの変性は、グルタメートの代謝に変化が生じることにより、運動皮質及び脊髄において興奮性アミノ酸(一般的に興奮毒性と呼ばれる)の濃度増大がもたらされた結果、生じる可能性がある。ミクログリア活性の増大、又は特定の患者において電位感受性カルシウムチャネルに対する自己抗体が存在することを根拠に、炎症性成分によるものであるという可能性も同様に提案されている。別の可能性は、二次的病理学的機能獲得を伴う、タンパク質のミスフォールディングである。特定のウイルス又はアルミニウムへの暴露などといった、環境因子による影響も同様に可能性がある。
遺伝型のALSに関する研究から、21q22−1染色体に位置する、銅−亜鉛を配位するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)に関する遺伝子における点変異が、家族型のうち20%の病理であることが明らかにされている。こうした変異は、SODのジスムターゼ活性の低下を引き起こさない。変異の生じた酵素は、野生型SODでは産生されない、細胞毒性をもたらす可能性のあるヒドロキシルラジカルを産生する。
付随研究から、スーパーオキシドジスムターゼ−1(SOD1)及び/又はその他の遺伝子における変異並びに環境因子がALSにつながる発症機構の活性化を担う可能性があることが明らかにされている。いくつかの発症機構が提案されている。(1)グルタメートにより誘導される興奮毒性:グルタメートによるニューロンの過剰刺激が細胞コンパートメントにおけるカルシウムイオンの蓄積を引き起こし、これがアポトーシス経路の活性化につながる。(2)反応性酸素種の生成と抗酸化物質による防御との間の平衡異常によって引き起こされる酸化的ストレス。(3)タンパク質凝集:酸化的ストレス及びミトコンドリア変質は、タンパク質凝集の原因となり得、変異型SOD1タンパク質又はその他のALS関連遺伝子はミスフォールディングされるか又は凝集を形成する傾向があり、それによりニューロン変性を招く毒性のカスケードが誘発される。(4)ミトコンドリア機能障害(これは酸化的ストレス、呼吸複合体の活性低下、ATPレベル低下及びシトクロムc放出につながる)。(5)インスリン様成長因子1等の神経栄養因子の欠損、及びタンパク質分解系の活性化。(6)軸索輸送障害。(7)ニューロフィラメントの凝集。(8)炎症性機能不全及び非神経細胞の関与、並びに/あるいは(9)遺伝的要因。
本明細書で使用するとき、用語「ALS」は、古典的なALS(一般的に低位及び上位の両方の運動ニューロンに影響を及ぼす)、原発性側索硬化症(PLS、一般的に上位運動神経のみに影響を及ぼす)、進行性球麻痺(PBP又は延髄発症、一般的に嚥下、咀嚼及び発話の困難から始まるALSの種類)、進行性筋萎縮症(PMA、一般的に下位運動ニューロンのみに影響を及ぼす)及び家族性ALS(遺伝性のALS)を包含するが、これらに限定されない当技術分野で既知のALSのすべての分類を含む。用語「ALS」は、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病又はアルツハイマー病のような神経変性疾患を包含しない。したがって、本発明の方法は、多発性硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病又はアルツハイマー病の治療を含まない。
本明細書で使用するとき、「それを必要とする対象者」は、ALSを有する対象者、又は母集団全体を基準にしてALS発症のリスクが増大した対象者である。好ましくは、それを必要とする対象者はALSを有する。「対象者」は哺乳動物を包含する。哺乳動物は例えば、いかなる哺乳動物であってもよく、例えば、ヒト、霊長類、鳥、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ又はブタであってよい。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書で使用するとき、「候補化合物」は、本発明の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を指す。
本明細書で使用するとき、「単剤療法」は、単一の活性又は治療用化合物をそれを必要とする対象者に投与することを指す。好ましくは、単剤療法は治療に有効な量の活性化合物の投与を伴う。例えば、本発明の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体若しくは誘導体のうちの1つを用いる、ALSの治療を必要とする対象者に対するALS単剤療法である。単剤療法は、併用療法と対比されてもよく、併用療法は、複数の活性な化合物を組み合わせて投与するものであり、好ましくは組み合わせる各成分が治療に有効な量で存在する。一態様において、本発明の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物を用いる単剤療法は、所望の生物学的効果の誘導において、併用療法よりも有効である。
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療する」は、疾患、状態、又は障害と闘うことを目的とした、患者の管理及びケアを表し、疾患、状態若しくは障害の症状若しくは合併症を緩和するため、又は疾患、状態若しくは障害を排除するための、本発明の化合物又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物の投与を包含する。
本発明の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物は、疾患、状態又は障害を予防するためにも使用できる。用語「予防」又は「予防する」は、本明細書で使用するとき、臨床的に明らかな疾患進行の開始をすべて予防すること、あるいはリスクのある個体において前臨床的に明白な疾患の段階の開始を予防又は遅延することのいずれかを包含する。これは、疾患発症のリスクのある者の予防的治療を包含する。
