JP2015508654A - 褐色脂肪様細胞に関する方法と組成物 - Google Patents
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Abstract
代謝疾患及び他の体重関連疾病を含む、疾患を処置するための方法及び治療法が提供される。一般に、褐色脂肪様を作製するための方法が、動脈由来細胞の集団を、未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルにて、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間、条件下で、脂肪生成誘導培地中で培養することを含んで開示される。単離した動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞がまた、その薬理学的組成物及び細胞送達システムを含んで、提供される。他の実施形態において、対象を処置する方法が、動脈由来褐色脂肪様細胞の集団を得ることと、該褐色脂肪様細胞を、該対象中の標的領域内に投与することと、を含んで開示される。
Description
(関連出願の相互参照)
本明細書は、その全てが参考文献にて本明細書に組み込まれている、2012年2月15日に出願された、「褐色脂肪様細胞に関する方法及び組成物」という表題の、米国特許仮出願番号第61/599,080号の優先権を主張する。
本明細書は、その全てが参考文献にて本明細書に組み込まれている、2012年2月15日に出願された、「褐色脂肪様細胞に関する方法及び組成物」という表題の、米国特許仮出願番号第61/599,080号の優先権を主張する。
(発明の分野)
本発明は、褐色脂肪様細胞と、代謝疾患及び他の疾患の処置に関する方法及び組成物に関する。
本発明は、褐色脂肪様細胞と、代謝疾患及び他の疾患の処置に関する方法及び組成物に関する。
肥満は、もっとも一般的な体重疾病を表し、西洋世界における最も重要な栄養疾患であり、その有病率は、中年集団の30%〜50%の範囲と推定される。過体重ならびに肥満のアメリカ人の数は、1960年から増加し続けており、傾向としてはスローダウンしていない。今日、およそ64.5パーセントの成人アメリカ人が過体重又は肥満であると分類されている。肥満は、肥満の人数が増え続けているため、さらには肥満による負の健康に対する影響について理解されているため、増々関心が高まってきている。毎年、肥満は、米国において少なくとも300,000例の死亡の原因であり、肥満であるアメリカ成人の健康管理コストは、1250億ドル以上となる(米国肥満学会)。理想体重よりも45.4キログラム以上(100ポンド以上)である、重度の肥満がとりわけ、重度の健康問題に対する有意なリスクを有する。したがって、大きな注目が、肥満患者を治療することに焦点があてられている。
中程度の肥満でさえも、早期死亡、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、胆嚢疾患及び特定の型のがんに対するリスクを増加させる。その高い有病率と、有意な健康結果のために、その治療に、高い公衆衛生優先度が与えられるべきである。したがって、肥満を治療し、体重減少を導くためのよりよい方法及び治療に対する必要性が存在する。
本発明は一般に、褐色脂肪組織を増加させること、褐色脂肪組織を補充すること、又は褐色脂肪様組織で白色脂肪組織を置換することを含む、代謝疾患及び体重関連疾病を含む疾患を治療するための方法及び組成物を提供する。1つの態様が、単離動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞に対する方法及び組成物を開示している。別の態様は、動脈由来褐色脂肪様細胞の集団を得、褐色脂肪様細胞を、対象内の標的領域に投与することによって、対象を処置するための方法及び組成物を開示している。
もう一つの実施形態において、褐色脂肪様細胞を作製する方法には、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN又はADIPOQ)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)から選択される脂肪細胞マーカーの発現を増加させることが含まれうる。さらに、脂肪細胞マーカーは、脱共役タンパク質1(ICP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)のような、褐色脂肪細胞マーカーでありうる。本方法にはさらに、褐色脂肪様細胞を単離することが含まれうる。
さらに、動脈由来細胞は、内乳動脈細胞又はiMACでありうる。これらの細胞は、HLA−1に対して陽性であり、CD10、CD31、CD34、CD45、CD133、CD141及びKDR/Flk−1に対して陰性でありうる。動脈由来細胞はさらに、CD29、CD44、CD73、CD166に対して陽性であり、さらにCD15、CD23、CD24、CD62p、CD80、CD86,CD104、CD117、CD138、CD146、VE−カドヘリン及びHLA−2に対して陰性でありうる。
褐色脂肪様細胞を作製する方法には、脂肪生成誘導培地中で動脈由来細胞の集団を培養することが含まれる。脂肪生成誘導培地は、骨形成因子(BMP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体−α(RxRα)、インスリン及びT3、チアゾリジンジオン(TZD)、ビタミンA、レチノイン酸、インスリン、グルココルチコイド又はそのアゴニスト、ウイングレスタイプ(Wnt)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(TFGF)、トランスフォーミング成長因子(TFG)−α、TGF−β、腫瘍壊死因子α(TNFα)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)から選択される化合物又は化合物の組み合わせを含むことができる。
例示的な実施形態には、脂肪生成誘導培地中、動脈由来細胞の集団を、未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間及び条件下で、培養する開示された方法によって作製された細胞集団が含まれる。
別の態様には、単離された動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞が含まれる。褐色脂肪様細胞は、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN又はADIPOQ)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)から選択される、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現によって特徴付けることができる。さらに、脂肪細胞マーカーは、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)から選択される褐色脂肪細胞マーカーでありうる。脂肪生成マーカーは、未処理動脈由来細胞と比較してより高く、褐色脂肪様細胞中で発現しうる。
褐色脂肪様細胞は、それらの発熱潜在能力によってさらに特徴付けすることができる。褐色脂肪細胞の本特定の機能は、高いミトコンドリア含量と、細胞呼吸を脱共役して脱共役タンパク質(UCP)の物理的若しくは化学的刺激又は上流受容体を通したシグナル伝達を通してミトコンドリア膜を通るプロトンの漏れを引き起こして熱を発生する能力とから由来する。発熱潜在能力は、カテコールアミン及び環状AMPの少なくとも1つへの曝露によって刺激可能である。
さらに、単離された動脈由来ex vivo分化褐色脂肪様細胞は、内乳動脈細胞又はiMACから分化可能である。
単離された動脈由来ex vivo分化褐色脂肪様細胞はまた、薬理学的に許容され得る担体と薬理学的組成物中に含まれうる。あるいは、単離された動脈由来ex vivo分化褐色脂肪様細胞は、薬理学的に許容され得る担体中、褐色脂肪様細胞を含むリザーバを有する細胞送達システム、及びリザーバとの流体接触中の送達器具中に含まれてよい。例示的実施形態において、リザーバは、ニードル又はカニューレでありうる。さらに、送達器具は、バイアル又はシリンジのようなハウジングの単一容器又はチャンバー内に、褐色脂肪様細胞を格納可能である。
別の態様において、動脈由来褐色脂肪様細胞の集団を得、この褐色脂肪様細胞を対象内の標的領域に投与することによる、対象を処置する方法が開示される。1つの実施形態において、方法にはさらに、注射可能組成物として、褐色脂肪様細胞を調製することが含まれる。
他の実施形態において、動脈由来褐色脂肪様細胞は、対象に対して自家でありうる。あるいは、褐色脂肪様細胞は、対象に対して、同種又は異種であり得る。
対象はまた、肥満、糖尿病又は高脂血症から選択される代謝疾患を有してもよい。あるいは、対象は、太っており、治療が必要であってよい。例示実施形態において、対象はヒトである。
対象を処置する方法はまた、対象中の発熱潜在能力を増加させうる。発熱潜在能力は、熱を発生させるミトコンドリア膜を通したプロトンの漏れとして特徴付けることができる。さらに、方法には、対象を処置するために、発熱潜在能力を増加させるため、動脈由来褐色脂肪様細胞を刺激することが含まれてよい。
以下の詳細な説明を付属の図面と併せて考慮することで、本発明のより深い理解がなされるであろう。
白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、筋細胞及び骨細胞への間葉系幹細胞分化を図解している。
脂肪生成培地に曝露し、Oil Red O溶液にて染色し、脂肪蓄積が明らかに増加した、内乳動脈細胞(iMAC)を示している。
対照培地(維持培地)に曝露され、Oil Red O溶液で染色し、有意な脂肪蓄積が示されない、iMACを示している。
未処理iMACと比較した、分化iMACでの脂肪細胞マーカー、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN又はADIPOQ)の比較定量RT−PCR発現レベルを示している。
未処理iMACと比較した、分化iMACでの褐色脂肪細胞マーカー、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)の比較定量RT−PCR発現レベルを示している。
特定の例示実施形態が、本明細書に開示された治療及び方法の構造、機能、製造及び利用の原理の総合的な理解を提供するためにここで記述されるであろう。これらの実施形態の1つ以上の例を添付図面に示す。当業者は、本明細書で特に記述され、付随する図面にて図示される治療及び方法が、非限定例示実施形態であること、及び本発明の範囲は請求項によってのみ定義されること、を理解するであろう。1つの例示的な実施形態との関連において例示又は説明された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形が本発明の範囲内に含まれることが意図される。