本明細書で使用するとき、用語「緩和」又は「寛解」は、疾患の徴候又は症状の重篤度がそれによって低減されるプロセスを表す。重要なことに、徴候又は症状を、排除せずとも緩和することができる。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の投与は、徴候又は症状の排除を導くが、排除は必須ではない。治療的に有効な用量は、徴候又は症状の重篤度を軽減すると予想される。
本明細書で使用するとき、用語「症状」は、疾患、疾病、外傷、又は身体の何らかの異常の指標として定義される。症状は、症状を経験した個人によって感知又は認識されるが、他者には容易に認識されない場合がある。他者とは、非医療専門家として定義される。
本明細書で使用するとき、用語「徴候」も、身体の何らかの異常の指標として定義される。ただし、徴候は、医師、看護士、又はその他の医療専門家には観察されるものとして定義される。
本明細書で使用するとき、「併用療法」又は「同時療法」は、本発明の化合物又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、多形体若しくは溶媒和物と、少なくとも1つの第2の作用剤を、これらの治療薬の同時作用による有益な効果を提供するために、意図する特定の治療レジメンの一部として投与することを包含する。この併用療法の有益な効果としては、限定するものではないが、治療薬の組み合わせから生じる薬物動態学的又は薬力学的相互作用が挙げられるが、これに限定されない。組み合わせたこれらの治療薬は、典型的には、規定された期間(通常は、選択される組み合わせに応じ、分、時間、日又は週)にわたって投与が実施される。「併用療法」は、偶然に及び適宜に本発明の組み合わせを生じる別々の単剤療法レジメンの一部としての、2つ以上のこれらの治療薬の投与を包含することが意図される可能性があるが、一般的にはそうではない。
「併用療法」は、逐次的な様式でのこれらの治療薬の投与(各々の治療薬が異なる時間に投与される)、並びに実質的に同時の様式での、これらの治療薬、又は少なくとも2つの治療薬の投与を含むことが意図される。実質的な同時投与は、例えば、固定比の各治療薬を有する単一のカプセル又は各治療薬の単一カプセルを複数個、対象者に投与することで遂行できる。各治療薬の逐次的投与又は実質的な同時投与は、任意の適切な経路(経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を通じた直接吸収を包含するが、これらに限定されない)によって達成できる。治療薬は同じ経路でも異なる経路でも投与できる。例えば、選択された組み合わせのうちの最初の治療薬を静脈内注入によって投与しながら、組み合わせのうちの他方の治療薬を経口投与してもよい。あるいは、例えば、全ての治療薬を経口投与してもよく、又は全ての治療薬を静脈内注入によって投与してもよい。治療薬を投与する順序は厳密に重要ではない。
「併用療法」は、上記の治療薬を更に他の生物学的活性成分及び非薬物療法(例えば、外科又は理学療法)と組み合わせて投与することも含む。併用療法が非薬物処置を更に含む場合、この非薬物処置は、治療薬と非薬物処置の組み合わせの同時作用から有益な効果が得られるのであれば、任意の適切な時間で実施されてもよい。例えば、適切な場合では、有益な効果は、治療薬の投与から非薬物処置が一時的に取り除かれてもなお、おそらく数日又は更には数週間得られる。
本発明の化合物、又は製薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体又は誘導体は、第2の活性治療薬と組み合わせて投与してもよい。第2の活性治療薬としては、限定するものではないが、神経栄養因子、抗酸化物質(例えば、補酵素Q10、マンガノポルフィリン、AEOL 10150、KNS−760704[(6R)−4,5,6,7−テトラヒドロ−N6−プロピル−2,6−ベンゾチアゾール−ジアミンジヒドロクロリド、RPPX]、エダラボン(3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、MCI−186))、抗炎症剤(例えば、TNF−α、セラストロール)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(例えば、バルプロ酸(VPA)、TCH346(ジベンゾ(b,f)オキセピン−10−イルメチル−メチルプロピ−2−ニルアミン)、ミノサイクリン、タウロウルソデオキシコール酸)、NMDA受容体拮抗薬(例えば、メマンチン)、熱ショックタンパク質誘導物質(例えば、アリモクロモル)、オートファジー(autophage)誘導物質(例えば、ラパマイシン、リチウム)、セファロスポリン(例えば、セフトリアキソン(Cefatriaxone))、マイクロRNA、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
本明細書で使用するとき、マイクロRNA(又はmiRNA若しくはmiR)は、小さな、非コードRNA分子(長さ19〜25ヌクレオチド)である。例えば、miR−1、miR−133、miR−214、miR−181及びmiR−206である。
本発明の化合物と併用できる追加的な第2の活性治療薬としては、限定するものではないが、リルゾール、タランパネル(8−メチル−7H−1,3−ジオキソロ(2,3)ベンゾジアゼピン)、タモキシフェン、TCH346、ビタミンE、セレコキシブ、クレアチン、コパキソン、NP001、オザネズマブ、ジレニア、SOD1Rx、MCl−186又はこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の状況で使用される栄養・成長因子は、本質的に、ニューロトロフィン類、ニューロキン(neurokine)類及びTGFβ類、の3群に分類される。成長因子としては、限定するものではないが、インスリン様成長因子(IGF−1)、神経成長因子(NGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF165、線維芽細胞増殖因子(FGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、トランスフォーミング成長因子(TGF−α、TGF−β)、ニューロトロフィン3(NT3)、ニューロトロフィン4/5(NT4/5)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、肝細胞増殖因子(HGF)、骨形成タンパク質(BMPs)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポチエン(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
当業者は、本明細書で論じられた既知の手法又は同等の手法の詳細な記述について、一般的な参照文書を参照することもできる。こうした文書としては、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Enna et al.,Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Fingl et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990)が挙げられる。これらの文書は、当然、本発明の一態様の作製又は使用においても参照できる。
4.医薬組成物
本発明は、式I〜IVの化合物を少なくとも1つの製薬学的に許容可能な賦形剤若しくは基材と組み合わせて含む、ALSの治療、寛解、又は予防のための医薬組成物も提供する。
「医薬組成物」は、本発明の化合物を、対象者への投与に適した形態で含有する製剤である。
本明細書で使用するとき、語句「製薬学的に許容可能な」は、適切な医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に関して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を生じることなく適しており、合理的な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、基材及び/又は剤形を指す。
「製薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に安全、非毒性かつ生物学的にもその他の面でも望ましくないものではない医薬組成物を調製する際に有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用並びにヒトの薬剤使用に許容可能な賦形剤を包含する。「製薬学的に許容可能な賦形剤」は、本明細書及び特許請求の範囲中で使用される場合、1つのみならず1超のこのような賦形剤を包含する。
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように処方される。種々の経路が想到され、例えば、限定するものではないが、経口、肺、直腸、非経口、皮内、経皮、局所、経粘膜、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、吸入、頬側、舌下、胸膜内、脳室内(ICV)、髄腔内、鼻腔内等が挙げられる。
適切な送達のために使用される溶液又は懸濁液には、以下の成分を包含させることができる:注射用蒸留水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリソルベート、トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、又はその他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はブドウ糖などの張度調整剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調節することができる。これらの製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は多用量バイアルに封入することができる。
化合物又はその医薬組成物は、現在ALS治療に使用されている多数の周知の方法で対象者に投与することができる。好ましくは、投与は連続注入であり、浸透圧ミニポンプを介した連続皮下送達を包含する。延髄発症型のALSに罹患した個体は、本発明の化合物の頸椎レベルでのICV又は髄腔内送達がより有効となり得るが、腰椎発症ALS患者は、本発明の化合物の脊髄/腰椎レベルでの髄空内送達がより有効となり得る。好ましくは、本発明の化合物は、脳脊髄液(CSF)中に直接送達される。本発明の化合物は、発症箇所の近くに連続的に投与することができる。好ましくは、発症付近への投与は髄腔内投与である。髄腔内投与は、例えば、ポンプを外科的に埋め込むこと及び脊髄又は脳室へカテーテルを通すことによって実施できる。好ましい投与は、連続的な髄腔内送達によるものである。
一般的に、本発明の化合物の好適な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量となる化合物量であろう。このような有効用量は、一般的に上記の因子に依存する。一般的に、本発明の化合物の患者への静脈内及び皮下用量は、指示された治療効果のために使用される場合、約0.0001〜約100mg/kg(体重)/日、より好ましくは約0.01〜約50mg/kg/日、なお一層好ましくは約0.1〜約40mg/kg/日の範囲であろう。例えば、対象者の体重20g当たり約0.01μg〜約20μg、約20μg〜100μg、及び約10μg〜200μgの本発明の化合物が投与される。一般的に、本発明の化合物の患者への髄腔内又はICV用量は、指示された治療効果のために使用される場合、約0.0001μg〜約10mg/kg体重/日、より好ましくは約0.001μg〜約5mg/kg/日、及びなお一層好ましくは約0.01μg〜約4mg/kg/日の範囲であろう。例えば、対象者の体重20g当たり約0.01ng〜約2μg、約20ng〜10μg、及び約10ng〜20μgの本発明の化合物が投与される。