本開示は、肥満及び他の体重関連疾患及び疾病のような疾患を治療するために、対象中の褐色脂肪組織(BAT)及び/又はBAT機能を増加させるために有用な組成物及び方法を提供する。これらの方法には、BAT細胞系統へ、又は向かっての前駆細胞(例えば脂肪細胞へ分化可能な前駆細胞)の分化を促進することが含まれる。よりとりわけ、本開示は、少なくとも部分的に、内乳動脈細胞のような動脈由来細胞が、褐色脂肪様細胞又はBAT細胞系統へ、又は向かっての分化が可能であるという発見に基づいている。本明細書で記述されるように、これらの組成物及び方法を、BAT細胞数及び/又はBAT機能を増加させるため、及び/又はBATの白色脂肪組織(WAT)に対する比を増加させるため、そしてそれによって、対象中の肥満及び体重関連疾患及び疾病のような代謝疾患を治療するために使用可能である。
本明細書で記述した方法のいくつかには、脂肪生成誘導培地で処理した動脈由来細胞を移植することが含まれる。一般に、本方法には、前駆細胞、例えば動脈由来細胞を、脂肪生成誘導培地又は分化培地にて処理すること(例えば接触させること)、及びその後対象に脂肪様細胞(例えば少なくとも1つの細胞又はそのような細胞の集団)を移植すること、が含まれる。
褐色脂肪組織
肥満判定共通尺度(BMI)は、キログラムでの個人体重を、メートルでのその身長の平方で割る数式(すなわちwt/(ht)2)に基づいた、体重対身長の関係(又は比)を表す度量である。National Institute of Health,Clinical Guidelines on the Identification,Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults(1998)を参照のこと。
肥満判定共通尺度(BMI)は、キログラムでの個人体重を、メートルでのその身長の平方で割る数式(すなわちwt/(ht)2)に基づいた、体重対身長の関係(又は比)を表す度量である。National Institute of Health,Clinical Guidelines on the Identification,Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults(1998)を参照のこと。
肥満は典型的には、30kg/m2以上のBMIを有する個人を意味する。過体重は、25kg/m2以上、30kg/m2未満のBMIを有する個人を記述する。しかしながら、代謝疾患を有するすべての個人が、肥満又は過体重ではない。25kg/m2未満のBMIを有する非肥満個人が、糖尿病及び高脂血症のような代謝疾患を有してよい。
脂肪細胞は、エネルギーバランス及び脂質恒常性の制御に重要である。脂肪組織中で過剰なエネルギーを保存する能力は、重要な進化適応である。脂肪又は脂肪組織に2つの種類が存在する。エネルギー保存の主な部位である白色脂肪組織(WAT)、及びエネルギー消費及び熱産生に特化した褐色脂肪組織(BAT)である。興味深いことに、非肥満個人よりも有意に少ない組織を有する肥満個人において、褐色脂肪細胞組織と肥満判定共通尺度間に逆性相関が存在し、これは、褐色脂肪が、非肥満表現型を維持することにおいて、重要な因子であり得ること、又は肥満表現型が、BAT組織(BAT depot)の大きさ及び/又は活性における減退を導いたこと、を示唆している。
脂肪組織は、部分的にWAT又はBATに特異的な脂肪細胞(adipocytes)又は脂肪細胞(adipose cells)からなる。脂肪細胞はまた、全身性代謝を調節するために、腫瘍壊死因子α(TNFα)、レプチン、レジスチン、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、アペリン及びアディポネクチンのようなアディポカイン類を産出可能である。脂肪組織中でトリグリセリドを正しく貯蔵出来ないことは、結果として、肝臓及び骨格筋中のグルコース代謝における悪影響となる。WATと反対に、BATの生理学的役割は、脂肪酸を代謝することと、熱産生を通してエネルギーを消費することである。褐色脂肪酸のこの特徴的な活性化機能は、高いミトコンドリア含量と、細胞呼吸を脱共役して脱共役タンパク質(UCP)の物理的又は化学的刺激、又は上流受容体を介したシグナル伝達を介して、熱を発生する能力とから由来する。熱産生は、低温への曝露によって活性化された代謝速度によって引き起こさせる熱産出である。例えば、褐色脂肪細胞は、活性化されて、熱を産出するミトコンドリア膜を通過するプロトンの漏れによる発熱潜在能力を示すようになる。この機能的潜在能力はまた、ノルエピネフリン、環状AMP及びレプチンのような、カテコールアミンの少なくとも1つへの曝露によって刺激されうる。WATとBAT間のこれらの機能差により、WATのBATに対する比が、肥満の発達に寄与しうる、全身エネルギーバランスに影響を与えうる。
対象におけるBATの総量を増加させることによってBAT活性又はエネルギー消費を増加させるための方法及び組成物が開示されている。これは、幹/前駆細胞の褐色脂肪細胞への分化、例えば動脈由来細胞の褐色脂肪様細胞への分化の誘導、及び幹/前駆細胞、誘導多機能性幹細胞(iPSC)、動脈由来細胞、褐色脂肪細胞及び/又は褐色脂肪様細胞のBAT組織又は十分な神経支配及び血管分布を有する任意の他の部位への移植のような多数の機構を通して達成可能である。
褐色脂肪様細胞への分化
間葉系幹細胞は、適切な条件下、骨、筋肉及び脂肪細胞の前駆細胞を生ずる。図1を参照されたい。一般に、褐色脂肪細胞は、胚の中間層、又は中胚葉、筋細胞(筋肉細胞)、脂肪細胞及び軟骨細胞(軟骨細胞)の供給源から由来する。脂肪形成は一般に、二段階工程として記述される。第一段階には、間葉系幹細胞(MSC)からの運命づけられた脂肪細胞前駆細胞(又は前脂肪細胞)の発生が含まれる。第二段階には、成熟機能性脂肪細胞へのこれらの前脂肪細胞の最終分化が含まれる。
間葉系幹細胞は、適切な条件下、骨、筋肉及び脂肪細胞の前駆細胞を生ずる。図1を参照されたい。一般に、褐色脂肪細胞は、胚の中間層、又は中胚葉、筋細胞(筋肉細胞)、脂肪細胞及び軟骨細胞(軟骨細胞)の供給源から由来する。脂肪形成は一般に、二段階工程として記述される。第一段階には、間葉系幹細胞(MSC)からの運命づけられた脂肪細胞前駆細胞(又は前脂肪細胞)の発生が含まれる。第二段階には、成熟機能性脂肪細胞へのこれらの前脂肪細胞の最終分化が含まれる。
本明細書にて使用するところの用語「脂肪細胞」又は「脂肪細胞」は、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞両方を意味する。用語「褐色脂肪細胞」及び「褐色脂肪細胞」は互換的に使用される。本明細書で使用するところの用語「動脈由来細胞」及び「脂肪細胞前駆細胞」は、増殖可能であり、褐色脂肪様細胞への分化を誘導されうる細胞を意味する。脂肪細胞前駆細胞は、内乳動脈細胞(iMAC)のような動脈由来細胞、及び褐色脂肪様細胞を産出するために分化可能な他の細胞を意味するが、これらに限定はされない。用語「増殖する」、「増殖」又は「増殖した」は、「膨張する」、「膨張」又は「膨張した」と互換的に使用されてよい。
対象内での総エネルギー消費を増加させるためにBAT細胞の数を増やすことにより、肥満、糖尿病及び高脂血症のような、代謝疾患を治療するための機構が提供可能である。1つの実施形態において、褐色脂肪細胞は、脂肪細胞前駆細胞の単離、脂肪細胞前駆細胞の褐色脂肪様細胞への分化、及び褐色脂肪様細胞の褐色脂肪細胞組織への移入によって増加させることが可能である。
1つの態様において、動脈由来細胞のような脂肪細胞前駆細胞は、体から取り出し、成長させ、膨張するために培養可能である。内乳細胞(iMAC)のような動脈由来細胞を、増殖培地のような、細胞の生存及び増殖状態を維持する任意の適切な培地中で培養可能である。例えば、哺乳動物内乳動脈から単離されたiMACは、自己再生能を持ち、褐色脂肪様細胞へ分化可能であり、加えて同価潜在能力の娘細胞を産出する。これらの細胞は、内乳動脈より「単離」され、これは、米国特許出願公開第2011/0076769号にて開示されたような周辺の組織からの細胞の分離を意味する。本明細書で使用するところの用語「単離した」は、他の成分から精製された細胞、細胞群、細胞集団、組織又は器官を意味する。
異なる有効性の従来の方法技術を、細胞の望む集団を精製し、単離するために使用してよい。使用した分離技術は、回収すべき細胞の画分の生存性の維持を最大化すべきである。使用する特定の技術はもちろん、分離の効率、方法の細胞毒性、分離の簡便さ及びスピード、及びどんな器具及び/又は技術が必要とされるか、に依存するであろう。いくつかの非限定例としては、脂肪細胞前駆細胞をそれらのトランスクリプトーム、サイトカインプロファイル、プロテオーム、及び細胞表面バイオマーカー検出によって特徴付けることが挙げられるが、これらに限定はされない。用語「バイオマーカー」、「表面マーカー」、及び「マーカー」は互換的に使用され、細胞を同定することを助けるために働く、細胞表面上に発現したタンパク質、糖タンパク質、受容体又は他の分子を意味する。細胞表面マーカーは一般に、当業者に公知の従来の方法によって検出可能である。細胞表面マーカーの検出のための特異的な、しかし非限定例は、免疫組織化学、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、又は酵素解析である。
脂肪細胞前駆細胞は、固相連結抗体に結合する対象の1つ以上のマーカーの発現を通して同定可能である。次いで、結合した細胞を、主に使用した固相及び抗体の性質に依存して、任意の適切な方法によって固相から分離する。抗体はビオチンに結合してよく、次いでこれは支持体又は蛍光体に結合したアビジン又はストレプトアビジンとともに除去され、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)にて使用可能であり、細胞分離を可能にする。
1つの実施形態において、iMACのような脂肪細胞前駆細胞は、HLA−1の陽性発現と、CD10、CD31、CD34、CD45、CD133、CD141及びKDR/Flk−1の陰性発現によって特徴付けることができる。iMACはまた、さらに、CD29、CD44、CD73、CD166に対して陽性、CD15、CD23、CD24、CD62p、CD80、CD86、CD104、CD117、CD138、CD146、VE−カドヘリン及びHLA−2に対してさらに陰性によって特徴付けることができる。早期の実験では、iMACはCD105に対して陰性であることが示された一方で、さらなる実験では、iMACはCD105に対して陽性であると示された。
動脈由来細胞は、内乳動脈のような動脈組織から単離可能である。細胞は、機械的及び/又は酵素的方法を含む、種々の方法によって単離可能である。1つの実施形態において、細胞の単離集団には、約50%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超の対象の細胞が含まれる。対象の細胞には、脂肪細胞前駆細胞、脂肪細胞及び褐色脂肪様細胞が含まれうるが、これらに限定はされない。他の実施形態において、細胞の単離集団は、対象の細胞とは異なる表現型の他の細胞が検出できないものである。さらなる実施形態において、細胞の単離集団は、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、の、対象の細胞とは異なる表現型の細胞が含まれる集団である。