必要に応じて、活性化合物の有効1日用量を、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれ以上の下位用量として、所望により単位剤形で、投与してもよい。
本発明の医薬組成物は、「治療に有効な量」又は「予防的に有効な量」の1つ以上の本発明の化合物を包含する。「治療に有効な量」とは、所望の治療結果(例えば、様々な病状又は容態に関連する影響の低減又は予防)を達成するために、用量にて、必要とされる時間にわたって有効な量を指す。治療に有効な化合物量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに治療化合物が個人において所望の応答を誘発する能力等の因子によって変動し得る。治療に有効な量は、治療薬のいかなる毒性又は有害な影響よりも、治療的に有益な影響の方が上回る量でもある。「予防的に有効な量」とは、所望の予防成果を達成するために、用量にて、必要とされる時間にわたって有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の前又は初期段階の対象者に使用され、予防的に有効な量は、治療に有効な量よりも少なくなる。
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療又は予防応答)が得られるように調節されてもよい。例えば、単回ボーラス投与してもよいし、時間をかけて数回に分けて投与してもよいし、治療状況の必要に応じて用量を比例的に増減してもよい。投与し易さ及び投与の均一性のためには用量単位形態の非経口組成物を処方すると、特に有利である。本明細書で使用するとき、用量単位形態とは、治療する対象とする哺乳動物のための単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を必要な医薬品基材と共に含有する。本発明の用量単位形態の仕様は、(a)化合物の独自の特徴と、達成しようとする特定の治療又は予防効果、及び(b)個体における過敏症の治療のためにこのような活性化合物を配合する技術に固有の制約、によって指示され、これらに直接依存する。
本発明の化合物の治療的又は予防的に有効な量の例示的な、非限定的範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。用量の値は、緩和すべき状態の種類及び重篤度に伴い変動し得ることに注意する。特定の対象者に関して、特定の投与レジメンは、各人の必要性に、及び組成物を投与する若しくは組成物の投与を監督する専門家の判断に従って、ある時間にわたって調節されるべきであること、及び本明細書に記載の用量範囲は例示的なものにすぎず、特許請求される組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことは更に理解されるべきである。
治療的用途において、本発明に従って使用される医薬組成物の用量は、選択した用量に影響する他の因子の中でも特に、作用剤、投与される患者の年齢、体重及び臨床的状態、並びに治療を管理する臨床医又は開業医の経験及び判断によって変動する。一般的に、用量は、ALSの少なくとも1つの症状の寛解(例えば、上位及び下位ニューロンの再生の遅延、好ましくは退行)、及び好ましくはALSの完全な退行を生じるのにも十分なものであるべきである。薬剤の有効な量は、臨床医又はその他の有資格観察者が気づく客観的に識別可能な改善を提供する量である。本明細書で使用するとき、用語「投薬が有効な方法」は、対象者又は細胞において所望の生物学的効果をもたらす活性化合物の量を指す。
任意の化合物に関して、治療に有効な量を、細胞培養アッセイ(例えば、脳又は中枢神経系細胞)、又は動物モデル(通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、又はブタ)のいずれかで最初に予測することができる。動物モデルは、投与の適切な濃度範囲及び経路を決定するために使用してもよい。続いて、そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定することができる。治療/予防的有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な製薬学的手順、例えば、ED50(個体群の50%において治療的に有効な用量)及びLD50(個体群の50%に致死的な用量)によって決定してもよい。毒性影響と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これを比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。用量は、使用する剤形、患者の感受性、及び投与経路に応じこの範囲内で変動し得る。
用量及び投与は、十分な程度の活性剤を提供するか又は所望の効果を維持するように調節される。考慮に入れてもよい因子としては、病状の重篤度、対象者の健康状態、年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感度、治療への耐性/応答が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて、3〜4日ごと、毎週又は2週間に1回投与してもよい。
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般的に知られる方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥工程によって製造することができる。医薬組成物は、製薬学的に使用できる調剤への活性化合物の加工を促進する賦形剤及び/又は補助剤を含む製薬学的に許容可能な1つ以上の基材を用いて、従来の方法で製剤化することができる。当然、適切な製剤は、選択される投与経路によって決まる。
注射用に適する医薬組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が包含される。静脈内投与用の好適な基材としては、生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合に、組成物は無菌でなければならず、注射針を容易に通過する程度に流動性であるべきである。組成物は製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。基材は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒質であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを組成物に包含させることが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる作用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に包含させることによってもたらすことができる。
無菌注射液は、適当な溶媒中に必要量の活性化合物を、必要に応じて上で列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒質及び上で列挙された成分から必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射液調製用の無菌粉末の場合、調製方法としては、有効成分の粉末、及びその他の全ての所望成分を、事前に滅菌濾過された溶液から得られる、真空乾燥法及び凍結乾燥法が好ましい。
経口組成物は、一般的に、不活性の希釈剤又は食用の製薬学的に許容可能な基材を包含する。組成物を、ゼラチンカプセルに封入するか又は圧縮して錠剤にすることができる。経口治療投与を目的として、活性化合物を賦形剤と一緒に組み込み、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で用いることができる。経口組成物は、洗口剤として用いるための流体基材を用いて調製することもでき、その場合、流体基材中の化合物は経口適用され、口内で流動させられた後、吐出されるか又は嚥下される。製薬学的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質を、組成物の一部として包含させることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等には、以下の成分又は類似した性質の化合物のいずれかを含有させることができる:微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又は乳糖などの賦形剤;アルギン酸、Primogel又はトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖又はサッカリンなどの甘味剤;又は、ハッカ、サリチル酸メチル若しくはオレンジ着香料のような着香剤。
吸入投与の場合、化合物は、好適な噴射剤(例えば、二酸化炭素等のガス)を含有する加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーからのエアゾール噴霧の形態で送達される。
経粘膜又は経皮的手段による全身投与も可能である。経粘膜又は経皮投与の場合、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤に使用する。そのような浸透剤は一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻噴霧又は坐薬を用いることにより達成することができる。経皮投与の場合、一般に当該技術分野において既知であるように、活性化合物は、軟膏、膏薬、ゲル又はクリームに製剤化される。
活性化合物は、移植片及びマイクロカプセル送達系を包含する放出制御型製剤などの、身体からの速やかな消失から化合物を保護する製薬学的に許容可能な基材を用いて調製できる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。この物質は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品として得ることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的としたリポソームを包含する)を、製薬学的に許容可能な基材として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に既知の方法によって調製することができる。
一実施形態において、医薬組成物はバルク又は単位剤形である。単位剤形は、種々の形態のいずれかであり、例えば、溶液、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプ又はバイアル等の種々の形態のいずれかである。単位用量における活性成分(例えば、開示された化合物、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくは異性体の製剤)量は、有効量であり、関連する特定の処置に従って変動する。当業者は、患者の年齢及び状態に応じて、用量に慣例的な変更を加える必要がある場合のあることを理解するであろう。用量は、投与の経路にも応じ異なる。種々の経路が想到され、例えば、限定するものではないが、経口、肺、直腸、非経口、皮内、経皮、局所、経粘膜、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、吸入、頬側、舌下、胸膜内、脳室内(ICV)、髄腔内、鼻腔内等が挙げられる。