分離手順には、抗体コート磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティクロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合したか、補体とともに使用される細胞毒性試薬、及び固体マトリックスに結合したモノクローナル抗体を利用する「パニング」、又は他の従来の技術が含まれてよい。磁気ビーズ、及びアガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、中空繊維膜及びプラスチックペトリディッシュのような他の固体マトリックスに結合した抗体が、直接分離を可能にする。抗体によって結合される細胞は、単に細胞懸濁液から固体支持体を物理的に分離することによって、細胞懸濁液から除去することができる。固相連結抗体との細胞のインキュベーションの実際の条件及び期間は、使用したシステムに特異的な種々の要素に依存するであろう。適切な条件の選択がしかしながら、よく当業者の範囲内である。
いくつかの方法において、細胞の亜集団を、細胞培養容器(例えば培養ディッシュ、培養フラスコ又は組織培養のためにデザインされたビーズ)のような、固体基質への接着にしたがって単離可能である(「接着細胞」と呼ぶ)。いくつかの実施形態において、固体基質には、細胞外マトリックス(ECM)基質が含まれうる。ECM基質としては、例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、ポリリジン、テネイシン、エラスチン、(ヘパラン硫酸プロテオグリカンのような)プロテオグリカン、エンタクチン、Matrigel(商標)、(ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)又はその他のような)合成RGDS含有ペプチドを疎水性生体適合性足場に共有結合したもの、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定のECM基質の任意の、又は全ての型が本明細書で企図される。例えば、コラーゲンは、(コラーゲンI、II、III、IV、V及びその他のような)18の異なるコラーゲンアイソフォームを含む、多数のアイソフォームにて存在することが一般に公知である(Molecular Biology of the Cell,3rd Edition,ed.by Alberts et al.,New York:Garland Publishing,1994,Ch.19)。同様に、ラミニン(Ekblom et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,857:194〜211,1998)及びフィブロネクチン((Molecular Biology of the Cell,3rd Edition,ed.by Alberts et al.,New York:Garland Publishing,1994,Ch 19)の多数のアイソフォームが公知である。特定の非限定実施形態において、ECM基質には、1〜1000ng/mlのフィブロネクチンコート固体基質、例えば10ng/mlフィブロネクチンコート固体基質が含まれる。
多数の培養培地が公知であり、脂肪細胞前駆体細胞を培養維持するために好適である。一般に、増殖培地には、最小必須培地が含まれる。1つの実施形態において、培地はDMEM/F12である。増殖培地には、血清が付加されてよい。血清の特定の非限定例は、ウマ、ウシ又はウシ胎児血清(FBS)である。培地は、約2体積%〜約20体積%の血清、又は約5体積%血清又は約10%を含んでよい。1つの実施形態において、増殖培地には、約10%のFBSが付加される。1つの実施形態において、培地には、抗生物質又は栄養素のような1つ以上のさらなる添加物が含まれる。栄養素には、10〜1000U/mlのL−グルタミンのようなアミノ酸が含まれうる。抗生物質の特定の非限定例には、10〜1000U/mlのペニシリンと、約0.01mg/ml〜約10mg/mlのストレプトマイシンが含まれる。特定の例において、増殖培地には、約50U/mlのL−グルタミン、50U/mlのペニシリン及び約50μg/mlのストレプトマイシンが含まれる。
培養培地は、増殖培地のような、細胞のバイアビリティを保持する任意の培地又は任意の緩衝液でありうる。多数の培養培地が公知であり、利用に好適である。一般に、増殖培地には、最小必須培地が含まれる。1つの実施形態において、培地は、DMEM低グルコース(DMEM−LG)である。増殖培地には、血清が付加されてよい。血清の特定の非限定例は、ウマ、ウシ又はウシ胎児血清(FBS)である。培地は、約2体積%〜約10体積%の血清、又は約5体積%血清又は約2%を含んでよい。1つの実施形態において、増殖培地には、約5%のFBSが付加される。1つの実施形態において、培地には、抗生物質又は栄養素のような1つ以上のさらなる添加物が含まれる。抗生物質の特定の非限定例には、10〜1000U/mlのペニシリンと、約0.01mg/ml〜約10mg/mlのストレプトマイシンが含まれる。特定の例において、増殖培地には、約100U/mlのペニシリン及び約1mg/mlのストレプトマイシンが含まれる。
動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞を、増殖培地中で膨張可能である。動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞の単一細胞由来コロニーを、クローニングリングのような、本技術分野で公知の任意の技術を用いて、膨張のために単離してよい。あるいは、動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞の単一細胞由来コロニーを、膨張のためにプールしてよい。特定の実施形態において、iMACを、望む数のiMACを得るために、十分な日数、増殖培地中で培養する。1つの実施形態において、iMACを、少なくとも約2日間、増殖培地中で培養する。他の実施形態において、iMACを、少なくとも約7日間、増殖培地中で培養する。また他の実施形態において、iMACを、少なくとも約14日間、増殖培地中で培養する。
別の態様において、褐色脂肪様細胞を、動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞の分化を通して発生可能である。動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞を、本開示に有用な褐色脂肪様細胞へ誘導分化可能である。本明細書で使用するところの用語「分化する」及び「分化」は、それによって比較的未分化な細胞(例えば、多系統誘導可能細胞のような未分化細胞)が、成熟細胞に特徴的な特殊構造及び/又は機能的特徴を獲得する工程を意味する。典型的には、分化の間、細胞構造が変化し、組織特異的タンパク質が現れる。「脂肪細胞分化」は、それによって未分化の細胞が、脂肪細胞、例えば褐色脂肪細胞の1つ以上に特徴的な特性(例えば、形態学的、生化学的又は機能的特徴)を獲得する工程である。当業者は、「褐色脂肪様細胞」に、MSCs、脂肪細胞前駆細胞、前脂肪細胞及び動脈由来細胞から由来する褐色脂肪細胞が含まれることを理解するであろう。
脂肪細胞前駆細胞の褐色脂肪様細胞への分化の誘導は、当業者に公知の方法によって実施可能である。例えば、公知の方法としては、核ホルモン受容体に対するリガンド(デキサメタゾン)及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に対するリガンド(ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、Avandia(商標))、インドメタシン、インスリン、チアゾリジンジオン、及びcAMPの細胞内レベルを増加させる化合物(イソブチルメチルキサンチン)等の化合物での、脂肪細胞前駆細胞の処置が挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態において、脂肪細胞前駆細胞を、ヒドロコルチゾン、核ホルモン受容体に対するリガンド(デキサメタゾン)及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に対するリガンド(ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、Avandia(商標))、骨形成タンパク質(BMP)、レチノイドX受容体−α(RxRα)、インスリン及びT3、チアゾリジンジオン(TZD)、ビタミンA、レチノイン酸、インスリン、グルココルチコイド又はそのアゴニスト、ウイングレスタイプ(Wnt)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、表皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子(TFG)−α、TGF−β、腫瘍壊死因子α(TNFα)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)、インドメタシン、及びcAMPの細胞内レベルを増加させる化合物(イソブチルメチルキサンチン)の1つ以上を含む脂肪生成誘導培地中で培養する。脂肪細胞前駆細胞はまた、分化を誘導することが公知の分子の発現又は過剰発現を通して分化させるために誘導可能である。これらとしては、分化を誘導するための、骨形成タンパク質、例えばBMP7、PPARγ、筋形成因子5(myf5)、PRドメイン含有16(PRDM16)での処置、及びPRDM16及びPPARγのような転写調節因子の遺伝子移入が挙げられるが、これらに限定はされない。
例示的例において、脂肪生成誘導培地には、約0.2μM〜約1.0μMヒドロコルチゾン、例えば約0.3μM〜約0.7μM、又は約0.4μM〜約0.6μMヒドロコルチゾンが含まれる。また他の例において、脂肪生成誘導培地には、約0.5μMヒドロコルチゾンが含まれる。他の実施形態において、脂肪生成誘導培地には、約0.2mM〜約1.0mMイソブチルメチルキサンチン、例えば約0.3mM〜約0.7mM、又は約0.4mM〜約0.6mMイソブチルメチルキサンチンが含まれる。特定の実施形態において、脂肪生成誘導培地には、約0.5mMイソブチルメチルキサンチンが含まれる。他の特定の例において、脂肪生成誘導培地には、約30μM〜約120μMインドメタシン、例えば、約40μM〜約90μM、又は約50μM〜約70μMインドメタシンが含まれる。また他の例において、脂肪生成誘導培地には、約60μMインドメタシンが含まれる。
さらに、脂肪生成誘導培地にはまた、1つ以上の抗生物質、増殖因子、栄養素又はこれらの組み合わせのような、1つ以上のさらなる添加物も含まれうる。一般に、脂肪生成誘導培地には、最小必須培地が含まれる。1つの実施形態において、培地は、α−MEMのような最小必須培地である。脂肪生成増殖培地にはまた、ウマ、ウシ、又はウシ胎児血清又はこれらの組み合わせのような、血清が添加されてよい。脂肪生成誘導培地は、約5体積%〜約25体積%血清、又は約20体積%血清、又は約10%を有してよい。1つの実施形態において、脂肪生成誘導培地には、10% FBS及び10%ウマ血清が添加される。