投与し易さ及び投与の均一性のためには用量単位形態の経口又は非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書で使用するとき、用量単位形態は、治療する対象者のための単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を必要な医薬品基材と共に含有する。本発明の用量単位形態の仕様は、活性化合物の特有の特徴と、達成しようとする特定の治療効果によって指示され、これらに直接依存する。
本発明の化合物の局所的若しくは経皮投与の剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が挙げられる。一実施形態において、活性化合物は、滅菌条件下で、製薬学的に許容可能な基材、及び必要な任意の防腐剤、緩衝剤若しくは噴射剤と混合される。
医薬組成物は、投与に関する説明書と共に、容器、パック又はディスペンサーに入れることができる。
本発明の化合物には、更に塩を形成させることができる。これらの形態の全ても、特許請求されている発明の範囲内で想到される。
本明細書で使用するとき、「製薬学的に許容可能な塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を生成することによって修飾された本発明の化合物の誘導体を指す。製薬学的に許容可能な塩の例としては、限定するものではないが、塩基性残基(例えば、アミン)の無機酸又は有機酸の塩、酸性残基(例えば、カルボン酸)のアルカリ塩又は有機塩等が挙げられる。製薬学的に許容可能な塩としては、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される、親化合物の一般的な非毒性塩又は四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、限定するものではないが、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、塩基性酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び一般的に生じるアミン酸(例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン等)から選択される無機酸及び有機酸から誘導されるものが挙げられる。
製薬学的に許容可能な塩のその他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンホスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ムコン酸等が挙げられる。本発明は、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオン)に置き換えられるか、又は有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等)と配位結合した際に形成される塩も含む。
製薬学的に許容可能な塩への言及は全て、本明細書中で定義するように、同じ塩の溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を包含することは理解されるべきである。
本発明の化合物は、エステル(例えば、製薬学的に許容可能なエステル)としても調製できる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基を、その対応するエステル(例えば、メチル、エチル又はその他のエステル)に変換できる。また、化合物中のアルコール基をその対応するエステル(例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステル又はその他のエステル)に変換できる。
本発明の化合物は、プロドラッグ(例えば、製薬学的に許容可能なプロドラッグ)としても調製できる。用語「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」は、本明細書において互換的に使用され、インビボで活性な親薬剤を放出する任意の化合物を指す。プロドラッグは、医薬品の多数の望ましい品質(例えば、溶解度、生物学的利用能、製造性等)を増強させることが知られていることから、本発明の化合物をプロドラッグ形態で送達できる。ゆえに、本発明は、現在特許請求されている化合物のプロドラッグ、それを送達する方法、及びそれを含有する組成物を包含することを意図する。「プロドラッグ」は、このようなプロドラッグが対象者に投与された際にインビボで本発明の活性な親薬剤を放出する任意の共有結合した基材を包含することを意図する。本発明のプロドラッグは、慣例的な操作又はインビボのいずれかで修飾が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基又はカルボニル基が、インビボで切断されてそれぞれ遊離ヒドロキシル基、遊離アミノ基、遊離スルフヒドリル基、遊離カルボキシ基若しくは遊離カルボニル基を生成し得る任意の基に結合した、本発明の化合物を包含する。
プロドラッグの例としては、限定するものではないが、エステル(例えば、酢酸エステル、ジアルキルアミノ酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル及び安息香酸エステル誘導体)及びヒドロキシ官能基のカルバメート(例えば、N,N−ジメチルカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、N−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びアミノ官能基のエナミノン、オキシム、アセタール、ケタール、本明細書の化合物中のケトン及びアルデヒド官能基のエノールエステルが挙げられる。Bundegaard,H.,Design of Prodrugs,p1〜92,Elesevier,New York−Oxford(1985)を参照されたい。