1つの、非限定例において、脂肪細胞前駆細胞を、α−MEM、10% FBS、10%ウマ血清、0.5μMヒドロコルチゾン、0.5mMイソブチルメチルキサンチン及び60μMインドメタシンを含む脂肪生成誘導培地と接触させることができる。より特定の例において、α−MEMにはさらに、100U/mlペニシリン及び1mg/mlストレプトマイシンを添加する。脂肪細胞分化は、例えば、37°にて95%空気、5% CO2の(100%湿度のような)加湿大気中で発生することが予想されうる。
脂肪細胞前駆細胞を、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間、脂肪生成誘導培地中で培養可能である。脂肪細胞前駆細胞は、脂肪細胞分化が検出されるように、約1週間〜約6週間培養可能である。他の実施形態において、脂肪細胞分化は、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間未満内に、及びその間の任意の時間にて検出されてよい。
脂肪細胞分化は、1つ以上の脂肪細胞関連マーカーの発現を通して検出されうる。本明細書で使用するところの、用語「脂肪関連マーカー」には、脂肪細胞マーカー、褐色脂肪細胞マーカー及び褐色脂肪様マーカーが含まれる。脂肪細胞マーカーのような脂肪関連マーカーは、未処理脂肪細胞前駆細胞と比較してより高いレベルまで上昇しうる。脂肪関連マーカーは、脂肪細胞マーカー又は褐色脂肪細胞マーカーでありうる。脂肪細胞マーカーの例としては、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(AND又はADIPOQ)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)が挙げられるが、これらに限定はされない。褐色脂肪細胞マーカーとしては、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)が挙げられるが、これらに限定はされない。
特定の実施形態において、脂肪細胞前駆細胞は、未処理動脈由来細胞と比較してより高いレベルで、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間及び条件下、脂肪生成誘導培地中で培養する、iMACのような動脈由来細胞である。他の実施形態において、脂肪細胞前駆細胞をまた、未処理脂肪細胞前駆細胞と比較してより高いレベルで、少なくとも1つの褐色脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な条件下、培養可能である。脂肪細胞マーカー発現は、未処理脂肪細胞前駆細胞よりも、少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、10,000倍、50,000倍、100,000倍、150,000倍、200,000倍、250,000倍、300,000倍、450,000倍、500,000倍、550,000倍、600,000倍、650,000倍、700,000倍、750,000倍、800,000倍、850,000倍、900,000倍、又は少なくとも約1,000,000倍、処理された脂肪細胞前駆細胞にて増加可能である。例示実施形態において、処理脂肪細胞前駆細胞中での脂肪細胞マーカー発現における増加は、未処理脂肪細胞前駆細胞に対して少なくとも約10倍である。他の例示実施形態において、処置脂肪細胞前駆細胞中での脂肪細胞マーカー発現における増加は、未処理脂肪細胞前駆細胞に対して少なくとも約100倍である。また他の例示実施形態において、処置脂肪細胞前駆細胞中での脂肪細胞マーカー発現における増加は、未処理脂肪細胞前駆細胞に対して少なくとも約1000倍である。
動脈由来細胞又はiMACのような脂肪細胞前駆細胞の、褐色脂肪様細胞への分化は、当業者に公知の任意の方法によって測定可能である。特定の非限定例は、ノザンブロット、RNase保護及びRT−PCRのような技術を用いた脂肪関連マーカーの発現を検出するための免疫組織解析である。他の実施形態において、トリグリセリドの細胞質蓄積を含む、脂肪細胞機能のアッセイが測定可能である。
例えば、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(AND又はADIPOQ)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)、及び超長鎖脂肪酸伸長様タンパク質3(ELOVL3)発現は、ELISAアッセイ及びウエスタンブロット解析のようなアッセイを介して測定可能である。細胞の分化は、骨関連ポリペプチド(例えば、リポプロテインリパーゼ又はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ−2)をコードしているmRNAのレベルをアッセイすることによっても測定可能である。例示実施形態において、褐色脂肪様細胞は、aP2、PPARα、PPARγ及びADIPOQのような、少なくとも1つの脂肪生成マーカーを発現する。他の例示実施形態において、褐色脂肪様細胞は、UCP1、PRDM16、PGC1α、C/EBPβ、CIDEA及びELVOL3のような、少なくとも1つの褐色脂肪細胞マーカーを発現する。また他の例示実施形態において、褐色脂肪様細胞は、aP2、PPARα、PPARγ及びADIPOQのような少なくとも1つの脂肪生成マーカーと、UCP1、PRDM16、PGC1α、C/EBPβ、CIDEA及びELVOL3のような少なくとも1つの褐色脂肪細胞マーカーを発現する。
脂肪細胞前駆細胞の分化はまた、細胞の、発熱潜在能力又は反応のような、機能的潜在能力によって決定可能である。例えば、酸化的リン酸化が、ATPシンターゼチャンネルから脱共役する時に、ミトコンドリア膜を通したプロトンの漏れが熱を産出し、エネルギーを消費する。例示実施形態において、プロトンの漏れは、褐色脂肪様細胞の発熱潜在能力を決定するために測定可能である。さらに、褐色脂肪様細胞は、ノルエピネフリン、環状AMP及びレプチンのような、少なくとも1つのカテコールアミンへの曝露を通して活性化可能である。
褐色脂肪様細胞はまた、分化培養液から単離可能である。細胞は、当分野で公知の機械的及び/又は物理的分離方法を含む、種々の方法によって単離可能である。
処置方法
一般に、本明細書で記述した方法及び組成物は、代謝疾患及び体重関連疾病を含む、疾患の治療のために有用である。一般に、対象から脂肪細胞前駆細胞の集団を得ること、任意に脂肪細胞前駆細胞を培養及び/又は濃縮して、脂肪細胞前駆細胞の精製集団を得ること、本明細書で記述したように細胞を分化させて、褐色脂肪様細胞を得ること、及びそのような処置を必要とすると診断された対象を含む、それを必要とする対象に、褐色脂肪様細胞を投与することの方法である。
一般に、本明細書で記述した方法及び組成物は、代謝疾患及び体重関連疾病を含む、疾患の治療のために有用である。一般に、対象から脂肪細胞前駆細胞の集団を得ること、任意に脂肪細胞前駆細胞を培養及び/又は濃縮して、脂肪細胞前駆細胞の精製集団を得ること、本明細書で記述したように細胞を分化させて、褐色脂肪様細胞を得ること、及びそのような処置を必要とすると診断された対象を含む、それを必要とする対象に、褐色脂肪様細胞を投与することの方法である。
いくつかの実施形態において、方法には、処置が必要な対象(例えば、肥満判定共通尺度(BMI)25〜29又は30又はそれ以上を有する、過体重又は肥満対象、又は体重関連疾病を有する対象)を同定することと、効果的な量の褐色脂肪様細胞をこの対象に投与することと、が含まれる。本明細書で記述した方法での処置を必要とする対象は、対象の体重又は肥満判定共通尺度に基づいて選択可能である。いくつかの実施形態において、方法には、1つ以上の、体重、脂肪組織量、脂肪組織形態、インスリンレベル、インスリン代謝、グルコースレベル、発熱キャパシティ及び冷温感度に対して対象を評価することが含まれる。いくつかの実施形態において、対象選別には、対象内の褐色脂肪組織の量又は活性を査定することと、これらの観察を記録することと、が含まれうる。
本明細書で記述した方法及び組成物は、例えば対象における肥満、高脂血症及びインスリン耐性のような、代謝疾患の治療のために、又はミトコンドリアの欠損に関連する疾患、例えば糖尿病、がん、神経変性及び加齢を治療するために、有用である。
褐色脂肪様細胞の処方
1つの実施形態において、褐色脂肪様細胞は、対象への投与に好適な薬理学的組成物内に組み込むことが可能である。薬理学的組成物にはまた、1つ以上の薬理学的に許容され得る担体が含まれうる。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容され得る担体」とは、生理学的に適合性のある、溶媒類、分散媒類、コーティング剤類、抗菌剤及び抗真菌剤類、等張剤及び吸収遅延剤類等のいずれか及び全部を含む。薬理学的に許容され得る担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール及びこれらの混合物が挙げられる。多くの場合で、薬理学的組成物には、組成物中、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール類、又は塩化ナトリウムが含まれうる。
1つの実施形態において、褐色脂肪様細胞は、対象への投与に好適な薬理学的組成物内に組み込むことが可能である。薬理学的組成物にはまた、1つ以上の薬理学的に許容され得る担体が含まれうる。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容され得る担体」とは、生理学的に適合性のある、溶媒類、分散媒類、コーティング剤類、抗菌剤及び抗真菌剤類、等張剤及び吸収遅延剤類等のいずれか及び全部を含む。薬理学的に許容され得る担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール及びこれらの混合物が挙げられる。多くの場合で、薬理学的組成物には、組成物中、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール類、又は塩化ナトリウムが含まれうる。
治療組成物は典型的に、製造及び保存の条件下、無菌であり、安定でなければならない。無菌注射可能溶液は、以上で列挙した1つ以上の成分と共にろ過滅菌した適切な溶液中必要な量で、細胞を組み込むことによって調製可能である。
褐色脂肪様細胞の組成物は、種々の形態で投与されてよい。当業者に理解されるであろうように、投与の経路及び/又は様式は、望む結果に依存して種々であるであろう。薬理学的組成物には、「治療的に効果的な量」の褐色脂肪様細胞が含まれてよい。「治療的に効果的な量」は、望む治療結果を達成するために、必要な用量、時間で、効果的な量を意味する。褐色脂肪様細胞の組成物の治療的に効果的な量は、個々の病態、年齢、性別及び体重の様な因子、及び個々における望む応答を引き出すベクターの能力にしたがって種々であってよい。治療的に効果的な量はまた、治療的に有益な効果が、ベクターの任意の毒性又は有害効果を上回る量である。