化合物又は製薬学的に許容可能なその塩、エステル又はプロドラックは、経口、鼻腔内、経皮、肺、吸入、口腔、舌下、腹腔内、皮下、筋内、静脈内、直腸、胸膜内、髄腔内及び非経口で投与される。一実施形態において、化合物は経口投与される。当業者は、特定の投与経路の利点を認識するであろう。
本化合物を利用する投薬レジメンは、患者の体型、種、年齢、体重、性別及び医療状態、治療される状態の重篤度、投与経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに使用される特定の化合物又はその塩等の様々な因子に従って選択される。通常の知識を有する医師又は獣医師は、状態の進行を予防、阻止又は停止するのに必要な薬剤の有効な量を容易に決定及び処方できる。
開示された本発明の化合物の製剤化及び投与の技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)に見ることができる。一実施形態において、本明細書中に記載される化合物及び製薬学的に許容可能なその塩は、製薬学的に許容可能な基材又は希釈剤と組み合わせて医薬品に使用される。適切な製薬学的に許容可能な基材としては、不活性の固体充填剤又は希釈剤及び無菌の水溶液又は有機溶液が挙げられる。化合物は、本明細書中に記載する範囲で所望の用量を提供するのに充分な量でこのような医薬組成物中に存在する。
本明細書中で使用される全ての割合(%)及び比は、他に記載のない限り、重量によるものである。本発明のその他の特徴及び利点は、種々の実施例から明らかである。提供される実施例は、本発明の実施において有用な異なる成分及び方法論を例証する。実施例は、特許請求される発明を限定するものではない。本開示に基づき、当業者は、本発明の実施に有用なその他の成分及び方法論を識別及び使用することができる。
実施例1:インビトロ活性アッセイ
炎症及び酸化的ストレスは神経変性の重大な誘因であることは当該技術分野において周知である。H2O2は、実験で酸化的ストレスを模倣するために一般的に使用される。更に、ALSモデルにおいて、TNF−αの増大が報告されており、TNF−αが関連するストレッサーであることが示されている。したがって、このインビトロアッセイでは、細胞死を誘導するストレッサーとしてTNF−α及び過酸化水素(H2O2)を使用し、ALSをモデル化した。
H2O2及びTNFαで処置した後の細胞生存率を、NCS34細胞(マウス運動ニューロン細胞株)、及びC8−D1A細胞(マウス星状膠細胞株(the American Type Tissue Culture Collectionより))で評価した。本明細書に開示するいずれかの化合物の培養細胞における活性を評価するプロトコルは、次の通りである。
1日目:細胞を、集密度60%で96ウェルプレートに接種した。10%ウシ胎児血清(Hyclone)を添加したダルベッコ改変最小培地(DMEM、Life Technologies Inc.)からなる増殖培地で維持し、組織培養インキュベータ内で、37℃、95% O2及び5% CO2にてインキュベートした。
2日目:増殖培地を、ウシ胎児血清非添加の200μL/ウェルのDMEMに変えた。濃度を変えて、H2O2(Sigma Aldrich Inc.)、TNFα、及びビヒクル対照又は本明細書に開示の化合物のいずれか(例えば、NPD1(Anida Pharma Inc.))などの追加の剤を増殖培地に添加した。細胞を、組織培養インキュベータ内で、37℃、95% O2及び5% CO2にて24時間インキュベートした。
3日目:24時間後、20μLのWst−1細胞生存率検査試薬(Roche Applied Sciences Inc.)を各ウェルに添加した(増殖培地により1:10希釈)。プレートを静かに左右に揺らしてよく混合する。細胞を37℃で60分間インキュベートした。マルチウェルプレートリーダー分光光度計(MolecularDiagnostics Inc.)で、450nmの試験波長及び600nm超(例えば、630nm)の基準波長にて吸光シグナルを測定した。増殖培地及びWST−1試薬(細胞不含)のバックグラウンド対照(又はブランク)も測定できる。続いて、630nmのバックグラウンド吸光度の値を、450nmの測定値から減算して、正規化した450nmの吸光度の値を得る。
実施例2:NPD1処置は運動ニューロンの生存を増大する
NCS34細胞(マウス運動ニューロン細胞株)における活性について、NPD1、すなわち表1の化合物1を分析した。最初に、NCS34細胞を、濃度を増大したH2O2(1μM、10μM、50μM、100μM、400μM及び800μM)及び10ng/mLのTNFαで24時間処置し、酸化的ストレスと炎症の組み合わせが運動ニューロンの細胞死を引き起こすことを実証した。細胞生存率を、実施例1に記載のWst−1細胞生存率アッセイによって測定した。H2O2及び10ng/mLのTNFαによる処置は、運動ニューロンにおいて26〜37%の細胞死を引き起こした(図1)。平均吸光度の値及び細胞生存率(%)を表2に示す。
100nMのNPD1による細胞の処置は、H2O2及び10ng/mLのTNFαによる処置の24時間後に細胞生存率を増大した(図2)。平均吸光度の値及び細胞生存率(%)の計算値を表3に示す。結果は、10μMのH2O2及び10ng/mLのTNFαで処置した細胞にNPD1を投与した結果、細胞生存率が74.7%(NPD1非添加)から95.6%(NPD1添加)に増大したことを示す。同様に、50〜800μMのH2O2及び10ng/mLのTNFαで処置した細胞にNPD1を添加した場合にも、細胞生存率が増大した。
図3及び表4は、酸化的及び炎症ストレッサー、H2O2及びTNFαに加えて、NCS34をNPD1添加又は非添加で処置した場合の生存細胞とアポトーシスした細胞の割合(%)の比較を示す。これらの結果は、運動ニューロンにおいて、NPD1での処置は、未処置対照と比較して細胞生存率を39%増加させることを実証する。
更に、このアッセイでは、細胞生存率及び生存が過少評価される場合がある。ビヒクル対照における細胞死が増えるほど(例えば、約40%)、NPD1処置後の生存率の差が大きくなりやすい。したがって、NPD1は、この結果で実証される効果よりも大きな運動ニューロン細胞の生存効果を与える場合がある。
実施例3:NPD1処置が星状膠細胞生存率を増大する
加えて、星状膠細胞がALSの進行の一因であることは当業者に十分に理解される。星状膠細胞は、いずれの種類のニューロンにとっても栄養の面から重要であり、ニューロンと星状膠細胞との間の相互作用はニューロンの健康に不可欠である。星状膠細胞から放出される栄養素はALSに有益となる可能性があることは当該技術分野において既知である。加えて、星状膠細胞は、グルタメート再取り込みの主因であることもよく知られる。グルタメートの濃度増大は、運動ニューロンの変性を引き起こす興奮毒性を生じることが知られていることから、栄養素放出に加えて、星状膠細胞の機能及び/又は生存能の改良も、興奮毒性の低減に寄与するはずであり、したがってALS患者の治療に有益であると考えられる。対照的に、その他の研究で、ALSにおける星状膠細胞の活性化は、運動ニューロンの細胞死に関与することが示唆されている。星状膠細胞は明らかにALS進行の一因であることから、NPD1処置が星状膠細胞の生存能に及ぼす影響を試験し、疾患の進行に関する病因をもとに情報を得た。
NPD1活性を、マウス星状膠細胞株のC8−D1A細胞(American Type Tissue Culture Collection)で分析した。C8−D1A細胞を、NPD1非添加、又は50nM若しくは100nMのNPD1添加下で、10ng/mLのTNFαと、濃度を増加させてH2O2(1μM、10μM、50μM、100μM、400μM及び800μM)とで24時間処置した。細胞生存率を、実施例1に記載のWst−1細胞生存率アッセイによって測定した。各試料を3つずつ重複させて試験した。生の及び正規化した吸光度の値を表5及び6に記載し、データのまとめを表7及び8に示す。図4に示すように、100μMのH2O2及び10ng/mLのTNFαでの処置は、星状膠細胞に有意な細胞死を引き起こした。NPD1で処置した細胞は、用量に応じた細胞生存率及び生存能の増加を示した。NPD1処置が星状膠細胞の細胞生存率に与える有益な効果を、割合(%)として計算して、表5に示す。
表8に示すように、NPD1による処置は、星状膠細胞の生存能を増加させ、星状膠細胞の細胞死を低減した。更に、NPD1の用量を増大すると、星状膠細胞の生存が増加した。
実施例4:ALSのインビボモデル
ALSのインビボモデルは当該技術分野において既知であり、ALSの症状及び進行の遅延又は緩和に対する本発明の化合物のいずれかによる処置の有効性を実証するのに有用な場合がある。例えば、ALSの進行に関与することが既知の遺伝子のRNAi又は突然変異を利用した線虫(C. elegans)、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ゼブラフィッシュ(D. rerio)及びラットの遺伝モデルが開発されている。ALS進行に関与するか又はALS進行をモデル化することが既知の遺伝子としては、例えば、SOD1、TDP−43、ATAXN3(D.melanogaster)、FUS/TLS、及びALS2が挙げられる。特に好ましいインビボモデルとしては、ALSのマウスモデル、例えばSOD1、TARDBP(TDP−43)又はALS2(アルシン)に変異を含有するマウスが挙げられる。SOD1の変異としては、G37R、G85R、G86R、D90A、G93A、H46R/H48Q、H46R/H48Q/H63G/H120G、L126Z及びG127Xが挙げられる。TARDBP(TDP−43)の変異としては、A315T、G348C、M337V又はこれらの組み合わせが挙げられる。ALS2ノックアウトマウス又は機能喪失変異が好ましい場合もある。そのようなマウスモデルの例としては、B6SJL−Tg(SOD1−G93A)1Gur/J、B6SJL−Tg(SOD1)2Gur/J、B6.Cg−Tg(SOD1−G93A)1Gur/J、B6.Cg−Tg(Prnp−TARDBP−A315T)95Balo/J、及びSTOCK Tg(Prnp−TARDBP−A315T)23Jlel/Jが挙げられる。
本発明の化合物(例えばNPD1)の毒性を測定するためのアッセイは、当該技術分野において十分に確立されており、マウスで実施することができる。例えば、NPD1組成物を、約0.01〜約50mg/kg/日の様々な用量で、マウスに鼻腔内、脳室内(ICV)及び髄腔内投与することができる。用量は、所定の時間にわたって、1回、2回、又は3回以上の回数で投与することができる。例えば、NPD1及び対照を、3〜4日ごと、毎週、又は2週間に1回で、1年まで投与することができる。所定の期間にわたって、マウスの毒性症状又は死亡を観測する。
本発明の化合物のいずれか(例えばNPD1)の、本明細書に記載のインビボ動物モデルのいずれかへの投与は、ALSの症状を遅延又は緩和する能力を評価するために実施することもできる。例えば、NPD1を、鼻腔内、脳室内(ICV)、及び髄腔内投与することができる。当該技術分野で既知のその他の治療薬も、NPD1投与と同時に、又はNPD1投与の前若しくは後に、投与することができる。NPD1は、上記の毒性アッセイの結果に基づく用量で投与できる。例えば、用量は0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgとすることができ、所定の期間にわたって規則的な間隔で投与することができる。対照動物及びNPD1処置動物を、筋肉の単収縮、痙攣若しくは硬直、筋萎縮、麻痺、飲食困難又は呼吸困難及び死亡などのALSの症状について監視した。NPD1処置後の運動ニューロン又は星状膠細胞の生存の更なる分析も、当該技術分野で既知の方法を用いて動物で実施できる。