送達システムもまた提供される。1つの実施形態において、褐色脂肪様細胞は、キットの一部でありうる。キットにはまた、以上で記述したような、1つ以上の薬理学的に許容され得る担体のような、さらなる成分が含まれうる。送達システムは、本明細書で記述したような1つ以上の細胞型を含むリザーバ、1つ以上の薬理学的に許容され得る担体、及びリザーバに接触する流体中の送達器具、例えばニードル又はカニューレが含まれうる。例示実施形態において、褐色脂肪様細胞は、バイアル又はシリンジのような、ハウジングの単一の容器又はチャンバー内に格納可能である。当業者は、本技術分野で公知の任意のハウジングシステムが使用可能であることを理解するであろう。
典型的な例示組成物は、ヒトの受動免疫のために使用されるものと同様の組成物のような、注射可能又は点滴可能溶液の形態である。投与の1つの例示モードは、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。1つの実施形態において、褐色脂肪様細胞は、静脈内点滴又は注射によって投与される。他の実施形態において、褐色脂肪様細胞は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。また他の実施形態において、褐色脂肪様細胞は、特定の局所に送達される。例示実施形態において、褐色脂肪様細胞を、少なくとも1つの褐色脂肪組織部位又は十分な神経支配と血管分布を有する任意の他の部位に注射、及び送達可能である。褐色脂肪様細胞の局所及び/又は標的化投与が、例えば、生分解性マトリックスにて達成可能である。生分解性マトリックスは、移植可能送達システムであってよく、そこで褐色脂肪様細胞が、生分解性マトリックス内に組み込まれるか、上に播かれる。
褐色脂肪様細胞はまた、封入によってのような、非再吸収性/再吸収性足場で送達可能である。細胞を封入するため、又は足場を調製するために使用する多くの技術が、当分野で公知であり、開示された細胞で使用可能である。封入物質及び足場は、制御された速度での加水分解によって分解可能であり、及び/又は再吸収可能でありうる、天然の、又は合成ポリマーが含まれるが、これらには限定されない物質からなりうる。
褐色脂肪様細胞はまた、褐色脂肪様細胞を含む生分解性コアを有するメッシュチャンバーのような、移植可能なデバイス中に含まれる。デバイスは、細胞を含んで対象の体内への放出を防止するが、可溶性因子の交換を許容するために設定されうる。特定の実施形態において、褐色脂肪様細胞は、移植可能デバイスの生分解性コア中に含めることができる。
投与レジメンは、最適な望む応答(例えば、治療的又は予防的応答)を提供するように調節してよい。例えば、単一ボーラスを投与してよく、いくつかの分離用量を、時間をかけて投与してよく、又は用量を治療状況の緊急性によって示されるように、比例して減少又は増加させてよい。投与の簡便さ及び用量の均一性のために、単位剤形にて非経口組成物を処方することがとりわけ有益である。本明細書で使用するところの単位剤形は、処置されるべき哺乳対象に対する一体型用量として好適な物理的に分離した単位を意味し、各単位は、必要な薬理学的担体と共に、望む治療効果を産するために計算された、先に決定された量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形に対する仕様は、(a)活性化合物の固有の特性と、達成されるべき特定の治療又は予防効果と、(b)個々における感受性の、処置のためにそのような化合物を配合する当分野で固有の制限、によって決定され、直接依存する。褐色脂肪様細胞はまた、患者の体外にある治療デポ剤としての利用のために、体外デバイス内に組み込んでもよい。
1つの態様において、褐色脂肪組織は、褐色脂肪様細胞の移植を通して増加又は増大可能である。1つの実施形態において、褐色脂肪組織は、褐色脂肪様細胞の移植を通して、約2%〜20%まで増加可能である。他の実施形態において、褐色脂肪組織は、褐色脂肪様細胞の約5〜10%増加可能である。他の実施形態において、褐色脂肪組織は、褐色脂肪様細胞の約50〜100%増加可能である。他の実施形態において、褐色脂肪組織は、対象の領域/部位において、又は患者において、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%及び100%、褐色脂肪様細胞の移植を通して増加可能である。本明細書で使用するところの用語「移植」は、1つの体又は体の一部から、他の体又は体の一部へ、又はex vivoからin vivoへの細胞の移入を意味する。褐色脂肪様細胞は、自家、同種又は異種でありうる。必要であれば、免疫抑制を、同種又は異種細胞の拒絶を防ぐために投与可能である。褐色脂肪様細胞をまた、封入及び他のバリア方法を含む拒絶を防止する種々の技術を用いて封入可能である。「同種移植」又は「異種移植」は、1つの個体から他への移植であり、そこで個体は1つ以上の座にて、2つの個体間の配列で同一でない遺伝子を有する。同種移植は、遺伝的に異なる同一の種の2つの個体間、又は2つの異なる種の個体間で発生しうる。「自家移植」は、同一の個体内での、1つの位置から他への組織又は細胞の移植、又は1つの個体から他への組織又は細胞の移植であり、そこで2つの個体は遺伝的に同一である。
1つの実施形態において、iMAC、MSC、脂肪細胞前駆細胞などのような脂肪細胞前駆細胞、又は褐色脂肪様細胞を、リン酸緩衝食塩水及び他の生理食塩水のような、好適な移植培地中で懸濁可能である。細胞移植混合液を、30〜18ゲージの範囲のニードルを有するシリンジを介して、標的位置内に注射可能であり、ニードルのゲージは、脂肪細胞懸濁液の総粘度のような因子に依存する。22〜18ゲージ、及び30〜27ゲージの範囲のニードルを使用可能である。
本明細書で使用するところの用語「標的部位」は、体内の一領域、又は体構造内の一領域を意味する。いくつかの実施形態において、標的領域は、1つ以上の本明細書で開示した褐色脂肪組織部位、例えば鎖骨上領域、うなじ、肩甲骨上、脊髄にそって、褐色脂肪組織部位中で終結する交感神経系の近位枝近辺、少なくとも1つの腎臓の周辺、腎被膜、肝臓、皮膚、十分に神経支配及び血管形成がある任意の他の部分、又はその他の部分でありうる。
加えて、標的領域は、褐色脂肪様細胞の投与を通して褐色脂肪組織を増加又は増大するために望ましい場所であり、1つ以上の褐色脂肪組織部位の同定は、当業者に理解されるであろうように、PET−CTイメージング、トモグラフィー、サーモグラフィー、又は任意の他の技術を用いて、患者をイメージング又はスキャニングすることによって、患者内の褐色脂肪組織部位を局在化することによって、個別患者的に決定可能である。非放射活性に基づくイメージング技術を、部位内の褐色脂肪組織刺激に関連した血流における変化を測定するために使用可能である。
1つの実施形態において、マイクロバブルを含むコントラスト液を、褐色脂肪組織を局在化するために使用可能である。コントラスト液は、その褐色脂肪組織が活性化された患者へ注射可能である。低周波数超音波のようなエネルギー源を、コントラスト液からのバブルの破壊を引き起こす対象の領域に適用可能である。この空間の再充填率を定量可能である。再充填の速度の増加が、活性褐色脂肪組織部位と関連しうる。
他の実施形態において、蛍光培地を含むコントラスト液を、褐色脂肪組織を局在化するために使用可能である。コントラスト液は、その褐色脂肪組織が活性化された患者へ注射可能である。プローブを通過する蛍光コントラストの量を計数可能なニードルに基づくプローブを、対象の領域中に配置可能である。ユニット時間あたりのカウントの増加は、血流の増加に対応し、活性化褐色脂肪組織部位に関連させることができる。ヒトは、比較的少量の褐色脂肪組織を有することが可能であるので、そしてうなじのような典型的な褐色脂肪組織の近くでさえも、褐色脂肪組織が最も豊富である場所を推測することが難しいので、より正確に褐色脂肪組織部位を担うように患者をイメージングし、より褐色脂肪組織を神経支配している神経が、より高い精密さで刺激されることが可能である。患者イメージングを通して同定された任意の数の褐色脂肪組織部位を、永久又は一時的マーカーを用いて、爾後の参照のためにマーク可能である。当業者によって理解されるであろうように、例えば、表皮上及び/又は下に適用したインク、色素注入などの任意の型のマーカーを、褐色脂肪組織部位をマークするために使用可能である。マーカーは、紫外線光、例えばブラックライトのような、特定の照明条件下、可視のみであるように構成可能である。
査定処置
いくつかの実施形態において、本明細書で記述した方法には、処置の後に対象中のBATの量又は活性を査定することと、これらの観察を記録することとが含まれうる。これらの処置後観察を、対象選別の間に実施した観察と比較可能である。いくつかの実施形態において、対象は、増加したBATレベル及び/又は活性を有するであろう。いくつかの実施形態において、対象は、症状の減少を示すであろう。いくつかの実施形態において、査定には、処置の前及び/又は後に、対象の体重又はBMIを決定することと、処置の前の対象の体重又はBMIを、処置の後の体重又はBMIと比較することと、が含まれうる。成功の指標は、体重又はBMIにおける減少の観察であろう。いくつかの実施形態において、処置を、標的体重又はBMIが達成されるまで1以上のさらなる回数投与する。あるいは、例えばウエスト、チェスト、ヒップ、大腿又は腕周長の、胴回りの測定を使用可能である。
いくつかの実施形態において、本明細書で記述した方法には、処置の後に対象中のBATの量又は活性を査定することと、これらの観察を記録することとが含まれうる。これらの処置後観察を、対象選別の間に実施した観察と比較可能である。いくつかの実施形態において、対象は、増加したBATレベル及び/又は活性を有するであろう。いくつかの実施形態において、対象は、症状の減少を示すであろう。いくつかの実施形態において、査定には、処置の前及び/又は後に、対象の体重又はBMIを決定することと、処置の前の対象の体重又はBMIを、処置の後の体重又はBMIと比較することと、が含まれうる。成功の指標は、体重又はBMIにおける減少の観察であろう。いくつかの実施形態において、処置を、標的体重又はBMIが達成されるまで1以上のさらなる回数投与する。あるいは、例えばウエスト、チェスト、ヒップ、大腿又は腕周長の、胴回りの測定を使用可能である。
これらの査定は、対象に対する処置の将来の経過を決定するために使用可能である。例えば、処置は、変更なしに続けてよく、変更(例えば追加処置又はより攻撃的な処置)ありで続けてよく、又は処置を停止できる。いくつかの実施形態において、方法には、対象中の代謝疾患の症状を維持する、又はさらに減少させるために、褐色脂肪様細胞の移植の1以上の追加ラウンドが含まれる。
当業者は、さらなる特徴及び利点が、上記実施形態に基づきうることを理解するであろう。したがって、開示した方法及び組成物は、付随する請求項によって示唆されるものを除き、実施例又は図面にて、何がとりわけ示され、記述されたのかによって制限はされない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に援用するものである。
実施例1:褐色脂肪細胞前駆細胞の単離と特徴づけ
候補褐色脂肪前駆細胞をヒト内乳動脈から単離した。これらの単離した細胞(内乳動脈細胞又はiMAC)の、BAT細胞へ分化する能力を次いで、脂肪細胞分化培地へ細胞を曝露することによって調査した。
候補褐色脂肪前駆細胞をヒト内乳動脈から単離した。これらの単離した細胞(内乳動脈細胞又はiMAC)の、BAT細胞へ分化する能力を次いで、脂肪細胞分化培地へ細胞を曝露することによって調査した。
ヒト内乳動脈の一部は、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)から得た。血液及び残渣物を取り除くために、動脈をトリミングし、ダルベッコ変法イーグル培地(低グルコースDMEM、Invitrogen,Carlsbad,CA)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS、Invitrogen)中で洗浄した。続いて、動脈全体を50ミリリットルのコニカルチューブに移した。次いで、0.25ユニット/ミリリットルのコラゲナーゼ(Serva Electrophoresis、Heidelberg,Germany)及び2.5ユニット/ミリリットルのディスパーゼ(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis IN)を含む酵素混合物中において組織を消化した。次に、酵素混合物をiMAC増殖培地(Advanced DMEM/F12(Gibco)、L−グルタミン(Gibco)、ペニシリン(50ユニット/ミリリットル)及びストレプトマイシン(50μg/mL、Gibco)、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む)と混合した。組織、iMAC増殖培地及び消化酵素含有コニカルチューブを、軌道振とう器中、225rpmにて1時間、37℃にてインキュベートした。部分的に消化した動脈を次いで、新鮮な酵素とiMAC増殖培地の混合物を含む50mLコニカルチューブ中に移し、37℃にて1時間、さらに消化した。
ついで、消化した動脈を50mLコニカルチューブより取り除き、捨てた。次に、得られた消化物を150×gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。ペレットを20ミリリットルのiMAC増殖培地に再懸濁した。細胞懸濁液をついで、70ミクロンのナイロンBD FALCONセルストレイナ−(BD Biosciences,San Jose,CA)を通して濾過した。次に濾液を、iMAC増殖培地(全容積50ミリリットル)に再懸濁し、150×gで5分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞を他の15ミリリットルの新鮮なiMAC増殖培地中で再懸濁させ、50μg/cm2ウシI型コラーゲン(Inamed,Freemont,CA)でコートした組織培養フラスコ内に配置した。細胞を次に、37℃、5% CO2にて培養した。
iMACをついで、平均3週間、脂肪生成誘導培地(Lonza)に曝露した。対照細胞を、脂肪生成維持培地(Lonza)に曝露した。いずれの培地も、2日ごとに交換した。ついで細胞をOil Red O染色のために固定し、RNAを定量RT−PCRのために単離した。
実施例2:iMACは、Oil Red O染色によって示されたように、脂肪生成系統に分化可能である
脂質蓄積をOil Red O染色を用いて解析した。細胞を4%緩衝パラホルムアルデヒド溶液にて、20分間、室温にて固定した。細胞を、濾過したOil Red O溶液(イソプロピルアルコール中0.5% Oil Red O(Sigma−Aldrich))にて、室温で30分間染色した。細胞をPBSにて2回洗浄し、イメージをOlympus IX70顕微鏡カメラにて撮った。
脂質蓄積をOil Red O染色を用いて解析した。細胞を4%緩衝パラホルムアルデヒド溶液にて、20分間、室温にて固定した。細胞を、濾過したOil Red O溶液(イソプロピルアルコール中0.5% Oil Red O(Sigma−Aldrich))にて、室温で30分間染色した。細胞をPBSにて2回洗浄し、イメージをOlympus IX70顕微鏡カメラにて撮った。
図2Aで示すように、脂肪生成培地への曝露は、Oil Red O蓄積の増加による、iMACのより暗い外観によって示されるように、図2Bにて示した対照培地(維持培地)に曝露した細胞集団と比較して、iMAC中の脂質蓄積の顕著な増加を引き起こした。
本データは、iMACが、脂質蓄積の増加という結果となる脂肪生成系統分化を受けることが可能であることを示唆している。これはさらに、iMACが潜在的に脂肪細胞前駆体であることを示唆した。
実施例3:iMACは、BAT様表現型に分化する
iMACを次いで、平均3週間、脂肪生成誘導培地(Adipogenic BulletKit,Lonza)に曝露した。対照細胞を、脂肪生成維持培地(Adipogenic BulletKit,Lonza)に曝露した。いずれの培地も、2日ごとに交換した。試験の前に、細胞を4時間、環状AMP(cAMP)アナログジブチルcAMP(Sigma)に曝露した。
iMACを次いで、平均3週間、脂肪生成誘導培地(Adipogenic BulletKit,Lonza)に曝露した。対照細胞を、脂肪生成維持培地(Adipogenic BulletKit,Lonza)に曝露した。いずれの培地も、2日ごとに交換した。試験の前に、細胞を4時間、環状AMP(cAMP)アナログジブチルcAMP(Sigma)に曝露した。
定量RT−PCTをついで実施して、脂肪生成、及び褐色脂肪細胞に特異的な脂肪生成マーカー両方の発現レベルを決定した。解析した脂肪生成マーカーは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)及びアディポネクチン(ADN又はADIPOQ)であった。褐色脂肪細胞に特異的な脂肪生成マーカーは、UCP−1、CIDEA、PPARγコアクチベータ(PGC)−1α及びELVOL3であった。
RNAを、製造業者仕様書(RNeasy Mini Kit;Qiagen、カタログ番号74106)にしたがって単離した。試料をまた、キット仕様書に従い、DNaseIで処理した。最終RNAを、30μlのddH2Oで溶出した。RNA試料を、2μlの各試料を用い、またNanoDrop 2000機(Themo Scientific)を用いて定量した。cDNAを、製造業者仕様書にしたがって、最終容量50μl中5μgのRNA(100ng/μlのcDNA)を用いて、Applied Biosystem「High Capacity cDNA Archival Kit」(Applied Biosystems)を用いて作製した。PCRを、100〜200ngの高キャパシティcDNA(1〜2μl)+7〜8μlのDnase/Rnaseフリー水+10μlのTaqman PCR Master Mix(Applied Biosystems)+1μlの望むプライマー/プローブ/反応(20μl総反応容量)を加えることによって行った。
PCRを、ABIプリズム7900 SDSソフトウェア(Applied Biosystems,Foster City,CA)と共に7900配列検出システムを用いて、製造業者によって特定された条件にしたがって三重に実施した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間の後、95℃で15秒間、60℃で1分間を40サイクル行った。
図3A及び図3Bにて示すように、脂肪生成誘導培地での長時間処置によって、脂肪生成マーカー(aP2、PPARα、PPARγ及びADIPOQ、図3A)及び褐色脂肪細胞マーカー(UCP1、PRDM16、PGC1α、C/EBPβ、CIDEA及びELVOL3、図3B)両方で顕著な増加となった。最も低い誘導が、PPARαで観察され、対照の2倍増加を示し、したがって不変とみることができる。全ての他のマーカーは、対照に対して有意な倍数の増加を示した。最も大きな増加は、aP2とADIPOQで見られ、それぞれ対照に対して、100,000倍、及びほぼ50,000倍の増加を示した。
これらの観察により、脂肪生成誘導培地での長時間処理が、iMACの真のBAT細胞への分化を促進することが示唆される。
iMACが発熱可能な成熟褐色脂肪細胞へ分化したことをさらに示すために、脂肪生成誘導培地処理細胞と、未処理対照を環状AMP(cAMP)アナログジブチリルcAMP(Sigma)に曝露した。この化合物は、冷温誘導発熱の誘導を模倣し、したがってもっぱら成熟褐色脂肪細胞にて発生する、発熱に関与する遺伝子の発現を引き起こす。これは、褐色脂肪細胞を機能的に特徴づけ、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞を見分けるために一般に使用される。
処置に続いて、UCP1発現を、以上で記述したように、定量RT−PCRを用いて解析した。
図3Bで示すように、iMACは、対照細胞集団と比較して、cAMP処置後、UCP1発現において、およそ20,000倍の増加を示した。この観察により、脂肪生成誘導培地へ曝露して、それに続いてcAMP処理したiMACが、褐色脂肪細胞特異的マーカーを発現するように分化し、発熱プログラムのスイッチを入れるために、カテコールアミン刺激に応答する能力を有することが示唆される。
実施例4:多数のドナーから単離したiMACの、BAT様表現型へ分化する能力
異なるドナーから単離したiMAC間の機能的差違を調査するために、2つのさらなるiMACロットを、実施例2及び3で記述するように、単離、培養、及び脂肪生成誘導培地へ曝露した。対照条件には、脂肪生成維持培地中での培養が含まれた。BAT特異的マーカーUCP−1、PRDM16、PGC1α、CIDEA及びelvol3のレベルを、RT−PCTを用いて査定した。
異なるドナーから単離したiMAC間の機能的差違を調査するために、2つのさらなるiMACロットを、実施例2及び3で記述するように、単離、培養、及び脂肪生成誘導培地へ曝露した。対照条件には、脂肪生成維持培地中での培養が含まれた。BAT特異的マーカーUCP−1、PRDM16、PGC1α、CIDEA及びelvol3のレベルを、RT−PCTを用いて査定した。
表2に示すように、2つのさらなるドナーから単離し、脂肪生成誘導培地にて処理したiMCAsは、対照条件と比較して、UCP−1発現レベル、並びに他の褐色脂肪組織マーカーにおける増加となった。これらの観察により、iMCAsの脂肪生成潜在能力は、特定の遺伝的背景に限定はされず、多数のドナーから単離した細胞にて達成されうることが示唆される。
実施例5:ミトコンドリア生合成におけるiMAC褐色化の効果
BATの分化は、得られる豊富なミトコンドリアと、シトクロムが、その組織の褐色を引き起こす程度まで、ミトコンドリア生合成を伴う。コアクチベータ−PGC−1αは、褐色脂肪形成と、ミトコンドリア機能を制御する、転写カスケードを制御することにおいて中心的な役割を果たす。PGC−1αは、核呼吸性因子(NRF)−1及びNRF−2の発現を刺激し、ミトコンドリア複製と転写の直接の調節因子である、ミトコンドリア転写因子A(Tfam)の発現におけるこれらの因子の転写機能を共活性化する。
BATの分化は、得られる豊富なミトコンドリアと、シトクロムが、その組織の褐色を引き起こす程度まで、ミトコンドリア生合成を伴う。コアクチベータ−PGC−1αは、褐色脂肪形成と、ミトコンドリア機能を制御する、転写カスケードを制御することにおいて中心的な役割を果たす。PGC−1αは、核呼吸性因子(NRF)−1及びNRF−2の発現を刺激し、ミトコンドリア複製と転写の直接の調節因子である、ミトコンドリア転写因子A(Tfam)の発現におけるこれらの因子の転写機能を共活性化する。
iMACにおいて、脂肪生成誘導培地での3週間の処理が、それぞれ100倍〜10倍まで、PGC−1α及びPGC−1βの発現を増強するのに十分であり(表4)、それに続いてシトクロムC(CYCS)の発現においては、およそ2〜18倍までで増大した。PGC−1αはまた、褐色脂肪細胞中UCP−1プロモーターにおける、PPARγと甲状腺ホルモン受容体の転写活性を増強することが知られている。したがって、iMACにおける脂肪生成誘導培地によるUCP−1タンパク質発現の強力な誘導が、PGC−1αによって仲介される可能性があった。ミトコンドリア転写因子A(TFAM)及び核呼吸性因子1(NRF1)の発現に変化はなかった。
実施例6:iMACのBAT表現型の更なる証拠
ここまで、BAT機能及び発達における多くの知識が、小哺乳動物から由来しており、そこでは、BATが体温を維持することを助け、エネルギー消費を調節し、体重に影響を与える、生涯を通しての鍵となる代謝組織であることがよく確立されている。そのような研究は、脱共役工程を明確にしてきており、細胞前駆体と、褐色脂肪細胞の分化工程を解明するために開始された。反対に、分子レベルにおいて、ヒトBATに関しての知識は極めて限られている。さらに、齧歯類モデルにおいて実施された研究に基づいて、製薬業界は、そのような化合物がまた、ヒトにおいてエネルギー消費を増加させうるということを期待して、β−3アドレナリン作動受容体のアゴニストを開発してきた。この受容体のアゴニストは、齧歯類における肥満を効果的に減少させるが、臨床試験では失敗した。そのような失敗は、多くの治験責任医師を、BAT遺伝子発現における種特異的差違が存在するという結論に導いた。最近、Svenson et al.が、ヒトBATにて特異的に発現する遺伝子を同定し、BAT遺伝子発現における種特異的差違が存在することを同定した。これらの発見を考慮して、RT−PCRを用いたiMAC中のこれらの遺伝子の発現が調査されてきた。
ここまで、BAT機能及び発達における多くの知識が、小哺乳動物から由来しており、そこでは、BATが体温を維持することを助け、エネルギー消費を調節し、体重に影響を与える、生涯を通しての鍵となる代謝組織であることがよく確立されている。そのような研究は、脱共役工程を明確にしてきており、細胞前駆体と、褐色脂肪細胞の分化工程を解明するために開始された。反対に、分子レベルにおいて、ヒトBATに関しての知識は極めて限られている。さらに、齧歯類モデルにおいて実施された研究に基づいて、製薬業界は、そのような化合物がまた、ヒトにおいてエネルギー消費を増加させうるということを期待して、β−3アドレナリン作動受容体のアゴニストを開発してきた。この受容体のアゴニストは、齧歯類における肥満を効果的に減少させるが、臨床試験では失敗した。そのような失敗は、多くの治験責任医師を、BAT遺伝子発現における種特異的差違が存在するという結論に導いた。最近、Svenson et al.が、ヒトBATにて特異的に発現する遺伝子を同定し、BAT遺伝子発現における種特異的差違が存在することを同定した。これらの発見を考慮して、RT−PCRを用いたiMAC中のこれらの遺伝子の発現が調査されてきた。
RNA単離とcDNA合成を、実施例3にて記述したように実施した。以下のプライマーを、iMAC中、KCNK3、CKMT1B、COBL、HMGCS2及びTGM2の発現を調査するために使用した。
表5で示すように、全ての、1つ(TGM2)以外のプローブ化した遺伝子が、iMACにてアップレギュレートされることがわかった。これはさらに、iMACが、褐色脂肪細胞の正規な前駆体であり得、褐色脂肪組織経路にそって分化するように簡単に誘導可能であることを示唆する。
実施例7:天然物質又は合成物質における、褐色脂肪様細胞の封入
iMACを、記述したプロトコールを用いて、褐色脂肪様細胞(BFLC)に分化する。当分野で公知の方法(アグレウェルプレート、低クラスターディッシュなど)を用いて、iMAC又は他の供給源細胞(白色脂肪細胞、脂肪細胞前駆細胞、繊維芽細胞及びiPSC)から由来する褐色脂肪様細胞をついで凝集して、スフェロイド(50〜500μm、最適には150〜200μm)を形成する。BFLCスフェロイドをついで、従来の、又は共形の、又はマイクロ封入コーティング法を用いて、封入する。
iMACを、記述したプロトコールを用いて、褐色脂肪様細胞(BFLC)に分化する。当分野で公知の方法(アグレウェルプレート、低クラスターディッシュなど)を用いて、iMAC又は他の供給源細胞(白色脂肪細胞、脂肪細胞前駆細胞、繊維芽細胞及びiPSC)から由来する褐色脂肪様細胞をついで凝集して、スフェロイド(50〜500μm、最適には150〜200μm)を形成する。BFLCスフェロイドをついで、従来の、又は共形の、又はマイクロ封入コーティング法を用いて、封入する。
BFLCは、アルギネート、アクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)共形マイクロコーティング、ナノコーティング、セルロース及び/又はアガロースを含む、種々の重合性ハイドロゲルマトリックス中でマイクロ封入可能である。マイクロ封入されたBFLCを、腹膜空間内で、存在している白色脂肪細胞組織、網嚢、皮下又は筋肉内領域に移植可能である。
褐色脂肪細胞を格納するための他の機構は、バイオ人工移植片でありうる。とりわけ、移植片は、細胞を封入する薄シートであり得、長期間にわたって完全に生体適合性であり得、線維症を誘導し得ない。高密度細胞含有薄シートは完全に回収可能であり、栄養素及び酸素の迅速な拡散を通して、最適な組織バイアビリティの維持を許容し、また変化している生理に応答して、迅速な変化を許容する寸法である。
実施例8:肥満の治療のための、iMACから由来した褐色脂肪様細胞の移植
iMAC(又は他の供給源細胞)由来の褐色脂肪様細胞が、肥満の治療のための細胞の良好な同種供給源でありうる。これらのBFLCは、免疫抑制剤の存在下での封入なしに使用可能であるか、封入可能であるか、又は免疫抑制剤なしに、移植可能器具中で使用可能である。
iMAC(又は他の供給源細胞)由来の褐色脂肪様細胞が、肥満の治療のための細胞の良好な同種供給源でありうる。これらのBFLCは、免疫抑制剤の存在下での封入なしに使用可能であるか、封入可能であるか、又は免疫抑制剤なしに、移植可能器具中で使用可能である。
筋肉内、皮下への、又は白色脂肪組織内へのBFLCの移植は、周辺組織の血管化及び神経支配を許容するために、100〜200μl懸濁液の小デポ剤にて実施されるべきである。
移植されたBFLCの活性は、細胞の発熱機能を活性化するか、又はアップレギュレートする、b3アドレナリン作動受容体、Gタンパク質、cAMP、TGR5胆汁酸アナログ、及び2型50−デイオジナーゼを含む、種々の非神経性刺激活性因子によって調節可能である。
褐色脂肪様細胞の有効性を、齧歯類モデルにて査定可能である。BFLCの動物への移植に続いて、BAT活性化を、熱出力(直接測熱)又は吸入/排出気体交換(間接測熱)の連続測定を含む、エネルギー消費を通して測定可能である。間接測熱は、BFLCの移植前後のエネルギー消費を反映する比を計算するために、酸素消費、二酸化炭素産出及び/又は窒素排泄を通して測定可能である。熱イメージング法もまた使用してもよい。
用語
本明細書で引用したすべての発行物、特許及び特許出願は、その全てが参考文献によって本明細書に組み込まれている。本明細書並びに付随する請求項にて使用するところの、単数形「a」、「an」及び「the」には、含量が他に明確に記述されていない限り、複数形を含む。本開示にて使用した用語は、一般に当業者に受け入れられた標準定義に基づく。任意のさらなる説明が必要であろう場合のために、いくつかの用語をさらに以下で説明する。
本明細書で引用したすべての発行物、特許及び特許出願は、その全てが参考文献によって本明細書に組み込まれている。本明細書並びに付随する請求項にて使用するところの、単数形「a」、「an」及び「the」には、含量が他に明確に記述されていない限り、複数形を含む。本開示にて使用した用語は、一般に当業者に受け入れられた標準定義に基づく。任意のさらなる説明が必要であろう場合のために、いくつかの用語をさらに以下で説明する。
本明細書で使用するところの用語「対象」は、免疫応答が引き出される任意の生きている生物を意味する。用語対象としては、ヒト、チンパンジー及び他の類人猿及びサル種のような非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマのような農場動物、イヌ及びネコのような家畜哺乳動物、マウス、ラット、ウサギ及びモルモットのような齧歯類を含む研究所哺乳動物などが挙げられるが、これらに限定はされない。本用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。特定の実施形態において、対象はヒトである。
本明細書で使用するところの用語「代謝異常」は、生物の代謝の問題によって特徴付けられる医学的状態である。健康な、機能している代謝が寿命に対して重要であるので、代謝異常は、非常に真剣に処置される。(1型及び2型糖尿病を含む)糖尿病、甲状腺機能低下症及び肥満を含むが、これらに限定はされない広い範囲の状態が、代謝異常と分類されうる疾病のいくつかの例である。代謝異常は結果として過剰な体重増加となる。用語「代謝症候群」は、一緒に発生し、心疾患、脳卒中及び糖尿病に対するリスクを増加させる状態のクラスターを意味する。血圧上昇、インスリンレベル上昇、ウエスト周辺の過剰体脂肪又は異常コレステロールレベルのようなこれらの状態のただ1つを有することが、上述疾患のリスクを増加させる。組み合わせで、冠状動脈性心疾患、脳卒中及び糖尿病に対するリスクはより大きい。代謝症候群の主要な特徴としては、インスリン耐性、高血圧、コレステロール異常及び凝血に対するリスク増加が挙げられる。患者は最もしばしば過体重又は肥満である。
〔実施の態様〕
(1) 単離動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞。
(2) さらに、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現によって特徴付けられる、実施態様1に記載の褐色脂肪様細胞。
(3) 前記脂肪細胞マーカーが、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される褐色脂肪細胞マーカーである、実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞。
(4) 前記脂肪生成マーカーが、未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで前記褐色脂肪様細胞にて発現する、実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞。
(5) さらに、発熱潜在力が、カテコールアミン及び環状AMPの少なくとも1つへの曝露によって刺激されることによって特徴付けられる、実施態様1に記載の褐色脂肪様細胞。
(1) 単離動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞。
(2) さらに、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現によって特徴付けられる、実施態様1に記載の褐色脂肪様細胞。
(3) 前記脂肪細胞マーカーが、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される褐色脂肪細胞マーカーである、実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞。
(4) 前記脂肪生成マーカーが、未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで前記褐色脂肪様細胞にて発現する、実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞。
(5) さらに、発熱潜在力が、カテコールアミン及び環状AMPの少なくとも1つへの曝露によって刺激されることによって特徴付けられる、実施態様1に記載の褐色脂肪様細胞。
(6) 前記動脈由来細胞が、内乳動脈細胞から分化する、実施態様1に記載の褐色脂肪様細胞。
(7) 実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞と、薬理学的に許容され得る担体と、を含む、薬理学的組成物。
(8) 褐色脂肪様細胞を作製する方法であって、
未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間、及び条件下、動脈由来細胞の集団を、脂肪生成誘導培地中で培養すること、を含む方法。
(9) 前記脂肪細胞マーカーが、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、実施態様8に記載の方法。
(10) さらに、前記褐色脂肪様細胞を単離することを含む、実施態様8に記載の方法。
(7) 実施態様2に記載の褐色脂肪様細胞と、薬理学的に許容され得る担体と、を含む、薬理学的組成物。
(8) 褐色脂肪様細胞を作製する方法であって、
未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間、及び条件下、動脈由来細胞の集団を、脂肪生成誘導培地中で培養すること、を含む方法。
(9) 前記脂肪細胞マーカーが、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、実施態様8に記載の方法。
(10) さらに、前記褐色脂肪様細胞を単離することを含む、実施態様8に記載の方法。
(11) 前記動脈由来細胞が、内乳動脈細胞である、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記動脈由来細胞が、HLA−1に対して陽性であり、CD10、CD31、CD34、CD45、CD133、CD141及びKDR/Flk−1に対して陰性である、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記動脈由来細胞が、CD29、CD44、CD73、CD166に対してさらに陽性であり、CD15、CD23、CD24、CD62p、CD80、CD86、CD104、CD117、CD138、CD146、VE−カドヘリン及びHLA−2に対してさらに陰性である、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記脂肪生成誘導培地が、骨形態形成タンパク質(BMP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体−α(RxRα)、インスリン及びT3、チアゾリジンジオン(TZD)、ビタミンA、レチノイン酸、インスリン、グルココルチコイド又はそのアゴニスト、ウイングレスタイプ(Wnt)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TFG)−α、TGF−β、腫瘍壊死因子α(TNFα)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)から選択される化合物を含む、実施態様8に記載の方法。
(15) 対象を処置する方法であって、
動脈由来褐色脂肪様細胞の集団を得ることと、
該褐色脂肪様細胞を、該対象中の標的領域に投与することと、を含む方法。
(12) 前記動脈由来細胞が、HLA−1に対して陽性であり、CD10、CD31、CD34、CD45、CD133、CD141及びKDR/Flk−1に対して陰性である、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記動脈由来細胞が、CD29、CD44、CD73、CD166に対してさらに陽性であり、CD15、CD23、CD24、CD62p、CD80、CD86、CD104、CD117、CD138、CD146、VE−カドヘリン及びHLA−2に対してさらに陰性である、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記脂肪生成誘導培地が、骨形態形成タンパク質(BMP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体−α(RxRα)、インスリン及びT3、チアゾリジンジオン(TZD)、ビタミンA、レチノイン酸、インスリン、グルココルチコイド又はそのアゴニスト、ウイングレスタイプ(Wnt)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TFG)−α、TGF−β、腫瘍壊死因子α(TNFα)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)から選択される化合物を含む、実施態様8に記載の方法。
(15) 対象を処置する方法であって、
動脈由来褐色脂肪様細胞の集団を得ることと、
該褐色脂肪様細胞を、該対象中の標的領域に投与することと、を含む方法。
(16) 前記対象が、肥満、糖尿病又は高脂血症から選択される代謝異常を有する、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記対象が肥満であり、治療を必要としている、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記動脈由来褐色脂肪様細胞が、前記対象に対して自家である、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記動脈由来褐色脂肪様細胞が、前記対象に対して同種又は異種である、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記方法が、前記褐色脂肪様細胞を、注射可能組成物として調製すること、を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記対象が肥満であり、治療を必要としている、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記動脈由来褐色脂肪様細胞が、前記対象に対して自家である、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記動脈由来褐色脂肪様細胞が、前記対象に対して同種又は異種である、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記方法が、前記褐色脂肪様細胞を、注射可能組成物として調製すること、を含む、実施態様15に記載の方法。
Claims (14)
- 単離動脈由来、ex vivo分化褐色脂肪様細胞。
- さらに、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、少なくとも1つの脂肪細胞マーカーの発現によって特徴付けられる、請求項1に記載の褐色脂肪様細胞。
- 前記脂肪細胞マーカーが、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される褐色脂肪細胞マーカーである、請求項2に記載の褐色脂肪様細胞。
- 前記脂肪生成マーカーが、未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで前記褐色脂肪様細胞にて発現する、請求項2に記載の褐色脂肪様細胞。
- さらに、発熱潜在力が、カテコールアミン及び環状AMPの少なくとも1つへの曝露によって刺激されることによって特徴付けられる、請求項1に記載の褐色脂肪様細胞。
- 前記動脈由来細胞が、内乳動脈細胞から分化する、請求項1に記載の褐色脂肪様細胞。
- 請求項2に記載の褐色脂肪様細胞と、薬理学的に許容され得る担体と、を含む、薬理学的組成物。
- 褐色脂肪様細胞を作製する方法であって、
未処理動脈由来細胞と比較して、より高いレベルで脂肪細胞マーカーの発現を増加させるのに十分な時間、及び条件下、動脈由来細胞の集団を、脂肪生成誘導培地中で培養すること、を含む方法。 - 前記脂肪細胞マーカーが、脂肪酸結合タンパク質4(aP2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、アディポネクチン(ADN)、脱共役タンパク質1(UCP−1)、PRドメイン含有タンパク質16(PRDM16)、PPARコアクチベータ−1α(PGC−1α)、CCAAT/エンハンサ結合タンパク質β(C/EBPβ)、細胞死誘導DFFA様エフェクターA(CIDE−A)及び超長鎖脂肪酸様タンパク質3の伸長(ELOVL3)から選択される、請求項8に記載の方法。
- さらに、前記褐色脂肪様細胞を単離することを含む、請求項8に記載の方法。
- 前記動脈由来細胞が、内乳動脈細胞である、請求項8に記載の方法。
- 前記動脈由来細胞が、HLA−1に対して陽性であり、CD10、CD31、CD34、CD45、CD133、CD141及びKDR/Flk−1に対して陰性である、請求項11に記載の方法。
- 前記動脈由来細胞が、CD29、CD44、CD73、CD166に対してさらに陽性であり、CD15、CD23、CD24、CD62p、CD80、CD86、CD104、CD117、CD138、CD146、VE−カドヘリン及びHLA−2に対してさらに陰性である、請求項12に記載の方法。
- 前記脂肪生成誘導培地が、骨形態形成タンパク質(BMP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体−α(RxRα)、インスリン及びT3、チアゾリジンジオン(TZD)、ビタミンA、レチノイン酸、インスリン、グルココルチコイド又はそのアゴニスト、ウイングレスタイプ(Wnt)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TFG)−α、TGF−β、腫瘍壊死因子α(TNFα)、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)から選択される化合物を含む、請求項8に記載の方法。
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